説明

筐体及びその成形方法

【課題】薄肉化・軽量化が容易で寸法安定性が高く、強度、難燃性及び加工歩留まりを向上しうる筐体及びその成形方法を提供する。
【解決手段】複数の空孔32が形成された樹脂シート30を少なくとも1枚含む複数の樹脂シート20,30,40を積み重ね、多層樹脂シート50を形成する工程と、多層樹脂シート50をプレス成形し、内部に複数の空孔32が形成された筐体を10形成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体及びその成形方法に係り、特に、気泡を内在した筐体及びその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノートパソコンなど、小型化・軽量化が要求されている電子機器において、それらを収容する筐体にも軽量化・薄肉化が求められている。
【0003】
通常、電子機器の筐体は、溶融した樹脂材料を金型へ充填して固化させる方法、いわゆる射出成形と呼ばれる手法により製造されている。筐体の軽量化を行う方法としては、射出成形の際に樹脂材料中に無機ガスや超臨界流体を封入して空孔を生じさせる方法や、予め樹脂材料中に中空ガラスなどの低密度フィラーを添加する方法などが知られている。
【特許文献1】特開2000−141470号公報
【特許文献2】特開2001−355876号公報
【特許文献3】特開2004−032911号公報
【特許文献4】特開平10−281686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、内部に空孔を有する筐体に関し、薄肉化・軽量化が容易で寸法安定性が高く、強度、難燃性及び加工歩留まりを向上しうる筐体の構造及びその成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の一観点によれば、樹脂材料により形成され、内部に位置する表面に平行な面内に、規則的に配列された複数の空孔を有する筐体が提供される。
【0006】
また、実施形態の他の観点によれば、複数の空孔が形成された樹脂シートを少なくとも1枚含む複数の樹脂シートを積み重ね、多層樹脂シートを形成する工程と、前記多層樹脂シートをプレス成形し、内部に前記複数の空孔が形成された筐体を形成する工程とを有する筐体の成形方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
開示の筐体によれば、内部の表面に平行な面内に、規則的に配列された複数の空孔を設けるので、軽量で寸法安定性を有し、薄肉で高強度の筐体を形成することができる。また、開示の筐体の成形方法によれば、任意の深さに空孔を形成できるため、薄肉化することで生じやすい表面凹凸を抑制することができる。また、仕上げ加工の際の切削量の制約を制御することができ、加工歩留まりを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による筐体及びその成形方法について図1乃至図5を用いて説明する。
【0009】
図1は本実施形態による筐体の構造を示す斜視図及び断面図、図2は本実施形態の変形例による筐体の構造を示す断面図、図3は多孔樹脂シートの構造を示す電子顕微鏡像、図4及び図5は本実施形態による筐体の成形方法を示す工程図である。
【0010】
はじめに、本実施形態による筐体の構造について図1及び図2を用いて説明する。なお、図1(a)は本実施形態による筐体の一例を示す斜視図であり、図1(b)は図1(a)の破線部の断面構造を示す概略断面図である。
【0011】
本実施形態による筐体10は、特に限定されるものではないが、電子機器等を収容するための箱体であり、例えば図1(a)に示すような携帯電話の外装部品や、ノートパソコンの外装部品などに適用可能なものである。
【0012】
筐体10は、樹脂材料により形成されており、図1(b)に示すように、表面から所定の深さに位置する表面に平行な面内に形成された複数の空孔32を有している。筐体10中に空孔を設けることにより、筐体10の実質的な密度を低減することができ、軽量化を図ることができる。また、空孔32によって筐体10に加わる応力が分散されるため、強度を向上することができる。
【0013】
また、後述する本実施形態による筐体の成形方法を用いることにより、空孔32を、筐体10内の任意の深さに位置する表面に平行な面内に形成することができる。また、空孔32の径、密度、面内レイアウトについても、筐体10に要求される軽量化の度合いや強度に応じて適宜設定することができる。例えば、空孔32を、表面と平行な面内に、平面的な密度が均一になるような規則的な平面レイアウト(例えば、正方格子状や六方格子状など)で配置すれば、筐体10に加わる応力を均一に分散することができ、筐体10の強度を向上する効果が高い。
