説明

筆跡消去方法および筆跡消去装置

【課題】記録媒体(特に紙)を再利用するために、筆記具で筆記した筆跡を消去する方法およびその装置を提供する
【解決手段】基材と、基材の少なくとも一方の表面に形成された、無機顔料、バインダー、およびカチオンポリマーを含む層を有する記録媒体の当該層の表面に、インキにより筆記した筆跡を、沿面放電またはコロナ放電により発生させた酸化性ガスに曝して、筆跡を消去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体(特に紙)に筆記した筆跡を消去する方法、およびこの方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙を再生して再利用する方法として、印刷した紙を脱墨した後、繊維化し、再度抄紙して紙にする方法が広く知られている。さらに、最近では、複写機およびプリンタ等で画像を形成した印刷物から、画像を消去し、画像を消去した紙を再利用する方法も提案されている。例えば、特許文献1(特開平7−253736号公報)においては、現像剤による画像が形成されている記録紙上の画像形成面に、現像剤物質を分解する気体状の化学的活性物質を接触させることにより、記録紙上の画像を消去して記録紙を再生する記録紙再生方法が提案されている。現像剤はトナーであり、気体状の化学的活性物質は、例えば、酸素、フッ素、塩素等の有機物質分解性元素を有する原料ガスを活性化することで得られるものである。
【0003】
特許文献2(特開2004−291638号公報)においては、無機顔料を含む表面を有している記録媒体の表面に画像を具備している印刷物の画像を、沿面放電またはコロナ放電により発生させた酸化性ガスに暴露して、画像を消去する方法を提案している。無機顔料は、アルミナ又はシリカであり、画像は、例えば、微生物色素または動物もしくは植物から抽出される色素等を含み、例えば、インクジェット記録により形成される。
【0004】
【特許文献1】特開平7−253736号公報
【特許文献2】特開2004−291638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1および2にて提案されているように、複写機およびプリンタ等で形成した画像を消去する方法は、これまでにも種々提案され、そのための記録紙およびインキについても提案されている。しかしながら、上記文献は、筆記具による筆跡を消去する方法を具体的に提案していない。わずかに特許文献2が、記録媒体へ印字/印刷することを、ペンなどの形状を有する文具を用いても構わないと言及しているにすぎない。
【0006】
筆記具による筆跡を消去することもまた、紙の再利用という観点から、有益である。例えば、会議および講演会等では、多くの資料を紙の形態で出席者に配布し、出席者は自己の理解を整理するため、資料中にメモを書き込むことが多い。そのため、会議が終了してから、資料を回収した後、別の会議で資料を再度使用する、あるいは、資料を白紙にして再利用することを望む場合には、手書きの筆跡を消去する必要が生じる。
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、筆記具による筆跡を消去する方法および装置を、特定の紙および筆記具を用いて提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明者らが検討を重ねた結果、特定の物質を含む層を有する記録媒体の当該層の表面に、筆記具で筆記した筆跡が、酸化性ガスにより、比較的容易に分解して、色が消える又は色が薄くなることを見出し、本発明を案出するに至った。即ち、本発明は、基材と、基材の少なくとも一方の表面に形成された、無機顔料、バインダー、およびカチオンポリマーを含む層を有する記録媒体の当該層の表面に、筆記具で筆記した筆跡を、酸化性ガスに曝すことを含む、記録媒体表面の筆跡を消去する方法(以下、単に「筆跡消去方法」と呼ぶ)を提供する。
【0008】
ここで、「筆跡の消去」は、記録媒体に筆記した筆跡が目視にて全く認識できなくなるようにすること、および筆跡を薄くすることを含む。また、筆跡とは、筆記された線図および塗りつぶしを指す。
【0009】
本発明の方法は、基材と、基材の少なくとも一方の表面に形成された、無機顔料、バインダー、およびカチオンポリマーを含む層を有する記録媒体の当該層の表面(以下、この表面を「筆記面」と呼ぶ)に筆記して、筆跡を形成することを特徴とする。この層は、その表面に形成された筆跡が、酸化性ガスに曝されたときに、消去することを容易にする。
【0010】
筆記面を与える層に含まれる、カチオンポリマーは、アミン系ポリマーであることが好ましい。アミン系ポリマーは、四級アンモニウム塩を有する繰り返し単位であることが好ましい。
【0011】
本発明の筆跡消去方法において用いる筆記具は、色素としてアントラキノン系染料およびメチン系染料から選択される少なくとも1つの染料を含むインキ組成物を、インキとして用いる筆記具であることが好ましい。これらの染料を含むインキで前記筆記面に筆記された筆跡は、酸化性ガスにより消去されやすい。
【0012】
酸化性ガスを発生させることは、好ましくは、放電により酸化性ガスを発生し得る気体の雰囲気下で、沿面放電用の面を有する誘電体により隔てられた第一の電極と第二の電極の間に電圧を印加することにより、当該沿面放電用の面から沿面放電を発生させることを含む。
【0013】
あるいは、酸化性ガスを発生させることは、好ましくは、放電により酸化性ガスを発生し得る気体の雰囲気下で、接地された第一の電極に対してマイナスの電圧を第二の電極に印加し、これらの電極間でコロナ放電させることを含んでよい。
【0014】
本発明はまた、基材と、基材の少なくとも一方の表面に形成された、無機顔料、バインダー、およびカチオンポリマーを含む層を有する記録媒体の当該層の表面に、筆記具で筆記した筆跡を、消去する装置であって、
(a)酸化性ガス発生手段、および
(b)筆記された記録媒体を載せる載置部
を有し、酸化性ガス発生手段および載置部は、筆記された記録媒体が酸化性ガスに曝されるように配置されている
筆跡の消去装置を提供する。この消去装置は、上記本発明の筆跡消去方法を実施するために用いられる。
【0015】
本発明の筆跡消去装置において、酸化性ガス発生手段は、
第一の電極と、第二の電極と、これらの電極を隔てる誘電体とを有し、
誘電体が、これらの電極間への電圧の印加により沿面放電を発生する面を有する、
沿面放電発生手段であることが好ましい。
【0016】
あるいは、酸化性ガス発生手段は、
第一の電極と、第二の電極とを有し、
接地された当該第一の電極に対してマイナスの電圧を当該第二の電極に印加することによりコロナ放電を発生する、
コロナ放電発生手段であることが好ましい。
【0017】
本発明はまた、
本発明の筆跡消去装置、
基材と、基材の少なくとも一方の表面に形成された、無機顔料、バインダー、およびカチオンポリマーを含む層を有する記録媒体、および
酸化性ガスにより消去可能な、インキ組成物をインキとして用いる、当該記録媒体への筆記に用いられる筆記具
を含む、筆跡消去システムを提供する。このシステムは、上記本発明の筆跡消去方法を実施するために用いられる。
【0018】
さらに、本発明は、前記本発明の筆跡消去方法および筆跡消去装置において使用され、あるいは前記筆跡消去システムを構成する記録媒体として、基材と、基材の少なくとも一方の表面に形成された、無機顔料、バインダー、およびカチオンポリマーを含む層を有する記録媒体を提供する。
【0019】
