説明

競走馬計時システム

【課題】競走馬の走行時間の算出を失敗する虞が少ない競走馬計時システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る競走馬計時システム1は、競走馬Hに取り付けられて識別子を示すバーコード2と、ゲートGに取り付けられてバーコード2を読み取るバーコードリーダ3と、制御部4とを備え、制御部4は、識別子がいずれかのゲートGにおいて検出されていないと判断したとき、その競走馬Hが識別子を検出されなかったゲートGを通過した時刻範囲を推定し、推定された時刻範囲に該ゲートGを通過した全ての競走馬Hの識別子から該ゲートG以外のゲートGにおいても検出されている識別子を除外し、識別子が一つだけ残ったときにその識別子における該ゲートGでの通過時刻を識別子が検出されていないと判断された競走馬の該ゲートGにおける通過時刻とし、走行時間を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、競走馬の調教時の走行時間を算出する競走馬計時システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、競走馬の調教時における走行時間の算出において、走行時間の算出の対象となる競走馬を他の競走馬と識別するための識別子を示すバーコードを競走馬に取り付け、走路の任意の位置に設けたバーコードリーダによってバーコードを読み取ることによって走行時間を算出する競走馬計時システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。競走馬には、調教場において通常1日に複数回の走行が行われる。
【0003】
バーコードは、該バーコードの読み取り方向が水平であって競走馬の進行方向と垂直になるように競走馬の背の後部に上向きに取り付けられる。バーコードリーダは、走路のスタート位置、ゴール位置、及びスタート位置とゴール位置との間の各ハロンにおいて、走路に沿って設けられたゲートに取り付けられ、バーコードに照射するレーザビーム光を水平であって走路の長手方向と垂直になる方向に走査し、レーザビーム光のバーコードからの反射光を検出することによりバーコードを読み取る。読み取られたバーコードから各ゲートを通過した競走馬の識別子と通過時刻とが検出され、それぞれの競走馬の任意のゲート間の走行時間が、検出された識別子と通過時刻に基づいて算出される。
【0004】
このような競走馬計時システムにおいては、レーザビーム光の走査方向が走路の長手方向と垂直であり、レーザビーム光の指向性が強く、且つレーザビーム光の幅を細く設定しているため、バーコードを読み取ることができる位置の範囲が走路の長手方向には狭くなり、通過時刻ひいては走行時間を精度良く算出することができる。
【0005】
しかしながら、バーコードの表面の疵や汚れ等によって、バーコードが正確に読み取れないことがある。また、バーコードリーダとバーコードとの間の空気中の雨粒や霧等の障害物によってレーザビーム光が減衰し、バーコードが正確に読み取れないことがある。このように、バーコードが正確に読み取れずに通過した競走馬の識別子を誤って検出すると、そのバーコードを読み取った位置のゲートにおける通過時刻が不明となり、走行時間の算出を失敗することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−248290
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、斯かる従来技術の問題を解決するためになされたものであり、競走馬の走行時間の算出を失敗する虞が少ない競走馬計時システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、競走馬に取り付けられ当該競走馬と他の競走馬とを識別するための識別子を示すバーコードと、競走馬の走路の長手方向に沿って所定の間隔で設けられたゲートに取り付けられて前記バーコードを読み取るバーコードリーダと、前記バーコードリーダの動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記各ゲートを通過する競走馬に取り付けられた前記バーコードを前記バーコードリーダに読み取らせることにより各ゲートを通過する競走馬の識別子と通過時刻とを検出し、それぞれの競走馬の任意のゲート間の走行時間を前記識別子と通過時刻とに基づいて算出する競走馬計時システムにおいて、検出された前記識別子と通過時刻とを各ゲートに紐付けて記憶する記憶部を有し、前記制御部は、任意の競走馬が最終ゲートを通過した後に、該競走馬の識別子がいずれかのゲートにおいて検出されていないと判断したとき、該ゲートの走路前方又は後方に隣接したゲートにおける該競走馬の通過時刻から該競走馬が識別子を検出されなかったゲートを通過した時刻範囲を推定し、推定された時刻範囲に該ゲートを通過した全ての競走馬の識別子を前記記憶部から抽出し、抽出された識別子の内で同一の走行時に該ゲート以外のゲートにおいても検出されている識別子を除外し、除外されなかった識別子が一つだけ残ったときにその残った識別子における該ゲートでの通過時刻が該ゲートにおいて識別子が検出されていないと判断された競走馬の該ゲートにおける通過時刻とすることを特徴とする競走馬計時システムを提供する。
なお、本発明において、最終ゲートとは、走路の上流から下流にかけて設けられた複数のゲートの内で、最も下流に設けられたゲートであり所謂ゴール地点になるものである。
【0009】
本発明によれば、競走馬に取り付けられたバーコードが正確に読み取られずに識別子が誤って認識され、その競走馬の識別子が検出されていないと判断されたときに、そのバーコードを読み取った位置のゲートにおける通過時刻が不明とされるのでなく、そのゲートを通過した全ての競走馬の通過時刻のデータから、誤って認識された識別子が探し出され、その探し出された識別子における通過時刻が、識別子が検出されていないと判断された競走馬の通過時刻として修正される。これにより、競走馬の走行時間の算出を失敗する虞が少なくなる。
【0010】
好ましくは、本発明は、前記制御部は、前記の除外されずに一つだけ残った識別子が、識別子が検出されていないと判断された競走馬のバーコードが誤って読み取られたときに認識される可能性のある識別子と同一であるときに、その残った識別子における通過時刻を該ゲートにおいて識別子が検出されていないと判断された競走馬の該ゲートにおける通過時刻とする。
【0011】
斯かる好ましい構成によれば、除外されない識別子が一つだけ残ることだけで、その残った識別子における通過時刻が、該ゲートにおいて識別子が検出されていないと判断された競走馬の該ゲートにおける通過時刻として直ちに修正されるのでなく、一つだけ残った識別子が、識別子が検出されていないと判断された競走馬のバーコードが誤って読み取られたときに認識される可能性のある識別子と同一であるかが判断されてから通過時刻が修正される。これにより、通過時刻が誤って修正される虞が少なくなるので、算出された走行時間の信頼度が高くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、任意の競走馬がいずれかのゲートにおいて識別子が検出されなくても、そのゲートを通過した全ての競走馬の通過時刻のデータから、誤って認識された識別子が探し出され、その探し出された識別子における通過時刻が、識別子が検出されなかった競走馬の通過時刻として修正されるので、競走馬の走行時間の算出を失敗する虞が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る競走馬計時システムの構成図である。
【図2】図2は、同競走馬計時システムの一部の外観図である。
【図3】図3は、同競走馬計時システムにおけるバーコードの構成図である。
【図4】図4は、同競走馬計時システムにおける通過データの構成図である。
【図5】図5は、同競走馬計時システムにおける通過データを整理して示す図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施形態に係る競走馬計時システムにおいてバーコードが誤って読み取られたときに、識別子において誤認識された文字数毎の発生率を示す図である。
【図7】図7は、同競走馬計時システムにおいて、誤って読み取られたバーコードの状態の一例を示す図である。
【図8】図8は、同競走馬計時システムにおいて、誤って読み取られたバーコードの状態の他の例を示す図である。
【図9】図9は、同競走馬計時システムにおいて、誤って読み取られたバーコードの状態の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、添付図面1乃至図5を適宜参照しつつ、本発明の第1の実施形態に係る競走馬計時システムついて説明する。なお、図2においては、走路におけるゲートを全て示さずに1本のみを示している。競走馬計時システム1は、競走馬Hに取り付けられて当該競走馬と他の競走馬とを識別するための識別子を示すバーコード2と、バーコード2を読み取るバーコードリーダ3と、バーコードリーダ3の動作を制御する制御部4とを備えている。
