説明

端子金具

【課題】過電流保護機能を確保しつつ、コネクタ全体の小型化およびコストダウンを図る。
【解決手段】本発明は、過電流保護機能を有した端子金具11であって、溶断部21が設けられた端子本体20と、芯線31が絶縁被覆32によって覆われてなる電線30と、溶断部21の先端部21Bを芯線31の内部に挿入した状態で端子本体20と電線30とを接続させるかしめリング40と、溶断部21を保護する熱収縮チューブ50とを備えた構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流保護機能を有した端子金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過電流保護機能を有したコネクタとして、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。このコネクタは、一対のコネクタを接続する中継コネクタを有しており、この中継コネクタの内部には、ヒューズパターンが形成されたプリント基板が配設されている。ヒューズパターンに許容電流を超える電流が流れると、ヒューズパターンが発熱して溶断することによって電源回路が遮断されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−351235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のコネクタでは、ヒューズパターンを内蔵した中継コネクタを形成する必要があり、中継コネクタによってコネクタ全体が大型化するとともに中継コネクタのコストが余分に加算されてしまう。また、例えば中継コネクタを廃止して、中継コネクタの両側に配された一対のコネクタ同士を直接嵌合させるようにすると、コネクタ全体としては小型化できるものの、過電流保護機能を確保する手段が別途必要となる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、過電流保護機能を確保しつつ、コネクタ全体の小型化およびコストダウンを図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、過電流保護機能を有した端子金具であって、溶断部が設けられた端子本体と、芯線が絶縁被覆によって覆われてなる電線と、溶断部の先端部を芯線の内部に挿入した状態で端子本体と電線とを接続させる接続部と、溶断部を保護する保護部とを備えた構成としたところに特徴を有する。
【0007】
このような構成では、溶断部のうち芯線の内部に挿入された部分では抵抗値が小さくなるため、電流によって発熱し溶断することはない。一方、溶断部のうち芯線の外部に露出した部分では内部に挿入された部分よりも抵抗値が大きくなるため、電流によって発熱させ溶断させることができる。すなわち、溶断部に許容電流を超える電流が流れると、溶断部のうち芯線の外部に露出した部分が発熱して溶断することになる。この溶断部は、端子本体の一部として構成されており、過電流保護機能を内蔵したコネクタを構成する際に、端子金具とは別に溶断部を形成しなくてもよい。このように、過電流保護機能を端子金具に備えさせたことで、コネクタ全体を小型化できるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成としてもよい。
溶断部は、先端に向かうほど断面積が小さくなる構成としてもよい。
このような構成によると、溶断部の先端部を芯線の内部に挿入する長さを変えることによって抵抗値を調整することができ、被覆電線の許容電流に応じた遮断容量を適宜設定することができる。
【0009】
芯線は、絶縁被覆の端末から外部に突出しており、この突出部分に溶断部の先端部が接続されている構成としてもよい。
このような構成によると、溶断部が絶縁被覆の端末から外部に露出して配されるため、芯線と溶断部を接続させやすい。
【0010】
接続部は、芯線をかしめ付けて同芯線を溶断部の先端部に圧着させるかしめ部材である構成としてもよい。
このような構成によると、かしめ部材によって芯線をかしめ付けることにより、芯線を溶断部の先端部に圧着して接続することができる。
【0011】
保護部は、熱収縮チューブである構成としてもよい。
このような構成によると、熱収縮チューブによって溶断部を覆うことができる。
【0012】
保護部は、樹脂モールドである構成としてもよい。
このような構成によると、樹脂モールドによって溶断部を覆うことができる。
【0013】
保護部は、絶縁被覆の端部に圧着されるインシュレーションバレルを備える構成としてもよい。
このような構成によると、インシュレーションバレルによって絶縁被覆の端部を固定できるため、芯線に接続された溶断部を保護することができる。
