説明

筐体の取り付け装置

【課題】筐体を、配管パイプの鉛直方向に配された部分でも、水平方向に配された部分でも取り付けることができるようにする。
【解決手段】筐体12,13と、この筐体を配管パイプ40に取り付けるためのブラケット部材20とからなる。筐体は、第1の面側を壁面に対接させた状態で壁面に対して少なくとも2個の取り付け位置で当該筐体を固定させることを可能にする少なくとも2個の第1取り付け部を備える。ブラケット部材は、配管パイプを嵌合収納する凹部21を備える。筐体の第1取り付け部を、配管パイプを凹部に嵌合収納したブラケット部材の第2取り付け部24,25に取り付けて、筐体をブラケット部材に固定する状態と、筐体の第1取り付け部を、配管パイプを凹部に嵌合収納したブラケット部材の第3取り付け部221,222に取り付けて筐体をブラケット部材に固定する状態とを取り得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ガスメータに接続されてガス使用量を検針センターに送信するようにする無線通信装置の筐体などを、住戸の屋外などにおいて取り付けるための筐体取り付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、家屋やマンションなどの住戸などに設置されるプロパンガスの使用量を、ガスメータに接続された無線通信装置により電波を用いて検針センターに無線送信し、検針センター側では、受信した各住戸の使用量に基づいて、ガスボンベの補充や交換を適宜に行うことができるようにするシステムが提供されている。
【0003】
この場合に、無線通信装置は、一般には、戸外に設置されるガスボンベの近傍のガスメータに接続されて、家屋やマンションなどの住戸の外壁面に固定されて取り付けられる。この場合に、無線通信装置のアンテナは、棒状アンテナが用いられており、その棒状アンテナの中心線方向が、鉛直方向に沿うような向きとされて、送受信性能が最良となるように、無線通信装置は外壁面に固定されるようにされている。
【0004】
関連する技術の特許文献は、次の通りである。
【特許文献1】特開2005−353724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような無線通信装置の筐体を、戸外のガスメータ近傍の壁面に取り付けようとする場合に、その取り付けスペースがない場合がある。また、無線通信装置を壁面にねじ止めするときには、当該壁面を傷つけるため、特に新築の住宅等の場合には、ユーザにより、無線通信装置の筐体を壁面に直接取り付けることを拒絶される場合がある。
【0006】
このような場合において、一般には、プロパンガスの配管パイプが外部に露呈しているので、この配管パイプに無線通信装置の筐体を取り付けることができれば、非常に便利である。
【0007】
そして、無線通信装置の筐体は、上述のように、棒状アンテナの中心線方向が、鉛直方向に沿うような向きとして、取り付ける必要があるが、そのことを考慮した上で、鉛直方向に配されている配管パイプ部分のみではなく、水平方向に配されている配管パイプ部分にも取り付けることができれば、筐体の取り付け位置の自由度が大きくなるので、便利である。
【0008】
この発明は、以上の点にかんがみ、上述の無線通信装置の筐体のような筐体を、配管パイプに取り付けることができるようにすることを目的とする。また、この発明は、上述の無線通信装置のように、筐体を所定の向きに取り付けなければならない場合において、配管パイプの例えば鉛直方向に配されている部分であっても、また、例えば水平方向に配されている部分であっても、筐体を所定の向きに取り付けることを可能とするようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明は、
所定の筐体と、前記筐体を配管パイプに取り付けるためのブラケット部材とからなり、
前記筐体は、
当該筐体の第1の面側を壁面に対接させた状態で壁面に対して少なくとも2個の取り付け位置で当該筐体を固定させることを可能にする少なくとも2個の第1取り付け部を備え、
前記ブラケット部材は、
前記配管パイプを嵌合収納する凹部を形成し、前記配管パイプに接する面に平行な面に含まれる平面を備える2個の壁部と、
前記凹部に嵌合収納された前記配管パイプに前記ブラケット部材を固定するために用いられる固定用部と、
前記配管パイプの中心線方向に直交する方向の前記2個の壁部の前記平面に設けられた、前記少なくとも2個の前記第1取り付け部により、前記筐体を前記ブラケット部材に対して固定させるための少なくとも2個の第2取り付け部と、
前記2個の壁部の一方の壁部の前記平面において、前記配管パイプの中心線方向に沿う方向に設けられ、前記少なくとも2個の前記第1取り付け部により、前記筐体を前記ブラケット部材に対して固定させるための少なくとも2個の第3取り付け部と、
