説明

端子付き電線とその製造方法

【課題】端子と芯線の密着性が良く保たれ、安定した電気的接続を維持することができる端子付き電線とその製造方法及び端子圧着装置を提供することにある。
【解決方法】
芯線12が絶縁性の被覆材14に覆われてなる電線10の端末部に導電性の端子20が接続された端子付き電線において、少なくとも1対の圧着片26a,26bを備えた芯線圧着部26で前記電線10端末の剥き出しにされた芯線12を挟持しており、且つ、この芯線圧着部26の基底部24の芯線12と接する面に前記電線の軸方向に対して交差する方向に複数本の突条126が並列に形成されて圧着接続されており、この突条は圧着接続時に芯線圧着部に対し外部から押圧形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は端子付き電線の製造方法に関し、更に詳しくは、電線の端末部分の剥き出しにされた芯線に端子を圧着接続するに際し、この端子と芯線を密着させ、芯線圧着部内での芯線の移動を有効に防ぎ、安定した電気的接続を実現できるようにした端子付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に搭載される電気・電子機器は多様性を増し、高性能、多機能化が急速に進められてきている。このような個々の機器には、端子を接続された電線がコネクタを介して接続されており、この端子付き電線を介して信号の伝送及び電力の供給を行っている。これら複数の電線は、とりまとめられたワイヤハーネスの状態でエンジンルーム内を配索されているが、使用中の振動や、機器の操作等によって生じる屈曲や引っ張りにより端子の圧着部内で電線の素線が移動して、芯線と端子の圧着部内壁との接触面がずれることによる接触抵抗の変動や、芯線の断線や端子からの抜け等により接触不良が発生することが知られている。これに対して機器の高性能化に伴い、これら電線と端子との接触抵抗をより安定して維持することができる接続信頼性の向上が要求されている。
【0003】
従来から、端子に設けられた少なくとも1対の圧着片を有する芯線圧着部で、電線の剥き出しにされた芯線を挟んで圧着接続するに際し、この端子の芯線と接する部分に予め溝状の凹部(セレーション)を形成し、このセレーションに芯線が食い込んで、圧着部内での芯線のズレや、移動が規制されて、良好な電気的接続を得ることができるというものが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開平11−3733号公報)には、電線の軸方向に対して斜めに縞状のセレーションが形成された圧着端子及び、格子状のセレーションが形成された圧着端子等が記載されている。このように、予め端子の圧着部内壁に溝状の凹部が形成された端子を用いることにより、芯線と芯線圧着部との間の相対的移動が抑制されて芯線と端子との安定した接続を維持することができる。
【0005】
また、特許文献2(特開平9−45381号公報)に記載の端子20aの圧着接続前の状態を表した斜視図を図6に示す。このように、端子20aの、芯線圧着部26の底面内壁にはセレーション26cが形成されており、圧着片26a,26bの上端縁には前記凹部に対応する位置に突起26dが形成されている。このような端子20aを電線10に圧着接続した後の芯線圧着部26の断面の矢視図を図7に示す。前記圧着片26a,26bに設けられた突起26dによれば、前記底面に設けられたセレーション26cにおいても芯線12を押圧することができるので高い電線保持力が得られるというものである。
【0006】
【特許文献1】特開平11−3733号公報
【特許文献2】特開平9−45381号公報
【0007】
しかしながら、図7に示されるように、前記特許文献1及び特許文献2に記載の端子のように、予め溝状の凹部(セレーション)26cを端子20aの芯線圧着部26に設けたものを、芯線12に接続した場合には、芯線12は前記セレーション26cのエッジ部26eに食い込み、底部26fと芯線12との間には隙間が生じてしまう場合が多い。
【0008】