さらにまた、本発明は、この記録媒体への筆記に用いられる筆記具として、色素としてアントラキノン系染料およびメチン系染料から選択される少なくとも1つの染料を含むインキ組成物をインキとして用いる、筆記具を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、手で筆記した筆跡を消去することを可能にする方法および装置を提供する。これらの方法および装置は、脱墨工程および再繊維化工程を要することなく、無地の紙または印刷物を筆記される前の状態に戻して、再利用することを可能にする。よって、本発明は、環境保護および省資源の観点から好ましく使用され、あるいは、筆跡を機密上の理由から消去したいときに好ましく使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の筆跡消去方法および筆跡消去装置を、具体的に説明する。
[記録媒体]
本発明の方法および装置で使用される記録媒体は、基材と、基材の少なくとも一方の表面に形成された、無機顔料、バインダー、およびカチオンポリマーを含む層とを有する。本発明の方法および装置は、この記録媒体のこの層の表面に書された筆跡を消去する。以下、この層を、便宜的に「筆記面形成層」と呼ぶ。以下、筆記面形成層を構成する物質について説明する。
【0022】
無機顔料は、細孔を有する粒子の形態にて、筆記面形成層に存在することが好ましい。そのような無機顔料は、好ましくは多孔質体である。無機顔料は、具体的には、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、コロイダルシリカ、ゼオライト、クレイ、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、サチンホワイト、ケイソウ土及び酸性白土からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質であることが好ましい。無機顔料は、より好ましくは、アルミナ又はシリカであり、さらにより好ましくは、シリカである。
【0023】
バインダーは、無機顔料および筆記面形成層に含まれるその他の物質を、基材表面に固定させる役割をする。バインダーは水性バインダーであることが好ましい。ここで、「水性」とは、水に溶解する性質または水に良好に分散する性質を有する意味である。水性バインダーとして、具体的には、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン酢酸ビニルアセテート(EVA)、カゼイン、スチレンブタジエンラバー、でんぷん、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、およびポリエチレンオキサイド等が挙げられるが、これらに限定されず、他の水性バインダー(例えば、水溶性ポリマー)を任意に使用してよい。これらの水性バインダーは、1種のみ使用してよく、あるいは2種以上混合して使用してよい。
【0024】
バインダーとして、ポリビニルアルコール(PVA)とエチレン酢酸ビニルアセテート(EVA)とを、組み合わせて用いることがより好ましい。PVAとEVAを組み合わせてバインダーとして用いると、相乗的に膜の強度を向上させることができ、紙と筆記面形成層との間の剥離強度をより大きくすることができる。PVAとして、例えば、(株)クラレ製のPVA−R1130、117、および117Kを使用でき、EVAとして、例えば、住友化学(株)製のスミカフレックスS−401HQ,S−470HQ、S−500、S−752、およびS−755を使用できる。PVAとEVAとは、質量比1/9〜9/1で、筆記面形成層に含まれることが好ましい。
【0025】
筆記面形成層には、さらに、カチオンポリマーが含まれる。カチオンポリマーとは、カチオン基又はカチオン基にイオン化され得る基を有するポリマーをいう。カチオンポリマーは、筆記された筆跡の消去性を確保するために、筆記面形成層に含まれる。
【0026】
カチオンポリマーとして、好ましくは、アミン系ポリマーが用いられる。アミン系ポリマーは、アミンを有する繰り返し単位を含むポリマーである。具体的には、アミン系ポリマーとして、第一アミンもしくはその塩酸塩、第二アミンもしくはその塩酸塩、第三アミンもしくはその塩酸塩、または四級アンモニウム塩を有する繰り返し単位を含むポリマーが挙げられる。カチオンポリマーは、一種のモノマーを繰り返し単位として含む、ホモポリマーであってよく、あるいは、二種以上の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。カチオンポリマーはまた、上記アミンもしくはその塩酸塩、または四級アンモニウム塩を有する繰り返し単位と、他の繰り返し単位(例えば、アクリルアミド)とが共重合したものであってよい。
【0027】
アミン系ポリマーは、筆記具で筆記される筆跡の消去性の経時変化を小さくする。消去性の経時変化とは、筆記した直後の筆跡の消去性と、筆記してから数時間経過した後の筆跡の消去性が、異なることをいい、一般に、筆跡消去性は筆記後、時間が経つほど、低下する傾向にある。アミン系ポリマーは、それを含む筆記面形成層に筆記された筆跡の消去性の経時変化を小さくするという特徴を有する。また、カチオンポリマーは、一般に、消去される前の筆跡を安定させる役割を有し、筆跡それ自体の安定性(例えば、保存安定性)を向上させる。
【0028】
具体的には、アミン系ポリマーは、例えば、アクリルアミドジアリルアミン塩酸塩共重物(CAS No.344447−60−4)である。あるいは、アミン系ポリマーは、例えば、下記式で示される、四級アンモニウム塩を有するジアリルジメチルアンモニウムクロライドを繰り返し単位とする、ポリマーである。
【化1】

【0029】
アクリルアミドジアリルアミン塩酸塩共重物として、例えば、住化ケムテックス製のSumirez Resin 1001を使用できる。上記四級アンモニウム塩を有する繰り返し単位を含むアミン系ポリマーとして、例えば、センカ(株)製のユニセンスFPA101、およびFPA102を使用でき、あるいは、日東紡績(株)製のPAS−H−1L、5L、および10Lを使用できる。あるいは、アミン系ポリマーとして、一級アミンを有する繰り返単位を含む、日東紡績(株)製のPAAシリーズ(例えば、PAA−01、PAA−03、PAA−05、PAA−08、PAA−15、PAA−15B、PAA-10C、PAA−25、およびPAA−H−10C等)を使用できる。
【0030】
アミン系ポリマーとして、四級アンモニウム塩を有する繰り返し単位を含むものが好ましく用いられる。筆記面形成層が、四級アンモニウム塩を有する繰り返し単位を含むポリマーを含むと、特に、後述する特定の色素を有するインキ組成物による筆跡の消去性を良好にする。また、四級アンモニウム塩を有する繰り返し単位を含むポリマーは、他のアミン系ポリマーと比較して、前記筆跡の消去性の経時変化を、小さくする。
【0031】
無機顔料、バインダー、およびカチオンポリマーの混合割合は、筆記可能な面を与え、かつ筆記後の筆跡が酸化性ガスにより消去されることを可能にするように、適宜選択される。具体的には、無機顔料100質量部に対して、バインダーが35〜75質量部、カチオンポリマーが5〜20質量部の量で、筆記面形成層に含まれることが好ましい。
【0032】
筆記面形成層は、基材の少なくとも一方の表面に形成され、両面に形成してもよい。両面に筆記面形成層を有する記録媒体は、両面がともに、その上に筆記された筆跡を消去することが可能な面となるので、好ましい。
【0033】
筆記面形成層は、基材において、0.1g/m〜50g/m程度の量で形成されていることが好ましい。筆記面形成層の量が少ないと、当該層の上に筆記された筆跡を十分に消去できないことがある。筆記面形成層の量が50g/mを越えても、この層の作用に変わりはなく、これより多い量の筆記面形成層を設ける意義はない。
【0034】
筆記面形成層を形成する基材は、特に限定されず、シート状物を任意に使用できる。基材は、具体的には、紙、合成紙、プラスチックから成るフィルム、シートもしくは板、金属から成るシートもしくは板、またはガラスから成るシートもしくは板等であってよい。基材は好ましくは紙である。
