立体表示装置、及び、立体表示システム
【課題】本発明は、視域角が広い立体表示装置を提供する。
【解決手段】ステレオ立体表示装置2は、制御手段20と、表示手段21と、透明部材23,27と、表示面21aに表示された右眼用画像及び左眼用画像が入射光として入射し、入射光の周期の1/2を超え1倍未満の長さを有する屈折率分布ファイバ25aを2次元に配置することによって、屈折率分布ファイバ25aの出射面から所定の長さ離れた結像位置に右眼用画像及び左眼用画像の正立等倍像を結像させるレンズアレイ25と、偏光特性を交互に直交させて正立等倍像を交互に出力するライン型偏光板28と、を備え、透明部材23,27は、その厚さが、屈折率分布ファイバ25aの出射面から結像位置までの光学距離と等しいことを特徴とする。
【解決手段】ステレオ立体表示装置2は、制御手段20と、表示手段21と、透明部材23,27と、表示面21aに表示された右眼用画像及び左眼用画像が入射光として入射し、入射光の周期の1/2を超え1倍未満の長さを有する屈折率分布ファイバ25aを2次元に配置することによって、屈折率分布ファイバ25aの出射面から所定の長さ離れた結像位置に右眼用画像及び左眼用画像の正立等倍像を結像させるレンズアレイ25と、偏光特性を交互に直交させて正立等倍像を交互に出力するライン型偏光板28と、を備え、透明部材23,27は、その厚さが、屈折率分布ファイバ25aの出射面から結像位置までの光学距離と等しいことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両眼視差による立体画像を表示する立体表示装置、及び、立体表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、走査線に対応するライン毎に偏光特性を交互に直交させた偏光板を表示面に配置して、立体画像を表示する発明が提案されている(例えば、特許文献1参照)。以下、ライン毎に偏光特性を交互に直交させた偏光板をライン型偏光板と呼ぶ。
【0003】
従来の立体表示装置9は、図11(a)に示すように、制御手段91と、表示手段93と、ライン型偏光板95とを備える。ここで、制御手段91は、図示を省略した撮影カメラから、互いに異なる視点で被写体を撮影した右眼用画像と左眼用画像とが入力される。そして、制御手段91は、この右眼用画像を走査線93Rに出力し、この左眼用画像を走査線93Lに出力する。
【0004】
ここで、図11(b)に示すように、表示手段93は、走査線93Rと、走査線93Lとが交互に形成されている。また、ライン型偏光板95は、走査線93Rに対応するように、垂直方向の偏光特性を有するライン95Rと、走査線93Lに対応するように水平方向のライン95Lとが交互に形成されている。なお、図11,図12では、ライン95R,95Lの偏光特性を、ハッチングの方向で図示している。
【0005】
従って、立体表示装置9では、走査線93Rから出力された右眼用画像がライン型偏光板95のライン95Rを通過するので、表示される右眼用画像は、垂直方向の偏光特性を有することになる。また、同様に、立体表示装置9では、走査線93Lから出力された発光した左眼用画像がライン型偏光板95のライン95Lを通過するので、表示される左眼用画像は、水平方向の偏光特性を有することになる。そして、図示を省略したユーザが、偏光メガネを装着して立体表示装置9を見ると、ユーザの右眼には右眼用画像だけが入射し、左眼には左眼用画像だけが入射する。このようにして、立体表示装置9は、ユーザに対して立体画像を表示できる(ステレオ立体表示)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許7385669号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、図11に示すように、前記した立体表示装置9では、表示手段93の表示面にライン型偏光板95を配置することが理想的である。しかし、現実的には、立体表示装置9は、図12(a)に示すように、表示手段93の表示面を保護するカバーガラス等の透明部材97が必要になる。このため、立体表示装置9では、表示手段93の表示面にライン型偏光板95を配置することが困難である。
【0008】
この場合、図12(b)に示すように、立体表示装置9では、θを超える範囲において、走査線93Lとライン95Lとが見かけ上ずれることになる。このため、立体表示装置9では、θを超える範囲において、走査線93Lから出力された左眼用画像を、ライン95Lではなくライン95Rを介して表示することになる。従って、立体表示装置9では、ユーザの左眼に入射すべき左眼用画像がユーザの右眼に入射するというクロストークが発生し、視域角が狭くなるという問題がある。なお、この問題は、立体表示装置9において、ユーザの左眼側でも同様に発生することは言うまでもない。
【0009】
そこで、本発明は、視域角が広い立体表示装置、及び、立体表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するため、本願第1発明に係る立体表示装置は、走査線毎に右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示する表示面を有する表示手段と、前記表示面に隣接する位置に設けた平板状の透明部材と、前記透明部材に対向する位置に設けたレンズアレイと、前記レンズアレイに対向する位置に設けた偏光板とを備える立体表示装置であって、前記レンズアレイは、前記表示面に表示された前記右眼用画像及び前記左眼用画像が入射光として入射し、当該入射光の周期の1/2を超え1倍未満の長さを有する屈折率分布レンズを2次元に配置し、前記偏光板は、前記屈折率分布レンズの出射面から所定の長さ離れた結像位置に配置して、前記走査線に対応するライン毎に偏光特性を交互に直交させ、前記透明部材は、その厚さが、前記屈折率分布レンズの出射面から前記結像位置までの光学距離と等しいことを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、立体表示装置は、レンズアレイによって、屈折率分布レンズの出射面から所定の長さ離れた結像位置に、右眼用画像及び左眼用画像の正立等倍像を結像させる。そして、立体表示装置は、偏光板によって、ライン毎に右眼用画像及び左眼用画像の正立等倍像を交互に出力する。つまり、立体表示装置は、ある走査線に表示された右眼用画像及び左眼用画像を、この走査線に対応するラインに結像させることができる。これによって、立体表示装置は、両眼視差による立体画像を表示すると共に、透明部材におけるクロストークを防止できる。
【0012】
また、前記した課題を解決するため、本願第2発明に係る立体表示装置は、画素毎に右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示する表示面を有する表示手段と、前記表示面に隣接する位置に設けた平板状の透明部材と、前記透明部材に対向する位置に設けたレンズアレイと、前記レンズアレイに対向する位置に設けた偏光板とを備える立体表示装置であって、前記レンズアレイは、前記表示面に表示された前記右眼用画像及び前記左眼用画像が入射光として入射し、当該入射光の周期の1/2を超え1倍未満の長さを有する屈折率分布レンズを2次元に配置し、前記偏光板は、前記屈折率分布レンズの出射面から所定の長さ離れた結像位置に配置して、前記右眼用画像を表示する画素及び前記左眼用画像を表示する画素に対応するように偏光特性を交互に直交させ、前記透明部材は、その厚さが、前記屈折率分布レンズの出射面から前記結像位置までの光学距離と等しいことを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、立体表示装置は、レンズアレイによって、屈折率分布レンズの出射面から所定の長さ離れた結像位置に、右眼用画像及び左眼用画像の正立等倍像を結像させる。そして、立体表示装置は、偏光板によって、画素毎に右眼用画像及び左眼用画像の正立等倍像を交互に出力する。これによって、立体表示装置は、両眼視差による立体画像を表示すると共に、透明部材におけるクロストークを防止できる。
【0014】
また、本願第3発明に係る立体表示装置は、前記偏光板における前記結像位置側の平面に配置され、前記結像位置に結像した前記右眼用画像及び前記左眼用画像の正立等倍像を拡散させる拡散板をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、立体表示装置は、拡散板が正立等倍像を拡散させるので、視域角をより広くできる。
【0016】
