説明

立体視用放射線画像生成装置および方法並びにプログラム

【課題】両眼視差を用いた立体視を行うための左右両目用の放射線画像を生成する際に、患者の被曝量の低減と立体視表示の品質の維持の両立を実現する。
【解決手段】互いに異なる2つの撮影方向から放射線を照射可能な放射線源17と、照射された放射線を検出する放射線検出器15と、放射線検出器15から出力された放射線画像信号を読み取り、放射線画像を生成する検出器コントローラ33と、2つの撮影方向のうちの一方の撮影方向での撮影時に放射線源17から照射させる放射線量を、他方の撮影方向での撮影時に放射線源17から照射させる放射線量よりも低くするように、放射線源17を制御する放射線源コントローラ32と、放射線量が低い方の放射線画像に対して粒状性を抑制する画像処理を行う画像処理部8cとを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両眼視差を用いた立体視を行うための左右両目用の放射線画像を生成する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の画像を組み合わせて表示することにより、視差を利用して立体視できることが知られている。このような立体視できる画像(以下、立体視画像またはステレオ画像という)は、同一の被写体を異なる位置から撮影して取得された互いに視差のある複数の画像に基づいて生成される。
【0003】
そして、このような立体視画像の生成は、デジタルカメラやテレビなどの分野だけでなく、放射線画像撮影の分野においても利用されている。すなわち、被験者に対して互いに異なる方向から放射線を照射し、その被験者を透過した放射線を放射線画像検出器によりそれぞれ検出して互いに視差のある複数の放射線画像を取得し、これらの放射線画像に基づいて立体視画像を生成することが行われている。そして、このように立体視画像を生成することによって奥行感のある放射線画像を観察することができ、より診断に適した放射線画像を観察することができる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、読影者が立体視をしやすくするため、放射線画像検出器の検出面に垂直な正対方向からX線を照射して得られた放射線画像を利き目に与え、正対方向から所定の角度傾けた斜入方向からX線を照射して得られた放射線画像を他方の目に与えるようにすることも提案されている(特許文献2参照)。さらに、このとき、通常のマンモグラフィと同じ撮影方向である正対方向の放射線画像の品質を確保するため、正対方向から撮影する場合の放射線量を斜入方向の場合よりも多くすることも提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−110571号公報
【特許文献2】特開2010−187735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のようなステレオ画像を取得する放射線画像撮影装置では、2次元画像のみ取得する通常の放射線画像撮影装置と比較して、取得する画像の枚数が倍以上に多くなるため、患者の被曝量が増加するという問題がある。
【0007】
そこで、本出願人は、上記問題を緩和するという観点から、ステレオ画像のうちの一方の画像の撮影時の放射線量を他方の画像よりも低くすることを提案している(米国仮出願61/385,374)。これは、本出願人が見出した、立体視表示の際に左右の画像の画質が一致していなくても立体視表示が可能であるという新たな知見に基づいたものである。
【0008】
一方、低線量で撮影された画像は、高線量で撮影された画像よりも画質が低いため、立体視表示が困難になる可能性があり、診断精度の低下が問題となり得る。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、患者の被曝量の低減と立体視表示の品質の維持の両立を実現する立体視用放射線画像生成装置および方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記新たな知見に関連して見出された、立体視表示の際に左右の画像に対して異なる画像処理を行っても立体視表示が可能であるという知見に基づいたものである。
【0011】
