説明

端子付き電気化学デバイス

【課題】回路基板上での実装面積が小さいにもかかわらず、はんだリフロー時に位置ズレが発生しにくく、はんだ接合部に高い接続信頼性を付与できる端子付き電気化学デバイスを提供すること。
【解決手段】本発明の端子付き電気化学デバイス11は、円形状の電気化学デバイス12、第1めっき部22を端部に有する第1タブ端子21、第2めっき部32を端部に有する第2タブ端子31を備える。第1めっき部22及び第2めっき部32は同一面上に位置する。電気化学デバイス11に外接する仮想矩形41の領域内に第1タブ端子21及び第2タブ端子31が配置される。第2めっき部32が領域における1つの角部C1に配置される。第1めっき部22が他の3つの角部C2〜C4のうちの少なくとも1つに配置される。第2めっき部32の面積に対する第1めっき部22の面積の比が1.5以上3.0以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板上にはんだ付けにより表面実装される端子付き電気化学デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末などといった小型の電子機器におけるバックアップ用途の電源として、コイン型電池等の電気化学デバイスがよく用いられている。コイン型電池は表裏両面に電極を備えており、通常それらの電極には先端にめっきを施したタブ端子が接合されている。このような端子付きのコイン型電池は、回路基板上のランドに対してリフロー式はんだ付けにて接合された状態で使用される(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、小型の電子機器のさらなるコンパクト化を達成するためには、各種部品を回路基板上に高密度に実装する必要がある。そのためには個々の部品について基板上での占有面積(以下「実装面積」と呼ぶ。)をできるだけ小さくすることが要求される。コイン型電池についても同様の要求があることから、通常は電池外周方向にタブ端子が大きく張り出さないようなデザインを採用している。より具体的にいうと、円形状をなすコイン型電池に外接する仮想矩形を想定した場合、その仮想矩形の領域内にタブ端子が配置されるようなデザインを採用している。また、回路基板側において一対のランドが形成されているランドエリアについても、上記の仮想矩形と同程度の小さな面積となるように設計している。同様に、タブ端子自体についても、ランドに合せて、できるだけめっき部を小面積に形成することが重要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−92102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、めっき部が小面積であるタブ端子を既設のランドにはんだ付けしようとしても、両者間に介在するはんだの量が不足する結果、はんだ接合部に十分な剥離強度を付与することが難しい。また、めっき部の小面積化のために幅狭のタブ端子を使用すると、タブ端子自体の強度低下が避けられない。このように、タブ端子のめっき部の小面積化には、一定の限界がある。
【0006】
ここで、幅狭のタブ端子を使用した場合でも、ランドの面積を若干大きくしてはんだの量を増やせば、剥離強度の向上が期待できるとも考えられる。しかしながら、推奨サイズよりもいくぶん大きなランドに対してはんだ付けをした場合、リフロー時におけるはんだの溶融によって電池が回転し、位置ズレを生じてしまう。その結果、タブ端子がランドエリアから外れやすくなり、はんだ接合部に高い剥離強度を付与できなくなる。それゆえ、はんだ接合部の強度確保のため、タブ端子のめっき部の面積をあらかじめ大きくしておく必要がある。そして、これもタブ端子のめっき部やランドの小面積化を妨げるひとつの要因となっている。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路基板上での実装面積が小さいにもかかわらず、はんだリフロー時に位置ズレが発生しにくく、はんだ接合部に高い接続信頼性を付与することができる端子付き電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段[1]〜[5]を以下に列挙する。
【0009】
