説明

第3級アルコールの製造方法

【課題】本発明は、簡便で且つ工業的に有利な第3級アルコールの製造方法を提供する。
【解決手段】Sr存在下、CO又はその等価体と、下記一般式(1)


(式中、Rは、アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、或いは置換基を有していてもよいベンジル基を示す)
で表されるヨウ化物とを反応させることにより、下記一般式(2)


(式中、Rは上記と同じ)
で表される第3級アルコールを得る、
第3級アルコールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Barbier(バルビエール)型反応を利用した第3級アルコールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬合成、機能性材料合成等に幅広く用いられている代表的なアルキル化反応として、グリニャール(Grignard)反応が知られている。グリニャール反応では、マグネシウム等の金属とハロゲン化アルキルとから予めグリニャール試薬を調製しておき、該試薬をカルボニル化合物と反応させて、カルボニル基にアルキル基が導入される。
【0003】
しかしながら、グリニャール反応は、少なくとも2段階の反応を要し、工業的な製法として適していない。
【0004】
グリニャール反応の簡便法としてバルビエール(Barbier)型反応が知られている。この反応は、反応系内において金属、ハロゲン化アルキル及びカルボニル化合物を同時に混合し、反応系内でグリニャール試薬を形成させつつグリニャール反応を行って、カルボニル基にアルキル基を導入する技術である。
【0005】
例えば、非特許文献1には、金属としてSmI(samarium diiodide)を使用し、ハロゲン化アルキル及びエステルからバルビエール型反応により第3級アルコールを製造する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法は、SmIと共にNiI等の反応触媒を反応系内に存在させることを必須としている。該反応で用いられるNiI等の反応触媒は、反応終了後に反応混合物から分離する必要がある等、反応操作が煩雑となり、工業的には極めて不利である。更に、SmI及びNiI等の反応触媒は、比較的高価な化合物であり、また、SmIはテトラヒドロフラン等の溶剤に対する溶解性が乏しいため、0.1モル/リットル程度の低濃度でしか用いることができないが、SmIを低濃度で使用する場合には逆に大量の溶剤が必要になるので、大量合成には適していない。
【0007】
また、非特許文献2では金属としてAl(aluminium)を使用し、ハロゲン化アリル及びエステルからバルビエ型反応により第3級アルコールを製造する方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、非特許文献2に記載の方法は、Alと共にPbBr等の反応触媒を反応系内に存在させることを必須としている。該反応で用いられるPbBr等の反応触媒は、排水基準が厳しく、反応終了後に反応混合物から分離する必要がある等、反応操作が煩雑となり、工業的には極めて不利である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Henri B. Kagan et. al., SYNLETT, 633頁, July号1996巻
【非特許文献2】Hideo Tanaka et. al., Inorganica Chimica Acta, 296巻, 204-207頁, 1999年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、簡便で且つ工業的に有利な第3級アルコールの製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の原料を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記の第3級アルコールの製造方法に係る。
1. Sr存在下、CO又はその等価体と、下記一般式(1)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rは、アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、或いは置換基を有していてもよいベンジル基を示す)
で表されるヨウ化物とを反応させることにより、下記一般式(2)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Rは上記と同じ)
で表される第3級アルコールを得る、
第3級アルコールの製造方法。
2. 前記等価体が、下記一般式(3)
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、ROはアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいフェニルオキシ基、又は置換基を有していてもよいベンジルオキシ基を示す)
で表される化合物である上記項1に記載の製造方法。
3. 前記ROが、メトキシ基、エトキシ基、又はベンジルオキシ基である上記項2に記載の製造方法。
4. 前記反応が、エーテル系溶媒中で行われる上記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
5. さらに、下記一般式(4)
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、Rは上記と同じ)
で表されるカルボン酸が得られる上記項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【0021】

本発明の第3級アルコールの製造方法は、
Sr存在下、CO又はその等価体と、下記一般式(1)
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、Rは、アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、或いは置換基を有していてもよいベンジル基を示す)
で表されるヨウ化物とを反応させることにより、下記一般式(2)
【0024】
【化6】

【0025】
(式中、Rは上記と同じ)
で表される第3級アルコールを得る方法である。
【0026】
<Sr>
本発明の製造方法は、触媒としてSr(金属ストロンチウム)を用いることにより、CO又はその等価体と前記ヨウ化物との反応を効率よく進行させ、目的の第3級アルコールを得ることができる。また、Srは、金属ナトリウムのように空気中で容易に発火することがなく安全に使用できる。
【0027】
前記反応において、Srは予め前記ヨウ化物と反応して、下記一般式(5)で表されるSr錯体を形成するものと考えられる。
【0028】
【化7】

