説明

端子金具同士の固定方法及び端子金具

【課題】局部的な発熱を防止できる低コストな端子金具同士の固定方法及び端子金具を提供する。
【解決手段】端子金具1は第1端子金具5と第2端子金具6を備えている。第1端子金具5は貫通孔12が設けられた第1平板部8とかしめ片9を備えている。かしめ片9は第1平板部8の幅方向の両縁から立設している。第2端子金具6は突出部15が設けられた第2平板部14を備えている。突出部15を貫通孔12内に挿入して先端部を潰すとともにかしめ片9で第2平板部14を加締めて端子金具5,6同士が固定されて端子金具1が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに配索されるワイヤハーネスを構成する端子金具同士の固定方法及び端子金具に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車には、多種多様な電子機器が搭載される。前記自動車は、前記電子機器に電力や制御信号などを伝えるために、ワイヤハーネスを配索している。ワイヤハーネスは、複数の電線と、コネクタと、を備えている。電線は、導電性の芯線と、該芯線を被覆する絶縁性の被覆部と、を備えた所謂被覆電線である。
【0003】
前述したコネクタは、端子金具と、コネクタハウジングとを備えている。端子金具は、導電性の板金などからなる。コネクタハウジングは、絶縁性の合成樹脂からなり筒状に形成されている。コネクタハウジングは、端子金具を収容する。
【0004】
前述したコネクタとして、例えば、印刷配線板に取り付けられた状態で相手側のコネクタと嵌合するものが用いられている。この種のコネクタの端子金具は、印刷配線板の配線パターンと電気的に接続する棒状の第1の電気接触部と、前述した相手側のコネクタの端子金具と接続する筒状の第2の電気接触部とを備えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した棒状の第1の電気接触部と筒状の第2の電気接触部とを備えた端子金具は、第1の電気接触部と第2の電気接触部の断面積が異なるため、通電する際に、前述した第1の電気接触部が局部的に発熱してしまう。
【0006】
前述した発熱を防止するために、該第1の電気接触部を折り曲げ形成して、第1の電気接触部の断面積を増加させることが考えられる。しかいながら、第1の電気接触部を折り曲げ成形する際にかかる金型が複雑になって、端子金具自体のコストが高騰する虞があった。
【0007】
また、前述した端子金具を、互いに別体の前記第1の電気接触部を有する第1端子金具と、前記第2の電気接触部を有する第2端子金具とで構成して、第1端子金具の厚みを第2端子金具の厚みより厚くすることが考えられる。こうすることで、第1の電気接触部即ち第1端子金具の発熱を防止することが考えられる。
【0008】
この場合、第1端子金具と第2端子金具とを互いに固定するために、第1端子金具と第2端子金具のうち一方にばね片を設けることが考えられる。この場合、ばね片を設けた第1端子金具と第2端子金具のうち一方の構成が複雑となって、該一方を折り曲げ成形する際にかかる金型が複雑になって、端子金具自体のコストが高騰する虞があった。
【0009】
また、第1端子金具と第2端子金具とを互いに固定するために、第1端子金具と第2端子金具とは別体のリベットなどを設けることが考えられる。この場合、部品点数が増加する傾向となって、端子金具自体のコストが高騰する虞があった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、局部的な発熱を防止できる低コストな端子金具同士の固定方法及び端子金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した課題を達成し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の端子金具同士の固定方法は、第1平板部を有した第1端子金具と、第2の平板部を有した第2端子金具との固定方法であって、前記第1平板部に設けられた貫通孔内に、前記第2平板部より突出した突出部を挿入した後、該突出部の先端部を前記第2平板部に向かって押し潰して拡大部を形成し、該拡大部と前記第2平板部との間に前記第1平板部を挟み込むことを