説明

端子圧着方法、端子圧着装置、端子圧着構造及び電気コネクタ

【課題】アンビル及びクリンパに磨耗が生じることを抑制するとともに、電線の芯線が圧着されたワイヤバレルの上方に突上げ部が形成されることを防止することが可能となる端子圧着方法及び端子圧着装置を提供する。
【解決手段】端子圧着装置40は、端子10を載置する載置溝43を有するアンビル41と、アンビル41に載置された端子10のワイヤバレル31を押圧するクリンパ42とを備え、載置溝43は、有効圧着部31aを押圧する第一押圧部43aと、延長部31bを押圧する第二押圧部43bとを有し、第二押圧部43bの底面が、リセプタクル部20側に向かって拡開する傾斜面として形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の芯線を圧着するワイヤバレルを備える端子を電線の端部に圧着する端子圧着方法、端子圧着装置及び端子圧着構造並びに、かかる端子圧着構造を有する接続端子を備える電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かかる端子を備える電気コネクタの発明として、例えば、図5及び図6に示すものが知られている(特許文献1参照)。
図5は、特許文献1に係る防水コネクタの部分切欠き断面図である。図6は、図5に示す防水コネクタのキャビティ内に端子を挿入する途中の状態を示す部分切欠き断面図である。
【0003】
図5及び図6に示す防水コネクタ100は、複数の(図5及び図6では1つのみ図示する)端子110と、端子110が収容されるコネクタハウジング120とを備えている。
各端子110は、リセプタクル部111と、電線接続部112とを備え、金属板を打抜き及び曲げ加工することにより形成されている。
リセプタクル部111は、相手コネクタ(図示せず)に設けられたタブを受容するよう略箱形に構成され、前後方向(図5における左右方向)に延びる基板部113と、基板部113の幅方向(図5における紙面に対して直交する方向)の両側縁から立ち上がる1対の側壁114と、1対の側壁114の一方から折り曲げられた上板115とを備えている。
【0004】
電線接続部112は、基板部113の後端から延びる、電線Wの芯線Sを圧着するワイヤバレル116と、ワイヤバレル116の後端から延びる、電線Wの被覆部Hを圧着するインシュレーションバレル117とを備えている。
ここで、ワイヤバレル116は、電気的接続及び機械的接続を確実ならしめるために、その挿抜方向(図5における左右方向)全長にわたって電線Wの芯線Sに圧着される必要がある。そこで、電線Wの芯線Sは、先端部Tをワイヤバレル116から前方に突出させた状態でワイヤバレル116に圧着される。
【0005】
コネクタハウジング120は、各端子110が個別に収容されるキャビティ121を上下2段に複数備えている。
また、コネクタハウジング120の複数のキャビティ121の後側には、一括型のシール部材122が嵌挿されるゴム栓装着部123が設けられている。
シール部材122には、各キャビティ121に連通する連通孔124が複数設けられている。そして、各連通孔124の内周面には、3条のリップ125が設けられている。
【0006】
そして、防水コネクタ100では、図6に示すように、各端子110が、シール部材122の各連通孔124から各キャビティ121内に挿通される。これにより、連通孔124に挿通された端子110の電線Wの周囲にシール部材122の各リップ125が密着することで、電線Wの引出側からキャビティ121内へ水滴が浸入することを防止することができる。
【0007】
しかしながら、防水コネクタ100の端子110では、ワイヤバレル116に圧着された電線Wの芯線Sの先端部Tが、ワイヤバレル116から前方に突出して露出している。そして、電線Wの芯線Sの先端部Tがワイヤバレル116から前方に突出して露出していると、端子110をシール部材122の連通孔124に挿通する際に、先端部Tがシール部材122を破損してしまうという問題がある。そして、シール部材122に破損が生じると、シール部材122と電線Wとの密着性が悪くなり、防水コネクタ100が相手コネクタに嵌合した際のキャビティ121内の防水性が低下することとなる。
【0008】
そこで、かかる問題を解決するため、図7に示す端子が提案されている。
図7は、芯線先端部保護端子の斜視図である。
