説明

端末装置、それを用いた無線通信ネットワーク

【課題】自律的に確立される無線通信ネットワークを構成する複数の端末装置の全ての位置を把握可能な端末装置を提供する。
【解決手段】無線通信ネットワークを構成する端末装置1〜7の各々は、自己の経緯度および速度を検出するとともに、自己の周囲に存在する端末装置の存在方向を示す方位角の測定を通して、自己の経緯度および速度と、他の端末装置によって検出され、かつ、自己へ送信された経緯度および速度を方位角の測定を要求した端末装置へ送信する。そして、端末装置1〜7の各々は、方位角の測定を繰り返して端末装置1〜7の全ての経緯度および速度を取得し、端末装置1〜7の全ての位置および速度を記載した地図MAP1を作成して表示部22に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自律的に確立される無線通信ネットワークを構成する端末装置、それを用いた無線通信ネットワークに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アドホックネットワークは、複数の端末装置が相互に無線通信を行なうことによって自律的、かつ、即時的に構築されるネットワークである。そして、アドホックネットワークでは、通信する2つの端末装置が互いの通信エリアに存在しない場合、2つの端末装置の中間に位置する端末装置がルータとして機能し、データパケットを中継するので、広範囲のマルチホップネットワークを形成することができる。
【0003】
このようなアドホックネットワークは、被災地での無線通信網やITS(Intelligent Transport Systems)車車間通信でのストリーミングなど、様々な方面に応用されようとしている(非特許文献1)。
【0004】
マルチホップ通信をサポートする動的なルーティングプロトコルとしては、テーブル駆動型プロトコルとオンデマンド型プロトコルとがある。テーブル駆動型プロトコルは、定期的に経路に関する制御情報の交換を行ない、予め経路表を構築しておくものであり、GSR(Global State Routing)、FSR(Fish−eye State Routing)、OLSR(Optimized Link State Routing)およびDSDV(Destination Sequenced Distance Vector)等が知られている。
【0005】
また、オンデマンド型プロトコルは、データ送信の要求が発生した時点で、初めて宛先までの経路を構築するものであり、DSR(Dynamic Source Routing)およびAODV(Ad Hoc On−Demand Distance Vector Routing)等が知られている。
【0006】
そして、従来のアドホックネットワークにおいては、送信元から送信先へデータ通信を行なう場合、送信元から送信先までのホップ数ができる限り少なくなるように経路が決定される(非特許文献2)。
【非特許文献1】渡辺正浩“無線アドホックネットワーク”,自動車技術会春季大会ヒューマトロニクスフォーラム,pp18−23,横浜,5月2003年
【非特許文献2】Guangyu Pei, at al, “Fisheye state routing: a routing scheme for ad hoc wireless networks”, ICC2000. Commun., Volume 1, pp70-74, L.A., June 2000.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のアドホックネットワークにおいては、送信元の端末装置は、次に送信する端末装置および送信先の端末装置までのホップ数を知ることができるが、アドホックネットワークを構成する複数の端末装置の全体がどのように配置されているかを知ることができないという問題がある。また、複数の端末装置の中には、移動している端末装置も想定されるが、従来のアドホックネットワークにおいては、各端末装置が移動しているか否かを知ることができないという問題がある。
【0008】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、自律的に確立される無線通信ネットワークを構成する複数の端末装置の全ての位置を把握可能な端末装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、この発明の別の目的は、自律的に確立される無線通信ネットワークを構成する複数の端末装置の全ての動きを把握可能な端末装置を提供することを目的とする。
【0010】
更に、この発明の別の目的は、自律的に確立される無線通信ネットワークを構成する複数の端末装置の全ての位置を把握可能な端末装置を備えた無線通信ネットワークを提供することである。
【0011】
更に、この発明の別の目的は、自律的に確立される無線通信ネットワークを構成する複数の端末装置の全ての動きを把握可能な端末装置を備えた無線通信ネットワークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明によれば、端末装置は、自律的に確立され、送信元と送信先との間で無線通信が行なわれる無線通信ネットワークを構成する端末装置であって、検出手段と、受信手段と、地図作成手段と、表示手段とを備える。検出手段は、当該端末装置の位置を示す第1の位置情報と、当該端末装置の動きを示す第1の動的特性とを検出する。受信手段は、無線通信ネットワークを構成し、かつ、当該端末装置以外の全ての端末装置からなる他の端末装置の位置を示す第2の位置情報と、他の端末装置の動きを示す第2の動的特性とを受信する。地図作成手段は、第1および第2の位置情報と、第1および第2の動的特性とに基づいて、当該端末装置および他の端末装置の位置および動きを記載した地図を作成する。表示手段は、地図作成手段によって作成された地図を表示する。
【0013】
好ましくは、他の端末装置は、第1および第2の端末装置を含む。第1の端末装置は、当該端末装置に隣接する。第2の端末装置は、当該端末装置に対して第1の端末装置よりも遠い位置に存在する。そして、受信手段は、当該端末装置から第1の端末装置へ送信された信号の第1の端末装置における第1の受信特性を第1の端末装置が当該端末装置へ送信する際に、第1の受信特性とともに第2の位置情報および第2の動的特性を第1の端末装置から受信する。地図作成手段は、受信手段によって受信された第2の位置情報および第2の動的特性を用いて地図を作成する。
【0014】
好ましくは、端末装置は、受信特性検出手段と、送信手段とを更に備える。受信特性検出手段は、第1の端末装置から当該端末装置へ送信された信号の当該端末装置における第2の受信特性を検出する。送信手段は、検出された第2の受信特性とともに、第1の位置情報および第1の動的特性を第1の端末装置へ送信する。
【0015】
好ましくは、送信手段は、当該端末装置が第2の位置情報および第2の動的特性を取得していれば、第1の位置情報および第1の動的特性に第2の位置情報および第2の動的特性を追加して第1の端末装置へ送信する。
【0016】
好ましくは、第2の位置情報は、第3および第4の位置情報を含む。第3の位置情報は、第1の端末装置によって検出された第1の端末装置の位置を示す。第4の位置情報は、第2の端末装置によって検出され、かつ、第1の端末装置へ送信された第2の端末装置の位置を示す。第2の動的特性は、第3および第4の動的特性を含む。第3の動的特性は、第1の端末装置によって検出された第1の端末装置の動きを示す。第4の動的特性は、第2の端末装置によって検出され、かつ、第1の端末装置へ送信された第2の端末装置の動きを示す。そして、受信手段は、第1の受信特性とともに、第3および第4の位置情報と、第3および第4の動的特性とを第1の端末装置から受信する。
【0017】
好ましくは、第1および第2の受信特性の各々は、受信信号強度からなる。
【0018】
好ましくは、動的特性は、速度からなる。地図作成手段は、当該端末装置および他の端末装置の位置および速度を記載した地図を作成する。
【0019】
好ましくは、地図作成手段は、当該端末装置および他の端末装置の位置と、当該端末装置および他の端末装置の移動方向と、当該端末装置および他の端末装置の速さとを記載した地図を作成する。
【0020】
好ましくは、地図作成手段は、移動方向を矢印によって表し、速さを数字によって記載する。
【0021】
好ましくは、地図作成手段は、当該端末装置が送信元である場合、送信先までの経路が決定されると、決定された経路を追記した地図を作成する。表示手段は、経路が追記された地図を表示する。
【0022】
また、この発明によれば、無線通信ネットワークは、自律的に確立され、送信元と送信先との間で無線通信が行なわれる無線通信ネットワークであって、複数の端末装置を備える。そして、複数の端末装置の各々は、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の端末装置からなる。
【発明の効果】
【0023】
この発明においては、各端末装置は、自己の位置および動きを検出するとともに、自己以外の全ての端末装置の位置および動きに関する情報を取得し、無線通信ネットワークを構成する全ての端末装置の位置および動きを記載した地図を作成して表示する。
【0024】
従って、この発明によれば、各端末装置において、無線通信ネットワークを構成する全ての端末装置の位置および動きを把握できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0026】
図1は、この発明の実施の形態による無線通信ネットワークの概略図である。無線通信ネットワーク10は、端末装置1〜7を備える。端末装置1〜7は、無線通信空間を介して相互に無線通信を行ない、自律的にネットワークを構成している。そして、端末装置1〜7は、交差点、自動車等の移動体、空き地および建物内等に配置される。
【0027】
より具体的には、端末装置1は、建物100内に配置され、端末装置2は、交差点110の近傍の空き地120に配置され、端末装置3,4,6は、それぞれ、道路130,140,150を走行している自動車(図示せず)に搭載され、端末装置5は、交差点110に配置され、端末装置7は、建物160の近傍を走行している自動車(図示せず)に搭載される。
【0028】
そして、端末装置1は、自己および端末装置2〜7の位置および速度(速さと方向とからなる。以下、同じ)を把握して端末装置1〜7の位置および速度を記載した地図を作成し、その作成した地図を表示する。
【0029】
また、端末装置2〜7の各々も、無線通信ネットワーク10を構成する端末装置1〜7の位置および速度を把握して端末装置1〜7の位置および速度を記載した地図を作成し、その作成した地図を表示する。
【0030】
更に、端末装置1〜7の各々は、送信元である場合、送信先までの経路を後述する方法によって決定し、その決定した経路を端末装置1〜7の位置および速度を記載した地図に追加して表示する。
【0031】
そして、端末装置1から端末装置7へデータを送信する場合、端末装置2〜6は、端末装置1からのデータを中継して端末装置7へ届ける。
【0032】
この場合、端末装置1は、異なる3個の経路を介して端末装置7との間で無線通信を行なうことができる。即ち、端末装置1は、端末装置2,3,6を介して端末装置7との間で無線通信を行なうことができ、端末装置5,6を介して端末装置7との間で無線通信を行なうこともでき、端末装置4〜6を介して端末装置7との間で無線通信を行なうこともできる。
【0033】
端末装置5,6を介して無線通信を行なう場合、ホップ数が“3”と最も少なく、端末装置2,3,6または端末装置4〜6を介して無線通信を行なう場合、ホップ数が“4”と多い。
