説明

立型ポンプ

【課題】既設の固定翼を有するポンプを、翼角制御装置を有するポンプに簡単かつ迅速に更新できる立型ポンプを提供する。
【解決手段】主軸2と翼角制御可能の可動翼5を設けたコーン3を有する。コーン内に配設され、吸込口6bと吐出口6aを有するシリンダ6と、このシリンダ内に往復動可能に収容され、吸込口側と吐出口側の圧力差によりこれら吸込口側と吐出口側との間を往復動するピストン7と、可動翼の下流側にてコーンに形成され、シリンダの吐出口に連通する吐出口連通路8aと、可動翼の上流側にてコーンに形成され、シリンダの吐出口に連通する吸込口連通路8bと、を具備し、ピストンの往復動により可動翼の翼角を制御するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は立型斜流ポンプ等の立型ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の立型斜流ポンプでは、ポンプインペラの翼の角度(翼角)を適宜制御することにより、ポンプ性能を制御し、ポンプ容量や揚程を制御するものが知られている。
【0003】
この翼角制御装置としては、油圧式や機械式が知られており、さらに、空気または電気駆動式の汎用油圧ポンプにより操作ロッドを上下動させて翼角を制御するものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図6は従来の他の翼角制御装置の一例を示している。これは電気信号の翼角指令信号20aを制御用電動機21に与える制御装置20を具備している。
【0005】
制御用電動機21はこの翼角指令信号20aに応じてリンク22の一端部を開または閉方向に回動させる。このために、油圧回路に介装された配圧弁23がリンク22により駆動され、電気信号の翼角指令信号20aが油圧信号に変換される。圧油は油タンク24からの油を油ポンプ25で加圧することにより生成され、油配管26を介して上記配圧弁23に給油される。
【0006】
配圧弁23は油ポンプ25からの圧油の油量の制御と方向制御を行って、サーボシリンダ27の上部室27aまたは下部室27bに与える。これにより、サーボシリンダ27内で、その軸方向(図6中、上下方向)に往復動するピストン28とこれに連結された操作ロッド29が図中上下方向に往復動する。この往復動がクロスヘッド30に伝動されることにより、可動翼31の翼角が制御される。すなわち、可動翼31の翼角が上記電気信号の翼角指令信号20aにより指令された翼角に制御される。
【0007】
なお、上記操作ロッド29、クロスヘッド30等は回転駆動される中空軸である主軸32やインペラ33内に挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−117895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の立型斜流ポンプでは、配圧弁23、油タンク24、油ポンプ25、サーボシリンダ27等の油圧装置や、制御盤等の制御装置20を具備する必要があり、大型化や構成の複雑化を招くという課題がある。
【0010】
また、サーボシリンダ27や操作ロッド29、クロスヘッド30等を中空の主軸32内に挿通させる等して組み込む必要があるので、構造がさらに複雑化するうえに、コスト増を招くという課題がある。
【0011】
このために、固定翼を有し、上記のような翼角制御装置を具備していない既設の立型斜流ポンプを、翼角制御装置を具備した立型斜流ポンプに取り替える場合には、ポンプ駆動用電動機の回転主軸も上記複雑な構成の主軸32に取り替える必要があり、簡単ではない。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、既設の固定翼を有するポンプを、翼角制御装置を有するポンプに簡単かつ迅速に更新できる立型ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本実施形態は、回転軸と翼角制御可能の可動翼を設けたコーンを有する立型ポンプにおいて、コーン内に配設され、吸込口と吐出口を有するシリンダと、このシリンダ内に往復動可能に収容され、吸込口側と吐出口側の圧力差によりこれら吸込口側と吐出口側との間を往復動するピストンと、を具備している。
