説明

立軸ポンプ

【課題】ポンプ配管内の中間軸受19の軸受摺動部材をポンプ軸9から容易に取り外しできるようにした立軸ポンプを提供する。
【解決手段】ポンプ軸9を、上部ポンプ軸9aと下部ポンプ軸9bに分割し、上部ポンプ軸9aと下部ポンプ軸9bをポンプ配管内で中間軸継手32により連結し、下部ポンプ軸の上端側部分を中間軸受19で支承する。中間軸継手32で連結する上部ポンプ軸9aの下端と下部ポンプ軸9bの上端の軸方向の間隔Lを、中間軸受19に用いる固定側摺動部材23またはこれに対向して配設される回転側摺動部材25の軸方向長さのいずれよりも長く設定する。しかも、中間軸継手32を分解した状態で、固定側摺動部材23および回転側摺動部材25を下部ポンプ軸9bの上端まで移動させ得る構成とする。固定側摺動部材23および回転側摺動部材25を、上部ポンプ軸9aと下部ポンプ軸9bの間隔Lから取り外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ配管内に作業員が入れる大型の立軸ポンプにおいて、ポンプ軸をポンプ配管内で支承する中間軸受の固定側摺動部材および回転側摺動部材の取り付けおよび取り外し作業等を容易にした立軸ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の立軸ポンプの一例を図7ないし図9を参照して説明する。図7は、従来の立軸ポンプの全体構成図である。図8は、図7における中間軸継手の部分の縦断面部分拡大図である。図9は、図8に示す連結部材の外観図である。
【0003】
図7ないし図9において、吸込水槽8のポンプ設置床1の開口部2に、立軸ポンプの吊下げ管3が配設固定され、吊下げ管3の上に吐出しエルボ4が配設固定されて接続され、吊下げ管3の下に揚水管5とポンプケーシング6および吸込ベル7が順次に連結されて垂架され、吸込ベル7が吸込水槽8の水面下に水没させられている。また、ポンプ軸9は、上部ポンプ軸9aと下部ポンプ軸9bに2分割されていて、上部ポンプ軸9aの下端と下部ポンプ軸9bの上端の間に僅かな隙間が設けられて中間軸継手10により連結される。中間軸継手10は、上部ポンプ軸9aの下端部と下部ポンプ軸9bの上端部に跨って図9に示す連結部材11が配設され、この連結部材11とその軸方向上下の上部ポンプ軸9aと下部ポンプ軸9bに跨ってスリーブ12が外嵌される。スリーブ12は、上部ポンプ軸9aと下部ポンプ軸9bに対してキー13a、13bにより回転方向の相対的移動が規制され、上部ポンプ軸9aの回転動力が下部ポンプ軸9に伝達されるように構成されている。
【0004】
連結部材11は、図9に示すごとく、軸方向と平行な面で軸芯位置で周方向に2分割された連結部材11a、11bで形成され、軸方向両端部に内径の小さなフランジ状部がそれぞれに設けられ、上部ポンプ軸9aの下端部および下部ポンプ軸9bの上端部にそれぞれに設けられた周回りの溝に嵌合させられて、上部ポンプ軸9aと下部ポンプ軸9bの軸方向の相対位置が規制されている。また、連結部材11の外径は、上部ポンプ軸9aと下部ポンプ軸9bの外径よりごく僅かに小径で、スリーブ12が外嵌できるように形成されている。
【0005】
上部ポンプ軸9aは、吐出しエルボ4の外壁を貫通して上方外部に突出し、その上端部がスペース軸継手14を介して減速装置またはモータ(いずれも図示せず)の出力軸に連結される。上部ポンプ軸9aが吐出しエルボ4の外壁を貫通して突出する貫通部分15には、軸封装置16が設けられ、その少し上方位置に上部軸受17が設けられて上部ポンプ軸9aの上部が支承される。また、下部ポンプ軸9bは、その下端部に羽根車18が配設固定され、その少し上方位置でポンプケーシング6内に設けられた内側ポンプケーシング20に配設された下部軸受21で支承される。なお、この下部軸受21は、先行待機運転が行われる立軸ポンプにあっては、吸込水槽8の最低運転開始水位LWLよりも高い位置に配設される。さらに、下部ポンプ軸9bは、上端部で中間軸継手10の少し下方位置で揚水管5内に配設された中間軸受19で支承されている。中間軸受19は、揚水管5に配設された中間軸受支え24に設けた軸受ケース22に固定側摺動部材23が嵌入配置され、これに対向させて下部ポンプ軸9bに回転側摺動部材25が外嵌されて構成されている。
【0006】