【0034】
従って、端末装置5,6を介して無線通信を行なう経路を選択すると、ホップ数が“2”と少なくなるので、一般的には、端末装置1から端末装置7への無線通信のスループットが高くなる。
【0035】
しかし、端末装置1と端末装置5との間の受信信号強度が弱いとき、端末装置1と端末装置5との間の無線通信のスループットが低下するので、ホップ数が少ない経路を選択すれば、スループットが高くなるというものではない。
【0036】
そこで、この発明においては、送信元の端末装置は、ホップ数よりも受信信号強度に重みを置いて送信先の端末装置までの無線通信経路を確立する。そして、送信元と送信先との間で無線通信経路を確立するプロトコルとしてFSRプロトコルを基本として用いる。このFSRプロトコルは、テーブル駆動型のルーティングプロトコルであり、比較的、近くに存在する端末装置との間で経路情報の交換を密に行ない、遠くに存在する端末装置との間の経路情報の交換を減らすことによりトラフィックの負荷を減らすプロトコルである。
【0037】
図2は、図1に示す端末装置1の構成を示す概略ブロック図である。端末装置1は、有線モジュール20と、イーサネット(登録商標)30と、無線モジュール40と、アレーアンテナ50とを含む。
【0038】
有線モジュール20は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)からなり、入力部21と、表示部22と、メモリ23と、電子メールアプリケーション24と、通信制御部25とを含む。
【0039】
入力部21は、端末装置1の操作者が入力したメッセージおよびデータの宛先を受付け、その受付けたメッセージおよび宛先を電子メールアプリケーション24へ出力する。表示部22は、電子メールアプリケーション24からの制御に従って地図およびメッセージ等を表示する。メモリ23は、地図データを格納する。
【0040】
電子メールアプリケーション24は、入力部21からのメッセージおよび宛先に基づいてデータを生成して通信制御部25へ出力する。また、電子メールアプリケーション24は、通信制御部25によって作成された地図を受け、その受けた地図を表示部22へ出力する。
【0041】
通信制御部25は、ARPA(Advanced Research Projects Agency)インターネット階層構造の上位層からなる。即ち、通信制御部25は、有線インターフェース26と、IP(Internet Protocol)モジュール27と、ルーティングテーブル28と、TCPモジュール29と、UDPモジュール31と、ルーティングデーモン32と、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)モジュール33とからなる。
【0042】
無線モジュール40は、ARPAインターネット階層構造の下位層からなる。即ち、無線モジュール40は、アンテナ制御モジュール41と、無線インターフェースモジュール42と、MAC(Media Access Control)モジュール43と、アドレス変換テーブル44と、LLC(Logical Link Control)モジュール45と、有線インターフェース46とからなる。
【0043】
イーサネット(登録商標)30は、有線モジュール20の有線インターフェース26を無線モジュール40の有線インターフェース46に接続する。これによって、有線モジュール20は、イーサネット(登録商標)30によって無線モジュール40に接続され、有線モジュール20の通信制御部25および無線モジュール40は、通信制御を行なうARPAインターネット階層構造を構成する。
【0044】
アレーアンテナ50は、アンテナ素子51〜57と、バラクタダイオード61〜66とからなる。アンテナ素子51〜56は、無給電素子であり、アンテナ素子57は、給電素子である。そして、アンテナ素子51〜57は、xyz直交座標のx−y平面に略垂直に、即ち、z軸に略平行に配置される。
【0045】
バラクタダイオード61〜66は、それぞれ、アンテナ素子51〜56と接地ノードとの間に接続される。これにより、可変容量素子であるバラクタダイオード61〜66がそれぞれ無給電素子であるアンテナ素子51〜56に装荷される。
【0046】
このように、アレーアンテナ50は、1本の給電素子(アンテナ素子57)と6本の無給電素子(アンテナ素子51〜56)とからなる。
【0047】
無線モジュール40のアンテナ制御モジュール41は、物理層に属し、アレーアンテナ50のバラクタダイオード61〜66に制御電圧セットCLV0〜CLV12を供給してアレーアンテナ50が放射するビームパターンを制御する。
【0048】
無線インターフェースモジュール42は、物理層に属し、アレーアンテナ50のアンテナ素子57(給電素子)に接続される。そして、無線インターフェースモジュール42は、MACモジュール43から受信した有線フレームWIRFまたは無線フレームRFFを所定の規定に従って変調および周波数変換してアレーアンテナ50のアンテナ素子57(給電素子)へ供給するとともに、アレーアンテナ50のアンテナ素子57から受信した有線フレームWIRFまたは無線フレームRFFを所定の規定に従って復調および周波数変換してMACモジュール43へ送信する。なお、この有線フレームWIRFは、イーサネット(登録商標)に対応したフレームである(以下、同じ)。
【0049】
また、無線インターフェースモジュール42は、アレーアンテナ50が信号を受信したときの受信信号強度を検出し、その検出した受信信号強度を有線インターフェース46およびイーサネット(登録商標)30を介して有線モジュール20のルーティングデーモン32へ出力する。
【0050】
更に、無線インターフェースモジュール42は、端末装置1の経緯度λ,φおよび速度vを計測し、その計測した経緯度λ,φおよび速度vを有線インターフェース46およびイーサネット(登録商標)30を介して有線モジュール20のルーティングデーモン32へ出力する。
【0051】
MACモジュール43は、MAC層に属し、有線モジュール20から有線フレームWIRFを受信する。そして、MACモジュール43は、有線フレームWIRFに含まれる宛先MACアドレスがブロードキャストアドレスである場合、有線フレームWIRFをそのままブロードキャストし、有線フレームWIRFの宛先MACアドレスがマルチキャストアドレスである場合、有線フレームWIRFをそのままマルチキャストする。
【0052】
また、MACモジュール43は、有線フレームWIRFの宛先MACアドレスが送信先の端末装置(端末装置1〜7のいずれか)である場合、後述する方法によって有線フレームWIRFを無線フレームRFFに変換する。そして、MACモジュール43は、無線フレームRFFをアレーアンテナ50を介して送信先の端末装置の無線モジュール40へ送信する。
【0053】
更に、MACモジュール43は、無線インターフェースモジュール42から有線フレームWIRFを受信すると、その受信した有線フレームWIRFをLLCモジュール45へ送信し、無線インターフェースモジュール42から無線フレームRFFを受信すると、その受信した無線フレームRFFを後述する方法によって有線フレームWIRFに変換してLLCモジュール45へ送信する。
【0054】
更に、MACモジュール43は、MACプロトコルを実行してデータ(フレーム)の再送制御等を行なう。そして、MACモジュール43は、データ(フレーム)の再送回数が所定値を超えるとリンクが切断されたことを検知し、リンクが切断されたことを有線インターフェース46およびイーサネット(登録商標)30を介して有線モジュール20のルーティングデーモン32に通知する。
【0055】
アドレス変換テーブル44は、MAC層に属し、無線通信ネットワーク10を構成する7個の端末装置1〜7に対して、端末装置ごとに無線モジュール40のMACアドレスを有線モジュール20のMACアドレスに対応付けて格納する。
【0056】
LLCモジュール45は、データリンク層に属し、LLCプロトコルを実行して隣接する端末装置との間でリンクの接続および解放を行なう。
【0057】
有線インターフェース46は、イーサネット(登録商標)30を介して有線モジュール20から受信した有線フレームWIRFをLLCモジュール45へ出力するとともに、LLCモジュール45から受信した有線フレームWIRFをイーサネット(登録商標)30を介して有線モジュール20へ送信する。
【0058】
有線モジュール20の有線インターフェース26は、IPモジュール27からの有線フレームWIRFをイーサネット(登録商標)30を介して無線モジュール40へ送信するとともに、イーサネット(登録商標)30を介して無線モジュール40から受信した有線フレームWIRFをIPモジュール27へ送信する。
【0059】
IPモジュール27は、インターネット層に属し、IPパケットを生成する。IPパケットは、IPヘッダと、上位のプロトコルのパケットを格納するためのIPデータ部とからなる。そして、IPモジュール27は、TCPモジュール28からデータを受けると、その受けたデータをIPデータ部に格納してIPパケットを生成する。
【0060】
IPモジュール27は、IPパケットを生成すると、その生成したIPパケットをフレーム本体に格納し、宛先MACアドレスをヘッダに格納して有線フレームWIRFを生成する。
【0061】
そうすると、IPモジュール27は、テーブル駆動型のルーティングプロトコルであるFSRプロトコルに従ってルーティングテーブル28を検索し、生成した有線フレームWIRFを送信するための経路を決定する。そして、IPモジュール27は、経路を決定すると、その決定した経路の経路情報をルーティングデーモン32へ出力するとともに、生成した有線フレームWIRFを有線インターフェース26およびイーサネット(登録商標)30を介して無線モジュール40へ送信し、決定した経路に沿って有線フレームWIRFを送信先へ送信する。
【0062】
また、IPモジュール27は、有線インターフェース26から有線フレームWIRFを受信すると、その受信した有線フレームWIRFからデータを抽出してTCPモジュール29またはUDPモジュール31へ送信する。
【0063】
ルーティングテーブル28は、インターネット層に属し、後述するように、各送信先アドレスに対応付けて経路情報を格納する。
【0064】
TCPモジュール29は、トランスポート層に属し、TCPパケットを生成する。TCPパケットは、TCPヘッダと、上位のプロトコルのデータを格納するためのTCPデータ部とからなる。そして、TCPモジュール29は、生成したTCPパケットをIPモジュール27へ送信する。
【0065】
UDPモジュール31は、トランスポート層に属し、ルーティングデーモン32によって作成されたUpdateパケットをブロードキャストし、他の端末装置からブロードキャストされたUpdateパケットを受信してルーティングデーモン32へ出力する。
【0066】
ルーティングデーモン32は、プロセス/アプリケーション層に属し、他の通信制御モジュールの実行状態を監視するとともに、他の通信制御モジュールからのリクエストを処理する。
【0067】
また、ルーティングデーモン32は、FSRプロトコルに従って比較的近くに存在する他の端末装置と経路情報を定期的に交換し合い、取得した経路情報および無線インターフェースモジュール42から受けた受信信号強度に基づいて、後述する方法によって最適な経路を算出してインターネット層にルーティングテーブル28を動的に作成する。
【0068】
更に、ルーティングデーモン32は、端末装置1に隣接する端末装置(端末装置2,4,5のいずれか)において検出された受信信号強度RSSI_NEB、端末装置2〜7の経緯度λEX,φEXおよび端末装置2〜7の速度vEXが無線モジュール40から受けた有線フレームWIRFに含まれていると、受信信号強度RSSI_NEB、経緯度λEX,φEXおよび速度vEXを有線フレームWIRFから抽出する。