また、本願第4発明に係る立体表示装置は、前記レンズアレイと前記偏光板との間に、前記屈折率分布レンズの出射面から前記結像位置までの光学距離を同じくする厚さで、平板状に形成された第2の透明部材を備えることを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、立体表示装置は、第2の透明部材における何れかの平面が結像位置となっているため、偏光板の位置決めを容易にできる。
【0018】
また、前記した課題を解決するため、本願第5発明に係る立体表示システムは、本願第1発明又は本願第2発明に係る立体表示装置と、偏光特性が互いに直交する右眼用レンズと左眼用レンズとを有する偏光メガネと、を備えることを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、立体表示システムは、レンズアレイによって、屈折率分布レンズの出射面から所定の長さ離れた結像位置に、右眼用画像及び左眼用画像の正立等倍像を結像させる。そして、立体表示システムは、偏光板によって、ライン毎に右眼用画像及び左眼用画像の正立等倍像を交互に出力する。つまり、立体表示システムは、ある走査線に表示された右眼用画像及び左眼用画像を、この走査線に対応するラインに結像させることができる。
これによって、立体表示システムは、両眼視差による立体画像を表示すると共に、透明部材におけるクロストークを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本願第1,2,5発明によれば、透明部材におけるクロストークを防止でき、視域角を広くできる。
本願第3発明によれば、拡散板が正立等倍像を拡散させるので、視域角をより広くできる。
本願第4発明によれば、第2の透明部材における何れかの平面が結像位置となっているため、偏光板の位置決めを容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明における屈折率分布ファイバを説明する図である。
【図2】本発明におけるレンズアレイを説明する図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るステレオ立体表示システムの概略を示す図である。
【図4】図3の偏光メガネの外観を示す図である。
【図5】図3のステレオ立体表示装置の概略を示す図である。
【図6】図5の表示手段の正面図である。
【図7】図5のライン型偏光板の正面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るステレオ立体表示装置の概略を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るステレオ立体表示装置における偏光板の正面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るステレオ立体表示装置における偏光板の正面図である。
【図11】従来の立体表示装置の理想的な構成を説明する図であり、(a)は側面視したときの概念図であり、(b)は(a)の一点鎖線部分の拡大図である。
【図12】従来の立体表示装置の現実的な構成を説明する図であり、(a)は側面視したときの概念図であり、(b)は(a)の一点鎖線部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する手段及び同一の部材には同一の符号を付し、説明を省略した。なお、屈折率分布ファイバ25aは、屈折率分布レンズと呼ばれることもある。
【0023】
[本発明の原理]
以下、図1,図2を参照し、本発明の原理について、説明する。
本発明では、屈折率分布ファイバ25aは、径方向に屈折率が変化するものであり、このような屈折率を有する屈折率分布ファイバ25aを所定の長さに切断して使用している。具体的には、被写体の正立等倍像を結像する屈折率分布ファイバ25aを2次元に配列したレンズアレイ25を用いる。そして、屈折率分布ファイバ25aは、入射光がこの屈折率分布ファイバ25a内を伝わる周期の1/2を超え1倍未満の長さとする。つまり、屈折率分布ファイバ25a内を伝わる入射光の位相θがπ<θ<2πを満たすように、屈折率分布ファイバ25aの光軸方向の長さを調整する。なお、図1では、θを(3/2)π、つまり、入射光がこの屈折率分布ファイバ25a内を伝わる周期の3/4とした。
【0024】
ここで、屈折率分布ファイバ25aは、その屈折率が、下記の式(1)で表されるように、光軸中心で最も高く、周辺部になる程、低くなる。
【0025】
【数1】
【0026】
但し、式(1)では、rが屈折率分布ファイバ25aの半径であり、nが半径rにおける屈折率であり、n0が光軸中心における屈折率であり、Aが屈折の度合いを示す定数である。
【0027】
この屈折率分布ファイバ25aは、光軸中心に近づく程、屈折率が高くなるため、入射した光が蛇行し、特定の点(結像位置)で結像するようなレンズ効果を持つ。この原理は、1964年、D.MARCUSEらによって見出され、その詳細は、「The Bell System Technical Journal.(July,1964)」等に記載されている。
【0028】
ここで、屈折率分布ファイバ25aは、その光線マトリクス、つまり、入射光の位置及び角度と、出射光の位置及び角度とが、下記の式(2)で表される。
【0029】
【数2】
【0030】
但し、式(2)では、rpが屈折率分布ファイバ25aの入射面における入射光の位置であり、rp´が屈折率分布ファイバ25aの入射面における入射光の角度であり、rsが屈折率分布ファイバ25aの出射面における出射光の位置であり、rs´が屈折率分布ファイバ25aの出射面における出射光の角度である。
【0031】
なお、入射光の位置及び出射光の位置は、屈折率分布ファイバ25aの光軸中心を基準とする。また、入射光の角度及び出射光の角度は、屈折率分布ファイバ25aの光軸中心に対するなす角とする。
【0032】
また、θは、下記の式(3)で表される。但し、式(3)では、Z0が屈折率分布ファイバ25aの光軸方向の長さである。
【0033】
【数3】
【0034】
ここで、被写体から屈折率分布ファイバ25aの入射面までの光学距離l0とすると、屈折率分布ファイバ25aの出射面からの同光学距離となる結像位置に、被写体の正立等倍像が結像される。このとき、屈折率分布ファイバ25aの入射面までの光学距離l0は、下記の式(4),式(5)で表される。
【0035】
【数4】
【0036】
【数5】
【0037】
正立等倍像とは、図1に示すように、被写体と同じ倍率、かつ、同じ向きの像を言う。なお、図1,図2では、被写体と正立等倍像との向きを矢印の向きで図示し、被写体と正立等倍像との大きさを矢印の長さで図示した。
【0038】
次に、図2を参照し、レンズアレイ25について、説明する。
ここで、前記したように、レンズアレイ25は、各屈折率分布ファイバ25aの入射光の最大角度が制限される。このため、被写体が屈折率分布ファイバ25aより大きい場合、各屈折率分布ファイバ25aは、被写体の一部が入射光として入射し、結像位置にその被写体の一部を結像させる。そして、レンズアレイ25は、結像位置において、各屈折率分布ファイバ25aが結像させる被写体の一部が互いに重なり合うことで、被写体全体の正立等倍像を出力する。なお、この原理は、例えば、刊行物「O plus E 1989年2月号(No.111)71-78頁」に記載されている。
【0039】
以上のように、本発明では、屈折率分布ファイバ25aを入射光の周期の1/2を超え1倍未満の長さ(π<θ<2πを満たす長さ)とし、この屈折率分布ファイバ25aを2次元に配置することによって、レンズアレイ25は、結像位置に被写体全体の正立等倍像を結像させることができる。
【0040】
(第1実施形態)
[ステレオ立体表示システムの概略]
以下、図3を参照し、本発明の第1実施形態に係るステレオ立体表示システムの概略について、説明する。図3に示すように、ステレオ立体表示システム(立体表示システム)1は、ユーザUsrに対して、両眼視差による立体画像を表示するものであり、右眼用カメラCrと、左眼用カメラClと、ステレオ立体表示装置(立体表示装置)2と、偏光メガネ3(図4参照)とを備える。なお、ステレオ立体表示システムが、請求項に記載の立体表示システムに相当する。
【0041】
右眼用カメラCrは、例えば、被写体Objを撮影して右眼用画像を生成し、この右眼用画像をステレオ立体表示装置2に出力するビデオカメラである。
