説明

第Xa因子阻害剤の合成方法

式IIの化合物又はその薬学的に許容される塩の新規調製方法を本明細書中に記載する。一部の実施形態において、この方法は、ベトリキサバン又はその薬学的に許容される塩を調製するための方法である。実質的に純粋なベトリキサバンの遊離塩基又はその塩を含む組成物も記載する。本発明はまた、式IIの化合物から、その薬学的に許容される塩であるマレイン酸塩への変換にも関する。ベトリキサバンのマレイン酸塩は、優れた結晶性、熱安定性及び加水分解安定性並びに純度を有する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願への相互参照)
本出願は、米国特許法§119(e)の下で、2009年12月17日に出願された米国仮特許出願第61/287,680号に対する利益を主張する。この米国仮特許出願第61/287,680号の全内容は、参考として本明細書に援用される。
【0002】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、第Xa因子阻害剤の合成方法並びにその中間体及び薬学的に許容される塩の合成を対象とする。実質的に純粋なベトリキサバンの遊離塩基又はベトリキサバンのマレイン酸塩を含む組成物も本明細書中に記載する。
【背景技術】
【0003】
(技術水準)
第Xa因子、セリンプロテアーゼは、血液凝固経路において重要な役割を果たす。第Xa因子の直接阻害は、血栓性疾患の治療において効率的な抗凝固ストラテジーであると考えられている。
【0004】
特許文献1は、ベンズアミドをベースとする化合物の種類を、特異的な第Xa因子阻害剤として開示している。詳細には、特許文献1は、実施例206として特定される化合物を記載している。この化合物はまた、特許文献2においても実施例206として開示されており、本明細書中において、式I:
【0005】
【化1】

の化学式を有するベトリキサバンと同定されている。
【0006】
血栓性疾患の治療におけるベンズアミド化合物の関連性の観点から、これらの化合物及びそれらの中間体の効率的な製造方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,376,515号明細書
【特許文献2】米国特許第6,835,739号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、式IIの化合物、例えば、ベトリキサバンの遊離塩基又はその塩の調製方法及び回収方法を対象とする。この方法はまた、式IIの中間体化合物の調製及びその回収を含む。
【0009】
一態様では、本発明は、式II
【0010】
【化2】

[式中、
及びRは独立して、C1〜6アルキルであり、
及びRは独立して、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ及びメトキシからなる群から選択され、
は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びメトキシからなる群から選択される]
の化合物又はその塩の調製方法であって、式IIの化合物又はその塩を形成するための反応条件下で、式II−A:
【0011】
【化3】

の化合物と式II−B:
【0012】
【化4】

の化合物とを接触させるステップを含む方法を対象とする。
【0013】
一実施形態において、本発明は、ベトリキサバン又はその塩の調製方法であって、ベトリキサバン又はその塩を形成するための反応条件下で式A:
【0014】
【化5】

の化合物と式B:
【0015】
【化6】

の化合物とを接触させるステップを含む方法を提供する。
【0016】
一部の実施形態において、この方法は、塩基の添加によってベトリキサバンの遊離塩基を回収するステップをさらに含む。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、ベトリキサバン:
【0018】
【化7】

又はその塩の調製方法であって、
a)溶媒としてアセトニトリルを任意選択により含む反応条件下で式D:
【0019】
【化8】

の化合物と式E:
【0020】
【化9】

の化合物とを接触させて、式C:
【0021】
【化10】

の化合物を形成するステップと、
b)式B:
【0022】
【化11】

の化合物を形成するための反応条件に式Cの化合物を曝露するステップと、
c)ベトリキサバン又はその塩を形成するための反応条件下で式Bの化合物と式A:
【0023】
【化12】

の化合物とを接触させるステップと
を含む方法を提供する。
【0024】
一部の実施形態において、この方法は、式IIの化合物又はその塩と酸とを接触させて、式IIの化合物の薬学的に許容される塩を生成するステップをさらに含む。一部の実施形態において、この方法は、式IIの化合物の薬学的に許容される塩を回収するステップをさらに含む。一実施形態において、ベトリキサバンの薬学的に許容される塩は、マレイン酸塩である。別の実施形態において、この方法は、ベトリキサバンのマレイン酸塩を形成するための反応条件下で10℃から40℃の間の温度においてC1〜4アルカノールと水との溶媒混合物中で、ベトリキサバン又はその塩と少なくとも1モル当量のマレイン酸とを接触させるステップを含む。
【0025】
別の実施形態において、本発明は、大規模な、例えば、グラム規模又はキログラム規模の、ベトリキサバン又はその薬学的に許容される塩の調製方法を提供する。
【0026】
さらに別の実施形態において、実質的に純粋なベトリキサバンの遊離塩基又はベトリキサバンのマレイン酸塩を提供する。一部の実施形態において、本発明は、実質的に純粋なベトリキサバンの遊離塩基又はベトリキサバンのマレイン酸塩を含む組成物を対象とする。一実施形態において、この組成物は、少なくとも99.3%のベトリキサバンの遊離塩基を含む。さらに別の実施形態において、この組成物は、少なくとも99.7%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む。化合物L及び/又は化合物M:
【0027】
【化13】

を実質的に含まないベトリキサバンの遊離塩基又はそのマレイン酸塩を含む組成物も提供する。
【0028】
さらに別の実施形態において、本発明は、
(1)ベトリキサバンの遊離塩基を形成するための反応条件下で式A
【0029】
【化14】

の化合物と式B
【0030】
【化15】

の化合物とを接触させるステップと、
(2)(1)において99.3%以上の純度で得られたベトリキサバンの遊離塩基を回収するステップと
によって得ることができる、少なくとも99.3%のベトリキサバンの遊離塩基を含む組成物を提供する。
【0031】
さらに別の実施形態において、本発明は、
1)ベトリキサバン又はその塩を形成するための反応条件下で式A
【0032】
【化16】

の化合物と式B
【0033】
【化17】

の化合物とを接触させるステップと、
(2)塩形成条件下で、(1)において得られたベトリキサバン又はその塩とマレイン酸とを接触させて、ベトリキサバンのマレイン酸塩を形成するステップと、
(3)(2)において99.7%以上の純度で得られたベトリキサバンのマレイン酸塩を回収するステップと
によって得ることができる、少なくとも99.7%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む組成物を提供する。
【0034】
上記方法をより大きい規模で実施する場合であっても、純度は不変であることが企図される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、スキーム1に記載する方法によって得られたベトリキサバンのマレイン酸塩の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のクロマトグラムを示す。
【図2】図2は、本発明の方法によって得られたベトリキサバンのマレイン酸塩の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のクロマトグラムを示す。
【図3】図3は、本発明の方法によって得られたベトリキサバンのマレイン酸塩の赤外線(IR)スペクトルを示す。
【図4】図4は、本発明の方法によって得られたベトリキサバンのマレイン酸塩の示差走査熱量測定(DSC)を示す。
【図5】図5は、本発明の方法によって得られたベトリキサバンのマレイン酸塩及びスキーム1に記載する方法によって得られた参照標準のX線粉末回折(XRPD)パターンのオーバレイを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(発明の詳細な説明)
米国特許第6,844,367号(’367の特許)の一部継続出願である米国特許第6,376,515号に考察されているように、ベトリキサバンを含む、ある種類のベンズアミド化合物は、強力なXa阻害剤である。本発明は、式IIの化合物、例えば、ベトリキサバンの新規合成に関係する。本発明はまた、式IIの化合物を、その薬学的に許容される塩、例えば、ベトリキサバンのマレイン酸塩に変換することに関係する。ベトリキサバンのマレイン酸塩は、優れた結晶性、熱安定性及び加水分解安定性並びに純度を有する。本発明は、グラム規模及びキログラム規模での、式IIの化合物又は薬学的に許容される塩の合成に関係する。
【0037】
I.定義
明細書及び特許請求の範囲で使用する単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈からそうでないことを明確に示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0038】
本明細書中で使用する用語「〜を含む」は、組成物及び方法が、列挙された要素を含むが、他の要素を除外しないことを意味することを意図する。「〜から本質的になる」は、組成物及び方法を定義するために使用する場合、組合せに対して本質的に重大な他の要素を除外することを意味するものとする。例えば、本明細書中に定義した要素から本質的になる組成物は、特許請求の範囲に記載した本発明の新規特徴を物質的に変えることのない要素は除外しない。「〜からなる」は、微量を超える量の列挙した他の成分及び列挙した他の実質的な方法ステップを除外することを意味するものとする。これらの移行語(transition term)の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0039】
本明細書中で使用する「ベトリキサバン」は、式I:
【0040】
【化18】