【0035】
基材が紙である場合、紙の種類は、筆跡の消去後、再利用可能であれば、特に限定されず、酸性紙、中性紙およびアルカリ性紙のいずれでもよい。基材となる紙は、LBKPおよびNBKP等に代表される化学パルプ及び填料を主原料とし、その他内面サイズ剤および抄紙助剤を必要に応じて用い、常法により抄紙して製造される。パルプ材として、機械パルプや古紙再生パルプを併用しても良く、またこれらを主原料として使用してもよい。填料としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルクおよび二酸化チタン等を使用できる。基材となる紙は、更に、親水性バインダー、マット剤、硬膜剤、界面活性剤、ポリマーラテックスおよびポリマー媒染剤等を含有してよく、又はこれらが紙に塗布されていてもよい。基材となる紙の坪量は40〜700g/m2であることが好ましい。
【0036】
筆記面形成層は、無機顔料、バインダーおよびカチオンポリマーを、水に溶解および/または分散させて塗工液を調製し、この塗工液を基材の表面に塗布し、その後、乾燥させることにより形成することができる。塗工液は、必要に応じて、顔料分散剤、保水剤、増粘剤、消泡剤、離型剤、着色剤、耐水化剤、湿潤剤、蛍光染料、および紫外線吸収剤等を含んでよい。
【0037】
塗工液は、例えば、ロールコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、ゲートロールコーター法、バーコーター法、スプレーコート法、グラビアコーター法、カーテンコーター法、またはコンマコーター法等により基材表面に塗布してよい。塗布後、例えば、熱風乾燥炉または熱ドラム等を用いて乾燥させる。熱ドラムを用いる場合、加熱した仕上げ面に塗工層を圧着し、乾燥仕上げすることができる。なお、乾燥前の湿潤状態の塗工層に対して、バインダーを凝固させる目的で、亜鉛、カルシウム、バリウム、マグネシウム又はアルミニウムの硝酸塩、硫酸塩、蟻酸塩又は酢酸塩を含む水溶液で、塗工層を処理してもよい。
【0038】
塗工液は、乾燥後に固形分となる成分を、5〜40質量%含むように調製することが好ましい。塗工液において、固形分の量が少ないと、塗布した後に均一な層が形成されないことがある。また、固形分の量が多いと、塗布作業を行いにくくなる。また、固形分の量を多くして、塗布後の層を厚くしても、一定量を越えると、筆跡の消去という点では、それほど向上は認められない。固形分を調整した塗工液は、所望の量の固形分が基材に残るように(即ち、所望の量の筆記面形成層が形成されるように)、塗工量を調整して塗布される。
【0039】
このように筆記面形成層を形成した基材は、記録媒体として、本発明の筆跡消去方法および筆跡消去装置において使用される。記録媒体は、一般的には、印刷用または複写用の用紙として、所定の大きさにカットされた紙またはロール紙の形態で供給されることが好ましい。そのような形態の紙について、再利用の要望が多いことによる。勿論、記録媒体は、他の形態で提供されてよく、例えば、各種ノート、メモ用紙、印画紙、シール、ラベル、コンパクトディスク、または宅配便の伝票等として、提供されてよい。記録媒体は、予め印刷されたものであってよく、例えば、罫線またはマス目等が印刷された紙であってよく、あるいは、講義もしくは会議で配布されるような、所定の情報が印刷された文書であってよい。
【0040】
[筆記具]
本発明の方法および装置は、筆記具により前記記録媒体に筆記された筆跡を消去する。筆記具は、例えば、インキをペン先から滲出させる、マーカー及びサインペンのような中芯式筆記具、またはボールペンの形態であることが好ましく、ボールペンであることがより好ましい。ボールペンは、インキを装填したインキ収容管が軸内に設けられ、小さい球を装着したペン先から、インキを滲出させて筆記を行う筆記具である。ボールペンは、ボールの回転によりインキを滲出させて筆記を行うものであるため、無機顔料を含む筆記形成面において、無機顔料等の粉を生じさせにくいという利点を有する。中芯式筆記具は、インキ収容部として繊維束が収束された中芯、および中芯に貯蔵されたインキを流出するペン先(チップ)を有し、ペン先として、例えば、ボール、繊維、プラスチック芯、ブラシ状物、または筆状物が備える筆記具である。
【0041】
筆記具は、公知の部材を使用して、組み立てることができる。例えば、ボールペンは、公知の材料で公知の寸法に形成されたインキ収容管に、インキを装填して、公知の材料から成る公知の構造のボールペンチップとともに、公知の組立方法で組み立てて作製できる。インキ収容管は、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン等の合成樹脂製パイプ、または金属製パイプである。また、中芯式筆記具は、繊維束が収束された中芯(インキ収容部)を用意し、これにインキを充填して、ペン先とともに、公知の組立方法で組み立てて作製できる。
【0042】
筆記具のインキは、いずれの形態においても色素を含む。色素は特に限定されず、例えば、酸性染料、塩基性染料および直接染料を使用できる。インキは、色素として、アントラキノン系染料およびメチン系染料から選択される少なくとも1つの染料を含むインキ組成物であることが好ましい。これらの色素は、本発明の方法により筆跡を消去するときに、良好な消去性を示す。このインキは、水(または水溶性有機溶剤)を主たる溶媒とする、水性インキとして好ましく用いられる。
【0043】
アントラキノン系染料は、アントラキノンを基本骨格とするものであれば、特に限定されず、公知または市販のものを使用することができる。アントラキノン系染料としては、具体的には、C.I. Acid Blue 25、C.I. Acid Blue 27、C.I. Acid Blue 40、C.I. Acid Blue 41、C.I. Acid Blue 43、C.I. Acid Blue 47、C.I. Acid Blue 53、C.I. Acid Blue 55、C.I. Acid Blue 62、C.I. Acid Blue 78、C.I. Acid Blue 80、C.I. Acid Blue 124、C.I. Acid Blue 127、C.I. Acid Blue 129、C.I. Acid Blue 145、C.I. Acid Blue 150、C.I. Acid Blue 230、C.I. Acid Blue 277、C.I. Basic Violet 34、C.I. Basic Violet 42、C.I. Basic Violet 43、C.I. Basic Violet 63、C.I. Acid Green 25、C.I. Acid Green 27、C.I. Acid Green 37、C.I. Acid Green 38、C.I. Acid Green 41、C.I. Acid Green 44、C.I. Acid Brown 26、アントラキノングリーンGX、アリザリンダイレクトブルー6G、アリザリンダイレクトグリーンG、イオナミンピュアブルーG(C.I. 63605)、イオナミンピュアブルーR(C.I. 63320)、およびトルイジンブルー等を挙げることができる。
【0044】