具体的には、本発明の立体視用放射線画像生成装置は、互いに異なる2つの撮影方向から放射線を照射可能な放射線源と、前記照射された放射線を検出する放射線検出器と、該放射線検出器から出力された放射線画像信号を読み取り、該放射線画像信号に基づいて放射線画像を生成する画像生成手段と、前記2つの撮影方向のうちの一方の撮影方向での撮影時に前記放射線源から照射させる放射線量を、前記2つの撮影方向のうちの他方の撮影方向での撮影時に前記放射線源から照射させる放射線量よりも低くするように、前記放射線源を制御する制御手段と、前記一方の撮影方向での撮影で生成された放射線画像に対して粒状性を抑制する画像処理を行う画像処理手段とを設けたことを特徴とする。
【0012】
本発明の立体視用放射線画像生成方法は、所定の第1の撮影方向から放射線を照射するステップと、前記照射された放射線を放射線検出器で検出するステップと、該放射線検出器から出力された第1の放射線画像信号を読み取り、該第1の放射線画像信号に基づいて第1の放射線画像を生成するステップと、前記第1の撮影方向とは異なる第2の撮影方向から放射線を照射するステップと、前記照射された放射線を放射線検出器で検出するステップと、該放射線検出器から出力された第2の放射線画像信号を読み取り、該第2の放射線画像信号に基づいて第2の放射線画像を生成するステップとを有する方法であって、前記各撮影方向のうちの一方の撮影方向での撮影時に照射させる放射線量が、前記各撮影方向のうちの他方の撮影方向での撮影時に照射させる放射線量よりも低くなるように、放射線を照射する放射線源を制御するステップと、前記一方の撮影方向での撮影で生成された放射線画像に対して粒状性を抑制する画像処理を行うステップとをさらに有することを特徴とする。
【0013】
本発明の立体視用放射線画像生成プログラムは、互いに異なる2つの撮影方向から放射線を照射可能な放射線源と、前記照射された放射線を検出する放射線検出器と、該放射線検出器から出力された放射線画像信号を読み取り、該放射線画像信号に基づいて放射線画像を生成する画像生成手段とを備えた立体視用放射線画像生成装置に、前記各撮影方向のうちの一方の撮影方向での撮影時に照射させる放射線量が、前記各撮影方向のうちの他方の撮影方向での撮影時に照射させる放射線量よりも低くなるように、放射線を照射する放射線源を制御するステップと、前記一方の撮影方向での撮影で生成された放射線画像に対して粒状性を抑制する画像処理を行うステップとを実行させることを特徴とする。
【0014】
ここで、「粒状性を抑制する画像処理」の具体例としては、非鮮鋭化処理や、高周波成分の強調度を下げる処理が挙げられる。
【0015】
また、この粒状性を抑制する画像処理を、各撮影方向で得られた放射線画像の両方に対して、異なる処理強度で行うようにしてもよい。この場合、上記一方(放射線量が低い方)の撮影方向で得られた放射線画像に対して、上記他方(放射線量が高い方)の撮影方向で得られた放射線画像よりも強い処理強度で粒状性を抑制する画像処理を行うようにすることが好ましい。
【0016】
本発明において、上記2つの撮影方向のうちの他方(放射線量が高い方)の撮影方向と放射線検出器の検出面に直交する方向とのなす角度が、上記2つの撮影方向のうちの一方(放射線量が低い方)の撮影方向と前記直交する方向とのなす角度よりも小さくすることが好ましい。このとき、上記他方の撮影方向(放射線量が高い方)と放射線検出器の検出面に直交する方向とのなす角度は、0°とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、互いに異なる2つの撮影方向において放射線源から放射線を照射して撮影を行なう際に、2つの撮影方向のうちの一方の撮影時に放射線源から照射させる放射線量を、2つの撮影方向のうちの他方の撮影時に放射線源から照射させる放射線量よりも低くするようにしたので、ステレオ画像を取得する際の患者の被曝量を低減させることができるとともに、前記一方の撮影方向での撮影で生成された放射線画像に対して粒状性を抑制する画像処理を行うことにより、ステレオ画像を用いた立体視表示の品質も維持される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の放射線画像撮影表示システムの一実施の形態を用いたステレオ乳房画像撮影表示システムの概略構成図
【図2】図1に示すステレオ乳房画像撮影表示システムのアーム部を図1の右方向から見た図