[1]第1ランド及び第2ランドを有する回路基板上に表面実装される端子付き電気化学デバイスであって、前記回路基板側に配置される第1極及び前記第1極の反対側にある第2極を有する円形状の電気化学デバイスと、前記第1極に接合され、前記第1ランドにはんだ付けされる第1めっき部を端部に有する第1タブ端子と、前記第2極に接合され、前記第1めっき部と同一面上に端部が位置するように折り曲げ形成され、前記第2ランドにはんだ付けされる第2めっき部を前記端部に有する第2タブ端子とを備え、円形状の前記電気化学デバイスに外接する仮想矩形の領域内に前記第1タブ端子及び前記第2タブ端子が配置され、前記第2めっき部が前記領域における4つの角部のうちの1つに配置され、前記第1めっき部が他の3つの角部のうちの少なくとも1つに配置され、前記第1極側から見たときの前記第2めっき部の面積に対する前記第1めっき部の面積の比が1.5以上3.0以下であることを特徴とする端子付き電気化学デバイス。
【0010】
従って、手段1に記載の発明によると、円形状の電気化学デバイスに外接する仮想矩形の領域内に第1タブ端子及び第2タブ端子を配置していることから、これらタブ端子のデバイス外周方向への張出し度合が少なくなる。よって、端子付き電気化学デバイスの回路基板上での実装面積を小さく抑えることができる。また、第1めっき部及び第2めっき部について、上記のような相互位置関係及び面積比を採用した結果、はんだリフロー時にデバイスに対して働く回転モーメントの影響が軽減される。ゆえに、デバイスの回転位置ズレが起こりにくくなり、デバイスが本来の正しい位置にはんだ付けされる。よって、はんだ接合部に高い接続信頼性を付与することができる。
【0011】
[2]前記第1タブ端子は前記第1めっき部を1つのみ有するとともに、前記第1めっき部は、前記コイン型電池の中心を基準としたときの回転角が、前記第2めっき部が配置された角部と90°をなす位置関係の角部に配置されていることを特徴とする手段1に記載の端子付き電気化学デバイス。
【0012】
従って、手段2に記載の発明によると、例えば第1めっき部及び第2めっき部が同一の対角線上に配置(即ち上記回転角が180°となる角部に配置)されている場合に比べて、上記回転モーメントの影響をより効果的に軽減することができる。ゆえに、デバイスの回転位置ズレがいっそう起こりにくくなる。
【0013】
[3]前記第1タブ端子において前記第1めっき部が形成された端部の幅は、前記仮想矩形の一辺の長さの0.4倍未満であることを特徴とする手段1または2に記載の端子付き電気化学デバイス。
【0014】
第1めっき部が形成された端部の幅が0.4倍以上にするためには、第1タブ端子をある程度太く形成する必要があり、小面積化が妨げられる結果、仮想矩形の領域内に配置することが困難になる。これに対し、手段3に記載の発明によると、第1タブ端子をそれほど太く形成しなくてもよく、小面積化が妨げられない。よって、第1タブ端子を仮想矩形の領域内に配置しやすくなり、デバイスの回路基板上での実装面積を小さく抑えることができる。
【0015】
[4]前記第1タブ端子は、厚さ方向に段差を有しない平板状であって、かつ平面視で略L字状に形成されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれか1項に記載の端子付き電気化学デバイス。
【0016】
従って、手段4に記載の発明によると、第1タブ端子の形状が比較的単純なものとなるため、加工コストを抑えることができ、デバイスの高コスト化を回避することができる。また、厚さ方向に段差を有しない平板状であることから、デバイス形状の自由度を低下させにくいという利点がある。
【0017】
[5]前記第1タブ端子は、前記第1めっき部が形成された端部から反対側の端部に行くに従って屈曲するごとに段階的に幅広になっていることを特徴とする手段4に記載の端子付き電気化学デバイス。
【0018】
従って、手段5に記載の発明によると、第1タブ端子の形状が比較的単純なものとなるため、加工コストを抑えることができ、デバイスの高コスト化を回避することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上詳述したように、手段1〜5に記載の発明によると、回路基板上での実装面積が小さいにもかかわらず、はんだリフロー時に位置ズレが発生しにくく、はんだ接合部に高い接続信頼性を付与することができる端子付き電気化学デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の端子付きコイン型電池を、第2極である正極側から見たときの概略図。