【0015】
バーコード2は、バーコードラベル21に付され、バーコードラベル21は、バーコード2の読み取り方向が水平であって競走馬Hの進行方向と垂直になるように競走馬の背の後部に取り付けられている。
【0016】
バーコードリーダ3は、競走馬Hが走る走路Cのスタート位置、ゴール位置、及びスタート位置とゴール位置との間の各ハロンにおいて、走路Cに沿って設けられた各ゲートGに取り付けられている。ハロンとは200mの間隔で設けられた位置を意味し、スタート位置からゴール位置まで200m間隔にゲートGが設けられている。図1に示した例では、スタート位置からゴール位置までを800mとしてゲートGの数を5本としたが、スタート位置からゴール位置までの距離とゲートGの数とに制限はない。
【0017】
ゲートGは、走路Cの幅方向両側に建てられた柱と、両側の柱の上部を繋ぐ梁とを有しており、バーコードリーダ3は梁に下向きに取り付けられている。バーコードリーダ3は、例えば特許文献1に記載のバーコードリーダと同様の構成を有している。バーコードリーダ3は、バーコード2に照射するレーザビーム光Rを水平であって走路Cの長手方向と垂直になる方向に走査し、レーザビーム光Rのバーコード2からの反射光を検出することによりバーコード2を読み取り、バーコードリーダ3に接続されている制御部4に伝達する。
【0018】
制御部4は、タイマ(図示せず)を有しており、バーコードリーダ3からのデータに基づいて競走馬Hの識別子と通過時刻とを検出する。制御部4は、各ゲートGで検出した識別子と通過時刻等とを各ゲートGに紐付けて記憶する記憶部41を有しており、それぞれの競走馬Hの任意のゲートG間の走行時間を、各ゲートGで検出した競走馬Hの識別子と通過時刻とに基づいて算出する。制御部4は、算出した走行時間を出力画面やプリンタ等の出力部(図示せず)から出力する。レーザビーム光Rは、指向性が強く、バーコード2を読み取ることができる位置の範囲が走路Cの長手方向に狭いので、競走馬Hの通過時刻を精度良く検出することができる。
【0019】
バーコード2の表面の疵や汚れ等によって、バーコード2が正確に読み取れないことがある。また、バーコードリーダ3とバーコード2との間の空気中の雨粒や霧等の障害物によってレーザビーム光Rが減衰し、バーコード2が正確に読み取れないことがある。しかしながら、バーコード2の表面の疵や汚れ等やレーザビーム光Rの減衰が甚だしくて、バーコードリーダ3がバーコード2を全く読み取れない場合を除き、バーコードリーダ3はバーコード2からなんらかの識別子を検出する。
【0020】
なお、図1及び図2においてバーコードリーダ3をゲートG毎に1台ずつとしているが、バーコードリーダ3の台数は、バーコードリーダ3の検出範囲が走路Cの全幅を覆うように適宜決めればよい。
【0021】
次に、競走馬計時システム1の動作について例を示しながら説明する。バーコードリーダ3は、レーザビーム光Rを走査し、ゲートGを通過する競走馬Hのバーコード2を読み取り、読み取ったデータと、バーコードリーダ3が設けられたゲートGを識別するゲートNo.のデータとを制御部4に伝達する。制御部4は、バーコードリーダ3からのデータに基づいて、競走馬Hの識別子と通過時刻とを検出する。制御部4は、バーコードリーダ3からデータが伝達された時刻を通過時刻とする。制御部4は、ゲートNo.と、識別子と、通過時刻とをセットにして記憶することにより、識別子と通過時刻とを各ゲートに紐付けて記憶部41に記憶する。以下、紐付けられたゲートNo.と、識別子と、通過時刻とのデータを通過データという。図4は、記憶部41に記憶された通過データのデータリストの例を示し、図5は、理解を助けるために通過データを整理したリストを示す。
【0022】
次に、制御部4は、全ての競走馬Hの一回の走行における各ゲートGでの通過時刻が検出されて揃っているかを次のようなステップによって調べる。
<ステップ1>
制御部4は、ゴール位置のゲート(以下、ゴールゲートという)で検出されたいずれかの通過データを記憶部41から抽出し、抽出した通過データからゴールゲートでの通過時刻を抽出する。
図4に示す例では、制御部4は、通過データのデータリストから、矢印Aで示される識別子「1111」の通過データを抽出し、ゴールゲートでの通過時刻「8時17分10秒500ミリ秒」(以下、「8:17:10:500」と記す)を抽出する。
