説明

端子接続構造

【課題】工具用バッテリと電気機器との幅寸法を増加させずに、端子を増設できるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る端子接続構造によると、工具用バッテリには、異なる役割の複数の端子45,46がスライド方向に並べられた状態で設けられており、電気機器には、工具用バッテリにおける複数の端子45,46のいずれかに接続される一つの端子23sが設けられており、工具用バッテリと電気機器との相対スライドにより、電気機器に設けられた所定の端子23sが工具用バッテリに設けられた対応する所定の端子46の位置まで到達する過程で、電気機器に設けられた所定の端子23sは工具用バッテリに設けられた別の端子45の位置を通過できるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具用バッテリと電気機器とが一定方向に相対スライドする動作により、前記工具用バッテリと前記電気機器とが連結され、さらに前記工具用バッテリの端子と前記電気機器の端子とが電気的に接続される構成の端子接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関する端子接続構造が特許文献1に記載されている。
特許文献1に係る端子接続構造は、図12に示すように、工具用バッテリ100の端子部と電動工具本体110の端子部との接続構造を表している。
電動工具本体110の端子部は、右端側に設けられたマイナス雄端子111と左端側に設けられたプラス雄端子112とを備えており、両端子111,112の間に信号用雄端子115が設けられている。マイナス雄端子111とプラス雄端子112とは、工具用バッテリ100のスライド方向に延びる帯板状に形成されて、両端子111,112が等しい長さ寸法に設定されている。信号用雄端子115は、マイナス雄端子111とプラス雄端子112に平行な帯板状に形成されており、マイナス雄端子111等よりも短く設定されている。
工具用バッテリ100の端子部は、右端側に設けられた二段式のマイナス雌端子101a,101bと、左端側に設けられた二段式のプラス雌端子102a,102bとを備えている。そして、マイナス雌端子101a,101bとプラス雌端子102a,102bとの間で、電動工具本体110の信号用雄端子115に対応する位置に一段式の信号雌端子105が設けられている。
上記構成により、工具用バッテリ100と電動工具本体110とが一定方向相対スライドする動作により、その電動工具本体110の各々の雄端子111,112,115が工具用バッテリ100の各々の雌端子101a,101b,102a,102b,105にそれぞれ挿入されて、それぞれの端子が電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−057204号公報(特許3698296号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した端子接続構造では、例えば、電動工具本体110のマイナス雄端子111とプラス雄端子112との間に信号用雄端子を増設する場合、現状のままではスペース的に余裕がないため、マイナス雄端子111とプラス雄端子112との間隔を広げるのが一般的である。このため、信号用雄端子の増設により電動工具本体110の端子部の幅寸法が大きくなり、電動工具本体110のバッテリ連結部が大型化する。同様に、工具用バッテリ100の端子部の幅寸法も大きくなり、工具用バッテリ100も大型化する。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、工具用バッテリと電気機器との幅寸法を増加させずに、端子を増設できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、工具用バッテリと電気機器とが一定方向に相対スライドする動作により、前記工具用バッテリと前記電気機器とが連結され、さらに前記工具用バッテリの端子と前記電気機器の端子とが電気的に接続される構成の端子接続構造であって、前記工具用バッテリと前記電気機器とのいずれか一方の部材には、異なる役割の複数の端子がスライド方向に並べられた状態で設けられており、前記工具用バッテリと前記電気機器とのいずれか他方の部材には、前記一方の部材の端子に接続される少なくとも一つの端子が設けられており、前記工具用バッテリと前記電気機器との相対スライドにより、前記他方の部材に設けられた所定の端子が前記一方の部材に設けられた対応する所定の端子の位置まで到達する過程で、前記他方の部材に設けられた所定の端子は前記一方の部材に設けられた別の端子の位置を通過できるように構成されていることを特徴とする。