【0069】
そして、ルーティングデーモン32は、抽出した経緯度λEX,φEXを次式に代入して端末装置2〜7の位置PS_EXを求める。
【0070】
【数1】

【0071】
ルーティングデーモン32は、端末装置2〜7の位置PS_EXを求めると、端末装置2〜7の位置PS_EXおよび速度vEXを記憶する。
【0072】
そして、ルーティングデーモン32は、抽出した受信信号強度RSSI_EXに基づいて、端末装置1に隣接する端末装置(端末装置2,4,5のいずれか)の端末装置1に対する存在方向を示す方位角を後述する方法によって決定する。
【0073】
更に、ルーティングデーモン32は、無線インターフェースモジュール42において検出された受信信号強度RSSI_SEF、端末装置1の経緯度λSEF,φSEFおよび端末装置1の速度vSEFを無線モジュール40の無線インターフェースモジュール42から受けると、その受けた経緯度λSEF,φSEFを式(1)に代入して端末装置1の位置PS_SEFを求める。
【0074】
そうすると、ルーティングデーモン32は、端末装置1〜7と、端末装置1〜7の位置PS_SEF,PS_EXおよび速度vSEF,vEXとを対応付けた端末情報テーブルTIFを作成する。そして、ルーティングデーモン32は、メモリ23から地図データを読み出し、端末情報テーブルTIFに格納された位置PS_SEF,PS_EXおよび速度vSEF,vEXを地図データ上に記載して端末装置1〜7の位置および速度を記載した地図を作成する。そして、ルーティングデーモン32は、その作成した地図を電子メールアプリケーション24を介して表示部22へ送信する。
【0075】
更に、ルーティングデーモン32は、IPモジュール29から経路情報を受けると、その受けた経路情報を記載した地図を作成し、その作成した地図を電子メールアプリケーション24を介して表示部22へ送信する。
【0076】
更に、ルーティングデーモン32は、受信信号強度RSSI_SEF、経緯度λSEF,φSEF、速度vSEF、経緯度λEX,φEXおよび速度vEXからなるデータを生成し、その生成したデータをTCPモジュール29へ送信する。
【0077】
SMTPモジュール33は、プロセス/アプリケーション層に属し、電子メールアプリケーション24から受け取ったデータに基づいて、全二重通信チャネルの確保およびメッセージの交換等を行なう。
【0078】
なお、図1に示す端末装置2〜7の各々も、図2に示す端末装置1の構成と同じ構成からなる。
【0079】
図3は、図2に示すアレーアンテナ50のx−y平面における平面図である。アンテナ素子51〜56は、アンテナ素子57の周囲に略円形に配置される。そして、アレーアンテナ50が送受信する電波の波長をλとすると、アンテナ素子51〜56とアンテナ素子57との間隔は、略λ/4である。
【0080】
このように、アレーアンテナ50は、給電素子であるアンテナ素子57の周囲に無給電素子であるアンテナ素子51〜56を略円形配置した構造からなる。
【0081】
アンテナ制御モジュール41は、制御電圧セットCLV0〜CLV12をバラクタダイオード61〜66へ供給してアレーアンテナ50が放射するビームパターンを制御する場合、バラクタダイオード61〜66のリアクタンスセットx=xm1〜xm6が表1に示すリアクタンスセットに従って変化するように制御電圧セットCLV0〜CLV12をバラクタダイオード61〜66へ供給する。
【0082】
【表1】

【0083】
制御電圧セットCLV0〜CLV12の各々は、6個のバラクタダイオード61〜66に対応して6個の電圧V1〜V6からなる。アンテナ制御モジュール41は、例えば、−20Vからなる電圧V1〜V6をそれぞれバラクタダイオード61〜66へ供給してバラクタダイオード61〜66のリアクタンスxm1〜xm6を“hi”に設定し、0Vからなる電圧V1〜V6をそれぞれバラクタダイオード61〜66へ供給してバラクタダイオード61〜66のリアクタンスxm1〜xm6を“lo”に設定する。
【0084】
バラクタダイオード61〜66のリアクタンスxm1〜xm6が全て“hi”である場合(m=0)、アレーアンテナ50は、オムニパターンに近いビームパターンBPM0を放射する。また、バラクタダイオード61のリアクタンスxm1が“hi”であり、バラクタダイオード62〜66のリアクタンスxm2〜xm6が“lo”である場合(m=1)、アレーアンテナ50は、0度の方向に指向性を有するビームパターンBPM1を放射する。なお、x軸の正の方向を0度の方向とする。
【0085】
更に、バラクタダイオード61,62のリアクタンスxm1,xm2が“hi”であり、バラクタダイオード63〜66のリアクタンスxm3〜xm6が“lo”である場合(m=2)、アレーアンテナ50は、30度の方向に指向性を有するビームパターンBPM2を放射する。
【0086】
更に、バラクタダイオード62のリアクタンスxm2が“hi”であり、バラクタダイオード61,63〜66のリアクタンスxm1,xm3〜xm6が“lo”である場合(m=3)、アレーアンテナ50は、60度の方向に指向性を有するビームパターンBPM3を放射する。
【0087】
以下、同様にして、バラクタダイオード61〜66のうち、リアクタンスxを“hi”に設定するバラクタダイオードをバラクタダイオード62,63、バラクタダイオード63、バラクタダイオード63,64、バラクタダイオード64、バラクタダイオード64,65、バラクタダイオード65、バラクタダイオード65,66、バラクタダイオード66およびバラクタダイオード66,61に順次切換えることによって、アレーアンテナ50は、それぞれ、90度の方向、120度の方向、150度の方向、180度の方向、210度の方向、240度の方向、270度の方向、300度の方向および330度の方向に指向性を有するビームパターンBPM4〜BPM12を放射する。
【0088】
このように、アレーアンテナ50は、アンテナ制御モジュール41からの制御に従って、オムニビームパターン(ビームパターンBPM0)および指向性を有するビームパターン(ビームパターンBPM1〜BPM12)を選択的に放射可能である。
【0089】
図4は、図2に示す無線インターフェースモジュール42の構成を示す概略図である。無線インターフェースモジュール42は、通信部421と、GPS(Global Positioning System)部422と、方位角測定部423とを含む。
【0090】
通信部421は、MACモジュール43から受けた有線フレームWIRFまたは無線フレームRFFに変調および周波数変換を施してアレーアンテナ50のアンテナ素子57へ出力する。
【0091】
また、通信部421は、アレーアンテナ50のアンテナ素子57から受けた有線フレームWIRFまたは無線フレームRFFに周波数変換および復調を施してMACモジュール43へ出力する。
【0092】
GPS部422は、自己が搭載された端末装置1の経緯度λ,φおよび速度vを検出し、その検出した経緯度λ,φおよび速度vを有線インターフェース46およびイーサネット(登録商標)30を介してルーティングデーモン32へ出力する。
【0093】
方位角測定部423は、自己が搭載された端末装置1に対する端末装置2,4,5(端末装置1に隣接する端末装置)の存在方向を示す方位角の測定開始を通知するためのセットアップ信号を生成し、その生成したセットアップ信号をオミニビームパターンBPM0に設定されたアレーアンテナ50を介して端末装置2,4,5へ送信する。
【0094】
その後、方位角測定部423は、アレーアンテナ50がビームパターンBPM1〜BPM12を順次生成するように制御するための制御信号CTL_BPを生成してアンテナ制御モジュール41へ出力するとともに、方位角の測定を要求するための信号RQを生成してアレーアンテナ50へ出力する。これによって、信号RQは、アレーアンテナ50の指向性が0度の方向、30度の方向、60度の方向、90度の方向、120度の方向、150度の方向、180度の方向、210度の方向、240度の方向、270度の方向、300度の方向および330度の方向に順次切換えられながら、端末装置2,4,5へ送信される。
【0095】
また、方位角測定部423は、自己が搭載された端末装置1以外の端末装置2,4,5から信号RQをアレーアンテナ50を介して受けると、信号RQの受信信号強度RSSI_EXを検出し、その検出した受信信号強度RSSI_EXを有線インターフェース46およびイーサネット(登録商標)30を介してルーティングデーモン32へ送信する。
【0096】
図5は、図2に示すルーティングテーブル28の例を示す図である。ルーティングテーブル28は、送信先アドレスと、隣接する端末装置のアドレス(NextHopアドレス)と、ホップ数と、メトリックと、シーケンス番号(SeqNum)とからなる。そして、送信先アドレス、NextHopアドレス、ホップ数、メトリックおよびSeqNumは、相互に対応付けられている。
【0097】
送信先アドレスは、送信先の端末装置のIPアドレスおよびMACアドレスを表す。NextHopアドレスは、次にホップする端末装置のIPアドレスおよびMACアドレスを表す。ホップ数は、フレーム(パケット)が送信元の端末装置から送信先の端末装置まで送信される場合の間の中継数を表わす。
【0098】
メトリックは、受信信号強度に応じて決定される数値が格納される。そして、メトリックは、受信信号強度が相対的に弱いとき、相対的に大きい数値が格納され、受信信号強度が相対的に強いとき、相対的に小さい数値が格納される。受信信号強度をメトリックへ変換する方法については、後述する。SeqNumは、経路情報が生成された順番を表す。
【0099】
図5に示すルーティングテーブル28の例では、第1の経路は、送信元の端末装置を端末装置1とし、送信先の端末装置を端末装置7とする経路であり、端末装置1が送信したフレームを最初に中継する端末が端末装置2であり、端末装置1が送信したフレームが3つの端末装置によって中継されて端末装置7に届くことを示している。ホップ数が“4”であるからである。そして、メトリックは、“5”である。
【0100】
また、第2の経路は、送信元の端末装置を端末装置1とし、送信先の端末装置を端末装置7とする経路であり、端末装置1が送信したフレームを最初に中継する端末装置が端末装置5であり、端末装置1が送信したフレームが2個の端末装置によって中継されて端末装置7に届くことを示している。ホップ数が“3”であるからである。そして、メトリックは“16”である。
【0101】
他の端末装置から受信した受信信号強度をメトリックに変換する方法について説明する。表2は、受信信号強度とメトリックとの関係を示す。
【0102】
【表2】

【0103】
受信信号強度が−60dBmよりも強いとき、メトリックは、“1”となり、受信信号強度が−60dBm〜−65dBmまでの範囲であるとき、メトリックは、“2”となり、受信信号強度が−65dBm〜−70dBmまでの範囲であるとき、メトリックは、“4”となり、受信信号強度が−70dBm〜−80dBmまでの範囲であるとき、メトリックは、“8”となり、受信信号強度が−80dBmよりも弱いとき、メトリックは、“16”となる。
【0104】
従って、ルーティングデーモン32は、無線インターフェースモジュール42から受信信号強度を受けると、その受けた受信信号強度に対応するメトリックを表2を参照して検出し、その検出したメトリックを経路情報を送信した端末装置を介する経路のメトリックに加算してルーティングテーブル28を作成する。
【0105】