【0014】
また、本実施形態は、可動翼の下流側にてコーンに形成され、シリンダの吐出口に連通する吐出口連通路と、可動翼の上流側にてコーンに形成され、シリンダの吐出口に連通する吸込口連通路と、を具備し、ピストンの往復動により可動翼の翼角を制御するように構成した。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、既設の立型ポンプを、翼角制御装置を有する立型ポンプに簡単かつ迅速に更新できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る立型斜流ポンプの要部を一部断面で示す構成図。
【図2】同,第2の実施形態に係る立型斜流ポンプの要部を一部断面で示す構成図。
【図3】同,第3の実施形態に係る立型斜流ポンプの要部を一部断面で示す構成図。
【図4】同,第4の実施形態に係る立型斜流ポンプを一部断面で示す要部拡大図。
【図5】同,第1〜3の実施形態のいずれかに係る立型斜流ポンプのQHカーブの一例を示すグラフ。
【図6】従来の翼角制御装置を具備した立型ポンプの一部を断面で示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の図面中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0018】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る立型ポンプの一例である立型斜流ポンプ1は、図示省略の電動機の回転軸である主軸2、またはこの回転軸に連動可能に連結された主軸2の先端部に固着されたポンプインペラのコーン3を具備している。
【0019】
コーン3は、垂直方向に立設された立型の吸込管4内に収容される。吸込管4は、その図1中下端に吸込口4aを形成しており、この吸込口4aから吸い込んだ水等の流体を管軸方向上方へ導水する。
【0020】
コーン3は、その下部に、複数の可動翼5を翼角制御可能に配設してポンプインペラに構成されている。各可動翼5は、これに固着されている翼軸5aをコーン3に回転可能に装着している。
【0021】
そして、コーン3は、その内部に、可動翼5と同数のシリンダ6を形成している。シリンダ6内には、例えば縦断面形状がT字状のピストン7を軸方向(図1中、上下方向)に往復動可能に収容している。シリンダ6は、各可動翼5の下流側一端(図1では上端)に吐出口6aを形成する一方、各可動翼5の上流側一端(図1では下端)に吸込口6bを形成している。
【0022】
また、コーン3は、各可動翼5の下流側にて、シリンダ6の吐出口6aに連通する吐出口連通路8aを形成する一方、各可動翼5の上流側にて、シリンダ6の吸込口6bに連通する吸込口連通路8bを形成している。
【0023】
ピストン7は、例えば、その図1中下端部を、連結部9を介して各可動翼5の翼軸5aに連結している。連結部9は、例えばリンク機構等から構成され、ピストン7の図1中、上下方向の往復動を翼軸5aの中心軸回りの回転運動に変換可能に連結し、翼軸5aの中心軸回りの回動により各可動翼5の翼角を制御する。各翼軸5aはシリンダ6の内側からコーン3の側壁を貫通して、その外部へ延出し、当該側壁の貫通部外面にはパッキン10を設けて、その貫通部の水密性の向上を図っている。
【0024】
以上のように翼角制御装置11は構成され、複数の可動翼5毎に配設されている。図1〜図3では、重複した説明を省略するために1台の翼角制御装置11のみを図示し、他の角翼制御装置11は図示省略している。
【0025】
次に、このように構成された立型斜流ポンプ1の作用を説明する。
【0026】
図示しないポンプ用電動機が駆動されると、この電動機の回転軸である主軸2、またはこの回転軸に連結された主軸2がその中心軸回りに回転する。このために、コーン3が回転するので、複数の可動翼5がコーン3の中心軸回りに回転する。
【0027】
このために、水等の流体が吸込管4内に、その吸込口4aから吸い込まれ、図1中、上方へ揚水される。
【0028】
