説明

筆記具用インキ組成物及びそれを内蔵した筆記具

【課題】 白色紙等の光を反射する色調の被筆記体に筆記した場合であっても、優れた光干渉色を発現する筆跡を形成でき、長期的に安定した筆記が可能である新規な干渉色顔料を用いた筆記具用インキ組成物とそれを内蔵した筆記具を提供する。
【解決手段】 アルミニウムフレークの表面に二酸化珪素を被覆した干渉色顔料を溶媒中に含有する筆記具用インキ組成物。前記干渉色顔料の平均粒子径が、3〜50μmの範囲にある。前記筆記具用インキ組成物を内蔵した筆記具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用インキ組成物に関する。更には、干渉色顔料を用いた筆記具用インキ組成物とそれを内蔵した筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、視覚依存多色性(見る角度によって違う色に見えるような効果)の光干渉色を筆跡に付与するために、雲母やガラスフレークの表面に二酸化チタンを被覆したパール顔料や、アルミニウム表面に二酸化チタンを被覆した干渉色顔料を用いたインキ組成物が提供されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【特許文献1】特開平9−78019号公報
【特許文献2】特開2001―262036号公報
【特許文献3】特開2002―338866号公報
【0003】
前記パール顔料は、基材となる雲母やガラスフレークが光遮蔽性に乏しく入射光を透過するため、白色紙(光を反射する色の下地)等の被筆記体に筆記した際には充分な光干渉色が視認できず、筆跡に光干渉色を得るためには黒色紙等の暗色被筆記体に筆記する必要があり、汎用性に欠けるものであった。
これに対して前記干渉色顔料は、基材となるアルミニウムが光遮蔽性を有するため、用紙の色調に限定されることなく汎用の用紙に筆記した筆跡が光干渉色を発現するものである。
しかしながら、被膜となる二酸化チタンの比重が大きいため、干渉色顔料が沈降や凝集を生じ易く、経時によって筆記できなくなる等の不具合を生じる虞がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、白色紙等の光を反射する色調の被筆記体に筆記した場合であっても、優れた光干渉色を発現する筆跡を形成でき、長期的に安定した筆記が可能である新規な干渉色顔料を用いた筆記具用インキ組成物とそれを内蔵した筆記具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、アルミニウムフレークの表面に二酸化珪素を被覆した干渉色顔料を溶媒中に含有する筆記具用インキ組成物を要件とする。
更に、前記干渉色顔料の平均粒子径が、3〜50μmの範囲にあること、前記干渉色顔料をインキ組成物全量中0.1〜30重量%の範囲で含有すること、前記インキ組成物が水を溶媒とし、剪断減粘性付与剤を含有すること、前記インキ組成物の粘度が、20℃、1rpmでの回転粘度計による測定値が100〜2000mPa・sの範囲にあると共に、剪断減粘指数が、0.2〜0.8の範囲にあることを要件とする。
更には、前記いずれかの筆記具用インキ組成物を内蔵した筆記具を要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の筆記具用インキ組成物により、白色紙等の光を反射する色調の被筆記体に筆記した場合であっても優れた光干渉色を発現する筆跡が形成できるため、装飾性と汎用性の高いものとなる。また、干渉色顔料が沈降や凝集を生じ難いため、経時によって筆記不良を生じることなく、長期的に安定した筆記が可能なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で用いられる干渉色顔料は、薄片状微細基材であるアルミニウムフレークの表面に二酸化珪素を被覆することで得られる視角依存多色性を備えた顔料である。
前記干渉色顔料は、外部から入射した光のうち、二酸化珪素表面で反射された反射光と、該媒体(二酸化珪素被膜)を通過してアルミニウム表面で反射された反射光の光路差による位相差が生じることで、視覚依存多色性(見る角度によって違う色調に見える効果)を発現するものである。更に、基材としてアルミニウムが用いられるため、基材裏側への光透過を生じることなく入射光に対して高い反射性を発現する。そのため、光を反射する色調(白色等)の被筆記体に筆記した場合であっても優れた光干渉色が発現される。
【0008】
前記干渉色顔料としては、平均粒子径が3〜50μm、好ましくは5〜40μmのものが用いられる。粒子径が3μmより小さいと高い輝度を与え難くなり、50μmより大きいと繊維束等の細管中での移動がし難くなる。
【0009】
前記干渉色顔料として具体的には、東洋アルミ社製の商品名「クロマシャイン」品番:CRS GD 20−R(金色干渉色)、CRS BL 20−X(青色干渉色)、CRS BL 20−R(青色干渉色)、CRS BL 10−R(青色干渉色)、CRS GR 20−R(緑色干渉色)等が例示できる。
前記干渉色顔料は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成物全量中0.1〜乃至30重量%、好ましくは1〜20重量%の範囲で用いられる。その際、粉体として用いる他、ペースト状や分散液に加工した後に用いることもできる。
【0010】
前記干渉色顔料を用いたインキ組成物としては、汎用の水性インキ、油性インキが用いられる。
前記水性インキ組成物は、着色剤(干渉色顔料を含む)、水、水溶性有機溶剤、更に樹脂等の添加剤等により構成される。
【0011】
前記着色剤として、前述の干渉色顔料と共に汎用の染料や一般顔料等を用いて、筆跡(インキ)の色調を調色することができる。
前記汎用の着色剤としては、水性媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
【0012】
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
