説明

立軸ポンプ

【課題】信頼性の高い摩耗検知を行うことができる水中軸受の摩耗検知機構を備えた立軸ポンプを提供する。
【解決手段】
本発明の立軸ポンプは、羽根車10と、羽根車10に連結された回転軸6と、羽根車10および回転軸6を収容するポンプケーシング2と、回転軸6を回転自在に支持する滑り接触面を有する水中軸受12,15と、ポンプケーシング2の外部に配置された導通検知器35と、水中軸受12,15に隣接して配置された一対の導体37,37と、一対の導体37,37と導通検知器35とを接続する一対のケーブル40,40とを備え、一対の導体37,37の各端部は、水中軸受12,15の滑り接触面から回転軸6の径方向において所定の距離だけ離間しており、一対のケーブル40,40は、それぞれ少なくとも3本の導線41A,41B,41Cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸を支持する水中軸受を備えた立軸ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、一般的な立軸ポンプを示す模式図である。図1に示すように、立軸ポンプは、水槽上部のポンプ据付床500に設置され、吊下管502を介して羽根車504を収容するケーシング506が吊り下げられる。このような立軸ポンプは、水中軸受508が水中に浸漬された状態で運転され、使用時間の経過とともに水中軸受508が徐々に摩耗する。このため、立軸ポンプの点検作業を定期的に行って水中軸受508の摩耗状況を確認し、必要に応じて水中軸受508の補修または交換が行われる。
【0003】
水中軸受508の摩耗は、ポンプの異常振動の原因となり、最終的にポンプ故障(運転不能)に至る原因となる。このため、水中軸受508の点検は重要点検項目の1つである。一般に、水中軸受の点検整備間隔は約10年とされる。したがって、10年に1回程度、ケーシング506を分解して水中軸受508を露出させ、すきまゲージなどを用いて水中軸受508の摩耗量を測定し、水中軸受508の交換を行うべきか否かを判断する。
【0004】
立軸ポンプの分解方法としては、天井クレーンを用いてポンプを引き上げて行う方法がある。しかしながら、この方法は費用がかかり、点検にかかる時間も長くなってしまう。例えば、天井クレーンを用いて立軸ポンプを引き上げるときにはクレーンオペレータが必要となり、引き上げのために相当の作業費用を要する。また、重量物であるポンプの引き上げは危険作業といえる。
【0005】
また、立軸ポンプの点検整備の後は、立軸ポンプを組み立てる必要がある。この組立作業には、駆動源とポンプ回転軸との芯出し、立軸ポンプの試運転という工程が含まれ、かなりの日数を要する。さらに、ポンプ機場によっては、点検時でも、常に必要量の排水をできる状態にしておく必要があり、点検期間中は、仮設ポンプを設置するなどして、排水能力を確保する必要がある。
【0006】
そこで、以下に示す特許文献1乃至4に開示されているように、ポンプを引き上げずに水中軸受の摩耗を検出する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、水中軸受に隣接してダミー部材を設け、その中に埋設された導線に電流を流し、ダミー部材の摩耗に起因して導線が切れたことを検出することで水中軸受が摩耗したことを検知する方法が開示されている。しかしながら、水中軸受の寿命は一般に10年以上と長く、またポンプ内部は通常は液体で満たされているため、導線自体が腐食し、断線するおそれがある。
【0007】
また、特許文献2,3には、空気流量、圧力、振動値などの間接的な物理量を測定することで軸受の摩耗量を推定する技術が開示されている。しかしながら、これらの技術は、軸受の摩耗量を計算により推測するものであり、正確な軸受交換時期を判断するには信頼性が低い。この点、特許文献1に記載の方法では、水中軸受の摩耗量を定量的に捉え、交換時期を的確に判断することは可能である。しかしながら、水中軸受の摩耗を検出する回数は1度限りであり、何らかの原因で水中軸受の摩耗を誤検知したときは、ポンプを無駄に引き上げてしまうことになる。
【0008】
特許文献4には、回転軸と導体との接触により導体間が電気的に導通し、これにより導体に隣接する水中軸受の摩耗を検知する方法が開示されている。この方法によれば、水中軸受が摩耗しているときにポンプを運転すると、ポンプ回転軸の振れにより導体間が電気的に導通するので、何度でも水中軸受の摩耗を検知することができる。しかしながら、電極板に接続される導線(ケーブル)は水中に配置される必要があるため、導線自体の腐食や断線などの欠陥が原因で、水中軸受の摩耗が検知されないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−161790号公報
