説明

竪型粉砕機の制御方法

【課題】 竪型粉砕機に生じる異常振動を効果的に防止できる竪型粉砕機の制御方法と、その制御方法に用いるに好適な制御装置を提供する。
【解決手段】 竪型粉砕機1を停止させる際において、竪型粉砕機1内に新規原料を供給することを停止させるとともに、回転テーブル2を駆動する電動機2Mを定格回転数から徐々に低下させ、かつ、エキゾーストファン89の風量、及びセパレータ14の回転数を、電動機2Mの回転数低下にともないあわせて徐々に低下させることによって、竪型粉砕機1に発生する異常振動を防止することができる。本発明によれば、竪型粉砕機の停止動作中に生じる異常振動を効果的に防止し、停止後において、竪型粉砕機内に残る原料の量を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に石炭、オイルコークス、石灰石、スラグ、クリンカ、セメント原料、又化学品等を原料として粉砕する竪型粉砕機の制御方法及び制御装置に係り、特に、竪型粉砕機で原料を微粉砕する際に生じやすい異常振動を防止又は抑制するに好適な竪型粉砕機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、石炭やオイルコークス等を粉砕する粉砕機として竪型粉砕機(竪型ミル、或いは竪型ローラミルと称されることもある)と呼ばれる粉砕機が広く用いられている。
【0003】
近年では、特に、竪型粉砕機によって原料を微粉砕するケースも増えてきており、竪型粉砕機内に分級機構を備えた型式の竪型粉砕機が増加している。分級機構を内部に備えた竪型粉砕機としては,特許文献1に開示されるような従来技術が公知である。
【0004】
【特許文献1】特開平5−104012号公報
【0005】
特許文献1に示される竪型粉砕機は、粉砕機の下部から吹き込んだ気流によって、粉砕した原料を搬送し上昇させるとともに、竪型粉砕機内の上部に配した分級機構によって、気流により搬送された原料の中から微粉のみを選抜して、機外に取出すタイプの竪型粉砕機であって、一般的にエアスエプト式と呼ばれる型式の竪型粉砕機である。
【0006】
以下、特許文献1に開示されたエアスエプト式の竪型粉砕機の構造等について簡略に説明する。特許文献1に開示された竪型粉砕機は、回転テーブルの上方に、分級機構として複数毎の回転羽根を有した回転セパレータを備えており、該回転セパレータの中心軸を上下に貫通するようにして原料投入シュートが配されている。そして、原料投入シュートを介し、原料投入口から回転テーブル上に原料を投入する(供給と称することもある)ことができるよう構成されている。
【0007】
原料投入シュートによって回転テーブルの上方から、回転テーブル中央部に供給された原料は、回転テーブル上で渦巻き状の軌跡を描きながら、回転テーブルの外周部に向かって移動する。回転テーブルの外周縁部にはダムリングが設けられ、回転テーブル上で所要の原料厚みを保持するように構成されているので、回転テーブルの外周部に移動した原料は、ダムリングでせき止められ、回転テーブルと粉砕ローラに噛み込まれ粉砕される。
【0008】
なお、回転テーブルと粉砕ローラに噛み込まれて粉砕された原料の一部は、回転テーブルの外縁部に周設されたダムリングを乗り越え、回転テーブル上面の外周部とケーシングとの隙間である環状通路(環状空間部と称することもある)へと向かう。
【0009】
竪型粉砕機の運転中には、粉砕機下部に設けられたガス導入口より、エキゾーストファン等の送風機により、竪型粉砕機内にガスを導入しており、回転セパレータ部を介して、粉砕機上方に設けた取出口から機外に排出している。その結果、竪型粉砕機のケーシング内で、該回転テーブル下方から回転セパレータ上方に向かうガスの気流が生じている。
従って、該ダムリングを乗り越えて環状通路に達した原料の一部は、前記ガスの気流により吹き上げられて、ケーシング内を上昇する。
【0010】
