説明

竹炭塩及びその製造方法

【課題】 従来の竹塩とは異なる製造方法を用いることにより、何度も繰返し処理を行う必要がないなど、容易に製造できる塩を提供する。また、従来の竹塩とは異なる効果を有する塩及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の竹炭塩は、内部に塩20を詰めた竹筒10を加熱して炭化させることにより形成したことを特徴とする。特に、竹筒10の内部に塩20を密封して、加熱処理を施すことにより、高い品位の竹炭塩を製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は竹炭塩及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、塩を焼くことによって有害成分などを除去したり、にがり成分の作用を高めたりする方法が知られている。また、このような焼き塩の一種として、韓国では古くから竹筒内に塩を詰め燃やすことによって高温処理した竹塩が民間薬として長い間用いられている。この竹塩は、解毒作用、浄血作用、消炎作用等を示すことが知られている。
【特許文献1】特開平7−76510号公報
【特許文献2】特開平9−291015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述の竹塩では、塩を詰めた竹筒を燃やすと数時間程度で竹が燃え尽きるので、薬効を高めるために、新たな竹筒に入れなおして再び燃やすという工程を数回繰り返すことが一般に行われている。通常、1回の処理では充分な効果が得られないため、製造に手間がかかり、また、温度管理も難しいという問題点がある。
【0004】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、従来の竹塩とは異なる製造方法を用いることにより、何度も繰返し処理を行う必要がないなど、容易に製造できる塩を提供することにある。また、従来の竹塩とは異なる効果を有する塩及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
斯かる実情に鑑み、本発明の竹炭塩は、内部に塩を詰めた竹筒を加熱して炭化させることにより形成したことを特徴とする。この発明によれば、竹筒の内部に塩を詰め、この竹筒を加熱して炭化させることにより、塩が高温で長時間加熱されるため、塩に含まれていた不純物が気化、分解されるとともに、竹のミネラル分が供給され、さらに、竹炭の微細な粒子が塩の内部に均等に分散配置される。また、この竹炭粒によって有害物質の吸着除去効果が生じる。
【0006】
また、本発明の製造方法は、竹筒の内部に塩を詰め、前記竹筒を加熱して炭化させることを特徴とする。この発明によれば、竹筒を加熱して炭化させることにより、従来の竹塩のように繰り返し何度も竹筒の内部に塩を入れ直すといった手間がかからないとともに、内部の塩が溶融することによる形状の崩れも低減することができる。特に、塩を竹筒に密封した状態で加熱して炭化させることで、塩が均一に加熱されるとともに、有効成分の損失が低減され、有害成分の吸着除去が促進され、さらに、塩内に均一に炭化成分を分散付着させることができるため、高い効果を得ることができる。
【0007】
なお、上記の竹筒の炭化プロセスは、概略以下のようになる。最初に、内部に塩を詰めた竹筒を窯の内部に配置し、焚き口に火を付けて竹筒の配置された炉内に熱風を吹き込む。竹筒の温度が上昇すると、やがて竹筒は自燃し、炭化が進行する。そして、煙道から出てくる煙の色を見ながら精錬を行う。この精錬段階では、竹筒及びその内部の塩は1000度以上に加熱される。その後、炭化が完了すると、焚き口を閉じ、しばらくして煙道も閉鎖し、窯が冷えるのを待って竹炭及び竹炭塩を取り出す。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来よりも簡易な方法で高温処理された塩を製造できるとともに、竹炭の微粉が塩に付着した状態となることにより、高い遠赤外線放射作用や有害物質吸着除去作用を得ることができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。図1は、本実施形態の竹炭塩を製造する場合に用いる竹筒10の内部に塩を配置した状態を示す縦断面図である。竹筒10は、一つの節間とその両側の節11を残した状態で切り出し、下方の節11を底板として用い、上方の節11の少なくとも一部を除去して開口部11aを形成する。竹筒10としては、内部に導入できる塩の量を多くすることができる点で孟宗竹を用いることが好ましい。特に、竹の6合目あたりの部分の節間を用いることが望ましい。また、4〜5年生、或いは、それ以上の古い竹が望ましい。一般的には、竹(孟宗竹)の根元から6合目程度までの範囲にある部分を用いることが好ましい。
【0010】