塩基性染料としては、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、ローダミンB(C.I.45170)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
直接染料としては、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、バイオレットBB(C.I.27905)、ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
【0013】
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め界面活性剤等を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、
C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:S.S.Blue GLL、顔料分22%、山陽色素株式会社製〕、
C.I. Pigment Red 146〔品名:S.S.Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、
C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、
C.I.Pigment Red220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
その他、パール顔料、金色、銀色のメタリック顔料、蓄光性顔料、修正ペン等に用いられる二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、香料又は香料カプセル顔料などを例示できる。
【0014】
前記汎用着色剤は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成中1乃至25重量%、好ましくは2乃至15重量%の範囲で用いられる。
【0015】
水溶性有機溶剤として具体的には、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
尚、前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用して用いることができ、2〜60重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲で用いられる。
【0016】
更に、紙面への固着性や粘性を付与するために水溶性樹脂を添加することもできる。前記水溶性樹脂としては、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等が挙げられる。前記水溶性樹脂は一種又は二種以上を併用することができ、インキ組成中1乃至30重量%の範囲で用いられる。
【0017】
その他の添加剤として、必要に応じて、炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、金属石鹸、ポリアルキレングリコール、リン酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、燐酸系活性剤等の潤滑剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2−ベンズチアゾリン3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤、アスコルビン酸、エリソルビン酸、α−トコフェロール、カテキン、合成ポリフェノール、コウジ酸、アルキルヒドロキシルアミン、オキシム誘導体、α−グルコシルルチン、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、二酸化チオ尿素等の消泡剤や酸化防止剤等を添加することもできる。
【0018】
また、インキ組成物中に剪断減粘性付与剤を添加することもできる。
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ダイユータンガム、ゼータシーガム、ポリN−ビニルカルボン酸アミド、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、HLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示でき、更には、インキ組成物中にN−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤を併用して添加しても安定した剪断減粘性を付与できる。
【0019】
前記水性インキの粘度としては、20℃での測定値が、1rpmで100〜2000mPa・sの範囲にあるものが干渉色顔料を分散状態でより安定に維持できるため好適である。
また、インキの粘性特性として、剪断減粘指数〔粘度計による剪断応力値(T)及び剪断速度(j)値の流動学的測定により導かれる、実験式(T=Kj:但し、Kは計算された定数である)を適用して計算されるn値〕を0.2〜0.8の範囲に調整したものは、非筆記状態で干渉色顔料を安定状態で維持できるためより好適である。
【0020】
更に、軸筒内に水性インキ組成物を充填した際、該インキ組成物の後端部にインキ逆流防止体(液栓)を配することもできる。
前記インキ逆流防止体としては、液状または固体のいずれを用いることもでき、前記液状のインキ逆流防止体としては、ポリブテン、α−オレフィンオリゴマー、シリコーン油、精製鉱油等の不揮発性媒体が挙げられ、所望により前記媒体中にシリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、脂肪酸アマイド等を添加することもできる。また、固体のインキ逆流防止体としては樹脂成形物が挙げられる。前記液状及び固体のインキ逆流防止体は併用することも可能である。
【0021】
前記油性インキ組成物は、着色剤(干渉色顔料を含む)、有機溶剤、更に樹脂等の添加剤等により構成される。
前記着色剤として、前述の干渉色顔料と共に汎用の染料や一般顔料等を用いて、筆跡(インキ)の色調を調色することができる。