具体的に説明する。図6は、図5に示すルーティングテーブル28の作成方法を説明するための図である。端末装置1は、図6の(a)に示す経路情報を含むUpdateパケットUDP1を端末装置2からブロードキャストにより受信し、図6の(b)に示す経路情報を含むUpdateパケットUDP2を端末装置5からブロードキャストにより受信する。
【0106】
この場合、端末装置1において、無線インターフェースモジュール42は、端末装置2からUpdateパケットUDP1を受信したときの受信信号強度RSSI1(=−65dBm〜−60dBm)を検出し、端末装置5からUpdateパケットUDP2を受信したときの受信信号強度RSSI2(=−80dBm〜−70dBm)を検出する。そして、無線インターフェースモジュール42は、その検出した受信信号強度RSSI1,RSSI2を有線インターフェース46およびイーサネット(登録商標)30を介して有線モジュール20のルーティングデーモン32へ出力する。
【0107】
また、有線モジュール20のUDPモジュール31は、端末装置2からUpdateパケットUDP1を受信し、端末装置5からUpdateパケットUDP2を受信する。そして、UDPモジュール31は、その受信したUpdateパケットUDP1,UDP2をルーティングデーモン32へ出力する。
【0108】
そうすると、ルーティングデーモン32は、UpdateパケットUDP1のIPヘッダから送信元IPアドレスとして端末装置2のIPアドレスおよびMACアドレスを抽出し、UpdateパケットUDP1を端末装置2から受信したことを認識する。また、ルーティングデーモン32は、UpdateパケットUDP2のIPヘッダから送信元IPアドレスとして端末装置5のIPアドレスおよびMACアドレスを抽出し、UpdateパケットUDP2を端末装置5から受信したことを認識する。
【0109】
そして、ルーティングデーモン32は、UpdateパケットUDP1の送信先アドレスに格納された“端末装置7のアドレス”(端末装置7のIPアドレスおよびMACアドレスからなる)に基づいて、UpdateパケットUDP1が端末装置7を送信先とする経路情報であることを認識する。また、ルーティングデーモン32は、UpdateパケットUDP2の送信先アドレスに格納された“端末装置7のアドレス” (端末装置7のIPアドレスおよびMACアドレスからなる)に基づいて、UpdateパケットUDP2が端末装置7を送信先とする経路情報であることを認識する。
【0110】
更に、ルーティングデーモン32は、無線インターフェースモジュール42から受けた受信信号強度RSSI1(=−65dBm〜−60dBm)に対応するメトリック(=2)を表2を参照して検出し、無線インターフェースモジュール42から受けた受信信号強度RSSI2(=−80dB〜−70dB)に対応するメトリック(=8)を表2を参照して検出する。
【0111】
そうすると、ルーティングデーモン32は、UpdateパケットUDP1に基づいて、ルーティングテーブル28の第1行目の経路情報を作成し、UpdateパケットUDP2に基づいて、ルーティングテーブル28の第2行目の経路情報を作成する。
【0112】
即ち、ルーティングデーモン32は、UpdateパケットUDP1の送信先アドレスから“端末装置7のアドレス” (端末装置7のIPアドレスおよびMACアドレスからなる)を抽出してルーティングテーブル28の送信先アドレスに格納し、UpdateパケットUDP1を端末装置2から受信したのでルーティングテーブル28のNextHopアドレスに“端末装置2のアドレス” (端末装置2のIPアドレスおよびMACアドレスからなる)を格納する。そして、ルーティングデーモン32は、UpdateパケットUDP1のホップ数に格納された“3”に“1”を加算して“4”をルーティングテーブル28のホップ数に格納する。
【0113】
また、ルーティングデーモン32は、UpdateパケットUDP1のメトリックに格納された“3”を抽出し、受信信号強度RSSI1に対応して検出したメトリック(=2)をメトリック“3”に加算し、その加算結果“5”をルーティングテーブル28のメトリックに格納する。
【0114】
更に、ルーティングデーモン32は、UpdateパケットUDP1からシーケンス番号SeqNum(=10)を抽出してルーティングテーブル28のシーケンス番号SeqNumに格納する。
【0115】
これにより、ルーティングテーブル28の第1行目の経路情報が作成される(図6の(c)参照)。なお、UpdateパケットUDP1は、NextHopアドレスを“端末装置3のアドレス”とする経路と、NextHopアドレスを“端末装置5のアドレス”とする経路とを格納するが、NextHopアドレスを“端末装置3のアドレス”とする経路のメトリック(=3)がNextHopアドレスを“端末装置5のアドレス”とする経路のメトリック(=10)よりも小さいので、ルーティングデーモン32は、NextHopアドレスを“端末装置3のアドレス”とする経路を選択し、NextHopアドレスを“端末装置5のアドレス”とする経路を破棄する。
【0116】
引き続いて、ルーティングデーモン32は、UpdateパケットUDP2の送信先アドレスから“端末装置7のアドレス” (端末装置7のIPアドレスおよびMACアドレスからなる)を抽出してルーティングテーブル28の送信先アドレスに格納し、UpdateパケットUDP2を端末装置5から受信したのでルーティングテーブル28のNextHopアドレスに“端末装置5のアドレス”(端末装置5のIPアドレスおよびMACアドレスからなる)を格納する。そして、ルーティングデーモン32は、UpdateパケットUDP2のホップ数に格納された“2”に“1”を加算して“3”をルーティングテーブル28のホップ数に格納する。また、ルーティングデーモン32は、UpdateパケットUDP2のメトリックに格納された“8”を抽出し、受信信号強度RSSI2に対応して検出したメトリック(=8)をメトリック“8”に加算し、その加算結果“16”をルーティングテーブル28のメトリックに格納する。更に、ルーティングデーモン32は、UpdateパケットUDP2からシーケンス番号SeqNum(=10)を抽出してルーティングテーブル28のシーケンス番号SeqNumに格納する。
【0117】
これにより、ルーティングテーブル28が作成される(図6の(c)参照)。
【0118】
このように、この発明においては、端末装置間の無線通信における受信信号強度RSSIをメトリックに変換し、その変換したメトリックを経路の安定度合を示す経路安定指標として経路情報に含めてルーティングテーブル28を作成する。そして、表2に示すように、受信信号強度RSSIが相対的に強くなれば、メトリックは、相対的に小さくなり、受信信号強度RSSIが相対的に弱くなれば、メトリックは、相対的に大きくなる。従って、メトリックが相対的に小さいことは、経路がより安定していることを意味し、メトリックが相対的に大きいことは、経路がより不安定であることを意味する。
【0119】
受信信号強度RSSIをメトリックに変換する場合、受信信号強度RSSIを複数の領域(−60dBmよりも強い領域RGE1、−60dBm〜−65dBmの領域RGE2、−65dBm〜−70dBmの領域RGE3、−70dBm〜−80dBmの領域RGE4、−80dBmよりも弱い領域RGE5)に分割し、受信信号強度RSSIが領域RGE1から領域RGE5の方向へ弱くなるに従って、メトリックは、2の累乗に従って大きくなる。即ち、受信信号強度RSSIが直線的に弱くなるに従って、メトリックは、指数関数的に大きくなる。
【0120】
このように、受信信号強度RSSIが直線的に弱くなるに従って経路安定指標としてのメトリックを指数関数的に大きくすることによって(即ち、受信信号強度RSSIが直線的に強くなるに従って経路安定指標としてのメトリックを指数関数的に小さくすることによって)、安定度合がより大きい経路を容易に選択できる。
【0121】
即ち、受信信号強度RSSIが直線的に弱くなるに従ってメトリックを直線的に大きくした場合、受信信号強度RSSIの違いによるメトリックの差は小さくなる。そして、ルーティングテーブル28においては、端末装置1から端末装置7までの全体の経路におけるメトリック(=各経路のメトリックの加算値)が格納されるので、受信信号強度RSSIが変動しても値が大きく変化しないメトリックを用いた場合には、送信元から送信先までの複数の経路に付与された複数のメトリックに大きな差が生じないことになる。
【0122】
これに対し、受信信号強度RSSIが直線的に弱くなるに従ってメトリックを指数関数的に大きくした場合、受信信号強度RSSIの変化に対してメトリックが大きく変化するので、メトリックも大きく変化することになり、送信元から送信先までの複数の経路に付与された複数のメトリックに大きな差が生じることになる。
【0123】
従って、この発明においては、受信信号強度RSSIが直線的に弱くなるに従ってメトリックが指数関数的に大きくなるようにしたものである。
【0124】
図1に示す他の端末装置2〜7のルーティングデーモン32も、上述した端末装置1のルーティングデーモン32と同じようにしてルーティングテーブル28を作成する。
【0125】
図7は、図2に示すアドレス変換テーブル44の例を示す図である。アドレス変換テーブル44は、有線モジュール20のMACアドレスと、無線モジュール40のMACアドレスとからなる。そして、アドレス変換テーブル44は、端末装置1〜7の有線モジュール20のMACアドレスMAC1〜MAC7をそれぞれ端末装置1〜7の無線モジュール40のMACアドレスMAC11〜MAC71に対応付けて格納する。即ち、アドレス変換テーブル44は、端末装置1〜7に対して、端末装置ごとに有線モジュール20のMACアドレスを無線モジュール40のMACアドレスに対応付けて格納する。
【0126】
このように、端末装置1〜7の各々において、無線モジュール40は、無線通信ネットワーク10内に存在する全ての端末装置1〜7に対して、有線モジュール20のMACアドレスと無線モジュール40のMACアドレスとを対応付けたアドレス変換テーブル44を保持する。
【0127】
図8は、有線フレームWIRFの構成図である。有線フレームWIRFは、FCS(Frame Control Sequence)11と、フレーム本体12と、データタイプ(Data Type)13と、送信元アドレス(SA:Source Address)14と、送信先アドレス(DA:Destination Address)15とからなる。
【0128】
FCS11は、4Octetの長さを有する。フレーム本体12は、46Octet以上の長さを有し、送信対象であるデータを格納する。データタイプ13、送信元アドレス(SA)14および送信先アドレス(DA)15は、イーサネット(登録商標)ヘッダを構成し、全体で14Octetの長さを有する。そして、データタイプ13は、フレーム本体12に格納されるデータの種類を示す。
【0129】
送信元アドレス(SA)14は、送信元の端末装置の有線モジュール20のMACアドレス(MAC1〜MAC7のいずれか)を格納する。送信先アドレス(DA)15は、送信先の端末装置の有線モジュール20のMACアドレス(MAC1〜MAC7のいずれか)を格納する。
【0130】
図9は、無線フレームRFFの構成図である。無線フレームRFFは、FCS11Aと、フレーム本体12Aと、PAD13Aと、802.2SNAP14Aと、802.2LLC15Aと、IEEE802.11MACヘッダ16Aとからなる。
【0131】
FCS11Aは、4Octetの長さを有する。フレーム本体12Aは、各種のデータを格納する。PAD13Aは、2Octetの長さを有し、“0x0000”を格納する。802.2SNAP14Aは、5Octetの長さを有し、“0x000000CAFE”を格納する。802.2LLC15Aは、3Octetの長さを有し、“0xAAAA03”を格納する。なお、802.2SNAP14Aおよび802.2LLC15Aは、論理リンク制御部を構成する。