左眼用カメラClは、例えば、被写体Objから右眼用カメラCrまでと同距離で、かつ、右眼用カメラCrから所定の間隔で配置されたビデオカメラである。そして、左眼用カメラClは、被写体Objを撮影して左眼用画像を生成し、この左眼用画像をステレオ立体表示装置2に出力する。つまり、右眼用画像と左眼用画像とは、被写体Objを互いに異なる位置(視点)で撮影した両眼視差画像である。
【0042】
ステレオ立体表示装置2は、右眼用カメラCr及び左眼用カメラClから入力された右眼用画像及び左眼用画像を、ユーザUsrに対して立体表示するものである。このステレオ立体表示装置2の詳細は、後記する。なお、ステレオ立体表示装置2が、請求項に記載の立体表示装置に相当する。
【0043】
ここで、ユーザUsrは、立体視を得るために、図4の偏光メガネ3を装着してステレオ立体表示装置2を見る。図4に示すように、偏光メガネ3は、右眼用レンズ31と左眼用レンズ33とがフレーム35にはめ込まれている。この右眼用レンズ31は、後記する右眼用画像のライン28Rと同じ偏光特性、例えば、垂直方向の偏光特性を有する。また、左眼用レンズ33は、左眼用画像のライン28Lと同じ偏光特性、例えば、水平方向の偏光特性を有する。この偏光メガネ3を装着することで、ユーザUsrは、右眼に右眼用画像だけが入射し、左眼に左眼用画像だけが入射し、その結果、被写体Objの立体視を得ることができる。
【0044】
[ステレオ立体表示装置の構成]
以下、図5を参照し、ステレオ立体表示装置2の構成について、説明する。
図5に示すように、ステレオ立体表示装置2は、制御手段20と、表示手段21と、透明部材23と、レンズアレイ25と、透明部材(第2の透明部材)27と、ライン型偏光板(偏光板)28とを備える。なお、図5、図7〜図10では、偏光特性をハッチングの方向で図示している。
【0045】
制御手段20は、例えば、右眼用カメラCr及び左眼用カメラClから右眼用画像と左眼用画像とが入力されると共に、右眼用画像を走査線21Rに出力し、左眼用画像を走査線21Lに出力する。また、制御手段20は、ノイズ除去等の画像処理を右眼用画像と左眼用画像とに施しても良い。なお、制御手段20は、立体表示に必要となる一般的な機能を備えれば良いので、説明を略記する。
【0046】
表示手段21は、図6に示すように、右眼用画像を出力する走査線21Rと、左眼用画像を出力する走査線21Lとが交互に形成された表示面21aを備える。ここで、表示手段21は、例えば、走査線21R,21Lが水平方向に形成される。また、表示手段21として、例えば、自発光型の液晶素子、プラズマ表示素子、又は、有機EL(Electro Luminescence)素子を用いることができる。
【0047】
透明部材23は、表示面21aに隣接する位置に設けられるものであり、例えば、表示面21aを覆うように、表示面21aに固定した平板状のカバーガラスである。また、透明部材23は、前記発明の原理で説明した理由により、その厚さを、式(5)の光学距離l0と同じ値とする。
【0048】
レンズアレイ25は、透明部材23に対向する位置に設けられると共に、屈折率分布ファイバ25aを2次元に配置したものである。ここで、レンズアレイ25は、光軸方向に同じ長さの屈折率分布ファイバ25aを、縦横に所定の本数ずつ、その両端面(入射面及び出射面)の位置を揃えるように固定(接着)して形成される。このとき、屈折率分布ファイバ25aは、前記発明の原理で説明した理由と共に、ステレオ立体表示装置2の厚み(光軸方向の長さ)を最小限するため、屈折率分布ファイバ25a内を伝わる入射光の周期の1/2を超え1倍未満の長さとする。
【0049】
また、レンズアレイ25は、例えば、屈折率分布ファイバ25aの入射面が透明部材23の平面に対面して密着し、かつ、屈折率分布ファイバ25aの出射面が透明部材27の平面に対面して密着するように固定される。
【0050】
ここで、レンズアレイ25は、表示面21aと同じ大きさか、又は、表示面21aより高く、かつ、表示面21aより幅広くなるように、屈折率分布ファイバ25aを配置することが好ましい。このように屈折率分布ファイバ25aを配置しないと、ステレオ立体表示装置2は、立体画像において、被写体Objの一部が欠けてしまう可能性がある。なお、レンズアレイ25は、屈折率分布ファイバ25aの個数が制限されるものではない。
【0051】
透明部材27は、レンズアレイ25とライン型偏光板28との間に設けられる。また、透明部材27は、例えば、式(5)の光学距離l0と同じ厚さとした、平板状のカバーガラスである。つまり、透明部材27は、ライン型偏光板28の側の平面が、レンズアレイ25の結像位置となる。これによって、ステレオ立体表示装置2を製造する際、ライン型偏光板28を透明部材27に固定するだけで、ライン型偏光板28が結像位置に配置されることになり、屈折率分布ファイバ25aの光軸方向(図5における水平方向)の位置決めを容易に行うことができる。なお、透明部材27が、請求項に記載の第2の透明部材に相当する。
【0052】
ライン型偏光板28は、レンズアレイ25に対向するように、屈折率分布ファイバ25aの結像位置に設けられる。ここで、図7に示すように、ライン型偏光板28は、走査線21Rに対応するように、垂直方向の偏光特性を有するライン28Rと、走査線21Lに対応するように水平方向の偏光特性を有するライン28Lとが交互に形成されている。また、ライン型偏光板28は、その大きさが表示手段21と同じ、つまり、走査線21Rとライン28Rとの長さが同じであり、走査線21Lとライン28Lとの長さが同じである。また、ライン型偏光板28は、例えば、ライン28R,28Lが水平方向に形成される。
【0053】
また、ライン型偏光板28は、走査線21Rとライン28Rとの幅、及び、走査線21Lとライン28Lとの幅も同じである。そして、ライン型偏光板28は、屈折率分布ファイバ25aの光軸方向において、走査線21Rとライン28Rとの位置が一致し、走査線21Lとライン28Lとの位置が一致するように、透明部材27に固定する。つまり、ステレオ立体表示装置2では、走査線21Lとライン28Lとが一対一の対応関係を有し、かつ、走査線21Rとライン28Rとが一対一の対応関係を有する。
【0054】
このライン型偏光板28は、例えば、前記した米国特許7385669号と同様のものであるため、詳細な説明を省略する。また、ライン型偏光板28が、請求項に記載の偏光板に相当する。
【0055】
以上のように、本発明の第1実施形態に係るステレオ立体表示装置2は、垂直方向の偏光特性を有する右眼用画像と、水平方向の偏光特性を有する左眼用画像とを表示することになる。そして、ユーザUsrが偏光メガネ3を装着することにより、ユーザUsrの右眼には右眼用画像だけが入射し、左眼には左眼用画像だけが入射する。これによって、ユーザUsrは、被写体の立体画像を見ることができる。このとき、ステレオ立体表示装置2は、レンズアレイ25によって、表示手段21の表示面に表示された右眼用画像及び左眼用画像を、正立等倍像として結像位置に結像させる。つまり、ステレオ立体表示装置2は、見かけ上、透明部材23,27の存在を無視できることになる。これによって、ステレオ立体表示装置2は、透明部材23,27におけるクロストークを防止でき、視域角を広くできる。
【0056】
なお、ステレオ立体表示装置2は、レンズアレイ25、透明部材23,27、及び、ライン型偏光板28を同じ大きさとし、これら部材を同じ大きさの固定枠(不図示)に配置しても良い。この場合、ステレオ立体表示装置2は、屈折率分布ファイバ25aの光軸に直交する方向(図5における垂直方向)の位置決めを容易に行うことができる。
【0057】
なお、ステレオ立体表示装置2は、透明部材27を備えることとして説明したが、これに限定されない。透明部材27を備えない場合、例えば、ステレオ立体表示装置2は、ライン型偏光板28が結像位置に配置されるように、前記した固定枠にライン型偏光板28を固定しても良い。
【0058】
なお、ステレオ立体表示装置2は、ライン28R,28L毎に偏光特性が直交していれば良く、その方向は特に制限されない。例えば、ステレオ立体表示装置2は、水平方向の偏光特性を有するライン28Rと、垂直方向の偏光特性を有するライン28Lとが交互に形成されたライン型偏光板28を備えても良い。また、例えば、右斜め45°方向の偏光特性を有するライン28Rと、左斜め45°方向の偏光特性を有するライン28Lとが交互に形成されたライン型偏光板28を備えても良い。なお、ステレオ立体表示装置2では、直線偏光でなく、時計回りの円偏光と反時計回りの円偏光とを用いることもできる。
【0059】