【特許文献2】特開2004−218578号公報
【特許文献3】特許3567140号公報
【特許文献4】特開2008−75625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、信頼性の高い摩耗検知を行うことができる水中軸受の摩耗検知機構を備えた立軸ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、羽根車と、前記羽根車に連結された回転軸と、前記羽根車および前記回転軸を収容するポンプケーシングと、前記回転軸を回転自在に支持する滑り接触面を有する水中軸受と、前記ポンプケーシングの外部に配置された導通検知器と、前記水中軸受に隣接して配置された複数の導体と、前記複数の導体と前記導通検知器とを接続する複数のケーブルとを備え、前記複数の導体の各端部は、前記滑り接触面から前記回転軸の径方向において所定の距離だけ離間しており、前記複数のケーブルは、それぞれ少なくとも3本の導線を有することを特徴とする立軸ポンプである。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記3本の導線の端部は、電気的に互いに分離可能に構成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記3本の導線の端部には、該3本の導線を電気的に互いに接続する結束線が着脱自在に接続されており、前記導通検知器は、前記結束線を介して前記3本の導線に接続されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記導通検知器は、前記ポンプケーシングが設置されるポンプ据付床の上、またはポンプ据付床よりも上方に配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様は、羽根車と、前記羽根車に連結された回転軸と、前記羽根車および前記回転軸を収容するポンプケーシングと、前記回転軸を回転自在に支持する滑り接触面を有する水中軸受と、前記ポンプケーシングの外部に配置された導通検知器と、前記水中軸受に隣接して配置された少なくとも1つの導体と、前記導体と前記導通検知器とを接続する第1のケーブルと、前記導通検知器と前記回転軸とを直接的または間接的に接続する第2のケーブルとを備え、前記導体の端部は、前記滑り接触面から前記回転軸の径方向において所定の距離だけ離間していることを特徴とする立軸ポンプである。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記第1のケーブルは、少なくとも3本の導線を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記少なくとも1つの導体は、複数の導体であり、前記第1のケーブルは、前記複数の導体にそれぞれ接続される複数のケーブルであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数のケーブルは、それぞれ少なくとも3本の導線を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の導体の端部は、前記滑り接触面から前記回転軸の径方向において異なる距離で離間していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、摩耗を検知する機構を構成する部材として、3本以上の導線を用いたケーブルおよび/または回転軸が用いられるので、腐食や断線による摩耗検知不能を回避することができる。したがって、信頼性の高い摩耗検知機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の立軸ポンプを示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る立軸ポンプの全体構成を示す断面図である。
【図3】水中軸受の摩耗を検知する機構の模式図である。
【図4】3本の導線と結束線との接続箇所を示す拡大図である。
【図5】図5(a)乃至図5(c)は、導線の点検を説明するための図である。
【図6】水中軸受が羽根車よりも下方に配置された立軸ポンプを示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る立軸ポンプの全体構成を示す断面図である。
【図8】図7に示す水中軸受の摩耗を検知する機構の模式図である
【図9】第2のケーブルの端部をポンプケーシングに接続した例を示す立軸ポンプの断面図である。