【図3】図1に示すステレオ乳房画像撮影表示システムのコンピュータ内部の概略構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の放射線画像撮影装置の一実施の形態を用いたステレオ乳房画像撮影表示システムについて説明する。まず、本実施の形態の乳房画像撮影表示システム全体の概略構成について説明する。図1は乳房画像撮影表示システムの概略構成を示す図、図2は図1に示すステレオ乳房画像撮影表示システムのアーム部を図1の右方向から見た図、図3は図1に示すステレオ乳房画像撮影表示システムのコンピュータ内部の概略構成を示すブロック図である。
【0020】
本実施形態の乳房画像撮影表示システム1は、図1に示すように、乳房画像撮影装置10と、乳房画像撮影装置10に接続されたコンピュータ8と、コンピュータ8に接続されたモニタ9および入力部7とを備えている。
【0021】
そして、乳房画像撮影装置10は、図1に示すように、基台11と、基台11に対し上下方向(Z方向)に移動可能であり、かつ回転可能な回転軸12と、回転軸12により基台11と連結されたアーム部13を備えている。なお、図2には、図1の右方向から見たアーム部13を示している。
【0022】
アーム部13はアルファベットのCの形をしており、その一端には撮影台14が、その他端には撮影台14と対向するように放射線照射部16が取り付けられている。アーム部13の回転および上下方向の移動は、基台11に組み込まれたアームコントローラ31により制御される。
【0023】
撮影台14の内部には、フラットパネルディテクタ等の放射線画像検出器15と、放射線画像検出器15からの電荷信号の読み出しを制御する検出器コントローラ33が備えられている。また、撮影台14の内部には、放射線画像検出器15から読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプや、チャージアンプから出力された電圧信号をサンプリングする相関2重サンプリング回路や、電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換部などが設けられた回路基板なども設置されている。
【0024】
また、撮影台14はアーム部13に対し回転可能に構成されており、基台11に対してアーム部13が回転したときでも、撮影台14の向きは基台11に対し固定された向きとすることができる。
【0025】
放射線画像検出器15は、放射線画像の記録と読出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接変換型の放射線画像検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接変換型の放射線画像検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフされることによって放射線画像信号が読みだされる、いわゆるTFT読出方式のものや、読取光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることが望ましいが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。放射線画像検出器15から出力された放射線画像信号はAD変換されて放射線画像データとされる。
【0026】
放射線照射部16の中には放射線源17と、放射線源コントローラ32が収納されている。放射線源コントローラ32は、放射線源17から放射線を照射するタイミングと、放射線源17における放射線発生条件(管電圧、管電流、時間、管電流時間積等)を制御するものである。
【0027】
また、アーム部13の中央部には、撮影台14の上方に配置されて乳房Mを押さえつけて圧迫する圧迫板18と、その圧迫板18を支持する支持部20と、支持部20を上下方向(Z方向)に移動させる移動機構19が設けられている。圧迫板18の位置、圧迫圧は、圧迫板コントローラ34により制御される。
【0028】
コンピュータ8は、中央処理装置(CPU)および半導体メモリやハードディスクやSSD等のストレージデバイスなどを備えており、これらのハードウェアによって、図3に示すような制御部8a、放射線画像記憶部8bおよび画像処理部8cが構成されている。
【0029】
制御部8aは、各種のコントローラ31〜34に対して所定の制御信号を出力し、システム全体の制御を行うものである。具体的な制御方法については後で詳述する。放射線画像記憶部8bは、放射線画像検出器15によって取得された撮影角度毎の放射線画像データを記憶するものである。画像処理部8cは、放射線画像データに対して種々の画像処理を施すためのものである。本発明の粒状性を抑制する処理も、この画像処理部8cで行われる。