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の本発明の端子金具は、第1平板部を有した第1端子金具と、第2の平板部を有した第2端子金具とを備え、前記第1平板部と前記第2平板部とが互いに重ねられた状態でこれらの端子金具同士が固定された端子金具において、前記第1平板部に貫通孔が設けられ、前記第2平板部に該第2平板部より突出した突出部が設けられているとともに、前記貫通孔内に挿入された突出部の先端部に、前記第2平板部に向かって押し潰されて形成された拡大部が形成されて、前記拡大部と前記第2平板部との間に前記第1平板部を挟み込んだことを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の本発明の端子金具は、請求項2に記載の端子金具において、前記貫通孔と、前記突出部とは、それぞれ、複数設けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の本発明の端子金具は、請求項2又は請求項3に記載の端子金具において、前記貫通孔の内面には、前記第1平板部に重ねられた前記第2平板部から離れるのにしたがって前記貫通孔が徐々に拡大する方向に傾斜したテーパ面が設けられていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の本発明の端子金具は、請求項4に記載の端子金具において、前記貫通孔の内面には、前記テーパ面に連なりかつ該テーパ面よりも第2平板部寄りに配置されているとともに、前記拡大部の形成前の前記突出部の外周面と間隔をあけて相対する平行面が更に設けられていることを特徴としている。
【0016】
請求項6に記載の本発明の端子金具は、請求項4又は請求項5に記載の端子金具において、前記拡大部が前記テーパ面に密に重なって、前記貫通孔内に収められていることを特徴としている。
【0017】
請求項7に記載の本発明の端子金具は、請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載の端子金具において、前記拡大部の形成前の前記突出部の前記第2平板部からの突出量が前記第1平板部の厚みと略等しいとともに、前記突出部の前記先端部の端面の中央が前記第2平板部に向かって押し潰されて前記拡大部とともに前記端面から凹の凹みが形成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項1に記載した本発明の端子金具同士の固定方法によれば、第1平板部に貫通孔を設け、第2平板部に突出部を設けるという簡便な構成によって、第1平板部と第2平板部とを固定できる即ち第1端子金具と第2端子金具とを固定できる。
【0019】
請求項2に記載した本発明の端子金具によれば、第1平板部に貫通孔を設け、第2平板部に突出部を設けるという簡便な構成によって、第1平板部と第2平板部とを固定できる即ち第1端子金具と第2端子金具とを固定できる。
【0020】
請求項3に記載した本発明の端子金具によれば、貫通孔と突出部とが複数設けられているので、第1端子金具と第2端子金具とを固定すると、これらの端子金具同士ががたつくことを防止できる。
【0021】
請求項4に記載した本発明の端子金具によれば、貫通孔の内面にテーパ面が設けられているので、突出部の先端部が確実に貫通孔内に位置付けられるので、該先端部が潰されて形成された拡大部が貫通孔内で外周方向に拡がる。
【0022】
請求項5に記載した本発明の端子金具によれば、貫通孔の内面にテーパ面と連なりかつ拡大部の形成前の突出部の外周面と間隔をあける平行面が設けられているので、貫通孔内に突出部を容易に挿入できる。
【0023】
請求項6に記載した本発明の端子金具によれば、拡大部がテーパ面に密に重なるので、該拡大部が第2平板部との間に確実に第1平板部を挟むことができる。
【0024】
また、拡大部が貫通孔内に収められているので、該拡大部が他の物品と接触することを防止できる。
【0025】
請求項7に記載した本発明の端子金具によれば、拡大部の形成前の突出部の先端部の中央を押圧して、拡大部とともに先端面に凹みを形成するので、拡大部とテーパ面とがより確実に密着する。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明は、簡便な構成によって第1端子金具と第2端子金具とを固定できるので、第1端子金具と第2端子金具を別体にして、これらの厚みを異ならせて、発熱を防止できるようにしても、低コスト化を図ることができる。