かかる構成の立軸ポンプにおいて、保守管理のために定期的な点検がなされ、軸受部材の摩耗状態によっては、軸受摺動部材の交換が必要となる。かかる軸受部材の従来の点検および部品の交換作業にあっては、吐出しエルボ4、吊下げ管3、揚水管5、ポンプケーシング6、吸込ベル7、上部ポンプ軸9a、下部ポンプ軸9b、羽根車18等の全ての部材を一度分解して、上部ポンプ軸9aおよび下部ポンプ軸9bから上部軸受17と中間軸受19および下部軸受21の軸受摺動部材を取り外して点検し、必要により摩耗した軸受摺動部材を交換して、再度組み立てていた。かかる作業は、ポンプ配管内に作業員が入れるような大型の立軸ポンプでは、部品が大型でかつ重量があり、重量物を吊り上げまた吊り下ろすためのクレーン装置等が必要であり、分解作業および組立作業のいずれにあっても多大な労力と時間を要した。
【0007】
そこで、かかる問題を解決するために、大型の立軸ポンプの軸受摺動部材の分解および組立てを行うのに、吐出しエルボ、吊下げ管、揚水管、ポンプケーシング、吸込ベル、ポンプ軸、羽根車等の全ての部材を分解する必要がなしに、吐出しエルボの外壁を貫通して上方に突出したポンプ軸の上端部とモータの出力軸を駆動連結するスペーサ軸継手を分解することで、軸受摺動部材をポンプ軸の上端から取り外しまたは取り付けることができるようにした技術が特許第4066163号公報で提案されている。
【特許文献1】特許第4066163号公報開
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1に示された技術は、ポンプ軸や羽根車を分解する必要がなく、従来の全ての部材の分解を必要とする点検作業に比較して、その労力と時間が少なくて良く、優れたものである。しかるに、交換を必要とする中間軸受が吐出しエルボまたは揚水管等のポンプ配管内にあり、軸受摺動部材をポンプ軸の上端から取り外しまたは取り付けるためには、吐出しエルボの外側にあるスペーサ軸継手を取り外すだけでなく、吐出しエルボの外壁を貫通するポンプ軸の軸封装置やポンプ軸の上部軸受等も分解する必要がある。さらに、ポンプ軸の中間軸受が配設された位置からポンプ軸の上端までの距離が長くなるので、この間のポンプ軸の外周部に腐食や付着物がある場合には、軸受摺動部材をポンプ軸の上端まで移動させることが困難となって、軸受摺動部材の取り付けおよび取り外しが困難となる。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の事情に鑑みてなされたもので、作業員がポンプ配管内に入れるような大型の立軸ポンプで、ポンプ配管内の中間軸受の軸受摺動部材をポンプ軸から容易に取り付けおよび取り外しができるようにした立軸ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上述のごとき従来技術を改善するためになされたもので、本発明の立軸ポンプは、ポンプ軸を、上部ポンプ軸と下部ポンプ軸に分割し、前記上部ポンプ軸と下部ポンプ軸を吐出しエルボの上流側のポンプ配管内で中間軸継手により連結し、前記下部ポンプ軸の上端側部分を中間軸受により支承した立軸ポンプにおいて、前記中間軸継手で連結する前記上部ポンプ軸の下端と前記下部ポンプ軸の上端の軸方向の間隔を、前記中間軸受に用いる固定側摺動部材またはこれに対向して配設される回転側摺動部材の軸方向長さのいずれよりも長く設定し、しかも前記中間軸継手を分解した状態では、前記固定側摺動部材および前記回転側摺動部材を前記下部ポンプ軸の上端まで移動させ得るように構成されている。
【0011】
そして、前記吐出しエルボの外壁に作業員が出入りできる点検口を設け、この点検口から前記中間軸受が配設された位置まで作業員が前記ポンプ配管内に入れるように構成することができる。
【0012】
さらに、前記下部ポンプ軸の下端側部分を支承する下部軸受けを、前記下部ポンプ軸に配設された羽根車よりも上流側に配設して構成しても良い。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の立軸ポンプにあっては、ポンプ軸は、ポンプ配管内で中間軸継手により上部ポンプ軸と下部ポンプ軸が連結され、連結された上部ポンプ軸の下端と下部ポンプ軸の上端の軸方向の間隔を、下部ポンプ軸の上端側部分を支承する中間軸受に用いる固定側摺動部材または回転側摺動部材の軸方向長さのいずれよりも長く設定し、中間軸継手を分解した状態では、固定側摺動部材および回転側摺動部材を下部ポンプ軸の上端まで移動させ得るようにしたので、中間軸継手を分解することで、ポンプ配管内で中間軸受の固定側摺動部材および回転側摺動部材を下部ポンプ軸の上端まで移動させて下部ポンプ軸から容易に取り外すことができる。しかも、中間軸受が中間軸継手の少し下方位置に配設されているので、中間軸受が配設される位置から下部ポンプ軸の上端までの距離が短く、固定側摺動部材および回転側摺動部材を下部ポンプ軸の上端まで移動させることが容易である。もって、大型の立軸ポンプ軸の中間軸受の点検と部品の交換が容易となる。