【0132】
IEEE802.11MACヘッダ16Aは、送信元の端末装置の無線モジュール40のMACアドレス(MAC11〜MAC71のいずれか)、および送信先の端末装置の無線モジュール40のMACアドレス(MAC11〜MAC71のいずれか)等を含む。
【0133】
図1に示す端末装置1〜7の各々は、上述したように、有線モジュール20と無線モジュール40とからなる。そして、各端末装置1〜7がデータを送信する場合、有線モジュール20は、送信先の端末装置(端末装置1〜7のいずれか)を構成する有線モジュール20のMACアドレス(MAC1〜MAC7のいずれか)を含む有線フレームWIRFを生成し、その生成した有線フレームWIRFをイーサネット(登録商標)30を介して無線モジュール40へ送信する。
【0134】
そうすると、無線モジュール40は、有線モジュール20から受信した有線フレームWIRFを無線フレームRFFに変換し、その変換した無線フレームRFFをアレーアンテナ50を介して送信先の端末装置を構成する無線モジュール40へ送信する。
【0135】
図10は、有線フレームWIRFと無線フレームRFFとの間の変換を示す概念図である。なお、図10は、端末装置1を送信元の端末装置とし、端末装置2を送信先の端末装置とした場合における有線フレームWIRFと無線フレームRFFとの間の変換を示す。
【0136】
端末装置1の有線モジュール20は、自己のMACアドレスMAC1を送信元アドレス(SA)14に格納し、端末装置2の有線モジュール20のMACアドレスMAC2を送信先アドレス(DA)15に格納し、データをフレーム本体12に格納した有線フレームWIRF1を生成し、その生成した有線フレームWIRF1をイーサネット(登録商標)30を介して無線モジュール40へ送信する。
【0137】
端末装置1の無線モジュール40は、イーサネット(登録商標)30を介して有線フレームWIRF1を受信すると、有線フレームWIRF1に含まれているMACアドレスMAC2を送信先アドレスとして検出する。そして、端末装置1の無線モジュール40は、アドレス変換テーブル44を参照してMACアドレスMAC2に対応するMACアドレスMAC21を抽出する。即ち、端末装置1の無線モジュール40は、MACアドレスMAC2に基づいて、有線フレームWIRF1の送信先である端末装置2の有線モジュール20に対応して設けられた無線モジュール40のMACアドレスMAC21をアドレス変換テーブル44を参照して抽出する。
【0138】
そうすると、端末装置1の無線モジュール40は、有線フレームWIRF1の[フレーム本体12/データタイプ13/送信元アドレス(SA)14/送信先アドレス(DA)15]をフレーム本体12Aに格納し、自己のMACアドレスMAC11と、抽出したMACアドレスMAC21とをIEEE802.11MACヘッダ16Aに格納し、更に、FCS11Aを付加した無線フレームRFF1を生成する。
【0139】
そして、端末装置1の無線モジュール40は、その生成した無線フレームRFF1をアレーアンテナ50を介して端末装置2の無線モジュール40へ送信する。この場合、端末装置1のアンテナ制御モジュール41は、上述した方法によって、オムニビームパターンBPM0を放射するようにアレーアンテナ50を制御する。つまり、端末装置1の無線モジュール40は、オムニビームパターンBPM0によって無線フレームRFF1を端末装置2の無線モジュール40へ送信する。
【0140】
端末装置2の無線モジュール40は、アレーアンテナ50のビームパターンをオムニビームパターンBPM0に設定して無線フレームRFF1を受信し、その受信した無線フレームRFF1のフレーム本体12Aに格納された[フレーム本体12/データタイプ13/送信元アドレス(SA)14/送信先アドレス(DA)15]を抽出し、その抽出した[フレーム本体12/データタイプ13/送信元アドレス(SA)14/送信先アドレス(DA)15]にFCS11を付加して端末装置1の有線モジュール20によって生成された有線フレームWIRF1を再現する。
【0141】
そうすると、端末装置2の無線モジュール40は、その再現した有線フレームWIRF1をイーサネット(登録商標)30を介して有線モジュール20へ送信する。そして、端末装置2の有線モジュール20は、端末装置1の有線モジュール20によって生成された有線フレームWIRF1を受信する。
【0142】
このように、この発明においては、データを送信先の端末装置2へ送信する場合、送信元の端末装置1において、有線モジュール20は、送信先の端末装置2を構成する有線モジュール20のMACアドレスMAC2を宛先MACアドレスとする有線フレームWIRF1を生成してイーサネット(登録商標)30(有線ケーブル)を介して無線モジュール40へ送信し、無線モジュール40は、送信先の端末装置2を構成する有線モジュール20に対応して設けられた無線モジュール40のMACアドレスMAC21をアドレス変換テーブル44を参照して抽出し、その抽出したMACアドレスMAC21を宛先MACアドレスに格納し、有線モジュール20によって生成された有線フレームWIRF1をフレーム本体12Aに格納して無線フレームRFF1を生成することにより、有線フレームWIRF1を無線フレームRFF1に変換する。
【0143】
また、送信先の端末装置2において、無線モジュール40は、無線フレームRFF1から有線フレームWIRF1の[フレーム本体12/データタイプ13/送信元アドレス(SA)14/送信先アドレス(DA)15]を抽出して有線フレームWIRF1を再現し、有線モジュール20は、無線モジュール40によって再現された有線フレームWIRF1を受信する。
【0144】
このように、送信元の端末装置1の有線モジュール20は、送信先である端末装置2の有線モジュール20のMACアドレスMAC1を宛先MACアドレスとして設定した有線フレームWIRF1を生成して無線モジュール40へ送信すれば、送信元である端末装置1の無線モジュール40は、送信先である端末装置2の有線モジュール20に対応する無線モジュール40のMACアドレスMAC21を宛先MACアドレスとする無線フレームRFF1に有線フレームWIRF1を変換して送信する。
【0145】
この場合、送信元の端末装置1において、有線モジュール20は、端末装置1の無線モジュール40を宛先とする有線フレームを生成するのではなく、送信先の端末装置2の有線モジュール20を宛先とする有線フレームWIRF1を生成して無線モジュール40へ送信し、かつ、無線モジュール40は、有線フレームWIRF1と、送信先の端末装置2を構成する無線モジュール40のMACアドレスMAC21とを含む無線フレームRFF1を生成して送信するので、端末装置1における有線モジュール20から無線モジュール40への有線フレームWIRF1の送信は、“1ホップ”に該当しない。
【0146】
また、送信先の端末装置2においても、無線モジュール40は、自己のMACアドレスMAC21を送信元のMACアドレスとして設定した有線フレームを生成するのではなく、端末装置1の有線モジュール20を送信元とする有線フレームWIRF1を有線モジュール20へ送信するので、端末装置2における無線モジュール40から有線モジュール20への有線フレームWIRF1の送信は、“1ホップ”に該当しない。
【0147】
従って、送信元である端末装置1の有線モジュール20から送信先である端末装置2の有線モジュール20への有線フレームWIRF1の送信は、端末装置1の無線モジュール40と端末装置2の無線モジュール40との間における無線フレームRFF1の送信による“1ホップ”からなる。
【0148】
その結果、端末装置1〜7の各々を有線モジュール20および無線モジュール40によって構成した場合にも、各端末装置1〜7は、ホップ数の増加を抑制して、即ち、スループットの低下を抑制してデータを送信先へ送信できる。
【0149】
また、上述したように、端末装置1〜7の各々において、無線モジュール40は、無線通信ネットワーク10内に存在する全ての端末装置1〜7に対して、有線モジュール20のMACアドレスと無線モジュール40のMACアドレスとを対応付けたアドレス変換テーブル44を保持する。
【0150】
従って、各端末装置1〜7の無線モジュール40は、有線モジュール20から有線フレームWIRF1を受信すると、有線フレームWIRF1に含まれる送信先の端末装置を構成する有線モジュール20のMACアドレスに対応する無線モジュール40のMACアドレスを容易に抽出できる。その結果、各端末装置1〜7の無線モジュール40は、有線フレームWIRF1を無線フレームRFF1に容易に変換できる。
【0151】
なお、上述したように、有線フレームWIRFを無線フレームRFFに変換して送信するのは、有線フレームWIRFが1つの端末装置を宛先とする場合であり、有線フレームWIRFがブロードキャストアドレスまたはマルチキャストアドレスを含む場合、送信元の端末装置の無線モジュール40は、有線モジュール20から受信した有線フレームWIRFをそのままブロードキャストまたはマルチキャストする。
【0152】
従って、ルーティングテーブル28を作成する際、各端末装置1〜7の有線モジュール20は、UpdateパケットUDP1,UDP2をフレーム本体12に格納し、かつ、送信先アドレス(DA)15にブロードキャストアドレスを格納した有線フレームWIRF2を作成して無線モジュール40へ送信し、無線モジュール40は、有線モジュール20から受信した有線フレームWIRF2の送信先アドレス(DA)15にブロードキャストアドレスが格納されていることを検出して有線フレームWIRF2をブロードキャストする。
【0153】
図11は、端末装置1〜7の経緯度λ,φおよび速度vを送信するときのデータのフォーマットを示す図である。データDAPVは、受信電力1〜12と、GPT1〜7とからなる。受信電力1〜12は、それぞれ、アレーアンテナ50のビームパターンをビームパターンBPM1〜BPM12に設定して送信された電波をオムニビームパターンBPM0で受信したときの受信信号強度からなる。
【0154】
GPT1〜7の各々は、後述するように、端末装置1〜7の経緯度λ,φおよび速度vを含む。
【0155】
図12は、図11に示すGPT1のフォーマットを示す図である。GPT1は、情報有効/無効と、端末MACアドレスと、端末IPアドレスと、GPSデータとからなる。情報有効/無効は、“0”または“1”からなる。“0”は、GPT1が無効であることを表し、“1”は、GPT1が有効であることを表す。
【0156】
端末MACアドレスは、6バイトのデータ長を有し、経緯度λ,φおよび速度vが測定された端末装置のMACアドレスからなる。端末IPアドレスは、4バイトのデータ長を有し、経緯度λ,φおよび速度vが測定された端末装置のIPアドレスからなる。そして、例えば、IPアドレスが「192.168.0.1」である場合、IPアドレスには、「+06=0xC0,+07=0xA8,+08=0x00,+09=0x01」が格納される。
【0157】
GPSデータは、52バイトのデータ長を有し、後述するように、端末装置1〜7の経緯度λ,φおよび速度vを含む。
【0158】
なお、図11に示すGPT2〜GPT7の各々も、図12に示すGPT1の構成と同じ構成からなる。
【0159】
図13は、図12に示すGPSデータの構成を示す図である。GPSデータは、GPS取得時、受信ステータス、生緯度(度)、生緯度(分)、生緯度(秒)、北緯/南緯を示すキャラクタ、経度(度)、経度(分)、経度(秒)、東経/西経を示すキャラクタ、速度、真方位および前後Gセンサからなる。