【0014】
インシュレーションバレルは、接続部を兼ねる構成としてもよい。
このような構成によると、溶断部の先端部を芯線の内部に差し込んでおき、この差し込まれた部分の外周に配された絶縁被覆をインシュレーションバレルによって圧着することにより、芯線を溶断部の先端部に接続することができる。
【0015】
保護部は、熱収縮チューブをさらに備える構成としてもよい。
このような構成によると、熱収縮チューブによって溶断部およびインシュレーションバレルを覆うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、過電流保護機能を確保しつつ、コネクタ全体の小型化およびコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1における端子金具の内部構造を上方から見た断面図
【図2】同端子金具の内部構造を側方から見た断面図
【図3】実施形態2における端子金具の内部構造を上方から見た断面図
【図4】同端子金具の内部構造を側方から見た断面図
【図5】同端子金具の展開状態を上方から見た平面図
【図6】実施形態3における端子金具の内部構造を上方から見た断面図
【図7】同端子金具の内部構造を側方から見た断面図
【図8】実施形態4における端子金具の内部構造を上方から見た断面図
【図9】同端子金具の内部構造を側方から見た断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図2の図面を参照しながら説明する。本実施形態の端子金具11は、過電流保護機能付きジョイントコネクタに収容されており、過電流保護機能を有した端子金具である。この端子金具11は、図1に示すように、良好な導電性を有する金属平板からなる端子本体20と、芯線31が絶縁被覆32によって覆われてなる電線30と、円筒状をなす金属製のかしめリング40と、チューブ状をなす熱収縮チューブ50とを備えて構成されている。
【0019】
電線30の端部には、絶縁被覆32が皮剥きされることで芯線31が露出している。この芯線31は撚り線とされており、絶縁被覆32の端末から外部に突出している。一方、端子本体20の端部には、先端に向かうほど断面積が小さくなるようにしてくさび状をなす溶断部21が形成されている。溶断部21の先端部21Bは、芯線31の内部に挿入されており、この挿入された部分を全周に亘ってかしめ付けるようにしてかしめリング40が芯線31の外周に固定されている。
【0020】
溶断部21の先端部21Bは、芯線31の内部に埋設されてかしめリング40によって圧着されており、この圧着部分において芯線31と溶断部21の先端部21Bとが導通可能に接続されている。溶断部21のうち芯線31に接続される直前部分、すなわち断面積が最も小さい部分は、エレメント22とされている。したがって、エレメント22に許容電流を超える電流が流れると、エレメント22が発熱して溶断することによって電源回路が遮断されるようになっている。なお、溶断部21の先端部21Bは、エレメント22よりも断面積が小さいものの、この先端部21Bは芯線31と接続されているため、抵抗値が低くなっており、発熱のおそれはなく、溶断することはない。
【0021】
溶断部21はくさび状とされているため、芯線31の内部に挿入する長さを変えることによってエレメント22の断面積を調整することができる。したがって、芯線31の内部に溶断部21の先端部21Bを浅く挿入した場合、エレメント22の断面積が小さくなり、エレメント22の抵抗値が大きくなるため、遮断容量が小さくなる。逆に、芯線31の内部に溶断部21の先端部21Bを深く挿入した場合、エレメント22の断面積が大きくなり、エレメント22の抵抗値が小さくなるため、遮断容量が大きくなる。このように、溶断部21の先端部21Bの挿入長さを変更するだけでエレメント22の遮断容量を変更することができるため、異なる遮断容量毎に複数のエレメントを用意しなくてもよい。
【0022】
本実施形態は以上のような構成であって、続いて端子金具11の製造方法について簡単に説明する。まず、被覆電線30の端末において絶縁被覆32を皮剥きすることで芯線31を露出させる。この露出された芯線31の端末に針状のピンを挿入して空間を形成しておく。そして、溶断部21の先端部21Bを前記空間に挿入する。引き続き、芯線31をかしめリング40によって全周に亘ってかしめ付けることにより、溶断部21の先端部21Bと芯線31とを導通可能に接続する。この後、端子本体20のうち溶断部21の基端部21Aから絶縁被覆32の端部32Aに亘って熱収縮チューブ50を外嵌し、この熱収縮チューブ50を加熱することによって収縮させ溶断部21を覆った状態とし、溶断部21を保護する。
