説明

立体表示装置

【課題】バリア液晶パネル駆動用ドライバと表示パネル駆動用のドライバを1チップ化した立体表示装置において、バリア液晶パネル駆動用の信号切り替え時の突入電流を抑制し、表示パネルに表示される画像の表示品質を向上させる。
【解決手段】表示パネルと、前記表示パネル上に配置されるバリア液晶パネルと、前記表示パネルと前記バリア液晶パネルとを駆動する駆動回路とを有する立体表示装置であって、前記表示パネルの1フレーム周波数と、前記バリア液晶パネルの交流化周波数とは異なっており、前記バリア液晶パネルは、前記駆動回路から入力される駆動電圧により駆動され、前記駆動回路は、前記駆動電圧を出力するインバータ回路を有し、前記インバータ回路のp型トランジスタとn型トランジスタとを独立に制御し、前記駆動電圧のHighレベルからLowレベル、あるいは、LowレベルからHighレベルへの切り替わり時に、前記p型トランジスタと前記n型トランジスタとが共にオフとなる期間を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体表示装置に係わり、特に、パララックスバリア方式の立体表示装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3次元画像を表示する立体表示装置として様々な方式が提案されている。その中に良く利用されているものは、両眼視差を利用する「2眼式」と呼ばれるものである。この「2眼式」では、両眼視差を持つ左眼用画像と右眼用画像とを用意し、左眼用画像を左眼で、右眼用画像を右眼で見ることにより、被写体の3次元立体像を観察することができる。この「2眼式」の立体表示装置の代表的なものとして、パララックスバリア方式の立体表示装置が知られている。(下記、特許文献1参照)
図12は、パララックスバリア方式の立体表示装置を説明するための概念図である。
図12に示すように、パララックスバリア方式の立体表示装置では、表示パネル60の前面にパララックスバリア(以下、単にバリアという)50が配置される。バリア50には、光が遮蔽される部分(図12で黒色の部分)と、光が透過する部分(図12の黒色以外の部分)とが交互に形成されている。また、左眼用画像(L)と右眼用画像(R)とが、水平方向に交互に並んだ形で配置された画像を表示パネル60に表示する。
立体視可能な位置において、観察者が、バリア50を介して表示パネル60を観察すると、表示パネル60上の左眼用画像(L)と右眼用画像(R)とはバリア50によって分離され、左眼用画像(L)は左眼30だけに、右眼用画像(R)は右眼40だけに届くので、被写体の3次元立体像を観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−72269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の図12に示すパララックスバリア方式の立体表示装置(以下、単に、3D液晶ディスプレイという)は、表示パネル60として、例えば、アクティブマトリクス型の液晶表示装置(以下、メイン液晶パネルという)を使用し、バリア50として、単純マトリックス型の液晶表示装置(以下、バリア液晶パネルという)を使用することで実現することができる。
このような3D液晶ディスプレイにおいて、低コスト化を実現する上で、バリア液晶パネル駆動用ドライバと、メイン液晶パネル駆動用のドライバを1チップ化することが有効である。
しかしながら、バリア液晶パネル駆動用ドライバと、メイン液晶パネル駆動用ドライバを1チップ化すると、バリア液晶パネル駆動用の信号切り替え時に突入電流が流れ、電源ノイズとなることにより、メイン液晶パネルの表示画面上にちらつき等の表示異常が生じるという問題点があった。
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、バリア液晶パネル駆動用ドライバと表示パネル駆動用のドライバを1チップ化した立体表示装置において、バリア液晶パネル駆動用の信号切り替え時の突入電流を抑制し、表示パネルに表示される画像の表示品質を向上させることが可能となる技術を提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