【図10】第2のケーブルの端部を据付用ベースに接続した例を示す立軸ポンプの断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る立軸ポンプに組み込まれた水中軸受の摩耗を検知する機構の模式図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る立軸ポンプに組み込まれた水中軸受の摩耗を検知する機構の模式図である。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る立軸ポンプに組み込まれた水中軸受の摩耗を検知する機構の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図2は本発明の第1の実施形態に係る立軸ポンプの全体構成を示す断面図である。
図2に示すように、立軸ポンプは、吸込ベルマウス1a及びポンプボウル1bを有するインペラケーシング1と、インペラケーシング1を水槽内に吊り下げる吊下管3と、吊下管3の上端に接続される吐出曲管4と、インペラケーシング1内に収容される羽根車10と、羽根車10が固定される回転軸(立軸)6とを備えている。吊下管3は、水槽上部のポンプ据付床22に形成された挿通孔24を通して下方に延び、吊下管3の上端に設けられた据付用ベース23を介してポンプ据付床22に固定される。回転軸6は、吐出曲管4、吊下管3、及びインペラケーシング1内を通って鉛直方向に延びている。ポンプケーシング2は、インペラケーシング1、吊下管3、及び吐出曲管4により構成される。ポンプケーシング2、回転軸6、および据付用ベース23は金属から形成されている。
【0018】
吸込ベルマウス1aは下方を向いて開口し、吸込ベルマウス1aの上端はポンプボウル1bの下端に固定されている。羽根車10は回転軸6の下端に固定されており、羽根車10と回転軸6とは一体的に回転するようになっている。この羽根車10の上方(吐出側)には複数のガイドベーン14が配置されている。これらのガイドベーン14はポンプボウル1bの内周面に固定されている。回転軸6は外軸受11および水中軸受12,15により回転自在に支持されている。水中軸受12はポンプボウル1bに収容されており、羽根車10の上方に位置している。水中軸受15は吊下管3に収容されている。外軸受11は吐出曲管4に固定されている。水中軸受12を支持する支持部材7はボウルブッシュ13の内面に固定されており、さらに、ボウルブッシュ13はガイドベーン14を介してインペラケーシング1に支持されている。また、水中軸受15を支持する支持部材17は、吊下管3の内周面に固定されている。水中軸受12,15は、回転軸6に滑り接触する、いわゆる滑り軸受である。なお、符号19はハンドホールである。
【0019】
回転軸6は吐出曲管4から上方に突出して、駆動源18に連結されている。駆動源18により回転軸6を介して羽根車10を回転させると、水槽内の水(取扱液)が吸込ベルマウス1aから吸い込まれ、ポンプボウル1b、吊下管3、吐出曲管4を通って図示しない吐出配管に移送される。なお、立軸ポンプ運転時においては、羽根車10や水中軸受12を収容するインペラケーシング1は、液面よりも下に位置している。
【0020】
この立軸ポンプは、水中軸受12,15の摩耗を検出する機構を有している。水中軸受12用の摩耗検出機構と水中軸受15用の摩耗検出機構は同一の構成を有しているので、以下、水中軸受15用の摩耗検知機構について図3を参照して説明する。
図3は水中軸受15の摩耗を検知する機構の模式図である。水中軸受15に隣接して、棒状または板状の一対の導体37,37が配置されている。一対の導体37,37にはそれぞれ一対のケーブル40,40が接続されており、そのケーブル40,40は導通検知器35に接続されている。ケーブル40,40は、図2に示すように、ポンプケーシング2の壁部を貫通して敷設されている。これら導体37,37、ケーブル40,40、および導通検知器35は、水中軸受15の摩耗を検知する機構として機能する。
【0021】
図3に示すように、それぞれの導体37,37の端部は水中軸受15の内周面(滑り接触面)から回転軸6の径方向において距離tだけ離間した位置にある。この距離tは、水中軸受15の許容摩耗量または交換推奨摩耗量に相当する。導体37,37は互いに離間しており、導体37,37の間には絶縁材38が配置されている。したがって、導体37,37は電気的に互いに分離されている。それぞれの導体37には3本の導線41A,41B,41Cが接続されている。その導線41A,41B,41Cの3つの端部は結束線43に接続されている。
【0022】
図4は3本の導線と結束線との接続箇所を示す拡大図である。図4に示すように、結束線43は、3本の線が結合されて1本の線となった構成を有している。結束線43の3つの端部は、導線41A,41B,41Cの3つの端部42にそれぞれ接続され、結束線43の他方の1つの端部は導通検知器35に接続されている。導線41A,41B,41Cの3つの端部42と、結束線43の3つの端部は、端子ボックス45に収容されている。この端子ボックス45及び導通検知器35はポンプ据付床22の上、またはポンプ据付床22よりも上方に配置される。本実施形態では、3本の導線41A,41B,41Cと1つの結束線43により、1つのケーブル40が構成されている。