【0027】
請求項2に記載した本発明は、簡便な構成によって第1端子金具と第2端子金具とを固定できるので、第1端子金具と第2端子金具を別体にして、これらの厚みを異ならせて、発熱を防止できるようにしても、低コスト化を図ることができる。
【0028】
請求項3に記載した本発明は、互いに固定された第1端子金具と第2端子金具とががたつくことを防止できるので、これらの端子金具同士が曲がって組み付くことを防止できる。
【0029】
請求項4に記載した本発明は、突出部の先端部が潰されて形成された拡大部が貫通孔内で外周方向に拡がるので、拡大部と第2平板部との間に第1平板部を確実に挟むことができる。したがって、第1端子金具と第2端子金具とを確実に強固に固定でき、これらの端子金具同士が不意に分離することを防止できる。
【0030】
請求項5に記載した本発明は、貫通孔内に突出部を容易に挿入できるので、端子金具同士を容易に固定でき、容易に組み立てることができる。
【0031】
請求項6に記載した本発明は、拡大部が第2平板部との間に確実に第1平板部を挟むことができるので、第1端子金具と第2端子金具とをより確実に強固に固定でき、これらの端子金具同士が不意に分離することを確実に防止できる。
【0032】
また、拡大部が他の物品と接触することを防止できるので、電気的に短絡することを防止できる。
【0033】
請求項7に記載した本発明は、拡大部の形成前の突出部の先端部の中央を押圧して拡大部とともに先端面に凹みを形成するので、拡大部とテーパ面とがより確実に密着する。このため、互いに固定された端子金具間の電気的な抵抗を抑制できる。また、拡大部と第2平板部との間に第1平板部をより強固に挟み込むことができ、端子金具同士をより強固に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の第1の実施形態にかかる端子金具を、図1ないし図7を参照して説明する。図1などに示す端子金具1は、図示しないコネクタを構成する。
【0035】
コネクタは、絶縁性の合成樹脂で構成されたコネクタハウジングと、前述した端子金具1とを備えている。コネクタハウジングは、箱状に形成されており、端子金具1を収容する端子収容室を多数設けている。コネクタハウジングは、印刷配線板に取り付けられて、相手側のコネクタのコネクタハウジングと嵌合する。
【0036】
端子金具1は、図1及び図2に示すように、第1端子金具5と、第2端子金具6とを備えている。
【0037】
第1端子金具5は、導電性の板金で構成されて、図3に示すように、第1電気接触部7と、第1平板部8と、一対のかしめ片9とを一体に備えている。第1電気接触部7は、四角筒状に形成された筒部10と、該筒部10内に設けられたばね片11とを備えている。筒部10即ち第1電気接触部7内には、前述した相手側のコネクタの端子金具の雄タブが侵入する。ばね片11は、筒部10内に侵入した雄タブを該筒部10の内面に押し付ける。第1電気接触部7は、前述した相手側のコネクタの端子金具と電気的に接続する。
【0038】
第1平板部8は、平板状に形成されて、第1電気接触部7の筒部10の一つの外壁と一体に連なっている。かしめ片9は、第1平板部8の幅方向の両縁から立設している。かしめ片9は、第1平板部8に向かって曲げられて、該第1平板部8との間に後述の第2平板部14を挟む。かしめ片9は、第1平板部8との間に第2端子金具6の第2平板部14を加締める。
【0039】
また、第1平板部8には、貫通孔12が一つ設けられている。貫通孔12は、勿論、第1平板部8を貫通しており、平面形状が丸型に形成されている。貫通孔12の内周面(内面)には、図5に示すように、第1平板部8に重ねられる第2平板部14から離れるのにしたがって、該貫通孔12の内径が徐々に拡大する方向に傾斜したテーパ面12aが設けられている。テーパ面12aは、貫通孔12の内周面の全周に設けられている。
【0040】
