説明

第二級アルコールのホスフェート

本発明に従って、第二級水酸基を有する化合物のホスフェート誘導体が提供される。第二級水酸基を有する化合物は、例えばプラバスタチン、アトルバスチン、ベンラファキシン、当該化合物の誘導体、及びこれらの混合体から選ばれうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第二級水酸基を有する化合物のホスフェート誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書中において、文献、文書、又は知識が参照又は考察される場合、本参照又は考察は、当該文献、文書、又は知識、或いはその組み合わせが、優先日における一般の常識であること;又は、本明細書に係る問題を解決する試みに関すると知られていということを認めるものではない。
【0003】
以下の記載は、ベンラファキシン、プラバスタチン、及びアトルバスタチンのホスフェート誘導体及びホスフェート誘導体の複合体に関する一方で、水溶性、組織浸透、リンパ輸送の改善、又は初回通過代謝の低減が所望される場合、本発明が第二級水酸基を有する他の医薬品に適用されるということが理解されるであろう。さらに、以下の考察が、抗うつ特性及びコレステロール低下特性を有する医薬品を強調する一方で、本発明が他の特性を有する医薬品を非限定的に含むということが理解されるであろう。
【0004】
高コレステロール血症薬-プラバスタチン及びアトルバスタチン
血清総コレステロールが高いことと心血管疾患のリスクの増加との間の相関が、数十年間知られてきた。心血管疾患のリスクは、血清総コレステロールのレベルの増加、血清LDLコレステロールのレベルの増加、及び血清HDLコレステロールのレベルの低下を伴って増加する。
【0005】
血清コレステロールを低下する方法は、食事管理からバウエルループ(bowel loop)の外科的切除、及び種々の医薬品アプローチまでと様々である。食事及びライフスタイルの管理は、常に第一選択の治療であるであろうが、上昇した血清コレステロールの臨床的に有意な低下を達成するために、医薬品の介在が必要となることが多い。血清コレステロールの低減用に市販される最も大きい治療群は、HMG-CoAレダクターゼ(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイムA)の競合的阻害剤、つまり「スタチン」である。これらの薬剤は、HMG-CoAのメバロン酸への変換に関与する肝臓酵素HMG-CoAレダクターゼを特異的に阻害する。当該変換は、体内におけるコレステロールの新規の合成における律速段階である。体内コレステロールの約90%が、当該経路を通して製造され、それゆえHMG-CoAレダクターゼの阻害剤はかなり有効な薬剤であり、そして以前の治療より有意に血清コレステロールを低減する。
【0006】
スタチンは、HMG-CoAレダクターゼの構造アナログであり、そしてコレステロール生合成における律速段階の触媒作用に関与する酵素を阻害することにより作用する。当該クラスの第一薬であるコンパクチンは、1980年代初頭に開発され、そして続いて、ロバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、及びシンバスタチンが開発された。肝臓におけるコレステロールの生産は、日周パターンに従っており、大部分は夜間に生成される。このため、コレステロール合成が最大である間、スタチンが活性であるように、多くのスタチンは夜に患者に投与される。ロバスタチン及びシンバスタチンは、胃腸管で活性なβ-ヒドロキシル誘導体に加水分解される不活性プロドラッグである。アトルバスタチン、プラバスタチン、及びフルバスタチンは投与された際に活性である薬剤である。
【0007】
プラバスタチンは、経口投与後迅速に血液中に吸収される。血漿濃度は投与量と比例し、そして排出半減期は1.5〜2時間である。約1時間半後に30〜50%の吸収範囲で血漿レベルのピークに到達するが、絶対的生物学的利用能は、かなり高い初回通過代謝のために約17%にしかならない。それゆえ、改良された製剤は、初回通過代謝を通して失われる量を低減するであろう。プラバスタチン(CAS-81093-37-0)及びそのナトリウム塩(CAS81131−70−6)が、現在知られている唯一の形態である。