なお、ステレオ立体表示装置2は、ライン28R,28Lを形成する方向、及び、走査線21R,21Lを形成する方向が、特に制限されない。例えば、ステレオ立体表示装置2は、ライン28R,28L及び走査線21R,21Lを垂直方向に形成しても良い。
【0060】
(第2実施形態)
以下、図8を参照し、本発明の第2実施形態に係るステレオ立体表示装置について、第1実施形態と異なる点を説明する。図8に示すように、ステレオ立体表示装置2は、制御手段20と、表示手段21と、透明部材23と、レンズアレイ25と、透明部材(第2の透明部材)27と、ライン型偏光板(偏光板)28と、拡散板29とを備える。
【0061】
拡散板29は、透明部材27とライン型偏光板28とに挟まれるように、結像位置に固定する。ここで、拡散板29としては、例えば、レンズアレイ25からの出射光を拡散させる樹脂をコーティングしたフィルムがある。
【0062】
以上のように、本発明の第2実施形態に係るステレオ立体表示装置2は、第1実施形態と同様の効果を奏する。さらに、ステレオ立体表示装置2は、拡散板29が正立等倍像を拡散させるので、レンズアレイ25における出射光の角度を超える範囲まで(図1,図2参照)、視域角を広くすることができる。
【0063】
なお、走査線毎に右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示するステレオ立体表示装置について説明したが、本発明はこれに限定されない。以下、画素毎に右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示するステレオ立体表示装置について、第3実施形態及び第4実施形態として、それぞれ説明する。
【0064】
(第3実施形態)
以下、図9を参照し、本発明の第3実施形態に係るステレオ立体表示装置について、第1実施形態と異なる点を説明する。このステレオ立体表示装置2は、図7のライン型偏光板28の代わりに、図9の偏光板30を備える。
【0065】
表示手段(不図示)は、垂直方向で一列に配置された画素毎に、右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示する。言い換えると、表示手段において、ある画素が右眼用画像を表示する場合、その画素に水平方向で隣接する別の画素は、左眼用画像を表示する。
【0066】
偏光板30は、図9に示すように、右眼用画像を表示する画素と左眼用画像を表示する画素とに対応するように、偏光特性が交互に直交するように形成される。つまり、偏光板30は、水平方向の偏光特性を有する部分と垂直方向の偏光特性を有する部分とが、水平方向で交互に形成される。
【0067】
以上のように、本発明の第3実施形態に係るステレオ立体表示装置2は、第1実施形態と同様に、透明部材におけるクロストークを防止でき、視域角を広くできる。なお、第3実施形態では、透明部材やレンズアレイの構成は、第1実施形態と同様のため、説明を省略した。
【0068】
(第4実施形態)
以下、図10を参照し、本発明の第4実施形態に係るステレオ立体表示装置について、第1実施形態と異なる点を説明する。このステレオ立体表示装置2は、図7のライン型偏光板28の代わりに、図10の偏光板30を備える。
【0069】
表示手段(不図示)は、画素単位で、市松模様状に右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示する。言い換えると、表示手段において、ある画素が右眼用画像を表示する場合、その画素に隣接する別の画素は、左眼用画像を表示する。
【0070】
偏光板30は、図10に示すように、右眼用画像を表示する画素と左眼用画像を表示する画素とに対応するように、偏光特性が交互に直交するように形成される。つまり、偏光板30は、水平方向の偏光特性を有する部分と垂直方向の偏光特性を有する部分とが、市松模様状に交互に形成される。
【0071】
以上のように、本発明の第4実施形態に係るステレオ立体表示装置2は、第1実施形態と同様に、透明部材におけるクロストークを防止でき、視域角を広くできる。なお、第4実施形態では、透明部材やレンズアレイの構成は、第1実施形態と同様のため、説明を省略した。
【実施例】
【0072】
<比較例1>
以下、本発明の実施例及び比較例について、説明する。
以下、図12(b)を参照し、従来の立体表示装置9の視域角について、比較例1として説明する。この比較例1では、表示手段93は、ハイビジョン表示が可能な30インチの液晶素子である。また、比較例1では、透明部材97は、厚さDPが1mmのカバーガラスである。このとき、比較例1において、その視域角θは、下記式(6)で表される。但し、式(6)では、Lは、表示手段93の画素の大きさ(画素ピッチ)であり、37.3/1080=0.345mmとなる。なお、比較例1及び実施例1において、ユーザUsrの瞳孔径は、無視している。
【0073】
【数6】
【0074】
ここで、比較例1では、式(6)より、立体表示装置9の視域角θが約9.8°となっており、非常に狭いことがわかる。
【0075】
<実施例1>
一方、実施例1では、図8のステレオ立体表示装置2において、比較例1と同様の表示手段21、ライン型偏光板28を用いた。また、実施例1では、透明部材23,27として、厚さDPが1mmのカバーガラスを用いた。さらに、実施例1では、光軸方向の長さが1cmのレンズアレイ25を、透明部材23,27の間に配置した。また、透明部材27の観察者側表面に拡散板29を用いた。この場合、実施例1では、ステレオ立体表示装置2の視域角は拡散板29の指向性と同じになり、無指向性の場合にはθが90度であり、比較例1と比べて、十分な視域角を有する。
【符号の説明】
【0076】
1 ステレオ立体表示システム(立体表示システム)
2 ステレオ立体表示装置(立体表示装置)
20 制御手段
21 表示手段
21R,21L 走査線
23 透明部材
25 レンズアレイ
25a 屈折率分布レンズ(屈折率分布ファイバ)
27 透明部材(第2の透明部材)
28 ライン型偏光板(偏光板)
28R,28L ライン
29 拡散板
30 偏光板
3 偏光メガネ
9 立体表示装置
91 制御手段
93 表示手段
93R,93L 走査線
95 ライン型偏光板
95R,95L ライン
Cr 右眼用カメラ
Cl 左眼用カメラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、両眼視差による立体画像を表示する立体表示装置、及び、立体表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、走査線に対応するライン毎に偏光特性を交互に直交させた偏光板を表示面に配置して、立体画像を表示する発明が提案されている(例えば、特許文献1参照)。以下、ライン毎に偏光特性を交互に直交させた偏光板をライン型偏光板と呼ぶ。
【0003】
従来の立体表示装置9は、図11(a)に示すように、制御手段91と、表示手段93と、ライン型偏光板95とを備える。ここで、制御手段91は、図示を省略した撮影カメラから、互いに異なる視点で被写体を撮影した右眼用画像と左眼用画像とが入力される。そして、制御手段91は、この右眼用画像を走査線93Rに出力し、この左眼用画像を走査線93Lに出力する。
【0004】
ここで、図11(b)に示すように、表示手段93は、走査線93Rと、走査線93Lとが交互に形成されている。また、ライン型偏光板95は、走査線93Rに対応するように、垂直方向の偏光特性を有するライン95Rと、走査線93Lに対応するように水平方向のライン95Lとが交互に形成されている。なお、図11,図12では、ライン95R,95Lの偏光特性を、ハッチングの方向で図示している。
【0005】
従って、立体表示装置9では、走査線93Rから出力された右眼用画像がライン型偏光板95のライン95Rを通過するので、表示される右眼用画像は、垂直方向の偏光特性を有することになる。また、同様に、立体表示装置9では、走査線93Lから出力された発光した左眼用画像がライン型偏光板95のライン95Lを通過するので、表示される左眼用画像は、水平方向の偏光特性を有することになる。そして、図示を省略したユーザが、偏光メガネを装着して立体表示装置9を見ると、ユーザの右眼には右眼用画像だけが入射し、左眼には左眼用画像だけが入射する。このようにして、立体表示装置9は、ユーザに対して立体画像を表示できる(ステレオ立体表示)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許7385669号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、図11に示すように、前記した立体表示装置9では、表示手段93の表示面にライン型偏光板95を配置することが理想的である。しかし、現実的には、立体表示装置9は、図12(a)に示すように、表示手段93の表示面を保護するカバーガラス等の透明部材97が必要になる。このため、立体表示装置9では、表示手段93の表示面にライン型偏光板95を配置することが困難である。