メチン系染料は、ここではメチン基を有する染料を指し、したがって、ポリメチン系染料およびシアニン系染料等もメチン系染料に包含される。メチン系染料は、公知または市販のものを使用することができる。メチン系染料としては、具体的には、C.I. Basic Red 12、C.I. Basic Red 13、C.I. Basic Red 14、C.I. Basic Red 15、C.I. Basic Red 27、C.I. Basic Red 35、C.I. Basic Red 36、C.I. Basic Red 37、C.I. Basic Red 45、C.I. Basic Red 48、C.I. Basic Yellow 11、C.I. Basic Yellow 12、C.I. Basic Yellow 13、C.I. Basic Yellow 14、C.I. Basic Yellow 21、C.I. Basic Yellow 22、C.I. Basic Yellow 23、C.I. Basic Yellow 24、C.I. Basic Yellow 32、C.I. Basic Orange 21、C.I. Basic Orange 22、C.I. Basic Blue 62、C.I. Basic Blue 63、C.I. Basic Violet 7、C.I. Basic Violet 15、C.I. Basic Violet 16、C.I. Basic Violet 20、C.I. Basic Violet 21、およびC.I. Basic Violet 39等を挙げることができる。
【0045】
これらの染料のうち、C.I. Acid Blue 80、C.I. Acid Green 25およびC.I. Basic Violet 7から選択される少なくとも1つの染料を、色素として含むインキ組成物は、本発明の方法においてより好ましく用いられる。
【0046】
インキ組成物は、好ましくはゲルインキ組成物である。ゲルインキ組成物(以下、「ゲルインキ」とも呼ぶ)をインキとする筆記具は、好ましくは、ボールペンである。ゲルインキは、通常の状態では高い粘度を有し、力が加わると(例えば、ボールペンにおいて、ボールが回転するときに剪断力が加わると)、粘度が低くなる性質を有する。ゲルインキのこの性質は、筆跡の消去には好都合である。即ち、ゲルインキを用いる筆記具は、筆記の際に加わる力によって、インキが低粘度化し、それにより、なめらかな筆記が可能となるので、これを使用すれば、筆記面形成層上でも、目詰まりせずに筆記できる。また、筆記後において、ゲルインキは、記録媒体の表面において、元の粘度の高い状態に戻ろうとするため、筆記面形成層内部へ浸透しにくい。よって、筆跡が表面の比較的浅い位置に存在することとなり、酸化性ガスに曝されたときに、良好に消去されやすい。さらに、ゲルインキによる筆跡は、筆記後、数時間以上経過した後でも、本発明の方法および装置で良好に消去され、消去性の経時変化が小さいという特徴を有する。
【0047】
ゲルインキは、色素としての染料、水溶性高分子および他の添加剤が、水および/または水性媒体に溶解し又は分散している組成物である。ゲルインキに含まれる染料は、特に限定されず、例えば、酸性染料、塩基性染料および直接染料を使用してよい。好ましくは、染料として、前述した、アントラキノン系染料およびメチン系染料から選択される、1または複数の染料が使用される。より好ましくは、C.I. Acid Blue 80、C.I. Acid Green 25およびC.I. Basic Violet 7から選択される、1または複数の染料が使用される。
【0048】
ゲルインキにおいて、染料は、0.05〜15.0質量%含まれることが好ましい。染料の量がインキ組成物全体の0.05質量%未満であると、当該染料による着色を視認し難いことがある。染料の量が15.0質量%を越えると、酸化性ガスが適正濃度で発生させられても、筆跡の消去が困難となることがある。染料は、より好ましくはゲルインキにおいて、0.1〜10.0質量%の割合で含まれる。
【0049】
ゲルインキは、水溶性高分子を含み、それにより前述の特徴的な粘性を有し、もって消色性が向上する。水溶性高分子は、インキ組成物の粘性を高くし、および/またはインキ組成物に接着性を付与し得るものであれば、特に限定されない。水溶性高分子として、例えば、微生物産系多糖類またはその誘導体である、プルラン、ザンサンガム、ウェランガム、およびラムザンガム等;水溶性植物系多糖類またはその誘導体である、グァーガム、ローカストビーンガム、およびペクチン等;水溶性動物系多糖類またはその誘導体である、ゼラチン、およびカゼイン等;セルロース系誘導体である、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)ならびにヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類のナトリウム塩およびアンモニウム塩等;デンプン質誘導体である、デンプン、カチオンデンプン、デキストリン、変性デキストリン、およびデンプングリコール酸ナトリウム等;ビニル系合成高分子である、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、およびポリビニルエーテル等;アクリル系合成高分子である、ポリアクリル酸ナトリウム、およびカルボキシビニルポリマー等;その他の合成高分子である、ポリエチレンオキシド、およびメトキシエチレンマレイン酸共重合体等を、例示できる。ゲルインキには、これらから選択される1種または2種以上の水溶性高分子が含まれてよい。
【0050】
ゲルインキ中の水溶性高分子の含有量は、水溶性高分子の種類等に応じて適宜定められ、通常、0.05〜40質量%程度、好ましくは0.1〜30質量%程度である。水溶性高分子の含有量が40質量%を越えると、筆記が困難となることがあり、0.05質量%未満であると、水溶性高分子を添加することによる効果を得られないことがある。
【0051】
ゲルインキは、水溶性有機溶剤を含んでよい。水溶性有機溶剤は、ペン先での乾燥防止とインキの凍結防止のために添加される。水溶性有機溶剤は、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル類である。これらの有機溶剤は1種または2種以上を混合して使用してよい。好ましくは、プロピレングリコールとグリセリンの組み合わせが使用される。
【0052】
水溶性有機溶剤は、ゲルインキにおいて、1.0〜40.0質量%含まれていることが好ましい。水溶性有機溶剤の含有量が1.0質量%未満であると、ペン先が乾燥しやすく、また、インキが凍結しやすくなる。水溶性有機溶剤の含有量が40.0質量%を越えると、前記水溶性高分子の溶解性に影響を与えるとともに、ゲルインキにより形成される筆跡ないし塗膜が乾燥しにくくなる。水溶性有機溶剤のより好ましい含有量は、種類によっても異なるが、概して5.0〜30.0質量%である。
【0053】
ゲルインキには、その効果を妨げない範囲で、他の添加剤を配合してよい。例えば、潤滑剤として、ポリオキシエチレンアルカリ金属塩、ジカルボン酸アミド、リン酸エステル、またはN−オレイルサルコシン塩等を添加してよく、湿潤剤として、多価アルコールまたはその誘導体(グリセリン等)を添加してよく、防錆剤として、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、またはジシクロヘキシルアンモニウムナイトレート等を添加してよく、防腐・防錆剤として、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ペンタクロロフェノール系化合物、またはクレゾール等を添加してよく、防カビ剤として、パラオキシ安息香酸メチル、アモルデンHS(商品名、大和化学工業(株)製)を添加してよい。その他、各種の分散剤および界面活性剤を添加してよい。
【0054】
ゲルインキは、公知の撹拌方法、脱泡方法、および濾過方法等を用いて調製できる。例えば、水および水溶性染料を混合・撹拌した後、水溶性高分子を配合し、次いで、水溶性有機溶剤および必要に応じて各種の添加剤を配合することにより、ゲルインキを得ることができる。前記各工程における混合または撹拌は、デゾルバー等の公知の撹拌装置を用いて実施できる。
【0055】