ここで、他方の部材に設けられた所定の端子が一方の部材に設けられた別の端子の位置を通過するとは、相互に接触しながら通過する場合のみならず、非接触状態で通過する場合も含むものとする。
【0007】
本発明によると、工具用バッテリ、電気機器において異なる役割の複数の端子をスライド方向に並べることができる。このため、端子を増設する場合に、工具用バッテリ、及び電気機器のスライド方向に対して直角方向の寸法、即ち、幅寸法を増加させる必要がない。したがって、工具用バッテリと電気機器との幅寸法を増加させずに、異なる役割の端子を増設できるようになる。
【0008】
請求項2の発明によると、工具用バッテリと電気機器とのいずれか他方の部材には、一方の部材における複数の端子のいずれかに接続される一つの端子が設けられ、あるいは前記複数の端子にそれぞれ接続される複数の端子がスライド方向に並べられた状態で設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明によると、スライド方向に並べられた複数の端子のいずれか一つが工具用バッテリの識別信号を中継する端子であることを特徴とする。
請求項4の発明によると、スライド方向に並べられた複数の端子のいずれか一つが充電電流を中継する端子であり、その他の端子が放電制御信号を中継する端子であることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明によると、工具用バッテリと電気機器とのいずれか他方の部材における端子は、スライド方向に平行な平板状に形成された雄端子であり、その雄端子のスライド方向両端が断面略楔状に面取りされていることを特徴とする。
このように、平板状に形成された雄端子のスライド方向両端が断面略楔状に面取りされているため、前記雄端子がスライド過程で相手側の雌端子に挿抜され易くなる。
【0011】
請求項6の発明によると、工具用バッテリと電気機器とのいずれか一方の部材における端子は、前記他方の部材の雄端子を両側から挟めるように形成された雌端子であり、その雌端子の開口端部寸法が前記他方の部材の雄端子をガイドするスリット幅寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする。
このため、スリットによりガイドされた他方の部材の雄端子が確実に一方の部材の雌端子に挿入されるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、工具用バッテリと電気機器との幅寸法を増加させずに、端子を増設できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る工具用バッテリと電動工具本体との接続構造を表す電気回路図(A図)、工具用バッテリと充電器との接続構造を表す電気回路図(B図)である。
【図2】前記電動工具本体のバッテリ連結部を下方から見た斜視図(A図)、その電動工具本体の信号用雄端子を表す平断面図(B図)である。
【図3】前記工具用バッテリと電動工具本体との接続過程を表す斜視図である。
【図4】前記工具用バッテリと電動工具本体との連結構造を表す縦断面図(図3のIV-IV矢視断面図)である。
【図5】前記工具用バッテリの全体斜視図(A図)、工具用バッテリの蓋部を外した状態を表す斜視図(B図)である。
【図6】前記工具用バッテリの端子部を表す平面図(A図)、A図のB部拡大図(B)、及び電動工具本体の信号用雄端子と工具用バッテリの充電用雌端子、放電制御用雌端子との接続過程を表す平面図(C図)である。
【図7】前記充電器の全体斜視図である。
【図8】変更例に係る工具用バッテリの全体斜視図(A図)、その工具用バッテリと電動工具本体との接続構造を表す電気回路図(B図)である。
【図9】変更例に係る工具用バッテリと電動工具本体との接続構造を表す電気回路図(A図)、工具用バッテリと充電器との接続構造を表す電気回路図(B図)である。
【図10】変更例に係る電動工具本体のバッテリ連結部を下方から見た斜視図(A図)、前記電動工具本体の温度入力雄端子、バッテリ種別雄端子と工具用バッテリの温度出力雌端子、バッテリ種別雌端子との接続過程を表す平面図(B図)である。
【図11】変更例に係る充電器の全体斜視図である。
