説明

端子

【課題】短絡や接続不良などの不具合を生じることなく基板へ半田付けすることができる端子を得る。
【解決手段】リード部13がキャリアの連結部42に連結された状態で錫メッキが施されており、リード部13と連結部42との間には、厚さが薄くされ、導体パターンと接続するための半田付け面側からカッター51によって切断するノッチ部44が形成されている。ノッチ部44には、そのリード部13側に、カッター51を連結部42側へ案内し、カッター51による切断後、ノッチ部44の一部からなるフィレット形成片17を形成するためのガイド部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタのハウジングに収容されて配線基板上に半田付けされる端子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、配線基板とケーブルとを電気的に接続するために、配線基板に基板用コネクタを実装し、この基板用コネクタに、ケーブル側のコネクタを接続している。
この基板用コネクタは、ハウジング内に金属製の複数の端子を有しており、これらの端子は、コネクタが実装される配線基板の導体パターンに半田付けして接続されている。
図7に示すように、この種の端子1は、ハウジング内へ挿し込まれてコネクタに収容されるタブ2と、配線基板の導体パターンに半田付けされるリード部3とを有する。この端子1は、金属板をプレス加工することにより、キャリア4から延びる連結部5によって複数個連結された連鎖状に形成され、連結部5から切断分離されて使用される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−158325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この端子1は、ハウジング内へ挿入されるタブ2を挟むように両側に連結部5が連結されているため、連結部5で切断分離すると端子1の両側にバリが形成されてしまう。
端子1の両側にバリが形成されると、コネクタに収容した際に、隣接する端子1同士のピッチ間の沿面距離が十分に確保されず、短絡する虞がある。また、端子1をハウジングへ収容する際、バリによってハウジング収容部の内壁を削って削れカスを発生させ、この削れカスによって端子1を半田付けする際に接続不良を招くことがある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、短絡や接続不良などの不具合を生じることなくコネクタのハウジングへ収容して基板へ良好に半田付けすることが可能な端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 相手方コネクタの端子と接続される接続部と、回路基板の導体パターンに半田付けされるリード部とを有し、導電性金属材料をプレス加工することにより、キャリアから延びる連結部に連結された状態で成型され、前記キャリアから切断分離されて用いられる端子であって、
前記リード部に錫メッキが施され、
前記リード部と前記連結部との間には、厚さが薄くされてカッターによって前記導体パターンとの半田付け面側から切断されるノッチ部を有し、
前記ノッチ部には、前記リード部側に、前記カッターを前記連結部側へ案内し、前記カッターによる前記ノッチ部の切断後に、前記ノッチ部の一部からなるフィレット形成片を形成するガイド部が設けられていることを特徴とする端子。
【0007】
この端子によれば、カッターによってノッチ部を切断する際に、カッターがガイド部によって連結部側へ案内され、カッターによるノッチ部の切断後に、ノッチ部の一部からなるフィレット形成片がリード部の端部に形成される。このフィレット形成片は、カッターによって変形されてリード部の導体パターンへの半田付け側と反対側へ反り返った形状となる。
したがって、この端子によれば、フィレット形成片を形成したリード部の端部で、半田が固着する錫メッキ部分の面積を大きく確保することができ、半田付けした際に、半田部に大きな半田フィレットが形成されることとなる。よって、リード部の後端部にキャリアの連結部を連結させ、この連結箇所で切断分離しても、その切断箇所に対し煩雑な後メッキ処理を行うことなく、回路基板の導体パターンに対して、リード部を極めて良好に半田付けして固定することができる。
また、リード部の端部がキャリアの連結部に連結されているので、中間部の両側をキャリアの連結部に連結した従来構造と比較して、両側でのバリの発生をなくすことができる。これにより、隣接する端子同士の沿面距離が十分に確保されずに短絡するような不具合を確実に防止することができる。また、コネクタに収容する際に、バリによってコネクタを削り、削れカスによって接続不良を招くこともない。
なお、接続部の先端をキャリアの連結部と連結させた場合、端子の両側でのバリは発生しないが、接続部の先端にバリが生じ、相手方コネクタの端子との間で接続の障害となる虞がある。しかし、本発明では、接続部でのバリの発生を防止することができ、よって、相手方コネクタの端子との接続も良好かつ円滑に行うことができる。
【0008】
(2) (1)の端子であって、前記ガイド部は、円弧状に膨出するガイド面を有することを特徴とする端子。
【0009】
この端子によれば、ガイド部の円弧状に膨出するガイド面によって、カッターを無理なく円滑に連結部側へ案内し、リード部側にフィレット形成片を形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る端子によれば、短絡や接続不良などの不具合を生じることなくコネクタのハウジングへ収容して基板へ良好に半田付けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る端子が用いられたコネクタの後方側から視た斜視図である。