ゲルインキは、筆記前において、100mPa・s〜10000mPa・sの粘度を有することが好ましい。ここで、ゲルインキの粘度は、ELD型粘度計を用い、3°(R14)コーン 回転数0.5rpm(20℃)の条件下で測定した値として示す。粘度をこの範囲内にすることにより、優れた消去性と筆記性とを有する筆記具を、例えばボールペンの形態で提供することができる。粘度は、水溶性高分子および水により調整することができる。
【0056】
以上においてゲルインキについて説明したが、本発明の方法および装置で消去する筆跡は、他のインキで筆記されたものであってよい。例えば、筆記具を、中芯式筆記具とする場合には、粘度が2.0mPa・s〜10mPa・sである、水性インキ組成物を用いることが好ましい。ここで、この範囲内にある粘度は、ELD型粘度計を用い、1°34’(R24)コーン 回転数0.5rpm(20℃)の条件下で測定した値として示す。中芯式筆記具に用いるインキの粘度が2.0mPa・s未満のときは、染料分散安定性が悪くなり、またインキドロップ、筆跡の濃淡、インキ漏れ等の不具合が生じる。一方、10mPa・sを超えるときは、インキ流出が悪くなる。インキの粘度をこの範囲に調節することは、染料、水溶性高分子、水溶性有機溶剤の使用量を調整することにより、また、活性剤その他の添加剤の使用により、可能である。
【0057】
中芯式筆記具に適した水性インキ組成物は、ゲル組成物に関連して説明した、染料、水溶性有機溶剤、および添加剤を、水および/または水性媒体に溶解し又は分散させて、上記粘度が得られるようにして、調製することができる。染料は、例えば、組成物全量に対して、0.1〜7質量%含まれることが好ましい。染料の割合が小さすぎる又は大きすぎる場合に生じ得る不都合は、先にゲルインキ組成物に関して述べたとおりである。水溶性有機溶剤は、例えば、組成物全量に対して、10〜30質量%含まれることが好ましい。水溶性有機溶剤の割合が小さすぎると、筆記カスレが生じることがあり、大きすぎると、筆跡の乾燥性が悪くなり、また耐水性が弱くなる。水溶性高分子は、必要に応じて添加され、所望の粘度が得られる場合には添加しなくてよい。
【0058】
[酸化性ガスの発生]
本発明の方法および装置において、上記特定の記録媒体に筆記した筆跡は、酸化性ガスに曝されることによって消去される。酸化性ガスは、例えば、電離/解離ガスおよびその二次生成物であることが好ましい。二次生成物は、オゾン、ヒドロキシラジカル、炭酸イオンおよび窒素酸化物から成る群から選ばれる、少なくとも1種であることが好ましい。特にオゾンは、アルケンに対する親電子付加反応の後、速やかにその結合を開裂することから、好ましい。これらの酸化性ガスは、放電により酸化性ガスを発生し得る気体の雰囲気下で、沿面放電またはコロナ放電を実施することにより生成される。酸化性ガスを発生し得る気体は、空気、酸素、窒素、二酸化炭素および水蒸気等である。これらの気体は、2種以上組み合わせて用いることもできる。以下に、空気雰囲気下で行う、沿面放電およびコロナ放電について説明する。
【0059】
(沿面放電)
沿面放電においては、誘電体により隔てられた一対の電極間に交流電圧を印加することにより、誘電体に沿って放電を発生させ、酸化性ガスを発生させる。この場合、筆跡が筆記された記録媒体(以下、この記録媒体を、便宜的に、筆記済み媒体と呼ぶ)は、沿面放電の放電領域の内部又は近傍で、載置部に載せて酸化性ガスに曝す。載置部は、筆記済み媒体を走行させるものであってよく、あるいは筆記済み媒体を静止した状態に保つものであってよい。筆記済み媒体を走行させる場合、エンドレスベルト搬送、ロール搬送及びドラム搬送からなる群から選ばれる、少なくとも一種の搬送手段を載置部として用いるのが好ましい。また、筆記済み媒体は、一定方向にのみ走行させてよく、または往復走行させてよい。あるいは一定方向の走行と往復走行とを組み合わせてよい。
【0060】
図1は、筆記済みである媒体から筆跡を消去するための、本発明に係る装置の一実施形態を示す概略側面図である。図1は沿面放電電極に交流電圧を印加することにより、酸化性ガスを発生させる例を示す。
【0061】
図1において、沿面放電を発生させるための電極3は、誘電体33により隔てられ、かつ互いに対向した一対の電極31及び32を含む。図1においては、一方の電極31が誘電体33に埋設されており、他方の電極32は誘電体33の底面に設けられている。酸化性ガスは誘電体33底面下の電極32の近傍である放電領域34で発生する。なお、図1において、2は交流電源を示す。
【0062】
電極31および32の形状は、特に限定されない。例えば、誘電体33に埋設された電極31を板状とし、誘電体33の底面に位置する電極32をワイヤー状としてよい。電極31、32を構成する材料としては、Al、Cr、Au、Ni、Ti、W、Te、Mo、Fe、Co及びPt等の金属が挙げられる。電極31、32は、これらの金属から選択される1または複数の金属を含む合金で形成されてもよく、あるいは、これらの金属から選択される1または複数の金属の酸化物で形成されてもよい。
【0063】
電極31と電極32との間の距離は1μm以上であることが好ましく、3〜200μmであることがより好ましい。沿面放電電極3に印加する交流電圧(Vpp)は、1〜20kVであることが好ましく、周波数は100Hz〜5MHzであることが好ましい。特に、Vppを1〜10kV、周波数を1kHz〜2MHzとすると、筆跡の消去を一層効率的に行うことができるので好ましい。この場合、電極32と筆記済み媒体1との間の距離は、100mm以下(媒体と電極が接触するときの間隔0mmを含む)とすることが好ましい。
【0064】
誘電体33は、沿面放電を生じさせることのできる面を構成できる材料からなる。そのような材料は、例えば、セラミックまたはガラスである。誘電体33を構成するセラミックおよびガラスの具体例として、シリカ、マグネシアおよびアルミナ等の金属酸化物、ならびに窒化シリコーンおよび窒化アルミニウム等の窒化物が挙げられる。
【0065】
筆記済み媒体1を酸化性ガスに暴露する際に、筆記済み媒体1を放電領域34に対して静止させてよく、あるいは相対的に移動させてよく、目的に応じて静止および移動のいずれかを選択する。図1は、沿面放電の放電領域34の近傍にて、ロール53により回転させられる導電性エンドレスベルト5を載置部として用いて、筆記済み媒体1を搬送する例を示す。導電性エンドレスベルト5を放電領域34の近傍又は内部を通過するように設置することにより、放電領域34が、誘電体33底面と導電性エンドレスベルト5との間に広がり、筆記済み媒体1と酸化性ガスとの接触効率が向上する。このため、図1に示すように導電性エンドレスベルト5を接地する、または正又は負の電圧を印加することが好ましい。搬送スピードは、Vpp、周波数、更には電極32と筆記済み媒体1との間の距離にもよるが、例えば、Vpp、周波数、及び距離が前述の範囲内にあれば、2000cm/min以下とするのが好ましく、特に、500cm/min以下とすることにより、筆跡の消去を一層効率よく行うことができる。
【0066】
筆記済み媒体1を載置し搬送するための搬送手段は特に限定されず、公知の手段を利用することができる。エンドレスベルト搬送の他に、例えば、ロール搬送、およびドラム搬送等が挙げられる。上述のように、搬送手段は導電性物質で構成するのが好ましいが、これに限定する趣旨ではなく、必要に応じて非導電性物質で構成することができる。搬送手段を構成し得る導電性物質は、電極31、32について述べたとおりである。
【0067】
筆記済み媒体1の酸化性ガスへの暴露は、密閉系で行ってもよく、又は開放系で行ってもよく、目的に応じて、いずれかの系を選択することができる。但し、酸化性ガスが筆跡消去装置から漏出しないよう、筆記済み媒体1の酸化性ガスへの暴露は密閉系で行うのが好ましい。筆跡消去装置には酸化性ガス漏出防止のための吸着フィルター等を設けるのが好ましい。
【0068】