【図2】実施形態の端子付きコイン型電池を、第1極である負極側から見たときの概略図。
【図3】実施形態の端子付きコイン型電池を側面側から見たときの概略分解図。
【図4】実施形態の端子付きコイン型電池を側面側から見たときの概略図。
【図5】回路基板のランドエリアを示す部分平面図。
【図6】回路基板上に端子付きコイン型電池を表面実装した状態を示す概略平面図。
【図7】回路基板上に端子付きコイン型電池を表面実装した状態を示す概略正面図。
【図8】別の実施形態の端子付きコイン型電池を示す概略平面図。
【図9】別の実施形態の端子付きコイン型電池を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の端子付き電気化学デバイスを具体化した実施の形態を図1〜図7に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1〜図4に示されるように、本実施形態の端子付きコイン型電池11は、端子付き電気化学デバイスの一種であって、主として小型の電子機器におけるバックアップ用途の電源として用いられるものである。この端子付きコイン型電池11を構成するコイン型電池12は、平面視で円形状を呈しており、表裏両面がそれぞれ負極13及び正極14となっている。具体的には、図3に示すコイン型電池12の下面側が第1極としての負極13、上面側が第2極としての正極14となっている。このコイン型電池12の場合、負極13の面積のほうが正極14よりもいくぶん小さくなっている。部品実装時に負極13は回路基板1側に配置される。一方、正極14は回路基板1とは反対側に配置される。
【0023】
ここで、図5、図7等には、本実施形態の端子付きコイン型電池11が実装されるべき回路基板1が示されている。この回路基板1の部品実装面4上にはランドエリアが設定されており、そのランドエリア内には第1ランド3及び第2ランド2が配置されている。本実施形態における第2ランド2は、第2タブ端子31をはんだ付けするための部分であって、銅めっき等の導電金属材料を用いて二等辺三角形状に形成されている。一方、第1タブ端子21をはんだ付けするための部分である第1ランド3は、同様に銅めっき等の導電金属材料を用いて形成されるとともに、第2ランド2よりも面積が2.5倍〜3.0倍程度大きい矩形状に形成されている。なお、これら第1ランド3及び第2ランド2の上には、後にはんだリフローを行うときの便宜のために予備はんだが施されている。また、第1ランド3及び第2ランド2にはそれぞれ配線パターン5,6が接続されている。第1ランド3及び第2ランド2は図示しないソルダーレジスト層から露出しており、配線パターン5,6は絶縁のためソルダーレジスト層で覆われている。
【0024】
図2、図3等に示されるように、端子付きコイン型電池11を構成する第1タブ端子21は、金属板(本実施形態では0.1mm厚のステンレス板)からなる平板状の部材である。第1タブ端子21は、厚さ方向に特に段差を有していない比較的単純な形状を有している。また、第1タブ端子21は平面視で略L字状に形成されており、その一方の端部23aには金属板両面をスズめっきで被覆してなる第1めっき部22が設けられている(図2、図3等の斜線部を参照)。第1タブ端子21は、平面視において45°屈曲された箇所を2つ有している。そして、第1タブ端子21は、第1めっき部22が形成された端部23aから反対側の端部23bに行くに従って屈曲するごとに段階的に幅広になっている(図2のW1,W2,W3を参照)。そして、このような第1タブ端子21は、幅広に形成された端部23bが負極13に溶接されている。本実施形態において負極13側の溶接部28は2箇所であり、コイン型電池12の中心O1を挟む両側の位置に設定されている。
【0025】