【0008】
この場合、図12(b)に示すように、立体表示装置9では、θを超える範囲において、走査線93Lとライン95Lとが見かけ上ずれることになる。このため、立体表示装置9では、θを超える範囲において、走査線93Lから出力された左眼用画像を、ライン95Lではなくライン95Rを介して表示することになる。従って、立体表示装置9では、ユーザの左眼に入射すべき左眼用画像がユーザの右眼に入射するというクロストークが発生し、視域角が狭くなるという問題がある。なお、この問題は、立体表示装置9において、ユーザの左眼側でも同様に発生することは言うまでもない。
【0009】
そこで、本発明は、視域角が広い立体表示装置、及び、立体表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するため、本願第1発明に係る立体表示装置は、走査線毎に右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示する表示面を有する表示手段と、前記表示面に隣接する位置に設けた平板状の透明部材と、前記透明部材に対向する位置に設けたレンズアレイと、前記レンズアレイに対向する位置に設けた偏光板とを備える立体表示装置であって、前記レンズアレイは、前記表示面に表示された前記右眼用画像及び前記左眼用画像が入射光として入射し、当該入射光の周期の1/2を超え1倍未満の長さを有する屈折率分布レンズを2次元に配置し、前記偏光板は、前記屈折率分布レンズの出射面から所定の長さ離れた結像位置に配置して、前記走査線に対応するライン毎に偏光特性を交互に直交させ、前記透明部材は、その厚さが、前記屈折率分布レンズの出射面から前記結像位置までの光学距離と等しいことを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、立体表示装置は、レンズアレイによって、屈折率分布レンズの出射面から所定の長さ離れた結像位置に、右眼用画像及び左眼用画像の正立等倍像を結像させる。そして、立体表示装置は、偏光板によって、ライン毎に右眼用画像及び左眼用画像の正立等倍像を交互に出力する。つまり、立体表示装置は、ある走査線に表示された右眼用画像及び左眼用画像を、この走査線に対応するラインに結像させることができる。これによって、立体表示装置は、両眼視差による立体画像を表示すると共に、透明部材におけるクロストークを防止できる。
【0012】
また、前記した課題を解決するため、本願第2発明に係る立体表示装置は、画素毎に右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示する表示面を有する表示手段と、前記表示面に隣接する位置に設けた平板状の透明部材と、前記透明部材に対向する位置に設けたレンズアレイと、前記レンズアレイに対向する位置に設けた偏光板とを備える立体表示装置であって、前記レンズアレイは、前記表示面に表示された前記右眼用画像及び前記左眼用画像が入射光として入射し、当該入射光の周期の1/2を超え1倍未満の長さを有する屈折率分布レンズを2次元に配置し、前記偏光板は、前記屈折率分布レンズの出射面から所定の長さ離れた結像位置に配置して、前記右眼用画像を表示する画素及び前記左眼用画像を表示する画素に対応するように偏光特性を交互に直交させ、前記透明部材は、その厚さが、前記屈折率分布レンズの出射面から前記結像位置までの光学距離と等しいことを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、立体表示装置は、レンズアレイによって、屈折率分布レンズの出射面から所定の長さ離れた結像位置に、右眼用画像及び左眼用画像の正立等倍像を結像させる。そして、立体表示装置は、偏光板によって、画素毎に右眼用画像及び左眼用画像の正立等倍像を交互に出力する。これによって、立体表示装置は、両眼視差による立体画像を表示すると共に、透明部材におけるクロストークを防止できる。
【0014】
また、本願第3発明に係る立体表示装置は、前記偏光板における前記結像位置側の平面に配置され、前記結像位置に結像した前記右眼用画像及び前記左眼用画像の正立等倍像を拡散させる拡散板をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、立体表示装置は、拡散板が正立等倍像を拡散させるので、視域角をより広くできる。
【0016】
また、本願第4発明に係る立体表示装置は、前記レンズアレイと前記偏光板との間に、前記屈折率分布レンズの出射面から前記結像位置までの光学距離を同じくする厚さで、平板状に形成された第2の透明部材を備えることを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、立体表示装置は、第2の透明部材における何れかの平面が結像位置となっているため、偏光板の位置決めを容易にできる。
【0018】
また、前記した課題を解決するため、本願第5発明に係る立体表示システムは、本願第1発明又は本願第2発明に係る立体表示装置と、偏光特性が互いに直交する右眼用レンズと左眼用レンズとを有する偏光メガネと、を備えることを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、立体表示システムは、レンズアレイによって、屈折率分布レンズの出射面から所定の長さ離れた結像位置に、右眼用画像及び左眼用画像の正立等倍像を結像させる。そして、立体表示システムは、偏光板によって、ライン毎に右眼用画像及び左眼用画像の正立等倍像を交互に出力する。つまり、立体表示システムは、ある走査線に表示された右眼用画像及び左眼用画像を、この走査線に対応するラインに結像させることができる。
これによって、立体表示システムは、両眼視差による立体画像を表示すると共に、透明部材におけるクロストークを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本願第1,2,5発明によれば、透明部材におけるクロストークを防止でき、視域角を広くできる。
本願第3発明によれば、拡散板が正立等倍像を拡散させるので、視域角をより広くできる。
本願第4発明によれば、第2の透明部材における何れかの平面が結像位置となっているため、偏光板の位置決めを容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明における屈折率分布ファイバを説明する図である。
【図2】本発明におけるレンズアレイを説明する図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るステレオ立体表示システムの概略を示す図である。
【図4】図3の偏光メガネの外観を示す図である。
【図5】図3のステレオ立体表示装置の概略を示す図である。
【図6】図5の表示手段の正面図である。
【図7】図5のライン型偏光板の正面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るステレオ立体表示装置の概略を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るステレオ立体表示装置における偏光板の正面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るステレオ立体表示装置における偏光板の正面図である。
【図11】従来の立体表示装置の理想的な構成を説明する図であり、(a)は側面視したときの概念図であり、(b)は(a)の一点鎖線部分の拡大図である。
【図12】従来の立体表示装置の現実的な構成を説明する図であり、(a)は側面視したときの概念図であり、(b)は(a)の一点鎖線部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する手段及び同一の部材には同一の符号を付し、説明を省略した。なお、屈折率分布ファイバ25aは、屈折率分布レンズと呼ばれることもある。
【0023】
[本発明の原理]
以下、図1,図2を参照し、本発明の原理について、説明する。