【0029】
(式中、Rは前記と同じ)
Srとしては、市販品を用いることができる。市販品として流動パラフィン中に保存された状態で塊状のものを用いる場合には、予めn−ヘキサンにて洗浄し、細かく刻み、乾燥させておくことが望ましい。
【0030】
前記反応におけるSrの使用量は、前記反応が効率よく進行できる範囲内で適宜設定すればよいが、例えば、前記CO等価体を反応させる場合、該等価体1molに対して、3〜10mol程度が好ましく、3.5〜6mol程度がより好ましく、4mol程度がさらに好ましい。
【0031】
<ヨウ化物(1)>
本発明の製造方法では、下記一般式(1)
【0032】
【化8】

【0033】
(式中、Rは、アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、或いは置換基を有していてもよいベンジル基を示す)
で表されるヨウ化物を反応させる。
【0034】
前記ヨウ化物を用いることにより、目的の第3級アルコールを効率よく得ることができる。例えば、ヨウ化物ではなく、臭化物、塩化物等を用いる場合には、反応性が低く、第3級アルコールが十分に得られない。
【0035】
前記アルキル基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等を例示できる。
【0036】
前記置換基を有していてもよいフェニル基の置換基の種類、置換位置及び置換基の数は、特に限定されるものではない。
【0037】
前記置換基としては、例えば、炭素数1〜10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、炭素数7〜10のアラルキル基、その他種々の官能基等が挙げられる。
【0038】
前記炭素数1〜10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、及びトリフルオロメチル基、ヘプタデカフルオロオクチル基等のパーフルオロアルキル基を例示できる。
【0039】
前記炭素数6〜14の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等を例示できる。
【0040】
前記炭素数7〜10のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等を例示できる。
【0041】
前記官能基としては、アミノ基、(ジ)アルキルアミノ基、アミド基、(ジ)アルキルアミド基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、イミノ基、シアノ基、ホルミル基、ケトン基、エステル基、アセタール基、カルボキシル基、トリアルキルシリル基等を例示できる。
【0042】
なお、前記アルキル基、芳香族炭化水素基及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば前記例示の官能基が挙げられる。
【0043】
前記置換基の置換位置は、o-、m-、p-のいずれでもよい。
【0044】
前記置換基の数は、通常、1〜5の範囲内である。
【0045】
前記置換基を有していてもよいベンジル基の置換基の種類、置換位置及び置換基の数は、特に限定されるものではない。例えば、「置換基を有していてもよいフェニル基」で示した置換基が挙げられる。置換位置及び置換基の数についても「置換基を有していてもよいフェニル基」と同様である。
【0046】
特に、一般式(1)においてRとしては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素数6〜10の芳香族炭化水素基が好ましく、n−ブチル基およびフェニル基がより好ましい。Rがn−ブチル基およびフェニル基であるヨウ化物を反応させる場合、高収率で目的の第3級アルコール(一般式(2))が得られる。
【0047】
前記ヨウ化物は、公知の方法により合成するか、市販品を購入することにより容易に入手できる。
【0048】
前記反応における前記ヨウ化物の使用量は、反応が十分に進行する範囲内で適宜設定すればよい。例えば、前記CO等価体を反応させる場合、該等価体1molに対して、3〜10mol程度が好ましく、3.5〜6mol程度がより好ましく、4mol程度がさらに好ましい。
【0049】
<CO又はその等価体>
本発明の製造方法では、CO又はその等価体を反応させる。本発明の製造方法では、CO又はその等価体のカルボニル炭素に、前記一般式(5)のSr錯体のR1−が求核攻撃することにより、一般式(2)の第3級アルコールを生成させる。
【0050】
本明細書における「COの等価体」とは、前記ヨウ化物に対してCOと同等の反応性を示すCO誘導体を意味する。例えば、炭酸エステル誘導体、ウレタン誘導体、ウレア(尿素)誘導体等が挙げられる。
【0051】
具体的に、前記等価体としては、下記一般式(3)
【0052】
【化9】