【図12】従来の工具用バッテリの端子部と電動工具本体の端子部とを表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
以下、図1から図11に基づいて、本発明の実施形態1に係る端子接続構造の説明を行なう。本実施形態に係る端子接続構造は、工具用バッテリの端子部と電動工具本体の端子部との端子接続構造、及び工具用バッテリの端子部と充電器の端子部との端子接続構造である。
ここで、図中の前後左右及び上下は、電動工具本体の前後左右及び上下に対応している。
【0015】
<電動工具本体10の概要について>
電動工具本体10のハウジング11は、図3に示すように、モータM(図1参照)等を収納する筒状のハウジング本体部12と、そのハウジング本体部12の下部から突出するように形成されたグリップ部15とから構成されている。そして、前記グリップ部15の上端位置(基端部)に、トリガ形式のスイッチレバー13が設けられている。また、グリップ部15の下端部(先端部)には、工具用バッテリ30が連結されるバッテリ連結部17が設けられている。
バッテリ連結部17は、図3に示すように、工具用バッテリ30に対して後から前にスライドする動作により、その工具用バッテリ30に連結されるように構成されている。
【0016】
<電動工具本体10のバッテリ連結部17について>
電動工具本体10のバッテリ連結部17は、図2(A)に示すように、下側と前側とが開放された略角形のキャップ状に形成されている。そして、バッテリ連結部17の左右下端部の位置に、図2、図4に示すように、工具用バッテリ30のスライド方向(前後方向)に延びるレール状の突条部18がバッテリ連結部17の内壁面から幅方向内側に突出するように形成されている。そして、左右の突条部18の上側に、図4に示すように、それらの突条部18に沿って前後方向に延びる角溝18mが形成されている。前記角溝18mには、後記するように、工具用バッテリ30のスライドレール36の横方向突条部36tが嵌合するようになっている。
【0017】
バッテリ連結部17の裏側中央位置には、図2(A)に示すように、電動工具本体10の端子部20が設けられている。端子部20は、電動工具本体10のモータ駆動回路(図1(A)参照)のプラス雄端子23p、マイナス雄端子23n、及び信号用雄端子23sをバッテリ連結部17の下端面17fの所定位置に固定するため部材である。端子部20は、バッテリ連結部17の下端面17fに固定される平板部21を備えており、その平板部21の下面にプラス雄端子23p、マイナス雄端子23n、及び信号用雄端子23sが露出した状態で固定されている。プラス雄端子23p、マイナス雄端子23nは、平板部21の左右端の位置で工具用バッテリ30のスライド方向に延びるように帯板状に形成されており、前記平板部21の下面に対してほぼ直角に立てられている。そして、プラス雄端子23p、マイナス雄端子23nが等しい長さ寸法に設定されている。信号用雄端子23sは、マイナス雄端子23nとプラス雄端子23pに平行な板状に形成されており、マイナス雄端子23nとプラス雄端子23p間の所定位置に配置されている。信号用雄端子23sは、図2(B)に示すように、スライド方向両側が断面略楔状に面取りされている。
電動工具本体10の端子部20のプラス雄端子23pは、図1(A)に示すように、前記モータ駆動回路のプラス線PによってモータMの駆動用のスイッチレバー13に接続されており、マイナス雄端子23nは前記モータ駆動回路のマイナス線NによってモータMの制御用のFETに接続されている。また、信号用雄端子23sは信号線SによってFETのオンオフ制御端子に接続されている。
【0018】
<工具用バッテリ30について>
工具用バッテリ30は、図5(B)に示すように、複数個のセル31を収納する上部開放型のケース本体部32と、そのケース本体部32の開口32hを塞ぐ蓋部34とを備えている。ケース本体部32と蓋部34とは平面略角形に形成されており、そのケース本体部32に対して蓋部34が周方向に複数箇所でネジ止めされるように構成されている。
前記工具用バッテリ30の蓋部34の上面には、図5(A)に示すように、その左右両側に電動工具本体10との連結に使用されるスライドレール36が前後方向に延びるように形成されている。左右のスライドレール36は、レール本体部36mと、そのレール本体部36mの上側面から幅方向外側に一定寸法だけ突出する横方向突条部36tとから構成されている。そして、左右の横方向突条部36tが、図4に示すように、電動工具本体10のバッテリ連結部17に形成された左右の角溝18mに嵌合可能なように構成されている。また、左右のスライドレール36の基端部位置(前端位置)には、図5(A)に示すように、ストッパ部36uが形成されている。