本発明では、屈折率分布ファイバ25aは、径方向に屈折率が変化するものであり、このような屈折率を有する屈折率分布ファイバ25aを所定の長さに切断して使用している。具体的には、被写体の正立等倍像を結像する屈折率分布ファイバ25aを2次元に配列したレンズアレイ25を用いる。そして、屈折率分布ファイバ25aは、入射光がこの屈折率分布ファイバ25a内を伝わる周期の1/2を超え1倍未満の長さとする。つまり、屈折率分布ファイバ25a内を伝わる入射光の位相θがπ<θ<2πを満たすように、屈折率分布ファイバ25aの光軸方向の長さを調整する。なお、図1では、θを(3/2)π、つまり、入射光がこの屈折率分布ファイバ25a内を伝わる周期の3/4とした。
【0024】
ここで、屈折率分布ファイバ25aは、その屈折率が、下記の式(1)で表されるように、光軸中心で最も高く、周辺部になる程、低くなる。
【0025】
【数1】
【0026】
但し、式(1)では、rが屈折率分布ファイバ25aの半径であり、nが半径rにおける屈折率であり、n0が光軸中心における屈折率であり、Aが屈折の度合いを示す定数である。
【0027】
この屈折率分布ファイバ25aは、光軸中心に近づく程、屈折率が高くなるため、入射した光が蛇行し、特定の点(結像位置)で結像するようなレンズ効果を持つ。この原理は、1964年、D.MARCUSEらによって見出され、その詳細は、「The Bell System Technical Journal.(July,1964)」等に記載されている。
【0028】
ここで、屈折率分布ファイバ25aは、その光線マトリクス、つまり、入射光の位置及び角度と、出射光の位置及び角度とが、下記の式(2)で表される。
【0029】
【数2】
【0030】
但し、式(2)では、rpが屈折率分布ファイバ25aの入射面における入射光の位置であり、rp´が屈折率分布ファイバ25aの入射面における入射光の角度であり、rsが屈折率分布ファイバ25aの出射面における出射光の位置であり、rs´が屈折率分布ファイバ25aの出射面における出射光の角度である。
【0031】
なお、入射光の位置及び出射光の位置は、屈折率分布ファイバ25aの光軸中心を基準とする。また、入射光の角度及び出射光の角度は、屈折率分布ファイバ25aの光軸中心に対するなす角とする。
【0032】
また、θは、下記の式(3)で表される。但し、式(3)では、Z0が屈折率分布ファイバ25aの光軸方向の長さである。
【0033】
【数3】
【0034】
ここで、被写体から屈折率分布ファイバ25aの入射面までの光学距離l0とすると、屈折率分布ファイバ25aの出射面からの同光学距離となる結像位置に、被写体の正立等倍像が結像される。このとき、屈折率分布ファイバ25aの入射面までの光学距離l0は、下記の式(4),式(5)で表される。
【0035】
【数4】
【0036】
【数5】
【0037】
正立等倍像とは、図1に示すように、被写体と同じ倍率、かつ、同じ向きの像を言う。なお、図1,図2では、被写体と正立等倍像との向きを矢印の向きで図示し、被写体と正立等倍像との大きさを矢印の長さで図示した。
【0038】
次に、図2を参照し、レンズアレイ25について、説明する。
ここで、前記したように、レンズアレイ25は、各屈折率分布ファイバ25aの入射光の最大角度が制限される。このため、被写体が屈折率分布ファイバ25aより大きい場合、各屈折率分布ファイバ25aは、被写体の一部が入射光として入射し、結像位置にその被写体の一部を結像させる。そして、レンズアレイ25は、結像位置において、各屈折率分布ファイバ25aが結像させる被写体の一部が互いに重なり合うことで、被写体全体の正立等倍像を出力する。なお、この原理は、例えば、刊行物「O plus E 1989年2月号(No.111)71-78頁」に記載されている。
【0039】
以上のように、本発明では、屈折率分布ファイバ25aを入射光の周期の1/2を超え1倍未満の長さ(π<θ<2πを満たす長さ)とし、この屈折率分布ファイバ25aを2次元に配置することによって、レンズアレイ25は、結像位置に被写体全体の正立等倍像を結像させることができる。
【0040】
(第1実施形態)
[ステレオ立体表示システムの概略]
以下、図3を参照し、本発明の第1実施形態に係るステレオ立体表示システムの概略について、説明する。図3に示すように、ステレオ立体表示システム(立体表示システム)1は、ユーザUsrに対して、両眼視差による立体画像を表示するものであり、右眼用カメラCrと、左眼用カメラClと、ステレオ立体表示装置(立体表示装置)2と、偏光メガネ3(図4参照)とを備える。なお、ステレオ立体表示システムが、請求項に記載の立体表示システムに相当する。
【0041】
右眼用カメラCrは、例えば、被写体Objを撮影して右眼用画像を生成し、この右眼用画像をステレオ立体表示装置2に出力するビデオカメラである。
左眼用カメラClは、例えば、被写体Objから右眼用カメラCrまでと同距離で、かつ、右眼用カメラCrから所定の間隔で配置されたビデオカメラである。そして、左眼用カメラClは、被写体Objを撮影して左眼用画像を生成し、この左眼用画像をステレオ立体表示装置2に出力する。つまり、右眼用画像と左眼用画像とは、被写体Objを互いに異なる位置(視点)で撮影した両眼視差画像である。
【0042】
ステレオ立体表示装置2は、右眼用カメラCr及び左眼用カメラClから入力された右眼用画像及び左眼用画像を、ユーザUsrに対して立体表示するものである。このステレオ立体表示装置2の詳細は、後記する。なお、ステレオ立体表示装置2が、請求項に記載の立体表示装置に相当する。
【0043】
ここで、ユーザUsrは、立体視を得るために、図4の偏光メガネ3を装着してステレオ立体表示装置2を見る。図4に示すように、偏光メガネ3は、右眼用レンズ31と左眼用レンズ33とがフレーム35にはめ込まれている。この右眼用レンズ31は、後記する右眼用画像のライン28Rと同じ偏光特性、例えば、垂直方向の偏光特性を有する。また、左眼用レンズ33は、左眼用画像のライン28Lと同じ偏光特性、例えば、水平方向の偏光特性を有する。この偏光メガネ3を装着することで、ユーザUsrは、右眼に右眼用画像だけが入射し、左眼に左眼用画像だけが入射し、その結果、被写体Objの立体視を得ることができる。
【0044】
[ステレオ立体表示装置の構成]
以下、図5を参照し、ステレオ立体表示装置2の構成について、説明する。
図5に示すように、ステレオ立体表示装置2は、制御手段20と、表示手段21と、透明部材23と、レンズアレイ25と、透明部材(第2の透明部材)27と、ライン型偏光板(偏光板)28とを備える。なお、図5、図7〜図10では、偏光特性をハッチングの方向で図示している。
【0045】
制御手段20は、例えば、右眼用カメラCr及び左眼用カメラClから右眼用画像と左眼用画像とが入力されると共に、右眼用画像を走査線21Rに出力し、左眼用画像を走査線21Lに出力する。また、制御手段20は、ノイズ除去等の画像処理を右眼用画像と左眼用画像とに施しても良い。なお、制御手段20は、立体表示に必要となる一般的な機能を備えれば良いので、説明を略記する。
【0046】
表示手段21は、図6に示すように、右眼用画像を出力する走査線21Rと、左眼用画像を出力する走査線21Lとが交互に形成された表示面21aを備える。ここで、表示手段21は、例えば、走査線21R,21Lが水平方向に形成される。また、表示手段21として、例えば、自発光型の液晶素子、プラズマ表示素子、又は、有機EL(Electro Luminescence)素子を用いることができる。
【0047】
透明部材23は、表示面21aに隣接する位置に設けられるものであり、例えば、表示面21aを覆うように、表示面21aに固定した平板状のカバーガラスである。また、透明部材23は、前記発明の原理で説明した理由により、その厚さを、式(5)の光学距離l0と同じ値とする。
【0048】
レンズアレイ25は、透明部材23に対向する位置に設けられると共に、屈折率分布ファイバ25aを2次元に配置したものである。ここで、レンズアレイ25は、光軸方向に同じ長さの屈折率分布ファイバ25aを、縦横に所定の本数ずつ、その両端面(入射面及び出射面)の位置を揃えるように固定(接着)して形成される。このとき、屈折率分布ファイバ25aは、前記発明の原理で説明した理由と共に、ステレオ立体表示装置2の厚み(光軸方向の長さ)を最小限するため、屈折率分布ファイバ25a内を伝わる入射光の周期の1/2を超え1倍未満の長さとする。
【0049】
また、レンズアレイ25は、例えば、屈折率分布ファイバ25aの入射面が透明部材23の平面に対面して密着し、かつ、屈折率分布ファイバ25aの出射面が透明部材27の平面に対面して密着するように固定される。
【0050】