の化学式を有する化学的化合物(chemical compound)を指す。
【0041】
一部の実施形態において、ベトリキサバンは、化合物が1つ又は複数のプロトンを受容するか又は1対若しくは複数対の電子を供与することができることを意味する「遊離塩基」と称する。即ち、アミン基はプロトン化されていない。
【0042】
本明細書中で使用する用語「C1〜4アルカノール」は、水素原子の1つがヒドロキシ(OH)基で置換されている炭素原子数1〜4の一価飽和脂肪族ヒドロカルビル化合物を指す。C1〜4アルカノールの例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール及びt−ブタノールが挙げられる。
【0043】
本明細書中で使用する用語「C1〜6アルキル」は、炭素原子数1〜6の一価飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語は、一例として、メチル(CH−)、エチル(CHCH−)、n−プロピル(CHCHCH−)、イソプロピル((CHCH−)、n−ブチル(CHCHCHCH−)、イソブチル((CHCHCH−)、sec−ブチル((CH)(CHCH)CH−)、t−ブチル((CHC−)及びn−ペンチル(CHCHCHCHCH−)などの直鎖及び有枝鎖状ヒドロカルビル基を含む。
【0044】
本明細書中で使用する用語「溶媒」は、固体、液体又は気体溶質を溶解させて溶液を形成する液体を指す。一般的な溶媒は当業界で周知であり、一般的な溶媒としては、水;飽和脂肪族炭化水素、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及び他の石油エーテル;芳香族炭化水素類、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど;ハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素など;脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど;エーテル、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど;ケトン、例えば、アセトン、エチルメチルケトンなど;エステル、例えば、酢酸メチル、酢酸エチルなど;窒素含有溶媒、例えば、ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ピリジン、N−メチルピロリドン、キノリン、ニトロベンゼンなど;イオウ含有溶媒、例えば、二硫化炭素、ジメチルスルホキシド、スルホランなど;リン含有溶媒、例えば、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどが挙げられるが、これらに限定するものではない。用語溶媒は、そうでないことが明確に示されない限り、2種以上の溶媒の組合せを含む。適切な溶媒の個々の選択は、溶媒の性質及び溶解させる溶質並びに使用目的、例えば、溶液中で起こるであろう化学反応を含む多くの要因に左右され、当業界で一般に公知である。
【0045】
本明細書中で使用する用語「接触(させる)」は、2種以上の化学分子間の反応が起こり得るように、その2種以上の化学分子を近傍に位置させることを指す。例えば、接触は、化学物質の混合及び場合によっては、連続的な混合を含むことができる。接触は、1種以上の溶媒中での2種以上の化学物質の完全な若しくは部分的な溶解または懸濁、溶媒中の化学物質と、固相及び/若しくは気相中の別の化学物質又は固体担体、例えば、樹脂上に付着している別の化学物質との混合、あるいは気相若しくは固相中で、かつ/又は固体担体上での2種以上の化学物質の混合によって実施でき、これらは一般に当業者に公知である。
【0046】
本明細書中で使用する用語「反応条件」は、化学反応が進行する状況の詳細を指す。反応条件の例としては、以下:反応温度、溶媒、pH、圧力、反応時間、反応体のモル比、塩基若しくは酸又は触媒の存在などのうち1つ又は複数が挙げられるが、これらに限定するものではない。反応条件は、その条件が使用される特定の化学反応にちなんで名付けることができ、例えば、カップリング条件、水素化条件、アシル化条件、還元条件、塩形成条件などである。公知反応の反応条件は、当業者に一般に公知である。
【0047】
用語「酸」は、プロトンを供与することができるか又は別の化学種から1対の電子を受容できる化学種を指すことを意図とする。酸の例としては、有機酸、例えば、カルボン酸(例えば、マレイン酸、乳酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、尿酸など)及びスルホン酸類(例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸);鉱酸(例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸、臭化水素酸);並びにルイス酸が挙げられる。本明細書中で使用する用語「ルイス酸」は、1対の電子を受容できる電子不足種を指す。本発明において使用できるルイス酸の例は、金属の陽イオン及びそれらの錯体であり、このような金属には、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛、チタン、クロム、銅、ホウ素、スズ、水銀、鉄、マンガン、カドミウム、ガリウム及びバリウムが含まれる。金属錯体としては、ヒドロキシド、アルキル、アルコキシド、ハロゲン化物及び有機酸配位子(例えば、アセテート)を含むが、これらに限定されない1種又は複数種のイオンを挙げることができる。
【0048】
本明細書中で使用する用語「塩基」は一般に、水素イオンを受容できる化学的化合物を指す。用語「無機塩基」は、塩基として作用できる無機化合物を指す。無機塩基の例としては、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム(KOH)、水酸化バリウム(Ba(OH))、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)及び水酸化マグネシウム(Mg(OH))が挙げられるが、これらに限定するものではない。用語「有機塩基」は、塩基として作用できる有機化合物を指す。無機塩基の例としては、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0049】
本明細書中で使用する用語「塩形成条件(salt formation conditions又はsalt forming conditions)」は一般に、例えばベトリキサバンなどの塩基性基を有する化合物と、有機酸又は無機酸との間で塩を形成するのに使用される条件を指す。塩形成条件としては、塩基性基を有する分子及び酸を溶媒又は溶媒混合物中で一定時間、一定温度の下で混合することを挙げることができ、これは当業者には一般に公知である。あるいは、化合物を、イオン交換樹脂に通して所望の塩を形成してもよく、塩の形態の生成物を、同じ一般的方法を用いて別の塩に変換してもよい。第1の塩は次に、マレイン酸塩などの第2の塩に変換できる。塩形成条件は、酸が、化合物を形成する反応の副生成物(前記化合物の塩が形成される)である条件ともなり得る。
【0050】
本明細書中で使用する用語「カップリング条件」は一般に、2つの化学物質(chemical entity)がカップリング試薬によって接続されて1つの化学物質を形成するカップリング反応に使用される条件を指す。ある場合には、カップリング反応は、カルボン酸基を有する化合物を、アミノ基を有する化合物に接続して、アミド結合を有する化合物を形成する反応を指し、この反応は「アミドカップリング反応」と称されることもある。カップリング条件は一般に、カップリング試薬、例えば、アミドカップリング反応におけるアミドカップリング試薬を含む。一般的なアミドカップリング試薬としてはさらに、オキシ塩化リン(POCl)、2−プロパンホスホン酸無水物(T3P)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,2,5−トリアジン(CDMT)、カルボジイミド、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)及び1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド又はN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)が挙げられるが、これらに限定するものではない。カルボジイミドは、ジメチルアミノピリジン(DMAP)又は1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)などの添加剤と共に使用してもよい。アミドカップリング試薬としてはさらに、アミニウム(amininum)及びホスホニウム系試薬、例えば、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキシド(HATU)、N−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)(ジメチルアミノ)メチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキシド(HBTU)及びベンゾトリアゾール−1−イル−N−オキシ−トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)が挙げられる。アミドカップリング条件は、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMA)、酢酸エチル(EtOAc)、アセトニトリル又はそれらの混合物などの溶媒を含むことができ、また、ピリジン、トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、N−メチルモルホリン(NMM)又はそれらの混合物などの有機塩基を含むこともできる。カップリング条件は、−10℃から室温の間の温度を含むことができる。
【0051】
本明細書中で使用する用語「水素化条件」は一般に、水素ガスが化合物、例えば、ニトロ化合物と反応して、アミノ化合物などの新しい化合物を形成する反応に使用される条件を指す。水素化条件としては、水素ガス、触媒(例えば、パラジウム、白金又は硫化白金)、溶媒又は溶媒混合物、及び適当な温度を挙げることができる。
【0052】
本明細書中で使用する用語「触媒」は、特定の化学反応に使用される場合に、その化学反応の速度を増加させるか、又はその化学反応を実用的な様式で進行させる化学物質を指す。触媒自体は、反応によって消費されない。一般に、多くの反応に対して多くの適当な触媒が公知である。例えば、水素化反応の触媒としては、白金、パラジウム、ロジウム、鉄及びルテニウム又はそれらの化合物若しくは組成物、例えば、パラジウムを堆積させた炭素、硫酸バリウム若しくは炭酸カルシウムが挙げられるが、これらに限定するものではない。水素化反応に使用される触媒の一例は、硫化白金担持活性炭である。公知の反応又は新しい反応のための新しい触媒が、化学の進歩と共に出現している。本明細書中で使用するように、特に断らない限り、全ての適当な触媒が包含される。一部の実施形態において、触媒は硫化白金担持炭素である。
【0053】
本明細書中で使用する用語「薬学的に許容される塩」は、種々の生理学的に許容される有機及び無機対イオンに由来する化合物の塩を指す。このような対イオンは当業界で周知であり、分子が酸性官能基を含む場合には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、リチウム及びアンモニウム、例えば、テトラアルキルアンモニウムなど;分子が塩基性官能基を含む場合には、有機酸又は無機酸の塩、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、パモ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩及びシュウ酸塩などが挙げられるが、これらはほんの一例である。適当な薬学的に許容される塩としてはさらに、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、1418頁(1985年)及びP. Heinrich Stahl、Camille G. Wermuth(編)、Handbook of Pharmaceutical Salts Properties, Selection, and Use、2002年に列挙されているものが挙げられる。酸付加塩の例としては、ヨウ化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸などの酸から形成されるもの、並びにアルギン酸、アスコルビン酸、アントラニル酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エンボン酸(パモ酸)、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、フロ酸、ガラクツロン酸、ゲンチシン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グリコール酸、イソニコチン酸、イソチオン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、パントテン酸、フェニル酢酸、プロピオン酸、糖酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸(sulfinilic acid)、トリフルオロ酢酸及びアリールスルホン酸、例えば、ベンゼンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸などの有機酸との酸付加塩が挙げられる。アルカリ金属及びアルカリ土類金属並びに有機塩基によって形成される塩基付加塩の例としては、クロロプロカイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、リジン、メグルミン(meglumaine)(N−メチルグルカミン)及びプロカイン並びに内部形成塩が挙げられる。非生理学的に許容される陰イオン又は陽イオンを有する塩は、生理学的に許容される塩の調製に有用な中間体として、かつ/又は、非治療的な状況、例えば、インビトロの状況での使用に関して本発明の範囲内に含まれる。
【0054】
用語「得ることができる」は、組成物が、列挙された特定の方法によって得ることができるが、列挙されていない他の1つ又は複数の方法によっても得ることができることを意味する。
【0055】
用語「実質的に純粋な」は、純度が少なくとも約99.3%、又は99.5%、又は99.7%、又は99.9%又は100%のベトリキサバンの遊離塩基又はマレイン酸塩を指す。純度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、HPLC分析などによって測定できる。一部の実施形態において、用語「実質的に純粋な」は、副生物、例えば、化学式L及びM:
【0056】
【化19】