【0023】
以上のように本実施形態では、溶断部21を端子本体20の一部として構成しているため、過電流保護機能を確保するにあたり、ヒューズなどを別途用意する必要がなくなり、コネクタ全体のコストを下げることができる。また、ヒューズなどが不要になるため、コネクタ全体を小型化することができる。また、溶断部21は、先端に向かうほど断面積が小さくなるように形成されているので、溶断部21の先端部21Bを芯線31の内部に挿入する長さを調整することによってエレメント22の抵抗値を変更することができ、遮断容量を適宜変更することができる。
【0024】
また、芯線31を絶縁被覆32の端部32Aから外部に突出させているため、溶断部21の先端部21Bを芯線31の内部に挿入しやすく、かしめリング40による圧着作業がしやすい。さらに、溶断部21を熱収縮チューブ50によって覆うようにしているため、溶断部21にかかる応力を緩和することができ、溶断部21を保護することができる。
【0025】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図3ないし図5の図面を参照しながら説明する。本実施形態における端子金具12は、図3に示すように、良好な導電性を有する金属平板からなる端子本体20と、芯線31が絶縁被覆32によって覆われてなる電線30と、端子本体20と一体に形成されたインシュレーションバレル44とを備えて構成されている。なお、本実施形態において実施形態1と重複する構成、作用、および効果については、その説明を省略するものとし、実施形態1と同じ構成については実施形態1と同一の符号を用いるものとする。
【0026】
電線30の芯線31は、絶縁被覆32の端部32Aから外部に突出しない態様で配されている。すなわち、芯線31の端末は、絶縁被覆32の端部32Aと面一で揃う形態で外部に露出している。端子本体20の端部には、先端に向かうほど断面積が小さくなるようにしてくさび状をなす溶断部21が形成されている。溶断部21の先端部21Bは、芯線31の内部に挿入されている。
【0027】
端子本体20の幅方向両側縁には、一対の連結片41,41が形成されている。これらの連結片41,41は、図4に示すように、Z字状に折れ曲がって(つづら折り状に)下方に向かいつつ、その下端部から前方に延出されている。各連結片41,41の先端は、底壁42によって互いに連結されており、この底壁42の幅方向両側縁から一対のバレル片43,43が立ち上がり形成されている。底壁42と各バレル片43,43によってインシュレーションバレル44が構成されている。
【0028】
溶断部21の先端部21Bが芯線31の内部に挿入された部分は、底壁42および各バレル片43,43によって全周に亘ってかしめ付けられており、これによって電線30がインシュレーションバレル44に固定されるとともに、溶断部21が芯線31に導通可能に接続されている。
【0029】
図5は、展開状態における端子金具12を示した平面図である。連結片41は、端子本体20から幅方向外側に張り出した後、前方に延びる形態をなす第1連結片41Aと、この第1連結片41Aの前端から前方に延びる形態をなす第2連結片41Bと、この第2連結片41Bの前端部から幅方向外側に張り出した後、前方に延びる形態をなす第3連結片41Cとからなる。第1連結片41Aの前端は、溶断部21の基端部21Aと幅方向に揃う位置に配されている。また、第1連結片41Aは、第2連結片41Bの約2倍の長さ寸法を有している。
【0030】
本実施形態によると、インシュレーションバレル44によって絶縁被覆32の端部32Aをかしめ付けることにより、溶断部21の先端部21Bと芯線31が導通可能に接続されるとともに、端子本体20と電線30が各連結片41,41によって互いに連結されているため、溶断部21にかかる応力を緩和することができ、溶断部21を保護することができる。
【0031】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図6ないし図7の図面を参照しながら説明する。本実施形態の端子金具13は、図6に示すように、良好な導電性を有する金属平板からなる端子本体20と、芯線31が絶縁被覆32によって覆われてなる電線30と、端子本体20と一体に形成されたインシュレーションバレル44と、チューブ状をなす熱収縮チューブ50とを備えて構成されている。なお、本実施形態において実施形態1と重複する構成、作用、および効果については、その説明を省略するものとし、実施形態1と同じ構成については実施形態1と同一の符号を用いるものとする。
【0032】