(1)表示パネルと、前記表示パネル上に配置されるバリア液晶パネルと、前記表示パネルと前記バリア液晶パネルとを駆動する駆動回路とを有する立体表示装置であって、前記表示パネルの1フレーム周波数と、前記バリア液晶パネルの交流化周波数とは異なっており、前記バリア液晶パネルは、前記駆動回路から入力される駆動電圧により駆動され、前記駆動回路は、前記駆動電圧を出力するインバータ回路を有し、前記インバータ回路のp型トランジスタとn型トランジスタとを独立に制御し、前記駆動電圧のHighレベルからLowレベル、あるいは、LowレベルからHighレベルへの切り替わり時に、前記p型トランジスタと前記n型トランジスタとが共にオフとなる期間を有する。
(2)(1)において、前記駆動電圧のHighレベルからLowレベルへの切り替わり時に、前記n型トランジスタがオンとなる前に、先に前記p型トランジスタがオフとなり、前記駆動電圧のLowレベルからHighレベルへの切り替わり時に、前記p型トランジスタがオンとなる前に、先に前記n型トランジスタがオフとなる。
(3)(1)において、前記インバータ回路のp型トランジスタおよび前記n型トランジスタは、オンとなる期間が、オフの期間よりも短い。
【0006】
(4)(1)前記バリア液晶パネルは、単純マトリクス型の液晶表示パネルであり、前記バリア液晶パネルは、複数のX電極と、前記複数のX電極とそれぞれ交差する複数のY電極とを有し、前記複数のX電極は、それぞれ交互に配置される複数の第1のX電極と複数の第2のX電極とで構成され、前記複数のY電極は、それぞれ交互に配置される複数の第1のY電極と複数の第2のY電極とで構成され、前記複数の第1のX電極、前記複数の第1のY電極、および前記複数の第2のY電極に、前記駆動電圧が入力され、前記複数の第2のX電極に、前記駆動電圧に対して逆相の反転駆動電圧が入力される。
(5)(4)において、前記p型トランジスタと前記n型トランジスタとが共にオフとなる期間内に、前記複数の第2のX電極と、前記複数のY電極とを短絡させる。
(6)(1)において、前記バリア液晶パネルは、単純マトリクス型の液晶表示パネルであり、前記バリア液晶パネルは、複数のX電極と、前記複数のX電極とそれぞれ交差する複数のY電極とを有し、前記複数のX電極は、それぞれ交互に配置される複数の第1のX電極と複数の第2のX電極とで構成され、前記複数のY電極は、それぞれ交互に配置される複数の第1のY電極と複数の第2のY電極とで構成され、前記複数の第1のX電極、前記複数の第2のX電極、および前記複数の第1のY電極に、前記駆動電圧が入力され、前記複数の第2のY電極に、前記駆動電圧に対して逆相の反転駆動電圧が入力される。
(7)(6)において、前記p型トランジスタと前記n型トランジスタとが共にオフとなる期間内に、前記複数のX電極と、前記複数の第2のY電極とを短絡させる。
(8)(4)または(6)において、前記p型トランジスタと前記n型トランジスタとが共にオフとなる期間内に、前記複数のX電極と、前記複数のY電極とを短絡させる。
(9)(1)において、前記インバータ回路は、前記p型トランジスタの第1電極に接続される第1抵抗素子と、前記n型トランジスタの第1電極に接続される第2抵抗素子とを有する。
(10)(1)において、前記バリア液晶パネルの交流化周波数は、前記表示パネルの1フレーム周波数よりも低い。
【発明の効果】
【0007】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
本発明によれば、バリア液晶パネル駆動用ドライバと表示パネル駆動用のドライバを1チップ化した立体表示装置において、バリア液晶パネル駆動用の信号切り替え時の突入電流を抑制し、表示パネルに表示される画像の表示品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1のパララックスバリア方式の立体表示装置を説明するための概念図である。
【図2】図1に示すアクティブマトリクス方式の液晶表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す単純マトリクス方式のバリア液晶表示パネルの概略断面構造を示す断面図である。
【図4】図1に示す単純マトリクス方式のバリア液晶表示パネル20のX電極とY電極を説明するための図である。
【図5】単純マトリクス方式のバリア液晶表示パネルに表示されるバリアパターンを示す図である。
【図6】図5に示すVX1、VX2、VY1、VY2の電圧波形を示す図である。
【図7A】本発明の実施例1のパララックスバリア方式の立体表示装置における、駆動電圧を出力するインバータの回路構成を示す図である。