【0014】
上述のように、空孔32は、筐体10内の任意の深さに位置する表面に平行な面内に形成することができる。したがって、筐体10の仕上げ加工として切削加工を行う場合、切削量に応じて予め空孔32を形成する深さを適宜設定することも可能である。これにより、切削加工によって空孔32が筐体10の表面に露出することを防止でき、ピンホール補修などの工程を削減することができる。
【0015】
空孔32は、図1(b)に示すように必ずしも筐体10内の一の深さに位置する面内に形成する必要はなく、異なる2以上の深さに位置する面内にそれぞれ形成するようにしてもよい。例えば図2に示すように、筐体10内の異なる3種類の深さに、複数の空孔32をそれぞれ形成することもできる。それぞれの深さの空孔32は、必ずしも径、密度、面内レイアウトを同じにする必要はなく、必要に応じて適宜変更するようにしてもよい。
【0016】
次に、本実施形態による筐体の成形方法について図3乃至図5を用いて説明する。
【0017】
まず、複数の樹脂シートを用意する。これら樹脂シートのうち少なくとも一枚は多孔樹脂シートとし、他は空孔の開いていない樹脂シートとする。
【0018】
多孔樹脂シートとは、例えば図3に示すように、複数の空孔が形成された樹脂シートである。空孔は、少なくとも一部が樹脂シートの表面に露出するように形成し、樹脂シートを貫通する貫通孔であってもよい。空孔は、筐体に加わる応力を均一に分散する等の観点から、シートの面内における平面的な密度が均一になるような規則的な平面レイアウト(例えば、正方格子状や六方格子状など)で配置されていることが望ましい。このような多孔樹脂シートは、市販もされている。なお、多孔樹脂シートは、市販品を用いてもよいし、空孔の開いていない樹脂シートにパンチングなどによって空孔を開けることにより形成してもよい。市販品としては、例えば、富士フイルム株式会社製の「ハニカムフィルム」、三菱樹脂株式会社製の超高分子量ポリエチレン「フィルダス」、日東電工株式会社製の超高分子ポリエチレン樹脂多孔質シート「サンマップLC」等がある。
【0019】
空孔の径は、特に限定されるものではないが、例えば数十μm〜数百μmの範囲に設定することができる。空孔の径は、目的とする筐体10の軽量化の度合い、筐体10に求められる強度、樹脂シートの厚さ等に応じて適宜設定することが望ましい。
【0020】
樹脂シートの構成材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレートアクリレート(PMMA)等、筐体材料として一般的に用いられている種々の樹脂材料を用いることができる。
【0021】
用意する複数の樹脂シートは、必ずしも1種類の樹脂材料により形成する必要はなく、後に行う加熱プレスによって互いに一体化できる材料であれば、複数種類の樹脂材料を用いてもよい。
【0022】
各樹脂シートの厚さは、目的とする筐体10の厚さや使用する樹脂シートの枚数等に応じて適宜選択することができる。例えば、筐体の厚さが1mm程度以下の場合、数十〜数百μm厚の樹脂シートを適用することができる。
【0023】
ここでは、図1(b)の筐体10を成形するための一例として、空孔の開いていない樹脂シート20,40と、空孔32の開いた多孔樹脂シート30の、計3枚の樹脂シートを用意するものとする(図4(a))。樹脂シート20は、筐体表面の化粧層をとなるものであり、例えば厚さが500μmのABS樹脂シートである。多孔樹脂シート30は、例えば厚さが200μmのABS樹脂シートである。多孔樹脂シート30には、例えば孔径80μmの空孔32が例えば100μmピッチで規則的に形成されている。樹脂シート40は、筐体裏面のカバーシートとして用いられるものであり、例えば膜厚300μmのABS樹脂シートである。
【0024】
次いで、樹脂シート20、多孔樹脂シート30及び樹脂シート40をこの順番に重ね合わせ、多層樹脂シート50とする(図4(b))。なお、図2に示す筐体10を形成する場合には、例えば、空孔の開いていない樹脂シートと多孔樹脂シートとを交互に7層重ね合わせればよい。
【0025】
次いで、多層樹脂シート50を金型64,66の間にセットし、プレス加工装置60の加圧チャンバ62内に装置する。
【0026】