ここで、レンズアレイ25は、表示面21aと同じ大きさか、又は、表示面21aより高く、かつ、表示面21aより幅広くなるように、屈折率分布ファイバ25aを配置することが好ましい。このように屈折率分布ファイバ25aを配置しないと、ステレオ立体表示装置2は、立体画像において、被写体Objの一部が欠けてしまう可能性がある。なお、レンズアレイ25は、屈折率分布ファイバ25aの個数が制限されるものではない。
【0051】
透明部材27は、レンズアレイ25とライン型偏光板28との間に設けられる。また、透明部材27は、例えば、式(5)の光学距離l0と同じ厚さとした、平板状のカバーガラスである。つまり、透明部材27は、ライン型偏光板28の側の平面が、レンズアレイ25の結像位置となる。これによって、ステレオ立体表示装置2を製造する際、ライン型偏光板28を透明部材27に固定するだけで、ライン型偏光板28が結像位置に配置されることになり、屈折率分布ファイバ25aの光軸方向(図5における水平方向)の位置決めを容易に行うことができる。なお、透明部材27が、請求項に記載の第2の透明部材に相当する。
【0052】
ライン型偏光板28は、レンズアレイ25に対向するように、屈折率分布ファイバ25aの結像位置に設けられる。ここで、図7に示すように、ライン型偏光板28は、走査線21Rに対応するように、垂直方向の偏光特性を有するライン28Rと、走査線21Lに対応するように水平方向の偏光特性を有するライン28Lとが交互に形成されている。また、ライン型偏光板28は、その大きさが表示手段21と同じ、つまり、走査線21Rとライン28Rとの長さが同じであり、走査線21Lとライン28Lとの長さが同じである。また、ライン型偏光板28は、例えば、ライン28R,28Lが水平方向に形成される。
【0053】
また、ライン型偏光板28は、走査線21Rとライン28Rとの幅、及び、走査線21Lとライン28Lとの幅も同じである。そして、ライン型偏光板28は、屈折率分布ファイバ25aの光軸方向において、走査線21Rとライン28Rとの位置が一致し、走査線21Lとライン28Lとの位置が一致するように、透明部材27に固定する。つまり、ステレオ立体表示装置2では、走査線21Lとライン28Lとが一対一の対応関係を有し、かつ、走査線21Rとライン28Rとが一対一の対応関係を有する。
【0054】
このライン型偏光板28は、例えば、前記した米国特許7385669号と同様のものであるため、詳細な説明を省略する。また、ライン型偏光板28が、請求項に記載の偏光板に相当する。
【0055】
以上のように、本発明の第1実施形態に係るステレオ立体表示装置2は、垂直方向の偏光特性を有する右眼用画像と、水平方向の偏光特性を有する左眼用画像とを表示することになる。そして、ユーザUsrが偏光メガネ3を装着することにより、ユーザUsrの右眼には右眼用画像だけが入射し、左眼には左眼用画像だけが入射する。これによって、ユーザUsrは、被写体の立体画像を見ることができる。このとき、ステレオ立体表示装置2は、レンズアレイ25によって、表示手段21の表示面に表示された右眼用画像及び左眼用画像を、正立等倍像として結像位置に結像させる。つまり、ステレオ立体表示装置2は、見かけ上、透明部材23,27の存在を無視できることになる。これによって、ステレオ立体表示装置2は、透明部材23,27におけるクロストークを防止でき、視域角を広くできる。
【0056】
なお、ステレオ立体表示装置2は、レンズアレイ25、透明部材23,27、及び、ライン型偏光板28を同じ大きさとし、これら部材を同じ大きさの固定枠(不図示)に配置しても良い。この場合、ステレオ立体表示装置2は、屈折率分布ファイバ25aの光軸に直交する方向(図5における垂直方向)の位置決めを容易に行うことができる。
【0057】
なお、ステレオ立体表示装置2は、透明部材27を備えることとして説明したが、これに限定されない。透明部材27を備えない場合、例えば、ステレオ立体表示装置2は、ライン型偏光板28が結像位置に配置されるように、前記した固定枠にライン型偏光板28を固定しても良い。
【0058】
なお、ステレオ立体表示装置2は、ライン28R,28L毎に偏光特性が直交していれば良く、その方向は特に制限されない。例えば、ステレオ立体表示装置2は、水平方向の偏光特性を有するライン28Rと、垂直方向の偏光特性を有するライン28Lとが交互に形成されたライン型偏光板28を備えても良い。また、例えば、右斜め45°方向の偏光特性を有するライン28Rと、左斜め45°方向の偏光特性を有するライン28Lとが交互に形成されたライン型偏光板28を備えても良い。なお、ステレオ立体表示装置2では、直線偏光でなく、時計回りの円偏光と反時計回りの円偏光とを用いることもできる。
【0059】
なお、ステレオ立体表示装置2は、ライン28R,28Lを形成する方向、及び、走査線21R,21Lを形成する方向が、特に制限されない。例えば、ステレオ立体表示装置2は、ライン28R,28L及び走査線21R,21Lを垂直方向に形成しても良い。
【0060】
(第2実施形態)
以下、図8を参照し、本発明の第2実施形態に係るステレオ立体表示装置について、第1実施形態と異なる点を説明する。図8に示すように、ステレオ立体表示装置2は、制御手段20と、表示手段21と、透明部材23と、レンズアレイ25と、透明部材(第2の透明部材)27と、ライン型偏光板(偏光板)28と、拡散板29とを備える。
【0061】
拡散板29は、透明部材27とライン型偏光板28とに挟まれるように、結像位置に固定する。ここで、拡散板29としては、例えば、レンズアレイ25からの出射光を拡散させる樹脂をコーティングしたフィルムがある。
【0062】
以上のように、本発明の第2実施形態に係るステレオ立体表示装置2は、第1実施形態と同様の効果を奏する。さらに、ステレオ立体表示装置2は、拡散板29が正立等倍像を拡散させるので、レンズアレイ25における出射光の角度を超える範囲まで(図1,図2参照)、視域角を広くすることができる。
【0063】
なお、走査線毎に右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示するステレオ立体表示装置について説明したが、本発明はこれに限定されない。以下、画素毎に右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示するステレオ立体表示装置について、第3実施形態及び第4実施形態として、それぞれ説明する。
【0064】
(第3実施形態)
以下、図9を参照し、本発明の第3実施形態に係るステレオ立体表示装置について、第1実施形態と異なる点を説明する。このステレオ立体表示装置2は、図7のライン型偏光板28の代わりに、図9の偏光板30を備える。
【0065】
表示手段(不図示)は、垂直方向で一列に配置された画素毎に、右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示する。言い換えると、表示手段において、ある画素が右眼用画像を表示する場合、その画素に水平方向で隣接する別の画素は、左眼用画像を表示する。
【0066】
偏光板30は、図9に示すように、右眼用画像を表示する画素と左眼用画像を表示する画素とに対応するように、偏光特性が交互に直交するように形成される。つまり、偏光板30は、水平方向の偏光特性を有する部分と垂直方向の偏光特性を有する部分とが、水平方向で交互に形成される。
【0067】
以上のように、本発明の第3実施形態に係るステレオ立体表示装置2は、第1実施形態と同様に、透明部材におけるクロストークを防止でき、視域角を広くできる。なお、第3実施形態では、透明部材やレンズアレイの構成は、第1実施形態と同様のため、説明を省略した。
【0068】
(第4実施形態)
以下、図10を参照し、本発明の第4実施形態に係るステレオ立体表示装置について、第1実施形態と異なる点を説明する。このステレオ立体表示装置2は、図7のライン型偏光板28の代わりに、図10の偏光板30を備える。
【0069】
表示手段(不図示)は、画素単位で、市松模様状に右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示する。言い換えると、表示手段において、ある画素が右眼用画像を表示する場合、その画素に隣接する別の画素は、左眼用画像を表示する。
【0070】
偏光板30は、図10に示すように、右眼用画像を表示する画素と左眼用画像を表示する画素とに対応するように、偏光特性が交互に直交するように形成される。つまり、偏光板30は、水平方向の偏光特性を有する部分と垂直方向の偏光特性を有する部分とが、市松模様状に交互に形成される。