を備え、
前記筐体の前記第1取り付け部を、前記配管パイプを前記凹部に嵌合収納した前記ブラケット部材の前記第2取り付け部に取り付けて前記筐体を前記ブラケット部材に固定する状態と、前記筐体の前記第1取り付け部を、前記配管パイプを前記凹部に嵌合収納した前記ブラケット部材の前記第3取り付け部に取り付けて前記筐体を前記ブラケット部材に固定する状態とを取り得る
ことを特徴とする筐体の取り付け装置を提供する。
【0010】
上述の構成のこの発明によれば、例えば無線通信装置などの筐体は、配管パイプに固定されたブラケット部材に対して、固定される。
【0011】
そして、例えば配管パイプが鉛直方向に配されている部分にブラケット部材が固定された場合には、筐体の第1取り付け部を、ブラケット部材の第2取り付け部に対して取り付けて固定することで、筐体を所定の向きに取り付けることができる。
【0012】
また、例えば配管パイプが水平方向に配されている部分にブラケット部材が固定された場合には、筐体の第1取り付け部を、ブラケット部材の第3取り付け部に対して取り付けて固定することで、筐体を前記と同じ所定の向きに取り付けることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、例えば無線通信装置などの筐体は、配管パイプに固定されたブラケット部材に対して、固定されるので、壁面に筐体の取り付けスペースがなくても、また、壁面を傷つけずに、取り付けることができる。
【0014】
また、この発明によれば、配管パイプの例えば鉛直方向に配されている部分であっても、例えば水平方向に配されている部分であっても、筐体を所望する向きに取り付けることが可能であり、取り付け位置の自動度が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明による筐体の取り付け装置の実施形態を、前述したガスメータに接続されてガス使用量を検針センターに無線送信するようにする無線通信装置の筐体を取り付ける場合を例にとって、図を参照しながら説明する。
【0016】
図2は、プロパンガスの検針システムのシステム構成の概要を説明するためのブロック図である。この検針システムは、各住戸のプロパンガスの使用量を集中的に管理するための検針センター4と、各住戸のプロパンガスボンベ(図示を省略)からのプロパンバスの使用量を測定するガスメータ5にそれぞれ接続されて、各住戸に設置される無線通信装置10の複数個と、それら複数個の無線通信装置10からのガス使用量データを受け取って、例えば携帯電話網6を通じて検針センター4に送る検針データ送信親機7とを備えている。
【0017】
検針データ送信親機7と各無線通信装置10との間では、例えば429MHzの電波を用いて、例えば100メートル程度の範囲内におけるデータ通信が可能とされている。検針データ送信親機7を中心とするデータ通信が可能となる範囲が限られているので、検針データ送信親機7に対して所定以上離れて、検針データ送信親機7と直接の無線通信が不能になるときには、中継機8が用いられて、無線通信装置10からのガス使用量データが検針データ送信親機7に送信されるようにされている。
【0018】
以上のように、この実施形態の無線通信装置10は、比較的短距離の電波を用いた無線通信を行なうものであり、アンテナ10Aとしては、棒状アンテナが使用され、当該棒状アンテナが鉛直方向に配置される状態が最も送受信性能が高いものとされている。したがって、無線通信装置10は、アンテナ10Aが鉛直方向を向くように取り付けられることが望ましい。
【0019】
この場合に、ガスメータの近傍の壁面に十分な設置スペースがある場合や、ユーザが壁面への設置を許可する場合には、当該無線通信装置10の筐体自身を直接、壁面に取り付けて固定するようにすることができる。なお、ここで、無線通信装置10が取り付けられる場所は、住宅の屋外のみならず、ガスボンベおよびガスメータが屋内に設置されている場合には、屋内の場合もあることは言うまでもない。
【0020】
しかし、課題の欄で述べたように、壁面に取り付けスペースが十分になかったり、ユーザが壁面への設置を許可しなかったりした場合には、この実施形態では、図1のように、ブラケット部材20を用いて、ガスボンベおよびガスメータ5の近傍に必ず存在するガスの配管パイプ40に、無線通信装置10の筐体を固定するようにする。
【0021】
この実施形態では、まず、ブラケット部材20の後述する凹部に配管パイプ40を嵌合収納して、この実施形態では、例えば、ナイロンなどの合成繊維からなる弾性を有する結束バンドによりブラケット部材20を配管パイプ40に緊縛することにより、ブラケット部材20を配管パイプ40に固定する。そして、図1に示すように、ブラケット部材20の上に無線通信装置10の筐体が載置され、取り付けねじ31および32により、ブラケット部材20に対して無線通信装置10の筐体が固定される。