ここで、図1,図2に示されるように、円形状のコイン型電池12に外接する仮想矩形41を想定した場合、第1タブ端子21は全体的にその仮想矩形41の領域内に配置されるようになっている。本実施形態において、仮想矩形41は上記ランドエリアと同等の(あるいは僅かに小さい)大きさかつ同等の形状の領域となっている。仮想矩形41の一辺の長さをL1と定義すると、第1タブ端子21において第1めっき部22が形成された端部23aの幅W1は、長さL1の値の0.4倍未満となるように設定されている。上記長さL1は好ましくは0.2倍以上0.4倍未満である。本実施形態では、幅W1が長さL1の値の0.35倍程度に設定されている。
【0026】
図1、図3等に示されるように、端子付きコイン型電池11を構成する第2タブ端子31は、金属板(本実施形態では0.1mm厚のステンレス板)からなる部材である。ただし、第2タブ端子31は、金属板の一方の端部33aにおける2箇所に直角折曲部を有しており、厚さ方向に段差を有している。つまり、第1タブ端子21が二次元的な形状を有していたのに対し、第2タブ端子31は三次元的な形状を有している。第2タブ端子31において折り曲げられた側の端部33aは、表面実装のことを考慮して、第1タブ端子21の第1めっき部22と同一面上に位置している。また、当該端部33aには、金属板両面をスズめっきで被覆してなる第2めっき部32が設けられている(図1、図3等の斜線部を参照)。そして、このような第2タブ端子31は、幅広に形成された端部33bが正極14に溶接されている。本実施形態において正極14側の溶接部28は2箇所であり、コイン型電池12の中心O1を挟む両側の位置に設定されている。なお、第2タブ端子31についても、全体的に上記仮想矩形41の領域内に配置されるようになっている。
【0027】
図1、図2等に示されるように、仮想矩形41は4つの角部C1,C2,C3,C4を有している。仮想矩形41は2つの直交する対角線(図示略)を有しており、それらの対角線は中心O1にて交差している。そして、1つの角部C1を基準とした場合、角部C2,C4は、基準の角部C1が属する対角線上には属しておらず、もう一方の対角線上に属する位置関係にある。つまり、角部C2,C4と角部C1とは、コイン型電池12の中心O1を基準としたときの回転角が、90°となっている。また、角部C1を基準とした場合、角部C3は、基準の角部C1が属する対角線上に属している。つまり、角部C3と角部C1とは、コイン型電池12の中心O1を基準としたときの回転角が、180°となっている。
【0028】
そして、第2タブ端子31の第2めっき部32は、4つある角部C1〜C4のうち、角部C1に配置されている。第2めっき部32において第1めっき部22と同一平面上にある部分は、第2ランド2と同様に略二等辺三角形状となっている。第1タブ端子21の第1めっき部22は、コイン型電池12の中心O1を基準としたときの回転角が、第2めっき部32が配置された角部C1と90°をなす位置関係の角部C2に配置されている。
【0029】
図2に示されるように、端子付きコイン型電池11を負極13側、即ち回路基板1に向ける面の側から見たとき、第1めっき部22において可視となる部分の面積(以下、単に「第1めっき部22の面積」と呼ぶ。)をS1と定義する。また、同じ側から見たとき、第2めっき部32において可視となる部分の面積(以下、単に「第2めっき部32の面積」と呼ぶ。)をS2と定義する。換言すると、S1は第1タブ端子21におけるはんだ付け面積、S2は第2タブ端子31におけるはんだ付け面積であり、これらは同一面内に存在している。そして、第2めっき部32の面積S2に対する第1めっき部22の面積S1の比をSrと定義する。本実施形態では、Sr(=S1/S2)の値が1.5以上3.0以下になるように設計している。Srの値は2.0以上3.0以下がより好ましく、2.5以上3.0以下が特に好ましい。その理由は、面積比Srの値が上記好適範囲内であると、第1めっき部22の小面積化を妨げることなく、はんだ接合部に十分な剥離強度を付与することができるからである。これに対して、例えば、面積比Srが1.5未満であると、十分な剥離強度を付与できなくなるおそれがある。逆に、面積比Srが3.0超であると、十分な剥離強度を付与できる一方で第1めっき部22の小面積化が妨げられ、全体の小型化が困難になるおそれがある。
【0030】