【0030】
入力部7は、たとえば、キーボードやマウスなどのポインティングデバイスから構成されるものであり、撮影者による撮影条件などの入力や操作指示の入力なども受け付けるものである。
【0031】
モニタ9は、コンピュータ8から出力された2つの放射線画像データを用いて、撮影方向毎の放射線画像をそれぞれ2次元画像として表示することにより、ステレオ画像を表示するように構成されたものである。
【0032】
ステレオ画像を表示する構成としては、たとえば、2つの画面を用いて2つの放射線画像データに基づく放射線画像をそれぞれ表示させて、これらをハーフミラーや偏光グラスなどを用いることで一方の放射線画像は観察者の右目に入射させ、他方の放射線画像は観察者の左目に入射させることによってステレオ画像を表示する構成を採用することができる。
【0033】
または、たとえば、2つの放射線画像を所定の視差量だけずらして重ね合わせて表示し、これを偏光グラスで観察することでステレオ画像を生成する構成としてもよいし、もしくはパララックスバリア方式およびレンチキュラー方式のように、2つの放射線画像を立体視可能な3D液晶に表示することによってステレオ画像を生成する構成としてもよい。
【0034】
また、ステレオ画像を表示する装置と2次元画像を表示する装置とは別個に構成するようにしてもよいし、同じ画面上で表示できる場合には同じ装置として構成するようにしてもよい。
【0035】
次に、本実施形態の乳房画像撮影表示システムの作用について説明する。
最初に撮影台14の上に乳房Mが設置され、圧迫板18により乳房Mが所定の圧力によって圧迫される。
次に、入力部7おいて、2つの異なる撮影方向がなす角度(以下、輻輳角θという)および輻輳角θを構成する撮影角度θ'の組み合わせを含む種々の撮影条件が入力された後、撮影開始の指示が入力される。
【0036】
そして、入力部7において撮影開始の指示があると、乳房Mのステレオ画像の撮影が行われる。具体的には、まず、制御部8aが、輻輳角θと輻輳角θを構成する撮影角度θ'の情報をアームコントローラ31に出力する。なお、本実施の形態においては、撮影枚数を減らすべく2次元観察用の画像と立体視表示するための一方の画像とを兼ねるようにするため、このときの輻輳角θの情報としてθ=4°、輻輳角θを構成する撮影角度θ’の組み合わせとしてθ’=0°とθ’=4°の組み合わせが設定されているものとするが、これに限られるものではなく、撮影者は入力部7において任意の輻輳角θを設定可能である。なお、輻輳角θは小さすぎても大きすぎても適切な立体視を行なわせることが難しくなるため、4°以上15°以下に設定されることが望ましい。また、撮影角度θ’の組み合わせについても、一方の撮影角度θ’が他方の撮影角度θ’よりも小さいものである限り、特に限定されるものではない。なお、撮影角度θ’の組み合わせとしては、上記の一方の撮影角度θ’、すなわち2次元観察用の画像を撮影するための撮影角度θ’は0°とすることが望ましい。これは、放射線画像検出器15の正面から撮影した画像が、最も2次元観察に適しているからである。
【0037】
アームコントローラ31において、制御部8aから出力された輻輳角θの情報が受け付けられ、アームコントローラ31は、この輻輳角θの情報に基づいて、アーム部13を検出面15aに垂直な方向に対して4°傾く撮影角度θ'となる制御信号を出力する。
【0038】
アームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が4°回転する。続いて制御部8aは、放射線源コントローラ32に対して撮影条件に応じた量よりも低くした量の放射線の照射を行うよう制御信号を出力するとともに、検出器コントローラ33に対して放射線画像の読出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から撮影条件に応じた量よりも低くした量の放射線が照射され、乳房Mを撮影角度θ'が4°の方向から撮影した放射線画像が放射線検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像データが読み出される。
【0039】