【0160】
GPS取得時は、GPSデータを取得した時刻を表し、YYYY/MM/DD/HH/MM/SSからなる。受信ステータスは、測位中を表す“A”からなる。
【0161】
生緯度(度)、生緯度(分)および生緯度(秒)は、それぞれ、測位された緯度φの度数成分、分数成分および秒数成分からなる。北緯/南緯を示すキャラクタは、北緯を表す“N”または南緯を表す“S”からなる。
【0162】
経度(度)、経度(分)および経度(秒)は、測位された経度λの度数成分、分数成分および秒数成分からなる。東経/西経を示すキャラクタは、東経を表す“E”または西経を表す“W”からなる。
【0163】
速さは、端末装置1〜7の各速さからなり、0〜999.9ノットの範囲の数値が格納される。真方位は、端末装置1〜7の移動方向からなり、0〜359.9度の範囲の数値が格納される。そして、速さおよび真方位は、上述した速度vを構成する。前後Gセンサは、0.000G〜4.000Gの範囲で検出値+2.000Gからなる。
【0164】
各端末装置1〜7の経緯度λ,φおよび速度vは、端末装置1〜7のMACアドレスおよびIPアドレスに対応付けられてGPT1〜GPT7のGPSデータに格納される。そして、GPT1〜GPT7は、受信電力1〜12とともにデータDAPVに格納される。
【0165】
このデータDAPVは、図8に示す有線フレームWIRFのフレーム本体12に格納されて各端末装置1〜7へ送信される。
【0166】
次に、方位角の測定手順について説明する。図14は、方位角を測定する手順を示す説明図である。なお、図14においては、図1に示す端末装置1を基準とし、例えば、端末装置2,4,5の方位角を測定する場合について説明する。
【0167】
最初に、端末装置1の方位角測定部423がCSMA/CS(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式により、キャリアセンスを行ないながら、第1のセットアップ信号をオムニパターンで端末装置2,4,5へ送信することにより、方位角の測定処理の開始を通知する。
【0168】
次に、端末装置2,4,5の方位角測定部423は、それぞれ、第1のセットアップ信号を受信する。その後、端末装置1の方位角測定部423は、0度から330度までの30度毎のビームパターンBPM1〜BPM12で12個の第1の要求信号(以下、「RQ1信号」と言う。)を送信する。端末装置2,4,5の方位角測定部423は、端末装置1から送信された12個のRQ1信号をオムニパターンで受信して受信信号強度RSSI1〜RSSI12を検出し、その検出した受信信号強度RSSI1〜RSSI12を有線インターフェース46およびイーサネット(登録商標)30を介してルーティングデーモン32へ送信する。
【0169】
図15は、RQ1信号に対する応答を送信する際のデータを示す概略図である。端末装置2のルーティングデーモン32は、無線インターフェースモジュール42の方位角測定部423から受信信号強度RSSI1_2〜RSSI12_2を受信すると、受信信号強度RSSI1_2〜RSSI12_2をそれぞれ受信電力1〜12としてデータDAPV_2に格納し、無線インターフェースモジュール42のGPS部422から受けた経緯度λ_2,φ_2および速度v_2をGPT1に格納してデータDAPV_2を作成する(図15の(a)参照)。このように、端末装置2のルーティングデーモン32は、端末装置2の経緯度λ_2,φ_2および速度v_2をGPT1に格納する。つまり、GPT1は、自己の経緯度λ_2,φ_2および速度v_2が格納される。
【0170】
そして、端末装置2のルーティングデーモン32は、データDAPV_2をIPモジュール27へ送信する。IPモジュール27は、ルーティングデーモン32からのデータDAPV_2をフレーム本体12に格納し、FCS11、Data Type13、送信元アドレス14および送信先アドレス15を付加して有線フレームWIRF_2を作成する。
【0171】
そして、端末装置2のIPモジュール27は、その作成した有線フレームWIRF_2を無線モジュール40へ送信し、端末装置2の無線モジュール40は、有線フレームWIRF_2を上述した方法によって無線フレームRFF_2に変換して端末装置1へ送信する。
【0172】
また、端末装置4のルーティングデーモン32は、端末装置2のルーティングデーモン32と同じ方法によってデータDAPV_4を作成し(図15の(b)参照)、その作成したデータDAPV_4をIPモジュール27へ送信する。そして、端末装置4のIPモジュール27は、端末装置2のIPモジュール27と同じ方法によってデータDAPV_4を含む有線フレームWIRF_4を作成して無線モジュール40へ送信し、端末装置4の無線モジュール40は、有線フレームWIRF_4を上述した方法によって無線フレームRFF_4に変換して端末装置1へ送信する。
【0173】
更に、端末装置5のルーティングデーモン32は、端末装置2のルーティングデーモン32と同じ方法によってデータDAPV_5を作成し(図15の(c)参照)、その作成したデータDAPV_5をIPモジュール27へ送信する。そして、端末装置5のIPモジュール27は、端末装置2のIPモジュール27と同じ方法によってデータDAPV_5を含む有線フレームWIRF_5を作成して無線モジュール40へ送信し、端末装置5の無線モジュール40は、有線フレームWIRF_5を上述した方法によって無線フレームRFF_5に変換して端末装置1へ送信する。
【0174】
これによって、RQ1信号に対する返信信号であるRE信号が端末装置2,4,5から端末装置1へ送信される(図14参照)。
【0175】
端末装置1の無線モジュール40は、無線フレームRFF_2,RFF_4,RFF_5をそれぞれ端末装置2,4,5から受信し、その受信した無線フレームRFF_2,RFF_4,RFF_5からそれぞれ有線フレームWIRF_2,WIRF_4,WIRF_5を抽出して有線モジュール20のルーティングデーモン32へ送信する。
【0176】
そして、端末装置1のルーティングデーモン32は、有線フレームWIRF_2,WIRF_4,WIRF_5を無線モジュール40から受け、有線フレームWIRF_2,WIRF_4,WIRF_5からそれぞれデータDAPV_2,DAPV_4,DAPV_5を抽出する。
【0177】
その後、端末装置1のルーティングデーモン32は、データDAPV_2から受信信号強度RSSI1_2〜RSSI12_2、経緯度λ_2,φ_2および速度v_2を検出し、その検出した経緯度λ_2,φ_2および速度v_2を記憶する。そして、端末装置1のルーティングデーモン32は、受信信号強度RSSI1_2〜RSSI12_2から最大の受信信号強度(受信信号強度RSSI1_2〜RSSI12_2のいずれか)を検出し、その検出した最大の受信信号強度が得られたときのビームパターン(ビームパターンBPM1〜BPM12のいずれか)の方向を端末装置1に対する端末装置2の存在方向を示す方位角θ1−2として決定する。
【0178】
端末装置1のルーティングデーモン32は、同様にして、データDAPV_4,DAPV_5に基づいて、経緯度λ_4,φ_4;λ_5,φ_5および速度v_4,v_5を記憶するとともに、端末装置1に対する端末装置4,5の存在方向を示す方位角θ1−4,θ1−5を決定する。
【0179】
これによって、方位角を測定する手順が終了する。
【0180】
端末装置2が自己の回りに存在する端末装置1,3,4,5との間で上述した方位角を測定する手順を実行する場合、端末装置1の方位角測定部423は、端末装置2のアレーアンテナ50のビームパターンをビームパターンBPM1〜BPM12に順次切換えながら端末装置2から送信されたRQ1信号の受信信号強度RSSI1_1〜RSSI12_1を検出し、その検出した受信信号強度RSSI1_1〜RSSI12_1を有線インターフェース46およびイーサネット(登録商標)30を介してルーティングデーモン32へ送信する。
【0181】
図16は、RQ1信号に対する応答を送信する際の他のデータを示す概略図である。端末装置1のルーティングデーモン32は、無線インターフェースモジュール42の方位角測定部423から受信信号強度RSSI1_1〜RSSI12_1を受信すると、受信信号強度RSSI1_1〜RSSI12_1をそれぞれ受信電力1〜12としてデータDAPV_1に格納し、無線インターフェースモジュール42のGPS部422から受けた経緯度λ_1,φ_1および速度v_1をGPT1に格納し、記憶しておいた経緯度λ_2,φ_2および速度v_2と、経緯度λ_4,φ_4および速度v_4と、経緯度λ_5,φ_5および速度v_5とをそれぞれGPT2,GPT3,GPT4に格納してデータDAPV_1を作成する(図16参照)。
【0182】
そして、端末装置1のルーティングデーモン32は、データDAPV_1をIPモジュール27へ送信する。端末装置1のIPモジュール27は、ルーティングデーモン32からのデータDAPV_1をフレーム本体12に格納し、FCS11、Data Type13、送信元アドレス14および送信先アドレス15を付加して有線フレームWIRF_1を作成する。
【0183】
そして、端末装置1のIPモジュール27は、その作成した有線フレームWIRF_1を無線モジュール40へ送信し、端末装置1の無線モジュール40は、有線フレームWIRF_1を上述した方法によって無線フレームRFF_1に変換して端末装置2へ送信する。
【0184】
端末装置3〜5も、RQ1信号に対する応答である無線フレームRFF_3〜RFF_5をそれぞれ作成して端末装置2へ送信する。
【0185】
上述したように、端末装置1は、自己が周囲の端末装置2,4,5に方位角の測定要求(RQ1信号)を送信して端末装置2,4,5が存在する方位角を測定した後、端末装置2からの方位角の測定要求に応じて、ビームパターンBPM1〜BPM12によって送信された12個のRQ1信号の受信信号強度RSSI1_1〜RSSI12_1を端末装置2へ送信する際に、端末装置1において測位された経緯度λ_1,φ_1および速度v_1と、既に保持している他の端末装置2,4,5の経緯度λ_2,φ_2;λ_4,φ_4;λ_5,φ_5および速度v_2;v_4;v_5とを受信信号強度RSSI1_1〜RSSI12_1に追加して作成したデータDAPV_1を端末装置2へ送信する。
【0186】
これによって、端末装置2は、端末装置1の経緯度λ_1,φ_1および速度v_1だけではなく、端末装置4,5の経緯度λ_4,φ_4;λ_5,φ_5および速度v_4;v_5を取得できる。
【0187】
このように、端末装置1が端末装置2へ送信するデータDAPV_1は、端末装置1の経緯度λ_1,φ_1および速度v_1と、端末装置1以外の端末装置2,4,5の経緯度λ_2,φ_2;λ_4,φ_4;λ_5,φ_5および速度v_2;v_4;v_5とからなる。
【0188】
従って、端末装置1は、自己が検出した経緯度λ_1,φ_1および速度v_1と、他の端末装置2,4,5によって検出され、かつ、自己へ送信された経緯度λ_2,φ_2;λ_4,φ_4;λ_5,φ_5および速度v_2;v_4;v_5とを端末装置2へ送信する。
【0189】
端末装置2が自己の回りに存在する端末装置1,3,4,5との間で上述した方位角を測定する手順を実行した後に、端末装置3が自己の回りに存在する端末装置2,5,6との間で上述した方位角を測定する手順を実行する場合、端末装置2は、端末装置3のアレーアンテナ50のビームパターンをビームパターンBPM1〜BPM12に順次切換えながら端末装置3から送信されたRQ1信号の受信信号強度RSSI1_2’〜RSSI12_2’を検出するとともに、自己の経緯度λ_2’,φ_2’および速度v_2’を検出する。
【0190】