ケーシング内において上昇する気流は、回転セパレータの影響を受けて、旋回しながら上昇する気流となっている。そのため、気流により吹き上げられた原料の中で、径が大きく重量の大きな原料は、その重量のためにケーシング下方に落下する、或いは、気流による旋回により原料自身に発生する遠心力によって気流から逸脱してケーシング下方に落下する等し、回転セパレータを通過することができない。回転セパレータを通過できず、落下した原料は、再度粉砕ローラに噛み込まれて粉砕される。なお、径の小さな原料は、羽根の間を抜けて回転セパレータを通過し、上部取出口より取り出される。
【0011】
環状通路に達した原料の中で特に粒径の大きな原料は、環状通路より回転テーブル下方に落下して下部取出口より竪型粉砕機1の外に取り出された後、バケットエレベータ等の搬送機を介して、型粉砕機の原料投入口から再度投入されて、粉砕される。
【0012】
ところで、粉砕機が加圧式(粉砕機内にファンによりガスを吹き込む方式)であるか、負圧式(粉砕機内のガスをファンにより吸引する方式)であるかを問わず、通常、竪型粉砕機は、テーブル上の原料を全て払い出し完了させた後に、運転を停止することが好ましいが、実際には、原料が若干テーブル上に残っていても一定時間計時すると電動機を停止させて運転を停止させているケースがほとんどである。
【0013】
例えば、竪型粉砕機を停止させようとした場合に、先ず竪型粉砕機に原料を投入する原料供給装置の停止命令が出た後、一定時間計時後に、竪型粉砕機に停止命令が発信される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前述した従来式の停止方法の場合には、一定時間計時後に、竪型粉砕機のテーブル回転等が停止するのであって、停止するまでの間は、テーブルの回転数、ファンによる風量、及びセパレータの回転数等は、一定条件で動き続けている。
そのため、一定時間計時後に、竪型粉砕機が停止するまでの間は、回転テーブルは定格回転数で動き続けており、その間は、竪型粉砕機内の回転テーブルが、定格回転数で回転しているにもかかわらず、テーブル上に投入される原料が遮断されることになって、テーブル上の原料層の厚みは極端に薄くなっている。
【0015】
従って、原料供給装置の停止命令が発信されてから竪型粉砕機が停止するまでの間、粉砕ローラがテーブル面を叩く現象が発生し、騒音が発生していた。この騒音は、粉砕ローラにメカニカルストッパが具備されている場合とされていない場合で、状況が異なるものの、大きな騒音となって問題となるケースが多い。
【0016】
また、竪型粉砕機内を点検すると、竪型粉砕機の停止時において、新規原料の供給が停止されても、竪型粉砕機内には循環中の原料が多量に残っており、粉砕テーブル等に堆積している。この堆積原料は、微粉であるため自然着火する可能性があり、また再起動時に着火して爆発を起こす危険性があるため、停止時には、竪型粉砕機内に、かなりの量の水を投入する等の対策が実施されていた。
【0017】
しかし、運転中において、竪型粉砕機内は加熱されていることも多く、熱せられた竪型粉砕機内に冷水を注入したことによって、竪型粉砕機の機器材質が、サーマルショックにより金属割れする等という問題が発生することもあった。そのため、竪型粉砕機を停止させる際には、如何にして、騒音、ミル振動の発生を抑止し、さらに竪型粉砕機内に微粉を残さないかが大きな課題となっていた。
【0018】
本発明は、以上のような要求に鑑みてなされたものであり、竪型粉砕意の運転停止動作中に発生しやすい竪型粉砕機の騒音を抑制し、粉砕機内に残る原料の量を減らして安全な状態で停止させるに好適な竪型粉砕機の制御方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するため、本発明による竪型粉砕機の制御方法は、
(1) 複数個の回転自在な粉砕ローラを備えて回転テーブル上に供給した原料を、回転テーブルと粉砕ローラとの間で粉砕するとともに、該粉砕した原料を、該回転テーブルの下方に設けたガス導入口から導入したガスによって吹き上げて、回転テーブルの上方に設けた製品取出口からガスとともに取り出す竪型粉砕機の制御方法であって、竪型粉砕機を停止させる際において、竪型粉砕機への新規原料の供給を停止させるとともに、該回転テーブルを駆動する電動機を定格回転数から徐々に低下させ、かつ、ファンの風量、及びセパレータの回転数を、該電動機の回転数低下にあわせて徐々に低下させる。