上記構成を有する本実施形態の端子付きコイン型電池11は、図6に示されるような状態で回路基板1上に搭載される。このとき、予備はんだが施された第1ランド3上に第1はんだ部22を載置し、同じく予備はんだが施された第2ランド2上に第2はんだ部32を載置するようにする。そしてこの状態ではんだ溶融温度に加熱するリフロー工程を実施する。すると、図7に示されるように、第1ランド3上に第1タブ端子21がはんだ45を介して接合され、第2ランド2上に第2タブ端子31がはんだ45を介して接合される。以上の結果、端子付きコイン型電池11と回路基板1とが電気的に接続される。
【0031】
以下、端子付きコイン型電池11について行った評価試験について説明する。ここでは、第2タブ端子31の第2めっき部32の面積S2を一定にし、第1タブ端子21の第1めっき部22の面積S1を適宜変更することで、上記面積比Srの値が異なる9種類の試験サンプルを作製し、リフローを行った。第1めっき部22の面積S1を変更する方法としては、第1めっき部22の幅W1を増減する方法や、第1めっき部22を電池外周部に張り出す方法などを採用した。そして、これら試験サンプルについて、常法に従いそれぞれ複数回ずつZ方向剥離強度(N)及びY方向剥離強度(N)を測定し、個々に平均値を求めた。
【0032】
なお、Z方向剥離強度とは、端子付きコイン型電池11に対して回路基板1の部品実装面4に垂直な方向に荷重を加えたときに剥離する強度のことを指す。Y方向剥離強度とは、端子付きコイン型電池11に対して回路基板1の部品実装面4に沿った方向に荷重を加えたときに剥離する強度のことを指す。その結果を以下の表1に示す。
【0033】
ちなみに、本評価試験では15N以上の剥離強度を達成できるか否かを一応の目安とした。なお、リフロー後に各端子付きコイン型電池11を目視検査することで、回転位置ズレの発生状況の調査も行った。
【表1】

【0034】
表1から明らかなように、剥離強度は面積比Srが大きくなるほど増大する傾向にあった。Y方向剥離強度(N)について見ると、面積比Srが1.0のときには目安である15Nを達成できなかったのに対し、1.5以上のときには達成することができた。また、Z方向剥離強度(N)について見ると、面積比Srが1.0〜2.0のときには目安である15Nを達成できなかったのに対し、2.5以上のときには達成することができた。しかしながら、面積比Srを3.0以上に設定しようとすると、第1めっき部22を大きく形成せざるをえなくなるため、全体の小型化の観点から不利になることがわかった。また、リフロー後に各端子付きコイン型電池11を目視検査したところ、各試験サンプルについて回転位置ズレは発生していなかった。ゆえに、各端子付きコイン型電池11が本来の正しい位置にはんだ付けされていた。
【0035】
また、特に図示しないが、第1はんだ部22の位置を角部C2と角部C3との中間位置に移動した参考例を作製し、面積比Srをいくつか変更して同様の評価試験を行った。その結果、剥離強度についてはほぼ同様の傾向が認められた。しかしながら、リフロー後に目視検査したところ、回転位置ズレが多く発生する結果となった。これは第1はんだ部22と第2はんだ部32との相互位置関係が適切ではなく、はんだリフロー時に働く回転モーメントの影響が十分に軽減されなかったことに起因するものと推察された。
【0036】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0037】
(1)本実施形態の端子付きコイン型電池11では、円形状のコイン型電池12に外接する仮想矩形41の領域内に第1タブ端子21及び第2タブ端子31を配置している。そのことから、第1タブ端子21及び第2タブ端子31の電池外周方向への張出し度合が少なくなる。よって、端子付きコイン型電池11の回路基板1上での実装面積を小さく抑えることができる。また、第1めっき部22及び第2めっき部32について、上記のような相互位置関係及び面積比Srを採用した結果、はんだリフロー時に端子付きコイン型電池11に対して働く回転モーメントの影響が軽減される。ゆえに、端子付きコイン型電池11の回転位置ズレが起こりにくくなり、端子付きコイン型電池11が本来の正しい位置にはんだ付けされるようになる。よって、第1めっき部22の小面積化を妨げることなく、はんだ接合部における剥離強度を向上することができ、はんだ接合部に高い接続信頼性を付与することができる。
【0038】