次いで、加圧チャンバ62を閉じた後、ガス導入口68から例えば窒素やアルゴンなどの無機ガスを加圧チャンバ62内に導入し、加圧チャンバ62内を大気圧よりも高い圧力(例えば2atm程度)に加圧する(図5(a))。
【0027】
なお、樹脂シート20,30,40間は仮接着などの処理を行っておらず隙間が空いているため、多孔樹脂シート30の空孔32内にも同圧力の無機ガスが充填される。したがって、加圧チャンバ62内の圧力によって空孔32の形状が変形することはない(図4(b)参照)。
【0028】
次いで、金型64,66を樹脂材料の軟化に応じた所定温度に設定した状態で、金型64,66により多層樹脂シート50を、所定圧力で所定時間プレスし、樹脂シート20,30,40を一体化するとともに、多層樹脂シート50を成形する(図5(b))。例えば、上述の構造のABS樹脂を用いた多層樹脂シート50の場合、金型64を例えば130℃に、金型66を例えば90℃に設定した状態で、例えば9MPaの圧力で、例えば5分間、プレスする。このプレスに伴い、多孔樹脂シート30内の空孔32の形状が変形する(図4(c))。
【0029】
次いで、金型64,66の間隔を、形成しようとする筐体10の厚さに相当する規定厚さに調整し、金型64と金型66とを拘束ピン(図示せず)で固定する。
【0030】
次いで、金型64と金型66との間に加えていた圧力を解放する。
【0031】
次いで、加圧チャンバ62を開放し、加圧チャンバ62内の圧力を大気圧に戻す。この際、多孔樹脂シート30の空孔32内には大気圧よりも高い圧力で無機ガスが充填されているため、空孔32の内壁には内側から外側に向かう圧力が生じ、プレスにより変形した空孔32の再構築が促進される(図5(c)、図4(d))。
【0032】
次いで、樹脂材料の硬化温度以下の所定温度(例えば70℃)まで金型64,66を冷却した後、目的とする筐体形状に成形された多層樹脂シート50を金型64,66から取り出す。
【0033】
この後、仕上げ加工として、成形した積層樹脂シート50の表面を切削加工し、積層樹脂シート50からなる筐体10を完成する。この際、仕上げ加工に求められる切削量に応じて樹脂シート20の膜厚を適宜設定しておくことにより、切削加工によって空孔32が筐体の表面に露出することを防止することができる。これにより、ピンホール補修工程が不要となり、製造工程を簡略化することができる。
【0034】
このように、本実施形態によれば、表面から所定の深さに位置する表面に平行な面内に複数の空孔を設けるので、軽量で寸法安定性を有し、薄肉で高強度の筐体を形成することができる。また、複数の空孔を規則的に配置することにより、筐体の強度を向上することができる。また、任意の深さに空孔を形成できるため、薄肉化することで生じやすい表面凹凸を抑制することができる。また、仕上げ加工の際の切削量の制約を制御することができ、加工歩留まりを向上することができる。また、プレス加工後の空孔の再構築を低圧力のガス導入で行うことができるので、作業効率及び作業安全性を向上することができる。
【0035】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による筐体の成形方法について図6乃至図7を用いて説明する。図1乃至図5に示す第1実施形態による筐体及びその成形方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
【0036】
図6及び図7は本実施形態による筐体の成形方法を示す工程図である。
【0037】
本実施形態では、静水圧プレスを用いた筐体の成形方法を説明する。本実施形態の成形方法により製造した筐体は、第1実施形態による筐体と同様の作用効果を奏するものである。
【0038】
まず、複数の樹脂シートを用意する。これら樹脂シートのうち少なくとも一枚は多孔樹脂シートとし、他は空孔の開いていない樹脂シートとする。なお、樹脂シート及び多孔樹脂シートには、第1実施形態と同様のものを適用することができる。ここでは、一例として、空孔の開いていない樹脂シート20と、空孔の開いた多孔樹脂シート30の、計2枚の樹脂シートを用意するものとする。
【0039】
次いで、樹脂シート20及び多孔樹脂シート30をこの順番で重ね合わせ、多層樹脂シート50とする(図6(a))。
【0040】
次いで、多層樹脂シート50を、樹脂シート20側に金型70が位置するように金型70上に載置し、ゴム袋などの柔軟な袋72の中に入れて密閉する(図6(b))。
【0041】