そして、画像処理部8cが、読み出された放射線画像データを入力として、放射線画像の粒状度を抑制する処理を行う。具体的には、公知の非鮮鋭化処理、あるいは、公知の高周波成分に対する強調度を下げる処理を行う(詳細は、特開2003-263635号公報、特開平10-105701号公報等参照)。処理済みの放射線画像データは、放射線画像記憶部8bに記憶される。なお、撮影角度θ'が4°の放射線画像データは、立体視表示するための一方の画像としてのみに用いられるものとなる。
【0040】
なお、撮影条件に応じた量よりも低くした量の放射線の照射を行う場合は、通常撮影時と比較して照射強度を変えずに照射時間のみ短くして放射線の照射を行うようにしてもよいし、通常撮影時と比較して照射時間を変えずに照射強度のみ弱くして放射線の照射を行うようにしてもよいし、通常撮影時と比較して照射強度を弱くするとともに照射時間も短くして放射線の照射を行うようにしてもよい。
【0041】
続いて、アームコントローラ31は、アーム部13が撮影台14に垂直な方向となるよう制御信号を出力する。すなわち、本実施形態においては、アーム部13を検出面15aに垂直な方向とする撮影角度θ'が0°となる制御信号を出力する。
【0042】
アームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が検出面15aに対して垂直な方向となる。続いて制御部8aは、放射線源コントローラ32に対して撮影条件に応じた量の放射線の照射を行うよう制御信号を出力するとともに、検出器コントローラ33に対して放射線画像の読出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から撮影条件に応じた量の放射線が照射され、乳房Mを撮影角度θ'が0°の方向から撮影した放射線画像が放射線検出器15によって検出される。撮影が終了すると圧迫板18を移動させて乳房Mの圧迫を解除するとともに、検出器コントローラ33によって放射線画像データが読み出され、放射線画像記憶部8bに記憶される。ここで、この撮影角度θ'が0°での撮影で得られた放射線画像データに対しては、画像処理部8cは上記の粒状性抑制処理を行わない。あるいは、撮影角度θ'が4°での撮影で得られた放射線画像データに対して行った粒状性抑制処理よりも弱い処理強度で処理を行うようにしてもよい。なお、撮影角度θ'が0°の放射線画像データは、2次元観察用の画像と立体視表示するための一方の画像とを兼ねるものとなる。
【0043】
低い放射線量で撮影を行なった場合には放射線検出器15の残像が少なくなるため、このように、低い放射線量での撮影および高い放射線量での撮影を連続的に行なう場合に、低い放射線量での撮影を先に行なうようにすれば、後の撮影時における放射線検出器15の残像の影響を抑えることができる。
【0044】
そして、ユーザーからステレオ画像表示が要求された際には、コンピュータ8の放射線画像記憶部8bに記憶された2つの放射線画像データが放射線画像記憶部8bから読み出された後、所定の信号処理が施されてモニタ9に出力され、モニタ9において、乳房Mのステレオ画像が表示される。なお、本実施形態では、放射線画像データが放射線画像記憶部8bに記憶される前に粒状性抑制処理を行うようにしたが、このタイミングで粒状性抑制処理を行わずに、ステレオ画像表示の際に、上記所定の信号処理の1つとして粒状性抑制処理を行うようにしてもよい。
【0045】
また、ユーザーから2次元画像表示が要求された際には、コンピュータ8の放射線画像記憶部8bに記憶された2つの放射線画像データのうち撮影角度θ'が0°の放射線画像データが放射線画像記憶部8bから読み出された後、所定の信号処理が施されてモニタ9に出力され、モニタ9において、乳房Mの2次元画像が表示される。
【0046】
このような構成とすることにより、2次元観察用の画像と立体視表示するための一方の画像とを兼ねる撮影角度0°の放射線画像データについては高画質を維持しつつ、立体視表示のみに用いる放射線画像データについては照射する放射線量を低くした分、ステレオ画像を取得する際の患者の被曝量を低減させることができる。一方、画像処理部8cが、撮影角度θ'が4°での撮影で得られた放射線画像データに対して粒状性を抑制する画像処理を行うことにより、立体視表示の品質も維持される。
【0047】