【0022】
このようにして、無線通信装置10の筐体は、ブラケット部材20により、配管パイプ40に固定されるので、壁面に取り付けスペースがなかったり、壁面への取り付け許可が得られなかったりした場合であっても、無線通信装置10の筐体を取り付けることができる。
【0023】
次に、この実施形態の無線通信装置10の構成と、ブラケット部材20の構成とを、以下に、より詳細に説明する。
【0024】
[無線通信装置10]
図3は、無線通信装置10の概観を説明するための図であり、図3(A)は、無線通信装置10を壁面に取り付けたときに、壁面に直交する方向から見た図であり、この明細書では、これを無線通信装置10の正面図とする。図3(B)は、無線通信装置10の側面図であり、図3(C)は、無線通信装置10の底面図である。
【0025】
また、図4は、無線通信装置10の各構成部品を説明するための図である。図4(A)は、無線通信装置10の筐体構成部品を示す図であり、また、図4(B)は、無線通信装置10の筐体内部の回路構成部品を示す図である。
【0026】
この実施形態の無線通信装置10の筐体は、アンテナカバー部11を除くと、方形の箱型形状をしており、図4(B)の回路構成部品14を内部に収容するように筒状に構成された筐体本体12と、筐体カバー13とからなる。これら筐体本体12と、筐体カバー13と、さらには、アンテナカバー部11は、この実施形態では、非磁性体である樹脂により構成されている。
【0027】
筐体本体12には、中空円錐台形状のアンテナカバー部11が一体的に接合されている。この場合に、アンテナカバー部11の中空部が、筐体本体12の内側空間と連通するように接合されている。筐体本体12にアンテナカバー部11が接合した筐体部品としては、防水および防塵処理の必要のない樹脂の一体物と同等の構成物となる。つまり、アンテナカバー部11と、筐体本体12との接合部には、パッキンやシールド部材は不要である。
【0028】
図4(B)に示すように、回路構成部品14は、プリント配線基板15と、例えば樹脂からなる配線基板保持部16とからなる。プリント配線基板15は、配線基板保持部16に、例えばねじ止めされて固定されている。プリント配線基板15上には、種々の電子部品17a,17b,17c,17d,17eなどが電気的に接続されて設けられている。
【0029】
そして、棒状アンテナ10Aは、このプリント配線基板15に形成されたアンテナ給電点に対して接続されて、プリント配線基板15に対して固定されている。
【0030】
そして、このような構成の回路構成部品14が、筐体本体12内に、棒状アンテナ10Aが、アンテナカバー部11内に収容されるように収められる。このとき、プリント配線基板15の、棒状アンテナ10Aが接続されている側の端縁は、図示は省略したが、筐体本体12の内部において形成されている嵌合凹溝に嵌合して係止するように構成されている。
【0031】
そして、図4に示した回路構成部品14は、その配線基板保持部16が、筐体本体12に、図3(C)に示すように、背面側から、ねじ止めされることにより、筐体本体12に対して固定される。図示は省略したが、プリント配線基板15の筐体の底面側にはリード線接続部が設けられ、図3(C)に示すリード線導出部161から、ガスメータ5に接続されるリード部が導出される。
【0032】
そして、筐体本体12内に、回路構成部品14が固定された後、筐体カバー13が筐体本体12に嵌合されて、ねじ35により、当該筐体カバー13が、配線基板保持部16にねじ止めされることにより筐体本体12に対して固定される。
【0033】
そして、この実施形態においては、図3および図4に示すように、無線通信装置10の筐体はアンテナカバー部11の延長方向を長手方向とした箱型形状をしているが、筐体本体12の、その長手方向の中間部には、筐体本体12の左右の側面から外方に突出するようにして、取り付け部121および122が設けられている。
【0034】
この2個の取り付け部121および122は、本来は、無線通信装置10の筐体を壁面に固定する際に使用されるように構成されたものであり、図3(B),(C)に示すように、無線通信装置10の筐体の背面側に設けられている。この取り付け部121および122には、無線通信装置10の筐体の背面側の面に対して垂直な方向に、取り付け用貫通孔123および124が穿かれている。取り付け用貫通孔123および124の径は、前記のねじ31,32が貫通する大きさとされている。
【0035】
