説明

等価時間サンプリングパルスレーダ

【課題】帯域を確保しつつ、効率良く外来ノイズを抑制する。
【解決手段】送信フィルタ12は、送信系1に設けられ、送信パルスをフィルタリングする。受信フィルタ22は、受信系2に設けられ、受信パルスをフィルタリングする。サンプルパルスフィルタ24は、受信系2に設けられ、受信パルスを抽出するタイミングを規定するサンプルパルスをフィルタリングする。このとき、受信フィルタ22の通過帯域は、送信フィルタ12の通過帯域より広く、サンプルパルスフィルタ24の通過帯域は、等価時間サンプリングパルスレーダの基板の共振帯域を除いた帯域である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部へ送信パルスを送信する送信系と、ターゲットで反射された送信パルスを受信パルスとして受信する受信系とを有する等価時間サンプリングパルスレーダに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な等価時間サンプリングパルスレーダでは、送信されたパルス信号が測拒対象となるターゲットで反射し受信されるまでの往復伝播時間に基づいて距離が算出される。特許文献1には、送信パルスを広帯域で送信し、広帯域で受信した受信パルスを広帯域のサンプリングパルスでサンプリングする等価時間サンプリングパルスレーダが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特表平10−511182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、国内の電波法による周波数・出力の規制を満足するために、微弱な電波を使用し、かつ特許文献1のような広帯域のパルスレーダでは、不要な電波(外来ノイズ)が飛び交う実環境において、希望信号のみならず外来ノイズも受信してしまう。その結果、結果的にサンプリング波形が乱され、正しい測距が困難になる。また、パルスレーダの筐体や基板に共振する(アンテナとなる)周波数の外来ノイズにおいては、アンテナを経由せず直接筐体や基板に混入するため、正しい測距がより一層困難になる。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、周波数・出力の制限の中で、希望信号の帯域を確保しつつ効率良く外来ノイズを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、本発明は、外部へ送信パルスを送信する送信系と、ターゲットで反射された送信パルスを受信パルスとして受信する受信系とを有する等価時間サンプリングパルスレーダを提供する。この等価時間サンプリングパルスレーダは、送信フィルタと、受信フィルタと、サンプルパルスフィルタとを有する。送信フィルタは、送信系に設けられ、送信パルスをフィルタリングする。受信フィルタは、受信系に設けられ、受信パルスをフィルタリングする。サンプルパルスフィルタは、受信系に設けられ、受信パルスを抽出するタイミングを規定するサンプルパルスをフィルタリングする。このとき、受信フィルタの通過帯域幅は、送信フィルタの通過帯域より広く、サンプルパルスフィルタの通過帯域は、等価時間サンプリングパルスレーダの基板の共振帯域を除いた帯域である。
【0007】
ここで、本発明において、受信フィルタの次数を、送信フィルタの次数よりも低くしてもよい。また、本発明において、サンプルパルスフィルタの通過帯域は、受信フィルタの通過帯域より広いことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、受信フィルタの通過帯域幅は、送信フィルタの通過帯域幅より広い。その結果、送信した信号の帯域を損なうことなく受信できるため、受信パルスの波束パルス幅が短くなるので、受信パルスを有効に抽出することが可能になる。したがって、受信感度の向上、すなわち、高い分解能(短い時間分解能)での測距が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
通過帯域幅の比較においては、所定の基準を用いる。本実施形態では、一つの例として、-3[dB]通過帯域幅を用いる。ここで、-3[dB]通過帯域幅とは、通過帯域のピーク電力に対して、3[dB]減衰する周波数の範囲を意味する。なお、実施形態あるいは計測の都合により、他の値を用いても構わない。
【0010】