図2は、沿面放電により筆跡を消去するための装置の別の例を示す概略側面図である。図2において、図1に示す装置と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付している。図2に示す沿面放電用の電極3は、互いに対向する一対の電極31、32の両方を誘電体33に埋設した例を示す。この場合、酸化性ガスは、誘電体33の底面における電極32の端部に対応する部分(図2において放電領域34として示す部分)で発生する。
【0069】
図2に示す例では、誘電体33底面に第1のバイアス電極6と、第1のバイアス電極6に直流バイアス電圧を印加する電源21を設けている。第1のバイアス電極6と、第2のバイアス電極を兼ねる導電性エンドレスベルト51との間にバイアス電圧を印加することにより、酸化性ガスが、発生部位から、筆記済み媒体1の方へ移動するので、媒体1と酸化性ガスとの接触効率が向上する。バイアス電圧は、通常0.2〜4.0kVとすることが好ましい。第1のバイアス電極6を構成し得る材料は、電極31、32について述べたとおりである。
【0070】
図3は、沿面放電により筆跡を消去するための装置の別の実施形態を示す概略側面図である。図3において、図2に示す装置と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付している。図3に示す沿面放電電極は、一対の電極31、32が、誘電体33の底面と平行な平面上で並ぶように、誘電体33内に埋設した例を示す。この場合、酸化性ガスは誘電体底面下における電極31、32間の近傍(図3において放電領域34として示す部分)を中心として発生する。なお必要に応じて、3つの電極が誘電体33の底面と平行な平面上で並ぶように埋設した構成としてもよい(図示せず)。
【0071】
図6は、沿面放電により筆跡を消去するための装置の別の実施形態を示す概略側面図である。図6において、図1に示す装置と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付している。沿面放電発生装置においては、電極31及び32のいずれか一方、あるいは両方に誘電体層33を設けてもよい。図6に示す例では、電極31、32ともにプレート状に形成され、電極31に誘電体33が形成されている。筆記済み媒体1は、電極31と対向する電極32との間に置かれず、電極31、誘電体33及びプレート状の対向電極32を覆う密閉容器42中に静置される。誘電体33は、先に図1に関連して説明した材料で構成することができる。
【0072】
(コロナ放電)
コロナ放電においては、放電電極と、前記放電電極に対向する対向電極との間に電圧を印加することにより放電を発生させて、酸化性ガスを発生させる。放電電極に印加する電圧は、交流電圧又は直流電圧のいずれでもよい。直流電圧を印加する場合、極性はマイナスであることが好ましい。また、直流電圧に交流電圧を重畳してもよい。
【0073】
放電は、前記対向電極を接地した状態で、発生させることが好ましい。放電電極は、ワイヤー状、ロール状、ブレード状、プレート状、ブラシ状、針状およびバー状の形状のいずれであってもよい。コロナ放電においては、対向電極と筆記済み媒体の少なくとも一部とを接触させるのが好ましい。筆記済み媒体は、放電電極と対向電極との間の放電空間にて、載置部に載せて酸化性ガスに曝す。載置部は、筆記済み媒体を走行させるものであってよく、あるいは筆記済み媒体を静止した状態に保つものであってよい。筆記済み媒体を走行させる場合、エンドレスベルト搬送、ロール搬送及びドラム搬送からなる群から選ばれる、少なくとも一種の搬送手段を載置部として用いることが好ましい。搬送手段はまた、導電性を有し、もって対向電極としても機能させることが好ましい。筆記済み媒体は、一定方向にのみ走行させてよく、または往復走行させてよい。あるいは一定方向の走行と往復走行とを組み合わせてよい。
【0074】
図4は、筆記した記録媒体から、コロナ放電により筆跡を消去するための、本発明に係る装置の一例を示す概略側面図である。図4において、図1に示す装置と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付している。一般的に、コロナ放電は、放電電極と、それに対向する位置に対向電極とを設け、放電電極に電圧を印加することによって発生させる。図4に示す装置では、放電電極4がワイヤー状に形成してあり、筆記済み媒体の載置部としての導電性エンドレスベルト52が対向電極として機能する。図4に示すように、コロナ放電により電離・解離ガス及びその二次生成物を効率的に発生させるためには、導電性エンドレスベルト52を接地することが好ましい。なお、図4において、22は直流電圧印加手段を示し、41は放電電極4を覆うカバーを示す。
【0075】
印加電圧は、直流電圧であってよく、あるいは直流電圧に交流電圧を重畳したものであってよい。放電電極4にマイナス極性の直流電圧を印加した場合、特に筆跡の消去を良好に行うことができる。放電電極4にマイナス極性の直流電圧を印加した場合は、特に酸化性ガスよりなる電離・解離ガス及びその二次生成物が効率的に発生するため、これらガス組成は、例えば、インキに含まれる染料(特に、アントラキノン系染料およびメチン系染料、より特には、C.I. Acid Blue 80、C.I. Acid Green 25およびC.I. Basic Violet 7)の発色性低下に効果的であると考えられる。
【0076】
放電電極4及び対向電極52は、沿面放電に関連して、沿面放電電極の電極31、32の構成材料として説明したものから、放電電極4及び対向電極52の形状および構造に応じて、適宜選択して構成することができる。後述する図5、7〜9に示す構成における電極も同様である。
【0077】
コロナ放電は、所定の閾値電圧(放電開始電圧)以上の電圧を印加することによって開始される。本発明において放電電極に印加する直流電圧は、−0.5kV〜−20.0kVとするのが好ましく、特に−0.5kV〜−10.0kV、更には−0.1kVとし、放電電極と筆記済み媒体との間の距離を30mm以下(これらが接触している場合の0mmを含む)とすることが好ましい。これらの条件を採用すると、より一層効率よく、筆跡を消去することができる。
【0078】
放電電極4の形状は特に限定されない。例えば、放電電極4として、ワイヤー状のものの他に、ロール状、ブレード状、プレート状、ブラシ状、針状、およびバー状等、公知のものを使用することができる。特にコロナ放電を行う場合には、ワイヤー状の導電性物質を放電電極に用いたコロナ帯電器を用いることにより、筆跡の消去を広い面で均一に達成することができる。
【0079】
筆記済み媒体1は対向電極52と接触していることが好ましいが、必ずしも接触している必要はない。放電領域(放電電極4と対向電極52との間を中心とする領域)に筆記済み媒体1を存在せしめる場合、媒体1を放電領域に対して、静止させてよく、あるいは相対的に移動させてよく、目的に応じて静止および移動のいずれかを選択する。筆記済み媒体1を移動させながら、酸化性ガスへの暴露を行う場合、媒体1の移動速度は、酸化性ガスの濃度および放電電極と媒体1との間の距離によって適宜選択され、例えば電圧および距離が前述の範囲内にある場合、媒体1の移動速度は、好ましくは2000cm/min以下、より好ましくは500cm/min以下であり、そのような移動速度で媒体1を移動させると、より一層効率的に筆跡を消去することができる。
【0080】
沿面放電について述べたように、筆記済み媒体1の酸化性ガスへの暴露は、密閉系で行ってもよく、又は開放系で行ってもよく、目的に応じて、いずれかの系を選択することができる。好ましくは、密閉系で行われる。密閉系で行う場合、放電領域(放電電極4と対向電極52との間を中心とする領域)以外の場所に媒体1を静置することができる。