このような隙間は芯線12と端子20aの芯線圧着部26との接触面積を減少させるので、摩擦力の低下や、電気的には接触抵抗の上昇を招くといった問題がある。また、セレーション26c部分において端子の肉厚が薄くなってしまうことや、セレーション26cのエッジ部26eが芯線12に食い込むようになっているので、芯線12の素線を傷つけてしまうこと等により、局部的な機械的強度の低下を招くおそれがある。このような問題により、従来のような溝状の凹部よりなるセレーションを端子の芯線圧着部に設けるだけでは、端子と電線の安定した電気的接続という観点においては、十分な効果を奏さない場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、端子を電線に圧着接続するに際し、端子の圧着部内における芯線の移動を効果的に抑制し、端子と芯線の密着性が良く保たれ、安定した電気的接続を維持することができる端子付き電線とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1記載の端子付き電線は、導電性の素線からなる芯線が絶縁性の被覆材に覆われてなる電線の端末部に導電性の端子が接続された端子付き電線において、前記端子には、相手側端子と接続する接続部の一端に延設された基底部の両側に少なくとも一対の圧着片が対峙して立設された芯線圧着部が設けられ、この芯線圧着部で前記電線端末の剥き出しにされた芯線を挟持しており、且つ、この芯線圧着部の基底部の芯線と接する面に前記電線の軸方向に対して交差する方向に複数本の突条が並列に形成されて圧着接続されており、この突条は圧着接続時に芯線圧着部に対し外部から押圧形成されたものであることを要旨とするものである。
【0011】
本発明の請求項2記載の端子付き電線は、前記電線端末の剥き出しにされた芯線を挟持する芯線圧着部の前記一対の圧着片の芯線と接する面にも前記電線の軸方向に対して交差する方向に複数本の突条が並列に形成されて圧着接続されており、この突条は圧着接続時に芯線圧着部に対し外部から押圧形成されたものであることを要旨とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項3記載の端子付き電線の製造方法は、導電性の素線からなる芯線が絶縁性の被覆材に覆われてなる電線の端末部に導電性の端子が接続された端子付き電線を製造するに際し、前記端子は、相手側端子と接続する接続部の一端に延設された基底部の両側に少なくとも一対の圧着片が対峙して立設された芯線圧着部を備えており、この端子の芯線圧着部の下方に配置されるアンビルの端子を受ける受け面には、該端子の芯線圧着部に載置される電線端末の剥き出しにされた芯線の軸方向に対して交差する方向に複数本の突条部が設けられ、この端子の上方に前記アンビルと対向して配置されるクリンパには、端子の前記芯線圧着部の対からなる圧着片を押圧する圧着湾曲面が設けられており、このクリンパとアンビルとを介して前記端子の芯線圧着部を挟んで前記芯線圧着部の基底部を前記アンビルの受け面に押圧させて前記基底部の前記芯線と接する面に複数本の突条を形成した状態で前記芯線が前記端子の芯線圧着部に挟持圧着接続されるようにしたことを要旨とするものである。
【0013】
本発明の請求項4記載の端子圧着装置は、更に、前記クリンパの前記圧着湾曲面にも複数本の突条が設けられており、このクリンパとアンビルとを介して前記端子の芯線圧着部を挟んで、前記芯線圧着部の前記圧着片を前記クリンパの圧着湾曲面で押圧させて前記圧着片の前記芯線と接する面に複数本の突条を形成すると共に、前記芯線圧着部の基底部を前記アンビルの受け面に押圧させて前記基底部の前記芯線と接する面に複数本の突条を形成した状態で前記芯線が前記端子の芯線圧着部に挟持圧着接続されるようにしたことを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0014】