【0008】
同様に、アトルバスタチンは、迅速に吸収され、投与後約2時間で最大血漿濃度が生じたが、絶対的生物学的利用能は、14%だけであった。低い全身性生物学的利用能は、胃腸管粘膜クリアランス及び/又は肝臓の高い初回通過代謝のためである。この場合も先と同様に、改良された製剤は、増大された絶対的生物学的利用能を有するであろう。アトルバスタチンは現在、遊離酸形態(CAS134523-00-5)及びそのカルシウム塩(CAS134523-03-8)において使用される。
【0009】
当該薬剤は、肝臓に達したときに最大の利益をもたらす。しかしながら、薬剤の吸収及び活性は、以下の:
(a) 肝臓組織内取り込み
(b) 低い排出半減期、及び
(c) 薬剤の肝臓中への低い蓄積レベル
により妨害されることが多い。
【0010】
抗うつ薬-ベンラファキシン
うつ病は最も一般的な精神病の1つであり、いかなるときでも最大で人口の5〜6%がかかることが報告されている。うつ病の徴候は、あいまいであるか又は微妙であることが多く、そして病徴は、ときに患者及び医師の両者によって認識できないこともある。1950年代に、高血圧の治療用のレセルピンを導入した後に、該薬剤の副作用の1つがうつ病であることが明らかになった。当該効果の医薬的研究により、レセルピンが前シナプスの神経末端の小胞中へのアミン神経伝達物質セロトニン及びノルエピネフリン(アドレナリン)の貯蔵を阻害することが明らかになった。それゆえ、うつ病はアミン依存性シナプス伝達の機能の欠失又は低下に関与するに違いないと結論付けられた。この単純な理由づけは、うつ病のアミン仮説として知られる説を与えた。最初に発売された抗うつ薬は、モノアミン・オキシダーゼ阻害剤(MAOI)であり、その販売後すぐに、三環系抗うつ薬(元々は抗ヒスタミン剤から派生された)が発売された。うつ病の治療は、うつ病の生理化学についてのさらなる発見がなされるにつれて、多くの変化を受けてきた。
【0011】
ベンラファキシンは、1993年の終わりに抗うつ薬としての使用が承認された。ベンラファキシンはアヘンの誘導体であり、該誘導体はノルアドレナリン、セロトニン、及びドーパミンの再取り込みを阻害するようであり、そうしてそのレベルを増大し、そしてうつ病の病徴を低減する。それゆえ、該化合物は中枢神経系において神経伝達物質活性を増強するように作用する。理論上は、ベンラファキシンは、抗うつ作用の既知様式の全てを併せ持つが、コリン作動性、ヒスタミン作動性、又はアドレナリン作動性受容体にほとんど影響を与えないので、他の抗うつ薬に通常付随する副作用をほとんど引き起こさない。
【0012】
市販の薬剤、塩酸ベンラファキシンはラセミ体である。R-エナンチオマーは、ノルアドレナリン取り込みのより強力な阻害剤であり、そしてS-エナンチオマーは、セロトニン取り込みのより強力な阻害剤である。しかしながら両者は、ノルアドレナリン取り込みよりもセロトニン取り込みをより強力に阻害する。
【0013】
ベンラファキシンは、経口でよく吸収されるが、短い半減期しか有さず、そしてかなりの初回通過代謝をうける。ベンラファキシンの主要な代謝産物は、O-デスメチルベンラファキシン(Desmethylvenlafaxine)であり、該物質は、ベンラファキシンと同様に強力である。延長された放出製剤が利用できるようになり、一日一回の投与が可能になった。一回25〜150mgの投与量の後に、平均血漿ピーク濃度、約33〜175ng/mlの範囲が約2.4時間後に達成された。ベンラファキシンの半減期が5時間であり、そしてO-デスメチルベンラファキシンの半減期は11時間であると計算される。
【0014】
ベンラファキシン及びその代謝産物は、主に腎臓を介して排出され、投与後48時間でおおよそ85%が、未変化の薬剤、O-デスメチルベンラファキシン、又は抱合されたO-デスメチルベンラファキシンとして尿に回収される。食事と一緒に投与することは、ピーク血漿濃度をわずかに遅延するが、O-デスメチルベンラファキシンの形成に影響を与えない。
【0015】
プラバスタチン・ナトリウム、アトロバスタチン・カルシウム、及び塩酸ベンラファキシンは、よく吸収されるけれども、これらの薬剤は、絶対的生物学的利用能を低下させる高い初回通過代謝を受ける。
【0016】