【0081】
図5は、筆記済み媒体1から、コロナ放電により筆跡を消去するための装置の別の実施形態を示す概略側面図である。図5において、図4に示す装置と同じ部材又は部分には、同じ参照番号を付している。図5に示す例では、筆記済み媒体1を、2つのロール54を用いて、載置部としての導電性プレート52’の上で搬送している。
【0082】
図7は、筆記済み媒体1から、コロナ放電により筆跡を消去するための装置の別の実施形態を示す概略側面図である。図7において、図4に示す装置と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付している。図7は、ロール状の放電電極4を備えた装置の例を示す。ロール状の放電電極4は、導電性エンドレスベルト52と接触しており、導電性エンドレスベルト52の回転に伴って回転させられ、同時に電圧が印加される。筆記済み媒体1は、ロール状の放電電極4と導電性エンドレスベルト52の両方に接触しながら、放電領域を通過するので、酸化性ガスとの接触効率が向上する。
【0083】
図8は、筆記済み媒体1から、コロナ放電により筆跡を消去するための装置の別の実施形態を示す概略側面図である。図8において、図4に示す装置と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付している。図8は、載置部である搬送手段として導電性ドラム52を用いた例を示す。
【0084】
図9は、筆記済み媒体1から、コロナ放電により筆跡を消去するための装置の別の実施形態を示す概略側面図である。図9において、図4に示す装置と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付している。図9は、ロール状の放電電極4と、載置部である搬送手段として導電性ドラム52とを用いた例を示す。
【0085】
図1〜9を参照して説明した装置は、本発明の筆跡消去装置の例であり、本発明の装置は図示した構成以外の構成を有していてよい。いずれの構成をとる場合にも、記録媒体に書された筆跡は酸化性ガスにより消去され、それにより、記録媒体を再び筆記するための媒体として再利用することができ、あるいは、筆跡を消去した記録媒体を保管または廃棄することが可能となる。筆跡の消去の度合いは、例えば、旧ミノルタ株式会社製の色彩色差計CR−241を用いて、筆跡と白色の用紙の色差(ΔE)を求めることにより評価することができ、色差が7.0未満、好ましくは6.0未満となるように、実施される。必要に応じて、筆跡の消去操作は、2回以上実施してよい。即ち、1度、筆跡消去装置で消去した筆跡を、再度、筆跡消去装置で消去して、筆跡がより消去されるようにしてよい。
【0086】
本発明の消去方法および消去装置においては、記録媒体として、前記筆記面形成層を有する基材が使用され、筆記具として、酸化性ガスにより消去される染料、好ましくはアントラキノン系染料およびメチン系染料、より好ましくはC.I. Acid Blue 80、C.I. Acid Green 25およびC.I. Basic Violet 7から選択される少なくとも1つの染料を含むインキ組成物を、インキとして用いる筆記具、例えば中芯式筆記具およびゲルインキボールペンが使用される。したがって、本発明の消去装置は、前記特定の記録媒体および筆記具と組み合わせて、筆跡消去システムとして提供することもできる。前記特定の記録媒体、および当該記録媒体に筆記するための筆記具は、このシステムの専用品として提供され得る。
【実施例】
【0087】
(筆記具の作製)
[ゲルインキボールペンの作製]
2種類の色素を用いて、表1および2に示す組成の8種類のゲルインキA〜Hを調製した。ステンレスボールペンチップ(ボール材質:セラミックス、ボール径:0.8mm)を一端に取り付けたポリプロピレン製インキ収容管にゲルインキを充填し、インキ逆流防止体(ポリブテンをゲル化したもの)を充填して、ボールペンレフィールを作製した。次に、本体にボールペンレフィールを取り付け、キャップを装着した後、遠心分離機により管中の空気を除去し、それから尾栓を装着して、ゲルインキボールペンを得た。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
[中芯式筆記具の作製]
色素として、C.I. Basic Violet 7を用いて、表3に示す組成のインキIを調製した。このインキを、中芯式筆記具(商品名サクララインマーカーOA2)に充填して、幅の広いペン先(幅約4mm)と狭いペン先(幅約1mm)を有する中芯式筆記具を得た。
【0091】
【表3】

【0092】
表1〜表3に示す組成物において、各成分として、以下のものを使用した。
水溶性有機溶剤1:プロピレングリコール
水溶性有機溶剤2:グリセリン
水溶性高分子:キサンタンガム(三晶(株)製、商品名「ケルザン」)
色素:インキA〜D Acid Blue 80
インキE〜H Acid Green 25
防腐剤:ベンゾイソチアゾリン−3−オン(商品名「プロクセルXL−2」、アーチケミカルズ社製)
防カビ剤:商品名「コートサイドH」、日本エンバイロケミカルズ(株)製)
【0093】
インキ組成物の粘度は、インキB〜DおよびF〜Hについては、ELD型粘度計((株)トキメック製)を用い、3°(R14)コーン 回転数0.5rpm(20℃)の条件下で測定し、インキA、EおよびIについては、同じ粘度計を用い、1°34’(R24)コーン、回転数50rpm(20℃)で測定した。φ0.8組立筆記性は、組み立てた筆記具を用いて、記録媒体に筆記したときに、スムーズにインキが滲出するかどうかで評価した。ラインマーカー筆記性は、記録媒体に筆記したときに、スムーズにインキが滲出し、かつ十分な濃度を有するかどうかで評価した。
【0094】
(記録媒体の作製)
目付64g/mのA4サイズの上質紙に、筆記面形成層として、表2に示す組成の層を10g/mの量で形成した。筆記面形成層は、表2に示す成分を固形分として、21質量%の割合で水に溶解または分散させた塗工液を調製し、これを、エアナイフコーターで塗布し、その後、熱風乾燥炉を用いて乾燥させることにより形成した。
【0095】
【表2】

【0096】
表2に示す組成において、PVAは、ポリビニルアルコール(商品名117K、(株)クラレ製)、EVAは、エチレン酢酸ビニルアセテート(商品名スミカフレックス S−401HQ、住友化学(株)製)を示す。また、記録媒体1で用いたカチオンポリマーは、ポリアクリルアミドジアリルアミン塩酸塩共重物(商品名Sumirez Resin 1001 住化ケムテックス(株)製)であり、記録媒体2で用いたカチオンポリマーは、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドを繰り返し単位とする、アミン系ポリマー(商品名PAS−H−5L 日東紡績(株)製)である。
【0097】
記録媒体1〜3の筆記面に、ゲルインキA〜Hを充填して組み立てた筆記具をそれぞれ使用して筆記し、筆記した記録媒体を、酸化性ガスに曝して、筆跡を消去し、記録媒体と筆記具の各組み合わせにおける、消去性を評価した。なお、中芯式筆記具による筆記は、太いペン先を使用して実施した。ここでは、図4に示すような、コロナ放電を発生させる装置を用いて、酸化性ガスとして、オゾンを発生させた。コロナ放電は、放電電極に5kVの直流電圧を印加して発生させ、オゾンを発生させた。筆記した記録媒体は、600mm/分の速度で搬送しながら、オゾンに曝した。オゾンに曝す操作は2回実施し、1回目に曝したときの消去性を1回消去として評価し、2回目に曝したときの消去性を2回消去として評価した。評価結果を表3に示す。
【0098】
筆跡の消去性は、旧ミノルタ株式会社製の色彩色差計CR−241を用いて、筆跡と用紙の色差(ΔE)を求めることにより評価した。この差が小さいほど、筆跡が良好に消去されたことを示す。色差は、下記の式で表わされる。式中、Lは明度指数、aおよびbはクロマティクネス指数を示す。詳細は、同装置の取扱説明書(特に第77頁)に記載されている。