【0071】
以上のように、本発明の第4実施形態に係るステレオ立体表示装置2は、第1実施形態と同様に、透明部材におけるクロストークを防止でき、視域角を広くできる。なお、第4実施形態では、透明部材やレンズアレイの構成は、第1実施形態と同様のため、説明を省略した。
【実施例】
【0072】
<比較例1>
以下、本発明の実施例及び比較例について、説明する。
以下、図12(b)を参照し、従来の立体表示装置9の視域角について、比較例1として説明する。この比較例1では、表示手段93は、ハイビジョン表示が可能な30インチの液晶素子である。また、比較例1では、透明部材97は、厚さDPが1mmのカバーガラスである。このとき、比較例1において、その視域角θは、下記式(6)で表される。但し、式(6)では、Lは、表示手段93の画素の大きさ(画素ピッチ)であり、37.3/1080=0.345mmとなる。なお、比較例1及び実施例1において、ユーザUsrの瞳孔径は、無視している。
【0073】
【数6】
【0074】
ここで、比較例1では、式(6)より、立体表示装置9の視域角θが約9.8°となっており、非常に狭いことがわかる。
【0075】
<実施例1>
一方、実施例1では、図8のステレオ立体表示装置2において、比較例1と同様の表示手段21、ライン型偏光板28を用いた。また、実施例1では、透明部材23,27として、厚さDPが1mmのカバーガラスを用いた。さらに、実施例1では、光軸方向の長さが1cmのレンズアレイ25を、透明部材23,27の間に配置した。また、透明部材27の観察者側表面に拡散板29を用いた。この場合、実施例1では、ステレオ立体表示装置2の視域角は拡散板29の指向性と同じになり、無指向性の場合にはθが90度であり、比較例1と比べて、十分な視域角を有する。
【符号の説明】
【0076】
1 ステレオ立体表示システム(立体表示システム)
2 ステレオ立体表示装置(立体表示装置)
20 制御手段
21 表示手段
21R,21L 走査線
23 透明部材
25 レンズアレイ
25a 屈折率分布レンズ(屈折率分布ファイバ)
27 透明部材(第2の透明部材)
28 ライン型偏光板(偏光板)
28R,28L ライン
29 拡散板
30 偏光板
3 偏光メガネ
9 立体表示装置
91 制御手段
93 表示手段
93R,93L 走査線
95 ライン型偏光板
95R,95L ライン
Cr 右眼用カメラ
Cl 左眼用カメラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査線毎に右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示する表示面を有する表示手段と、前記表示面に隣接する位置に設けた平板状の透明部材と、前記透明部材に対向する位置に設けたレンズアレイと、前記レンズアレイに対向する位置に設けた偏光板とを備える立体表示装置であって、
前記レンズアレイは、前記表示面に表示された前記右眼用画像及び前記左眼用画像が入射光として入射し、当該入射光の周期の1/2を超え1倍未満の長さを有する屈折率分布レンズを2次元に配置し、
前記偏光板は、前記屈折率分布レンズの出射面から所定の長さ離れた結像位置に配置して、前記走査線に対応するライン毎に偏光特性を交互に直交させ、
前記透明部材は、その厚さが、前記屈折率分布レンズの出射面から前記結像位置までの光学距離と等しいことを特徴とする立体表示装置。
【請求項2】
画素毎に右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示する表示面を有する表示手段と、前記表示面に隣接する位置に設けた平板状の透明部材と、前記透明部材に対向する位置に設けたレンズアレイと、前記レンズアレイに対向する位置に設けた偏光板とを備える立体表示装置であって、
前記レンズアレイは、前記表示面に表示された前記右眼用画像及び前記左眼用画像が入射光として入射し、当該入射光の周期の1/2を超え1倍未満の長さを有する屈折率分布レンズを2次元に配置し、
前記偏光板は、前記屈折率分布レンズの出射面から所定の長さ離れた結像位置に配置して、前記右眼用画像を表示する画素及び前記左眼用画像を表示する画素に対応するように偏光特性を交互に直交させ、
前記透明部材は、その厚さが、前記屈折率分布レンズの出射面から前記結像位置までの光学距離と等しいことを特徴とする立体表示装置。
【請求項3】
前記偏光板における前記結像位置側の平面に配置され、前記結像位置に結像した前記右眼用画像及び前記左眼用画像の正立等倍像を拡散させる拡散板をさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の立体表示装置。
【請求項4】
前記レンズアレイと前記偏光板との間に、前記屈折率分布レンズの出射面から前記結像位置までの光学距離を同じくする厚さで、平板状に形成された第2の透明部材を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の立体表示装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の立体表示装置と、
偏光特性が互いに直交する右眼用レンズと左眼用レンズとを有する偏光メガネと、
を備えることを特徴とする立体表示システム。
【請求項1】
走査線毎に右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示する表示面を有する表示手段と、前記表示面に隣接する位置に設けた平板状の透明部材と、前記透明部材に対向する位置に設けたレンズアレイと、前記レンズアレイに対向する位置に設けた偏光板とを備える立体表示装置であって、
前記レンズアレイは、前記表示面に表示された前記右眼用画像及び前記左眼用画像が入射光として入射し、当該入射光の周期の1/2を超え1倍未満の長さを有する屈折率分布レンズを2次元に配置し、
前記偏光板は、前記屈折率分布レンズの出射面から所定の長さ離れた結像位置に配置して、前記走査線に対応するライン毎に偏光特性を交互に直交させ、
前記透明部材は、その厚さが、前記屈折率分布レンズの出射面から前記結像位置までの光学距離と等しいことを特徴とする立体表示装置。
【請求項2】
画素毎に右眼用画像及び左眼用画像を交互に表示する表示面を有する表示手段と、前記表示面に隣接する位置に設けた平板状の透明部材と、前記透明部材に対向する位置に設けたレンズアレイと、前記レンズアレイに対向する位置に設けた偏光板とを備える立体表示装置であって、
前記レンズアレイは、前記表示面に表示された前記右眼用画像及び前記左眼用画像が入射光として入射し、当該入射光の周期の1/2を超え1倍未満の長さを有する屈折率分布レンズを2次元に配置し、
前記偏光板は、前記屈折率分布レンズの出射面から所定の長さ離れた結像位置に配置して、前記右眼用画像を表示する画素及び前記左眼用画像を表示する画素に対応するように偏光特性を交互に直交させ、
前記透明部材は、その厚さが、前記屈折率分布レンズの出射面から前記結像位置までの光学距離と等しいことを特徴とする立体表示装置。
【請求項3】
前記偏光板における前記結像位置側の平面に配置され、前記結像位置に結像した前記右眼用画像及び前記左眼用画像の正立等倍像を拡散させる拡散板をさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の立体表示装置。
【請求項4】
前記レンズアレイと前記偏光板との間に、前記屈折率分布レンズの出射面から前記結像位置までの光学距離を同じくする厚さで、平板状に形成された第2の透明部材を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の立体表示装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の立体表示装置と、
偏光特性が互いに直交する右眼用レンズと左眼用レンズとを有する偏光メガネと、
を備えることを特徴とする立体表示システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−118065(P2011−118065A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274021(P2009−274021)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【Fターム(参考)】
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