【図7B】図7Aのインバータに入力される制御信号の電圧波形と、図7Aのインバータから出力される駆動電圧の電圧波形を示す図である。
【図7C】図7Aのインバータに入力される制御信号の電圧波形と、図7Aのインバータから出力される反転駆動電圧の電圧波形を示す図である。
【図8】図7B、図7Cに示すノンオーバーラップ期間中に、複数のX電極と複数のY電極との中で、黒表示となっている電極同士を短絡させることによる効果を説明するための図である。
【図9】図7B、図7Cに示すノンオーバーラップ期間中に、複数のX電極と複数のY電極との中で、黒表示となっている電極同士を短絡させるための回路構成を示す回路図である。
【図10】本発明の実施例2のパララックスバリア方式の立体表示装置における、駆動電圧を出力するインバータを説明するための図であり、同図(a)は、インバータの回路構成を、同図(b)は、インバータの出力電圧の電圧波形と、突入電流の電流波形を示す図である。
【図11】従来のパララックスバリア方式の立体表示装置における、駆動電圧を出力するインバータを説明するための図であり、同図(a)は、インバータの回路構成を、同図(b)は、インバータの出力電圧の電圧波形と、突入電流の電流波形を示す図である。
【図12】パララックスバリア方式の立体表示装置を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施例は、本発明の特許請求の範囲の解釈を限定するためのものではない。
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1のパララックスバリア方式の立体表示装置を説明するための概念図である。
本実施例のパララックスバリア方式の立体表示装置は、アクティブマトリクス方式の液晶表示装置10と、液晶表示装置10の前面に配置される単純マトリクス方式のバリア液晶表示パネル20と、液晶表示装置10とバリア液晶表示パネル20とを駆動する液晶駆動回路(ドライバ)150を有する。
【0010】
図2は、図1に示すアクティブマトリクス方式の液晶表示装置10の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すアクティブマトリクス方式の液晶表示装置10は、アクティブマトリクス方式の液晶表示パネル(LCD)と、液晶駆動回路150と、フレキシブルプリント基板72と、バックライト700から構成される。
液晶表示パネル(LCD)の一辺には、液晶駆動回路150が設けられており、この液晶駆動回路150により液晶表示パネル(LCD)と、バリア液晶表示パネル20に各種信号が供給される。液晶駆動回路150には外部からの信号を供給するためにフレキシブルプリント基板72が電気的に接続されている。
液晶表示パネル(LCD)は、薄膜トランジスタ610、画素電極611、対向電極(コモン電極)615等が形成される基板620(以下、TFT基板とも呼ぶ)と、カラーフィルタ等が形成される基板630(以下、フィルタ基板とも呼ぶ)とを、所定の間隙を隔てて重ね合わせ、該両基板間の周縁部近傍に枠状に設けたシール材(図示せず)により、両基板を貼り合わせると共に、シール材の内側に液晶組成物を封入、封止し、さらに、両基板の外側に偏光板を貼り付け、TFT基板620にフレキシブルプリント基板72を接続して構成される。
なお、本実施例は、対向電極615がTFT基板620に設けられる所謂横電界方式の液晶表示パネルにも、対向電極615がフィルタ基板630に設けられる所謂縦電界方式の液晶表示パネルにも同様に適用される。
【0011】
図2においては、図中x方向に延在しy方向に並設される走査線(ゲート線とも呼ぶ)621と、y方向に延在しx方向に並設される映像線(ドレイン線とも呼ぶ)622とが設けられており、走査線621と映像線622とで囲まれる領域に画素部608が形成されている。また、図2では、図中x方向に延在しy方向に並設される対向電極線625も設けられている。
なお、液晶表示パネルLCDは多数の画素部608をマトリクス状に備えているが、図を解り易くするため、図2では画素部608を1つだけ示している。マトリクス状に配置された画素部608は表示領域609を形成し、各画素部608が表示画像の画素の役割をはたし、表示領域609に画像を表示する。
各画素部608の薄膜トランジスタ610は、ソースが画素電極611に接続され、ドレインが映像線622に接続され、ゲートが走査線621に接続される。この薄膜トランジスタ610は、画素電極611に表示電圧(階調電圧)を供給するためのスイッチとして機能する。