前記請求項1に記載される端子付き電線によれば、芯線に端子を圧着する前には芯線圧着部の芯線との接触面にセレーションは形成されておらず、芯線圧着部は凹凸のない平面状の接触面を有している。そして、芯線の圧着が開始され、圧着片が芯線を挟持し始める時点では、未だ芯線圧着部の基底部に突条が完全に形成されておらず、芯線は凹凸のない芯線圧着部の内側と全面で密着した状態となっており、圧着が進行するに従って形成される突条が圧着片の内面に密着した芯線に対し更なる押圧力を部分的に作用させるようになる結果、芯線圧着部の内面と芯線との間に発生する摩擦力を大きく保つことができる。これにより、電線の引っ張り等に起因した前記芯線圧着部内での芯線の移動を効率よく抑制することができ、芯線と端子の接触抵抗の低い良好な電気的接続を得ることができる。また、突条が芯線圧着部に対し外部から押圧形成されるものであるため、従来の最初から芯線圧着部の内面にセレーション加工を施したもののように、芯線と接する部分にエッジ部が生じることがなく滑らかな山状の突条となる。従って、芯線を傷つけることがなく、更に芯線との接触面積をより大きく確保できるため電気的特性や引っ張り強度をより一層向上することができる。更に、芯線と前記芯線圧着部の端子内面との間の隙間に起因した接触抵抗の増大を防ぎ、芯線と芯線圧着部との接触面及び、芯線を構成する素線同士の接触面のズレによる抵抗値の上昇を防止して、安定した端子と芯線との電気的接続を提供することができる。
【0015】
更に請求項2に記載される端子付き電線によれば、前記芯線圧着部の基底部のみならず芯線を上方から覆ってかしめる圧着片にも、圧着に伴う外部からの押圧により芯線の軸方向と交差する複数本の突条が形成されているので、端子と芯線の密着性が良い。又、外部からの押圧により形成された突条により芯線が局所的に強くかしめられるので、端子の芯線への固着力が高く、芯線が端子の芯線圧着部から抜け落ちるのを防ぐことができる。また、芯線圧着部の芯線と接触する面が滑らかな山状に形成されているので、素線同士の相互のズレ、及び、端子と芯線との接触面のズレ等がより効率よく防止され、接触抵抗が低く、更に安定した電気的接続を有する端子つき電線を得ることができる。
【0016】
また、前記請求項3に記載される端子付き電線の製造方法によれば、圧着片が芯線を挟持し始める時点では、突条の形成されていない芯線圧着部で芯線を挟み込んで密着させる。続いて、前記アンビルの複数本の突条を有する受け面で前記端子の基底部を外側から押圧することにより、前記芯線圧着部の基底部内面に芯線の中心方向に向かって突出した複数の滑らかな山状の突条を形成し、芯線を局所的に強くかしめる。外部からの押圧により芯線圧着部内面に滑らかな山状の突条を形成させているので、前記芯線と芯線圧着部の内面を隙間無く密着させることができる。従って、芯線に端子を接続した後、芯線圧着部において、芯線と端子との間及び、芯線の素線同士の間で接触面のズレが生じない。このため、芯線と端子間の電気的接続が安定しており、接触抵抗の変動が起こりにくい端子付き電線を製造することができる。また、端子の芯線圧着部に予めセレーションを設ける必要が無いため、端子の構造が簡単になる。
【0017】
前記請求項4に記載される端子付き電線の製造方法によれば、アンビルのみならず、クリンパにも複数本の突条が設けられ、前記芯線圧着部の基底部と、芯線を上方から覆って挟み込む圧着片にも外側からの押圧によりその内面に滑らかな山状の突条を形成させて、芯線を局所的に強く押圧しつつ、前記芯線と芯線圧着部の内面を隙間無く密着させている。前記芯線圧着部の基底部にのみ突条を設けた場合よりも更に芯線と芯線圧着部との間の摩擦力を大きくすることができ、芯線圧着部内での芯線の移動をより効率よく抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施形態について図1及び図2を参照して詳細に説明する。尚、相手側端子(図示せず)との接続方向を前方側として説明する。
【0019】
図1に示すように、電線10は、金属素線を複数本撚り合わせてなる芯線12の外周に絶縁性の合成樹脂からなる被覆材14が被覆されたもので、端末部分の被覆材14が所定長さ皮剥されて芯線12が露出されている。
【0020】
端子(この場合、メス型)20は、金属製の板状部材を屈曲加工して形成されたもので、接続部22と、基底部24と、圧着片26a,26bとからなる芯線圧着部26と、圧着片28a,28bからなる被覆圧着部28とを有している。