ブラケット部材20を用いずに、無線通信装置10を壁面に取り付けて固定する場合には、無線通信装置10の筐体の背面側を壁面に対接させた状態で、この2個の取り付け部121,122の貫通孔123,124に、取り付け用ねじ31,32を通して、この取り付け用ねじ31,32により、無線通信装置10の筐体を壁面にねじ止め固定することができる。
【0036】
[ブラケット部材20]
この実施形態のブラケット部材20の構造を、図5に示す。図5(A)は、ブラケット部材20を壁面に取り付けたときに、壁面に直交する方向(壁面に対するブラケット部材20の取り付け方向)から見た図であり、この明細書では、これをブラケット部材20の正面図とする。図5(B)は、ブラケット部材20の側面図、図5(C)は、ブラケット部材20の背面図、図5(D)は、ブラケット部材20の底面図である。そして、図5(E)は、ブラケット部材20の斜視図である。
【0037】
このブラケット部材20は、通常は、図5(C)に示す背面側を壁面側に対向させて、配管パイプ40に取り付けられる。ただし、図5(A)の正面側を壁面側に対向させて、ブラケット部材20を配管パイプ40に取り付けることも可能とされている。
【0038】
この実施形態のブラケット部材20は、無線通信装置10の筐体と同様の、非磁性体材料である樹脂により構成されており、図5から分かるように、概観としては、ほぼ直方体形状をしている。そして、ブラケット部材20は、前記直方体形状の長辺方向(長手方向)の一端側から他端側に渡って、短辺方向の中央部が矩形状に大きく穿かれた形状の凹部21を備えるものとされている。
【0039】
この凹部21は、配管パイプ40を嵌合収納するためのもので、その幅は、配管パイプの径とほぼ同じとされている。ただし、この実施形態では、正面側よりも背面側の方がやや幅狭となるように、正面側から背面側に向かってテーパー状に形成されている。
【0040】
この凹部21の存在により、ブラケット部材20は、その長辺方向に沿って、短辺方向の両側に、2個の矩形状壁部22,23を備える構成となっている。この2個の矩形状壁部22,23の正面側の平面22a,23aは、ブラケット部材20の背面201と平行とされており、図5(B)および(D)に示すように、前記背面201からの距離(ブラケット部材20の高さ)がhとされている。
【0041】
この距離(高さ)hは、配管パイプ40の径と等しいあるいは若干配管パイプ40の径よりも大きい値とされている。
【0042】
なお、この実施形態のブラケット部材20は、無線通信装置10の筐体を壁面に取り付け可能な場合において、取り付け壁内に鉄筋が入っていたり、屋内からの電磁波妨害があったりする場合に、それらの影響を回避して、アンテナ10Aの無線通信性能を維持することができるようにするためにも、用いられるようにされている。
【0043】
すなわち、その場合には、壁面に、この実施形態のブラケット部材20を取り付け固定した後、そのブラケット部材20の上に、無線通信装置10の筐体を取り付け固定するようにするものである。
【0044】
ブラケット部材20の前記高さhは、通常の壁内の鉄筋の存在や、他の電子機器や電気機器から壁を貫通して漏洩する電磁波の影響を抑えて、無線通信装置10のアンテナ10Aの無線通信性能が、十分に保たれるように、無線通信装置10のアンテナ10Aを壁面から離間させるようにする値ともなっている。
【0045】
発明者の研究によると、一般的には、アンテナ10Aを壁面から4〜5センチメートル離間させると、殆どの場合、アンテナ10Aの無線通信性能が十分に保たれることが分かっている。
【0046】
この実施形態のブラケット部材20は、背面側に位置する凹部21の底部の、前記長辺方向の一端および他端において、当該ブラケット部材20を壁面にねじ止め固定するためのねじ孔211および212を備える。つまり、ブラケット部材20は、長手方向の一端および他端において、短辺方向の中央の位置を、壁面に対する固定位置としている。
【0047】
そして、この実施形態のブラケット部材20には、無線通信装置10の筐体本体12に設けられている2個の取り付け部121,122に対応するように、2個の矩形状壁部22.23の長手方向の中央部から、凹部21の長手方向(凹部21に配管パイプ40が嵌合収納された状態における配管パイプ40の中心線方向)に対して直交する方向に、外方に突出するようにして、無線通信装置の取り付け部24,25が設けられている。したがって、この取り付け部24,25は、矩形状壁部22,23の長手方向に対して直交する方向に形成されているものである。
【0048】
この2個の第1の取り付け部24,25は、図5(D)および(E)に示すように、平面22a,23aと面一の平面24a,25aを備えると共に、ブラケット部材20の高さ方向の全体に渡って背面側まで延長されて形成されている。
【0049】