図1は、等価時間サンプリングパルスレーダ(以下、単にパルスレーダという)の構成図である。パルスレーダは、送信系1および受信系2で構成される。送信系1は、外部へ送信パルスを送信する。一方、受信系2は、送信系1から放射された送信パルスのうちターゲットで反射された送信パルスを受信パルスとして受信する。
【0011】
送信系1は、送信パルス発生器11と、送信フィルタ12と、送信アンテナ13とを有する。送信パルス発生器11は、外部へ送信するための送信パルスを発生する。送信フィルタ12は、送信パルス発生器11と送信アンテナ13との間に設けられており、送信パルス発生器11で発生された送信パルスをフィルタリングする。これにより、送信パルスを国内の法規制によって規定された通信帯域に制限する。送信アンテナ13は、送信フィルタ12でフィルタリングされた送信パルスを外部へ放射する。なお、本実施形態における送信フィルタ12の通過帯域は、約222〜322[MHz]である。
【0012】
受信系2は、受信アンテナ21と、受信フィルタ22と、サンプルパルス発生器23と、サンプルパルスフィルタ24と、サンプル回路25とを有する。受信アンテナ21は、外部からのパルスを受信パルスとして受信する。受信フィルタ22は、受信アンテナ21とサンプル回路25との間に設けられており、受信パルスをフィルタリングする。これにより、受信パルスに含まれている外来電磁ノイズを除去するとともに、サンプルパルス発生器23によって生成されるサンプルパルスの広帯域な漏洩を防止する。本実施形態では、一例として、受信フィルタ22の通過帯域を212〜332[MHz]に設定している。
【0013】
サンプルパルス発生器23は、受信パルスの所定周期に対応するパルス幅を有するサンプルパルスを生成する。サンプルパルスフィルタ24は、サンプルパルス発生器23とサンプル回路25との間に設けられており、受信パルスを抽出するタイミングを規定するサンプルパルスをフィルタリングする。これにより、サンプルパルス発生器23が発生するサンプルパルス幅を保ったままサンプルパルスに重畳する外来ノイズを抑制する。本実施形態では、一例として、サンプルパルスフィルタ24の通過帯域を100〜500[MHz]に設定している。
【0014】
サンプル回路25は、サンプルパルスが持続している間の受信パルスの電圧を積分し、サンプルパルスが終了した後は、受信パルスの電圧の積分値を保持し、サンプル信号を出力する。ここで出力されたサンプル信号は、後段の処理ユニット(図示せず)により、長周期に変換された受信パルスとして扱われ、このパルスに基づいて、測距対象であるターゲット(障害物等)の測距を行う。周知のように、ターゲットまでの距離は、障害物に起因した正のピークまたは負のピークを形成する時間値に基づいて、一義的に算出される。
【0015】
図2は、送信フィルタ12、受信フィルタ22およびサンプルパルスフィルタ24の通過帯域を示す図である。受信フィルタ22の通過帯域は、送信フィルタ12のそれと比べて広く設定している。その理由は、受信パルス(ターゲットに反射して戻ってくるパルス)は、送信フィルタ12および受信フィルタ22の双方を通過するため、高次のフィルタを通過した場合と同等だからである。仮に送信・受信のフィルタが同じ-3[dB]通過帯域幅であっても、高次となれば帯域内を通過する電力はより低くなる。可能な限り広帯域の送信パルスを受信するために、送信フィルタ12の-3[dB]通過帯域幅より、受信フィルタ22の-3[dB]通過帯域幅を広く設定する。
【0016】
また、受信パルス(ターゲットで反射された送信パルス)を効率よくサンプルするために、サンプルパルスフィルタ24の通過帯域は、受信フィルタ22のそれと比べて広く設定する。
【0017】
パルスレーダの基板が共振する帯域以上では、基板自体がアンテナと同等の役割を担ってしまう。これにより、外来ノイズが直接パルスレーダの基板に混入してしまうといった現象が生じる。一般に、基板の共振帯域は、基板自体のサイズが大きくなればなるほど低周波側にシフトする。基板の最低共振帯域を高周波数側へシフトするには、パルスレーダの基板のサイズを小さくする必要がある。本実施形態では、サンプルパルスフィルタ24の通過帯域を基板の共振周波数以下に(基板の共振帯域を除く)設定している。本実施形態では、一例として、パルスレーダのサイズを10cm×8cmとし、その共振周波数(共振帯域)を約1[GHz]に設定している。
【0018】
図3は、図1に示した各点(A〜D点)における信号のスペクトラム特性図である。同図の太線は、本実施形態における特性を示し、同図の斜線部は、送信フィルタ12、受信フィルタ22およびサンプルパルスフィルタ24の通過帯域を、受信フィルタ22のそれにした従来の特性を示す。なお、簡単のため、通過電力の減衰については表現を省略している。