【0023】
水中軸受15が摩耗すると、回転軸6の振れにより回転軸6が導体37,37の端部に接触し、金属製の回転軸6を介して一対の導体37,37が電気的に接続される。したがって、導通検知器35が導体37,37の電気的接続を検知することにより、水中軸受15の摩耗量が所定の値に達したことを検知することができる。導通検知器35は、ケーブル40,40に常時接続されていなくてもよく、摩耗検知時にのみ、ケーブル40,40に接続してもよい。また、結束線43を省略して、3本の導線41A,41B,41Cの端部42を導通検知器35に直接接続してもよい。この場合は、3本の導線41A,41B,41Cが1つのケーブル40を構成する。
【0024】
このように構成したことにより、仮に3本の導線41A,41B,41Cのうちの1本が断線したとしても、水中軸受15の摩耗による導体37,37間の電気的導通を導通検知器35によって検知することが可能である。したがって、水中軸受15が摩耗しているにもかかわらず、これを検知することができないといった従来の欠点が改善され、信頼性の高い摩耗検知機構を提供することが可能となる。信頼性の観点から、ケーブル40を構成する導線の本数は4本以上とすることも可能である。なお、図3においては一対の導体37を設置した例が示されているが、3つ以上の導体37を設けてもよい。この場合、導体37の端部と水中軸受15の内周面との距離tが互いに異なるように導体37を配置してもよい。このような配置により、水中軸受15の摩耗を段階的に検知することができる。
【0025】
さらに、結束線43を導線41A,41B,41Cから外すことにより、3本の導線41A,41B,41Cが断線しているかどうかを導通検知器35または汎用のテスターを用いて検査することができる。図5(a)乃至図5(c)は、導線の点検を説明するための図である。図5(a)では第1の導線41Aと第2の導線41Bの端部42に導通検知器35が接続されている。このときの導通検知器35は電気的導通を示していない。図5(b)では第2の導線41Bと第3の導線41Cの端部42に導通検知器35が接続されている。このときの導通検知器35も電気的導通を示していない。図5(c)では第3の導線41Cと第1の導線41Aの端部42に導通検知器35が接続されている。このときの導通検知器35は電気的導通を示している。
【0026】
この結果から、第2の導線41Bが断線していることが分かる。このように、3本以上の導線を用いることにより、どの導線が断線しているかを特定することが可能となる。1つのケーブル40に6本の導線を用いた場合において、そのうちの4本が断線していることが検査により確認された場合には、立軸ポンプを水槽から引き上げて、導線の修理を行うようにしてもよい。多くの本数の導線を用いることで、導線修理の時間間隔が長くなり、維持管理費を低減することができる。
【0027】
図6は、下側の水中軸受12が羽根車10よりも下方に配置された立軸ポンプを示す断面図である。この例においても、水中軸受12に隣接して一対の導体37,37が配置され、一対のケーブル40,40を介して導通検知器35に連結されている。図6に示す立軸ポンプは、水中軸受12及び導体37,37の位置が異なるのみで、他の構成は図2に示す立軸ポンプと同一である。このような位置に配置された水中軸受12にも、本実施形態を適用することができる。
【0028】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る立軸ポンプの全体構成を示す断面図である。図8は、図7に示す水中軸受の摩耗を検知する機構の模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は、上述した第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。また、本実施形態においても水中軸受12,15の摩耗検知機構は同一の構成を有しているので、以下、水中軸受15の摩耗検知機構について説明する。
【0029】
図8に示すように、1つの導体37が水中軸受15に隣接して配置されている。導体37と水中軸受15との間には絶縁材38が配置されており、導体37は絶縁材38を介して水中軸受15に支持されている。したがって、導体37は回転軸6を含む他のポンプ部材と電気的に絶縁されている。導体37には第1のケーブル51が接続され、第1のケーブル51はさらに導通検知器35に接続されている。導通検知器35は第2のケーブル52によって回転軸6に電気的に接続されている。第1のケーブル51は少なくとも1本の導線を備えている。第2のケーブル52は、少なくとも1本の導線または導体(例えば細長い金属プレート)を備えている。