【0014】
そして、請求項2記載の立軸ポンプにあっては、吐出しエルボの外壁に作業員が出入りできる点検口を設けて中間軸受が配設された位置まで作業員がポンプ配管内に入れるようにしたので、中間軸受が配設された所に作業用の仮設の足場を組む等により、交換作業等を容易にできる。また、交換作業等に必要な部品や工具などを容易に中間軸受の配設位置まで搬入することができる。
【0015】
さらに、請求項3記載の立軸ポンプにあっては、下部軸受を、下部ポンプ軸に配設された羽根車よりも上流側に配設したので、下部軸受を分解して、下部ポンプ軸の下端より軸受摺動部材を容易に取り外しまたは取り付けすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施例を図1ないし図4を参照して説明する。図1は、本発明の立軸ポンプの第1実施例の全体構成図である。図2は、図1における中間軸継手の部分の縦断面部分拡大図である。図3は、図2に示す連結部材の外観図である。図4は、図1における下部軸受の部分の縦断面部分拡大図である。図1ないし図4において、図7ないし図9に示すものと同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0017】
図1に示す第1実施例の立軸ポンプにおいて、ポンプ軸9が上部ポンプ軸9aと下部ポンプ軸9bに分割され、この上部ポンプ軸9aの下端と下部ポンプ軸9bの上端が、ポンプ配管内で中間軸継手32で駆動連結されることは、図7に示す従来例と同じである。しかし、従来例と大きく相違するところは、中間軸継手32の軸方向長さが長く設定され、上部ポンプ軸9aの下端と下部ポンプ軸9bの上端の軸方向の間隔Lが、中間軸受19の固定側摺動部材23の軸方向長さL1またはこれに対向して設けられている回転側摺動部材25の軸方向長さL2のいずれよりも長く設定されていることにある。しかも、中間軸継手32を分解した状態では、中間軸受19の固定側摺動部材23および回転側摺動部材25が下部ポンプ軸9bの上端まで容易に移動できるように構成されている。なお、中間軸継手32の少し下方位置で、中間軸受19は下部ポンプ軸9bの上端側部分を支承しており、中間軸受19の配設位置から下部ポンプ軸9bの上端までの距離は短い。そして、中間軸継手32の連結部材30は、図3に示すように、従来例に比較して軸方向の長さが長く設定された以外は、構造的な相違がない。なお、スリーブ31は、連結部材30が軸方向に長くなったのに対応して、連結部材30とその軸方向上下の上部ポンプ軸9aと下部ポンプ軸9bに跨って外嵌されるように、軸方向に長く設定されている。また、吐出しエルボ4の外壁には、作業員が出入りできる点検口33が設けられ、この点検口33から中間軸受19が配設された位置まで作業員がポンプ配管内に入れるように構成されている。この点検口33は、ポンプ運転がなされる通常時には蓋で閉塞され、作業員がポンプ配管内に立ち入る際にのみ開口することは勿論である。
【0018】
さらに、第1実施例の立軸ポンプにあっては、下部ポンプ軸9bの下端部を支承する下部軸受40が羽根車18よりも上流側(下方側)に配設されている。羽根車18よりも上流側(下方側)の位置で吸込ベル7に下部軸受支え44が配設され、この下部軸受支え44に軸受ケース収納部43が設けられる。この軸受ケース収納部43に下側(上流側)から軸受ケース41が挿入されて、軸受ケース収納部43の底面に軸受ケース41のフランジ部がボルト46で下側から締め付け固定される。この軸受ケース41内に、上側から固定側摺動部材42が嵌入されている。また、回転側摺動部材47は、下端より下部ポンプ軸9bに外嵌され、下部ポンプ軸9bの下端面にストッパ48がボルト49により下側から締め付け固定され、ストッパ48のフランジ部で回転側摺動部材47の下側への移動が規制されている。なお、この下部軸受40は、吸込水槽8の最低運転開始水位LWL以下の水面下に配設されることが望ましい。
【0019】