【0021】
接続部22は、略角筒状に形成されるとともに、その内部には弾性接触片22aが設けられ、図示しない相手側端子(この場合はオス型となる)の先端部が挿入されることにより電気的に導通される。
【0022】
芯線圧着部26は、接続部22の後端部より延出された基底部24と、この基底部24の途中部位の左右両側に対向して立設された電線10の芯線12をかしめ固定するための一対の芯線用圧着片26a,26bとにより構成されている。この時、基底部24及び圧着片26a,26bの芯線と接する面には、例えばセレーションのような凹凸は設けられていない。
【0023】
被覆圧着28は、基底部24の後端部と、その左右両側に同じく対向して立設された被覆用圧着片28a,28bにより構成されている。
【0024】
尚、芯線圧着部26に設けられる芯線用圧着片26a、26bは、少なくとも一対設けられていれば良く、その対の数は特に限定されるものではない。また、図においては、被覆用圧着片28a、28bを有する端子を例示したが、被覆圧着部28が無いタイプの端子を用いることもできる。また、接続部22の形状としてはメス型のものを例示したが、勿論、オス型形状であっても構わない。
【0025】
この電線10に端子20を接続するための端子圧着装置は、対向して配置された芯線側クリンパ30と芯線側アンビル40、同じく対向して配置された被覆側クリンパ50と被覆側アンビル60及び、図示しないスライドカッター等を備えており、基本構成においては一般的な端子圧着装置と同様の構成である。
【0026】
芯線側クリンパ30及び芯線側アンビル40は、端子圧着装置のプレス動作により芯線側クリンパ30及び芯線側アンビル40との間に配置した端子20の芯線用圧着片26a,26bを挟み込んでかしめ、電線10の端末部に露出された芯線12に端子20を接続する。
【0027】
芯線側クリンパ30は、端子20の芯線圧着部26の圧着片26a,26bを上方から押圧するためのもので、その下端面には、圧着型32が形成されている。この圧着型32には、その側面にアーチ状の曲面をなす誘導部34a,34bが形成され、これら両アーチ34a,34bがつながる中央付近に突出部36が形成されている。このアーチ状の誘導部34a,34bは、芯線側クリンパ30と芯線側アンビル40との間に端子20を挟み込んだ際に、端子20の芯線用圧着片26a,26bの先端を内側に案内すると共に、突出部36が芯線用圧着片26a,26bの先端を芯線12方向に巻き込んでいく。そして端子20の芯線圧着部26は芯線側クリンパ30と芯線側アンビル40によって更に押圧されで芯線12と接続される。
【0028】
一方、芯線側アンビル40は、端子20を下方から支持するためのもので、その上端面には、芯線圧着部26の基底部24のかしめ後の曲率に合わせた湾曲部42が形成されている。そして、この湾曲部42には、前記芯線圧着部26に載置される芯線12の軸方向に交差する向きに直線状の突条44が前後に並んだ状態の縞状の突条部44sが設けられている。
【0029】
この芯線側アンビル40は、前記芯線側クリンパ30と同期して、端子20の芯線圧着部26を挟み込んでかしめる。芯線側アンビル40で、芯線圧着部26を下方から支持し押圧すると、湾曲部42に設けられた突条44sによって、芯線圧着部26が局所的に強く押圧されて、その部分で芯線12が強くかしめられることになる。
【0030】
また、被覆側クリンパ50及び被覆側アンビル60はプレス動作により、これらの間に配置した端子20の被覆圧着部28を挟み込んでかしめ、電線10の端末部に端子20を接続する。芯線12よりも太い被覆材14の直径に合わせて、前記芯線側クリンパ30及び芯線側アンビル40よりも若干大きく形成されており、概ね同様の構成を備えている。
【0031】
すなわち、被覆側クリンパ50の下端面には、被覆側アンビル60との間に端子20の被覆圧着部28を挟み込んだ際に、被覆用圧着片28a,28bの先端を内側に案内するための圧着型52が形成されており、被覆側アンビル60の上端面には、被覆圧着部28の基底部24の圧着後の曲率に合わせた湾曲部62が形成されている。本実施形態においては、被覆側アンビル60の湾曲部62には、前記芯線側アンビル40に設けられているような縞状の突条部44sを有さない例を示したが、被覆側アンビル60にもこのような突条部を設けても構わない。