を有する副生物(単なる一例である)を実質的に含まない組成物を指す。
【0057】
用語「実質的に含まない」は、化合物の前に使用する場合、組成物が、その化合物を0.7%未満、又は0.15%未満、又は0.1%未満、又は0.04%未満、又は0.03%未満で含むことを意味する。
【0058】
条件又は収率に関して値を列挙する場合、値は妥当な範囲内、例えば、±10%、±5%及び±1%の範囲内で変化し得ることを理解すべきである。同様に、用語「約」も、数値の前に用いる場合、値は妥当な範囲内、例えば、±10%、±5%及び±1%の範囲内で変化し得ることを示す。
【0059】
II.合成方法
本発明は、式IIの化合物、例えば、ベトリキサバン、又は式IIの化合物の薬学的に許容される塩及びそれらの中間体の調製方法を対象とする。これらの方法は、生成物の回収も含む。
【0060】
一態様では、本発明は、式II
【0061】
【化20】

[式中、
及びRは独立して、C1〜6アルキルであり、
及びRは独立して、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ及びメトキシからなる群から選択され、
は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びメトキシからなる群から選択される]
の化合物又はその塩の調製方法であって、式IIの化合物又はその塩を形成するための反応条件下で、式II−A:
【0062】
【化21】

の化合物と式II−B:
【0063】
【化22】

の化合物とを接触させるステップを含む方法を対象とする。
【0064】
一部の実施形態において、R及びRは、同一のC1〜6アルキルである。一部の実施形態において、RとRは共にメチルである。
【0065】
一部の実施形態において、R及びRの一方は水素であり、R及びRの他方は、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ及びメトキシからなる群から選択される。一部の実施形態において、Rは水素であり、Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ及びメトキシからなる群から選択される。一部の実施形態において、Rは水素であり、Rはメトキシである。
【0066】
一部の実施形態において、Rはクロロ又はブロモである。一部の実施形態において、Rはクロロである。
【0067】
一部の実施形態において、反応条件はアミドカップリング試薬を含む。一部の実施形態において、アミドカップリング試薬は、2−プロパンホスホン酸無水物(T3P)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン(CDMT)、N,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミド(DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)及びそれらの組合せからなる群から選択され、任意選択でヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)と組み合わされる。一部の実施形態において、カップリング剤は、N,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミド(DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)及びN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)からなる群から選択され、任意選択でヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)と組み合わされる。一部の実施形態において、カップリング剤は、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドであって、ヒドロキシベンゾトリアゾールと組み合わされる。一部の実施形態において、EDCはN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)の形態である。一部の実施形態において、カップリング剤は、EDC・HClであり、ヒドロキシベンゾトリアゾールと組み合わされる。一部の実施形態において、カップリング剤は、EDC・HClであり、HClと、例えば、約1当量のHClと組み合わされている。
【0068】
一部の実施形態において、反応条件は溶媒を含む。溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル(EtOAc)、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルアセトアミド(DMA)、アセトン、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。他の適当な溶媒を、単独で又は上に列挙された溶媒と組み合わせて使用してもよい。一部の実施形態において、反応条件は溶媒としてジメチルホルムアミド及び/又はジメチルアセトアミドを含む。
【0069】
一部の実施形態において、式IIの化合物又はその塩を形成する反応条件は、適当な塩基をさらに含む。一部の実施形態において、塩基は、N−メチルモルホリン(NMM)、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)並びにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0070】
一部の実施形態において、この方法は、約0℃から約30℃の間の温度において実施する。一部の実施形態において、ベトリキサバン及びその塩を含む、式IIの化合物又はその塩は、少なくとも65%の収率で得られる。一部の実施形態において、式IIの化合物又はその塩は、少なくとも75%の収率で得られる。
【0071】
一般に、化合物II−A及び化合物II−Bは同一モル当量を有するか、又は化合物II−Aもしくは化合物II−Bの一方が他方の化合物より過剰である。一部の実施形態において、化合物II−Aは、化合物II−Bに対して約1〜2当量、又は化合物II−Bに対して1〜1.5当量、又は化合物II−Bに対して1〜1.2当量、又は化合物II−Bに対して1〜1.1当量である。一部の実施形態において、カップリング剤及び存在する場合には任意のHOBtは、化合物II−Bに対して約1〜2当量、又は化合物II−Bに対して1〜1.5当量、又は化合物II−Bに対して1〜1.2当量である。
【0072】
一部の実施形態において、化合物II、例えば、ベトリキサバンの遊離塩基は、カップリングステップ後に、充分な量の塩基、例えば、炭酸ナトリウムの添加によって回収できる。一部の実施形態において、少なくとも1モル当量の塩基を添加する。一部の実施形態において、塩基は、過剰に、例えば、少なくとも約2モル過剰で又は約3モル過剰で添加する。場合によっては、約25℃から約35℃のいずれかの温度にバッチを冷却しながら、塩基を添加することができる。任意選択で、水を添加することもできる。結果として生じた遊離塩基は、濾過とそれに続く任意選択の、水及びアセトンによる洗浄によって、得ることができる。
【0073】
一部の実施形態において、本発明は、式II−Aの化合物から式IIの化合物、ベトリキサバン、遊離塩基又はその塩をキログラム規模で調製する方法を提供する。
【0074】
一部の実施形態において、式II−Aの化合物は、式II−G:
【0075】
【化23】

[式中、R及びRは、上に定義した通りであり、Rは、C1〜6アルキル又はベンジルである]
の化合物を、式II−Aの化合物を形成するための反応条件に曝露することによって調製する。
【0076】
一部の実施形態において、Rはメチル又はエチルである。一部の実施形態において、反応条件は、加水分解条件、例えば、塩基、例えば、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)、水及び任意選択の共溶媒、例えば、THF、アセトニトリル、メタノール、エタノール又は他の適当な溶媒を含む。一部の実施形態において、Rはtert−ブチルである。一部の実施形態において、反応条件は、酸、例えば、塩酸(HCl)又はトリフルオロ酢酸(TFA)及び適当な溶媒を含む。一部の実施形態において、Rはベンジルである。一部の実施形態において、反応条件は、触媒、例えば、パラジウム担持炭素の存在下での水素ガスを含む。式II−Gの化合物を式II−Aの化合物に変換する他の適当な条件は、当業界で一般に公知であり、それを使用してもよい。
【0077】
一部の実施形態において、式II−Gの化合物は、式H:
【0078】
【化24】

[Rは、C1〜6アルキル又はベンジルである]
の化合物を、式II−Gの化合物を形成するための反応条件に曝露することによって調製する。
【0079】
一部の実施形態において、反応条件は、アミンNHR[式中、R及びRは上に定義した通りである]、LiR[式中、RはC1〜6アルキルである]及び適当な溶媒を含む。一部の実施形態において、LiRはヘキシルリチウムである。一部の実施形態において、溶媒はテトラヒドロフランとヘキサンの組合せである。
【0080】
一部の実施形態において、式Gの化合物を形成する反応条件は、
(a)式Hの化合物とアルコール、例えば、メタノール又はエタノールとを酸、例えば、HClの存在下で、好ましくは0℃〜室温において接触させることと、
(b)ステップ(a)から得られた中間体とHNRとを、好ましくは還流条件下で接触させて、式II−Gの化合物を形成することと
を含む。
【0081】
シアノ基(−CN)をジアルキルアミジン基(−C(=NH)NR)に変換する他の適当な条件は、当業界で一般に公知である。
【0082】
化合物Hは、商業的に入手可能な4−シアノ安息香酸から、一般に公知のエステル形成反応によって得ることができる。
【0083】
一部の実施形態において、式II−Bの化合物は、式II−C:
【0084】
【化25】

[式中、R、R及びRは本明細書で定義した通りである]
の化合物を、式II−Bの化合物を形成するための還元条件に曝露することによって調製する。
【0085】
一部の実施形態において、還元条件は、触媒、例えば、パラジウム担持炭素の存在下での水素ガスを含む。一部の実施形態において、触媒は硫化5%白金担持炭素である。一部の実施形態において、反応条件は、19℃〜31℃の間又は21℃〜31℃の間又は21℃〜28℃の間の温度及び20〜40psi、好ましくは30psiの水素圧を含む。一部の実施形態において、反応条件は、塩化メチレン、エタノール、メタノール及び酢酸エチルからなる群から選択される溶媒を含む。一部の実施形態において、条件は、溶媒として塩化メチレンを含む。一部の実施形態において、式II−Bの化合物は、少なくとも80%の収率で得られる。一部の実施形態において、式II−Bの化合物は、少なくとも85%の収率で得られる。
【0086】
一部の実施形態において、式II−Cの化合物は、
式II−Cの化合物を形成するための反応条件下で、式II−D:
【0087】
【化26】

の化合物と式II−E:
【0088】
【化27】

[式中、R、R及びRは上に定義した通りである]
の化合物とを接触させるステップによって調製する。
【0089】
一部の実施形態において、本発明は、
ベトリキサバン又はその塩を形成するためのカップリング条件下で、
式A:
【0090】
【化28】