【図2】本発明に係る端子の斜視図である。
【図3】回路基板に実装された端子を示す図であって、(a)はコネクタの後端における断面図、(b)はリード部の後端における断面図である。
【図4】キャリアに連結された状態の端子の斜視図である。
【図5】端子とキャリアとの連結箇所の側面図である。
【図6】キャリアからの切断分離の状況を説明する図であって、(a)から(d)はそれぞれ端子とキャリアとの連結箇所の側面図である。
【図7】端子の従来例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態に係る端子が用いられたコネクタの後方側から視た斜視図、図2は本発明に係る端子の斜視図、図3は回路基板に実装された端子を示す図であって、(a)はコネクタの後端における断面図、(b)はリード部の後端における断面図、図4はキャリアに連結された状態の端子の斜視図、図5は端子とキャリアとの連結箇所の側面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る端子11は、コネクタ21に収容される。コネクタ21は、合成樹脂製のハウジング22を有するもので、ハウジング22は、その先端側に、相手方コネクタ(図示略)が嵌合可能な嵌合部(図示略)を有している。ハウジング22には、その内部に、幅方向へ配列された複数のキャビティ23が形成されており、これらのキャビティ23は、ハウジング22の後端部で開口している。そして、ハウジング22に形成されたキャビティ23に、ハウジング22の後端側から端子11が挿入される。
【0014】
図2に示すように、端子11は、導電性金属材料から形成されたもので、先端側が相手方コネクタの雌端子と接続するタブ(接続部)12とされ、後端側がリード部13とされている。また、端子11は、タブ12とリード部13との間に、タブ12の両側部から突出した係止部14を形成しており、リード部13が、一方側の係止部14から後方側へ延在している。リード部13は、プレス加工等によって折り曲げられ、下方側へ屈曲されて下方へ延在する連結片部15と、この連結片部15の下端から後方側へ屈曲されて後方へ延在する固定片部16とを有している。
【0015】
図3(a)に示すように、端子11は、ハウジング22のキャビティ23に対して、タブ12側を向けて圧入されると、係止部14が、キャビティ23内における後端側に形成された係止溝24に係合する。これにより、端子11は、キャビティ23内において、圧入方向への更なる移動が規制され、所定の位置に固定される。
【0016】
図3(b)に示すように、端子11が固定されたコネクタ21は、プリント基板である回路基板31に実装される。そして、このコネクタ21の端子11のリード部13は、その固定片部16が、回路基板31の表面に形成された導体パターン32に半田付けされる。これにより、端子11は、回路基板31の導体パターン32と導通状態に接続される。
【0017】
ここで、端子11は、少なくともリード部13の固定片部16の外面に、純錫(Sn)メッキが予め施され、固定片部16の外面に、錫メッキ層11aが形成されている。この結果、固定片部16では、錫メッキ層11aに対して半田33が良好に馴染み、固定片部16が導体パターン32に確実に導通接続するようになされている。また、端子11のリード部13には、その固定片部16の後端部に、上方へ向かって反り返って延びるフィレット形成片17が形成されている。そして、このフィレット形成片17を有する固定片部16の後端部では、半田33が固着する錫メッキ層11aが大きな面積とされ、半田33に関しては、大きな半田フィレット33aが形成される。なお、フィレット形成片17の端面は、錫メッキを施した後の固定片部16の切断面であり、この切断面には、錫メッキ層11aが形成されない。
【0018】
上記構成の端子11は、図4に示すように、金属板をプレス加工することにより、キャリア41から延びる連結部42によって複数個連結された連鎖状態に成型され、この状態で、少なくともリード部13の固定片部16となる部分及びその周囲に錫メッキが施される。また、端子11は、キャリア41に連結された状態で、リード部13が直線状態とされており、このリード部13の後端部と連結部42とが互いに連結されている。
【0019】
図5に示すように、端子11のリード部13とキャリア41の連結部42との連結箇所には、導体パターン32への半田付け面側である下方側に形成した凹部43により、厚さが薄くされたノッチ部44が設けられている。これにより、リード部13と連結部42とは、ノッチ部44において、上方側だけで連結されている。また、このノッチ部44を形成する凹部43のリード部13側における隅部には、円弧状に膨出するガイド部45が形成されており、このガイド部45の表面は、円弧状のガイド面45aとされている。
【0020】
このように、キャリア41に連結された複数の端子11は、ノッチ部44において連結部42から切断分離された後、リード部13を所定形状に折り曲げて連結片部15と固定片部16を形成して、キャビティ23へ圧入される。なお、端子11は、キャリア41に連結された状態でリード部13を折曲加工して連結片部15と固定片部16を形成しても良い。
【0021】
次に、ノッチ部44を切断し、キャリア41に連結された端子11の切断分離について説明する。
図6はキャリアからの切断分離の状況を説明する図であって、(a)から(d)はそれぞれ端子とキャリアとの連結箇所の側面図である。
【0022】