【0032】
次ぎに、この端子20の電線10への圧着接続の過程を図2(a)〜(c)を用いて順に説明する。図2(a)は、図1に示した電線10及び端子20の断面を矢視図で示したものである。皮剥された芯線12が端子20の芯線圧着部26上に、被覆材14が被覆圧着部28上になるように、電線10が端子20の基底部24の上に載置されており、端子20を挟んで対向する位置に芯線側クリンパ30とアンビル40及び、被覆側クリンパ50とアンビル60が配置されている。ここで、芯線圧着部26の基底部24の芯線12と接する面は平面状に形成されており、例えばセレーションのような凹凸は設けられていない。
【0033】
続いて芯線側クリンパ30が下降し、芯線側アンビル40との間で前記端子20の芯線圧着部26を挟んでいくと、芯線用圧着片26a,26bは前記芯線側クリンパ30の下面に設けられた圧着型32のアーチ状の曲面をなす誘導部34a,34bに導かれて芯線12を挟み込んでいく。
【0034】
さらに、図2(b)に示すように、芯線側クリンパ30は下降を続け、芯線側アンビル40は下方から端子20を支持し、芯線圧着部26の芯線用圧着片26a,26bで芯線12を挟持してかしめる。
【0035】
この時、芯線側アンビル40の湾曲部42に形成された縞状の突条部44sは、端子20の基底部24を局所的に強く押圧する。これにより、端子20の基底部24は湾曲部42に設けられた縞状の突条部44sに対応する形の凹凸が形成される。
【0036】
前記芯線圧着部26の基底部24に、図2(c)に示されるように、芯線圧着部26の内側に向けて突出し電線10の軸方向に交差する方向に伸びる直線状の突条126が形成されて、これが並列に並んだ縞状の突条部126sを構成している。
【0037】
このように、前記芯線圧着部26の内側に向けて突出した縞状の突条部126sは、芯線12が端子20の芯線圧着部26によってかしめられる過程で外側からの押圧により形成されたものであるので、図2(d)に示すように、芯線圧着部26において、端子20の内面と芯線12とは隙間無く密着した状態となる。
【0038】
このため、端子20の芯線圧着部26をアンビル40で押圧することにより、端子20の芯線圧着部26の基底部24の芯線12が接する面に形成された滑らかな凹凸面である突条部126sに芯線12が部分的に強く押圧される構造となり、芯線12と芯線圧着部26とが密着して電線10と端子20の相互の移動が規制され、芯線12の端子10からの抜落が防止されるだけでなく、突条部126sでは芯線12が局所的に強くかしめられることとなり、芯線圧着部26内での芯線12の横方向への移動や、芯線12を構成する素線同士の相対的な移動も規制させる。これにより、芯線圧着部26内での、端子20と芯線12との接触面及び、芯線12を構成する素線同士の接触面の移動やズレが抑えられ、芯線12と端子20との間の接触抵抗の変動が起きにくい。
【0039】
更に、従来のように端子に予めセレーションを設ける必要がないので、端子自体の構造及び製造工程が簡略化される。また、アンビル40に設けられた突条部44sによる外部からの押圧で、端子20の芯線圧着部26に形成された突条部126sは滑らかな山状に形成されており、端子に予めセレーションを設けた場合のようなエッジ部が生じない。そのため、セレーションのエッジ部で芯線12の素線が傷つけられて断線してしまうことがない。また、このような所定の形状の突条部を有するアンビルを用いて端子を芯線に挟着するだけで良いので、種々の端子に適用可能である。
【0040】
次に、本発明の第2の実施形態に係る芯線側クリンパ30aと芯線側アンビル40について図3を用いて説明する。
【0041】