次いで、多層樹脂シート50及び金型70を入れた袋72を、オイルなどの圧力伝達液84で満たされた静水圧プレス機80の圧縮容器82内に入れる(図6(c))。この際、静水圧プレスの圧力伝達液84を兼ねた加熱媒体に水の代わりとして、シリコーンオイル等の高沸点浴を用いることで、多層樹脂シート50の成形に適した温度に加熱することができる。なお、図6(c)では、多層樹脂シート50及び金型70を入れた袋72を圧縮容器82内に3つ入れた状態を示している。
【0042】
次いで、圧力伝達液84の液面をシリンダ86により加圧し、袋72内に入れた多層樹脂シート50を静水圧によってプレスする。これにより、多層樹脂シート50は、金型70の形状に沿って成形される。また、このプレスに伴い、空孔32は圧縮される(図7(a))。なお、本実施形態では静水圧プレスを用いているため、多孔樹脂シート30の空孔32には等方的に圧力が加わり、空孔32の形状は等方的に圧縮される。等方的な圧力を印加することにより、空孔32の圧縮の際の歪みを少なくすることができる。
【0043】
次いで、静水圧プレス機80から袋72を取り出し、袋72内から成形した多層樹脂シート50及び金型70を取り出す。この際、多層樹脂シート50に加わる圧力が取り除かれることで、空孔32の形状が復元される(図7(b))。また、圧力伝達液84から取り出すことで、多層樹脂シート50は冷却される。静水圧プレスを用いる本実施形態の方法では、プレスの際に空孔32が受けている歪みが少ないため、空孔32の復元の際の変形を抑制することができる。
【0044】
この後、仕上げ加工として、成形した積層樹脂シート50の表面を切削加工し、積層樹脂シート50からなる筐体10を完成する。この際、仕上げ加工に求められる切削量に応じて樹脂シート20の膜厚を適宜設定しておくことにより、切削加工によって空孔32が筐体の表面に露出することを防止することができる。これにより、ピンホール補修工程が不要となり、製造工程を簡略化することができる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、表面から所定の深さに位置する表面に平行な面内に複数の空孔を設けるので、軽量で寸法安定性を有し、薄肉で高強度の筐体を形成することができる。また、複数の空孔を規則的に配置することができ、筐体の強度を向上することができる。また、任意の深さに空孔を形成できるため、薄肉化することで生じやすい表面凹凸を抑制することができる。また、仕上げ加工の際の切削量の制約を制御することができ、加工歩留まりを向上することができる。また、プレス成形に静水圧プレスを用いるため、プレスの際に空孔が変形するのを防止でき、空孔の形状回復を容易にできる。
【0046】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による筐体及びその成形方法について図8を用いて説明する。図1乃至図7に示す第1及び第2実施形態による筐体及びその成形方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
【0047】
図8は本実施形態による筐体の構造を示す概略断面図である。
【0048】
本実施形態による筐体は、図1(b)に示す第1実施形態による筐体10と基本的には同じであるが、空孔32の内壁に難燃剤層34が形成されている点で異なっている。
【0049】
筐体10内部に空孔32を設けることにより、筐体10の難燃性が低下することがある。しかしながら、本実施形態の筐体のように空孔32の内壁に難燃剤層34を設けることにより、筐体10の難燃性低下を防止することができる。
【0050】
難燃剤層34は、樹脂シートを重ね合わせる前に、多孔樹脂シート20を難燃剤に含浸し、空孔32の内壁に塗布することにより、形成することができる。
【0051】
難燃剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸メラミン、ポリ化リン酸メラミン、リン酸グアニル尿素等を適用することができる。
【0052】
また、難燃剤層34には、空孔32の形状復元を助長する効果もある。筐体10の成形の際に多層樹脂シート50に圧力を加える際、空孔32が変形するが、その度合いによっては空孔32の内壁同士が接触して癒着し、圧力を開放したときに空孔32の形状が復元されないことがある。難燃剤層34を空孔32の内壁に形成しておくことにより、難燃剤層34がいわば剥離剤として作用し、空孔の内壁同士が癒着するのを防止することができる。これにより、空孔32の形状を容易に復元することができる。
【0053】