の化合物と式B:
【0091】
【化29】

の化合物とを接触させるステップを含む式I
【0092】
【化30】

のベトリキサバン又はその塩の調製方法を提供する。
【0093】
一部の実施形態において、カップリング条件は、アミドカップリング試薬を含む。一部の実施形態において、アミドカップリング試薬は、2−プロパンホスホン酸無水物(T3P)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン(CDMT)、N,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミド(DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)及びそれらの組合せからなる群から選択され、任意選択でヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)と組み合わされる。一部の実施形態において、カップリング剤は、N,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミド(DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)及びN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)からなる群から選択され、任意選択でヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)と組み合わされる。一部の実施形態において、カップリング剤は、ヒドロキシベンゾトリアゾールと組み合わされたエチルカルボジイミドである。一部の実施形態において、EDCはエチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)の形態である。一部の実施形態において、カップリング剤は、EDC・HClであり、HClと、例えば、約1当量のHClと組み合わされている。
【0094】
一部の実施形態において、カップリング条件は、溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル(EtOAc)、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルアセトアミド(DMA)、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)及びそれらの混合物を含む。他の適当な溶媒を、単独で又は上記溶媒のいずれかと組み合わせて使用してもよい。一部の実施形態において、反応条件は、溶媒としてジメチルホルムアミド及び/又はジメチルアセトアミドを含む。
【0095】
一部の実施形態において、ベトリキサバン又はその塩を形成するカップリング条件は、適当な塩基をさらに含む。一部の実施形態において、塩基は、N−メチルモルホリン(NMM)、DIEA、トリエチルアミン及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)並びにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0096】
一部の実施形態において、ベトリキサバンの遊離塩基は、カップリングステップの後に、充分な量の塩基、例えば、炭酸ナトリウムを加えることによって、回収できる。一部の実施形態において、塩基は、過剰に、例えば、少なくとも約2モル過剰で又は約3モル過剰で添加される。場合によっては、約25℃から約35℃のいずれかの温度にバッチを冷却しながら、塩基を添加することができる。任意選択で、水は添加することもできる。結果として生じた遊離塩基は、濾過とそれに続く任意選択の、水及びアセトンによる洗浄によって、得ることができる。
【0097】
一部の実施形態において、この方法は約0℃から約30℃の間で実施する。一部の実施形態において、ベトリキサバン又はその塩は、少なくとも65%の収率で得られる。一部の実施形態において、ベトリキサバン又はその塩は、少なくとも75%の収率で得られる。
【0098】
一般に、化合物A及び化合物Bは同一モル当量を有するか、又は化合物Aもしくは化合物Bの一方が他方の化合物より過剰である。一部の実施形態において、化合物Aは、化合物Bに対して約1〜2当量、又は化合物Bに対して1〜1.5当量、又は化合物Bに対して1〜1.1当量である。一部の実施形態において、カップリング剤及び存在する場合には任意のHOBtは、化合物Bに対して約1〜2当量、又は化合物Bに対して1〜1.5当量、又は化合物Bに対して1〜1.2当量である。
【0099】
一部の実施形態において、本発明は、式Aの化合物から、ベトリキサバンの遊離塩基又はその塩をキログラム規模で調製する方法を提供する。
【0100】
一部の実施形態において、式Aの化合物は、式G:
【0101】
【化31】

[式中、Rは、C1〜6アルキル又はベンジルである]
の化合物を、式Aの化合物を形成するための反応条件に曝露することによって調製する。
【0102】
一部の実施形態において、Rはメチル又はエチルである。一部の実施形態において、反応条件は、加水分解条件、例えば、無機塩基、例えば、LiOH、NaOH又はKOH、水及び任意選択の共溶媒、例えば、THF、アセトニトリル、アルコール又は他の適当な溶媒を含む。一部の実施形態において、Rはtert−ブチルである。一部の実施形態において、反応条件は、酸、例えば、塩酸又はトリフルオロ酢酸、及び適当な溶媒を含む。一部の実施形態において、Rはベンジルである。一部の実施形態において、反応条件は、触媒、例えば、パラジウム担持炭素の存在下で水素ガスを含む。式Gの化合物を式Aの化合物に変換する他の適当な条件を使用してもよい。
【0103】
一部の実施形態において、式Gの化合物は、式H:
【0104】
【化32】

[式中、Rは、C1〜6アルキル又はベンジルである]
の化合物を、式Gの化合物を形成する反応条件に曝露することによって調製する。
【0105】
一部の実施形態において、反応条件は、ジメチルアミン、LiR[式中、RはC1〜6アルキルである]及び溶媒を含む。一部の実施形態において、LiRはヘキシルリチウムである。一部の実施形態において、溶媒はテトラヒドロフランとヘキサンの組合せである。
【0106】
一部の実施形態において、式Gの化合物を形成するための反応条件は、
(a)式Hの化合物とアルコール、例えば、メタノール又はエタノールとを酸、例えば、HClの存在下で、好ましくは約0℃〜室温の間の温度において接触させることと、
(b)ステップ(a)から得られた中間体とジメチルアミンとを、好ましくは還流条件下で接触させて、式Gの化合物を形成することと
を含む。
【0107】
シアノ基(−CN)をジメチルアミジン基(−C(=NH)N(CH)に変換する他の適当な条件は、当業界で一般に公知であり、それを使用してもよい。
【0108】
一部の実施形態において、式Bの化合物は、式C:
【0109】
【化33】

の化合物を、式Bの化合物を形成するための還元条件に曝露することによって調製する。
【0110】
一部の実施形態において、還元条件は、触媒の存在下での水素ガスを含む。一部の実施形態において、触媒は硫化5%白金担持炭素である。一部の実施形態において、反応条件は、19℃〜31℃の間又は21℃〜31℃の間又は21℃〜28℃の間の温度、及び20〜40psi、好ましくは30psiの水素圧を含む。一部の実施形態において、反応条件は、塩化メチレン、エタノール、メタノール及び酢酸エチルからなる群から選択される溶媒を含む。一部の実施形態において、条件は、溶媒として塩化メチレンを含む。一部の実施形態において、式Bの化合物は、少なくとも80%の収率で得られる。一部の実施形態において、式Bの化合物は、少なくとも85%の収率で得られる。
【0111】
一部の実施形態において、式Cの化合物は、式Cの化合物を形成することを含む反応条件下で、式D:
【0112】
【化34】

の化合物と式E:
【0113】
【化35】

の化合物とを接触させるステップによって調製する。
【0114】
一部の実施形態において、式II−Cの化合物、例えば、式Cの化合物を形成する反応条件は、19℃〜31℃の間、又は21〜31℃の間、又は21〜28℃の間の温度を含む。一部の実施形態において、反応条件は溶媒としてアセトニトリルを含む。一部の実施形態において、反応条件は他の非プロトン性溶媒を少量でさらに含んでいてもよい。一部の実施形態において、反応条件はオキシ塩化リン及びピリジンを含む。一部の実施形態において、反応条件は、約1〜1.9当量のオキシ塩化リン[当量は、式Dの化合物に基づく]を含む。好ましい一実施形態において、オキシ塩化リンの量は、1.5当量未満である。一部の実施形態において、オキシ塩化リンの量は、1.2当量である。一部の実施形態において、式Cの化合物は、少なくとも84%の収率で得られる。一部の実施形態において、式Cの化合物は、少なくとも88%の収率で得られる。
【0115】
一部の実施形態において、式I又は式IIの塩は、薬学的に許容される塩である。
【0116】
一部の実施形態において、本発明の方法は、塩形成条件下で式I若しくは式IIの化合物又はその塩を酸と接触させて、式I又は式IIの化合物の薬学的に許容される塩を生成するステップをさらに含む。一部の実施形態において、この方法は、式I又は式IIの化合物の薬学的に許容される塩を回収するステップをさらに含む。
【0117】
一部の実施形態において、塩形成条件は、式IIの化合物、例えば、ベトリキサバンと酸とを溶媒中で接触させることを含む。式IIの化合物、例えば、ベトリキサバンは、種々の有機酸及び無機酸と種々の塩を形成できる。塩の一部の例としては、塩酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、フェノキシ酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、アスコルビン酸塩、ショウノウ酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メシル酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ナフタレン−1,5−ジスルホネート、ゲンチシン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、α−ヒドロキシカプロン酸塩、安息香酸塩、グルクロン酸塩、ケトグルタル酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、ピログルタミン酸塩、硫酸塩及びtrans−桂皮酸塩が挙げられるが、これらに限定するものではない。当業者ならば、本発明の方法を用いて式IIの化合物の塩を生成するのに、他の酸も使用できることがわかるであろう。第1の塩は次に、マレイン酸塩などの第2の塩に変換できる。
【0118】
多くの方法が、前述の塩の調製に有用であり、当業者に公知である。例えば、式IIの化合物、例えば、ベトリキサバンは、塩が不溶性である溶媒若しくは溶媒混合物中で、又は蒸発、蒸留若しくは凍結乾燥によって除去される溶媒中で、1以上の当量の所望の酸と反応できる。別法として、式IIの化合物、例えば、ベトリキサバンは、イオン交換樹脂に通して所望の塩を形成してもよく、生成物の1つの塩の形態を、同じ一般的プロセスを用いて別の塩の形態に変換してもよい。
【0119】
一実施形態において、薬学的に許容される塩は、マレイン酸塩である。一実施形態において、ベトリキサバンのマレイン酸塩は、以下の構造:
【0120】
【化36】

によって表される。
【0121】
一部の実施形態において、塩形成条件は、ベトリキサバンと少なくとも1モル当量のマレイン酸とを、C1〜4アルカノールと水との溶媒混合物中、10℃〜40℃の間の温度において接触させて、ベトリキサバンのマレイン酸塩を形成することを含む。
【0122】
一部の実施形態において、温度は19℃〜25℃の間である。一実施形態において、溶媒混合物は、メタノールと水の混合物である。一部の実施形態において、溶媒混合物は、エタノールと水の混合物である。一部の実施形態において、溶媒混合物は、メタノールとエタノールと水の混合物である。一部の実施形態において、エタノールと水の溶媒混合物は、約2:1〜約8:1の比の混合物である。一部の実施形態において、エタノールと水の溶媒混合物は、約3.5:1〜約4.5:1の比の混合物である。一部の実施形態において、エタノールと水の溶媒混合物は、約1:1〜0:1の比の混合物である。
【0123】
一部の実施形態において、この方法は、ベトリキサバンの薬学的に許容される塩、例えば、ベトリキサバンのマレイン酸塩を回収するステップをさらに含む。一実施形態において、マレイン酸塩は、エタノールと水との約1:1〜0:1の比の溶媒混合物から回収される。一部の実施形態において、マレイン酸塩は、エタノール含量とベトリキサバンのマレイン酸塩含量を6以下の比で含む溶媒から回収される。
【0124】
一部の実施形態において、ベトリキサバンのマレイン酸塩は、少なくとも65%の収率で得られる。好ましい一実施形態において、ベトリキサバンのマレイン酸塩は、少なくとも75%の収率で得られる。別の好ましい実施形態において、ベトリキサバンのマレイン酸塩は、少なくとも85%の収率で得られる。別の実施形態において、本発明は、ベトリキサバンからベトリキサバンのマレイン酸塩をキログラム規模で調製する方法を提供する。
【0125】
一部の実施形態において、本発明は、式I:
【0126】
【化37】

