説明

竹バイオマスを使用した農園システム

【課題】竹林を保有する地域において、従来は化石燃料や電力でまかなっていたビニールハウスや温室等の農業設備で消費するエネルギーを、地域の産物である竹材に転換することにより、その地域における竹林の管理と大気汚染の軽減、エネルギーコストの低減を、自給自足的に実現する。
【解決手段】竹材を粉砕して竹チップ1にする竹チップ製造手段と、竹チップ製造手段により製造された竹チップ1を燃焼させる熱ガス発生燃焼炉2と、熱ガス発生燃焼炉2により発生した熱風を熱源として用いるビニールハウス4等の農業設備とを含む竹バイオマスを使用した農園システム。竹チップ1は、熱ガス発生燃焼炉2に連続的に供給され、ブロワー3により供給される空気を加熱してビニールハウス4に温風が供給される。このビニールハウス4の培地には、筍皮、若竹、親竹を堆肥化した肥料を使用することにより、竹林からの産物を利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹、特に非管理の竹林に密生ないし枯れた状態で放置されている竹を伐採し、それを地域の農業設備のエネルギーとして利用するための、竹バイオマスを使用した農園システムに関する。
【背景技術】
【0002】
竹は、古来より、身近な植物として重宝されてきた。地下茎から毎年生えてくる筍は食用になり、成長して親竹になると、竹竿、門松、団扇や扇子の骨、土壁の骨材、竹細工の材料、ザルやカゴ等の竹製品など、各種の製品の材料として用いられてきた。
【0003】
しかし、近年では、安価な外国産の筍や竹材の輸入により価格が低下し、農家が生産意欲を喪失したこと、また、筍堀り従事者の老齢化と後継者不足が進行したことなどにより、国内での筍を含む竹材の生産は激減してきた。
【0004】
それにともない、毎年、春先に地下茎から地上に出る筍は、採掘されないまま放置される結果、成長して若竹、親竹になる。このような管理不十分な竹林では、竹の侵攻が進んで、太陽光を遮断し、隣接する杉、ヒノキなどの他木への被害が起こり、多様な森林機能が喪失してしまう。さらに、竹林の近くにある民家では、地下茎が床下まで進入し、床を持ち上げるという放置できない状況にまで至っている。
【0005】
このような放置竹林の問題を解決するために、竹を資源として利用するいろいろな方策が提案されている。
特許文献1には、炭化炉内に木炭の原料である木材、竹材などの木質系被処理物を充填収容し、その炭化炉内に被燃焼物の燃焼排ガスと空気及び水蒸気を供給することにより高温度炭化の木炭を製造する高温木炭製造方法において、上記被処理物に対し、水分を蒸発させる乾燥工程と、木材もしくは竹材の熱減成の開始により熱分解を行わせる熱分解工程と、木炭化させる木炭化工程と、炭素化・精煉工程と、この後の強制冷却工程を一貫して行うようにする高温木炭製造方法が記載されている。
【0006】
特許文献2には、炭化炉内に、木炭の原料である木材、竹材などの木質系の被処理物を充填収容し、その炭化炉内に、木炭もしくは炭素化物(炭化物)を高温下でガス化反応させて製造した気体燃料(木炭ガス)の燃焼ガスを、供給することによって上記被処理物を加熱して炭化処理する木炭の製造方法が記載されている。
【0007】
特許文献3には、廃木材や竹などの木質系バイオマスを、240℃以上300℃以下の温度で15分以上90分以下の時間熱分解した後に粉砕する木質系バイオマスの粉砕処理方法が記載されている。
【0008】
特許文献4には、バイオマスの水性ガス化によって得られた可燃性ガスに対する、そのガスの発生場所周辺に分散した需要先の多様な貯蔵条件に対応可能に、その可燃性ガス中の一酸化炭素を触媒存在下で水素と二酸化炭素に変成し、高圧、触媒存在下でメタノールを合成するメタノール合成手段を備えると共に、そのメタノールを車両に搭載のタンクその他の容器に充填可能な充填装置を備えているバイオマス改質流体燃料の配送システムが記載されている。
【0009】
特許文献5には、木質系バイオマスの炭化物又は金属を担持させた木質系バイオマスの炭化物を、マイクロ波で加熱し、水蒸気と反応させて水素を含むガスを製造する木質系バイオマスからの水素製造方法が記載されている。
【0010】