図7に示す芯線先端部保護端子130の基本構成は、端子110と同様となっており、金属板を打抜き及び曲げ加工することにより形成されている。ただし、芯線先端部保護端子130のリセプタクル部136の上面には、芯線先端部保護端子130が電気コネクタ(図示せず)を構成する際に、リテーナ(図示せず)により係止されるリテーナ係止部137が形成されている。
【0009】
また、芯線先端部保護端子130のワイヤバレル131は、電線Wの芯線(図7において図示せず)を圧着する有効圧着部132と、電線Wの芯線Sの先端部を覆う延長部133とを備えている。
延長部133は、有効圧着部132の前方に配設されている。延長部133には、確認孔134が設けられている。
確認孔134は、ワイヤバレル131に電線Wの芯線が圧着された状態で、ワイヤバレル131内の芯線の先端部の位置を確認するために設けられている。
そして、芯線先端部保護端子130では、ワイヤバレル131の有効圧着部132が電線Wの芯線を圧着するとともに、延長部133が芯線の先端部を覆う。このように、延長部133が電線Wの芯線の先端部を覆うことで、芯線の先端部がワイヤバレル131から前方に突出して露出することが防止される。
【0010】
したがって、芯線先端部保護端子130によれば、図5に示すコネクタハウジング120のような一括防水タイプのコネクタハウジングに備えられるシール部材に挿通する際に、芯線の先端部がシール部材122を破損してしまうことを防止することが可能となる。
また、ワイヤバレル131への電線Wの芯線の圧着を完了後、延長部133の確認孔134からワイヤバレル131内の芯線の先端部の位置を確認する。これにより、有効圧着部132の挿抜方向(図7における左手前から右奥に向かう方向)の全長にわたって芯線が圧着されているか否かを確認することが可能となる。
ここで、ワイヤバレル131への電線Wの芯線の圧着は、アンビル及びクリンパによりワイヤバレル131を押圧して、芯線が配置されたワイヤバレル131を加締めることにより行われる。
【0011】
一方、芯線先端部保護端子130のワイヤバレル131の前後方向(図7における左手前から右奥に向かう方向)長さは、図6に示す端子110のワイヤバレル116と比較して、延長部133が設けられている分だけ長くなる。そして、ワイヤバレル131が長くなると、電線Wの芯線を圧着する際に、ワイヤバレル131を加締めるために必要となる押圧力が大きくなる。そして、アンビル及びクリンパからワイヤバレル131への押圧力が大きくなると、電線Wの芯線を圧着する際に、ワイヤバレル131からアンビル及びクリンパへの反力も大きくなる。そして、電線Wの芯線を圧着する際にアンビル及びクリンパへの反力が大きくなると、アンビル及びクリンパに磨耗が生じ易くなるという問題がある。
【0012】
そこで、かかる問題を解決するため、ワイヤバレル131への電線Wの芯線の圧着は、図8に示す端子圧着装置140により行われている。
図8は、端子のワイヤバレルと端子圧着装置に備えられるアンビル及びクリンパとの関係を示す部分断面図である。なお、図8では、ワイヤバレル131への電線Wの芯線の圧着を完了した状態を示している。
すなわち、図8に示すように、端子圧着装置140は、ワイヤバレル131を底側から支持するアンビル141と、ワイヤバレル131を上側から押圧するクリンパ142とを備えている。
クリンパ142の下面には、ワイヤバレル131を押圧する押圧面143が形成されている。そして、図8に示すように、クリンパ142の押圧面143では、延長部133を押圧する部分が、前方に向かって拡開する傾斜面144として形成されている。
【0013】
端子圧着装置140によりワイヤバレル131に電線(図8において図示せず)の芯線を圧着する際には、ワイヤバレル131の延長部31bがクリンパ142の押圧面143の傾斜面144に沿って変形され、突上げ部145が形成される。
これにより、端子圧着装置140では、ワイヤバレル131の有効圧着部132にのみ電線Wの芯線が圧着され、延長部133には、突上げ部145が形成されることで芯線が圧着されない。したがって、端子圧着装置140によれば、ワイヤバレル131に電線Wの芯線を圧着する際に必要となる押圧力を抑えることができ、ワイヤバレル131からアンビル141及びクリンパ142への反力を抑えることができる。
【0014】
よって、端子圧着装置140によれば、アンビル141及びクリンパ142に磨耗が生じることを抑制することが可能となる。