本実施形態の端子金具13は、実施形態2の端子金具12に熱収縮チューブ50を被せることでこれを保護したものである。熱収縮チューブ50は、連結片41を囲むようにして装着されている。すなわち、熱収縮チューブ50の後端(図示左端)は、第1連結片41Aのやや後方に位置し、熱収縮チューブ50の前端(図示右端)は、インシュレーションバレル44のやや前方に位置している。このような端子金具13は、実施形態2の端子金具12に熱収縮チューブ50を被せた後、この熱収縮チューブ50を加熱して熱収縮させることによって形成されている。
【0033】
<実施形態4>
次に、本発明の実施形態4を図8ないし図9の図面を参照しながら説明する。本実施形態の端子金具14は、図8に示すように、良好な導電性を有する金属平板からなる端子本体20と、芯線31が絶縁被覆32によって覆われてなる電線30と、円筒状をなす金属製のかしめリング40と、樹脂モールド60とを備えて構成されている。なお、本実施形態において実施形態1と重複する構成、作用、および効果については、その説明を省略するものとし、実施形態1と同じ構成については実施形態1と同一の符号を用いるものとする。
【0034】
樹脂モールド60は、端子本体20における溶断部21の後方(図示左方)から電線30の後端部(図示左端部)に亘って形成されており、溶断部21およびかしめリング40が樹脂モールド60によって完全に覆われる形態とされている。このような構成によると、熱収縮チューブ50よりも溶断部21にかかる応力を規制することができる。したがって、溶断部21をより確実に保護することができる。
【0035】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では平板状の端子本体および溶断部を有する端子金具を例示していたものの、本発明は、丸棒状の端子本体および溶断部を有する端子金具に適用してもよい。
【0036】
(2)上記実施形態では溶断部21の先端部21Bを芯線31の内部に挿入しているものの、本発明によると、溶断部の先端部21Bを芯線31の外周に接続してもよい。
【0037】
(3)上記実施形態では先端に向かうほど断面積が小さくなる溶断部21を例示しているものの、本発明によると、先端に向かっても断面積が同じままの溶断部としてもよい。
【0038】
(4)上記実施形態ではかしめリング40やインシュレーションバレル44によって溶断部21の先端部21Bと芯線31とを導通可能に接続しているものの、本発明によると、溶断部にワイヤバレルを設け、このワイヤバレルを芯線31に圧着することによって溶断部と芯線31とを導通可能に接続してもよい。
【符号の説明】
【0039】
11,12,13,14…端子金具
20…端子本体
21B…先端部
30…電線
31…芯線
32…絶縁被覆
32A…端部
40…かしめリング(かしめ部材)
44…インシュレーションバレル(接続部、保護部)
50…熱収縮チューブ(保護部)
60…樹脂モールド(保護部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過電流保護機能を有した端子金具であって、
溶断部が設けられた端子本体と、
芯線が絶縁被覆によって覆われてなる電線と、
前記溶断部の先端部を前記芯線の内部に挿入した状態で前記端子本体と前記電線とを接続させる接続部と、
前記溶断部を保護する保護部とを備えた端子金具。
【請求項2】
前記溶断部は、先端に向かうほど断面積が小さくなる請求項1に記載の端子金具。
【請求項3】
前記芯線は、前記絶縁被覆の端末から外部に突出しており、この突出部分に前記溶断部の先端部が接続されている請求項1または請求項2に記載の端子金具。
【請求項4】
前記接続部は、前記芯線をかしめ付けて同芯線を前記溶断部の先端部に圧着させるかしめ部材である請求項3に記載の端子金具。
【請求項5】
前記保護部は、熱収縮チューブである請求項4に記載の端子金具。
【請求項6】
前記保護部は、樹脂モールドである請求項4に記載の端子金具。
【請求項7】
前記保護部は、前記絶縁被覆の端部に圧着されるインシュレーションバレルを備える請求項1または請求項2に記載の端子金具。
【請求項8】
前記インシュレーションバレルは、前記接続部を兼ねる請求項7に記載の端子金具。
【請求項9】
前記保護部は、熱収縮チューブをさらに備える請求項7または請求項8に記載の端子金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−101781(P2013−101781A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243865(P2011−243865)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】