のベトリキサバン又はそのマレイン酸塩の調製方法であって、
a)任意選択で溶媒としてアセトニトリルを含む反応条件下で式D:
【0127】
【化38】

の化合物と式E:
【0128】
【化39】

の化合物とを接触させて、式C:
【0129】
【化40】

の化合物を形成するステップと、
b)触媒の存在下での水素ガスを含む還元条件に式Cの化合物を曝露して式B:
【0130】
【化41】

の化合物を形成するステップと、
c)N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩及び任意選択でヒドロキシベンゾトリアゾールを含む反応条件下で式Bの化合物と式A:
【0131】
【化42】

の化合物とを接触させて、ベトリキサバン又はその塩を形成するステップと、
任意選択で、d)ベトリキサバンのマレイン酸塩を形成するための反応条件下で10℃から40℃の間の温度においてC1〜4アルカノールと水との溶媒混合物中でベトリキサバン又はその塩と少なくとも1モル当量のマレイン酸とを接触させるステップと
を含む方法を提供する。
【0132】
本発明の方法で使用する化合物は、直ちに入手可能な出発原料から調製できる。典型的な又は好ましいプロセス条件(即ち、反応温度、時間、反応体のモル比、溶媒、圧力など)が与えられる場合には、特に明記しない限り、他のプロセス条件も使用できることが理解されるであろう。最適反応条件は、使用する個々の反応体又は溶媒によって異なる可能性があるが、当業者ならば、ルーチンの最適化手順によってこのような条件を決定できる。
【0133】
さらに、当業者にとって明らかであるように、ある種の官能基が望ましくない反応を受けるのを防止するために、従来の保護基が必要な場合がある。種々の官能基に適当な保護基並びに個々の官能基を保護及び脱保護するのに適当な条件は、当業界で周知である。例えば、多数の保護基が、T. W. Greene及びG. M. Wuts(1999年)Protecting Groups in Organic Synthesis、第3版、Wiley、New York並びにその中の引用文献に記載されている。
【0134】
さらにまた、本発明の化合物は、1つ又は複数のキラル中心を含むことができる。それゆえに、このような化合物は、必要に応じて、純粋な立体異性体として、即ち、個々のエナンチオマー若しくはジアステレオマーとして、又は立体異性体を多く含む混合物として調製又は単離できる。特に明記しない限り、全てのこのような立体異性体(及び立体異性体を多く含む混合物)は、本発明の範囲内に含まれる。純粋な立体異性体(又は立体異性体を多く含む混合物)は、例えば、当業界で周知の光学活性出発原料又は立体選択的試薬を使用して調製できる。別法として、例えば、キラルカラムクロマトグラフィー、キラル分割剤などを使用して、このような化合物のラセミ混合物を分離することができる。
【0135】
以下の反応の出発原料は、一般に公知の化合物であるか、又は公知の手順若しくはその自明の変法によって調製できる。例えば、出発原料の多くが、商業的供給業者、例えば、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee、Wisconsin、USA)、Bachem(Torrance、California、USA)、Emka−Chemce 又は Sigma(St.Louis、Missouri、USA)から入手可能である。その他は、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、1〜15巻(John Wiley, and Sons、1991年)、Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds、1〜5巻及び補遺(Elsevier Science Publishers、1989年)、Organic Reactions、1〜40巻(John Wiley, and Sons、1991年)、March’s Advanced Organic Chemistry(John Wiley, and Sons、第5版、2001年)及びLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.、1989年)などの標準的な参照テキストに記載されている手順又はそれらの自明な変法によって調製できる。
【0136】
本明細書中に開示した新規方法は、ベトリキサバン及びその薬学的に許容される塩を高純度で調製するロバストでコスト効率の良いプロセスを提供する。ベトリキサバンの調製方法は、米国特許第6,376,515号及びWO2008/057972に開示されており、両特許文献は参考としてそれらの全体が本明細書中に援用される。スキーム1に概説するように、これらの方法は、反応型及び条件が著しく異なるにもかかわらず、式Kのシアノ化合物を形成し(ステップA)、次いでそれをアミジン化合物ベトリキサバン(式I)に変換する(ステップB)という共通の特徴を有する。
【0137】
【化43】

米国特許第6,376,515号では、ステップAにおいて、化合物Bと化合物Jとが、ピリジンなどの塩基及びジクロロメタンなどの溶媒の存在下で反応して、化合物Kを形成する。次いで、ステップBにおいて、腐蝕性の強いHClガスで飽和されているメタノール中で化合物Kをイミデート中間体に変換するステップと、乾燥したイミデート中間体を、メタノール中で還流条件下でジメチルアミンと反応させてベトリキサバンを生成するステップとを含む二段階プロセスによって、化合物Kをベトリキサバンに変換する。このプロセスは、腐蝕性の化学物質及び厳しい条件の使用を伴う。
【0138】
PCTの国際公開WO2008/057972号は、スキーム1に従ってベトリキサバンを調製する、改善された方法を記載している。1つの顕著な改善は、米国特許第6,376,515号の二段階プロセスに代えて、リチウムジメチルアミド(ジメチルアミンとヘキシルリチウムとの反応によって形成される)を用いる一段階プロセスを使用して、化合物Kをベトリキサバンに変換することである。これは、大規模で穏和な条件下でベトリキサバンを高純度で生成する効率的なプロセスである。しかし、2つの不純物、化合物L及びM
【0139】
【化44】

が、アミジン形成ステップにおいて形成される傾向がある。図1は、WO2008/057972に記載されているプロセスによって得られた、純度が99.61%であり、0.15%の化合物L(保持時間(RT)18.728分)及び0.04%の化合物M(RT12.054分)を含む、ベトリキサバンのマレイン酸塩の試料(RT20.858分)のHPLCプロフィールを示している。他の実験においては、純度99.36%及び99.41%(化合物Lが0.10%及び化合物Mが0.23%)が得られた。さらに他の実験においては、約0.06%又は0.25%の化合物Mが検出され、約0.17%又は約0.25%の化合物Lが検出された。これらの副生成物の形成は、所望の生成物ベトリキサバンの純度及び収率に影響を及ぼし、且つ/又は追加の精製操作の必要性を生じさせる。加えて、モノメチル化合物Lは、ベトリキサバンの近縁類似体であり、したがって、最終生成物からの除去が困難である。これは、ベトリキサバンの純度に、特にキログラム規模などの大規模の調製の場合には悪影響を及ぼす。したがって、アミジン形成ステップの反応条件は、2つの副生成物、化合物L及びMの形成を最小限に抑えるように厳密に制御しなければならない。
【0140】
図2及び表1に示されるように、本発明の方法は、厳しく制御された反応条件を必要とせずに化合物L及びMの形成を排除し、本発明の方法によって調製される試料は純度が99.98%である。他の実験において、本発明の方法によって得られるベトリキサバンのマレイン酸塩の純度は、99.63%〜99.72%の範囲である。したがって、本発明の方法は、改善された純度でかつより大規模でベトリキサバンを生成する点で、より信頼性が高く、ロバストである。
表1
【0141】
【表1】