【0030】
回転軸6と第2のケーブル52とは、直接的または間接的に接続することができる。例えば、回転軸6に常時接触する導電性のブラシを設け、第2のケーブル52の端部をこのブラシに接続してもよい。さらに、図9および図10に示すように、第2のケーブル52の端部を、ポンプケーシング2または据付用ベース23に接続してもよい。これは、回転軸6は外軸受11などを介してポンプケーシング2および据付用ベース23に電気的に接続されているからである。ポンプケーシング2または据付用ベース23と導通検知器35とを接続する場合は、第2のケーブル52として金属プレートなどの導体を用いることができる。
【0031】
水中軸受15が摩耗すると、回転軸6が導体37の端部に接触し、金属製の回転軸6と導体37とが電気的に接続される。したがって、導通検知器35により導体37と回転軸6との電気的接続を検知することにより、水中軸受15の摩耗量が所定の値に達したことを検知することができる。本実施形態では、導通を確認するための部材として、回転軸6(およびポンプケーシング2または据付用ベース23)を利用しているので、1つの導体37のみを水中軸受15に隣接して配置すればよい。回転軸6、ポンプケーシング2、および据付用ベース23は、耐食性を考慮した材料および厚さで構成されているので、導線に比べて腐食しにくい。したがって、信頼性の高い摩耗検出機構が構築される。また、水中軸受に隣接して配置される導体及びこれに接続される導線の数が削減できるので、簡素で安価な摩耗検知機構とすることができる。
【0032】
導通検知器35は、第1のケーブル51および第2のケーブル52に常時接続されていなくてもよく、摩耗検知時にのみ、第1のケーブル51および第2のケーブル52に接続してもよい。また、図6に示すような、下側の水中軸受12が羽根車よりも下方に配置された立軸ポンプについても、本実施形態を適用することができる。さらに、第1の実施形態のように、一対の導体37,37を水中軸受に隣接して配置してもよい。この場合は、導通検知器35は、導体37,37同士の電気的接続と、導体37と回転軸6との電気的接続を同時に検出するので、摩耗検知を多重に行うことができ、信頼性をさらに向上させることができる。
【0033】
図11は、本発明の第3の実施形態に係る立軸ポンプに組み込まれた水中軸受の摩耗を検知する機構の模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は、上述した第2の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。また、本実施形態においても水中軸受12,15の摩耗検知機構は同一の構成を有しているので、以下、水中軸受15の摩耗検知機構について説明する。
【0034】
図11に示すように、1つの導体37が水中軸受15に隣接して配置されている。この導体37には第1のケーブル51が接続され、第1のケーブル51はさらに導通検知器35に接続されている。この第1のケーブル51は、第1の実施形態のケーブル40と同様の構成を有している。すなわち、第1のケーブル51は、少なくとも3本の導線41と、これらの導線41の端部に接続された結束線43とを備えている。図11には示されていないが、導線41の端部と結束線43の端部は、端子ボックス45(図4参照)に収容されている。なお、第1の実施形態で説明したように、結束線43は省略することができる。
【0035】
さらに、導通検知器35は第2のケーブル52によって回転軸6に電気的に接続されている。この第2のケーブル52は、少なくとも1本の導線を備えている。第2のケーブル52と回転軸6とは、直接的または間接的に接続することができる。この直接的または間接的な接続は、第2の実施形態で説明した各形態と同様の方法で行うことができる。
【0036】
図12は、本発明の第4の実施形態に係る立軸ポンプに組み込まれた水中軸受の摩耗を検知する機構の模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は、上述した第2の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。また、本実施形態においても水中軸受12,15の摩耗検知機構は同一の構成を有しているので、以下、水中軸受15の摩耗検知機構について説明する。
【0037】