かかる構成の第1実施例において、中間軸受19の点検にあっては、まず点検口33の蓋を外して、作業員がポンプ配管内に入り、中間軸受支え24の上に足場板等を敷いて作業用床を仮設する。次に、中間軸継手32のスリーブ31を上方(下流側)に移動させて、上部ポンプ軸9aと下部ポンプ軸9bとを連結している連結部材30を露出させるとともに、軸方向と平行な面で軸芯位置で2分割した連結部材30a、30bを取り外す。そして、中間軸受19の固定側摺動部材23と回転側摺動部材25を上方に移動させて、上部ポンプ軸9aの下端と下部ポンプ軸9bの上端の間隔Lで、下部ポンプ軸9bの上端から抜き取り外方に取り出す。ここで、上部ポンプ軸9aの下端と下部ポンプ軸9bの上端の軸方向の間隔Lが、固定側摺動部材23の軸方向長さL1および回転側摺動部材25の軸方向長さL2のいずれよりも長く設定されているので、簡単に取り外すことができる。また、中間軸受19が中間軸継手32の少し下方位置に配設されているので、中間軸受19が配設される位置から下部ポンプ軸9bの上端までの距離が短く、固定側摺動部材23および回転側摺動部材25を下部ポンプ軸9bの上端まで移動させることが容易である。そして、吐出しエルボ4の外壁に作業員が出入りできる点検口33を設けて中間軸受19が配設された位置まで作業員がポンプ配管内に入れるようにしたので、中間軸受19が配設された所に作業用の足場を組む等により、交換作業等が容易である。また、交換作業等に必要な部品や工具などを容易に中間軸受19の配設位置まで容易に搬入することができる。もって、大型の立軸ポンプ軸の中間軸受19の点検と部品の交換が容易となる。
【0020】
さらに、下部軸受40の固定側摺動部材42と回転側摺動部材47を交換するためには、ボルト46を取り外して軸受ケース収納部43から軸受ケース41を下方向に取り外すことで、固定側摺動部材42を取り外すことができる。また、ボルト49を下部ポンプ軸9bの下端面から取り外してストッパ48を下部ポンプ軸9bの下端から下方向に取り外すことで、回転側摺動部材47を下部ポンプ軸9bの下端から容易に下方向に取り外すことができる。かかる作業は、下部軸受40が、吸込水槽8の最低運転開始水位LWL以下の水面下に設けられているならば、まず吸込水槽8内の水を水中ポンプ等で排水して下部軸受40が水面上となり作業が可能な水位まで吸込水槽8の水位を下げた後で、作業すれば良い。ここで、下部軸受40を吸込水槽8の最低運転開始水位LWL以下の水面下に設けることで、下部軸受40が常に水で潤滑された状態に保持されるために、気水運転用等の特殊な軸受部品を用いる必要がなく、汎用性の高い水中軸受部品を使用することが可能である。そのために、下部軸受40の損傷等で軸受部品の交換が必要となった場合に、短時間で必要とされる交換部品が調達でき、立軸ポンプを早期に復旧することが可能である。
【0021】
次に、本発明の第2実施例を図5を参照して説明する。図5は、本発明の立軸ポンプの第2実施例における中間軸継手の部分の縦断面部分拡大図である。図5において、図1ないし図4および図7ないし図9に示すものと同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0022】
図5に示す第2実施例において、ポンプ軸9が上部ポンプ軸9aと下部ポンプ軸9bに分割され、この上部ポンプ軸9aの下端と下部ポンプ軸9bの上端が、図1に示す実施例と同様に、ポンプ配管内で中間軸継手63で駆動連結されるが、第1実施例と相違するところは、中間軸継手63の構造にある。なお、上部ポンプ軸9aの下端と下部ポンプ軸9bの上端の軸方向の間隔Lが、中間軸受60の固定側摺動部材61の軸方向長さL1またはこれに対向して設けられている回転側摺動部材62の軸方向長さL2のいずれよりも長く設定されていることは同様である。中間軸継手63の構造は以下のようなものである。まず上部ポンプ軸9aの下端側部分と下部ポンプ軸9bの上端側部分に周状にそれぞれ溝71、72が設けられ、これらの溝71、72に軸方向と平行な面で2分割されたリング64、65がそれぞれに嵌め込まれる。リング64、65の内径は、溝71、72の底部の外径より僅かに大きく、リング64、65の外径は、上部ポンプ軸9aと下部ポンプ軸9bの外径より大きく設定される。しかも、上部ポンプ軸9aに嵌め込まれたリング64と下端側部分に嵌め込まれたリング65との間で、上部ポンプ軸9aの下端部と下部ポンプ軸9bの上端部に跨りスリーブ66が外嵌されている。