【0020】
(2) (1)に記載の竪型粉砕機の制御方法において、前記回転テーブルを駆動する電動機を、定格回転数からステップ状に減少させて、徐々に低下させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、原料供給装置の停止命令が発信されてから竪型粉砕機が停止するまでの間、回転テーブルの回転数を徐々に低減させることにより、粉砕ローラがテーブル面を叩く現象の発生を抑制でき、騒音を低減することができる。
また、テーブル回転数を低下させると同時に、セパレータ回転数を低減させることにより、竪型粉砕機内に保有している循環原料をファンの吸引力で(または吹きだし)パージして、テーブル上に残る原料の量を減少させることができるので、停止した粉砕機内で微粉が発火する等といった問題を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づき本発明の好ましい実施形態の例について詳細に説明する。
図1は本実施形態に係り竪型粉砕機の概略の構造を説明するための説明図である。図2は本実施形態に係り竪型粉砕機を用いた粉砕システムを概念的に説明する図である。図3は風量と摩擦係数の関係を表すグラフ、図4は回転テーブルの速度と動摩擦係数の関係を表すグラフ、図5は振動数比と振動増幅係数の関係を表すグラフである。
図6はインバータ制御でテーブル回転数を徐々に低下させた場合の騒音レベルを示すグラフであり、図7はテーブル回転数、ファン動力、及びセパレータ回転数の関係を示すグラフであり、図8は従来技術によりテーブル回転数を低下させた場合の騒音レベルを示すグラフである。
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る竪型粉砕機1の好ましい構成について説明する。
本実施形態に用いた竪型粉砕機1は、図1に示すように竪型粉砕機1の外郭を形成するケーシング1B、回転テーブル2、回転テーブル2の上面(回転テーブル上面2Aと称することもある)外周部を円周方向に等分する位置に配設した複数個のコニカル型の粉砕ローラ3、竪型粉砕機1の下部に設置された減速機2B、減速機2Bを介して回転テーブル2を駆動する可変速式の電動機2M、及び電動機2Mの回転数を制御する制御盤50、を備えている。
【0024】
粉砕ローラ3は、軸7により下部ケーシングに回動自在に軸着した上部アーム6と、該上部アーム6と一体に形成した下部アーム6Aとを介して油圧シリンダ8のピストンロッド9に連結されており、該油圧シリンダ8の作動によって回転テーブル上面2Aの方向に押圧されて、回転テーブル上面2Aに原料を介して従動することによって回転する。
【0025】
前記ケーシング1Bの回転テーブル上面2Aの中央上部には、セパレータ14と、原料投入口35が設けられており、また、セパレータ14の中心軸を上下に貫通するようにして原料投入シュート13が配されて、原料投入シュート13を介して原料投入口35から回転テーブル上面2Aに原料を投入する(供給と称することもある)ことができるよう構成されている。
また、セパレータ14は、セパレータ14の回転軸を中心として上方に拡径する逆円錐台状に一定間隔の隙間をあけて並べられた複数枚の羽根14Aを備えて、図示しない駆動装置により自在に回転できる構成となっている。
【0026】
原料投入シュート13から投入した原料は、回転テーブル上面2Aを渦巻き状の軌跡を描きながら回転テーブル上面2Aの外周部に移動して、回転テーブル上面2Aと粉砕ローラ3に噛み込まれ粉砕される。そして、回転テーブル上面2Aと粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕された原料の一部は、回転テーブル上面2Aの外縁部に周設されたダムリング15を乗り越え、回転テーブル上面2Aの外周部とケーシングとの隙間である環状通路30(環状空間部30と称することもある)へと向かう。ここで、ケーシング1Bの回転テーブル2の下方には、ガスを導入するためのガス導入口33を設けており、さらに回転テーブル上方には該ガスとともに粉砕した原料を取り出すための上部取出口39を設けている。