【特許文献1】特開2001−143807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ここで、芯線先端部保護端子130は、電気コネクタを構成する際、コネクタハウジング(図示せず)からの抜けを防止するために、リテーナ(図示せず)により二次係止される。この場合、リテーナは、芯線先端部保護端子130のワイヤバレル131の上方に配設され、リテーナに設けられた係止部(図示せず)の前面が芯線先端部保護端子130のリテーナ係止部137の後面を係止することにより、芯線先端部保護端子130の後方への移動を防止する。
【0016】
一方、近年、電気コネクタについては、小型化及び多極化の要請が高まっている。そして、電気コネクタについて小型化及び多極化を行うためには、電気コネクタを構成する端子間の配列ピッチを狭く構成する必要がある。
しかしながら、端子圧着装置140により電線の芯線がワイヤバレル131に圧着された芯線先端部保護端子130を端子間の配列ピッチが狭く構成された電気コネクタに適用すると、突上げ部145がリテーナに干渉することとなる。そして、突上げ部145がリテーナに干渉すると、リテーナをハウジングの所定位置まで押し込むことができず、リテーナによる芯線先端部保護端子130のリテーナ係止部137の係止が不十分となる。そして、リテーナによる芯線先端部保護端子130のリテーナ係止部137の係止が不十分となると、リテーナによる芯線先端部保護端子130の所望の保持力を得ることができないという問題がある。
【0017】
一方、リテーナにより芯線先端部保護端子130を係止する際には、まず、リテーナを仮係止位置に配置した状態で芯線先端部保護端子130をハウジングに挿入する。この場合、リテーナは芯線先端部保護端子130のワイヤバレル131の上側(図8における上方)に位置している。そして、仮係止位置にあるリテーナを、下側(図8における下方)にスライドして本係止位置に配置する。この場合、リテーナの係止部の前面が、芯線先端部保護端子130のリテーナ係止部137の後面を係止し、芯線先端部保護端子130の後方への移動を防止する。したがって、リテーナが本係止位置に配置された状態では、芯線先端部保護端子130のワイヤバレル131の下方には、仮係止位置から本係止位置までスライドされたリテーナのスライド量に相当する高さの空間が不可避的に形成されることとなる。
【0018】
本発明は上記した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、アンビル及びクリンパに磨耗が生じることを抑制するとともに、電線の芯線が圧着されたワイヤバレルの上方に突上げ部が形成されることを防止することが可能となる端子圧着方法及び端子圧着装置を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、電線の芯線が圧着されたワイヤバレルの下方に膨出部を形成することで、端子間の配列ピッチが狭く構成された電気コネクタに適用した場合でもリテーナによる係止を確実に行うことが可能な端子圧着構造を提供することにある。
さらに、本発明の別の目的は、上記端子圧着構造が適用された端子を備えることで、端子間の配列ピッチを狭く構成することが可能な電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の請求項1に係る端子圧着方法は、リセプタクル部と、電線の芯線を圧着する有効圧着部及び前記芯線の先端部を覆う延長部を有するワイヤバレルとを備える端子をアンビルの載置溝に載置し、クリンパにより前記ワイヤバレルを押圧する端子圧着方法であって、
前記載置溝は、前記有効圧着部を押圧する第一押圧部と、前記延長部を押圧する第二押圧部とを有し、
前記第二押圧部の底面が、前記リセプタクル部側に向かって拡開する傾斜面として形成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項2に係る端子圧着装置は、リセプタクル部と、電線の芯線を圧着する有効圧着部及び前記芯線の先端部を覆う延長部を有するワイヤバレルとを備える端子が載置される載置溝を有するアンビルと、
前記アンビルに載置された前記端子の前記ワイヤバレルを押圧するクリンパとを備えてなる端子圧着装置であって、
前記載置溝は、前記有効圧着部を押圧する第一押圧部と、前記延長部を押圧する第二押圧部とを有し、