【0019】
工具用バッテリ30の蓋部34の上面前部には、左右のスライドレール36の間に、電動工具本体10のプラス雄端子23p、マイナス雄端子23n、及び信号用雄端子23sがスライド過程でそれぞれ後方から挿入可能に構成された左案内スリット37、右案内スリット38、及び中間案内スリット39が前記スライドレール36と平行に形成されている。そして、左案内スリット37の内側に工具用バッテリ30のプラス雌端子43(図5(B)参照)が配置されており、右案内スリット38の内側に工具用バッテリ30のマイナス雌端子44が配置されている。また、中間案内スリット39の内側に充電用雌端子45と放電制御用雌端子46がスライド方向に並べられた状態で配置されている。即ち、中間案内スリット39の後端側(入口側)の充電用雌端子45、その充電用雌端子45よりも前側(中間案内スリット39の奥側)に放電制御用雌端子46が配置されている。
工具用バッテリ30のプラス雌端子43、マイナス雌端子44、充電用雌端子45及び放電制御用雌端子46は、図5(A)、図6等に示すように、工具用バッテリ30の端子部40に固定されている。端子部40は、蓋部34の内側で各々の雌端子43,44,45,46を所定位置に配置するための部材である。端子部40は、平板部41を備えており、その平板部41の上面にプラス雌端子43、マイナス雌端子44、充電用雌端子45及び放電制御用雌端子46が設置されている。
【0020】
プラス雌端子43、マイナス雌端子44は等しい構成であり、電動工具本体10のプラス雄端子23p、マイナス雄端子23nをそれぞれ厚み方向両側からバネ力で挟むことにより、それらの雄端子23p,23nに接続されるように構成されている。即ち、プラス雌端子43は、スライド方向に並べられた第一挟持部43aと第二挟持部43bとを備えており、第一挟持部43aと第二挟持部43bとが板バネ状の導体により構成されている。ここで、第一挟持部43aと第二挟持部43bとが電気的に導通した状態に保持されている。そして、電動工具本体10のプラス雄端子23pがスライド過程で工具用バッテリ30の左案内スリット37にガイドされてプラス雌端子43の第一挟持部43aと第二挟持部43bとに挿入されることで、電動工具本体10のプラス雄端子23pと工具用バッテリ30のプラス雌端子43とが電気的に接続される。
なお、マイナス雌端子44は、プラス雌端子43と等しい構成であるため説明を省略する。
工具用バッテリ30のプラス雌端子43は、図1(A)に示すように、プラス線Pを介してセル31のプラス電極に接続されている。また、マイナス雌端子44は、マイナス線Nを介してセル31のマイナス電極に接続されている。
【0021】
工具用バッテリ30の充電用雌端子45は、図1(B)に示すように、後記する充電器50のプラス雄端子55が接続される端子であり、回路開閉部47、プラス線Pを介してセル31のプラス電極に接続されている。工具用バッテリ30の放電制御用雌端子46は、図1(A)に示すように、電動工具本体10の信号用雄端子23sが接続される端子であり、信号線Sを介してCPUの放電制御用出力端子に接続されている。これにより、例えば、工具用バッテリ30の過放電時にCPUの放電制御用出力端子から放電停止信号が出力されることで、電動工具本体10のFETがオフ動作してモータMが停止される。
充電用雌端子45と放電制御用雌端子46は、等しい構成で、図6に示すように、スライド方向(前後方向)において対称に設けられている。
放電制御用雌端子46は、図6(B)等に示すように、電動工具本体10の信号用雄端子23sを厚み方向両側(左右方向)から挟む左端子片46aと右端子片46bとから構成されている。左端子片46aと右端子片46bとは板バネ状の導体により構成されており、左端子片46aと右端子片46bとの間隔が前端側と後端側とで広く、後端寄りの途中位置46cで最も狭くなるように構成されている。そして、前記途中位置46c、及びその近傍で電動工具本体10の信号用雄端子23sが挟まれるように構成されている。また、放電制御用雌端子46の前端側と後端側との間隔寸法は、中間案内スリット39のスリット幅寸法よりも大きく設定されている。
【0022】