【0027】
竪型粉砕機1の運転中において、該ガス導入口33よりガス(本実施形態においては空気)を導入することによって、前記ケーシング1B内において該回転テーブル下方からセパレータ14を通過して上部取出口39へと流れるガスの気流が生じている。
【0028】
竪型粉砕機1内に投入した原料と、回転テーブル2と粉砕ローラ3に粉砕されてダムリング15を乗り越えた原料の一部は、前記ガスにより吹き上げられてケーシング内を上昇し、回転セパレータ14に達する。
ここで、径の大きく重量の大きな原料はセパレータ14の羽根14Aを通過することができずセパレータ14の下方に落下して再度粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕されるとともに、径の小さな原料は、隙間をあけて並べられた羽根14Aの間を抜けてセパレータ14を通過し、上部取出口39より取り出される。
【0029】
また、粉砕ローラ3に噛み込まれずそのまま環状通路に達したような一部の極大な粒径の原料は、環状通路30より回転テーブル下方に落下して下部取出口34より竪型粉砕機1の外に取り出される。
【0030】
なお、本実施形態に用いることのできる竪型粉砕機1の型式は、前述したものに限らないことは勿論であって、例えば、粉砕ローラ3の形状がスフェリカル形状のタイヤ型の竪型粉砕機1であっても良い。
【0031】
なお、図1に示す実施形態において、電動機2Mは、図示しないインバータ電源により可変速できる方式であり、電動機2Mは、減速機2Bを介して回転テーブル2に連結されている。従って、電動機2Mは、制御盤50の制御装置50Aよりから送信される信号によって、その回転速度を自在に変化させて、回転テーブル2の回転速度を自在に変化させることができる。
【0032】
次に本実施形態に係る粉砕システムの好ましい1例ついて図2を参考に説明する。
図2に示した粉砕システムは、竪型粉砕機1、原料ホッパ20、バケットエレベータ25、原料ホッパ21、エキゾーストファン89等を備えている。
原料ホッパ20に蓄えられた原料は、バケットエレベータ25並びに原料ホッパ21等を介して竪型粉砕機1に投入されて粉砕される。竪型粉砕機1内で粉砕された原料は、エキゾーストファン89によるガスの気流により、竪型粉砕機1内を上方に移動して製品取出口39から機外に取り出される。また、竪型粉砕機1の中に投入された原料の中で、製品取出口39から機外に取り出されなかった一部の原料については、下部取出口34から機外に取り出されて、バケットエレベータ25並びに原料ホッパ21等を介して竪型粉砕機1に再度投入されて粉砕される。
【0033】
以下、本実施形態による竪型粉砕機1の制御方法について、従来技術と異なる部分を中心として説明する。
なお、第1実施形態に用いた竪型粉砕機1は、粉砕ローラの個数が3個であって、テーブル回転数は73RPMであり、粉砕ローラ中心直径Dは0.4mであり、テーブル直径Tは0.64mである。
【0034】
原料投入シュート13によって、回転テーブル中央部に供給された原料は、回転テーブル2の外周部に向かって移動し、回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれ粉砕される。
【0035】
回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕された原料の一部は、回転テーブルの外縁部に周設されたダムリング15を乗り越え、回転テーブル2A上面の外周部とケーシング1Bとの隙間である環状通路30へと向かう。
【0036】
竪型粉砕機1の運転中には、粉砕機下部に設けられたガス導入口33より、エキゾーストファン89によって、機内にガスを導入しており、回転セパレータ部を介して、粉砕機上方に設けた取出口から機外に排出している。その結果、竪型粉砕機1のケーシング1B内で、回転テーブル2下方から回転セパレータ14上方に向かうガスの気流が生じている。従って、ダムリング15を乗り越えて環状通路30に達した原料の一部は、前記ガスの気流により吹き上げられて、ケーシング1B内を上昇する。