なお、上記実施の形態においては、本発明の放射線画像撮影装置を乳房画像撮影装置としているが、被検体としては乳房に限らず、たとえば胸部や頭部等を撮影する放射線画像撮影装置を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 乳房画像撮影表示システム
7 入力部
8 コンピュータ
8a 制御部
8b 放射線画像記憶部
8c 画像処理部
9 モニタ
10 乳房画像撮影装置
11 基台
12 回転軸
13 アーム部
14 撮影台
15 放射線画像検出器
16 放射線照射部
17 放射線源
18 圧迫板
31 アームコントローラ
32 放射線源コントローラ
33 検出器コントローラ
34 圧迫板コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる2つの撮影方向から放射線を照射可能な放射線源と、
前記照射された放射線を検出する放射線検出器と、
該放射線検出器から出力された放射線画像信号を読み取り、該放射線画像信号に基づいて放射線画像を生成する画像生成手段と、
前記2つの撮影方向のうちの一方の撮影方向での撮影時に前記放射線源から照射させる放射線量を、前記2つの撮影方向のうちの他方の撮影方向での撮影時に前記放射線源から照射させる放射線量よりも低くするように、前記放射線源を制御する制御手段と、
前記一方の撮影方向での撮影で生成された放射線画像に対して粒状性を抑制する画像処理を行う画像処理手段とを備えたことを特徴とする立体視用放射線画像生成装置。
【請求項2】
前記画像処理が、非鮮鋭化処理であることを特徴とする請求項1記載の立体視用放射線画像生成装置。
【請求項3】
前記画像処理が、前記一方の撮影方向での撮影で生成された放射線画像の高周波成分の強調度を下げる処理であることを特徴とする請求項1記載の立体視用放射線画像生成装置。
【請求項4】
前記他方の撮影方向と前記放射線検出器の検出面に直交する方向とのなす角度が、前記一方の撮影方向と前記直交する方向とのなす角度よりも小さいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の立体視用放射線画像生成装置。
【請求項5】
前記他方の撮影方向と前記放射線検出器の検出面に直交する方向とのなす角度が0°であることを特徴とする請求項4記載の立体視用放射線画像生成装置。
【請求項6】
所定の第1の撮影方向から放射線を照射するステップと、
前記照射された放射線を放射線検出器で検出するステップと、
該放射線検出器から出力された第1の放射線画像信号を読み取り、該第1の放射線画像信号に基づいて第1の放射線画像を生成するステップと、
前記第1の撮影方向とは異なる第2の撮影方向から放射線を照射するステップと、
前記照射された放射線を放射線検出器で検出するステップと、
該放射線検出器から出力された第2の放射線画像信号を読み取り、該第2の放射線画像信号に基づいて第2の放射線画像を生成するステップとを有する立体視用放射線画像生成方法であって、
前記各撮影方向のうちの一方の撮影方向での撮影時に照射させる放射線量が、前記各撮影方向のうちの他方の撮影方向での撮影時に照射させる放射線量よりも低くなるように、放射線を照射する放射線源を制御するステップと、
前記一方の撮影方向での撮影で生成された放射線画像に対して粒状性を抑制する画像処理を行うステップとをさらに有することを特徴とする立体視用放射線画像生成方法。
【請求項7】
互いに異なる2つの撮影方向から放射線を照射可能な放射線源と、前記照射された放射線を検出する放射線検出器と、該放射線検出器から出力された放射線画像信号を読み取り、該放射線画像信号に基づいて放射線画像を生成する画像生成手段とを備えた立体視用放射線画像生成装置に、
前記各撮影方向のうちの一方の撮影方向での撮影時に照射させる放射線量が、前記各撮影方向のうちの他方の撮影方向での撮影時に照射させる放射線量よりも低くなるように、放射線を照射する放射線源を制御するステップと、
前記一方の撮影方向での撮影で生成された放射線画像に対して粒状性を抑制する画像処理を行うステップとを実行させることを特徴とする立体視用放射線画像生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−176037(P2012−176037A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39438(P2011−39438)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】