前記第二押圧部の底面が、前記リセプタクル部側に向かって拡開する傾斜面として形成されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項3に係る端子圧着構造は、上方に突出するリテーナ係止部を有するリセプタクル部と、電線の芯線を圧着する有効圧着部及び前記芯線の先端部を覆う延長部を有し、上方に向かって開口するワイヤバレルとを備える端子をアンビルの載置溝に載置し、クリンパにより前記ワイヤバレルを押圧することにより、前記電線の前記芯線を前記ワイヤバレルに圧着してなる端子圧着構造であって、
前記載置溝は、前記有効圧着部を押圧する第一押圧部と、前記延長部を押圧する第二押圧部とを有し、
前記第二押圧部の底面が、前記リセプタクル部側に向かって拡開する傾斜面として形成されていることにより、前記延長部の下方に膨出部が形成されてなることを特徴とする。
さらに、本発明の請求項4に係る電気コネクタは、請求項3記載の端子圧着構造を有する端子と、該端子を保持するハウジングとを備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本願請求項1に係る端子圧着方法又は請求項2に係る端子圧着装置によれば、アンビルの載置溝は、有効圧着部を押圧する第一押圧部と、延長部を押圧する第二押圧部とを有し、第二押圧部の底面が、リセプタクル部側に向かって拡開する傾斜面として形成されていることにより、アンビル及びクリンパに磨耗が生じることを抑制するとともに、電線の芯線が圧着されたワイヤバレルの上方に突上げ部が形成されることを防止することが可能となる。
また、本願請求項3に係る端子圧着構造によれば、延長部の下方に膨出部が形成されてなる構成により、端子間の配列ピッチが狭く構成された電気コネクタに適用した場合でもリテーナによる係止を確実に行うことが可能となる。
さらに、本願請求項4に係る電気コネクタによれば、上記端子圧着構造が適用された端子を備えることで、端子間の配列ピッチを狭く構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る端子圧着構造が適用される端子の斜視図である。図2は、本発明に係る端子圧着装置に備えられるアンビル及びクリンパと芯線を圧着する前のワイヤバレルとの関係を示す正面断面図である。図3は、図2に示す端子圧着装置に備えられるアンビル及びクリンパと芯線を圧着した後のワイヤバレルとの関係を示す側面部分切欠き断面図である。図4は、本発明に係る端子圧着構造の斜視図である。なお、図3では、端子に圧着された電線の図示を省略している。また、図4では、ワイヤバレルに圧着された芯線の図示を省略している。
本発明に係る端子圧着構造1は、電気コネクタに備えられる端子等に適用することが可能である。また、端子圧着構造1は、雌型端子及び雄型端子のいずれにも適用することが可能である。
本実施形態では、端子圧着構造1を電気コネクタ用の雌型端子に適用した場合について説明する。
【0024】
端子圧着構造1が適用される雌型端子(端子)10は、図1に示すように、リセプタクル部20と、電線接続部30とを備え、金属板を打抜き及び曲げ加工することにより形成されている。
なお、図1では、雌型端子10は、コンタクトキャリアCに接続されているが、加工後にはコンタクトキャリアCから切断されるようになっている。
リセプタクル部20は、図1に示すように、相手コネクタ(図示せず)に設けられた雄型コンタクト(図示せず)を受容するよう略箱形に形成されている。リセプタクル部20の上面の前後方向(図1における左手前から右奥に向かう方向)後端部には、雌型端子10が電気コネクタ(図示せず)を構成する際に、リテーナ(図示せず)により係止されるリテーナ係止部28が上方に突出するように形成されている。なお、図1における左手前側を前側、右奥側を後側とする。
【0025】
電線接続部30は、図1に示すように、リセプタクル部20の後側に配設された、電線W(図4参照)の芯線S(図2参照)を圧着するワイヤバレル31と、ワイヤバレル31の後側に配設された、電線Wの被覆部Hを圧着するインシュレーションバレル32とを備えている。
ワイヤバレル31は、一対の側壁34a,34bを有しており、上方に向かって開口している。また、ワイヤバレル31は、電線Wの芯線Sを圧着する有効圧着部31aと、電線Wの芯線Sの先端部を覆う延長部31bとを備えている。ここで、ワイヤバレル31の底面は、有効圧着部31aと延長部31bとを通じて前後方向に一直線に延びるように形成されている。また、ワイヤバレル31の各側壁34a,34bの上端面は、前後方向に延びるワイヤバレル31の底面に対して平行に延びている。