充電用雌端子45は、上記した放電制御用雌端子46と等しい構成であり、スライド過程で、図6(C)に示すように、電動工具本体10の信号用雄端子23sが充電用雌端子45の左端子片45aと右端子片45bとの間を摺動状態で通過できるように構成されている。このため、スライド過程で電動工具本体10の信号用雄端子23sは中間案内スリット39にガイドされて充電用雌端子45を通過した後、放電制御用雌端子46の位置まで導かれるようになる。
ここで、電動工具本体10の信号用雄端子23sは、図6(C)に示すように、スライド方向両端が断面略楔状に面取りされているため、挿入時に充電用雌端子45をスムーズに通過して放電制御用雌端子46に挿入されるようになる。また、電動工具本体10の信号用雄端子23sを放電制御用雌端子46から抜く際にもスムーズに充電用雌端子45を通過できるようになる。
【0023】
<充電器50について>
充電器50は、図7に示すように、ハウジング51の左側にバッテリ連結部52が設けられている。バッテリ連結部52には、左右両側位置に前後方向に延びるガイド壁部56が設けられており、左右のガイド壁部56の対向する側壁の上端位置に幅方向内側に突出するレール状の突条部56tが形成されている。即ち、突条部56tの下側には、窪み部56mが形成されている。そして、充電器50の左右の窪み部56mに対して工具用バッテリ30の横方向突条部36tが嵌合可能なように構成されている。
また、充電器50のバッテリ連結部52には、左右の突条部56tの間にマイナス雄端子54とプラス雄端子55とが工具用バッテリ30の右案内スリット38と中間案内スリット39とに対応する位置に設けられている。充電器50のマイナス雄端子54は電動工具本体10のマイナス雄端子23nとほぼ等しい構成である。また、充電器50のプラス雄端子55は電動工具本体10の信号用雄端子23sとほぼ等しい構成で、工具用バッテリ30の充電用雌端子45に接続される位置に配置されている。
ここで、充電器50のプラス雄端子55は、図1(B)に示すように、プラス線Pにより直流電源53のプラス端子に接続されており、マイナス雄端子54はマイナス線Nにより直流電源53のマイナス端子に接続されている。
【0024】
<工具用バッテリ30と電動工具本体10との連結動作について>
工具用バッテリ30と電動工具本体10とを連結させるには、図3、図4に示すように、工具用バッテリ30の左右のスライドレール36に形成された横方向突条部36tに対して電動工具本体10のバッテリ連結部17に設けられた角溝18mの前端部を嵌合させる。次に、前記嵌合状態を保持したままで、電動工具本体10を工具用バッテリ30に対して前方にスライドさせる。これにより、電動工具本体10と工具用バッテリ30とが連結される。さらに、スライド過程で電動工具本体10のプラス雄端子23p、マイナス雄端子23n、及び信号用雄端子23sがそれぞれ工具用バッテリ30の左案内スリット37、右案内スリット38、及び中間案内スリット39に挿入される。そして、電動工具本体10のプラス雄端子23p、マイナス雄端子23nがそれぞれ工具用バッテリ30の左案内スリット37、右案内スリット38にガイドされてプラス雌端子43、マイナス雌端子44に挿入される。また、電動工具本体10の信号用雄端子23sが中間案内スリット39にガイドされて充電用雌端子45を摺動状態で通過し、放電制御用雌端子46に挿入される。そして、工具用バッテリ30に対する電動工具本体10の前方スライドが完了した段階で、電動工具本体10と工具用バッテリ30とが連結が完了するとともに、図1(A)に示すように、電動工具本体10のプラス雄端子23p、マイナス雄端子23n、及び信号用雄端子23sがそれぞれ工具用バッテリ30のプラス雌端子43、マイナス雌端子44、及び放電制御用雌端子46に接続される。
【0025】
<工具用バッテリ30と充電器50との連結動作について>
工具用バッテリ30を充電器50に連結させる場合には、工具用バッテリ30を上下逆転させた状態で、その工具用バッテリ30の左右のスライドレール36に形成された横方向突条部36tを充電器50の左右の窪み部56mに対して前方から嵌合させる。次に、前記嵌合状態を保持したままで、工具用バッテリ30を充電器50に対し、図7において後方にスライドさせる。これにより、工具用バッテリ30と充電器50とが連結される。さらに、スライド過程で充電器50のマイナス雄端子54が工具用バッテリ30の右案内スリット38に挿入され、充電器50のプラス雄端子55が工具用バッテリ30の中間案内スリット39に挿入される。そして、スライド完了時に、図1(B)に示すように、充電器50のマイナス雄端子54が工具用バッテリ30のマイナス雌端子44に接続され、充電器50のプラス雄端子55が工具用バッテリ30の充電用雌端子45に接続されるようになる。