特許文献6には、木材乃至竹材などの原料を高熱処理して多孔質炭を製造する方法であって、前記の原料を空気流入調整下において加熱して逐次炭化及び可燃性ガスを発生して初期炭化物を生成するガス化・炭化工程と、前記の初期炭化物を空気流入調整下において前記の可燃性ガスを燃焼して高温加熱処理して中間炭化物を生成する高熱処理工程と、前記の高熱処理した中間炭化物を炉外に取出する工程とを備え、前記の一連の工程を経てガス化・炭化工程で発生した可燃性ガスを高熱処理工程で完全燃焼させて発生した熱エネルギーの一部をガス化・炭化工程で原料を加熱する熱源とすることによって、稼動開始後は系内のエネルギーのみで連続稼動が可能である無煙式多孔質炭の製造方法が記載されている。
【0011】
【特許文献1】特開2002−285168号公報
【特許文献2】特開2003−253278号公報
【特許文献3】特開2006−26474号公報
【特許文献4】特開2006−27668号公報
【特許文献5】特開2007−126301号公報
【特許文献6】再公表特許公報WO2003/060039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、竹材を固形燃料、気体燃料、液体燃料として利用する技術が提案されているが、燃料化にコストが掛かりすぎ、今までの重油などの化石燃料の代替燃料とするには生産者にとっても消費者にとってもメリットが少ない。
ところで、昔は筍や竹材の産地であった地域で、現在は、付加価値の大きな野菜や果樹、花卉を生産しているところは多い。そのような地域では、ビニールハウスや温室等の農業設備では、寒冷期に重油ボイラーを焚いて暖房を行っている。しかし、近年の石油のコスト上昇やCO放出による温暖化の問題で、代替エネルギーの必要性が高まっている。
そこで本発明は、特に、竹林を保有する地域において、従来は化石燃料や電力でまかなっていたビニールハウスや温室等の農業設備で消費するエネルギーを、地域の産物である竹材に転換することにより、その地域における竹林の管理と大気汚染の軽減、エネルギーコストの低減を、自給自足的に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明の第1の構成は、竹材を粉砕して竹チップにする竹チップ製造手段と、前記竹チップ製造手段により製造された竹チップを燃焼させる竹チップ燃焼手段と、前記竹チップ燃焼手段により発生した熱風を熱源として用いる農業設備とを含む竹バイオマスを使用した農園システムである。
この第1の構成においては、基本的には地域の放置竹林の老竹や間伐した親竹、若竹を粉砕して竹チップにし、この竹チップをボイラー等の燃焼手段により燃焼して農業設備に供給する熱風とし、従来の重油ボイラーの代替とする。これにより、地域の産物であり、かつ放置されていた竹材をエネルギーとして、同じく地域の農業設備の暖房に利用することができ、竹林の管理とエネルギーコスト低減を同時に実現することができる。さらに、重油燃焼によるNOx、SOxの排出を抑制することができる。
【0014】
また、本発明の第2の構成は、竹材を粉砕して竹チップにする竹チップ製造手段と、前記竹チップ製造手段により製造された竹チップから可燃性ガスを生成するガス化手段と、前記ガス化手段で生成された可燃性ガスを燃焼させて発電するガスエンジン発電手段と、前記ガスエンジン発電手段で排出した排熱を熱源として用いる農業設備とを含む竹バイオマスを使用した農園システムである。
この第2の構成においては、竹チップを可燃性ガス化し、この可燃性ガスを燃焼させて発電して農業設備や付帯設備等の電力として供給し、その排熱を農業設備の暖房に利用する。
【0015】
また、本発明の第3の構成は、竹材を粉砕して竹チップにする竹チップ製造手段と、前記竹チップ製造手段により製造された竹チップから液体燃料を生成する液化手段と、前記液化手段で生成された液体燃料を燃焼させて発電するガスエンジン発電手段と、前記ガスエンジン発電手段で排出した排熱を熱源として用いる農業設備とを含む竹バイオマスを使用した農園システムである。
この第3の構成においては、竹チップから液体燃料を生成し、この液体燃料を燃焼させて発電して農業設備や付帯設備等の電力として供給し、その排熱を農業設備の暖房に利用する。この液体燃料としては、メタノール、エタノールが挙げられる。
【0016】
本発明の第4の構成は、前記農業設備は温室である第1から第3のいずれかの構成の竹バイオマスを使用した農園システムである。
この第4の構成においては、温室(ビニールハウスを含む)における農作物、果樹、花卉を育成する上で必要な寒冷期の温度調節に、竹バイオマスエネルギーを使用するものである。
【0017】
本発明の第5の構成は、前記農業設備は農産物加工工場である第1から第3のいずれかの構成の竹バイオマスを使用した農園システムである。