有効圧着部31aは、両側壁34a,34bを加締めることにより、電線Wの芯線Sを圧着する。有効圧着部31aに電線Wの芯線Sが圧着された状態では、有効圧着部31aと芯線Sとの圧着部で、所望の電気的性能及び機械的性能が確保される。
【0026】
延長部31bは、有効圧着部31aの前方に配設されている。延長部31bは、両側壁34a,34bを加締めることにより、電線Wの芯線Sの先端部を覆う。この場合、延長部31bは、電線Wの芯線Sの圧着は行わない。そして、延長部31bは、ワイヤバレル31に電線Wの芯線Sが圧着された状態で、芯線Sの先端部がワイヤバレル31の前方へ突出して露出することを防止する。延長部31bの各側壁34a,34bの前後方向有効圧着部31a側には、確認孔33が設けられている。確認孔33は、ワイヤバレル31に電線Wの芯線Sが圧着された状態で、ワイヤバレル31内の芯線Sの先端部の位置を確認するために設けられている。すなわち、確認孔33は、延長部31bの両側壁34a,34bが加締められた状態で、ワイヤバレル31内の電線Wの芯線Sの先端部の位置を、上方から確認することを可能としている。
インシュレーションバレル32は、上方に向かって開口しており、一対の側壁35a,35bを有している。そして、インシュレーションバレル32は、両側壁35a,35bを加締めることにより、電線Wの被覆部Hを圧着する。
【0027】
次に、雌型端子10に電線Wを圧着して端子圧着構造1を形成するための端子圧着装置40について説明する。
端子圧着装置40は、図2及び図3に示すように、雌型端子10が載置されるアンビル41と、アンビル41に載置された雌型端子10のワイヤバレル31を上側(図2及び図3における上方)から押圧するクリンパ42とを備えている。
アンビル41の上面には、図2に示すように、雌型端子10が載置される、前後方向(図2における奥行方向、図3における左右方向)に延びる載置溝43が設けられている。
【0028】
載置溝43は、図3に示すように、載置された雌型端子10のワイヤバレル31の有効圧着部31aを押圧する第一押圧部43aと、延長部31bを押圧する第二押圧部43bとを有している。
第一押圧部43aの底面は、図3に示すように、左右方向(図2における左右方向、図3における奥行方向)からみて水平に延びるように形成されている。
【0029】
第二押圧部43bの底面は、図3に示すように、左右方向からみてリセプタクル部20側に向かって拡開する傾斜面として形成されている。ここで、第二押圧部43bの底面と第一押圧部43aの底面の延長との角度αは、45°を超えない範囲で設定することが可能であるが、特に、3°から6°の間で設定することが好ましい。
クリンパ42は、アンビル41に対して上下方向に移動することが可能に配設されている。また、クリンパ42の下面には、図2に示すように、アンビル41の載置溝43と互いに対向する押圧溝44が設けられている。
押圧溝44の天面は、図3に示すように、左右方向からみてアンビル41の載置溝43の第一押圧部43aに対して平行に延びるように形成されている。
【0030】
次に、端子圧着装置40により雌型端子10に電線Wを圧着して、端子圧着構造1を形成する作用について説明する。
まず、図2に示すように、雌型端子10をアンビル41の載置溝43上に載置する。この場合、ワイヤバレル31の有効圧着部31aが第一押圧部43a上に配置されるとともに、延長部31bが第二押圧部43b上に配置される。
【0031】
ここで、ワイヤバレル31の底面は、有効圧着部31aと延長部31bとを通じて前後方向に一直線に延びるように形成されている。一方、アンビル41の載置溝43の第二押圧部43bの底面は、左右方向からみてリセプタクル部20側に向かって拡開する傾斜面として形成されている。したがって、雌型端子10をアンビル41の載置溝43上に載置すると、有効圧着部31aの底面と第一押圧部43aの底面とは当接した状態となるが、延長部31bの底面と第二押圧部43bの底面との間には空間が形成された状態となる。
【0032】
次に、電線Wを雌型端子10上に配置する。この場合、電線Wの芯線Sがワイヤバレル31上に配置されるとともに、電線Wの被覆部Hがインシュレーションバレル32上に配置される。
そして、クリンパ42を図2に示す矢印方向に下降し、アンビル41の載置溝43上に載置された雌型端子10のワイヤバレル31を、クリンパ42により上側から押圧していく。