<ステップ2>
制御部4は、抽出した通過データが有する識別子と同一の識別子を有し、いずれかのゲートGにおける通過時刻が、ゴールゲートでの通過時刻に基づいて定められる時刻範囲に入る通過データを記憶部41から抽出する。ここで定められる時刻範囲は、抽出した通過データのゴールゲートでの通過時刻になるために、通常の競走馬ならそれぞれのゲートを通過した可能性のある時刻範囲である。本実施形態の場合は、スタート位置からゴール位置までが1000mなので、例えば、ゴールゲートでの通過時刻の120秒前から5秒前までの時刻範囲とされる。
図4に示す例では、矢印Aのゴールゲートでの通過時刻が「8:17:10:500」なので、識別子が「1111」であり、いずれかのゲートにおける通過時刻が「8:15:10:500」から「8:17:5:500」の範囲である通過データを抽出する(矢印Bで示す4個の通過データ)。
<ステップ3>
制御部4は、上記のステップ2で抽出された通過データにおいて、全てのゲートGにおける通過データが欠落せずに揃っているかを調べる。
図4に示す例では、矢印A及び矢印Bの通過データは、図5の矢印Cに示すように整理され、全てのゲートGにおける通過データが欠落せずに揃っている。
<ステップ4>
制御部4は、全てのゲートGにおける通過データが揃っている場合には、それぞれのゲートGにおける通過時刻から任意のゲート間の走行時間を算出する。
【0023】
一方、上記のステップ3において、通過データが揃っていない場合には、制御部4は、通過データが欠落したゲート(以下、欠落ゲートという)において、ゴールゲートを通過した競走馬Hの識別子が検出されていないと判断する。そして、このゴールゲートを通過した競走馬Hは、欠落ゲートにおいてバーコードを誤って読み取られ、間違った識別子として検出されていると考えられるので、制御部4は、次のようなステップによって通過時刻を修正する。
図4に示す例では、図5の矢印Dに示す識別子「2222」の通過データが揃っていない。
<ステップ5>
制御部4は、欠落ゲートが1箇所だけである場合には、識別子が検出されていないと判断された競走馬(以下、未検出競走馬という)がその欠落ゲートを通過した時刻範囲を推定する。
図4に示す例では、図5の矢印Dで示す識別子「2222」の通過データにおいて200mハロンのゲートの1箇所が欠落ゲートになっている。
制御部4は、欠落ゲートの走路前方に隣接するゲートにおける通過データの通過時刻から欠落ゲートにおける通過時刻を推定する。推定される通過時刻は、ゲート間の距離は200mなので、例えば、走路前方に隣接するゲートにおける通過時刻の25秒前から5秒前までの20秒間とされる。
図4に示す例では、図5の矢印Dで示す識別子「2222」のゴールでの通過時刻が「8:17:12:500」なので、推定される通過時刻は「8:16:47:500」から「8:17:7:500」の間とされる。
通過時刻を推定するときの基準となるゲートを欠落ゲートの走路前方に隣接するゲートに代えて走路後方に隣接するゲートとしてもよい。ただし、欠落ゲートがスタート位置のゲートの場合には、走路前方に隣接するゲートの通過時刻を基準とし、欠落ゲートがゴール位置のゲートの場合には、走路後方に隣接するゲートの通過時刻を基準にする。
<ステップ6>
制御部4は、全ての識別子の通過データの内で、欠落ゲートにおける通過時刻が、推定された時刻範囲にある通過データを記憶部41から抽出する。以下、この抽出された通過データを抽出通過データという。
図4に示す例では、図5の矢印Eで示す識別子「1111」の通過データと、矢印Fで示す識別子「9999」の通過データとが抽出される。
<ステップ7>
抽出通過データの識別子の内から、抽出通過データの識別子と同一の識別子が同一の走行時に他のゲートでも検出されているものを除外する。
図4に示す例では、図5の矢印Eの識別子「1111」は、400mハロン等の他のゲートでも検出されているので除外されるが、矢印Fの識別子「9999」は、他のゲートで検出されていないので除外されない。
<ステップ8>
除外されなかった識別子が一つだけ残ったとき、制御部4は、その残った識別子における欠落ゲートでの通過時刻が未検出競走馬の欠落ゲートにおける通過時刻として修正し、任意のゲート間の走行時間を算出する。
例では、矢印Fの識別子「9999」が、一つだけ残っているので、この識別子における欠落ゲートでの通過時刻「8:17:57:400」が、未検出競走馬の欠落ゲートにおける通過時刻になる。