【0053】
(式中、ROはアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいフェニルオキシ基又は置換基を有していてもよいベンジルオキシ基を示す)
で表される化合物が挙げられる。
【0054】
前記アルキルオキシ基、前記置換基を有していてもよいフェニルオキシ基、及び前記置換基を有していてもよいベンジルオキシ基としては、前記ROのR部分が、上記一般式(1)のRにおいて示した前記アルキル基、前記置換基を有していてもよいフェニル基、及び前記置換基を有していてもよいベンジル基である基が挙げられる。
【0055】
特に、一般式(3)においてRとしては、メトキシ基、エトキシ基又はベンジルオキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。一般式(3)のRがメトキシ基、エトキシ基又はベンジルオキシ基であるCO等価体を反応させる場合、効率よく反応が進行し、目的の第3級アルコール(2)が高収率で得られやすくなる。
【0056】
前記等価体は、公知の方法により合成するか、市販品を購入することにより容易に入手できる。
【0057】
<その他の反応条件>
前記反応は、通常、溶媒中で行われる。前記溶媒としては、前記反応が進行する限り特に限定されるものではないが、エーテル系溶媒が好ましく、テトラヒドロフラン(THF)がより好ましい。
【0058】
前記溶媒の使用量は、前記ヨウ化物1mmolに対して、通常1〜10ml程度、好ましくは2〜4ml程度である。
【0059】
前記反応における反応雰囲気は、前記反応においてCO等価体ではなくCOを反応させる場合はCO雰囲気であればよく、COではなくCO等価体を反応させる場合は空気下又は不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス等)下のいずれであってもよい。
【0060】
前記反応における反応温度は、通常10〜35℃程度である。
【0061】
前記反応における反応時間は、通常30分〜2時間程度、好ましくは1〜2時間程度である。
【0062】
<第3級アルコール(2)等>
本発明の製造方法によれば、下記一般式(2)
【0063】
【化10】

【0064】
(式中、Rは上記と同じ)
で表される第3級アルコールを効率よく得ることができる。
【0065】
特に、本発明の製造方法によれば、一般式(2)のRが炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、好ましくはn−ブチル基およびフェニル基である第3級アルコールが好適に得られる。
【0066】
前記第3級アルコールは、前記反応後、常法の後処理操作を行うことにより得られる。例えば、前記反応後、濃縮等を行った後に、必要に応じて再結晶、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製操作を行うことにより、高純度の前記第3級アルコールを得ることができる。
【0067】
前記第3級アルコールは、種々の用途に利用できる。例えば、産業上有用な種々の化合物の出発物質として使用する等、多くの用途に利用できる。
【0068】
本発明の製造方法では、前記反応により、第3級アルコール(2)以外の化合物がさらに生成してもよい。例えば、前記反応において、CO等価体ではなくCOを用いた場合、前記第3級アルコール(2)以外に、下記一般式(4)
【0069】
【化11】