(2)本実施形態では、第1タブ端子21が第1めっき部22を1つのみ有している。また、第1めっき部22は、コイン型電池12の中心O1を基準としたときの回転角が、第2めっき部32が配置された角部C1と90°をなす位置関係の角部C2に配置されている。従って、第1めっき部22及び第2めっき部32が同一の対角線上に配置(即ち上記回転角が180°となる角部C1,C3に配置)されている場合に比べて、上記回転モーメントの影響をより効果的に軽減することができる。ゆえに、この構成によると、端子付きコイン型電池11の回転位置ズレがいっそう起こりにくくなる。
【0039】
(3)本実施形態では、第1タブ端子21において第1めっき部22が形成された端部23aの幅W1を、仮想矩形41の一辺の長さL1の0.4倍未満に設定している。端部23aの幅W1を0.4倍以上にするためには、第1タブ端子21をある程度太く形成する必要があり、小面積化が妨げられる結果、仮想矩形41の領域内に配置することが困難になる。これに対して本実施形態では、第1タブ端子21をそれほど太く形成しなくてもよく、小面積化が妨げられない。よって、第1タブ端子21を仮想矩形41の領域内に配置しやすくなり、端子付きコイン型電池11の回路基板1上での実装面積を小さく抑えることができる。
【0040】
(4)本実施形態の第1タブ端子21は、厚さ方向に段差を有しない平板状であって、かつ平面視で略L字状に形成されている。従って、第1タブ端子21の形状が比較的単純なものとなるため、加工コストを抑えることができ、端子付きコイン型電池11の高コスト化を回避することができる。また、厚さ方向に段差を有しない平板状であることから、形状の自由度を低下させにくいという利点がある。
【0041】
(5)本実施形態の第1タブ端子21及び第2タブ端子31は、スズめっきからなる第1めっき部22及び第2めっき部32を有している。スズめっきははんだとの濡れ性がよいことから、リフローを行うと第1ランド3−第1めっき部22間、第2ランド2−第2めっき部32間に好適なはんだフィレットが形成されやすくなる。その結果、第1めっき部22及び第2めっき部32の周辺の余分なはんだが集められて固定されるとともに、はんだボールの発生を未然に防ぐことができる。また、剥離強度の向上にも貢献する。
【0042】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0043】
・上記実施形態では、第1タブ端子21は第1めっき部22を1つのみ有するとともに、第1めっき部22は、コイン型電池12の中心O1を基準としたときの回転角が、第2めっき部32が配置された角部C1と90°をなす位置関係の角部C2に配置されていたが、これに限定されない。例えば、図8に示す別の実施形態の端子付きコイン型電池11Aのように、第1めっき部22を2つ有するものとし、それらを角部C2,C4に配置する態様としてもよい。あるいは、図9に示す別の実施形態の端子付きコイン型電池11Bのように、第1めっき部22を2つ有するものとし、それらを角部C2,C3に配置する態様としてもよい。ちなみに、これらの場合における「第1めっき部22の面積S1」とは、2つある第1めっき部22の面積S1の総和を意味する。面積比Sr(=S1/S2)の値は、上記実施形態と同様に1.5以上3.0以下に設定される。
【0044】
・上記実施形態では、第1めっき部22及び第2めっき部32は、スズめっきからなるものとしたが、スズめっき以外のめっき(例えば金めっき、ニッケルめっき等)を選択してもよい。即ち、端子形成材料である金属板のはんだ濡れ性を改善しうる導電性金属のめっきであれば、適宜選択することが可能である。
【0045】
・上記実施形態では、第1極を負極13としかつ第2極を正極14とした電気化学デバイスを用いて端子付き電気化学デバイスを構成したが、第1極を正極14としかつ第2極を負極13としたものを用いてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、本発明の端子付き電気化学デバイスを端子付きコイン型電池11として具体化したが、例えば端子付きコイン型キャパシタ等に具体化しても勿論よい。
【0047】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0048】