そして、この取り付け部24,25には、ブラケット部材20の正面側から背面側に貫通する貫通孔241,251が形成されている。この2個の貫通孔241および251間の距離は、無線通信装置10の筐体本体12の取り付け部121および122の貫通孔123および124間の距離dと等しい距離とされている。この貫通孔241,251の径は、前述したねじ31,32がねじ込まれる大きさとされている。
【0050】
また、この実施形態のブラケット部材20は、凹部21の中心を通る高さ方向に回転軸を仮想したときその回転軸を中心に90度回転させた状態においても、無線通信装置10の筐体を取り付け固定可能な構成としている。
【0051】
すなわち、この実施形態のブラケット部材20においては、正面側から見て、左側の矩形状壁部22の長手方向、つまり、凹部21に収納される配管パイプ40の中心線に沿う方向、の一端および他端には、正面側から背面側に渡って貫通する貫通孔221および222が設けられる。この実施形態においては、この2個の貫通孔221,222間の距離は、前記dと等しく選定されている。この2個の貫通孔221,222の径も、ねじ31,32がねじ込まれる大きさとされている。この実施形態では、この2個の貫通孔221,222も、無線通信装置10の筐体の取り付け部を構成する。
【0052】
また、この実施形態のブラケット部材20は、同一構造の他のブラケット部材20を、高さ方向に積み上げて結合することができる構造を備える。
【0053】
すなわち、ブラケット部材20の右側の矩形状壁部23の長手方向の一端および他端においては、凹部21の底部と面一となる位置まで矩形状壁部23の内側(凹部21側)がU字状に穿かれ、かつ、凹部21の底面と面一となる部分に、背面側まで貫通する貫通孔231および232が設けられる。この場合、この2個の貫通孔231,232間の距離も、前記dと等しく選定されている。この2個の貫通孔231,232の径は、ねじ31,32と同じねじが貫通する大きさとされている。
【0054】
この場合、貫通孔221,222の形成位置と、貫通孔231,232の形成位置は、ブラケット部材20の長手方向の端部からの距離が等しくなる、互いに対応する位置とされる。つまり、あるブラケット部材20の正面側の面の上に、他のブラケット部材20を180度回転させた状態で、その背面側を対接させたときに、貫通孔221と貫通孔232とが同じ位置となり、かつ、貫通孔222と貫通孔231とが同じ位置となって重なり合うように構成されている。
【0055】
さらに、この実施形態では、左側の矩形状壁部22の長手方向の中央位置においては、凹部21の底部と面一となる位置まで矩形状壁部23の内側(凹部21側)がU字状に穿かれ、かつ、凹部21の底面と面一となる部分に、背面側まで貫通する貫通孔223が設けられている。この貫通孔223の径は、ねじ31,32と同じねじが貫通する大きさとされている。
【0056】
また、右側の矩形状壁部23の長手方向の対応する中央位置には、正面側から背面側に渡って貫通する貫通孔233が形成されている。この貫通孔233の径は、ねじ31,32と同じねじがねじ込まれる大きさとなっている。
【0057】
そして、この場合、あるブラケット部材20の正面側の面の上に、他のブラケット部材20を、凹部21の中心を通る高さ方向に回転軸を仮想したときその回転軸を中心に180度回転させた状態で、その背面側を対接させたときには、貫通孔223と貫通孔233とが同じ位置となるように構成されている。
【0058】
以上のような構成により、あるブラケット部材20の正面側の面に、他のブラケット部材20を、前記のように180度回転させた状態で、その背面側を対接させたときには、貫通孔221と貫通孔232とが同じ位置となり、また、貫通孔222と貫通孔231とが同じ位置となり、さらに、貫通孔223と貫通孔233とが同じ位置となって重なり合う。
【0059】
したがって、同じ位置となっている貫通孔同士を通して、ねじ31,32と同じねじをねじ込んで、2個のブラケット部材20同士を高さ方向に重ねて結合することができる。さらに、同様にして、他のブラケット部材20高さ方向に重ねて結合することにより、3個以上のブラケット部材20を、高さ方向に結合することが可能である。その場合には、結合するブラケット部材20同士は、互いに前記のように180度回転させた状態にする必要があるのは、前述した通りである。
【0060】
そして、この実施形態のブラケット部材20は、凹部21に嵌合収納された配管パイプ40にブラケット部材20を固定するために用いられる固定用部が構成される。
【0061】
この実施形態では、ブラケット部材20は、配管パイプ40に結束バンドにより固定するようにする。このため、固定用部としては、この実施形態では、ブラケット部材20の矩形状壁部22および23の正面側の面において、この正面側から背面側に貫通する貫通孔224,225および234,235を設けるようにする。