次に、上記竹筒10の内部に開口部11aから塩20を入れる。塩20は、海水を煮詰めた天然塩であることが好ましい。そして、塩を節間の内容積の6分〜8分程度入れた後、上記開口部11aに竹の小片で栓をする。また、図2に示すように、開口部11a′に赤土12′で栓をしてもよい。このように栓をすることで、塩を竹筒の内部に密封することができる。
【0011】
なお、本発明では、上記のように二つの節を含む竹筒を用いる必要はなく、節のあるなしに拘らず、竹筒の内部に塩が配置されていればよい。ただし、竹筒の内部に塩を密封することにより、後述する処理によって、塩を均一に加熱することができるとともに、自然塩に含まれていたミネラル等の有効成分の散逸を防止でき、有害成分の竹炭による吸着除去を促進させることができ、さらに、塩に炭化成分を均一に付着させることが可能になる。竹筒の密封には上記の節や竹片を用いることが最も好ましいが、これらを用いずに、或いは、これらと共に、赤土、粘土等を用いてもよい。
【0012】
その後、図3に示す窯30の内部に上記竹筒10を配置した。この窯30は、耐火煉瓦及びキャスタブル(耐火セメント)等を用いて炭化室30Xを構成する周壁31(窯腰及び天井)を形成し、この周壁31の前方に周壁31の内部に連通する窯口30Yを構成する炉口部32を形成し、周壁31の後方に炭化室30Xに開口する(炭化室30Xの最下部に煙道口を有する)煙道30Zを構成する煙突33を形成し、これらの外側を赤土34で固めたものである。煙道口は炭化室30Xの最下部中央後部に設けられることが好ましい。
【0013】
窯口30Yは、炉口部32に取り付けられた鉄板等で構成される炉口壁35によって閉鎖される。この炉口壁35には中央部に開口35aが形成され、開閉可能に取り付けられ蓋35bが開口35aを閉鎖している。炉口壁35の下方には焚き台32aが設けられ、この焚き台32aには焚き口(通気口)32bが設けられている。また、炭化室30Xと窯口30Yとの間には、レンガ等で形成された障壁36が設けられ、この障壁36の上部中央等の適宜の場所に開口部(熱風口)36aが設けられる。さらに、炉口部32の壁面内には、炭化室30Xの内部に連通するとともに炉口壁35の外側に開口した通気口32cが設けられている。また、炉口壁35のさらに前方には、ベニア板等で構成される閉鎖板37が着脱可能に取り付けられる。この閉鎖板37を取り付けることによって、上記の焚き口32b及び通気口32cが閉鎖されるようになっている。
【0014】
次に、上記窯30を用いて竹炭塩を製造する方法について説明する。まず、上記図1又は図2に示すように塩を詰めた竹筒10を炭化室30Xの内部に配置する。炭化室30Xの内部には竹筒10以外の塩を詰めていない竹を奥から順に詰め込む。また、竹筒10の上部にも竹を積み重ねるように配置することが好ましい。これによって、着火しやすい上部に竹が配置されるため、竹筒10が燃え尽きることを防止できる。本実施形態では、炉口壁35、障壁36及び閉鎖板37を除去した状態で竹筒10及び他の竹を炭化室30Xに詰め込み、その後、障壁36を形成するが、炉口壁35及び障壁36を設けたままとし、その代わりに、炉壁31の天井部に別の開口部を設け、この開口部から竹筒10及びその他の竹を導入するようにしてもよい。窯の大きさにもよるが、一回で100kg程度の塩を窯に入れることができる。例えば、高さ45cm程度の竹筒を2段に積み重ねて収容してもよい。
【0015】
その後、炉口壁35の開口35aから薪等を窯口30Y内に導入し、図5に示すステップS1にて焚き口32bにて着火する。これによって窯口30Y内の燃焼によって熱風が開口部36aから炭化室30Xに流れ込み、炭化室30Xの温度が上昇する。これにより、炭化室30X内の竹筒10及びその他の竹は加熱され、脱水され、やがて温度がさらに徐々に上昇していく(ステップS2)。このとき、煙突33からは水蒸気が立ち昇り、やがて白い煙が出るようになる。なお、焚き口32bは熾き火や灰を出し入れするためにも用いられる。また、焚き口32b、通気口32c及び煙道30Zの開口面積はレンガ等の適宜の部材で適宜に調整され、これによって内部の加熱状態が制御される。
【0016】
上記の状態を窯口30Xの火を維持したまま18〜35日(典型的には20日)程度継続すると、炭化室30Xでは竹筒10及びその他の竹が上部から徐々に着火し、自燃(自家炭化)が開始される(ステップS3)。その後、煙突33から排出される煙が青白い煙に変わり、煙の温度がある程度(70〜75℃)高くなったときを見計らい、窯口30Xの火力を強めて炭化室30Xの内部の温度を1200〜1300℃程度に高め、精錬を行う(ステップS4)。このステップでは、焚き口32bや通気口32cから空気を強制的に送り込んだり、窯口30Yに炭を入れたりして火力を強めることによって炭化室30Xの内部を高温にする。この状態を1日程度続けると、煙突33から排出される煙の量が減少するので、閉鎖板37を取り付け、粘土などで密閉することにより、焚き口32b及び通気口32cを閉鎖し、空気の流入を遮断して窯止めを行う(ステップS5)。その後、1時間程度後に煙突33も完全に閉鎖し、窯30の自然冷却を行う(ステップS6)。
【0017】