この揚水時、可動翼5の上流側にあるシリンダ6の吸込口6bには、吸込口連通路8bを通して吸込圧Psが加圧される一方、可動翼5の下流側にあるシリンダ6の吐出口6aには、吐出口連通路8aを通して吐出圧Pdが加圧される。
【0029】
このために、吐出圧Pdと吸込圧Psとの差圧ΔPにより、ピストン7がシリンダ6内を上下方向に往復動する。すなわち、吐出圧Pdの方が吸込圧Psよりも大きいとき(Pd>Ps)は、ピストン7が図1中、下方側へ押圧されて降下し、その降下運動が連結部9のリンク機構により翼軸5aの所定の一方向の回転運動に変換される。
【0030】
このために、翼軸5aは可動翼5を所定の一方向に回動させてその翼角が小さくなるように制御する。これにより、揚水流量Qが減少する。
【0031】
一方、吐出圧Pdの方が吸込圧Psよりも小さいとき(Pd<Ps)は、ピストン7が図1中、上方側へ押圧されて上昇し、その上昇運動が連結部9のリンク機構により、翼軸5aの所定の他方向(上記Pd>Psとは逆方向)の回転運動に変換される。
【0032】
このために、翼軸5aは、可動翼5を他方向へ回動させ、その翼角が大きくなるように制御する。これにより、揚水流量Qが増加する。
【0033】
したがって、この翼角制御装置11によれば、シリンダ6の吸込圧Psと吐出圧Pdとの圧力差ΔPにより、各可動翼5の翼角を自動的に制御し、揚水流量Qを制御できる。
【0034】
また、シリンダ6の吐出圧Pdが所定のポンプ締切り揚程に達したときには、可動翼5の翼角を小さくして揚程Hが所定の締切り揚程の制限値を超えないように制御することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る立型斜流ポンプ1Aの要部縦断面図である。この図2に示すように立型斜流ポンプ1Aは、上記図1で示す立型斜流ポンプ1Aにおいて、弾性部材の一例であるばね12を設けた点に特徴がある。
【0036】
ばね12は、コイルばねや板ばね等のばねであってピストン7の図2中、上端よりも上方に位置するシリンダ6の上端壁6cと、ピストン7の上端との間に介装され、ピストン7を常時上方へ引き上げるように付勢しており、締切り揚程の制限値を下げる機能を具備している。
【0037】
このために、ピストン7は、下向きに作用する力として吐出圧Pdを受け、上向きに作用する力として吸込圧Psとばね12の弾性力を受けるので、ばね12の弾性力により可動翼5の翼角を制御することができる。
【0038】
したがって、このばね12の弾性力を、ピストン7が下方に降下する弾性力に設定することにより、締切り揚程付近になった際に可動翼5の翼角を小さくできるので、ポンプの締切り揚程が制限値を超えないようにすることができる。
【0039】
また、吐出圧Pdが低下し、ばね12の弾性力と吸込圧Psの和の方が吐出圧Pdを上回った場合には、ピストン7が上昇するので、可動翼5の翼角を元の位置に復帰させることができる。
【0040】
なお、上記図1で示すパッキン10は、翼軸5aがコーン3の側壁を貫通する貫通部の外面側であるコーン3の外面側に配設されているが、図2で示すパッキン10aは、翼軸5aが貫通するコーン3の貫通部の内面側であるシリンダ6の内面側に配設されている。すなわち、パッキン10,10aは、シリンダ6の外側と内側のいずれか一方、または両者に配設してもよい。
【0041】
(第3の実施形態)
図3は本発明の第3の実施形態に係る立型斜流ポンプ1Bの要部縦断面図である。この図3に示すように立型斜流ポンプ1Bは、上記図2で示す立型斜流ポンプ1Aにおいて、シリンダ6の上端壁6cにストッパ13を設けた点に特徴がある。
【0042】
ストッパ13はシリンダ6の上端壁6cとピストン7の上端との間に介装され、ピストン7の上方向への移動上限値を制限する。したがって、ストッパ13の軸方向長さを制限することにより、ばね12の弾性力の如何に関わらず可動翼5の翼角を小さく制御する側の限界値、すなわち、ポンプ締切り揚程を制御することができる。
【0043】
(第4の実施形態)
図4は本発明の第4の実施形態に係る立型斜流ポンプ1Cの要部拡大図である。この図4に示すように立型斜流ポンプ1Cは、上記図3で示す第3の実施形態に係るストッパ13を、軸方向伸縮可能の可変ストッパ14に置換した点に特徴がある。