スリーブ66と上部ポンプ軸9aおよび下部ポンプ軸9bは、キー13a、13bにより上部ポンプ軸9aから下部ポンプ軸9bに回転動力が伝達されるように構成されている。さらに、スリーブ66の上端面に上部ポンプ軸9aに外嵌された押止部材67が上方からボルト69により締め付け固定され、リング64がスリーブ66と押止部材67に狭持固定されて径が大きくなる方向への移動が規制される。また、スリーブ66の下端面に下部ポンプ軸9bに外嵌された押止部材68が下方からボルト70により締め付け固定され、リング65がスリーブ66と押止部材68に狭持固定されて径が大きくなる方向への移動が規制される。
【0023】
下部ポンプ軸9bから中間軸受60の固定側摺動部材61および回転側摺動部材62を取り外すためには、中間軸継手63を分解して取り除く。まず、ボルト69を取り外して押止部材67を上方にずらして、リング64を分割して上部ポンプ軸9aから取り外す。また、ボルト70を取り外して押止部材67を下方にずらして、リング65を分割して下部ポンプ軸9bから取り外す。さらに、スリーブ66を上方に移動させるとともに押止部材68も上方に移動して、押止部材68は上部ポンプ軸9aの下端と下部ポンプ軸9bの上端の軸方向の間隔Lから取り外す。そして、固定側摺動部材61および回転側摺動部材62を下部ポンプ軸9bの上端まで移動させて、上部ポンプ軸9aの下端と下部ポンプ軸9bの上端の軸方向の間隔Lから取り外す。
【0024】
さらに、本発明の第3実施例を図6を参照して説明する。図6は、本発明の立軸ポンプの第3実施例における中間軸継手の部分の縦断面部分拡大図である。図6において、図1ないし図5および図7ないし図9に示すものと同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0025】
図6に示す第3実施例において、ポンプ軸9が上部ポンプ軸9aと下部ポンプ軸9bに分割され、この上部ポンプ軸9aの下端と下部ポンプ軸9bの上端が、接続管80の介装によりポンプ配管内で駆動連結されている。なお、上部ポンプ軸9aの下端と下部ポンプ軸9bの上端の軸方向の間隔Lが、中間軸受92の固定側摺動部材90の軸方向長さL1またはこれに対向して設けられている回転側摺動部材91の軸方向長さL2のいずれよりも長く設定されていることは同様である。接続管80を連結する構造は以下のようなものである。まず、上部ポンプ軸9aの下端部にフランジ状部分が形成され、接続管80の上端部に形成されたフランジ状部分81にボルト82で締め付け固定される。また、下部ポンプ軸9bの上端部に連結フランジ84が組み付けられ、接続管80の下端部に形成されたフランジ状部分83にボルト85で締め付け固定される。下部ポンプ軸9bの上端部に組み付けられる連結フランジ84は、以下のような構造である。下部ポンプ軸9bの上端側部分に周状に溝88が設けられ、この溝88に軸方向と平行な面で2分割されたリング89が嵌め込まれる。リング89の内径は、溝88の底部の外径より僅かに大きく、リング89の外径は、下部ポンプ軸9bの外径より大きく設定される。このリング89の下方に押止部材87が下部ポンプ軸9bに外嵌され、リング89の上方に係止部材86が配設され、押止部材87と係止部材86でリング89が狭持固定されるようにし、さらに接続管80の下端面に設けたフランジ状部分83と係止部材86および押止部材87からなる連結フランジ84がボルト85により共締め固定されている。さらに、下部ポンプ軸9bに外嵌された押止部材87は、下部ポンプ軸9bに対してキー13bにより押止部材87から下部ポンプ軸9bに回転動力が伝達されるように構成されている。
【0026】
下部ポンプ軸9bから中間軸受92の固定側摺動部材90および回転側摺動部材91を取り外すためには、接続管80を取り外す。まず、ボルト82を取り外して、上部ポンプ軸9aと接続管80を分離する。次いで、ボルト85を取り外して、下部ポンプ軸9bと接続管80を分離し、上部ポンプ軸9aと下部ポンプ軸9bの間から接続管80を取り除く。そして、押止部材87を下方にずらして、リング89を分割して下部ポンプ軸9bから取り外す。さらに、係止部材86と押止部材87を上方にずらして、係止部材86と押止部材87を上部ポンプ軸9aの下端と下部ポンプ軸9bの上端の軸方向の間隔Lから取り外す。そして、固定側摺動部材90および回転側摺動部材91を下部ポンプ軸9bの上端まで移動させて、上部ポンプ軸9aの下端と下部ポンプ軸9bの上端の軸方向の間隔Lから取り外す。