前記汎用着色剤としては、有機溶剤に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
【0022】
前記染料としては、従来公知の油溶性染料を用いることができ、具体的には、ローダミンBベース(C.I.45170B、田岡染料製造(株))、ソルダンレッド3R(C.I.21260、中外化成(株))、メチルバイオレット2Bベース(C.I.42535B、米国、National Aniline Div.社製)、ビクトリアブルーF4R(C.I.42563B)、ニグロシンベースLK(C.I.50415)(以上、独国、BASF社製)、バリファーストイエロー♯3104(C.I.13900A)、バリファーストイエロー♯3105(C.I.18690A)、オリエントスピリットブラックAB(C.I.50415)、バリファーストブラック♯3804(C.I.12195)、バリファーストイエロー♯1109、バリファーストオレンジ♯2210、バリファーストレッド♯1320、バリファーストブルー♯1605、バリファーストバイオレット♯1701(以上、オリエント化学工業(株)社製)、スピロンブラックGMHスペシャル、スピロンイエローC−2GH、スピロンイエローC−GNH、スピロンレッドC−GH、スピロンレッドC−BH、スピロンブルーC−RH、スピロンバイオレットC−RH、S.P.T.オレンジ6,S.P.T.ブルー111(以上、保土ヶ谷化学工業(株)製)などが例示できる。更に、C.I.ベーシックブルー1、同7、同8、C.I.ベーシックバイオレット1、同3、C.I.ベーシックレッド1等の塩基染料とC.I.アシッドイエロー23、同36等から選ばれる酸性染料との造塩染料等が例示できる。
【0023】
前記顔料としては、従来公知の顔料を使用することができ、具体的には、C.I.PIGMENT RED2、同3、同5、同8、同17、同22、同31、同38、同41、C.I.PIGMENT ORANGE 5、同10、同13、同16、同36、同40、同43、同61、同64、同71、同73、C.I.PIGMENT VIOLET 19、同23、同31、同33、同36、同37、同38、同50、C.I.PIGMENT BLUE 2、同9、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同22、同25、同28、同29、同36、同60、同68、同76、C.I.PIGMENT BROWN 23、同25、同26、C.I.PIGMENT YELLOW 1、同3、同12、同13、同24、同83、同93、同94、同95、同97、同99、同128、同139、同153、同173、C.I.PIGMENT GREEN 7、同10、同36、C.I.PIGMENT BLACK 7等の有機顔料や、黒色酸化鉄、ファーネストブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、群青、紺青、コバルトブルー、チタンイエロー、ターコイズ、モリブデートオレンジ、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
更に、その他の顔料として、蛍光顔料、パール顔料、蓄光顔料、金属顔料、複合金属顔料、金属酸化物顔料等を使用することもできる。
【0024】
前記汎用着色剤は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成中1乃至45重量%の範囲で用いられる。
【0025】
前記有機溶剤としては、従来公知の油性インキ用溶剤を使用することができ、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、プロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノノルマルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、等のグリコールエーテル系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等のグリコール系溶剤、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、酢酸−2−エチルへキシル、イソ酪酸イソブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、等のエステル系溶剤、エタノール、ノルマルプロパノール、ノルマルブタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリドデシルアルコール等のアルコール系溶剤、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、n−ヘプタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソデカン等の脂肪族炭化水素、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
尚、前記有機溶剤は一種又は二種以上を併用して用いることができ、20〜90重量%、好ましくは35〜75重量%の範囲で用いられる。
【0026】
前記樹脂としては、定着剤や分散剤として使用されている樹脂が適宜用いられ、例えば、ケトン樹脂、スルフォアミド樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンとマレイン酸エステルとの共重合体、スチレンとアクリル酸又はそのエステルとの共重合体、エステルガム、キシレン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂やその水添化合物、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。前記樹脂は一種又は二種以上を混合して用いることができ、インキ組成物全量中0.1〜30重量%の範囲で用いられる。
【0027】
更に、ベントナイト、合成微粉シリカ、水添ヒマシ油、脂肪酸アマイドワックス等の粘性調節剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、潤滑剤、分散剤、カスレ防止剤、洩れ防止剤、界面活性剤等の各種添加剤を油性インキ中に添加することもできる。