【0037】
ケーシング1B内において上昇する気流は、回転セパレータ14の影響を受けて、旋回しながら上昇する気流となっている。そのため、気流により吹き上げられた原料の中で、径が大きく重量の大きな原料は、その重量のためにケーシング1B下方に落下する、或いは、気流による旋回により原料自身に発生する遠心力によって気流から逸脱してケーシング1B下方に落下する等し、回転セパレータ14を通過することができない。
【0038】
回転セパレータ14を通過できず、落下した原料は、竪型粉砕機1内で循環して、再度、粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕される。或いは、環状通路より回転テーブル下方に落下して下部取出口より竪型粉砕機1の外に取り出された後、バケットエレベータ等の搬送機を介して、型粉砕機の原料投入口から再度投入されて、粉砕される。なお、径の小さな原料は、羽根の間を抜けて回転セパレータを通過し、上部取出口より取り出される。
【0039】
以下、竪型粉砕機1を停止する際における制御方法を説明する。
まず、本発明による竪型粉砕機1の実施形態においては、竪型粉砕機1を停止させる際において、竪型粉砕機1内に原料ホッパ20から送られる新規原料を供給することを停止させるとともに、図示しないインバータ電源を制御することにより、回転テーブル2を駆動する電動機2Mを定格回転数から徐々に低下させる。
【0040】
また、本実施形態においては、さらに、テーブル回転数2を低下させると同時に、セパレータ14の回転数を徐々に低減させることによって、竪型粉砕機1内に保有している循環原料をエキゾ−ストファン89の吸引力でパージして、回転テーブル2上に残る原料の量を減少させることができるので、停止した竪型粉砕機1内で微粉が発火する等といった問題を抑制できる。なお、セパレータ14の回転数を低減させるにあわせて、エキゾーストファン89の吸込量を低減させると、竪型粉砕機の外に排出される原料の粒径が、通常運転中に比較して大きく変化しないので好ましい形態である。
【0041】
図6と図8に、回転テーブル2の回転数を徐々に低下させて停止させた場合と、従来方式による停止方法による場合の騒音レベルを示す。
インバータ電源を使用して徐々に回転テーブル2の回転数を低下させた場合の方が、明らかに騒音レベルが低く、効果が認められる。
【0042】
ここで、従来式の停止方法の場合には、前述したように、原料供給装置の停止命令が発信されてから竪型粉砕機1が停止するまでの間、粉砕ローラ3がテーブル面を叩く現象が発生し、騒音が発生する。
図3に回転テーブルの回転速度と動摩擦係数(粉砕ローラと原料との間の動摩擦係数)の関係を示す。本実施形態によれば、竪型粉砕機1の中にある原料を機外に排出するために必要な一定時間の間に、徐々に回転テーブル2の回転数を遅くするので、粉砕ローラ3と原料の摩擦係数が大きくなり、その結果、粉砕部ですべりが生じにくくなるので、竪型粉砕機1の騒音を抑止する効果があると考えられる。
【0043】
このような理由から、竪型粉砕機1を停止させる際においては、竪型粉砕機1内に原料ホッパ20から送られる新規原料を供給することを停止させるとともに、回転テーブル2の回転数を定格回転数から徐々に低下させ、また、それに合わせて、セパレータ14の回転数を低減させることによって、竪型粉砕機1内に保有している循環原料をエキゾーストファン89の吸引力でパージして、回転テーブル2上に残る原料の量を減少させることが、騒音の防止、又爆発などの危険防止に有効である。
【0044】
なお、本実施形態はインバータ電源を用いて、回転テーブル2の回転数を定格回転数から一定の割合で徐々に低下させて停止させたが、回転テーブル2の回転数を定格回転数から徐々に低下させる方法は、これに限らず、例えば、回転テーブル2の回転数を、定格回転数からステップ状に減少させて停止する方式などであっても良い。