第2端子金具6は、導電性の板金で構成されて、図3に示すように、第2電気接触部13と、第2平板部14と、突出部15とを一体に備えている。第2電気接触部13は、棒状に形成された一対の端子16を備えている。端子16は、互いに平行に配置されている。一対の端子16は、印刷配線板に設けられたスルーホール内に通されて、該印刷配線板の配線パターンと半田などを用いたろう付けにより固定される。一対の端子16即ち第2電気接触部13は、印刷配線板の配線パターンと電気的及び機械的に接続される。
【0041】
第2平板部14は、平板状に形成されて、その長手方向の一方の端から第2電気接触部13の一対の端子16から延在している。第2平板部14の両表面は、一対の端子16の長手方向と平行である。第2平板部14は、第1平板部8上に重ねられる。
【0042】
突出部15は、第2平板部14の第1平板部8上に重ねられる表面から突に突出している。突出部15は、外径が貫通孔12の小径側の内径と略等しい円柱状に形成された後、第2平板部14から離れた側の先端部が第2平板部14に向かって押し潰された拡大部18が形成される。拡大部18は、突出部15の外周方向に突出している。拡大部18は、テーパ面12aに密に接触して、第2平板部14との間に第1平板部8を挟み込む。
【0043】
また、前記突出部15の前述した拡大部18が形成される前の第2平板部14からの突出量D(図4に示す)は、前述した第1端子金具5の第1平板部8の厚みT1(図5に示す)より大きい。また、前述した突出量Dは、前述した拡大部18が形成されると、該拡大部18即ち突出部15が貫通孔12内に収まる値となっている。前述した突出部15は、前記第2平板部14の一部が円柱状に打ち出されて形成されている。
【0044】
第2端子金具6(を構成する板金)の第2平板部14の厚みT2(図4に示す)は、第1端子金具5(を構成する板金)の第1平板部8の厚みT1より厚い。即ち、第2端子金具6(を構成する板金)の第2平板部14の厚みT2と、第1端子金具5(を構成する板金)の第1平板部8の厚みT1とは、互いに異なっている。このように、厚みT2を厚みT1より厚くすることで、端子16などが通電される電流によって発熱することを防止している。即ち、厚みT2を厚みT1より厚くすることで、端子金具1の局部的な発熱を防止している。
【0045】
前述した端子金具1は、以下のように組み立てられる。まず、図5に示すように、第1端子金具5の第1平板部8に貫通孔12を形成し、かしめ片9を第1平板部8の幅方向の縁から立設させておく。また、図4に示すように、第2端子金具6の第2平板部14に円柱状の突出部15を形成しておく。
【0046】
そして、図6に示すように、貫通孔12内に突出部15を挿入し、第1平板部8と第2平板部14とを互いに重ねる。このとき、第2平板部14から離れるのにしたがって貫通孔12の内径が徐々に拡がる状態に、第1平板部8と第2平板部14とを位置付けておく。
【0047】
その後、図7に示すように、かしめ片9を第1平板部8に向かって曲げて、該かしめ片9と第1平板部8との間に第2平板部14を挟む(加締める)とともに、突出部15の第2平板部14から離れた側の(貫通孔12内より突出した)先端部を第2平板部14に向かって押し潰して、拡大部18を形成する。すると、拡大部18は、第2平板部14との間に第1平板部8を挟み込む。
【0048】
こうして、第1端子金具5と第2端子金具6とが互いに固定されて、前述した構成の端子金具1が組み立てられる。このように組み立てられた端子金具1は、コネクタハウジング3の端子収容室4内に収容されて、第2電気接触部13の端子16が印刷配線板の配線パターンと接続し、第1電気接触部7が相手側のコネクタの端子金具と接続する。
【0049】
本実施形態によれば、第1平板部8に貫通孔12を設け、第2平板部14に突出部15を設けるという簡便な構成によって、第1平板部8と第2平板部14とを固定できる即ち第1端子金具5と第2端子金具6とを固定できる。このため、第1端子金具5と第2端子金具6を別体にして、これらの厚みT1,T2を異ならせて、発熱を防止できるようにしても、端子金具1の低コスト化を図ることができる。
【0050】
貫通孔12の内周面にテーパ面12aが設けられているので、突出部15の先端部が潰されて形成された拡大部18が貫通孔12内で外周方向に拡がる。このため、拡大部18と第2平板部14との間に第1平板部8を確実に挟むことができる。したがって、第1端子金具5と第2端子金具6とを確実に強固に固定でき、これらの端子金具5,6同士が不意に分離することを防止できる。