従って、従来技術の第二級アルコール基を有する医薬と比較して、初回通過代謝を通して失われにくい改良された医薬への必要性が存在する。
【発明の開示】
【0017】
発明の要約
第二級アルコールが、脂肪酸のナトリウム塩及びP410の存在下で容易にリン酸化されるということが発見された。当該第二級アルコールをリン酸化するために使用される従来技術は、第二級アルコールをかなりの程度脱水して、二重結合を形成する欠点を有した。
【0018】
本発明の第一態様に従って、プラバスタチン及びその誘導体、アトルバスタチン及びその誘導体、ベンラファキシン及びその誘導体、並びにそれらの混合体からなる群から選ばれる化合物のホスフェート誘導体が提供される。
【0019】
好ましい実施態様では、ホスフェート誘導体は、ホスファチドであってよい。別の好ましい実施態様では、ホスフェート誘導体は、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及び当該アミノ酸に富むタンパク質を含む群から選ばれる複合体形成剤で形成された複合体である。
【0020】
本発明の第二態様に従って、第二級水酸基を有する化合物のホスフェート誘導体を製造する方法であって、第二級水酸基を有する化合物を脂肪酸のアルカリ金属塩の存在下でP410と反応させるステップを含む方法が提供される。
【0021】
当業者に知られるアルカリ金属は、ナトリウム及びカリウムを含む。好ましくは該アルカリ金属はナトリウムである。
適切な脂肪酸は、当業者に周知であり、そしてオレイン酸及び吉草酸を含む。
【0022】
本方法において使用されうる第二級水酸基を有する化合物の例は、ベンラファキシン(CAS934113−69−5)、プラバスタチン(CAS81093-37-0)、及びアトロバスタチン(CAS134523−00−5)を含む。
【0023】
好ましい実施態様では、該方法は、第二級水酸基を有する化合物のホスフェート誘導体を、ジ又はモノアシル・グリセリドと反応させて、第二級水酸基を有する化合物のホスファチド誘導体を形成するステップをさらに含む。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「ホスフェート誘導体」という用語は、酸素を用いて、ホスフェート基のリン原子に共有結合された化合物を指す。該ホスフェート誘導体は、遊離リン酸、その塩、第二級水酸基を有する化合物2分子を含むジ-ホスフェート・エステル、2個の異なる化合物を含む混合エステル、遊離ホスフェートの酸素が、アルキル又は置換アルキル基、例えばジ又はモノアシルグリセリドを形成するホスファチジル化合物の形態で存在するか、或いは複合体形成剤との複合体として存在しても良い。
【0025】
本発明で使用される適切な複合体形成剤は、イミノ化合物、アルキル・アミノ/アミド・ベタイン、サルテイン、ホスホベタイン、ホスフィタイン(Phosphitaines)、イミダゾリマム(Imidazolimum)及び直鎖モノ及びジカルボキシ両性電解質、四級アンモニウム塩、カチオン性アルコキシル化モノ及びジ-脂質アミンを含むクラスから選ばれる界面活性剤;並びに窒素官能基を有するアミノ酸及び当該アミノ酸に富むタンパク質から選ばれてもよい。好ましい複合体形成剤は、N-ラウリル・イミノ・ジ-プロピオネート及びアルギニンである。
【0026】
本発明中に使用する窒素官能基を有する適切なアミノ酸は、グリシン、アルギニン、リジン、及びヒスチジンを含む。当該アミノ酸に富むタンパク質は、複合体形成剤として使用しても良い。例えばカゼインである。組成物を経口摂取する必要がある場合、当該複合体形成剤が使用される。
【0027】
両性界面活性剤は、特異的なpH範囲で顕著な等電点を示す両性界面活性剤、又は全pH範囲にわたりカチオン性であり、かつ通常顕著な等電点を示さない双性界面活性剤であってもよい。当該両性界面活性剤の例は、三置換アミン、例えば以下の式:
NR123
[式中、
1は、C6〜C22の直鎖又は分枝鎖が混じったアルキル・ラジカル或いはそのカルボニル誘導体を含む群から選ばれ、
2及びR3は、H、CH2COOX、CH2CHOHCH2SO3X、CH2CHOHCH2OPO3X、CH2CH2COOX、CH2COOX、CH2CH2CHOHCH2SO3X、又はCH2CH2CHOHCH2OPO3Xを含む群から独立して選ばれ、そしてXは、H、Na、K、又はアルカノールアミンである。但し、R2とR3の両方がHであることはなく、