これにより、ワイヤバレル31の両側壁34a,34bが、クリンパ42の押圧溝44の内面に沿うように折り曲げられていく。
【0033】
ここで、上述したように、雌型端子10は、ワイヤバレル31の延長部31bの底面と載置溝43の第二押圧部43bの底面との間に空間が形成された状態でアンビル41の載置溝43上に載置されている。クリンパ42によりワイヤバレル31を押圧する際に生じる、アンビル41から延長部31bへの押圧力が、アンビル41から有効圧着部31aへの押圧力と比較して小さくなる。したがって、アンビル41の載置溝43上に載置された雌型端子10のワイヤバレル31を、クリンパ42により上側から押圧していくと、ワイヤバレル31の延長部31bが前記空間側に変形することとなる。
【0034】
そして、クリンパ42が下死点に達すると、図4に示すように、ワイヤバレル31の有効圧着部31aの両側壁34a,34bが加締められ、有効圧着部31aに電線Wの芯線Sが圧着される。一方、クリンパ42が下死点に達すると、図3及び図4に示すように、ワイヤバレル31の延長部31bの両側壁34a,34bが加締められる。また、同時に、延長部31bの底面が載置溝43の第二押圧部43bの底面に沿って下方に変形され、延長部31bの下方に膨出部45が形成される。すなわち、ワイヤバレル31の延長部31bの圧下量は、有効圧着部31aの圧下量と比較して少なくなる。これにより、延長部31bでは、電線Wの芯線Sが圧着されず、芯線Sの先端部を覆うこととなる。
【0035】
次に、ワイヤバレル31への電線Wの芯線Sの圧着を完了後、延長部31bの確認孔33からワイヤバレル31内の芯線Sの先端部の位置を確認する。そして、芯線Sの先端部が確認孔33の後端部より前側に位置していない場合には、ワイヤバレル31の有効圧着部31aの挿抜方向(図3における左右方向)全域に芯線Sが圧着されていない恐れがあるため、圧着不良と判断する。一方、芯線Sの先端が確認孔33の後端部より前側に位置している場合には、圧着が有効に行われたものと判断する。
以上により、図3及び図4に示す端子圧着構造1が形成される。
【0036】
このように、端子圧着装置40では、アンビル41から延長部31bへの押圧力が、アンビル41から有効圧着部31aへの押圧力と比較して小さく設定される。これにより、端子圧着装置40では、ワイヤバレル31の有効圧着部31aにのみ電線Wの芯線Sが圧着され、延長部31bには、下方に膨出部45が形成されることで芯線Sが圧着されない。したがって、端子圧着装置40によれば、ワイヤバレル31に電線Wの芯線Sを圧着する際に必要となる押圧力を抑えることができ、ワイヤバレル31からアンビル41及びクリンパ42への反力を抑えることができる。よって、端子圧着装置40によれば、アンビル41及びクリンパ42に磨耗が生じることを抑制することが可能となるとともに、電線Wの芯線Sが圧着されたワイヤバレル31の上方に突上げ部が形成されることを防止することが可能となる。
【0037】
また、端子圧着構造1では、ワイヤバレル31の延長部31bが電線Wの芯線Sの先端部を覆うことで、芯線Sの先端部がワイヤバレル31から前方に突出して露出することが防止される。したがって、端子圧着構造1によれば、図5に示すコネクタハウジング120のような一括防水タイプのコネクタハウジングに備えられるシール部材に挿通する際に、芯線Sの先端部がシール部材を破損することを防止することが可能となる。
【0038】
ここで、端子圧着構造1を有する雌型端子10は、電気コネクタを構成する際、コネクタハウジング(図示せず)からの抜けを防止するために、リテーナ(図示せず)により二次係止される。そして、リテーナにより雌型端子10を係止する際には、まず、リテーナを仮係止位置に配置した状態で雌型端子10をハウジングに挿入する。この場合、リテーナは雌型端子10のワイヤバレル31の上側(図3における上方)に位置している。そして、仮係止位置にあるリテーナを、下側(図3における下方)にスライドして本係止位置に配置する。この場合、リテーナの係止部の前面が、雌型端子10のリテーナ係止部28の後面を係止し、雌型端子10の後方への移動を防止する。したがって、リテーナが本係止位置に配置された状態では、雌型端子10のワイヤバレル31の下方には、仮係止位置から本係止位置までスライドされたリテーナのスライド量に相当する高さの空間が不可避的に形成されることとなる。一方、端子圧着構造1では、延長部31bの下方に膨出部45が形成される。したがって、雌型端子10を電気コネクタに適用した場合、膨出部45がワイヤバレル31の下方に不可避的に形成された空間に収容されるため、膨出部45がリテーナに干渉することはない。よって、端子圧着構造1を有する雌型端子10によれば、端子間の配列ピッチが狭く構成された電気コネクタに適用した場合でもリテーナによる係止を確実に行うことが可能となる。