【0051】
拡大部18がテーパ面12aに密に重なるので、該拡大部18が第2平板部14との間に確実に第1平板部8を挟むことができる。したがって、第1端子金具5と第2端子金具6とをより確実に強固に固定でき、これらの端子金具5,6同士が不意に分離することを確実に防止できる。
【0052】
また、拡大部18が貫通孔12内に収められているので、該拡大部18が他の物品と接触することを防止できる。したがって、端子金具1が、電気的に短絡することを防止できる。
【0053】
第1平板部8との間に第2平板部14を挟むかしめ片9を備えているので、第1平板部8と第2平板部14即ち第1端子金具5と第2端子金具6とを確実に固定できる。
【0054】
かしめ片9を第1平板部8の幅方向の両縁に設けているので、第1平板部8と第2平板部14即ち第1端子金具5と第2端子金具6とをより確実に固定できる。
【0055】
次に、本発明の第2の実施形態にかかる端子金具を、図8ないし図10に基づいて説明する。なお、前述した第1の実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
本実施形態の端子金具1は、図8ないし図10に示すように、貫通孔12と突出部15とをそれぞれ複数設けている。図示例では、貫通孔12と突出部15とをそれぞれ二つ設けている。貫通孔12は、第1端子金具5の第1平板部8の長手方向に沿って、互いに間隔をあけて並べられている。突出部15は、第2端子金具6の第2平板部14の長手方向に沿って、互いに間隔をあけて並べられている。なお、これらの貫通孔12及び突出部15の構成は、前述した第1の実施形態と等しい。
【0057】
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態の効果に加え、貫通孔12と突出部15とが複数設けられているので、第1端子金具5と第2端子金具6とを固定すると、これらの端子金具5,6同士ががたつくことを確実に防止できるとともに、これらの端子金具5,6同士が不意に分離することを確実に防止できる。
【0058】
なお、前述した第1及び第2の実施形態では、貫通孔12の小径側の内径を拡大部18が形成される前の突出部15の外径と等しくしている。しかしながら、本発明では、貫通孔12の小径側の内径を拡大部18が形成される前の突出部15の外径より大きくしても良い。
【0059】
例えば、次に、図11ないし図14を参照して説明する本発明の第3の実施形態にかかる端子金具1では、貫通孔12の内径を、拡大部18の形成前の突出部15の外径よりも大きくしている。なお、この第3の実施形態において、前述した第1及び第2の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
本実施形態では、図11ないし図14に示すように、貫通孔12の内周面(内面)に、前述したテーパ面12aに加えて、平行面12bを設けている。平行面12bは、第2平板部14の両表面に対して直交する方向に沿って延在している。平行面12bは、テーパ面12aに連なり(連続して)、該テーパ面12aよりも第1平板部8に重ねられる第2平板部14寄りに配置されている。さらに、平行面12bは、貫通孔12内に侵入した拡大部18の形成前の突出部15の外周面と間隔をあけて相対する。
【0061】
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態の効果にくわえて、貫通孔12の内周面にテーパ面12aと連なりかつ拡大部18の形成前の突出部15の外周面と間隔をあける平行面12bが設けられて、貫通孔12の内径が突出部15の外径よりも大きく形成されているので、貫通孔12内に突出部15を容易に挿入できる。したがって、貫通孔12内に突出部15を容易に挿入できるので、端子金具5,6同士を容易に固定でき、端子金具1を容易に組み立てることができる。
【0062】
また、本実施形態においても、前述した第2の実施形態と同様に、貫通孔12と突出部15とを、それぞれ、複数設けても良い。この場合、貫通孔12と突出部15とを、それぞれ、平板部8,14の長手方向に沿って並べるのが望ましい。
【0063】