【0062】
結束バンドは、凹部21に配管パイプ40を嵌合収納した状態で、例えば貫通孔224を正面側から通し、背面側を経由し、そして、貫通孔234を通して正面側に戻すように掛け渡した後、その端部を結束固定部に挿通して締め付けるようにすることにより、配管パイプ40にブラケット部材20を強固に固定するようにすることができる。また、同様にして、結束バンドを、例えば貫通孔224を正面側から通し、背面側を経由し、そして、貫通孔234を通して正面側に戻すように掛け渡した後、緊縛するようにすることができる。
【0063】
[無線通信装置10の筐体の配管パイプ40への固定方法]
前述したように、無線通信装置10の筐体は、2個の取り付け部121および122において、取り付けねじを、貫通孔123および124を通し、壁面2にねじ込むことにより、壁面に取り付けることができる。しかし、壁面に取り付けスペースがないときや、壁面に取り付け傷を付けたくないときには、ブラケット部材20を用いて配管パイプ40に取り付け固定するようにする。
【0064】
図6は、鉛直方向に配されている配管パイプ40に、ブラケット部材20を用いて無線通信装置10の筐体を取り付け固定する場合を説明するための図である。
【0065】
この場合、まず、ブラケット部材20の背面側を壁面側として、ブラケット部材20を配管パイプ40と壁面との間に挿入し、ブラケット部材20の凹部21内に配管パイプ40を嵌合収納させる。その後、図7(A)に示すように、結束バンド51を、例えば貫通孔224を正面側から通し、背面側を経由した後、貫通孔234を通して正面側に戻すようにして掛け渡した後、結束固定部に挿通して締め付けることにより、配管パイプ40に対して、ブラケット部材20を固定するようにする。
【0066】
また、同様にして、結束バンド52を、例えば貫通孔225を正面側から通し、背面側を経由した後、貫通孔235を通して正面側に戻すようにして掛け渡した後、結束固定部に挿通して締め付けることにより、配管パイプ40に対して、ブラケット部材20を固定するようにする。
【0067】
次に、ブラケット部材20の正面側の、取り付け部24,25の平面24a,25aに、無線通信装置10の筐体の取り付け部121および122の背面側を対接させて、貫通孔123,124と、貫通孔241,251とが同じ位置となるように位置合わせをした後、ねじ31,32を、貫通孔123,124を通して貫通孔241,251にねじ込む。これにより、無線通信装置10の筐体は、ブラケット部材20を通じて配管パイプ40の鉛直方向に配されている部分に固定される。
【0068】
次に、配管パイプ40が水平方向に配されている部分において、無線通信装置10の筐体を、ブラケット部材20を用いて取り付け固定する場合について説明する。
【0069】
この場合も、図7(A)に示すように、ブラケット部材20を配管パイプ40に結束バンド51,52を用いて固定するまでの処理は、配管パイプ40が鉛直方向に配されている部分に無線通信装置10の筐体を取り付ける場合と全く同様である。
【0070】
そして、配管パイプ40が水平方向に配されている部分に無線通信装置10の筐体を取り付け固定する場合には、ブラケット部材20の矩形状壁部22の正面側の面22aに、無線通信装置10の筐体の取り付け部121および122の背面側を対接させ、かつ、この矩形状壁部22に形成されている取り付け部、すなわち、貫通孔221および222と、無線通信装置10の筐体の取り付け部121および122の貫通孔123および124とが同じ位置となるように位置合わせをした後、ねじ31,32を、貫通孔123,124を通して貫通孔221,222にねじ込む。
【0071】
これにより、無線通信装置10の筐体は、ブラケット部材20を通じて、配管パイプ40の水平方向に配されている部分に固定される。図8に、このときの無線通信装置10の配管パイプ40への取り付け固定状態を示す。
【0072】
以上の例は、配管パイプ40と住戸の壁との間に、ブラケット部材20を挿入するスペースが存在する場合であるが、ブラケット部材20が配管パイプ40と住戸の壁との間に挿入できない場合には、この実施形態においては、ブラケット部材20を次のように用いることで、配管パイプ40に無線通信装置10の筐体を取り付け固定することができる。
【0073】
すなわち、図7(B)に示すように、配管パイプ40の鉛直方向に配されている部分あるいは水平方向に配されている部分に、ブラケット部材20の正面側を向け、凹部21内に配管パイプ40が嵌合収納されるように、ブラケット部材20を配管パイプ40にかぶせるようにする。
【0074】