芯線側クリンパ30aは、第1の実施形態で示した芯線側クリンパ30とほぼ同じ形状を有しており、その下端面には、圧着型32が形成されている。この圧着型32には、その側面にアーチ状の曲面をなす誘導部34a,34bが形成され、これら両アーチ34a,34bがつながる中央付近に突出部36が形成されている。このアーチ状の誘導部34a,34bは、芯線側クリンパ30と芯線側アンビル40との間に端子20を挟み込んだ際に、端子20の芯線用圧着片26a、26bの先端を内側に案内すると共に、突出部36が芯線用圧着片26a、26bの先端を芯線12方向に巻き込んでいく。
【0042】
そして、この圧着型32のアーチ状の曲線をなす誘導部34a,34bそれぞれの頂点付近には、前記端子20の芯線圧着部26に載置される芯線12の軸方向に交差する向きの突条部38が前後に並んだ状態の縞状の突条部38sが設けられている。
【0043】
一方、芯線側アンビル40は、図1に示したものと同じもので、その上端面には湾曲部42が形成されている。そして、この湾曲部42には、同じく芯線12の軸方向に交差する方向に伸びる直線状の突条部44が前後に並んだ状態の、縞状の突条部44sが設けられている。
【0044】
この芯線側クリンパ30aと芯線側アンビル40を介して電線10の剥き出しにされた芯線12に端子20を接続した端子付き電線の斜視図を図4に示す。端子20の芯線圧着部26の上面に、前記芯線側クリンパ30aに設けられた縞状の突条部38sによる押圧で形成された複数の溝が形成されている。
【0045】
この電線10の芯線12に接続された端子20の芯線圧着部26のA−A断面の矢視図を図5に示す。
【0046】
芯線圧着部26の基底部24は、図2と同じ縞状の突条部44sを有する芯線側アンビル40により押圧されてなるので、図2(c)に示される芯線圧着部26と同じ形状を有している。
【0047】
一方、前記芯線圧着部26の芯線12を挟持する圧着片26a,26bには、芯線12の中心方向に向かって突出した突条226が並列に並んだ縞状の突条部226sが、前記芯線側クリンパ30aに設けられた縞状の突条部38sで押圧されることにより形成されている。
【0048】
本実施形態においては、図5に示すように、芯線圧着部26の基底部24に形成される直線状の突条126と、芯線圧着部26の上面に形成される同じく直線状の突条226が対向する位置に形成されるように、芯線側クリンパ30aと芯線側アンビル40とが配置された。これにより、この芯線圧着部26内の突条126,226が形成された部位では、芯線12がより強くかしめられることになる。従って、芯線12の前後方向への移動、芯線12を構成する素線同士の相互のズレ、及び、端子20と芯線12との接触面のズレ等がより効率よく防止され、接触抵抗が低く、更に安定した電気的接続を有する端子つき電線を得ることができる。
【0049】
ここで、芯線圧着部26の基底部24に形成される直線状の突条126と、芯線圧着部26の上面に形成される同じく直線状の突条226が互い違いの位置に形成されるように、芯線側クリンパ30aと芯線側アンビル40とを配置しても良い。このようにして、芯線圧着部26で芯線12をかしめれば、芯線圧着部26内に波状の凹凸が形成されてる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、前記第1及び第2の実施形態では、芯線圧着部と被覆圧着部を備えた端子の例で示したが、被覆圧着部を備えない端子でも良いのは言うまでもない。
【0051】
また、芯線側クリンパと芯線側アンビルに設けられる突条部は直線状のものに限らず、要は、電線の軸方向に交差する向きの成分を含んだ形状であれば良く、例えば、電線の軸方向に対して斜めの縞状にしても良いし、矩形波状又は曲線状に折れ曲がったような形状にしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る端子付き電線及びその製造方法と圧着装置によれば、芯線と端子の良好な圧着状体を得ることができ、接触抵抗が安定しており、高い電気的接続の信頼性を有しているので、例えば、自動車用精密機器のコネクタ部材及びその製造等に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る端子付き電線の接続前の状態を示した斜視図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る端子付き電線の接続過程を示した断面矢視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る芯線側クリンパと芯線側アンビルの斜視図である。