なお、ソース、ドレインの呼び方は、バイアスの関係で逆になることもあるが、ここでは、映像線622に接続される方をドレインと称する。また、画素電極611と対向電極615とは容量(液晶容量)を形成している。
液晶駆動回路150は、TFT基板620を構成する透明な絶縁基板(ガラス基板、樹脂基板等)に配置され、液晶駆動回路150は走査線621と映像線622と対向電極線625に接続している。
【0012】
TFT基板620には、フレキシブルプリント基板72が接続されている。また、フレキシブルプリント基板72にはコネクタ640が設けられている。コネクタ640は外部信号線と接続され、外部からの信号がコネクタ640に入力される。コネクタ640と液晶駆動回路150の間には配線631が設けられており、外部からの信号は液晶駆動回路150に入力される。
また、フレキシブルプリント基板72はバックライト700に定電圧を供給している。バックライト700は液晶表示パネル(LCD)の光源として使用される。なお、バックライト700は液晶表示パネルLCDの裏面または前面に設けられるが、図1では図を簡潔にするため、液晶表示パネルLCDと並べて表示している。
また、液晶駆動回路150は画素が表示すべき階調に対応する階調電圧を映像線622に出力する。薄膜トランジスタ610がオン状態(導通)になると、映像線622から階調電圧(映像信号)が画素電極611に供給される。その後、薄膜トランジスタ610がオフ状態となることで画素が表示すべき映像に基づく階調電圧が画素電極611に保持される。
対向電極615には、対向電極線625を介して一定の対向電極電圧が印加されており、液晶表示パネル(LCD)は画素電極611と対向電極615との間の電位差により、間に挟まれた液晶分子の配向方向を変化させ、光の透過率または反射率を変化させることで画像を表示する。
【0013】
図3は、図1に示す単純マトリクス方式のバリア液晶表示パネル20の概略断面構造を示す断面図である。
図3に示すように、単純マトリクス方式のバリア液晶表示パネル20は、複数のX電極(DEX)と、配向膜(AR11)が形成される基板(SUB11)と、複数のY電極(DEY)と、配向膜(AR12)が形成される基板(SUB12)とを、所定の間隙を隔てて重ね合わせ、該両基板間の周縁部近傍に枠状に設けたシール材(SL)により、両基板を貼り合わせると共に、シール材の内側に液晶(LCS)を封入、封止し、さらに、両基板の外側に偏光板(POL11,POL12)を貼り付けて構成される。
複数のX電極(DEX)と、複数のY電極(DEY)とは、それぞれ帯状の電極で形成され、互いに交差するよう配置される。
図4は、図1に示す単純マトリクス方式のバリア液晶表示パネル20のX電極とY電極を説明するための図である。
図4に示すように、複数のX電極(DEX)は、短冊状に、それぞれ交互に配置される複数の第1のX電極(DEXA)と複数の第2のX電極(DEXB)とで構成され、複数のY電極(DEY)は、短冊状に、それぞれ交互に配置される複数の第1のY電極(DEYA)と複数の第2のY電極(DEYB)とで構成される。
複数の第1のX電極(DEXA)は、例えば、バリア液晶表示パネル20の一方の短辺側において共通に接続され、それぞれの第1のX電極(DEXA)には、VX1の駆動電圧が入力される。また、複数の第2のX電極(DEXB)は、バリア液晶表示パネル20の他方の短辺側において共通に接続され、それぞれの第2のX電極(DEXB)には、VX2の駆動電圧が入力される。
同様に、複数の第1のY電極(DEYA)は、例えば、バリア液晶表示パネル20の一方の長辺側において共通に接続され、それぞれの第1のY電極(DEYA)には、VY1の駆動電圧が入力される。また、複数の第2のY電極(DEYB)は、バリア液晶表示パネル20の他方の長辺側において共通に接続され、それぞれの第2のY電極(DEYB)には、VY2の駆動電圧が入力される。
【0014】
図4に示すように、複数の第1のX電極(DEXA)には、VX1の駆動電圧として、COMの電圧が入力され、同様に、複数の第1のY電極(DEYA)にも、VY1の駆動電圧として、COMの電圧が入力される。
さらに、複数の第2のX電極(DEXB)には、VX2の電圧として、スイッチ回路(SW1)により、COMの電圧、あるいは、COMの電圧と逆相のバーCOMの電圧が入力され、複数の第2のY電極(DEYB)には、VY2の電圧として、スイッチ回路(SW2)により、COMの電圧、あるいは、COMの電圧と逆相のバーCOMの電圧が入力される。