【0044】
図4に示すように可変ストッパ14は、シリンダ6の上端壁6cに固定される円筒や角筒等の筒状の固定筒14aに、伸縮筒14bを伸縮可能に配設している。
【0045】
伸縮筒14bは、例えば油圧式や機械式、電動式等により軸方向伸縮可能に構成され、伸縮量を適宜制御できる。すなわち、可変ストッパ14の伸縮量を適宜制御することにより、ポンプ締切り揚程を所要値に適宜制御できる。
【0046】
図5は立型斜流ポンプのQHカーブを示すグラフであり、この図5中、符号15は翼角制御装置を具備した立型斜流ポンプの一般のQHカーブを示し、符号16は翼角制御装置を具備していない固定翼の立型斜流ポンプのQHカーブを示している。
【0047】
本発明の第1〜第4の実施形態に係る立型斜流ポンプ1A〜1Cは、上述したように翼角制御装置11を具備しているので、QHカーブは符号15のQHカーブに示すように、固定翼のQHカーブ16の仕様点16aを仕様点15aに変更することができる。
【0048】
また、ポンプ流量Qが減少し、締切り揚程Hに近づいた場合に、水力がばね12の弾性力を上回ったときは可動翼5が横向きに傾斜するので、その分、揚程Hが低下し、QHカーブ17のようになる。
【0049】
その結果、固定翼のQHカーブ16のポンプ締切り揚程16bを、可動翼5のQHカーブ15の締切り揚程15bのように低くすることができる。
【0050】
さらに、ストッパ13によりポンプ締切り揚程を所要値に適宜制御できる。
【0051】
さらにまた、ストッパ13が可変ストッパ14である場合には、その伸縮量を制御することにより、締切り揚程を所要値に適宜制御することができるので、仕様点15aを容易に設定変更できる。
【0052】
したがって、主軸2を回転駆動する図示省略の電動機の設計が相違するうえに、ポンプの容量と揚程が相違する立型斜流ポンプに対しても本発明の翼角制御装置11を用いることにより共通設計することができる。
【0053】
以上、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1,1A,1B,1C 立型斜流ポンプ
2 主軸(回転軸)
3 コーン
5 可動翼
6 シリンダ
6a 吐出口
6b 吸込口
7 ピストン
8a 吐出口連通路
8b 吸込口連通路
9 連結部
11 翼角制御装置
12 ばね(弾性部材)
13 ストッパ
14 可動ストッパ
16,17 QHカーブ
15a 仕様点
15b 締切り揚程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と翼角制御可能の可動翼を設けたコーンを有する立型ポンプにおいて、
前記コーン内に配設され、吸込口と吐出口を有するシリンダと、
このシリンダ内に往復動可能に収容され、前記吸込口側と吐出口側の圧力差によりこれら吸込口側と吐出口側との間を往復動するピストンと、
前記可動翼の下流側にて前記コーンに形成され、前記シリンダの吐出口に連通する吐出口連通路と、
前記可動翼の上流側にて前記コーンに形成され、前記シリンダの吐出口に連通する吸込口連通路と、
を具備し、
ピストンの往復動により前記可動翼の翼角を制御するように構成したことを特徴とする立型ポンプ。
【請求項2】
前記ピストンを前記シリンダの吐出口側に弾性的に付勢する弾性部材を具備していることを特徴とする請求項1記載の立型ポンプ。
【請求項3】
前記ピストンの前記シリンダの吐出口側への移動を制限するストッパを具備していることを特徴する請求項1または2記載の立型ポンプ。
【請求項4】
前記ストッパは、前記ピストンの制限位置を調節可能に構成されていることを特徴とする請求項3記載の立型ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−92070(P2013−92070A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233231(P2011−233231)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】