そして、前述と同様にして、結束バンド51,52により、ブラケット部材20を配管パイプ40に緊縛して、ブラケット部材20を配管パイプ40に固定する。この場合には、図7(B)に示すように、ブラケット部材20の背面201側が、無線通信装置10の筐体の取り付け面側となる。
【0075】
そして、配管パイプ40が鉛直方向に配されている部分に無線通信装置10の筐体を取り付ける場合には、ブラケット部材20の背面201側において、取り付け部24,25の平面24a,25aに、無線通信装置10の筐体の取り付け部121および122の背面側を対接させて、貫通孔123,124と、貫通孔241,251とが同じ位置となるように位置合わせをした後、ねじ31,32を、貫通孔123,124を通して貫通孔241,251にねじ込む。これにより、無線通信装置10の筐体は、ブラケット部材20を通じて配管パイプ40の鉛直方向に配されている部分に固定される。
【0076】
また、配管パイプ40が水平方向に配されている部分に無線通信装置10の筐体を取り付け固定する場合には、ブラケット部材20の背面201側において、ブラケット部材20の矩形状壁部22の背面側に、無線通信装置10の筐体の取り付け部121および122の背面側を対接させ、かつ、この矩形状壁部22に形成されている貫通孔221および222と、無線通信装置10の筐体の取り付け部121および122の貫通孔123および124とが同じ位置となるように位置合わせをした後、ねじ31,32を、貫通孔123,124を通して貫通孔221,222にねじ込む。
【0077】
これにより、無線通信装置10の筐体は、ブラケット部材20を通じて、配管パイプ40の水平方向に配されている部分に固定される。図9に、このときの無線通信装置10の配管パイプ40への取り付け固定状態を示す。
【0078】
ところで、以上のようにして、1個のブラケット部材20を用いて配管パイプ40に無線通信装置10の筐体を取り付けた状態において、前述した室内などから漏洩する電磁波のために、無線通信装置10のアンテナ10Aの無線通信性能の劣化の問題が生じる場合が、まれにある。そのような場合には、複数個のブラケット部材20を高さ方向に結合したものを、壁面2と無線通信装置10の間に介挿することで、無線通信装置10の無線通信性能の劣化の問題を回避することができる。
【0079】
この場合、まず、図7(A)または図7(B)を用いて前述したようにして、ブラケット部材20を、配管パイプ40に固定するようにする。次に、この配管パイプ40に固定したブラケット部材20の上に、他のブラケット部材20を、高さ方向に重ねる。このとき、高さ方向に重ねる他のブラケット部材20は、凹部21の中心を通る高さ方向に回転軸を仮想したときその回転軸を中心に180度回転して、貫通孔221と貫通孔232とが同じ位置となり、また、貫通孔222と貫通孔231とが同じ位置となり、さらに、貫通孔223と貫通孔233とが同じ位置となるようにする。
【0080】
そして、同じ位置となっている貫通孔同士を通して、ねじ33,34と同じねじをねじ込んで、2個のブラケット部材20Aおよび20Bを高さ方向に重ねて結合する。
【0081】
次に、無線通信装置10の筐体を、1個のブラケット部材20に取り付ける場合と同様にして、重ね合わされたブラケット部材20に対して、ねじ31,32により固定する。
【0082】
以上により、無線通信装置10は、2個のブラケット部材20の合計の高さ2h分だけ、さらに壁面から離間された状態で固定されることになり、無線通信装置10の無線通信性能の劣化の問題を回避することが可能である。
【0083】
このように複数個のブラケット部材20を高さ方向に重ねる場合、ブラケット部材の正面側の面と背面側の面とを対接されて結合する状態のみならず、背面側同士を対接させて結合することもできる。
【0084】
なお、この実施形態では、2個の取り付け部121,122は、無線通信装置10の筐体の背面側に突出するようなものとなっているが、図3(B)および図4(A)に示すように、筐体の背面側には、この2個の取り付け部121,122と同じ高さ分だけ、背面側から突出する突出部125,126などが形成され、これらの突出部125,126なども壁面2およびブラケット部20の面に対接して、安定に無線通信装置10の筐体を固定できるようにしている。
【0085】
[他の実施形態および変形例]
上述の実施形態の説明では、無線通信装置10の取り付け部は、筐体側面の2個としたが、2個以上の取り付け部を備えるものであっても良い。そのようにする場合にはブラケット部材20の構成も、それに応じて変更すればよい。
【0086】
また、上述の実施形態は、プロパンガスの使用量を検針センターに無線送信するシステムに使用される無線通信装置の筐体を配管パイプに固定する場合であるが、この発明は、これに限られるものではなく、筐体を取り付けようとする位置の近傍に配管パイプが存在するような場合のすべてに適用可能である。