【数1】

【0099】
【表3】

【0100】
筆記面形成層が、カチオンポリマーを含む、記録媒体1および2に筆記した筆跡は、筆記面形成層を有しないPPC用紙と比較して、オゾンガスに曝されたときに明らかに消去され、殆どのインキと媒体との組み合わせにおいて、ΔEが7以下になった。ΔEが7以下であると、筆跡の青色または緑色は消えるが、筆跡の形が薄い黄色で残っていることが目視で確認される。また、筆記面形成層が、四級アンモニウム塩を有する繰り返し単位を含むポリマーを含む記録媒体2上に筆記した、インキA〜C、E〜GおよびHの筆跡は、1回目または2回目の消去操作で、ΔEが6未満となり、目視では筆跡が殆ど確認されないほど、良好に消えた。
【0101】
また、インキの粘度によっても消去性は変化し、粘度が高いほど、1回目の消去性が高く、消去性は良好となった。よって、記録媒体2と、インキB、C、FおよびGとの組み合わせにおいて、非常に良好な消去性が得られた。しかし、インキの粘度が高すぎると、筆記性が悪くなり、筆跡そのものがかすれて、用紙との色差が小さくなった。そのため、インキDおよびHについては、消去性を評価しなかった。
【0102】
なお、1回目の消去性が良好である場合(特に、ΔEが6未満である場合)には、2回目の評価において、ΔEが、1回目の評価におけるΔEより高くなることがあった。これは、1回目にオゾンに曝したときにインキが非常に良好に消去されて、2回目にオゾンに曝したときに、インキが1回目にオゾンに曝したとき以上に消去されず、筆跡のインキの濃さ等に起因する誤差がそのまま表れたためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の筆跡消去方法および装置は、記録媒体(特に紙)に、筆記具で筆記した筆跡を消去するものであり、記録媒体を再利用することを可能にするので、紙を大量に消費する企業、官公庁、および学校等において使用する、リサイクルシステムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の筆跡消去装置の一例を模式的に示す側面図である。
【図2】本発明の筆跡消去装置の別の例を模式的に示す側面図である。
【図3】本発明の筆跡消去装置のさらに別の例を模式的に示す側面図である。
【図4】本発明の筆跡消去装置のさらに別の例を模式的に示す側面図である。
【図5】本発明の筆跡消去装置のさらに別の例を模式的に示す側面図である。
【図6】本発明の筆跡消去装置のさらに別の例を模式的に示す側面図である。
【図7】本発明の筆跡消去装置のさらに別の例を模式的に示す側面図である。
【図8】本発明の筆跡消去装置のさらに別の例を模式的に示す側面図である。
【図9】本発明の筆跡消去装置のさらに別の例を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 筆記した記録媒体
2 交流電源
3 沿面放電電極
31 電極
32 電極
33 誘電体
34 放電領域
4 放電電極
41 カバー
42 密閉容器
5 載置部
51 第2のバイアス電極(導電性エンドレスベルト)
52、52’ 載置部
53 ロール
54 ロール
6 第1のバイアス電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材の少なくとも一方の表面に形成された、無機顔料、バインダー、およびカチオンポリマーを含む層を有する記録媒体の当該層の表面に、筆記具で筆記した筆跡を消去する方法であって、酸化性ガスを発生させること、および筆跡を酸化性ガスに曝すことを含む、筆跡を消去する方法。
【請求項2】
カチオンポリマーが、アミン系ポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アミン系ポリマーが、四級アンモニウム塩を有する繰り返し単位を含むポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
筆記具が、色素としてアントラキノン系染料およびメチン系染料から選択される少なくとも1つの染料を含むインキ組成物を、インキとして用いる筆記具である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
酸化性ガスを発生させることが、放電により酸化性ガスを発生し得る気体の雰囲気下で、沿面放電用の面を有する誘電体により隔てられた第一の電極と第二の電極の間に電圧を印加することにより、当該沿面放電用の面から沿面放電を発生させることを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
酸化性ガスを発生させることが、放電により酸化性ガスを発生し得る気体の雰囲気下で、接地された第一の電極に対してマイナスの電圧を第二の電極に印加し、これらの電極間でコロナ放電させることを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
基材と、基材の少なくとも一方の表面に形成された、無機顔料、バインダー、およびカチオンポリマーを含む層を有する記録媒体の当該層の表面に、筆記具で筆記した筆跡を、消去する装置であって、
(a)酸化性ガス発生手段、および
(b)筆記された記録媒体を載せる載置部
を有し、酸化性ガス発生手段および載置部は、筆記された記録媒体が酸化性ガスに曝されるように配置されている
筆跡の消去装置。
【請求項8】
酸化性ガス発生手段が、
第一の電極と、第二の電極と、これらの電極を隔てる誘電体とを有し、
誘電体が、これらの電極間への電圧の印加により沿面放電を発生する面を有する、
沿面放電発生手段である、請求項7に記載の筆跡消去装置。
【請求項9】
酸化性ガス発生手段が、
第一の電極と、第二の電極とを有し、
接地された当該第一の電極に対してマイナスの電圧を当該第二の電極に印加することによりコロナ放電を発生する、
コロナ放電発生手段である、請求項7に記載の筆跡消去装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の筆跡消去装置、
基材と、基材の少なくとも一方の表面に形成された、無機顔料、バインダー、およびカチオンポリマーを含む層を有する記録媒体、および
酸化性ガスにより消去可能な、インキ組成物をインキとして用いる、当該記録媒体への筆記に用いられる筆記具
を含む、筆跡消去システム。
【請求項11】
筆記具により筆記される筆跡が消去可能である記録媒体であって、少なくとも一方の表面に、無機顔料、バインダー、およびカチオンポリマーを含む層を有する記録媒体。
【請求項12】
カチオンポリマーが、アミン系ポリマーである、請求項11に記載の記録媒体。
【請求項13】
カチオンポリマーが、四級アンモニウム塩を有する繰り返し単位を含むポリマーである、請求項11に記載の記録媒体。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の記録媒体への筆記に用いられる、色素としてアントラキノン系染料およびメチン系染料から選択される少なくとも1つの染料を含むインキ組成物をインキとして用いる、筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−80638(P2008−80638A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263029(P2006−263029)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【出願人】(599093535)株式会社宇宙環境工学研究所 (7)
【Fターム(参考)】