さらに、R1がRCOである場合、R2はCH3であってもよく、そしてR3は(CH2CH2)N(C24OH)-H2COPO3であってもよいか、或いはR2とR3は、一緒になってN(CH2)2N(C24OH)CH2COO-であってもよい。]
で表されるアミンである。
【0028】
市販されるものの例は、Henkel/Cognisにより販売されるデリファット(DERIPHAT)、Henkel/Cognisにより販売されるデヒトン(DEHYTON)、Goldschmidtにより販売されるテゴベタイン(TEGOBETAINE)、Rhone Poulencにより販売されるミラノール(MIRANOL)である。
【0029】
カチオン性界面活性剤、例えば四級アンモニウム化合物は、ヒドロキシ化合物薬剤のリン酸化誘導体、例えばトコフェリル・ホスフェートとの複合体を形成するであろう。カチオン性界面活性剤の例は、以下:
(a)RN+(CH3)3Cl-
(b)[R2+CH32SO42-
(c)[RCON(CH3)CH2CH2CH2+(CH3)224OH]2SO42-
(d)エトミーン(Ethomeens):RN[(CH2CH2O)xCH2OH][(CH2CH2O)yCH2OH]、[式中、x及びyは独立して1〜50の整数である。]
を含む。ここでRはC8〜C22の直鎖又は分枝鎖アルキル基又は混合アルキル基である。
【0030】
親水性及び疎水性官能基を含むシリコーン界面活性剤もまた使用されてもよい。例えば、ジメチコーンPGベタイン、アモジメチコーン、又はトリメチルシリルアモジメチコーンである。例えば、Goldschmidt Chemical Co.のアバイル9950(ABILE9950)である。疎水性部分は、C6〜C22の直線若しくは分岐アルキル又は混合アルキル、例えばフルオロアルキル、フルオロシリコーン、及び/又はその混合体でありうる。親水性部分は、カルボキシアルキル基又はスルホキシ・アルキル基のアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアルカノールアミンの塩でありうる。つまり、スルタイン、ホスファタイン、若しくはホスホベタイン、又はその混合体である。
【0031】
典型的に、第二級水酸基を有する化合物のホスフェート誘導体の複合体は、(1)プラバスタチン、アトルバスタチン、又はベンラファキシンを複合体形成剤で直接中和することにより、又は(2)第二水酸基を有する化合物のホスフェート誘導体の混合ナトリウム塩を、複合体形成剤とin situで混ぜ合わせることにより作られうる。
【0032】
本発明に記載される第二級水酸基を有する化合物のホスフェート誘導体は、適切な投与経路(経口、経粘膜、経鼻、経皮、静脈内、又はそれらの組み合わせ)で使用されるとき、以下の:
(a) 脂質溶媒中への溶解の必要性及び当該化合物に付随する副作用を除外する、改良された水溶性;
(b) 初回通過代謝の程度を低減する、主にリンパ系への化合物のデリバリー;
(c) 肝臓組織への高い集積を導き、より長い排出半減期を有する肝臓組織特異性の増加;
(d) 皮膚デリバリー後の全身性生物学的利用能の増加;
(e) 改良された皮膚浸透性及び低い副作用プロフィールをもたらすスムーズな吸収キネティクスのため生じる慢性デリバリー・システムとしての潜在的有用性;
(f) 腸溶コートされたトランスファータンパク質複合体としての潜在的有用性;
(g) 活性ドメイン結合としての潜在的有用性;及び
(h) 治療効力に必要とされる薬剤量を低減するCNSにおける生物学的利用能の増加
を含む様々な利点を提供しうる。
【実施例1】
【0033】
本発明は、以下の非制限的な例を参照することにより、説明及び例示されるであろう。
【0034】
実施例1-アトルバスタチンのホスフェート誘導体の製造