さらに、端子圧着構造1を有する雌型端子10と、雌型端子10を保持するコネクタハウジング(図示せず)とを備える電気コネクタ(図示せず)によれば、雌型端子10間の配列ピッチを狭く構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る端子圧着構造が適用される端子の斜視図である。
【図2】本発明に係る端子圧着装置に備えられるアンビル及びクリンパと芯線を圧着する前のワイヤバレルとの関係を示す正面断面図である。
【図3】図2に示す端子圧着装置に備えられるアンビル及びクリンパと芯線を圧着した後のワイヤバレルとの関係を示す側面部分切欠き断面図である。
【図4】本発明に係る端子圧着構造の斜視図である。
【図5】特許文献1に係る防水コネクタの部分切欠き断面図である。
【図6】図5に示す防水コネクタのキャビティ内に端子を挿入する途中の状態を示す部分切欠き断面図である。
【図7】芯線先端部保護端子の斜視図である。
【図8】端子のワイヤバレルと端子圧着装置に備えられるアンビル及びクリンパとの関係を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 端子圧着構造
10 雌型端子
20 リセプタクル部
C コンタクトキャリア
W 電線
S 芯線
28 リテーナ係止部
30 電線接続部
31 ワイヤバレル
31a 有効圧着部
31b 延長部
32 インシュレーションバレル
33 確認孔
34a,34b 側壁
35a,35b 側壁
40 端子圧着装置
41 アンビル
42 クリンパ
43 載置溝
43a 第一押圧部
43b 第二押圧部
44 押圧溝
45 膨出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リセプタクル部と、電線の芯線を圧着する有効圧着部及び前記芯線の先端部を覆う延長部を有するワイヤバレルとを備える端子をアンビルの載置溝に載置し、クリンパにより前記ワイヤバレルを押圧する端子圧着方法であって、
前記載置溝は、前記有効圧着部を押圧する第一押圧部と、前記延長部を押圧する第二押圧部とを有し、
前記第二押圧部の底面が、前記リセプタクル部側に向かって拡開する傾斜面として形成されていることを特徴とする端子圧着方法。
【請求項2】
リセプタクル部と、電線の芯線を圧着する有効圧着部及び前記芯線の先端部を覆う延長部を有するワイヤバレルとを備える端子が載置される載置溝を有するアンビルと、
前記アンビルに載置された前記端子の前記ワイヤバレルを押圧するクリンパとを備えてなる端子圧着装置であって、
前記載置溝は、前記有効圧着部を押圧する第一押圧部と、前記延長部を押圧する第二押圧部とを有し、
前記第二押圧部の底面が、前記リセプタクル部側に向かって拡開する傾斜面として形成されていることを特徴とする端子圧着装置。
【請求項3】
上方に突出するリテーナ係止部を有するリセプタクル部と、電線の芯線を圧着する有効圧着部及び前記芯線の先端部を覆う延長部を有し、上方に向かって開口するワイヤバレルとを備える端子をアンビルの載置溝に載置し、クリンパにより前記ワイヤバレルを押圧することにより、前記電線の前記芯線を前記ワイヤバレルに圧着してなる端子圧着構造であって、
前記載置溝は、前記有効圧着部を押圧する第一押圧部と、前記延長部を押圧する第二押圧部とを有し、
前記第二押圧部の底面が、前記リセプタクル部側に向かって拡開する傾斜面として形成されていることにより、前記延長部の下方に膨出部が形成されてなることを特徴とする端子圧着構造。
【請求項4】
請求項3記載の端子圧着構造を有する端子と、該端子を保持するハウジングとを備えてなることを特徴とする電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−181813(P2008−181813A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15539(P2007−15539)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスアンプ株式会社 (340)
【Fターム(参考)】