即ち、工具用バッテリ30が本発明の一方の部材に相当し、前記充電器50及び電動工具本体10が本発明の電気機器及び他方の部材に相当する。
【0026】
<本実施形態に係る端子接続構造の長所について>
本実施形態に係る端子接続構造によると、工具用バッテリ30において異なる役割の複数の端子(充電用雌端子45、放電制御用雌端子46)をスライド方向に並べることができる。このため、端子を増設する場合に、工具用バッテリ30のスライド方向に対して直角方向の寸法、即ち、幅寸法を増加させる必要がない。したがって、工具用バッテリ30の幅寸法を増加させずに、端子を増設できるようになる。
また、工具用バッテリ30の幅寸法が増加しないため、その工具用バッテリ30が接続される電動工具本体10及び充電器50のバッテリ連結部の幅寸法も増加することがない。
また、電動工具本体10の信号用雄端子23sは、スライド方向に平行な平板状に形成された雄端子であり、その雄端子のスライド方向両端が断面略楔状に面取りされている。このため、信号用雄端子23sがスライド過程で工具用バッテリ30の充電用雌端子45、放電制御用雌端子46に挿抜され易くなる。
【0027】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、電動工具本体10側に雄端子23p,23nを設け、工具用バッテリ30側に雌端子43,44を設ける例を示した。しかし、図8(A)(B)に示すように、電圧が高い側の端子である工具用バッテリ30のプラス端子43を雄端子にし、電圧が低い側の端子である電動工具本体10のプラス端子23pを雌端子にしても良い。このように、電圧が高く、温度が上昇し易い方の端子が平板状の雄端子となるため、放熱性に優れ、端子の温度上昇を抑えることができる。
また、本実施形態では、工具用バッテリ30に充電用雌端子45と放電制御用雌端子46をスライド方向に並べて配置し、充電用雌端子45に充電器50のプラス雄端子55を接続し、放電制御用雌端子46に電動工具本体10の信号用雄端子23sを接続する例を示した。しかし、図9(A)(B)に示すように、温度出力雌端子62とバッテリ種別雌端子63とを備える工具バッテリ60において、温度出力雌端子62とバッテリ種別雌端子63とをスライド方向に並べて配置することも可能である。ここで、温度出力雌端子62はセル温度を検出する温度計62tに接続されており、バッテリ種別雌端子63はバッテリ種別を表す抵抗63rに接続されている。
【0028】
前記工具バッテリ60が連結される電動工具本体70には、図9(A)、図10(A)に示すように、その工具用バッテリ30の温度出力雌端子62とバッテリ種別雌端子63とに対応する温度入力雄端子72とバッテリ種別雌端子73とがスライド方向に並べられた状態で設けられている。そして、スライド過程で、図10(B)に示すように、電動工具本体70の温度入力雄端子72とバッテリ種別雌端子73とが工具バッテリ60の温度出力雌端子62とバッテリ種別雌端子63とにそれぞれ接続されるようになる。
同様に、前記工具バッテリ60が連結される充電器80には、図9(B)、図11に示すように、その工具用バッテリ30の温度出力雌端子62とバッテリ種別雌端子63とに対応する温度入力雄端子82とバッテリ種別雌端子83とがスライド方向に並べられた状態で設けられている。そして、スライド過程で充電器80の温度入力雄端子82とバッテリ種別雌端子83とが工具バッテリ60の温度出力雌端子62とバッテリ種別雌端子63とにそれぞれ接続されるようになる。
【0029】
また、図9(A)(B)に示すように、制御電圧出力雌端子65と制御電圧入力雌端子66とを備える工具バッテリ60の場合に、制御電圧出力雌端子65と制御電圧入力雌端子66とをスライド方向に並べて配置することが可能である。この場合、制御電圧出力雌端子65に電動工具本体70の制御電圧入力雄端子75が接続され、制御電圧入力雌端子66に充電器80の制御電圧出力雄端子86が接続されるようになる。
また、図9(A)(B)に示すように、過放電出力雌端子68と過充電出力雌端子69とを備える工具バッテリ60の場合に、過放電出力雌端子68と過充電出力雌端子69とをスライド方向に並べて配置することが可能である。この場合、過放電出力雌端子68に電動工具本体70の過放電入力雄端子78が接続され、過充電出力雌端子69に充電器80の過充電入力雄端子89が接続されるようになる。
【0030】