図12に示すように、棒状または板状の一対の導体37,37が水中軸受15に隣接して配置されている。導体37,37は互いに離間しており、導体37,37の間には絶縁材38が配置されている。したがって、導体37,37は電気的に互いに分離されている。導体37,37と水中軸受15との間にも絶縁材38が配置されており、導体37,37はこの絶縁材38を介して水中軸受15に支持されている。したがって、導体37,37は回転軸6を含む他のポンプ部材と電気的に絶縁されている。下側の導体37の端部は水中軸受15の内周面から回転軸6の径方向において距離t1だけ離間した位置にある。また、上側の導体37の端部は水中軸受15の内周面から回転軸6の径方向において距離t2だけ離間した位置にある。距離t2は距離t1よりも大きく設定されており、距離t2は水中軸受15の許容摩耗量または交換推奨摩耗量に相当する。
【0038】
それぞれの導体37,37には第1のケーブル51が接続され、第1のケーブル51はさらに導通検知器35に接続されている。また、導通検知器35は第2のケーブル52によって回転軸6に電気的に接続されている。これら第1のケーブル51および第2のケーブル52は、それぞれ少なくとも1本の導線を備えている。第2の実施形態と同様に、第2のケーブル52と回転軸6とは、直接的または間接的に接続することができる。この直接的または間接的な接続は、第2の実施形態で説明した各形態と同様の方法で行うことができる。
【0039】
水中軸受15が摩耗すると、回転軸6が下側の導体37の端部に接触し、金属製の回転軸6と下側の導体37とが電気的に接続される。したがって、導通検知器35により下側の導体37と回転軸6との電気的接続を検知することにより、水中軸受15の交換時期が近づいていることを判断することができる。水中軸受15がさらに摩耗すると、回転軸6が上側の導体37の端部に接触する。したがって、導通検知器35により上側の導体37と回転軸6との電気的接続を検知することにより、水中軸受15の摩耗量が所定の値に達したことを検知することができる。このように、水中軸受15の摩耗を段階的に検出することができ、信頼性をさらに向上させることができる。
【0040】
水中軸受15が摩耗して回転軸6が上側の導体37と下側の導体37の両方に接触すると、回転軸6を介して導体37,37同士が電気的に接続される。導通検知器35はこれら導体37,37同士の電気的導通を検知し、同時に、導通検知器35は上側の導体37と回転軸6との電気的導通を検知する。したがって、水中軸受15が所定の摩耗量(t2)に達したことを二重に検知することができ、信頼性の高い摩耗検知機構を実現することができる。なお、3つ以上の導体37を水中軸受15に隣接して配置してもよい。この場合、各導体37の回転軸側の端部を、水中軸受15の滑り接触面から異なる距離で位置させることができる。このような配置とすることにより、水中軸受15の摩耗を多重に検知することができる。
【0041】
図13は、本発明の第5の実施形態に係る立軸ポンプに組み込まれた水中軸受の摩耗を検知する機構の模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は、上述した第2の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。また、本実施形態においても水中軸受12,15の摩耗検知機構は同一の構成を有しているので、以下、水中軸受15の摩耗検知機構について説明する。
【0042】
図13に示すように、棒状または板状の一対の導体37,37が水中軸受15に隣接して配置されている。この導体37,37には一対の第1のケーブル51,51が接続され、第1のケーブル51,51はさらに導通検知器35に接続されている。第1のケーブル51,51は、第1の実施形態のケーブル40と同様の構成を有している。すなわち、各第1のケーブル51は、少なくとも3本の導線41と、これらの導線41の端部に接続された結束線43とを備えている。図13には示されていないが、導線41の端部と結束線43の端部は、端子ボックス45(図4参照)に収容されている。なお、第1の実施形態で説明したように、結束線43は省略することができる。
【0043】
さらに、導通検知器35は第2のケーブル52によって回転軸6に電気的に接続されている。この第2のケーブル52は、少なくとも1本の導線を備えている。第2の実施形態と同様に、第2のケーブル52と回転軸6とは、直接的または間接的に接続することができる。この直接的または間接的な接続は、第2の実施形態で説明した各形態と同様の方法で行うことができる。
【0044】
水中軸受15が摩耗して、回転軸6が一対の導体37,37に接触すると、導体37,37が回転軸6を介して電気的に接続される。導通検知器35は、導体37,37同士の電気的接続と、導体37と回転軸6との電気的接続を同時に検出する。したがって、導通検知器35によって、水中軸受15が所定の摩耗量に達したことを二重に検出することができる。本実施形態では、導通を確認するための部材として、少なくとも3本の導線と、回転軸6(およびポンプケーシング2または据付用ベース23)を用いているため、腐食などを原因とする摩耗検知の失敗が起こりにくい。したがって、信頼性の高い摩耗検出機構を提供することができる。なお、3つ以上の導体を水中軸受15に隣接して配置することもできる。