図5に、単純マトリクス方式のバリア液晶表示パネル20に表示されるバリアパターンを示す。なお、図5は、バリア液晶表示パネル20が、TNなどのノーマリーホワイトの液晶表示パネルを用いた場合を図示している。
また、図6は、図5に示すVX1、VX2、VY1、VY2の電圧波形を示す図である。
図5のMode1は、バリア液晶表示パネル20を、縦方向で使用する場合のバリアパターン表示である。図6(a)に示すように、図5のMode1では、VY2の電圧は、VX1(またはVY1)の電圧と同相の電圧で、VX2の電圧は、VX1(またはVY1)の電圧と逆相の電圧である。
そのため、図5のMode1の場合は、VY1の電圧が入力される第1のY電極(DEYA)と、VX1の電圧が入力される第1のX電極(DEXA)との間、および、VY2の電圧が入力される第2のY電極(DEYB)と、VX1の電圧が入力される第1のX電極(DEXA)との間は白表示(即ち、光が透過する状態)に、VY1の電圧が入力される第1のY電極(DEYA)と、VX2の電圧が入力される第2のX電極(DEXB)との間、および、VY2の電圧が入力される第2のY電極(DEYB)と、VX2の電圧が入力される第2のX電極(DEXB)との間は黒表示(即ち、光が遮光される状態)となる。
【0015】
図5のMode2は、バリア液晶表示パネル20を、横方向で使用する場合のバリアパターン表示である、図6(b)に示すように、図5のMode2では、VY2の電圧は、VX1(またはVY1)の電圧と逆相の電圧で、VX2の電圧は、VX1(またはVY1)の電圧と同相の電圧である。
そのため、図5のMode2の場合は、VY1の電圧が入力される第1のY電極(DEYA)と、VX1の電圧が入力される第1のX電極(DEXA)との間、および、VY1の電圧が入力される第1のY電極(DEYA)と、VX2の電圧が入力される第2のX電極(DEXB)との間は白表示に、VY2の電圧が入力される第2のY電極(DEYB)と、VX1の電圧が入力される第1のX電極(DEXA)との間、および、VY2の電圧が入力される第2のY電極(DEYB)と、VX2の電圧が入力される第2のX電極(DEXB)との間は黒表示となる。
液晶は、長時間直流が印加されると寿命が短くなるので、バリア液晶表示パネル20においても、図6に示すように、VX1、VX2、COM、VY1、VY2の電圧は、交流化される。
ここで、バリア液晶表示パネル20の交流化周波数(図6のfrequency)は、液晶表示装置10の1フレーム周波数と同期する必要はなく、例えば、アクティブマトリクス方式の液晶表示装置10の1フレーム周波数が、60Hzの場合、バリア液晶表示パネル20の交流化周波数は、例えば、40Hz、あるいは、80Hzとしてもよい。なお、交流化周波数を遅くすることにより、消費電力を低減することが可能である。
【0016】
[従来技術の問題点]
図11は、従来のパララックスバリア方式の立体表示装置における、駆動電圧を出力するインバータを説明するための図であり、同図(a)は、インバータの回路構成を、同図(b)は、インバータの出力電圧の電圧波形と、突入電流の電流波形を示す図である。
以下、本発明の特徴を説明する前に、図11を用いて、従来のパララックスバリア方式の立体表示装置の問題点について説明する。
アクティブマトリクス方式の液晶表示装置10と、単純マトリクス方式のバリア液晶表示パネル20と、1個の液晶駆動回路150で駆動する場合、バリア液晶表示パネル20の駆動電圧の交流化における、Highレベル(以下、Hレベル)からLowレベル(以下、Lレベル)への切り替え時点、および、LレベルからHレベルへの切り替え時点で、液晶表示装置10の表示画面にちらつき等の表示異常が見られる。
この現象は、以下のように説明できる。一般に、バリア液晶表示パネル20の駆動電圧は、インバータから出力される。
図11に示すように、インバータから出力されるCOMの電圧のHレベルからLレベルへの切り替え時点、および、LレベルからHレベルへの切り替え時点に、p型MOSトランジスタ(PMOS)と、n型MOSトランジスタ(NMOS)とが同時にオンとなる期間が存在し、インバータを介して、VDDの電圧が供給されている電源ラインから、GNDの電圧が供給されている電源ラインに向かって突入電流(Current)が流れる。