さらに、本発明の方法を使用することによって、遊離塩基を生成する合成に由来する化合物L及びMが実質的に存在しないことが企図される。実際に、本発明の方法は、約99.3%の純度を有するベトリキサバンの遊離塩基を生成した。
【0142】
したがって、別の態様において、本発明は、実質的に純粋なベトリキサバンの遊離塩基及びマレイン酸塩を提供する。一実施形態において、本発明は、実質的に純粋なベトリキサバンの遊離塩基又は実質的に純粋なマレイン酸塩を含む組成物を提供する。一実施形態において、組成物は、少なくとも約99.3%のベトリキサバンの遊離塩基、又は99.5%のベトリキサバンの遊離塩基、又は99.7%のベトリキサバンの遊離塩基を含む。さらに他の実施形態において、組成物は、少なくとも99.7%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む。一部の実施形態において、組成物は、少なくとも99.8%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む。一部の実施形態において、組成物は、少なくとも99.9%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む。
【0143】
さらに別の態様において、本発明は、化合物L及び/又は化合物Mを実質的に含まない、ベトリキサバンの遊離塩基又はマレイン酸塩を含む組成物を提供する。一部の実施形態において、組成物は、化合物Mを含まず、化合物Lを実質的に含まない。一部の実施形態において、組成物は、化合物Lを含まず、化合物Mを実質的に含まない。一部の実施形態において、組成物は、化合物L及び/又は化合物Mを含まないベトリキサバンの遊離塩基又はそのマレイン酸塩を含む。
【0144】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の方法によって得ることができる、少なくとも99.3%のベトリキサバンの遊離塩基を含む組成物を提供する。一部の実施形態において、(1)ベトリキサバン又はその塩を形成するための反応条件下で、式Aの化合物と式Bの化合物とを接触させるステップと、(2)(1)で得られたベトリキサバンの遊離塩基を99.3%以上の純度で回収するステップとによって、少なくとも99.3%のベトリキサバンの遊離塩基を有する組成物を得ることができる。一部の実施形態において、組成物は、少なくとも99.5%のベトリキサバンの遊離塩基を含む。一部の実施形態において、組成物は少なくとも99.7%のベトリキサバンの遊離塩基を含む。
【0145】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の方法によって得ることができる、少なくとも99.7%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む組成物を提供する。一部の実施形態において、(1)ベトリキサバン又はその塩を形成するための反応条件下で、式Aの化合物と式Bの化合物とを接触させるステップと、(2)塩形成条件下で、(1)で得られたベトリキサバン又はその塩とマレイン酸とを接触させて、ベトリキサバンのマレイン酸塩を形成するステップと、(3)(2)で得られたベトリキサバンのマレイン酸塩を99.7%以上の純度で回収するステップとによって、少なくとも99.7%のベトリキサバンのマレイン酸塩を有する組成物を得ることができる。一部の実施形態において、組成物は、少なくとも99.8%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む。一部の実施形態において、組成物は、少なくとも99.9%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む。
【0146】
III.化合物の使用
本発明によって調製される化合物及び/又は塩は、商業的合成に使用してもよく、治療有効量の式IIの化合物、例えば、ベトリキサバン若しくはその薬学的に許容される塩、例えば、ベトリキサバンのマレイン酸塩を哺乳動物に投与することによって、望ましくない血栓症を特徴とする哺乳動物の状態を予防若しくは治療するために使用してもよい。式IIの化合物又はその薬学的に許容される塩は、望ましくない血栓症を特徴とする状態の発症を予防するために、単独で又は薬学的に許容される賦形剤と共に使用できる。本発明によって調製される化合物及び/又は塩は、状態が検出されていない患者に、発症を予防するのに十分に早い段階で予防的治療として、単独で又は薬学的に許容される賦形剤と共に使用できる。
【0147】
式IIの化合物、例えば、ベトリキサバン又はその薬学的に許容される塩は、血栓形成を阻害するそれらの能力と、古典的尺度の凝固パラメーター、血小板及び血小板機能に対する許容される効果、並びにそれらの使用に関連する許容されるレベルの出血性合併症を特徴とする。望ましくない血栓症を特徴とする状態には、動脈及び静脈血管系に影響を与えるものも含まれるであろう。
【0148】
本発明によって調製される化合物及び/又は塩は、血栓症及び血栓症に関連する状態の治療に有用である。本発明によって調製され、本明細書中に開示される通りに選択及び使用される化合物又は塩は、望ましくない血栓症によって特徴づけられる状態の予防又は治療に、例えば、(a)血栓が介在する任意の急性冠動脈症候群、例えば、心筋梗塞、不安定狭心症、難治性狭心症、血栓溶解療法後に若しくは冠動脈形成術後に起こる閉塞性冠状動脈血栓の治療又は予防、(b)塞栓性脳卒中、血栓性脳卒中又は一過性脳虚血性発作を含む、血栓が介在する任意の脳血管性症候群の治療又は予防、(c)自然発症の又は悪性腫瘍、手術若しくは外傷の状況で発生する深部静脈血栓症又は肺塞栓を含む、静脈系で発生する任意の血栓性症候群の治療又は予防、(d)播種性血管内凝固(多臓器不全に関連していてもいなくても、敗血症性ショック若しくは他の感染、手術、妊娠、外傷若しくは悪性腫瘍の状況を含む)、血栓性血小板減少性紫斑病、閉塞性血栓性血管炎、又はヘパリン起因性血小板減少症に関連した血栓性疾患を含む任意の凝血異常の治療又は予防、(e)体外循環(例えば、腎透析、心肺バイパス又は他の酸素供給手順、血漿交換治療)に関連する血栓性合併症の治療又は予防、(f)器具使用(例えば、心臓若しくは他の血管内カテーテル法、動脈内バルーンポンプ、冠動脈ステント又は心臓弁)に関連する血栓性合併症の治療又は予防、及び(g)補綴具の装着に関わるものに有用であると考えられる。
【0149】
一部の実施形態において、本発明によって調製される化合物及び/又はそれらの薬学的に許容される塩は、心房細動患者における脳卒中の予防;医学的に病気の患者における血栓症の予防;深部静脈血栓症の予防及び治療;急性冠動脈症候群患者における動脈血栓の予防;及び/又は既往歴のある患者における心筋梗塞、脳卒中若しくは他の血栓性イベントの二次予防に有用である。
【0150】
式IIの化合物、例えば、ベトリキサバン又はその薬学的に許容される塩、例えば、ベトリキサバンのマレイン酸塩はまた、血液凝固の阻害が必要とされるときはいつでも、例えば、保存全血の凝固を防止するために及び試験又は保存用の他の生体試料中の凝血を防止するために使用できる。したがって、本発明によって調製される凝固阻害剤は、血漿凝固因子を含むか又は含む疑いがある保存全血及び任意の媒体に添加するか、又は接触させることができ、ここで、例えば、哺乳動物の血液と、移植血管、ステント、整形外科的補綴物、心臓補綴物及び体外循環系からなる群から選択される材料とを接触させる場合に、血液凝固を阻害するのが望ましい。
【0151】
ヒトの治療に有用である以外に、これらの化合物及び/又は塩はまた、哺乳動物、齧歯動物などを含む、コンパニオンアニマル、外来種の動物及び家畜の獣医学治療に有用である。より好ましい動物としては、ウマ、イヌ及びネコが挙げられる。
【実施例】
【0152】
特に明記しない限り、明細書の全体を通じて使用する略語は、以下の意味を有する:
A%=総面積パーセント
aq.=水性
cm=センチメートル
con=濃(縮)
d=二重線
DCM=ジクロロメタン
EDC=N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド
EDTA=エチレンジアミン四酢酸
eq.=当量
EtOH=エタノール
g=グラム
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
hr=時間
Hz=ヘルツ
IR=赤外線
J=結合定数
kg=キログラム
L=リットル
LOD=検出限界
M=モル濃度
m=多重線
Me=メチル
MeO=メトキシ
MeOH=メタノール
mg=ミリグラム
min.=分
mL=ミリリットル
mm=ミリメートル
MTBE=メチルtert−ブチルエーテル
N=規定
nM=ナノモル濃度
NMR=核磁気共鳴
psi=ポンド/平方インチ
s=一重線
TDS=全溶解固形物
THF=テトラヒドロフラン
v/w=重量/体積
μM=マイクロモル濃度
(実施例1)
ベトリキサバンの調製
【0153】
【化45】

ジメチルホルムアミド(13L)及び塩酸塩(18mL)を、反応器に入れた。化合物B(1kg)、続いて化合物A(0.88kg)を加えた。化合物Aは市販されているか、又は化合物Bの場合と同様に、実施例4及び5で記載する方法を用いて調製できる。反応混合物を0℃から−10℃の間に冷却した。温度を−10℃から0℃の間に維持しながら、EDC(0.752kg)を加えた。化合物Bの含量がHPLCで0.10%未満の面積となるまで、反応混合物を撹拌した。ベトリキサバンが結晶し始めるまで、反応混合物を撹拌した。次いで、少なくとも1時間にわたって、温度を−10℃から0℃の間に維持しながら、アセトン(26L)を加えた。次いで、懸濁液を、0℃から10℃の間の温度でさらに2時間撹拌した。懸濁液を濾過し、冷アセトンで洗浄して、湿った生成物ベトリキサバンを得た。
【0154】
(実施例2)
ベトリキサバンのマレイン酸塩の調製
【0155】
【化46】

上記実施例で得られた湿ったベトリキサバンを、エタノール(22.4×液体の体積/乾燥ベトリキサバンの重量(v/w))及び精製水(5.7×v/w)中マレイン酸(0.52×マレイン酸の重量/乾燥ベトリキサバンの重量)と反応させて、ベトリキサバンのマレイン酸塩を形成した。ベトリキサバンのマレイン酸塩の溶液を濾過し、最終体積が5.7×v/wとなるまで減圧下濃縮した。次いで、水(2×v/w)を加え、同一体積となるまで混合物を再び濃縮した。混合物中のエタノール含量とベトリキサバンのマレイン酸塩の含量とのモル比が6以下となるまで、水の添加及び最終体積5.7×v/wまでの蒸留の手順を行った。エタノールの除去の間に、ベトリキサバンのマレイン酸塩が結晶した。懸濁液を19℃から25℃の間の温度に冷却し、同温度範囲で2時間以上撹拌した。ベトリキサバンのマレイン酸塩を濾過によって単離し、水で洗浄し、水の含量がKarl−Fisherによって0.5%w/w以下となるまで最大温度40℃で真空乾燥した。マレイン酸塩の純度は、HPLCによって99%を超えることがわかった。得られたIR、DSC及びXRPDの結果に基づいて、単離したベトリキサバンのマレイン酸塩は結晶形Aであると結論づけられた。これらの結果についてはそれぞれ、図3〜5を参照のこと。結晶形AのXRPDパターンの主要ピークは、表2にも列挙する。
表2:ベトリキサバン形態AのXRPDピーク2θ°
【0156】
【表2】