また、本実施形態では、所定の雄端子を所定の雌端子に接続する過程でその所定の雄端子が別の雌端子に接触しながらその雌端子を通過する例を示した。しかし、スライド方向に並べられた所定の雌端子と別の雌端子との高さを変えて、所定の雄端子が非接触で別の雌端子の位置を通過できるようにすることも可能である。
また、本実施形態では、電気機器の例として電動工具本体10,70と充電器50,80とを例示したが、電気機器としてバッテリチェッカ等を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0031】
10,70・・電動工具本体(電気機器、他方の部材)
23p・・・・プラス雄端子
23n・・・・マイナス雄端子
23s・・・・信号用雄端子
30,60・・工具用バッテリ(一方の部材)
43・・・・・プラス雌端子
44・・・・・マイナス雌端子
45・・・・・充電用雌端子
46・・・・・放電制御用雌端子
50,80・・充電器(電気機器、他方の部材)
54・・・・・マイナス雄端子
55・・・・・プラス雄端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具用バッテリと電気機器とが一定方向に相対スライドする動作により、前記工具用バッテリと前記電気機器とが連結され、さらに前記工具用バッテリの端子と前記電気機器の端子とが電気的に接続される構成の端子接続構造であって、
前記工具用バッテリと前記電気機器とのいずれか一方の部材には、異なる役割の複数の端子がスライド方向に並べられた状態で設けられており、
前記工具用バッテリと前記電気機器とのいずれか他方の部材には、前記一方の部材の端子に接続される少なくとも一つの端子が設けられており、
前記工具用バッテリと前記電気機器との相対スライドにより、前記他方の部材に設けられた所定の端子が前記一方の部材に設けられた対応する所定の端子の位置まで到達する過程で、前記他方の部材に設けられた所定の端子は前記一方の部材に設けられた別の端子の位置を通過できるように構成されていることを特徴とする端子接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載された端子接続構造であって、
前記工具用バッテリと前記電気機器とのいずれか他方の部材には、前記一方の部材における複数の端子のいずれかに接続される一つの端子が設けられ、あるいは前記複数の端子にそれぞれ接続される複数の端子がスライド方向に並べられた状態で設けられていることを特徴とする端子接続構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された端子接続構造であって、
前記スライド方向に並べられた複数の端子のいずれか一つが工具用バッテリの識別信号を中継する端子であることを特徴とする端子接続構造。
【請求項4】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された端子接続構造であって、
前記スライド方向に並べられた複数の端子のいずれか一つが充電電流を中継する端子であり、その他の端子が放電制御信号を中継する端子であることを特徴とする端子接続構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された端子接続構造であって、
前記工具用バッテリと前記電気機器とのいずれか他方の部材における端子は、スライド方向に平行な平板状に形成された雄端子であり、その雄端子のスライド方向両端が断面略楔状に面取りされていることを特徴とする端子接続構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された端子接続構造であって、
前記工具用バッテリと前記電気機器とのいずれか一方の部材における端子は、前記他方の部材の雄端子を両側から挟めるように形成された雌端子であり、その雌端子の開口端部寸法が前記他方の部材の雄端子をガイドするスリット幅寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする端子接続構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−218514(P2011−218514A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92113(P2010−92113)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】