【0087】
また、ブラケット部材の配管パイプに固定するためには、上述のような結束バンドを用いる場合に限られるものではないので、固定用部としては、上述のような貫通孔に限られるものではない。例えば、ブラケット部材の側方からねじを挿通させ、ブラケット部材を介して凹部21に嵌合収納されている配管パイプの周面に、ねじの先端を対接させて固定するようにしてもよい。また、筐体が軽量である場合には、接着剤を用いて固定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】この発明による筐体の取り付け装置の実施形態を説明するための図である。
【図2】この発明の実施形態が適用されるガス検針システムの構成例を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施形態が適用される無線通信装置の筐体の例を示す図である。
【図4】この発明の実施形態が適用される無線通信装置の構成例を説明するための図である。
【図5】実施形態のブラケット部材の構成例を説明するための図である。
【図6】この発明による筐体の取り付け装置の実施形態を説明するための図である。
【図7】この発明による筐体の取り付け装置の実施形態を説明するための図である。
【図8】この発明による筐体の取り付け装置の実施形態により水平方向の配管パイプに筐体を固定する例を説明するための図である。
【図9】この発明による筐体の取り付け装置の実施形態により水平方向の配管パイプに筐体を固定する例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0089】
10…無線通信装置、10A…アンテナ、20…ブラケット部材、121,122…取り付け部、21…凹部、24,25…筐体の取り付け部、221,222,223,231、232,233,241,251…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の筐体と、前記筐体を配管パイプに取り付けるためのブラケット部材とからなり、
前記筐体は、
当該筐体の第1の面側を壁面に対接させた状態で壁面に対して少なくとも2個の取り付け位置で当該筐体を固定させることを可能にする少なくとも2個の第1取り付け部を備え、
前記ブラケット部材は、
前記配管パイプを嵌合収納する凹部を形成し、前記配管パイプに接する面に平行な面に含まれる平面を備える2個の壁部と、
前記凹部に嵌合収納された前記配管パイプに前記ブラケット部材を固定するために用いられる固定用部と、
前記配管パイプの中心線方向に直交する方向の前記2個の壁部の前記平面に設けられた、前記少なくとも2個の前記第1取り付け部により、前記筐体を前記ブラケット部材に対して固定させるための少なくとも2個の第2取り付け部と、
前記2個の壁部の一方の壁部の前記平面において、前記配管パイプの中心線方向に沿う方向に設けられ、前記少なくとも2個の前記第1取り付け部により、前記筐体を前記ブラケット部材に対して固定させるための少なくとも2個の第3取り付け部と、
を備え、
前記筐体の前記第1取り付け部を、前記配管パイプを前記凹部に嵌合収納した前記ブラケット部材の前記第2取り付け部に取り付けて前記筐体を前記ブラケット部材に固定する状態と、前記筐体の前記第1取り付け部を、前記配管パイプを前記凹部に嵌合収納した前記ブラケット部材の前記第3取り付け部に取り付けて前記筐体を前記ブラケット部材に固定する状態とを取り得る
ことを特徴とする筐体の取り付け装置。
【請求項2】
請求項1に記載の筐体の取り付け装置において、
前記第1、第2および第3の取り付け部は、前記配管パイプの中心線方向に直交する方向の貫通孔を備え、前記筐体は、前記ブラケット部材に対して、前記第1および第2の貫通孔により、あるいは、前記第1および第3の貫通孔により、ねじ止めする
ことを特徴とする筐体の取り付け装置。
【請求項3】
請求項2に記載の筐体の取り付け装置において、
前記2個の壁部の平面側とは反対側の前記ブラケット部材の背面側においても、前記筐体を、前記配管パイプを前記凹部に嵌合収納した前記ブラケット部材に、取り付けて固定することができるようにした
ことを特徴とする筐体の取り付け装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−92079(P2008−92079A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268063(P2006−268063)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【出願人】(504454989)エヌ・ティ・ティテレコン株式会社 (16)
【Fターム(参考)】