【0027】
なお、本発明の立軸ポンプにあっては、上部ポンプ軸9aの下端と下部ポンプ軸9bの上端の軸方向の間隔Lが、固定側摺動部材23、42、61、90の軸方向長さL1および回転側摺動部材25、47、62、91の軸方向長さL2のいずれよりも長く設定されていて、しかも上部ポンプ軸9aの下端部分と下部ポンプ軸9bの上端部分が取り外しできる部材で適宜に連結されていれば良く、上記第1および第2実施例のごとく中間軸継手32、63や第3実施例のごとく接続管80を用いた構造に限られない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の立軸ポンプの第1実施例の全体構成図である。
【図2】図1における中間軸継手の部分の縦断面部分拡大図である。
【図3】図2に示す連結部材の外観図である。
【図4】図1における下部軸受の部分の縦断面部分拡大図である。
【図5】本発明の立軸ポンプの第2実施例における中間軸継手の部分の縦断面部分拡大図である。
【図6】本発明の立軸ポンプの第3実施例における中間軸継手の部分の縦断面部分拡大図である。
【図7】従来の立軸ポンプの全体構成図である。
【図8】図7における中間軸継手の部分の縦断面部分拡大図である。
【図9】図8に示す連結部材の外観図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ポンプ設置床
2 開口部
3 吊下げ管
4 吐出しエルボ
5 揚水管
6 ポンプケーシング
7 吸込ベル
8 吸込水槽
9 ポンプ軸
9a 上部ポンプ軸
9b 下部ポンプ軸
10、32、63 中間軸継手
11、11a、11b、30、30a、30b 連結部材
12、31、66 スリーブ
13a、13b キー
14 スペース軸継手
15 貫通部
16 軸封装置
17 上部軸受
18 羽根車
19、60、92 中間軸受
20 内側ポンプケーシング
21、40 下部軸受
22 軸受ケース
23、42、61、90 固定側摺動部材
24 中間軸受支え
25、47、62、91 回転側摺動部材
33 点検口
41 軸受ケース
43 軸受ケース収納部
44 下部軸受支え
48 ストッパ
46、49、69、70、82、85 ボルト
64、65、89 リング
67、68、87 押止部材
71、72、88 溝
80 接続管
81、83 フランジ状部分
84 連結フランジ
86 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ軸を、上部ポンプ軸と下部ポンプ軸に分割し、前記上部ポンプ軸と下部ポンプ軸を吐出しエルボの上流側のポンプ配管内で中間軸継手により連結し、前記下部ポンプ軸の上端側部分を中間軸受により支承した立軸ポンプにおいて、前記中間軸継手で連結する前記上部ポンプ軸の下端と前記下部ポンプ軸の上端の軸方向の間隔を、前記中間軸受に用いる固定側摺動部材またはこれに対向して配設される回転側摺動部材の軸方向長さのいずれよりも長く設定し、しかも前記中間軸継手を分解した状態では、前記固定側摺動部材および前記回転側摺動部材を前記下部ポンプ軸の上端まで移動させ得るように構成したことを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項2】
請求項1記載の立軸ポンプにおいて、前記吐出しエルボの外壁に作業員が出入りできる点検孔を設け、この点検孔から前記中間軸受が配設された位置まで作業員が前記ポンプ配管内に入れるように構成したことを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項3】
請求項1または2記載の立軸ポンプにおいて、前記下部ポンプ軸の下端側部分を支承する下部軸受を、前記下部ポンプ軸に配設された羽根車よりも上流側に配設して構成したことを特徴とする立軸ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−242564(P2010−242564A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90621(P2009−90621)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000151058)株式会社電業社機械製作所 (21)
【Fターム(参考)】