【0045】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0046】
1 インペラケーシング
1a 吸込ベルマウス
1b ポンプボウル
2 ポンプケーシング
3 吊下管
4 吐出曲管
6 回転軸
7,17 支持部材
10 羽根車
10a インペラハブ
10b インペラ
11 外軸受
12,15 水中軸受
13 ボウルブッシュ
14 ガイドベーン
18 駆動源
19 ハンドホール
22 ポンプ据付床
23 据付用ベース
24 ポンプ挿通孔
35 導通検知器
37 導体
38 絶縁材
40 ケーブル
41 導線
42 端部
43 結束線
45 端子ボックス
51 第1のケーブル
52 第2のケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車と、
前記羽根車に連結された回転軸と、
前記羽根車および前記回転軸を収容するポンプケーシングと、
前記回転軸を回転自在に支持する滑り接触面を有する水中軸受と、
前記ポンプケーシングの外部に配置された導通検知器と、
前記水中軸受に隣接して配置された複数の導体と、
前記複数の導体と前記導通検知器とを接続する複数のケーブルとを備え、
前記複数の導体の各端部は、前記滑り接触面から前記回転軸の径方向において所定の距離だけ離間しており、
前記複数のケーブルは、それぞれ少なくとも3本の導線を有することを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項2】
前記3本の導線の端部は、電気的に互いに分離可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項3】
前記3本の導線の端部には、該3本の導線を電気的に互いに接続する結束線が着脱自在に接続されており、
前記導通検知器は、前記結束線を介して前記3本の導線に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項4】
前記導通検知器は、前記ポンプケーシングが設置されるポンプ据付床の上、またはポンプ据付床よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項5】
羽根車と、
前記羽根車に連結された回転軸と、
前記羽根車および前記回転軸を収容するポンプケーシングと、
前記回転軸を回転自在に支持する滑り接触面を有する水中軸受と、
前記ポンプケーシングの外部に配置された導通検知器と、
前記水中軸受に隣接して配置された少なくとも1つの導体と、
前記導体と前記導通検知器とを接続する第1のケーブルと、
前記導通検知器と前記回転軸とを直接的または間接的に接続する第2のケーブルとを備え、
前記導体の端部は、前記滑り接触面から前記回転軸の径方向において所定の距離だけ離間していることを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項6】
前記第1のケーブルは、少なくとも3本の導線を有することを特徴とする請求項5に記載の立軸ポンプ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの導体は、複数の導体であり、
前記第1のケーブルは、前記複数の導体にそれぞれ接続される複数のケーブルであることを特徴とする請求項5に記載の立軸ポンプ。
【請求項8】
前記複数のケーブルは、それぞれ少なくとも3本の導線を有することを特徴とする請求項7に記載の立軸ポンプ。
【請求項9】
前記複数の導体の端部は、前記滑り接触面から前記回転軸の径方向において異なる距離で離間していることを特徴とする請求項7に記載の立軸ポンプ。
【請求項10】
前記導通検知器は、前記ポンプケーシングが設置されるポンプ据付床の上、またはポンプ据付床よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の立軸ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−248939(P2010−248939A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96766(P2009−96766)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【出願人】(506236820)株式会社 荏原由倉ハイドロテック (31)
【Fターム(参考)】