次に、本発明の第4の実施形態にかかる端子金具を、図15ないし図21に基づいて説明する。なお、前述した第1ないし第3の実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0064】
本実施形態では、前述した第3の実施形態と同様に、貫通孔12の内周面に前述したテーパ面12aと平行面12bとを設けて、図16及び図17などに示すように、貫通孔12の内径を拡大部18の形成前の突出部15の外径よりも大きく形成している。本実施形態では、突出部15の第2平板部14からの突出量D(図16に示す)と、第1平板部8の厚みT1(図17に示す)とが等しく形成されている。
【0065】
また、本実施形態では、図18に示すように、貫通孔12内に拡大部18の形成前の突出部15を挿入した後、図19に示すように、突出部15の先端部の端面15aの中央に棒状の押圧治具19を接触させる。そして、図20に示すように、押圧治具19を第2平板部14に向かって押圧して、該押圧治具19によって突出部15の先端部の端面15aの中央を第2平板部14に向かって押し潰されて、前述した拡大部18ととともに端面15aから凹の凹み20を形成するとともに、かしめ片9で第2平板部14を加締める。こうして、図21に示すように、端子金具5,6同士を固定して、端子金具1を組み立てる。
【0066】
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態の効果にくわえて、拡大部18の形成前の突出部15の先端部の端面15aの中央を押圧して、拡大部18とともに先端面15aに凹み20を形成するので、拡大部18とテーパ面12aとがより確実に密着する。このため、互いに固定された端子金具5,6間の電気的な抵抗を抑制できる。また、拡大部18と第2平板部14との間に第1平板部8をより強固に挟み込むことができ、端子金具5,6同士をより強固に固定することができる。
【0067】
また、本実施形態においても、前述した第2及び第3の実施形態と同様に、貫通孔12と突出部15とを、それぞれ、複数設けても良い。この場合、貫通孔12と突出部15とを、それぞれ、平板部8,14の長手方向に沿って並べるのが望ましい。
【0068】
本実施形態では、突出量Dと厚みT1とを等しくしている。しかしながら、本発明では、突出量Dを厚みT1よりも大きくしても良く、突出量Dを厚みT1よりも若干大きくしても良く、若干小さくしても良い。また、本実施形態においても、貫通孔12の内径と突出部15の外径とを等しくしてもよい。
【0069】
本発明では、突出量Dと厚みT1とを等しくすることと、突出量Dと厚みT1との差がこれらの突出量D及び厚みT1よりも十分に小さくすることを、突出量Dと厚みT1とを略等しくするという。このように、本発明では、突出量Dと厚みT1とを略等しくしても良い。
【0070】
本発明では、貫通孔12の内周面にテーパ面12aを形成しなくても良い。さらに、かしめ片9を一つのみ設けても良い。要するに、本発明では、かしめ片9を少なくとも一つ設けて、該かしめ片9を第1平板部8の幅方向の縁から立設させれば良い(設ければ良い)。
【0071】
さらに、テーパ面12aを貫通孔12の内周面の全周に設けずに、内周面の一部に設けても良い。また、貫通孔12と突出部15とを三つ以上設けても良い。さらに、貫通孔12を厚みの薄い端子金具に設け、突出部15を厚みの厚い端子金具に設けるのが望ましい。
【0072】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる端子金具の斜視図である。
【図2】図1中のIII−III線の断面を示す斜視図である。
【図3】図2に示された端子金具を分解して示す斜視図である。
【図4】図3中のV−V線に沿う断面図である。
【図5】図3中のVI−VI線に沿う断面図である。
【図6】図5に示された第1端子金具の貫通孔内に第2端子金具の突出部を挿入した状態を示す断面図である。
【図7】図6に示された第1端子金具のかしめ片を曲げ第2端子金具の突出部の先端部を潰した状態を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態にかかる端子金具を示す斜視図である。
【図9】図8に示された端子金具を分解して示す斜視図である。
【図10】図8中のXI−XI線に沿う断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態にかかる端子金具の断面を示す斜視図である。