ここで、例えば、チャージポンプ生成方式の電源回路などの、電源回路の駆動生成能力が低い場合、電源ラインの電圧ドロップが発生する。そして、バリア液晶表示パネル20の交流化周波数と、液晶表示装置10の1フレーム周波数とが異なる場合、液晶表示装置10の画像の表示中に、電源ラインの電圧ドロップが生じることになり、これがノイズとなり表示画質の劣化を招く。
【0017】
[本実施例1の特徴]
図7Aは、本発明の実施例のパララックスバリア方式の立体表示装置における、駆動電圧を出力するインバータの回路構成を示す図であり、図7Bは、図7Aのインバータに入力される制御信号の電圧波形と、図7Aのインバータから出力される駆動電圧の電圧波形を示す図であり、図7Cは、図7Aのインバータに入力される制御信号の電圧波形と、図7Aのインバータから出力される反転駆動電圧の電圧波形を示す図である。
図7Aに示すように、本実施例では、駆動電圧を出力するインバータを構成するp型MOSトランジスタ(PMOS)のゲートには、SPMの制御信号を入力し、また、n型MOSトランジスタ(NMOS)のゲートには、SNMの制御信号を入力する。
このように、本実施例では、p型MOSトランジスタ(PMOS)と、n型MOSトランジスタ(NMOS)のゲートに異なる制御信号を入力し、p型MOSトランジスタ(PMOS)と、n型MOSトランジスタ(NMOS)とを独立して制御する。
SPMの制御信号は、LレベルからHレベルになる時点が、SNMの制御信号が、LレベルからHレベルになる時点よりも早く、SNMの制御信号は、HレベルからLレベルになる時点が、SPMの制御信号が、HレベルからLレベルになる時点よりも早い。
したがって、図7Bに示すように、インバータから出力されるCOMの電圧の電圧レベルが切り替わる直前のタイミング(バリア液晶表示パネル20の帰線期間内)で、p型MOSトランジスタ(PMOS)と、n型MOSトランジスタ(NMOS)とが同時にオフとなる。その後、COMの電圧レベルに応じて、一方のMOSトランジスタがオンとなる。
【0018】
このように、本実施例のインバータでは、p型MOSトランジスタ(PMOS)と、n型MOSトランジスタ(NMOS)がともにオフとなる期間(ノンオーバラップ期間;T−NO)を有し、p型MOSトランジスタ(PMOS)と、n型MOSトランジスタ(NMOS)とが同時にオンとなることがないので、インバータを介して、VDDの電圧が供給されている電源ラインから、GNDの電圧が供給されている電源ラインに向かって流れる突入電流(Current)を抑制することができる。
その結果、本実施例では、バリア液晶表示パネル20の駆動電圧の交流化における、HレベルからLレベルへの切り替え時点、および、LレベルからHレベルへの切り替え時点で、液晶表示装置10の表示画面に生じるちらつきを低減することができる。
パララックスバリア方式の立体表示装置に求められる要素の一つとして観測者の視覚への負担の軽減が挙げられるが、本実施例では、バリア液晶表示パネル20の駆動電圧の交流化における、HレベルからLレベルへの切り替え時点、および、LレベルからHレベルへの切り替え時点での、液晶表示装置10の表示画面に生じるちらつきを低減することができ、良好な画質を得ることができるので、目の疲れを軽減することが可能となる。
なお、図7B、図7Cにおいて、点線で示す電圧波形は、従来のパララックスバリア方式の立体表示装置において、インバータに入力される制御電圧の電圧波形である。
また、図7Cは、図7Aのインバータにおいて、COMの電圧と逆相のバーCOMの電圧(本発明の反転駆動電圧)を生成するためのSPMの制御信号およびSNMの制御信号の電圧波形を示す図であるが、SPMの制御信号およびSNMの制御信号の位相が、180度異なっているだけであるので、詳細な説明は省略する。
【0019】
[変形例]
本実施例において、図7B、図7Cに示すノンオーバーラップ期間(T−NO)中に、複数のX電極(DEX)と複数のY電極(DEX)との中で、黒表示となっている電極同士を短絡させることにより、消費電流を抑制することが可能となる。
例えば、Mode1の場合、図7B、図7Cに示すノンオーバーラップ期間(T−NO)中に、第2のX電極(DEXB)と第1のY電極(DEYA)、および、第2のX電極(DEXB)と第2のY電極(DEYB)とを短絡させることにより、図8に示すように、第2のX電極(DEXB)、第1のY電極(DEYA)、および、第2のY電極(DEYB)の電位は、COMの電圧と、バーCOMの電圧の中間電位となるので、次の電圧書き込み時に電圧変動が約半分となり消費電流を抑制することが可能となる。