そして、端末装置2は、受信信号強度RSSI1_2’〜RSSI12_2’を受信電力1〜12として含み、自己が検出した経緯度λ_2’ ,φ_2’および速度v_2’をGPT1に格納し、更に、端末装置1から受信した経緯度λ_1,φ_1および速度v_1と、経緯度λ_4,φ_4および速度v_4と、経緯度λ_5,φ_5および速度v_5とをそれぞれGPT2,GPT3,GPT4に格納したデータDAPV_2’を作成する。
【0191】
そうすると、端末装置2は、データDAPV_2’をフレーム本体12に格納して有線フレームWIRF_2’を作成し、その作成した有線フレームWIRF_2’を無線フレームRFF_2’に変換して端末装置3へ送信する。
【0192】
従って、端末装置2は、自己が検出した経緯度λ_2’ ,φ_2’および速度v_2’と、端末装置1によって検出された経緯度λ_1,φ_1および速度v_1と、端末装置1以外の端末装置4,5によって検出され、かつ、端末装置1へ送信された経緯度λ_4,φ_4;λ_5,φ_5および速度v_4;v_5とを端末装置3へ送信する。
【0193】
この場合、経緯度λ_2’ ,φ_2’は、「第1の位置情報」を構成し、速度v_2’は、「第1の動的特性」を構成し、経緯度λ_1,φ_1;λ_4,φ_4;λ_5,φ_5は、「第2の位置情報」を構成し、速度v_1,v_4,v_5は、「第2の動的特性」を構成する。
【0194】
また、経緯度λ_1,φ_1は、「第3の位置情報」を構成し、速度v_1は、「第3の動的特性」を構成し、経緯度λ_4,φ_4;λ_5,φ_5は、「第4の位置情報」を構成し、速度v_4,v_5は、「第4の動的特性」を構成する。
【0195】
なお、端末装置2が端末装置3へデータDAPV_2’を送信する場合、経緯度λ_1,φ_1;λ_4,φ_4;λ_5,φ_5と、速度v_1,v_4,v_5とを周囲の端末装置1,4,5から受信していなければ、自己が検出した受信信号強度RSSI1_2’〜RSSI12_2’、経緯度λ_2’ ,φ_2’および速度v_2’を端末装置3へ送信すればよい。上記の説明においては、端末装置2が端末装置3へ受信信号強度RSSI1_2’〜RSSI12_2’を送信する際に、端末装置1から経緯度λ_1,φ_1;λ_4,φ_4;λ_5,φ_5および速度v_1,v_4,v_5を受信していたので、受信信号強度RSSI1_2’〜RSSI12_2’とともに経緯度λ_1,φ_1;λ_4,φ_4;λ_5,φ_5および速度v_1,v_4,v_5を端末装置3へ送信することにしたものである。
【0196】
上記の説明から明らかなように、上述した方位角の測定を無線通信ネットワーク10内で繰り返し行なうことによって、端末装置1〜7の各々は、無線通信ネットワーク10を構成する端末装置1〜7の全体の経緯度λ_1〜λ_7,φ_1〜φ_7および速度v_1〜v_7を取得できる。
【0197】
そして、端末装置1〜7の各々において、ルーティングデーモン32は、取得した経緯度λ_1〜λ_7,φ_1〜φ_7を式(1)に代入して端末装置1〜7の位置[x1,y1]〜[x7,y7]を求める。その結果、端末装置1〜7の各々は、無線通信ネットワーク10を構成する端末装置1〜7の全ての位置[x1,y1]〜[x7,y7]および速度v_1〜v_7を取得できる。
【0198】
図17は、端末情報テーブルTIFの構成図である。端末情報テーブルTIFは、端末装置1〜7の位置、速さおよび方向を端末装置1〜7に対応付けた構成からなる。
【0199】
図17に示す例では、端末装置1〜7は、それぞれ、位置[x1,y1]〜[x7,y7]に存在する。そして、端末装置1,2,5は、停止しているため、端末装置1,2,5に対応する速さおよび方向の欄には、“―――”が格納される。従って、この発明においては、速度は、端末装置1〜7が動いている場合と、端末装置1〜7が停止している場合との両方を含む概念である。
【0200】
また、端末装置3,4,6,7に対応する速さの欄には、それぞれ、速さv3,v4,v6,v7が格納され、端末装置3,4,6,7に対応する方向の欄には、それぞれ、図17に示す矢印が格納される。そして、端末情報テーブルTIFの速さおよび方向は、速度v_1〜v_7に基づいて決定されたものである。
【0201】
なお、図17に示す矢印は、GPSデータ(図13参照)に格納された真方位(単位:度)によって示される方向を端末装置3,4,6,7の位置[x3,y3],[x4,y4],[x6,y6],[x7,y7]を起点として表したものである。従って、端末装置3,4,6,7のルーティングデーモン32は、端末装置3,4,6,7の位置[x3,y3],[x4,y4],[x6,y6],[x7,y7]と、端末装置3,4,6,7が移動している方向である真方位とを抽出すれば、端末装置3,4,6,7の位置[x3,y3],[x4,y4],[x6,y6],[x7,y7]を起点として端末装置3,4,6,7の移動方向を示す矢印(図17に示す矢印)を求めることができる。
【0202】
上述したように、真方位は、0〜359.9度の範囲の値が格納されるため、x−y座標におけるx軸の正の方向を0度と定義しておけば、端末装置3,4,6,7のルーティングデーモン32は、端末装置3,4,6,7の真方位を示す矢印(図17に示す矢印)を端末装置3,4,6,7の位置[x3,y3],[x4,y4],[x6,y6],[x7,y7]を起点として求めることができる。
【0203】
従って、端末装置1〜7の各々において、ルーティングデーモン32は、取得した端末装置1〜7の位置[x1,y1]〜[x7,y7]および速度v_1〜v_7に基づいて、端末情報テーブルTIFを作成する。
【0204】
なお、端末装置1,2,5が移動している場合、端末装置1,2,5のルーティングデーモン32は、端末装置3,4,6,7のルーティングデーモン32と同じ方法によって、真方位を示す矢印を求める。
【0205】
図18は、ルーティングデーモン32が作成する地図の概念図である。端末装置1〜7の各々において、ルーティングデーモン32は、端末情報テーブルTIFを作成すると、メモリ23から地図データを読み出し、端末情報テーブルTIFに格納された端末装置1〜7の位置[x1,y1]〜[x7,y7]および速さv3,v4,v6,v7および方向(図17に示す矢印)を、その読み出した地図データに記載して地図MAP1を作成する。この場合、ルーティングデーモン32は、速さv3,v4,v6,v7を数値によって地図MAP1上に記載する。また、地図データは、x−y座標によって各位置を指定できるようになっているので、ルーティングデーモン32は、端末装置1〜7の位置[x1,y1]〜[x7,y7]を地図データ上に記載できる。更に、端末情報テーブルTIF中の端末装置1〜7の方向(図17に示す矢印)は、上述したように、GPSデータ(図13参照)中の真方位(単位:度)をx−y座標上に表したときの端末装置3,4,6,7の移動方向を示すので、端末情報テーブルTIF中の矢印を抽出すれば、端末装置1〜7の移動方向(図17に示す矢印)を端末装置1〜7の位置[x1,y1]〜[x7,y7]を起点として地図データ上に記載できる。
【0206】
そして、端末装置1〜7の各々において、ルーティングデーモン32は、その作成した地図MAP1を電子メールアプリケーション24を介して表示部22へ出力する。
【0207】
図19は、図1に示す表示部22に地図MAP1を表示した状態を示す図である。端末装置1〜7の各々において、表示部22は、電子メールアプリケーション24を介して地図MAP1を受けると、その受けた地図MAP1を表示する。
【0208】
端末装置1〜7のユーザは、端末装置1〜7の表示部22に表示された地図MAP1を見て、無線通信ネットワーク10を構成する端末装置1〜7の配置位置および速度を即座に把握できる。
【0209】
図20は、ルーティングデーモン32が作成する地図の他の概念図である。無線通信ネットワーク10において、送信元である端末装置1は、送信先である端末装置7と無線通信を行なう場合、上述したルーティングテーブル28を検索して端末装置7までの経路を決定する。
【0210】
端末装置1のルーティングテーブル28(図5参照)は、送信先である端末装置7に対して、端末装置2をNextHop端末とする経路と、端末装置5をNextHop端末とする経路とを格納する。
【0211】
そして、端末装置2をNextHop端末とする経路は、送信先である端末装置7までのメトリックが“5”であり、端末装置5をNextHop端末とする経路は、送信先である端末装置7までのメトリックが“16”であるので、送信元である端末装置1のIPモジュール27は、メトリックがより小さい経路(=端末装置2をNextHop端末とする経路)を送信先(=端末装置7)までの経路として決定する。
【0212】
送信元である端末装置1において、送信先(=端末装置7)までの経路が決定されると、端末装置1は、送信先(=端末装置7)と無線通信を行なうことを知らせる信号を、決定した経路を介して送信先(=端末装置7)へ送信し、送信先(=端末装置7)から了解を取得する。従って、端末装置1は、この過程において、決定した経路が端末装置1−端末装置2−端末装置3−端末装置6−端末装置7からなることを検知する。
【0213】
そうすると、端末装置1のIPモジュール27は、その決定した経路の経路情報(=端末装置1−端末装置2−端末装置3−端末装置6−端末装置7)をルーティングデーモン32へ送信する。そして、端末装置1のルーティングデーモン32は、IPモジュール27からの経路情報を受け、その受けた経路情報に基づいて、端末装置2をNextHop端末とする経路RT(=端末装置1−端末装置2−端末装置3−端末装置6−端末装置7)を地図MAP1上に追記して地図MAP2を作成する(図20参照)。
【0214】
そして、送信元である端末装置1のルーティングデーモン32は、その作成した地図MAP2を電子メールアプリケーション24を介して表示部22へ出力する。
【0215】
図21は、図1に示す表示部22に地図MAP1を表示した状態を示す他の図である。送信元である端末装置1の表示部22は、電子メールアプリケーション24を介して地図MAP2を受けると、その受けた地図MAP2を表示する(図21参照)。
【0216】
端末装置1のユーザは、端末装置1の表示部22に表示された地図MAP2を見て、無線通信ネットワーク10において、送信元である端末装置1が経路RTを介して端末装置7と無線通信を行なっていることを視認できる。
【0217】
このように、無線通信ネットワーク10において、送信元である端末装置1は、送信先までの経路RTを決定すると、その決定した経路RTを記載した地図MAP2を表示部22に表示する機能を有する。
【0218】
上述したように、この発明においては、無線通信ネットワーク10を構成する端末装置1〜7の各々は、自己の経緯度λ,φおよび速度vを検出するとともに、自己の周囲に存在する端末装置との間で方位角の測定を行なう際に、自己が検出した経緯度λ,φおよび速度vおよび/または他の端末装置が検出した経緯度λ,φおよび速度vを方位角の測定要求を送信した端末装置へ送信する。そして、端末装置1〜7の各々は、この方位角の測定を繰り返すことによって無線通信ネットワーク10内の全ての端末装置1〜7の経緯度λ,φおよび速度vを取得する。
【0219】
また、端末装置1〜7の各々は、取得した経緯度λ,φに基づいて、端末装置1〜7の各々の位置PSを求め、その求めた位置PSおよび速度vを記載した地図MAP1を作成して表示する。
【0220】
更に、端末装置1〜7の各々は、自己が送信元であり、送信先までの経路を決定すると、その経路を記載した地図MAP2を作成して表示する。
【0221】