【0070】
(式中、Rは上記と同じ)
で表されるカルボン酸を得ることができる。
【0071】
特に、本発明の製造方法によれば、一般式(4)のRが炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素数6〜10の芳香族炭化水素基が、より好ましくはおよびフェニル基であるカルボン酸が好適に得られる。
【0072】
前記カルボン酸は、前記反応後、常法の後処理操作を行うことにより得られる。例えば、前記反応後、濃縮等を行った後に、必要に応じて再結晶、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製操作を行うことにより、高純度の前記カルボン酸を得ることができる。
【0073】
本発明の製造方法では、前記第3級アルコールと前記カルボン酸との生成比率を制御することができる。例えば、前記ヨウ化物の使用量の調整、反応時間の調整等を行うことにより前記生成比率を制御できる。
【発明の効果】
【0074】
本発明の製造方法によれば、一般式(2)で表される第3級アルコールを高収率、高純度で製造できる。本発明の製造方法は、ワンポットで第3級アルコールを製造することができ、2段階の反応を経て第3級アルコールを製造するグリニャール法に比べ、非常に簡便であるため、工業的に極めて有利な方法と言える。
【0075】
本発明の製造方法で使用されるSr、ヨウ化物、CO、CO等価体等の原料は、いずれも入手が容易で安価な化合物である。Srは、特に廃液処理の基準がなく、反応終了後に反応混合物から分離する必要がない。そのため、反応後の後処理操作が極めて簡易である。また、Srは、金属ナトリウムのように空気中で容易に発火する問題点を有していない。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0077】
以下の実施例においては、溶媒として用いたTHFは、ナトリウム−ベンゾフェノンより使用直前に蒸留したものを用いた。
【0078】
薄層クロマトグラフィーには、Wakogel-B5F(シリカゲル)を用い、カラムクロマトグラフィーには、Silica Gel 60(230-400 mesh)(ナカライテスク製)あるいはAluminium Oxide, activated(about 200 mesh)(和光純薬工業製)を用いた。
【0079】
各種分析値は、下記の分析装置を用い測定した。
H−核磁気共鳴スペクトル(H−NMRスペクトル)
400 MHz ; JEOL EX-400 (日本電子製)あるいは300MHz ; JEOL AL-300 (日本電子製)赤外線吸収スペクトル (IRスペクトル)
FT-IR ; SHIMAZDU FTIR-8400(島津製作所製)
【0080】
実施例1
無水ヘキサン中にて小片に刻んだ塊状の金属ストロンチウム(333.0 mg, 3.80 mmol)を、アルゴン風船とラバーセプタムを装着した30 mlの2口フラスコ中にて減圧乾燥した。そして、前記アルゴン風船を外し、代わりにCOを充填した風船を取り付け、フラスコ内をCO2置換を行った後、無水THF(1 ml)を加え、マグネチックスターラーを用い15分間良く攪拌し、CO2をTHFに溶かし、ヨウ化ベンゼン(PhI, 640.0 mg, 3.14 mmol)を加えた。24時間室温にて攪拌後、1N塩酸(15 ml)を加えて反応を停止し、エーテル(30 ml×3)にて抽出操作を行い有機層を分離した。有機層を5% 亜硫酸水素ナトリウム水溶液並びに飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムを用いて脱水させた。THFを留去後、薄層クロマトグラフィー(TLC, ヘキサン:酢酸エチル=8:1)にて精製単離し、トリフェニルカルビノール(トリチルアルコール)(84.2 mg, 収率30 %)と安息香酸(47.2 mg, 収率12 %)を得た(収率はいずれもヨウ化ベンゼンを基準に計算)。構造決定は、1H NMR及びIRを測定し、市販の標品と一致することにより確認した。
Triphenylmethanol
1H-NMR (400MHz,CDCl3); δ=7.19-7.3 (m, 15H), 2.85(s, 1H)
13C-NMR (100MHz,CDCl3); δ= 81.96 , 127.19 , 127.86 , 127.88 , 146.79
IR(KBr); 3481, 1597, 1490, 1446, 1157, 1010, 759, 700 cm-1
Benzoic acid
1H-NMR (400MHz,CDCl3); δ=10.26(brs, 1H), 8.12(d, J=7.2Hz, 2H), 7.62(t, 7.6Hz, 1H), 7.48(t, 7.6Hz, 2H)
IR(KBr); 3063, 1684, 1453, 1423, 1324, 1290, 933, 708, 668 cm-1
【0081】
実施例2
COを充填した風船(CO供給源)を取り付けずに、フラスコ内をアルゴン置換し、無水THFの添加量を2mlとし、COの代わりに炭酸ジメチル(1.04 mmol, 93.7 mg)を添加しアルゴンガス下で反応させ、且つ、ヨウ化ベンゼンの使用量を該炭酸ジメチル1molに対し4molとし、撹拌時間(反応時間)を60分間とした以外は実施例1と同様の方法により反応させ、反応後の後処理を行った。なお、単離にはカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1~0:1)を用いた。
【0082】
以上の方法により、トリチルアルコールが得られた。トリチルアルコールの収率は、67%であった。
【0083】
実施例3
反応時間を35分間とした以外は、実施例2と同様の方法によりトリチルアルコールを製造した。トリチルアルコールの収率は、61%であった。
【0084】
実施例4
ヨウ化アリールの使用量を前記炭酸ジメチル1molに対し5molとした以外は実施例2と同様の方法により、トリチルアルコールを製造した。トリチルアルコールの収率は、64%であった。
【0085】
実施例5
Srをn−ヘキサンで洗浄し、彫刻刀で細かく刻み、乾燥させる作業をグローブボックスを用いてアルゴンガス中で行う以外は実施例2と同様の方法により、トリチルアルコールを製造した。トリチルアルコールの収率は、62%であった。
【0086】
実施例6〜8及び比較例1
ヨウ化アリールの代わりに、下記表1に示す化合物を用いる以外は、実施例2と同様の方法により、トリチルアルコールを製造した。トリチルアルコールの収率を表1に示す。
【0087】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sr存在下、CO又はその等価体と、下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、或いは置換基を有していてもよいベンジル基を示す)
で表されるヨウ化物とを反応させることにより、下記一般式(2)
【化2】

(式中、Rは上記と同じ)
で表される第3級アルコールを得る、
第3級アルコールの製造方法。
【請求項2】
前記等価体が、下記一般式(3)
【化3】

(式中、ROはアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいフェニルオキシ基、又は置換基を有していてもよいベンジルオキシ基を示す)
で表される化合物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ROが、メトキシ基、エトキシ基、又はベンジルオキシ基である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記反応が、エーテル系溶媒中で行われる請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
さらに、下記一般式(4)
【化4】

(式中、Rは上記と同じ)
で表されるカルボン酸が得られる請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−51904(P2011−51904A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199807(P2009−199807)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】