【0028】
前記水性インキや油性インキの形態で調製される筆記具用インキ組成物は、チップを筆記先端部に装着したマーキングペンやボールペンに充填して実用に供される。
マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップを筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させる構造、軸筒内部に直接インキを収容して、弁機構により前記筆記先端部に所定量のインキを供給する構造のマーキングペンが挙げられる。
【0029】
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させる構造、軸筒内にインキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、更にインキの端面には逆流防止用に液栓や固体栓等のインキ追従体が密接している構造のボールペンを例示できる。
【0030】
更にボールペンチップについて更に詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属製のパイプや金属材料の切削加工により形成したチップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等が適用できる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の表に実施例及び比較例の水性インキの組成、粘度、剪断減粘指数を示す。尚、表中の組成の数値は重量部を示す。
各実施例、比較例のインキ粘度は、20℃でEM型回転粘度計〔東京計器(株)製〕を用いて1rpmで測定した。また、剪断減粘指数は各インキ粘度の測定値より算出した値である。
【0032】
【表1】

【0033】
表中の原料の内容について注番号に沿って説明する。
(1)東洋アルミニウム(株)製、商品名:クロマシャイン CRS GD 20−R(固形分60%)
(2)東洋アルミニウム(株)製、商品名:クロマシャイン CRS GR 20−R(固形分60%)
(3)東洋アルミニウム(株)製、商品名:クロマシャイン CRS BL 10−R(固形分60%)
(4)アイゼン保土ヶ谷(株)製、商品名:エオシン
(5)アルミニウム表面に二酸化チタンを被覆した干渉色顔料、旭化成工業(株)製、商品名:カラーフロップアルミ
(6)雲母の表面に二酸化チタンを被覆したパール顔料、メルク社製、商品名:イリオジン201
(7)ガラスフレークの表面に二酸化チタンを被覆したパール顔料、日本板硝子(株)製、商品名:メタシャインRCFSX−1040RC
(8)荒川化学工業(株)製、商品名:アルコンP−100
(9)ヤスハラケミカル(株)製、商品名:YSポリスターS145
(10)ジョンソンポリマー(株)製、商品名:ジョンクリル61J
(11)日本純薬(株)製、商品名:ジュンロンPW−110
(12)三晶(株)製、商品名:KELZAN
(13)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフA212C
【0034】
インキの調製
前記実施例及び比較例の配合量で各原料を混合し、撹拌溶解(分散)することにより筆記具用インキ組成物を得た。
【0035】
筆記具の作製
実施例1,3及び比較例1,3のインキを市販のマーキングペン(パイロットコーポレーション製、M−20PM)に充填することで試料マーキングペンを作製した。
実施例2,4及び比較例2,4のインキを市販のボールペン(パイロットコーポレーション製、LH−20C7)に充填した後、該インキの後端にインキ逆流防止体を配設することで試料ボールペンを作製した。
【0036】
筆跡試験
前記試料マーキングペン及び試料ボールペンを用いて、黒色紙及び白色紙上に手書きで螺旋状の丸を連続筆記した筆跡について、視認角度を変えて観察した。
その際、実施例1乃至4及び比較例1の筆跡は用紙の色調に関わらず光干渉色を発現するものであったが、比較例2乃至4の筆跡は黒色紙上では光干渉色を発現するものの白色紙上では光干渉色を視認できなかった。
【0037】
インキ安定試験
実施例1及び比較例1のインキ3gを試料瓶に取り、室温で24時間静置した際のインキの状態を観察した。
その際、実施例1のインキは均一な分散状態を維持していたものの、比較例1のインキには顔料の沈降が見られ、透明な上澄みとの層分離が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムフレークの表面に二酸化珪素を被覆した干渉色顔料を溶媒中に含有する筆記具用インキ組成物。
【請求項2】
前記干渉色顔料の平均粒子径が、3〜50μmの範囲にある請求項1記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項3】
前記干渉色顔料をインキ組成物全量中0.1〜30重量%の範囲で含有する請求項1又は2に記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項4】
前記インキ組成物が水を溶媒とし、剪断減粘性付与剤を含有する請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項5】
前記インキ組成物の粘度が、20℃、1rpmでの回転粘度計による測定値が100〜2000mPa・sの範囲にあると共に、剪断減粘指数が、0.2〜0.8の範囲にある請求項4記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項6】
前記請求項1乃至5のいずれかに記載の筆記具用インキ組成物を内蔵した筆記具。

【公開番号】特開2010−65086(P2010−65086A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230563(P2008−230563)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】