(実施例3)
2−ニトロ−N−(5−クロロ−ピリジン−2−イル)−5−メトキシ−ベンズアミド(C)の合成
【0157】
【化47】

5−メトキシ−2−ニトロ安息香酸(D)(25.0kg、1.0eq.)、2−アミノ−5−クロロピリジン(E)(16.3kg、1.0eq.)及びアセトニトリル(87.5kg)を、380Lガラス内張反応器に入れた。反応混合物を22℃(19〜25℃)に調整し、無水ピリジン(30.0kg、3.0eq.)を加えた。ポンプ及びラインをアセトニトリル(22.5kg)で順方向に(forward)すすぎ、反応器の内容物を19〜22℃の温度に調整した。温度を25℃(22〜28℃)に維持しながら、オキシ塩化リン(23.3kg、1.20eq.)を定量ポンプによって反応器の内容物に入れた。温度を25℃(22〜28℃)に維持しながら、定量ポンプ及びラインをアセトニトリル(12.5kg)で順方向にすすいだ。POClの約1/3の添加後に、反応混合物は通常、スラリーから透明溶液に変化した。添加の終わりに、反応混合物は混濁した。添加完了後、反応混合物を25℃(22〜28℃)で約1時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応の完了を確認した。溶液を15℃(12〜18℃)に冷却し、12〜30℃の間の反応温度を維持しながら水(156.3kg)を徐々に入れた。次いで、反応混合物を22℃(19〜25℃)に調整し、発熱が終わるまで約5時間撹拌した。スラリーの形成を目視で確認し、反応器の内容物を、濾布を装着した加圧ヌッチェ(pressure nutsche)で濾過した。反応器、ポンプ及びラインを、水(62.5kg)で2回に分けて、加圧ヌッチェで順方向に洗浄した。濾液のpH値は7であった。最高温度が50℃の水浴を(乾燥機のジャケットを加熱するために)用いて、生成物(41.8kg)を減圧下で乾燥させた。約12時間後、インプロセスLOD分析は、0.72%の溶媒含量を示した。収率88.2%、HPLCによる純度99.1%の乾燥生成物(C)を排出した(34.4kg)。
【0158】
(実施例4)
2−アミノ−N−(5−クロロ−ピリジン−2−イル)−5−メトキシ−ベンズアミドの合成
【0159】
【化48】

プロセスA
780LのHastelloy反応器に、化合物C(33kg、1.0eq.)、5%白金炭素(硫化、0.33kg)及びジクロロメタン(578kg)を入れた。撹拌を開始し、反応器の内容物を22℃(19〜25℃)に調整した。反応器を約30psiの水素で加圧し、反応混合物を28℃(25〜31℃)まで穏やかに加熱した。HPLCにより反応が完了するまで、反応器内容物の水素化を、約30psi下で28℃(25〜31℃;最大31℃)にて行った。16.5時間後、出発原料(0.472A%)の消失を確認した後に、反応が完了しているとみなした。反応器の内容物を、8インチのスパークラー濾過器中で調製した状態調整Celite(商標)(珪藻土;Celite Co.、Santa Barbara、Ca.)パッド(Celite(商標)0.2〜0.5kgをジクロロメタン20〜55kgで状態調整)を通して循環させて、白金触媒を除去した。反応器及びCelite(商標)ベッドを、ジクロロメタン(83kg)で2回に分けて順方向にすすいだ。濾液を570Lガラス内張反応器に移し、570Lガラス内張反応器内で大気圧下で約132Lまで濃縮した。エタノール(69kg)を入れ、濃縮を大気圧下で約99Lまで続けた。インプロセスNMRは、ジクロロメタン含量が39%であることを示した。エタノール(69kg)を再び入れ、濃縮を再び約99Lまで続けた。インプロセスNMRは、ジクロロメタン含量が5%であることを示した。次いで、反応混合物を3℃(0〜6℃)に調整し、約1時間撹拌し、得られたスラリーを、濾布を装着したジャケット付き加圧ヌッチェで濾過した。反応器、ポンプ及びラインを、冷[3℃(0〜6℃)]エタノール(26kg)で順方向にすすいだ。最高温度が50℃の水浴を(乾燥機のジャケットを加熱するために)用いて、湿った濾過ケーク(36.6kg)を減圧下で40〜50℃で乾燥させた。12.5時間後のLOD分析は、溶媒含量が0.1%であることを示した。乾燥生成物(B)(26.4kg)を、収率89.5%で排出した。HPLCは98.4A%の純度を示した。脱塩素化不純物は0.083%であった。
【0160】
プロセスB
780LのHastelloy反応器に、化合物C(33kg、1.0eq.)、5%白金炭素(硫化、0.33kg)及びジクロロメタン(578kg)を入れた。撹拌を開始し、反応器の内容物を22℃(19〜25℃)に調整した。反応器を約30psiの水素で加圧し、反応混合物を26℃(21〜31℃)まで穏やかに加熱した。HPLCによって反応が完了するまで、反応器内容物の水素化を、約30psi下で26℃(21〜31℃;最大31℃)にて行った。16.5時間後、出発原料(0.472A%)の消失を確認した後に、反応が完了しているとみなした。反応器の内容物を、8インチのスパークラー濾過器中で調製した状態調整Celite(商標)パッド(Celite(商標)0.2〜0.5kgをジクロロメタン20〜55kgで状態調整)を通して循環させて、白金触媒を除去した。反応器及びCelite(商標)ベッドを、ジクロロメタン(83kg)で2回に分けて順方向にすすいだ。濾液を570Lガラス内張反応器に移し、570Lガラス内張反応器内で減圧下、最大温度45℃で約132Lまで濃縮した。エタノール(69kg)を入れ、濃縮を真空及び最大温度45℃において約132Lまで続けた。インプロセスNMRは、ジクロロメタン含量が39%であることを示した。エタノール(69kg)を再び入れ、濃縮を再び約132Lまで続けた。インプロセスNMRは、ジクロロメタン含量が5%であることを示した。次いで、反応混合物を3℃(0〜6℃)に調整し、約1時間撹拌し、得られたスラリーを、濾布を装着したジャケット付き加圧ヌッチェで濾過した。反応器、ポンプ及びラインを、冷[3℃(0〜6℃)]エタノール(26kg)で順方向にすすいだ。最高温度が50℃の水浴を(乾燥機のジャケットを加熱するために)用いて、湿った濾過ケーク(36.6kg)を減圧下で40〜50℃で乾燥させた。12.5時間後のLOD分析は、溶媒含量が0.1%であることを示した。乾燥生成物(B)(26.4kg)を、収率89.5%で排出した。HPLCは98.4A%の純度を示した。脱塩素化不純物は0.083%であった。
【0161】
(実施例5)
4−(N,N−ジメチルカルバミミドイル)安息香酸(A)の合成
プロセスA
【0162】
【化49】

ステップ1:アミジンの形成
温度を−8℃から−12℃の間に維持しながら、2Mのジメチルアミンのテトラヒドロフラン溶液に、2.3Mのヘキシルリチウムのヘキサン溶液を、少なくとも3時間にわたって徐々に加えた。温度を−8℃から−12℃の間に維持しながら、この溶液を、エチル−4−シアノベンゾエート(F)のテトラヒドロフラン溶液に加えた。反応の完了をHPLCによって確認し、溶液の温度を−8℃から3℃の間に調整した。反応混合物を、炭酸水素ナトリウム水溶液の冷溶液に徐々に加え、所望のエチル−4−(N,N−ジメチルカルバミミドイル)ベンゾエート(G)を、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させて、エチル−4−(N,N−ジメチルカルバミミドイル)ベンゾエート(G)を白色固体として得た。
【0163】
ステップ2:エステルの加水分解
エチル−4−(N,N−ジメチルカルバミミドイル)ベンゾエート(G)のTHF溶液に、水酸化リチウム(2eq.)の水溶液を加え、反応混合物を6時間撹拌した。反応の完了をHPLCによって確認した。反応混合物に水を加え、続いて酢酸エチルで抽出した。水層を、6N HClで酸性化してpH3〜4の間にし、この時点で、所望の4−(N,N−ジメチルカルバミミドイル)安息香酸が白色固体として沈殿した。単離した白い固体をヘキサンで洗浄して、4−(N,N−ジメチルカルバミミドイル)安息香酸を塩酸塩(A)として得た。
【0164】
プロセスB:
【0165】
【化50】

ステップ1:エステルの形成
4−シアノ安息香酸のメタノール溶液に、濃硫酸を加え、少なくとも12時間反応物を還流させた。反応の完了をHPLCによって確認した。溶液を冷却し、溶媒を蒸発させた。残渣に酢酸エチルを加え、続いて10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した。酢酸エチル層を乾燥させ、濾過し、蒸発させて、所望の4−メチルシアノベンゾエートを白色固体として得た。
【0166】
ステップ2:ジメチルアミジンの形成
HCl(気体)流を、飽和するまで、0℃の4−メチルシアノベンゾエート(1mmol)のエタノール(50mL)溶液に通して泡立てた。混合物を室温で終夜撹拌し、蒸発させて、化合物Pを得た。得られた残渣を、エタノール(20mL)中、ジメチルアミン塩酸塩(0.15eq.)で還流温度にて4時間処理した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をヘキサンで洗浄して、所望の生成物Qを淡黄色固体として得た。
【0167】
ステップ3:エステルの加水分解
エチル−4−(N,N−ジメチルカルバミミドイル)ベンゾエート(Q)のTHF溶液に、水酸化リチウム(2eq.)の水溶液を加え、反応混合物を6時間撹拌した。反応の完了をHPLCによって確認した。反応混合物に水を加え、続いて酢酸エチルで抽出した。水層を、6N HClで酸性化してpH3〜4の間にし、この時点で、所望の4−(N,N−ジメチルカルバミミドイル)安息香酸が白色固体として沈殿した。単離した白い固体をヘキサンで洗浄して、4−(N,N−ジメチルカルバミミドイル)安息香酸を塩酸塩(A)として得た。
【0168】
(実施例6)
ベトリキサバンの遊離塩基の調製
【0169】
【化51】