【0019】
同図(a)は、A点、すなわち送信フィルタ12通過前の出力特性図である。送信パルス発生器11から発生した送信パルスには、フィルタリングが一切施されていないため、本実施形態と従来の技術との差はない。同図(b)は、B点、すなわち送信フィルタ12通過後の出力特性図である。従来の技術では、送信フィルタ12の-3[dB]通過帯域を受信フィルタ22のそれと同一に設定しているので、送信フィルタおよび受信フィルタの双方を通過した受信パルスの帯域幅はより狭くなる。これに対して、本実施形態では、受信フィルタ22の-3[dB]通過帯域幅は送信フィルタ12のそれよりも広く設定されている。
【0020】
同図(c)は、C点、すなわち受信フィルタ22通過前の出力特性図である。送信パルスは、送信アンテナ13、ターゲットおよび受信アンテナ21を介しているが、実質的には空間伝搬遅延によってパルスを遅延させているに過ぎないため、B点の周波数特性と比較して大きな差異はない。
【0021】
同図(d)は、D点、すなわち受信フィルタ22通過後の出力特性図である。従来の技術では、送信フィルタ12の-3[dB]通過帯域幅を受信フィルタ22のそれ同一にしているので、送信フィルタおよび受信フィルタの双方を通過した受信パルスの帯域幅はより狭くなる。これに対して、本実施形態では、受信フィルタ22の通過帯域は送信フィルタ12のそれよりも広く設定されているため、その帯域幅は、送信フィルタの帯域幅を確保できる。
【0022】
このように、本実施形態によれば、受信フィルタ22の-3[dB]通過帯域幅は、送信フィルタ12の-3[dB]通過帯域より広い。その結果、送信した信号の帯域を損なうことなく受信できるため、受信パルスの波束パルス幅が短くなる。したがって、受信パルスの積分値を利用してサンプルする場合、受信パルスを有効に抽出することが可能となり、受信感度の向上、すなわち、高い分解能(短い時間分解能)での測距ができる。
【0023】
なお、本実施形態では、各フィルタ(送信フィルタ12、受信フィルタ22、サンプルパルスフィルタ24)を通過帯域の観点で説明したが、高次フィルタほど遮断周波数付近の減衰特性が急峻になるため、総合の通過電力が小さくなる。すなわち、受信フィルタ22の次数を、送信フィルタ12の次数よりも高く設定することでも本実施形態と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】等価時間サンプリングパルスレーダの構成図
【図2】図1に示した各フィルタの通過帯域を示す図
【図3】図1に示した各点における信号のスペクトラム特性図
【符号の説明】
【0025】
1 送信系
11 送信パルス発生器
12 送信フィルタ
13 送信アンテナ
2 受信系
21 受信アンテナ
22 受信フィルタ
23 サンプルパルス発生器
24 サンプルパルスフィルタ
25 サンプル回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部へ送信パルスを送信する送信系と、ターゲットで反射された前記送信パルスを受信パルスとして受信する受信系とを有する等価時間サンプリングパルスレーダにおいて、
前記送信系に設けられ、前記送信パルスをフィルタリングする送信フィルタと、
前記受信系に設けられ、前記受信パルスをフィルタリングする受信フィルタと、
前記受信系に設けられ、前記受信パルスを抽出するタイミングを規定するサンプルパルスをフィルタリングするサンプルパルスフィルタとを有し、
前記受信フィルタの通過帯域幅は、前記送信フィルタの通過帯域幅より広く、
前記サンプルパルスフィルタの通過帯域は、前記等価時間サンプリングパルスレーダの基板の共振帯域を除いた帯域であることを特徴とする等価時間サンプリングパルスレーダ。
【請求項2】
前記受信フィルタの次数は、前記送信フィルタの次数よりも低いことを特徴とする請求項1に記載された等価時間サンプリングパルスレーダ。
【請求項3】
前記サンプルパルスフィルタの通過帯域は、前記受信フィルタの通過帯域より広いことを特徴とする請求項1または2に記載された等価時間サンプリングパルスレーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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