ノッチ部44に対して、図6(a)の矢印Aで示すように、導体パターン32への半田付け面側である下方からカッター51の刃先51aを近接させる。このカッター51は、端子11のリード部13側に、先端へ向かって次第に刃先51a側へ傾斜するテーパ面51bを有している。
【0023】
そして、このカッター51の刃先51aをノッチ部44へ近接させると、図6(b)に示すように、このカッター51は、刃先51aがノッチ部44に到達する前に、テーパ面51bが円弧状に膨出するガイド部45のガイド面45aに接触することになる。
カッター51がテーパ面51bをガイド面45aに接触させて移動すると、図6(b)の矢印Bで示すように、ガイド面45aに沿って円弧状に案内される。
【0024】
これにより、カッター51は、その刃先51aがリード部13から離れる方向である連結部42側へ変位された後、図6(c)に示すように、ノッチ部44に到達した刃先51aが、ノッチ部44における連結部42側に接触する。この結果、カッター51は、刃先51aとのリード部13側の接触箇所に、寸法Lのノッチ部44を配置させた状態に位置決めされる。
【0025】
この状態で、カッター51がさらに移動すると、カッター51の刃先51aがノッチ部44に食い込み、図6(d)に示すように、ノッチ部44を切断する。カッター51が上方へ押し上げられてノッチ部44の切断箇所へ入り込むと、ノッチ部44は、その切断箇所を境に、リード部13側及び連結部42側が上方へ反り返るように変形して、リード部13の後端部に、上方へ向かって反り返って延びて、ノッチ部44の一部からなるフィレット形成片17を形成する。なお、ノッチ部44を切断したカッター51は、ノッチ部44に接触しながら移動するため、リード部13表面の錫メッキ層11aには殆ど接触することはないので、フィレット形成片17における錫メッキ層11aがカッター51と摺接して剥離するようなことはない。また、ノッチ部44を切断する際、カッター51がガイド部45のガイド面45aを摺接することにより、リード部13へ大きな荷重を加えて、リード部13を変形させるようなことはない。
【0026】
以上のように、キャリア41から切断分離された端子11は、リード部13の固定片部16の後端部に、上方へ向かって反り返って延びるフィレット形成片17が形成される。したがって、この端子11によれば、フィレット形成片17を有する固定片部16の後端部で、半田33が固着する錫メッキ層11aの面積を大きく確保することができ、固定片部16を回路基板31の導体パターン32に半田付けした際に、半田33の形成部として大きな半田フィレット33aが形成されることとなる。よって、リード部13の後端部にキャリア41の連結部42を連結させ、この連結箇所で切断分離しても、その切断箇所に対し煩雑な後メッキ処理を行うことなく、回路基板31の導体パターン32に対して、リード部13の固定片部16を極めて良好に半田付けして固定することができる。
【0027】
また、端子11の後端部がキャリア41に連結されているので、端子11の中間部の両側をキャリア41に連結した従来構造と比較して、両側でのバリの発生をなくすことができる。これにより、隣接する端子11同士の沿面距離が十分に確保されずに短絡するような不具合を確実に防止することができる。また、ハウジング22のキャビティ23に圧入する際に、バリによってキャビティ23の内面を削り、削れカスによって接続不良を招くこともない。
【0028】
なお、タブ12の先端をキャリア41の連結部42と連結させた場合、端子11の両側での切断分離によるバリは発生しないが、この場合、タブ12の先端部にバリが生じ、相手方コネクタの雌端子との間で接続の障害となる虞がある。しかし、本発明では、タブ12におけるバリの発生を防止することができ、よって、相手方コネクタの雌端子との接続も良好かつ円滑に行うことができる。
【0029】
すなわち、本発明に係る端子11によれば、短絡や接続不良などの不具合を生じることなく回路基板31の導体パターン32へ良好に半田付けすることができる。
【符号の説明】
【0030】
11 端子
12 タブ(接続部)
13 リード部
17 フィレット形成片
21 コネクタ
22 ハウジング
31 回路基板
32 導体パターン
41 キャリア
42 連結部
44 ノッチ部
45 ガイド部
45a ガイド面
51 カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方コネクタの端子と接続される接続部と、回路基板の導体パターンに半田付けされるリード部とを有し、導電性金属材料をプレス加工することにより、キャリアから延びる連結部に連結された状態で成型され、前記キャリアから切断分離されて用いられる端子であって、
前記リード部に錫メッキが施され、
前記リード部と前記連結部との間には、厚さが薄くされてカッターによって前記導体パターンとの半田付け面側から切断されるノッチ部を有し、
前記ノッチ部には、前記リード部側に、前記カッターを前記連結部側へ案内し、前記カッターによる前記ノッチ部の切断後に、前記ノッチ部の一部からなるフィレット形成片を形成するガイド部が設けられていることを特徴とする端子。
【請求項2】
前記ガイド部は、円弧状に膨出するガイド面を有することを特徴とする請求項1に記載の端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−138183(P2012−138183A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288104(P2010−288104)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】