アトルバスタチンの遊離酸55.8g(0.1M)及び37.2gの吉草酸ナトリウム(0.3M)を100mlトルエン中に溶解した。12.6g(0.05M)のP410を加え、そして1時間高剪断混合して、ゆっくり温度を80℃に上昇させた。10mlの水を加え、そして高剪断混合をさらに1時間60度で続けた。100mlの0.1M炭酸ナトリウム水溶液を加え、そして該混合液をゆっくり攪拌し、次に遠心分離して、該過程を繰り返した。トルエン層を回収し、そして100mlの1.0M塩酸で洗浄した。トルエン層を回収し、そしてトルエン及び吉草酸を減圧下で取り除いて、アトルバスタチンのリン酸エステルを与えた([R-(R*,R*)]−2−(4-フルオロフェニル)-βホスホノ-δ-ヒドロキシ-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H-ピロロ-1-ヘプタン酸)。
【0035】
実施例2-プラバスタチンのホスフェート誘導体の製造
プラバスタチンの遊離酸42.5g(0.1M)及び37.2gの吉草酸ナトリウム(0.3M)を100mlトルエン中に溶解した。12.6g(0.05M)のP410を加え、そして1時間高剪断混合し、温度をゆっくり80℃に上昇させた。10mlの水を加え、そして高剪断混合をさらに1時間60℃で続けた。100mlの0.1M炭酸ナトリウム溶液を加え、そして混合液をゆっくり攪拌し、次に遠心し、そしてこの過程を繰り返した。トルエン層を回収し、そして100mlの0.1M塩酸で洗浄した。トルエン層を回収し、そしてトルエンと吉草酸を減圧下で取り除いて、プラバスタチンのリン酸エステルを与えた([1S-[1α(βS*,δS*),2α,6α,8β(R*),8aα]]-1,2,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-β-ホスホノ-δ,6-ジヒドロキシ-2-メチル-8-(2-メチル-1-オキソブトキシ)-1-ナフタレンヘプタン酸)。
【0036】
実施例3-ベンラファキシンのホスフェート誘導体の製造
ベンラファキシンの遊離酸27.7g(0.1M)及び37.2gの吉草酸(0.3M)を100mlトルエン中に溶解した。12.6g(0.05M)のP410を加え、そして高剪断混合で1時間攪拌し、ゆっくり温度を80℃に上昇させた。10mlの水を加え、そして高剪断混合をさらに1時間60度で続けた。100mlの0.1M炭酸ナトリウム溶液を加え、そして混合液をゆっくり攪拌し、次に遠心し、そして当該過程を繰り返した。トルエン層を回収し、そして100mlの0.1M塩酸で洗浄した。トルエン層を回収し、そしてトルエン及び吉草酸を減圧下で取り除いてベンラファキシンのリン酸エステル(1-[-ジメチルアミノ)-1-(4-メトキシフェニル)エチル]シクロへキシル・二水素・ホスフェート)を与えた。
【0037】
実施例4-アトロバスタチンのホスファチジル誘導体の製造
アトロバスタチンの遊離酸55.8g(0.1M)及び37.2gの吉草酸ナトリウム(0.3M)を100mlトルエン中に溶解した。12.6g(0.05M)のP410を加え、そして高剪断混合で1時間混合し、温度をゆっくり80℃に上昇させた。1,2-ジステアロイル・グリセロール30gを加え、そして高剪断混合をさらに1時間60℃で続けた。100mlの0.5M水酸化ナトリウム溶液を加え、そして混合液をゆっくり攪拌し、次に遠心し、そして該過程を繰り返した。トルエン層を回収し、そして100mlの0.1M塩酸で洗浄した。トルエン層を回収し、そして該トルエン及び吉草酸を減圧下で取り除いて1,2-ジステアロイル・ホスファチジル・アトルバスタチンを与えた。アトルバスタチン・ホスフェートを水層から回収した。
【0038】
実施例5-プラバスタチンのホスファチジル誘導体の製造
プラバスタチンの遊離酸42.5g(0.1M)及び37.2gの吉草酸ナトリウム(0.3M)を100mlトルエン中に溶解した。12.6g(0.05M)のP410を加え、そして1時間高剪断混合し、温度をゆっくり80℃に上昇させた。1,2-ジステアロイル・グリセロール30gを加え、そして高剪断混合をさらに1時間60℃で続けた。100mlの0.5M水酸化ナトリウム溶液を加え、そして混合液をゆっくり攪拌し、次に遠心し、そしてこの過程を繰り返した。トルエン層を回収し、そしてトルエンと吉草酸を吸引下で取り除いて、プラバスタチンのリン酸エステルを与えた1,2-ジステアロイル・ホスファチジル・プラバスタチンを与えた。プラバスタチン・ホスフェートを水層から回収した。
【0039】
実施例6-ベンラファキシンのホスファチジル誘導体の製造