【図12】図11に示された端子金具の第1端子金具の断面図である。
【図13】図11に示された端子金具の拡大部の形成前の突出部を貫通孔内に挿入した状態を示す断面図である。
【図14】図12に示されたかしめ片を曲げ突出部の先端部を潰した状態を示す断面図である。
【図15】本発明の第4の実施形態にかかる端子金具の断面を示す斜視図である。
【図16】図15に示された端子金具の第2端子金具の断面図である。
【図17】図15に示された端子金具の第1端子金具の断面図である。
【図18】図15に示された端子金具の拡大部の形成前の突出部を貫通孔内に挿入した状態を示す断面図である。
【図19】図15に示された端子金具の突出部の先端部の端面に押圧治具を接触させた状態を示す断面図である。
【図20】図19に示された押圧治具でかしめ片を曲げ突出部の先端部を潰した状態を示す断面図である。
【図21】図20に示された端子金具の断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 端子金具
5 第1端子金具
6 第2端子金具
8 第1平板部
9 かしめ片
12 貫通孔
12a テーパ面
12b 平行面
14 第2平板部
15 突出部
15a 端面
18 拡大部
20 凹み
D 突出量
T1 第1平板部の厚み
T2 第2平板部の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1平板部を有した第1端子金具と、第2の平板部を有した第2端子金具との固定方法であって、
前記第1平板部に設けられた貫通孔内に、前記第2平板部より突出した突出部を挿入した後、該突出部の先端部を前記第2平板部に向かって押し潰して拡大部を形成し、該拡大部と前記第2平板部との間に前記第1平板部を挟み込むことを特徴とする端子金具同士の固定方法。
【請求項2】
第1平板部を有した第1端子金具と、第2の平板部を有した第2端子金具とを備え、前記第1平板部と前記第2平板部とが互いに重ねられた状態でこれらの端子金具同士が固定された端子金具において、
前記第1平板部に貫通孔が設けられ、前記第2平板部に該第2平板部より突出した突出部が設けられているとともに、
前記貫通孔内に挿入された突出部の先端部に、前記第2平板部に向かって押し潰されて形成された拡大部が形成されて、
前記拡大部と前記第2平板部との間に前記第1平板部を挟み込んだことを特徴とする端子金具。
【請求項3】
前記貫通孔と、前記突出部とは、それぞれ、複数設けられていることを特徴とする請求項2記載の端子金具。
【請求項4】
前記貫通孔の内面には、前記第1平板部に重ねられた前記第2平板部から離れるのにしたがって前記貫通孔が徐々に拡大する方向に傾斜したテーパ面が設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の端子金具。
【請求項5】
前記貫通孔の内面には、前記テーパ面に連なりかつ該テーパ面よりも第2平板部寄りに配置されているとともに、前記拡大部の形成前の前記突出部の外周面と間隔をあけて相対する平行面が更に設けられていることを特徴とする請求項4記載の端子金具。
【請求項6】
前記拡大部が前記テーパ面に密に重なって、前記貫通孔内に収められていることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の端子金具。
【請求項7】
前記拡大部の形成前の前記突出部の前記第2平板部からの突出量が前記第1平板部の厚みと略等しいとともに、
前記突出部の前記先端部の端面の中央が前記第2平板部に向かって押し潰されて前記拡大部とともに前記端面から凹の凹みが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載の端子金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−95661(P2007−95661A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155845(P2006−155845)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】