より具体的には、当初は炭化室30Xでは竹筒10及びその他の竹の水分が蒸発し、全ての竹の水分が蒸発した状態になったとき(このとき煙突33の排気温度は70〜75度になる。)、窯口30Yの燃焼によって炭化室30X内の竹が着火し、上部にある竹の部分から徐々に炭化が進行していく。窯の大きさにもよるが、約一週間かけて煙突33の排気温度が170〜180℃になったころ、精錬を開始する。窯口30Yの火力を強めて炭化室30Xの内部温度を好ましくは1300℃以上に上げる。この精錬のステップでは焚き口32b、通気口32c、又は熱風口36aから空気を強制的に送り込んだり、窯口30Yに炭を入れたりして火力を強める。
【0018】
上記のようにして、約10日間自然冷却させてから、窯30を開いて竹筒10を取り出す。竹筒10は完全に炭化し、竹炭となっている。また、竹筒10の内部の竹炭塩は円柱状に固まり、内部まで全体が均一な灰色若しくは灰白色になっている。多くの場合、塩を入れた竹炭は割れているが、割れた部分を復元すれば、元の形状となる状態となっている。
【0019】
このようにして得られた竹炭塩の塊をダイシングして厚さ2〜3mm程度の薄片とし、この薄片を100℃に加熱した状態で、赤外分光計(日本分光株式会社製EM−101(製品名))を用いて測定した赤外線示差放射スペクトル(分光放射率の波長依存性)を図4に示す。このスペクトルからわかるように、近赤外領域から遠赤外領域にいたるまでの広い範囲できわめて高い(90%前後の)分光放射率を有し、しかも、きわめて平坦な(すなわち、波長依存性の小さい)放射特性が得られている。この分光放射率のスペクトルは、竹炭のスペクトルよりも全般的に高く、特に、竹炭のスペクトルよりもきわめて良好な平坦性を有する。
【0020】
また、上記の竹炭塩の成分分析を行った結果(半定量分析値)を表1及び表2に示す。この分析は、上記円柱状の竹炭塩の側面(表1)及び端面(表2)に対して蛍光X線分析を施すことにより同定した組成を示すものである。試験機器は理学電機工業株式会社製、蛍光X線分析装置RIX−3000を用い、Beから92Uまでの全元素を分析した。測定範囲はいずれも10mmとした。なお、この竹炭塩の原料として用いた天然塩の組成は、Na:34.9wt%、Ca:0.1wt%、Mg:0.02wt%、K:0.01wt%、Fe:0.001wt%未満、Mn:0.001wt%未満である。したがって、竹炭塩の組成は、原塩に比べてMg,Fe,Kなどのミネラル成分が大幅に増加している。
【表1】

【表2】

【0021】
上記の円柱状の竹炭塩は、粉砕して粉状にすることで食塩として用いることができる。このような粉状の竹炭塩はやや紫がかった灰色或いは薄灰色である。この竹炭塩は、高温処理により有害成分が除去されているだけでなく、ミネラル成分が付与され、さらに、炭化成分の微粉が均一に付着した状態となっている。これらによって、有害成分による健康への影響を低減でき、ミネラル成分の取得、有害成分の吸着除去などの効果を得ることができるとともに、上記スペクトルに示すように高い遠赤外線放射作用を奏するものとなっている。また、この竹炭塩は、こくや甘みのある食味を備えている。実際に食用として用いることにより、便通がよくなる、冷え性が改善する、成人病の症状が改善するなどの各種の生理的な改善作用が得られている。また、食用以外でも、例えば入浴剤などに用いることで、遠赤外線放射効果、ミネラル成分の供給効果、細菌や毒素の吸着除去効果等を得ることができる、
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る実施形態の処理前の竹筒の構造を示す縦断面図。
【図2】異なる実施形態の処理前の竹筒の構造を示す縦断面図。
【図3】実施形態の処理に用いる炉の構造を示す横断面図。
【図4】実施形態の竹炭塩の赤外線放射スペクトルを竹炭のスペクトルと比較して示すグラフ。
【図5】実施形態の処理プロセスを示す概略工程図。
【符号の説明】
【0023】
10…竹筒、11…節、12…竹片、12′…赤土、20…塩、30…窯、30X…炭化室、30Y…窯口、30Z…煙道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に塩を詰めた竹筒を加熱して炭化させることにより形成したことを特徴とする竹炭塩。
【請求項2】
竹筒の内部に塩を詰め、前記竹筒を加熱して炭化させることを特徴とする竹炭塩の製造方法。
【請求項3】
前記竹筒の内部に前記塩を密封した状態で加熱して炭化させることを特徴とする請求項2に記載の竹炭塩の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−304781(P2006−304781A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90258(P2006−90258)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(500078130)
【Fターム(参考)】