図7B、図7Cに示すノンオーバーラップ期間(T−NO)中に、複数のX電極(DEX)と複数のY電極(DEX)との中で、黒表示となっている電極同士を短絡させるためには、図9に示すように、液晶駆動回路150内の第1のY電極(DEYA)、および、第2のY電極(DEYB)に接続される配線と、第2のX電極(DEXB)に接続される配線との間にトランスファゲート回路(TG)を設け、このトランスファゲート回路(TG)を、SPMの制御信号とSNMの制御信号が入力される排他的論理和回路(EOR)で制御するようにすればよい。なお、図9において、INVはインバータである。
SPMの制御信号とSNMの制御信号が入力される排他的論理和回路(EOR)は、SPMの制御信号とSNMの制御信号が不一致の場合にHレベルとなるので、図7B、図7Cに示すノンオーバーラップ期間(T−NO)中に、トランスファゲート回路(TG)がオンとなり、複数のX電極(DEX)と複数のY電極(DEX)との中で、黒表示となっている電極同士を短絡させることができる。なお、図9に示す回路は、液晶駆動回路150に設けられる。
また、Mode2の場合は、図7B、図7Cに示すノンオーバーラップ期間(T−NO)中に、第2のY電極(DEYB)と第1のX電極(DEXA)、および、第2のY電極(DEYB)と第2のX電極(DEXB)とを短絡させることにより、消費電流を抑制することが可能となる。
さらには、全てのX電極(DEX)と、全てのY電極(DEY)とを短絡させるようにしてもよい。
【0020】
[実施例2]
図10は、本発明の実施例1の立体表示装置における、駆動電圧を出力するインバータを説明するための図であり、同図(a)は、インバータの回路構成を、同図(b)は、インバータの出力電圧の電圧波形と、突入電流の電流波形を示す図である。
本実施例では、駆動電圧を出力するインバータにおいて、p型MOSトランジスタ(PMOS)と、VDDの電圧が供給されている電源ラインとの間、および、n型MOSトランジスタ(PNOS)と、GNDの電圧が供給されている電源ラインとの間に、RSの抵抗素子を設けた点で、前述の実施例1と相異する。
本実施例では、インバータから出力されるCOMの電圧のHレベルからLレベルへの切り替え時点、および、LレベルからHレベルへの切り替え時点に、p型MOSトランジスタ(PMOS)と、n型MOSトランジスタ(NMOS)とが同時にオンとなる期間が存在し、インバータを介して、VDDの電圧が供給されている電源ラインから、GNDの電圧が供給されている電源ラインに向かって突入電流(Current)が流れたとしても、RSの抵抗素子で、突入電流(Current)のピーク電流値を抑制することができる。
なお、前述の説明では、アクティブマトリクス方式の液晶表示装置10の前面に、単純マトリクス方式のバリア液晶表示パネル20を配置した場合について説明したが、液晶表示装置10に代えて、無機EL表示装置、あるいは、有機EL表示装置を使用するようにしてもよい。
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0021】
10 アクティブマトリクス方式の液晶表示装置
20 単純マトリクス方式のバリア液晶表示パネル
30 左眼
40 右眼
50 パララックスバリア
60 表示パネル
72 フレキシブルプリント基板
150 液晶駆動回路
608 画素部
609 表示領域
610 薄膜トランジスタ
611 画素電極
615 対向電極(コモン電極)
620,630 基板
621 走査線(ゲート線とも呼ぶ)
622 映像線(ドレイン線とも呼ぶ)
625 対向電極線
631 配線
640 コネクタ
700 バックライト
LCD 液晶表示パネル
SUB11,SUB12 基板
POL11,POL12 偏光板
AR11,AR12 配向膜
SL シール材
LCS 液晶
DEX X電極
DEXA 第1のX電極
DEXB 第2のX電極
DEY Y電極
DEYA 第1のY電極
DEYB 第2のY電極
PMOS p型MOSトランジスタ
NMOS n型MOSトランジスタ
RS 抵抗素子
SW1,SW2 スイッチ回路
EOR 排他的論理和回路
TG トランファゲート回路
INV インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、
前記表示パネル上に配置されるバリア液晶パネルと、
前記表示パネルと前記バリア液晶パネルとを駆動する駆動回路とを有する立体表示装置であって、