この第5の構成においては、収穫した農産物を加工して商品化する工場の電力や温水のエネルギー源として、竹バイオマスを使用するものである。
【0018】
本発明の第6の構成は、前記温室の培地は、筍皮、若竹、親竹のいずれかまたは全てを発酵させた堆肥を施肥したものである第4の構成の竹バイオマスを使用した農園システムである。
この第6の構成においては、温室の培地に、竹を主成分とする堆肥を使用することにより、竹の持つ成長ホルモンによる農作物の成長を促進させることができる。
【0019】
本発明の第7の構成は、前記農産物加工工場は、筍加工工場である第5の構成の竹バイオマスを使用した農園システムである。
この第7の構成においては、筍加工工場に適用することにより、竹林から毎年収穫される筍を直接製品化することができ、その工場において使用するエネルギー(電力、温水等)も、竹林から伐採した親竹、老竹から得ることができ、従来の筍加工工場で消費するエネルギーコストを大幅に節減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、特に、竹林を保有する地域において、従来は化石燃料や電力でまかなっていたビニールハウスや温室等の農業設備で消費するエネルギーを、地域の産物である竹材に転換することにより、その地域における竹林の管理と大気汚染の軽減、エネルギーコストの低減を、自給自足的に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係るビニールハウス温風供給設備の構成を示す概略図である。
【0022】
図1において、熱ガス発生燃焼炉2の材料として供給される竹チップ1は、親竹、老竹を含水率30%以下に乾燥し、粉砕機により長さ5〜20mm程度のチップに粉砕したものである。粉砕の過程で生じた長さ5mm未満の竹屑は、別の堆肥化プラントで堆肥化することができる。
【0023】
竹チップ1は、熱ガス発生燃焼炉2に連続的に供給され、ブロワー3により供給される空気を加熱してビニールハウス4に温風が供給される。
このビニールハウス4の培地には、筍皮、若竹、親竹を堆肥化した肥料を使用することにより、竹林からの産物を利用することができ、他の化学肥料、堆肥などを購入する必要が無くなり、地域での自給自足のシステムとすることができる。
【0024】
ここで、若竹とは親竹となる以前の成長過程の竹を指し、食用筍として掘らずにおいたため成長して食用にはならなくなったもので、およそ竹の枝が出る前迄のものである。わが国で最も多い孟宗竹でいえば、生育場所によって差異があるが、通常高さ1〜4m程度(地表から出て約1週間から1ヶ月)迄のものをいう。親竹とはそれ以上成長したもので、通常1年以上経過した竹質が硬くなった竹である。およそ1年生までの竹は親竹としての機能はなく、また竹質が柔らかいので若竹に分類しても良く、およそ2年生以上の竹質が硬い親竹と区別して、特に新竹という名称で呼ぶこともある。このように分類法は定まったものではなく、竹の性状から呼ぶことが多い。また、後述の老竹とは、親竹が枯れたり折れたりして竹林に放置された竹のことをいう。
【0025】
図2は本発明の第2の実施の形態に係る筍工場竹バイオマス蒸気供給設備の構成を示すフロー図である。
図2において、第1の実施の形態と同様に製造された竹チップ1は、熱ガス発生燃焼炉2に連続的に供給され、ブロワー3により供給される空気を加熱して蒸気ボイラー5に熱風が供給される。蒸気ボイラー5では蒸気用水を加熱して、筍工場の筍蒸沸釜6で筍を茹でるための熱源として使用される。
【0026】
この第2の実施の形態においては、竹林で生える筍を食品として加工する工場の熱源として、同じく竹林で成長した親竹、老竹を使用することにより、竹林での生成物をすべて有効に利用することができる。
【0027】
図3は本発明の第3の実施の形態に係る竹バイオマスシステムの構成を示すフロー図である。
この第3の実施の形態では、竹チップのバイオマスから、熱、電力、バイオメタノールを採取するトータルシステムを実現するものである。
【0028】
図3において、熱ガス発生燃焼炉2で生成された熱風は、ガス化反応炉14に送られる。ガス化反応炉14では、草木バイオマス11の粉体が貯留されたホッパ12から、粉体がフィーダ13で供給され、熱交換器18で加熱された過熱水蒸気の作用で、粉体に含まれる可燃性ガス成分が抽出され、生成ガス貯蔵タンク15に貯蔵される。草木バイオマス11は、地域で採取される草木を粉砕した原料の外、竹チップの内、5mm未満の長さのものも使用することができる。熱交換器18で過熱水蒸気の生成に用いられた熱ガスは、熱回収ボイラー19で回収され、ビニールハウスや温室の暖房、温水生成の熱源として利用される。