上記のステップ8において、除外されなかった識別子が二つ以上残ったときには、どの識別子が誤って検出されたものかが不明なので、欠落ゲートにおける通過時刻は未検出のままとする。しかし、実際の競走馬計時システム1においては、除外されなかった識別子が二つ以上残ることは殆どない。
【0024】
上記のようにして、ゴールゲートで検出された一つの通過データを基にして、いずれかの競走馬の1回の走行における走行時間の算出が終了すると、制御部4は、ゴールゲートで検出された他の通過データを基にして、全ての走行について同様の算出を繰り返す。
【0025】
走行によってはゴールゲートが欠落ゲートの場合もあるので、上述したようなゴールゲートで検出された通過データを基にした走行時間の算出が終了すると、制御部4は、200mハロンのゲートで検出された通過データを基にして、同様の手段によって走行時間の算出を行う。 このとき、すでに走行時間の算出が行われた通過データを算出の対称から除いておくと、データが少なくなるので算出を容易に行うことができる。
また、欠落ゲートが一つの場合だけを対象としているので、200mハロンのゲートで検出された通過データを基にした算出が終了した後に、制御部4は、400mハロンのゲートで検出された通過データを基にした算出を行う必要はない。
【0026】
上記のステップ5において欠落ゲートが2箇所以上ある場合は、欠落ゲート以外のゲートで検出された識別子が正しいとして欠落ゲートにおける通過時刻を修正することが誤っている虞があるので、欠落ゲートが2箇所以上ある場合は通過時刻の修正を行わない。実際に、欠落ゲートが2箇所以上になることは殆どないので、そのようにしても問題は少ない。
【0027】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る競走馬計時システムついて、図6乃至図9を参照して説明する。競走馬計時システム1の構成は、第1の実施形態における競走馬計時システムと同様である。第2の実施形態においては、第1の実施形態におけるステップ8において、一つだけ残った識別子が、未検出競走馬のバーコードが誤って読み取られたときに認識される可能性のある識別子と同一であるときに、その残った識別子における欠落ゲートでの通過時刻を未検出競走馬の欠落ゲートにおける通過時刻とする。以下に、バーコード2の種類がITF(Interleaved Two of Five)であり、識別子が4桁の数字で表わされている場合を例として説明する。
【0028】
最初に、実際にバーコード2が誤って読み取られる状態を説明する。図6は、バーコード2が誤って読み取られたときに識別子の4桁の内で誤認識された文字数毎の割合を表わす。誤認識された文字数が1文字の場合が全体の約26%で、2文字の場合が約23%で、4文字の場合が約48%であり、3文字の場合はかなり少ない。
【0029】
1文字が誤認識される原因としては、図7に示すように、黒線の位置が本来の位置よりも移動した状態で認識された場合等が考えられる。この例では、黒線の位置が変わることにより、白線で表わされていた8が1として認識されている。
2文字が誤認識された場合の文字の位置を調べると、誤認識された2文字は、4桁の内の下2桁や、上2桁のように誤認識された2文字が並んでいる場合がほとんどである。2文字が誤認識される原因としては、図8に示すように、存在している細い黒線が認識されず、無いはずの細い黒線が認識された場合等が考えられる。この例では、黒線で表わされていた6が0として認識され、白線で表わされていた8が9として認識されている。
4文字が誤認識される場合は、本来の4文字と全く関係のない文字に誤認識されるのでなく、バーコードのスタートマージンとストップマージンとを取り違えてバーコードを逆向きに読み取られた場合の4文字として認識されている場合が殆どである。4文字が誤認識される原因としては、図9に示すように、スタートマージンの内の1本の細い黒線が認識されずにストップマージンとして認識され、ストップマージンの隣に無いはずの1本の細い黒線が認識されてスタートマージンとして認識されたことが考えられる。
【0030】
次に、競走馬計時システム1の動作について説明する。制御部4は、第1の実施形態と同様にして上述したステップ8まで行い、除外されなかった識別子が一つだけ残ったとき、その一つだけ残った識別子が、未検出競走馬のバーコードが誤って読み取られたときに認識される可能性のある識別子(以下、誤読識別子という)と同一であるかを判断する。誤読識別子としては、上述したような誤認識の状態に基づいて次のようなものが考えられる。