【0045】
ところで、摩擦係数と竪型粉砕機1の振動の関係は、摩擦係数が低下した際に振動や騒音の起点となりやすい。また、竪型粉砕機1に発生する騒音のもととなる振動は摩擦係数の他に下記のように考えることもできる。
【0046】

【0047】
なお、加振力をバネ定数で割ったものを変位量(A)とする。
【0048】
また、図5に示したように振動増幅係数M、加振振動数(ω)と粉砕層の振動数(ω0)の比率により変化することが分かる。
通常は、図5においてω/ω0が1.0以下(=共振点以下)で運転されているので、粉砕層の振動数(ω0)を変えずに(製品の粒度に比例し同粒度は変更できないため)加振振動数(ω)を低下させることにより振動増幅係数を低下させることができる。
【0049】
加振振動数(ω)は粉砕ローラの回転数に比例するため同調するテーブル回転数を変更することにより加振振動数を低減できる。この結果、分母、分子ω/ω0の内分子を低下させれば振動増幅係数は減少するので、竪型粉砕機1の振動が抑制できる。
【0050】
以上、説明したように、振動や騒音を抑制または抑止する方法として、摩擦係数の確保法と加振振動数の制御法がある。この2方法に共通するものは、回転テーブル2の回転数であり、原料性状に合わせて都度適正な回転数に設定することにより竪型粉砕機1の能力を最大限に引き出すことができる。
【0051】
即ち、竪型粉砕機1の騒音が大きくなる場合に、回転テーブル2の回転数を任意に低下させて、加振振動数を低下させ、振動増幅係数を減少させれば、振動や騒音の要因を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る竪型粉砕機の実施形態を示す要部縦断面図である。
【図2】本実施形態に係る竪型粉砕機を用いた粉砕システムを概念的に説明する図である。
【図3】風量と摩擦係数の関係を表すグラフである。
【図4】回転テーブルの速度と動摩擦係数の関係を表すグラフである。
【図5】振動数比と振動増幅係数の関係を表すグラフである。
【図6】本実施形態による騒音レベルを表したグラフである。
【図7】テーブル回転数、ファン動力、及びセパレータ回転数の関係を示すグラフである。
【図8】従来技術による騒音レベルを表したグラフである。
【符号の説明】
【0053】
1 竪型粉砕機
2 回転テーブル
3 粉砕ローラ
13 原料投入シュート
14 回転セパレータ
15 ダムリング
1B ケーシング
20 原料ホッパ(新規原料供給用)
21 原料ホッパ
25 バケットエレベータ
30 環状通路
33 ガス導入口
89 エキゾーストファン(送風機)
34 下部取出口
35 原料投入口
39 製品取出口(上部取出口)
50 制御盤
50A 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の回転自在な粉砕ローラを備えて回転テーブル上に供給した原料を、回転テーブルと粉砕ローラとの間で粉砕するとともに、
該粉砕した原料を、該回転テーブルの下方に設けたガス導入口から導入したガスによって吹き上げて、回転テーブルの上方に設けた製品取出口からガスとともに取り出す竪型粉砕機の制御方法であって、
竪型粉砕機を停止させる際において、竪型粉砕機への新規原料の供給を停止させるとともに、該回転テーブルを駆動する電動機を定格回転数から徐々に低下させ、かつ、ファンの風量、及びセパレータの回転数を、該電動機の回転数低下にあわせて徐々に低下させることを特徴とする竪型粉砕機の制御方法。
【請求項2】
前記回転テーブルを駆動する電動機を、定格回転数からステップ状に減少させて、徐々に低下させる請求項1記載の竪型粉砕機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−178840(P2008−178840A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15824(P2007−15824)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】