前記表示パネルの1フレーム周波数と、前記バリア液晶パネルの交流化周波数とは異なっており、
前記バリア液晶パネルは、前記駆動回路から入力される駆動電圧により駆動され、
前記駆動回路は、前記駆動電圧を出力するインバータ回路を有し、
前記インバータ回路のp型トランジスタとn型トランジスタとを独立に制御し、前記駆動電圧のHighレベルからLowレベル、あるいは、LowレベルからHighレベルへの切り替わり時に、前記p型トランジスタと前記n型トランジスタとが共にオフとなる期間を有することを特徴とする立体表示装置。
【請求項2】
前記駆動電圧のHighレベルからLowレベルへの切り替わり時に、前記n型トランジスタがオンとなる前に、先に前記p型トランジスタがオフとなり、
前記駆動電圧のLowレベルからHighレベルへの切り替わり時に、前記p型トランジスタがオンとなる前に、先に前記n型トランジスタがオフとなることを特徴とする請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項3】
前記インバータ回路のp型トランジスタおよび前記n型トランジスタは、オンとなる期間が、オフの期間よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項4】
前記バリア液晶パネルは、単純マトリクス型の液晶表示パネルであり、
前記バリア液晶パネルは、複数のX電極と、
前記複数のX電極とそれぞれ交差する複数のY電極とを有し、
前記複数のX電極は、それぞれ交互に配置される複数の第1のX電極と複数の第2のX電極とで構成され、
前記複数のY電極は、それぞれ交互に配置される複数の第1のY電極と複数の第2のY電極とで構成され、
前記複数の第1のX電極、前記複数の第1のY電極、および前記複数の第2のY電極に、前記駆動電圧が入力され、
前記複数の第2のX電極に、前記駆動電圧に対して逆相の反転駆動電圧が入力されることを特徴とする請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項5】
前記p型トランジスタと前記n型トランジスタとが共にオフとなる期間内に、前記複数の第2のX電極と、前記複数のY電極とを短絡させることを特徴とする請求項4に記載の立体表示装置。
【請求項6】
前記バリア液晶パネルは、単純マトリクス型の液晶表示パネルであり、
前記バリア液晶パネルは、複数のX電極と、
前記複数のX電極とそれぞれ交差する複数のY電極とを有し、
前記複数のX電極は、それぞれ交互に配置される複数の第1のX電極と複数の第2のX電極とで構成され、
前記複数のY電極は、それぞれ交互に配置される複数の第1のY電極と複数の第2のY電極とで構成され、
前記複数の第1のX電極、前記複数の第2のX電極、および前記複数の第1のY電極に、前記駆動電圧が入力され、
前記複数の第2のY電極に、前記駆動電圧に対して逆相の反転駆動電圧が入力されることを特徴とする請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項7】
前記p型トランジスタと前記n型トランジスタとが共にオフとなる期間内に、前記複数のX電極と、前記複数の第2のY電極とを短絡させることを有することを特徴とする請求項6に記載の立体表示装置。
【請求項8】
前記p型トランジスタと前記n型トランジスタとが共にオフとなる期間内に、前記複数のX電極と、前記複数のY電極とを短絡させることを特徴とする請求項4または請求項6に記載の立体表示装置。
【請求項9】
前記インバータ回路は、前記p型トランジスタの第1電極に接続される第1抵抗素子と、前記n型トランジスタの第1電極に接続される第2抵抗素子とを有することを特徴とする請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項10】
前記バリア液晶パネルの交流化周波数は、前記表示パネルの1フレーム周波数よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の立体表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−132944(P2012−132944A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281526(P2010−281526)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】