ベンラファキシンの遊離酸27.7g(0.1M)及び37.2gの吉草酸(0.3M)を100mlトルエン中に溶解した。12.6g(0.05M)のP410を加え、そして高剪断混合で1時間攪拌し、ゆっくり温度を80℃に上昇させた。1,2-ジステアロイル・グリセロール30gを加え、そして高剪断混合をさらに1時間60℃で続けた。100mlの0.5M水酸化ナトリウム溶液を加え、そして混合液をゆっくり攪拌し、次に遠心し、そして当該過程を繰り返した。トルエン層を回収し、そして100mlの0.1M塩酸で洗浄した。トルエン層を回収し、そしてトルエン及び吉草酸を減圧下で取り除いて1,2-ジステアロイル・ホスファチジル・ベンラファキシンを与えた。ベンラファキシン・ホスフェートを水層から回収した。
【0040】
実施例7-プラバスタチンのホスフェート誘導体の複合体の製造
50.45g(0.1M)のプラバスタチンのリン酸エステルを40.4g(0.1M)のラウリル-イミノ-ジプロピオネートを含む200mlの水(当量比)と混合した。混合液を、良い攪拌機で完全に混合した。終pHを少量のどちらかの要素を使用して所望のpHに調節した。次に混合液を凍結乾燥して、固体複合体を粉末(32-33%活性)として与えた。
【0041】
実施例8-プラバスタチンのホスフェート誘導体の複合体の製造
50.45g(0.1M)のプラバスタチンのリン酸エステルを、17.4g(0.1M)のアルギニンを含む200mlの水(当量比)と混合した。混合液を、良い攪拌機で完全に混合した。終pHを、少量のどちらかの要素を使用して所望のpHに調節した。混合液を次に凍結乾燥して、固体複合体を粉末として与えた。
【0042】
実施例9-ベンラファキシンのホスファチジル誘導体の複合体の製造
88.4g(0.1M)のベンラファキシン・ホスファチドを40.4g(0.1M)のラウリル-イミノ-ジプロピオネートを含む200mlの水(当量比)と混合した。混合液を良い攪拌機で完全に混合した。終pHを少量のどちらかの要素を使用して所望のpHに調節した。混合液を次に凍結乾燥して、固体ホスファチジル・ベンラファキシン・デリファット(deriphat)複合体を粉末として与えた。
【0043】
実施例10-ベンラファキシンのホスファチジル誘導体の複合体の製造
88.4g(0.1M)のベンラファキシン・ホスファチドを、17.4g(0.1M)のアルギニンを含む200mlの水(当量比)と混合した。混合液を良い攪拌機で完全に混合した。終pHを、少量のどちらかの要素を使用して、所望されるpHに調節した。混合液を凍結乾燥して、固体ホスファチジル・ベンラファキシン・アルギニン複合体を粉末として与えた。
【0044】
本明細書及び特許請求の範囲中で使用される「含む」という単語、及び「含む」という単語の形は、特許請求される本発明がバリアント又は添加物を排除することを限定するものではない。
【0045】
本発明を改変及び改良することは、当業者にとって明らかであろう。そうした改変及び改良は、本発明の範囲内に入るものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラバスタチン及びその誘導体、アトルバスタチン及びその誘導体、ベンラファキシン及びその誘導体、並びにそれらの混合体からなる群から選ばれる化合物のホスフェート誘導体。
【請求項2】
前記ホスフェート誘導体が、ホスファチドである、請求項1に記載のホスフェート誘導体。
【請求項3】
前記ホスフェート誘導体が複合体であり、該複合体形成剤が、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及び当該アミノ酸に富むタンパク質、並びにそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項1に記載のホスフェート誘導体。
【請求項4】
前記複合体形成剤が、グリシン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、及びラウリル-イミノ-ジプロピオネートからなる群から選ばれる、請求項3に記載のホスフェート誘導体。
【請求項5】
以下の:
ステップ(a) 脂肪酸のアルカリ金属塩の存在下で、第二級水酸基を有する化合物をP410と反応させる