【図4】図3に示した芯線側クリンパと芯線側アンビルによって芯線に接続された端子の斜視図である。
【図5】図4に示した本発明の第2の実施形態にかかる端子付き電線のA−A断面の矢視図である。
【図6】従来の端子付き電線の接続前の状態を示した斜視図である。
【図7】図6に示した従来の端子付き電線の芯線圧着部の断面矢視図である。
【符号の説明】
【0054】
10 電線
12 芯線
20 端子
26 芯線圧着部
126s 縞状の突条部(基底部)
226s 縞状の突条部(上部)
30 芯線側クリンパ
38s 縞状の突条部
40 芯線側アンビル
44s 縞状の突条部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の素線からなる芯線が絶縁性の被覆材に覆われてなる電線の端末部に導電性の端子が接続された端子付き電線において、前記端子には、相手側端子と接続する接続部の一端に延設された基底部の両側に少なくとも一対の圧着片が対峙して立設された芯線圧着部が設けられ、この芯線圧着部で前記電線端末の剥き出しにされた芯線を挟持しており、且つ、この芯線圧着部の基底部の芯線と接する面に前記電線の軸方向に対して交差する方向に複数本の突条が並列に形成されて圧着接続されており、この突条は圧着接続時に芯線圧着部に対し外部から押圧形成されたものであることを特徴とする端子付き電線。
【請求項2】
前記電線端末の剥き出しにされた芯線を挟持する芯線圧着部の前記一対の圧着片の芯線と接する面にも前記電線の軸方向に対して交差する方向に複数本の突条が並列に形成されて圧着接続されており、この突条は圧着接続時に芯線圧着部に対し外部から押圧形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の端子付き電線。
【請求項3】
導電性の素線からなる芯線が絶縁性の被覆材に覆われてなる電線の端末部に導電性の端子が接続された端子付き電線を製造するに際し、前記端子は、相手側端子と接続する接続部の一端に延設された基底部の両側に少なくとも一対の圧着片が対峙して立設された芯線圧着部を備えており、この端子の芯線圧着部の下方に配置されるアンビルの端子を受ける受け面には、該端子の芯線圧着部に載置される電線端末の剥き出しにされた芯線の軸方向に対して交差する方向に複数本の突条部が設けられ、この端子の上方に前記アンビルと対向して配置されるクリンパには、端子の前記芯線圧着部の対からなる圧着片を押圧する圧着湾曲面が設けられており、このクリンパとアンビルとを介して前記端子の芯線圧着部を挟んで前記芯線圧着部の基底部を前記アンビルの受け面に押圧させて前記基底部の前記芯線と接する面に複数本の突条を形成した状態で前記芯線が前記端子の芯線圧着部に挟持圧着接続されるようにしたことを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【請求項4】
更に、前記クリンパの前記圧着湾曲面にも複数本の突条が設けられており、このクリンパとアンビルとを介して前記端子の芯線圧着部を挟んで、前記芯線圧着部の前記圧着片を前記クリンパの圧着湾曲面で押圧させて前記圧着片の前記芯線と接する面に複数本の突条を形成すると共に、前記芯線圧着部の基底部を前記アンビルの受け面に押圧させて前記基底部の前記芯線と接する面に複数本の突条を形成した状態で前記芯線が前記端子の芯線圧着部に挟持圧着接続されるようにしたことを特徴とする請求項3記載の端子付き電線の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−59304(P2007−59304A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245575(P2005−245575)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】