100mL丸底フラスコに、化合物B(2.0g、実施例4と同様にして得た)、化合物A(1.98g、例5と同様にして得た)及びN,N−ジメチルアセトアミド20mLを加えた。反応混合物を簡単に撹拌することによってほとんどの固体を溶解させ、次いで濃HCl(36μL)を加えた。この希薄なスラリーに、EDC・HCl(合計1.8g、Aldrich)を0.6gずつ3回に分けて20分間隔で加えた。反応を完了させるために、反応混合物を1.5時間撹拌した。
【0170】
バッチを水浴で冷却してバッチ温度を22〜30℃に維持しながら、この反応物に水10mL中の炭酸ナトリウム(2.3g)の溶液を加えた。バッチをよく混合された状態に保つには、激しい撹拌が必要であった。次いで、水10mLを加えた。バッチを22〜25℃にて30分間撹拌した。スラリーを形成後、水をさらに20mL加えた。バッチを22℃において1時間撹拌した。バッチを濾過し、湿ったケークを水で各5mLで3回洗浄し、次いでアセトン5mLで洗浄した。ケークを、漏斗上で吸引によって乾燥させた。乾燥ケークの重量は、2.95〜2.92gであり、これは粗製ベトリキサバンである。得られた粗製ベトリキサバンを精製するために、粗製固体1.0gをN,N−ジメチルアセトアミド4mLと混合し、70℃に30分間加熱した。次いで、トルエン8mLを加え、混合物を30分間加熱し、次に1時間にわたって22℃に冷却し、次に0℃に冷却し、0℃で2時間エージングさせ、濾過し、トルエンで各1mLで2回洗浄した。ケークを漏斗上で吸引によって乾燥させて、純粋なベトリキサバン(I)を0.88g得た。
【0171】
前述の発明は、理解を明確にするために説明及び実施例によってある程度詳細に記載したが、当業者ならば、添付した特許請求の範囲の範囲内である程度の変更及び修正を実施可能なことがわかるであろう。加えて、本明細書中に示した各参考文献は、各参考文献が参考として個別に援用されたのと同程度に、参考としてその全体を本明細書中に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II:
【化52】

[式中、
及びRは独立して、C1〜6アルキルであり、
及びRは独立して、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ及びメトキシからなる群から選択され、
は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びメトキシからなる群から選択される]
の化合物又はその塩の調製方法であって、式IIの化合物又はその塩を形成するための反応条件下で、式II−A:
【化53】

の化合物と式II−B:
【化54】

の化合物とを接触させるステップを含む方法。
【請求項2】
及びRが共にメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
及びRの一方が水素であり、R及びRの他方が水素、フルオロ、クロロ、ブロモ及びメトキシからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
が水素であり、Rが水素、フルオロ、クロロ、ブロモ及びメトキシからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
が水素であり、Rがメトキシである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
がクロロである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
塩形成条件下で式IIの化合物又はその塩を酸と接触させて式IIの化合物の薬学的に許容される塩を生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記式IIの化合物の薬学的に許容される塩を回収するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式I:
【化55】

のベトリキサバン又はその塩の調製方法であって、ベトリキサバン又はその塩を形成するための反応条件下で式A:
【化56】

の化合物と式B:
【化57】

の化合物とを接触させるステップを含む方法。
【請求項10】
前記反応条件が溶媒を含む、請求項1又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒が、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジクロロメタン、ジメチルアセトアミド、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒が、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記反応条件がアミドカップリング試薬を含む、請求項1又は9に記載の方法。
【請求項14】
前記アミドカップリング試薬が、2−プロパンホスホン酸無水物、カルボニルジイミダゾール、2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン、N,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド及びそれらの組合せからなる群から選択され、任意選択でヒドロキシベンゾトリアゾールと組み合わされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アミドカップリング試薬が、N,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド及びそれらの組合せからなる群から選択され、任意選択でヒドロキシベンゾトリアゾールと組み合わされる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記カップリング剤が、ヒドロキシベンゾトリアゾールと組み合わされるN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドであるか、又は塩酸との組み合わされるN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
塩基の添加によってベトリキサバンの遊離塩基を回収するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記塩基が炭酸ナトリウムであり、少なくとも約2モル過剰又は少なくとも約3モル過剰で添加される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記接触ステップを、ベトリキサバン又はその塩を少なくとも65%の収率で与えるカップリング条件下で実施する、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
式C:
【化58】

の化合物を、式Bの化合物を形成するための反応条件に曝露することによって、式Bの化合物を調製する、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
式Bの化合物を形成するための前記反応条件が、触媒存在下での水素ガスを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記触媒が硫化5%白金担持炭素である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
式Bの化合物を形成するための前記反応条件が、19℃から31℃の間の温度を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
式Bの化合物を形成するための前記反応条件が、塩化メチレン、エタノール、メタノール、酢酸エチル及びそれらの組合せからなる群から選択される溶媒を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記溶媒が塩化メチレンである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
式Bの化合物を少なくとも80%の収率で与える、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
式Cの化合物を形成するための反応条件下で、式D:
【化59】

の化合物と式E:
【化60】

の化合物とを接触させるステップによって、式Cの化合物を調製する、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
式Cの化合物を形成するための前記反応条件が、19℃から31℃の間の温度を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
式Cの化合物を形成するための前記反応条件が、溶媒としてアセトニトリルを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
式Cの化合物を形成するための前記反応条件が、オキシ塩化リン及びピリジンを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記接触ステップを、式Cの化合物を少なくとも84%の収率で与える反応条件下で実施する、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
式G:
【化61】

[式中、RはC1〜6アルキル又はベンジルである]
の化合物を、式Aの化合物を形成するための反応条件に曝露することによって、式Aの化合物を調製する、請求項9に記載の方法。
【請求項33】
Rがメチル又はエチルであり、式Aの化合物を形成するための前記反応条件が無機塩基及び溶媒を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
式H:
【化62】

の化合物を、式Gの化合物を形成するための反応条件に曝露することによって、式Gの化合物を調製する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
式Gの化合物を形成する前記反応条件が、ジメチルアミン、LiR[式中、Rは、C1〜6アルキルである]及び溶媒を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
式I:
【化63】

のベトリキサバン又はその塩の調製方法であって、
a)溶媒としてアセトニトリルを含む反応条件下で式D:
【化64】

の化合物と式E:
【化65】

の化合物とを接触させて、式C:
【化66】

の化合物を形成するステップと、
b)触媒存在下での水素ガスを含む還元条件に式Cの化合物を曝露して、式B:
【化67】

の化合物を形成するステップと、
c)アミドカップリング試薬を含む反応条件下で式Bの化合物と式A:
【化68】

の化合物とを接触させて、ベトリキサバン又はその塩を形成するステップと
を含む方法。
【請求項37】
前記アミドカップリング試薬が、ヒドロキシベンゾトリアゾール又は塩酸と任意選択で組み合わされるN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
式I:
【化69】

のベトリキサバン又はその塩の調製方法であって、
a)オキシ塩化リン、ピリジン及びアセトニトリルを含む反応条件下で、式D:
【化70】

の化合物と式E:
【化71】

の化合物とを接触させて、式C:
【化72】

の化合物を形成するステップと、
b)5%硫化白金担持炭素の存在下での水素ガスを含む還元条件に式Cの化合物を曝露して、式B:
【化73】

の化合物を形成するステップと、
c)N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩を含む反応条件下で、式Bの化合物と式A:
【化74】

の化合物とを接触させて、ベトリキサバン又はその塩を形成するステップと
を含む方法。
【請求項39】
反応物と、任意選択で炭酸ナトリウムである塩基とを接触させることによってベトリキサバンの遊離塩基を回収するステップをさらに含む、請求項9、36及び38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
塩形成条件下でベトリキサバン又はその塩と酸とを接触させてベトリキサバンの薬学的に許容される塩を形成するステップをさらに含む、請求項9、36及び38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記ベトリキサバンの薬学的に許容される塩を回収するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記酸がマレイン酸であり、前記ベトリキサバンの薬学的に許容される塩がマレイン酸塩である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
塩形成条件が、ベトリキサバンのマレイン酸塩を形成するための反応条件下で10℃から40℃の間の温度においてC1〜4アルカノールと水との溶媒混合物中でベトリキサバンと少なくとも1モル当量のマレイン酸とを接触させることを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
ベトリキサバン又はベトリキサバンの前記塩をキログラム規模で調製する、請求項9、36及び38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
実質的に純粋なベトリキサバンの遊離塩基又はマレイン酸塩を含む組成物。
【請求項46】
少なくとも約99.3%のベトリキサバンの遊離塩基を含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
少なくとも99.5%のベトリキサバンの遊離塩基を含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
少なくとも99.7%のベトリキサバンの遊離塩基を含む、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
少なくとも99.7%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項50】
少なくとも99.8%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
少なくとも99.9%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
化合物L及び/又は化合物M:
【化75】

を実質的に含まない、ベトリキサバンの遊離塩基又はその塩を含む組成物。
【請求項53】
化合物L及び/又は化合物M:
【化76】

を含まない、ベトリキサバンの遊離塩基又はその塩を含む、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記塩がマレイン酸塩である、請求項52又は53に記載の組成物。
【請求項55】
(1)ベトリキサバンの遊離塩基を形成するための反応条件下で式A
【化77】

の化合物と式B
【化78】

の化合物とを接触させるステップと、
(2)(1)において99.3%以上の純度で得られたベトリキサバンの遊離塩基を回収するステップと
によって得ることができる、少なくとも99.3%のベトリキサバンの遊離塩基を含む組成物。
【請求項56】
少なくとも99.5%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
少なくとも99.7%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
(1)ベトリキサバン又はその塩を形成するための反応条件下で式A
【化79】

の化合物と式B
【化80】

の化合物とを接触させるステップと、
(2)塩形成条件下で、(1)において得られたベトリキサバン又はその塩とマレイン酸とを接触させて、ベトリキサバンのマレイン酸塩を形成するステップと、
(3)(2)において99.7%以上の純度で得られたベトリキサバンのマレイン酸塩を回収するステップと
によって得ることができる、少なくとも99.7%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む組成物。
【請求項59】
少なくとも99.8%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
少なくとも99.9%のベトリキサバンのマレイン酸塩を含む、請求項59に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−514380(P2013−514380A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544794(P2012−544794)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060572
【国際公開番号】WO2011/084519
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(500287639)ミレニアム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【出願人】(506109155)ポートラ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】