従って、この発明によれば、端末装置1〜7の各々は、無線通信ネットワーク10を構成する全ての端末装置1〜7の位置PSおよび速度vを把握できる。また、この発明によって、端末装置1〜7のユーザは、無線通信ネットワーク10を構成する全ての端末装置1〜7の位置PSおよび動きを視認できる。更に、この発明によれば、送信元の端末装置のユーザは、送信先までの無線通信が行なわれている経路を視認できる。
【0222】
上記においては、方位角の測定を要求するRQ1信号を受信した端末装置は、RQ1信号の受信信号強度RSSIを検出し、RQ1信号を送信した端末装置へ受信信号強度RSSIを送信すると説明したが、この発明においては、これに限らず、方位角の測定を要求するRQ1信号を受信した端末装置は、受信信号強度RSSIに代えて信号対干渉雑音電力比(SINR;Signal to Inference and Noise Ratio)を検出してもよい。
【0223】
この場合、方位角の測定を要求するRQ1信号を受信した端末装置は、RQ1信号を受信して復調した際のRQ1信号の受信信号強度RSSIと、エラーレートBER(Bit Error Rate)とを検出し、受信信号強度RSSIをエラーレートBERで除算することによって信号対干渉雑音電力比を求める。そして、信号対干渉雑音電力比は、「受信特性」を構成する。
【0224】
また、上記においては、方位角の測定手順に従って、各端末装置1〜7が検出した経緯度および速度を端末装置1〜7の全体へ送信すると説明したが、この発明においては、方位角の測定手順以外の手順に従って、各端末装置1〜7が検出した経緯度および速度を端末装置1〜7の全体へ送信するようにしてもよい。
【0225】
更に、上記においては、ルーティングプロトコルとしてFSRプロトコルを用いると説明したが、この発明においては、これに限らず、AODVプロトコル等を用いてもよく、AODVプロトコル以外のテーブル駆動型のルーティングプロトコルを用いてもよい。更に、オンデマンド型のルーティングプロトコルを用いてもよい。
【0226】
なお、この発明においては、GPS部422は、「検出手段」を構成する。また、データDAPV_1,DAPV_2,DAPV_2’,DAPV_4,DAPV_5を受信するルーティングデーモン32は、「受信手段」を構成する。更に、データDAPV_1,DAPV_2,DAPV_2’,DAPV_4,DAPV_5を作成して送信するルーティングデーモン32は、「送信手段」を構成する。
【0227】
更に、地図MAP1,MAP2を作成するルーティングデーモン32は、「地図作成手段」を構成する。更に、端末装置1,4,5,3は、「第1の端末装置」を構成し、端末装置6,7は、「第2の端末装置」を構成する。更に、方位角測定部423は、「受信特性検出手段」を構成する。
【0228】
更に、受信信号強度RSSI1_1〜RSSI12_1は、「第1の受信特性」を構成し、受信信号強度RSSI1_2’〜RSSI12_2’は、「第2の受信特性」を構成する。更に、速度vは、「動的特性」を構成する。
【0229】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0230】
この発明は、自律的に確立される無線通信ネットワークを構成する複数の端末装置の全ての位置を把握可能な端末装置に適用される。また、この発明は、自律的に確立される無線通信ネットワークを構成する複数の端末装置の全ての動きを把握可能な端末装置に適用される。更に、この発明は、自律的に確立される無線通信ネットワークを構成する複数の端末装置の全ての位置を把握可能な端末装置を備えた無線通信ネットワークに適用される。更に、この発明は、自律的に確立される無線通信ネットワークを構成する複数の端末装置の全ての動きを把握可能な端末装置を備えた無線通信ネットワークに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1】この発明の実施の形態による無線通信ネットワークの概略図である。
【図2】図1に示す端末装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】図2に示すアレーアンテナのx−y平面における平面図である。
【図4】図2に示す無線インターフェースモジュールの構成を示す概略図である。
【図5】図2に示すルーティングテーブルの例を示す図である。
【図6】図5に示すルーティングテーブルの作成方法を説明するための図である。
【図7】図2に示すアドレス変換テーブルの例を示す図である。
【図8】有線フレームの構成図である。
【図9】無線フレームの構成図である。
【図10】有線フレームと無線フレームとの間の変換を示す概念図である。
【図11】端末装置の経緯度および速度を送信するときのデータのフォーマットを示す図である。
【図12】図11に示すGPTのフォーマットを示す図である。
【図13】図12に示すGPSデータの構成を示す図である。
【図14】方位角を測定する手順を示す説明図である。
【図15】RQ1信号に対する応答を送信する際のデータを示す概略図である。
【図16】RQ1信号に対する応答を送信する際の他のデータを示す概略図である。
【図17】端末情報テーブルの構成図である。
【図18】ルーティングデーモンが作成する地図の概念図である。
【図19】図1に示す表示部に地図を表示した状態を示す図である。
【図20】ルーティングデーモンが作成する地図の他の概念図である。
【図21】図1に示す表示部に地図を表示した状態を示す他の図である。
【符号の説明】
【0232】
1〜7 端末装置、10 無線通信ネットワーク、11,11A FCS、12,12A フレーム本体、13 データタイプ、13A PAD、14 送信元アドレス、14A 802.2SNAP、15 送信先アドレス、15A 802.2LLC、16A IEEE802.11 MACヘッダ、20 有線モジュール、21 入力部、22 表示部、23 メモリ、24 電子メールアプリケーション、25 通信制御部、26,46 有線インターフェース、27 IPモジュール、28 ルーティングテーブル、29 TCPモジュール、30 イーサネット(登録商標)、31 UDPモジュール、32 ルーティングデーモン、33 SMTPモジュール、40 無線モジュール、41 アンテナ制御モジュール、42 無線インターフェースモジュール、43 MACモジュール、44 アドレス変換テーブル、45 LLCモジュール、50 アレーアンテナ、51〜57 アンテナ素子、61〜66 バラクタダイオード、100,160 建物、110 交差点、120 空き地、130,140,150 道路、421 通信部、422 GPS部、423 方位角測定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的に確立され、送信元と送信先との間で無線通信が行なわれる無線通信ネットワークを構成する端末装置であって、
当該端末装置の位置を示す第1の位置情報と、当該端末装置の動きを示す第1の動的特性とを検出する検出手段と、
前記無線通信ネットワークを構成し、かつ、当該端末装置以外の全ての端末装置からなる他の端末装置の位置を示す第2の位置情報と、前記他の端末装置の動きを示す第2の動的特性とを受信する受信手段と、
前記第1および第2の位置情報と、前記第1および第2の動的特性とに基づいて、当該端末装置および前記他の端末装置の位置および動きを記載した地図を作成する地図作成手段と、
前記作成された地図を表示する表示手段とを備える端末装置。
【請求項2】
前記他の端末装置は、
当該端末装置に隣接する第1の端末装置と、
当該端末装置に対して前記第1の端末装置よりも遠い位置に存在する第2の端末装置とを含み、
前記受信手段は、当該端末装置から前記第1の端末装置へ送信された信号の前記第1の端末装置における第1の受信特性を前記第1の端末装置が当該端末装置へ送信する際に、前記第1の受信特性とともに前記第2の位置情報および前記第2の動的特性を前記第1の端末装置から受信し、
前記地図作成手段は、前記受信手段によって受信された前記第2の位置情報および前記第2の動的特性を用いて前記地図を作成する、請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記第1の端末装置から当該端末装置へ送信された信号の当該端末装置における第2の受信特性を検出する受信特性検出手段と、
前記検出された第2の受信特性とともに、前記第1の位置情報および前記第1の動的特性を前記第1の端末装置へ送信する送信手段とを更に備える、請求項2に記載の端末装置。
【請求項4】
前記送信手段は、当該端末装置が前記第2の位置情報および前記第2の動的特性を取得していれば、前記第1の位置情報および前記第1の動的特性に前記第2の位置情報および前記第2の動的特性を追加して前記第1の端末装置へ送信する、請求項3に記載の端末装置。
【請求項5】
前記第2の位置情報は、
前記第1の端末装置によって検出された前記第1の端末装置の位置を示す第3の位置情報と、
前記第2の端末装置によって検出され、かつ、前記第1の端末装置へ送信された前記第2の端末装置の位置を示す第4の位置情報とを含み、
前記第2の動的特性は、
前記第1の端末装置によって検出された前記第1の端末装置の動きを示す第3の動的特性と、
前記第2の端末装置によって検出され、かつ、前記第1の端末装置へ送信された前記第2の端末装置の動きを示す第4の動的特性とを含み、
前記受信手段は、前記第1の受信特性とともに、前記第3および第4の位置情報と、前記第3および第4の動的特性とを前記第1の端末装置から受信する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の端末装置。
【請求項6】
前記第1および第2の受信特性の各々は、受信信号強度からなる、請求項5に記載の端末装置。
【請求項7】
前記動的特性は、速度からなり、
前記地図作成手段は、当該端末装置および前記他の端末装置の位置および速度を記載した地図を作成する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の端末装置。
【請求項8】
前記地図作成手段は、当該端末装置および前記他の端末装置の位置と、当該端末装置および前記他の端末装置の移動方向と、当該端末装置および前記他の端末装置の速さとを記載した地図を作成する、請求項7に記載の端末装置。
【請求項9】
前記地図作成手段は、前記移動方向を矢印によって表し、前記速さを数字によって記載する、請求項8に記載の端末装置。
【請求項10】
前記地図作成手段は、当該端末装置が前記送信元である場合、前記送信先までの経路が決定されると、前記決定された経路を追記した地図を作成し、
前記表示手段は、前記経路が追記された地図を表示する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の端末装置。
【請求項11】
自律的に確立され、送信元と送信先との間で無線通信が行なわれる無線通信ネットワークであって、
複数の端末装置を備え、
前記複数の端末装置の各々は、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の端末装置からなる、無線通信ネットワーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−134846(P2007−134846A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324299(P2005−324299)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人情報通信研究機構、研究テーマ「ユビキタスITSの研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】