を含む該第二級水酸基を有する化合物のリン酸化方法。
【請求項6】
前記第二級水酸基を有する化合物が、プラバスタチン、アトルバスタチン、又はベンラファキシンからなる群から選ばれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記脂肪酸のアルカリ金属塩が、吉草酸ナトリウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
以下の:
ステップ(b) 前記ステップ(a)の生成物を、ジ又はモノ・アシル・グリセリドと反応させて、ホスファチドを形成する
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
以下の:
ステップ(b’) 前記ステップ(a)の生成物を、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及び当該アミノ酸に富むタンパク質を含む群から選ばれる複合体形成剤と反応させる
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
以下の:
ステップ(c) 前記ステップ(b)の生成物を、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及び当該アミノ酸に富むタンパク質を含む群から選ばれる複合体形成剤と反応させる
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記複合体形成剤が、グリシン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、及びラウリル-イミノ-ジプロピオネートからなる群から選ばれる、請求項9又は10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
脂肪酸のアルカリ金属塩の存在下でP410と反応する第二級水酸基を有する化合物の反応生成物を含むホスフェート誘導体。
【請求項13】
[R-(R*,R*)]−2−(4-フルオロフェニル)-β-ホスホノ-δ-ヒドロキシ-5−(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1H-ピロール-1-ヘプタン酸、[1S-[1α(βS*,δS*),2α,6α,8β(R*),8aα]]-1,2,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-β-ホスホノ-δ,6-ジヒドロキシ-2-メチル-8-(2-メチル-1-オキソブトキシ)-1-ナフタレンヘプタン酸、1-[−(ジメチルアミノ)-1-(4-メトキシフェニル)エチル]シクロへキシル・二水素ホスフェート、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、ホスフェート誘導体。
【請求項14】
1,2-ジステアロイル・ホスファチジル・アトルバスタチン、1,2-ジステアロイル・ホスファチジル・プラバスタチン、1,2-ジステアロイル・ホスファチジル・ベンラファキシン、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、ホスフェート誘導体。
【請求項15】
患者の血清コレステロール・レベルを低下するために該患者に投与される、請求項1〜3、又は12〜14のいずれか1項に記載のホスフェート誘導体。
【請求項16】
うつ病を治療するために患者に投与される、請求項1〜3、又は12〜14のいずれか1項に記載のホスフェート誘導体。

【公表番号】特表2006−523621(P2006−523621A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504007(P2006−504007)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000490
【国際公開番号】WO2004/092186
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(503129590)バイタル ヘルス サイエンシズ プロプライアタリー リミティド (11)
【Fターム(参考)】