(1)未検出競走馬のバーコードのスタートマージンとストップマージンとが取り違えて読み取られたときの識別子
(2)未検出競走馬の識別子と1文字だけ異なる識別子
(3)未検出競走馬の識別子と下2桁の文字、又は上2桁の文字が異なる識別子
【0031】
その一つだけ残った識別子と、誤読識別子とが同一である場合には、その一つだけ残った識別子における欠落ゲートでの通過時刻を、未検出競走馬の欠落ゲートにおける通過時刻として修正し、任意のゲート間の走行時間を算出する。この誤読識別子は、予め競走馬に取り付けられるバーコード毎に決めておき、記憶部41に記憶させておいてもよい。
【0032】
このような構成にすることにより、上述した第1の実施形態のステップ8において除外されない識別子が一つだけ残ることだけで、その残った識別子における通過時刻が、未検出競走馬の欠落ゲートにおける通過時刻として直ちに修正されるのでなく、一つだけ残った識別子が、誤読識別子と同一であるかが判断されてから通過時刻が修正されるので、通過時刻が誤って修正される虞が少なくなり算出された走行時間の信頼度が高くなる。
【0033】
なお、バーコードの種類はITFに限られずにCODE39やCODE128等の他の種類でもよいし、識別子のフォーマットも4桁の数字でなくてもよく、誤読識別子は、それぞれのバーコードの種類や識別子のフォーマットに応じて定めればよい。
【0034】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1・・・競走馬計時システム
2・・・バーコード
3・・・バーコードリーダ
4・・・制御部
41・・・記憶部
C・・・走路
G・・・ゲート
H・・・競走馬

【特許請求の範囲】
【請求項1】
競走馬に取り付けられ当該競走馬と他の競走馬とを識別するための識別子を示すバーコードと、競走馬の走路の長手方向に沿って所定の間隔で設けられたゲートに取り付けられて前記バーコードを読み取るバーコードリーダと、前記バーコードリーダの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記各ゲートを通過する競走馬に取り付けられた前記バーコードを前記バーコードリーダに読み取らせることにより各ゲートを通過する競走馬の識別子と通過時刻とを検出し、それぞれの競走馬の任意のゲート間の走行時間を前記識別子と通過時刻とに基づいて算出する競走馬計時システムにおいて、
検出された前記識別子と通過時刻とを各ゲートに紐付けて記憶する記憶部を有し、
前記制御部は、任意の競走馬が最終ゲートを通過した後に、該競走馬の識別子がいずれかのゲートにおいて検出されていないと判断したとき、該ゲートの走路前方又は後方に隣接したゲートにおける該競走馬の通過時刻から該競走馬が識別子を検出されなかったゲートを通過した時刻範囲を推定し、推定された時刻範囲に該ゲートを通過した全ての競走馬の識別子を前記記憶部から抽出し、抽出された識別子の内で同一の走行時に該ゲート以外のゲートにおいても検出されている識別子を除外し、除外されなかった識別子が一つだけ残ったときにその残った識別子における該ゲートでの通過時刻が該ゲートにおいて識別子が検出されていないと判断された競走馬の該ゲートにおける通過時刻とすることを特徴とする競走馬計時システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記の除外されずに一つだけ残った識別子が、識別子が検出されていないと判断された競走馬のバーコードが誤って読み取られたときに認識される可能性のある識別子と同一であるときに、その残った識別子における通過時刻を該ゲートにおいて識別子が検出されていないと判断された競走馬の該ゲートにおける通過時刻とすることを特徴とする請求項1に記載の競走馬計時システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−191978(P2011−191978A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57018(P2010−57018)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(592244376)住友金属テクノロジー株式会社 (43)
【Fターム(参考)】