(1)手段1乃至5のいずれか1項において、前記電気化学デバイスはコイン型電池またはコイン型キャパシタであること。
【0049】
(2)手段1乃至5のいずれか1項において、前記第1めっき部及び前記第2めっき部は、スズめっきからなること。
【0050】
(3)手段1乃至5のいずれか1項において、前記第1ランド及び前記第2ランドは、前記領域と同等の大きさ及び形状のランドエリア内に配置されていること。
【0051】
(4)手段1乃至5のいずれか1項において、前記第2ランドは二等辺三角形状であり、前記第1ランドは前記第2ランドよりも面積の大きい矩形状であること。
【0052】
(5)手段1乃至5のいずれか1項において、前記第1タブ端子及び前記第2タブ端子は、予備はんだが施された前記第1ランド及び前記第2ランド上に配置された状態ではんだリフローを行うことにより接合されたものであること。
【符号の説明】
【0053】
1…回路基板
2…第2ランド
3…第1ランド
11,11A,11B…端子付き電気化学デバイスとしての端子付きコイン型電池
12…電気化学デバイスとしてのコイン型電池
13…第1極としての負極
14…第2極としての正極
21…第1タブ端子
22…第1めっき部
31…第2タブ端子
32…第2めっき部
41…仮想矩形
C1,C2,C3,C4…角部
L1…仮想矩形の一辺の長さ
O1…(コイン型電池の)中心
S1…第1めっき部の面積
S2…第2めっき部の面積
Sr…(面積)比
W1…第1めっき部が形成された端部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ランド及び第2ランドを有する回路基板上に表面実装される端子付き電気化学デバイスであって、
前記回路基板側に配置される第1極及び前記第1極の反対側にある第2極を有する円形状の電気化学デバイスと、
前記第1極に接合され、前記第1ランドにはんだ付けされる第1めっき部を端部に有する第1タブ端子と、
前記第2極に接合され、前記第1めっき部と同一面上に端部が位置するように折り曲げ形成され、前記第2ランドにはんだ付けされる第2めっき部を前記端部に有する第2タブ端子と
を備え、円形状の前記電気化学デバイスに外接する仮想矩形の領域内に前記第1タブ端子及び前記第2タブ端子が配置され、前記第2めっき部が前記領域における4つの角部のうちの1つに配置され、前記第1めっき部が他の3つの角部のうちの少なくとも1つに配置され、前記第1極側から見たときの前記第2めっき部の面積に対する前記第1めっき部の面積の比が1.5以上3.0以下であることを特徴とする端子付き電気化学デバイス。
【請求項2】
前記第1タブ端子は前記第1めっき部を1つのみ有するとともに、前記第1めっき部は、前記コイン型電池の中心を基準としたときの回転角が、前記第2めっき部が配置された角部と90°をなす位置関係の角部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の端子付き電気化学デバイス。
【請求項3】
前記第1タブ端子において前記第1めっき部が形成された端部の幅は、前記仮想矩形の一辺の長さの0.4倍未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の端子付き電気化学デバイス。
【請求項4】
前記第1タブ端子は、厚さ方向に段差を有しない平板状であって、かつ平面視で略L字状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の端子付き電気化学デバイス。
【請求項5】
前記第1タブ端子は、前記第1めっき部が形成された端部から反対側の端部に行くに従って屈曲するごとに段階的に幅広になっていることを特徴とする請求項4に記載の端子付き電気化学デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−204235(P2012−204235A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69278(P2011−69278)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000177081)FDK鳥取株式会社 (28)
【Fターム(参考)】