【0029】
生成ガス貯留タンク15に貯蔵された生成ガスは、ガスエンジン発電機16の燃料として使用され、電力として利用される。その排ガスは、熱回収ボイラー19で熱として回収、利用される。
【0030】
また、生成ガス貯留タンク15に貯蔵された生成ガス(メタンガス)からは、メタノール合成装置17でバイオメタノールが生成される。
【0031】
このようにして、竹チップから、熱、電力、バイオメタノールが回収でき、これを地域の農業設備等で利用することにより、自給自足の農業が可能となる。
【0032】
これにより、竹林の管理、エネルギーの自給自足の両方を満足することができ、竹林をきれいに、また農業のコストを大幅に削減することができるといった、画期的な農園システムを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、地域における竹林の管理と大気汚染の軽減、エネルギーコストの低減を、自給自足的に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るビニールハウス温風供給設備の構成を示すフロー図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る筍工場竹バイオマス蒸気供給設備の構成を示す概略図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る竹バイオマスシステムの構成を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0035】
1 竹チップ
2 熱ガス発生燃焼炉
3 ブロワー
4 ビニールハウス
5 蒸気ボイラー
6 筍蒸沸釜
11 草木バイオマス
12 ホッパ
13 フィーダ
14 ガス化反応炉
15 生成ガス貯蔵タンク
16 ガスエンジン発電機
17 メタノール合成装置
18 熱交換器
19 熱回収ボイラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹材を粉砕して竹チップにする竹チップ製造手段と、前記竹チップ製造手段により製造された竹チップを燃焼させる竹チップ燃焼手段と、前記竹チップ燃焼手段により発生した熱風を熱源として用いる農業設備とを含む竹バイオマスを使用した農園システム。
【請求項2】
竹材を粉砕して竹チップにする竹チップ製造手段と、前記竹チップ製造手段により製造された竹チップから可燃性ガスを生成するガス化手段と、前記ガス化手段で生成された可燃性ガスを燃焼させて発電するガスエンジン発電手段と、前記ガスエンジン発電手段で排出した排熱を熱源として用いる農業設備とを含む竹バイオマスを使用した農園システム。
【請求項3】
竹材を粉砕して竹チップにする竹チップ製造手段と、前記竹チップ製造手段により製造された竹チップから液体燃料を生成する液化手段と、前記液化手段で生成された液体燃料を燃焼させて発電するガスエンジン発電手段と、前記ガスエンジン発電手段で排出した排熱を熱源として用いる農業設備とを含む竹バイオマスを使用した農園システム。
【請求項4】
前記農業設備は温室である請求項1から3のいずれかの項に記載の竹バイオマスを使用した農園システム。
【請求項5】
前記農業設備は農産物加工工場である請求項1から3のいずれかの項に記載の竹バイオマスを使用した農園システム。
【請求項6】
前記温室の培地は、筍皮、若竹、親竹のいずれかまたは全てを発酵させた堆肥を施肥したものである請求項4記載の竹バイオマスを使用した農園システム。
【請求項7】
前記農産物加工工場は、筍加工工場である請求項5記載の竹バイオマスを使用した農園システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−136259(P2009−136259A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318855(P2007−318855)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年12月10日発行の「いきいき2008年1月号」(発行所:ユーリーグ株式会社)において文書をもって掲載
【出願人】(504136915)キタジマ食品株式会社 (8)
【Fターム(参考)】