このように、本実施形態によれば、筐体の難燃性を高めることができる。これにより、筐体を使用する電子機器等の安全性を高めることができる。また、プレスの際に変形した空孔の形状を容易に復元することができる。
【0054】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による筐体及びその成形方法について図9を用いて説明する。図1乃至図8に示す第1乃至第3実施形態による筐体及びその成形方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
【0055】
図9は本実施形態による筐体の構造を示す概略断面図である。
【0056】
本実施形態による筐体は、図1(b)に示す第1実施形態による筐体10と基本的には同じであるが、空孔32の内部に中空のフィラー36が充填されている点で異なっている。
【0057】
筐体10の成形の際に多層樹脂シート50に圧力を加える際、空孔32が変形するが、その度合いによっては空孔32の内壁同士が接触して癒着し、圧力を開放したときに空孔32の形状が復元されないことがある。空孔32内にフィラー36を充填しておくことにより、空孔の内壁同士が癒着するのを抑制することができる。これにより、空孔32の形状を容易に復元することができる。
【0058】
フィラー36としては、中空ガラスなどの低密度フィラーを適用することができる。例えば、平均粒径が30〜70μmのガラス微小中空球粉体、住友スリーエム株式会社製の「グラスバブルズ」等を適用することができる。また、フィラー36の充填に加え、第3実施形態に示した難燃剤層34を形成してもよい。これにより、空孔32の形状復元を更に助長することができる。
【0059】
なお、図9では、空孔32にそれぞれ1つずつのフィラー36が充填されているが、1つの空孔32内に2つ以上のフィラー36が充填されていてもよい。また、必ずしも総ての空孔32にフィラー36を充填する必要はない。
【0060】
フィラー36は、樹脂シートを重ね合わせる際に、多孔樹脂シート20上にフィラー36を分散させることにより、空孔32内に充填することができる。
【0061】
このように、本実施形態によれば、プレスの際に変形した空孔の形状を容易に復元することができる。
【0062】
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0063】
例えば、上記実施形態では、筐体の構造及びその成形方法を主に説明したが、上記実施形態の筐体は、携帯電話やノートパソコンなどの電子機器用の筐体として、広く適用することができる。筐体の軽量化や薄肉化が特に求められている小型電子機器への適用は極めて有効である。
【0064】
また、上記実施形態に開示した構成材料や製造条件は、代表的な例を示しているにすぎず、当該開示に限定されるものではなく、目的等に応じて適宜変更が可能である。
【0065】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0066】
(付記1) 樹脂材料により形成され、内部に位置する表面に平行な面内に、規則的に配列された複数の空孔を有する
ことを特徴とする筐体。
【0067】
(付記2) 付記1記載の筐体において、
前記表面から異なる深さに位置する少なくとも2以上の前記面内に、前記複数の空孔がそれぞれ形成されている
ことを特徴とする筐体。
【0068】
(付記3) 付記1又は2記載の筐体において、
前記複数の空孔が形成された樹脂シートを含む複数の樹脂シートの積層体により形成されている
ことを特徴とする筐体。
【0069】
(付記4) 付記1乃至3のいずれか1項に記載の筐体において、
前記複数の空孔の内壁に形成された難燃剤層を更に有する
ことを特徴とする筐体。
【0070】
(付記5) 付記1乃至4のいずれか1項に記載の筐体において、
前記空孔内に充填されたフィラーを更に有する
ことを特徴とする筐体。
【0071】
(付記6) 複数の空孔が形成された樹脂シートを少なくとも1枚含む複数の樹脂シートを積み重ね、多層樹脂シートを形成する工程と、
前記多層樹脂シートをプレス成形し、内部に前記複数の空孔が形成された筐体を形成する工程と
を有することを特徴とする筐体の成形方法。
【0072】
(付記7) 付記6記載の筐体の成形方法において、
前記筐体を形成する工程は、
大気圧よりも圧力の高い加圧チャンバ内で前記多層樹脂シートをプレス成形する工程と、
前記多層樹脂シートに加える圧力を解放するとともに、前記加圧チャンバ内の圧力を大気圧に戻し、前記プレス成形の際に潰れる前記空孔の形状を復元する工程と
を更に有することを特徴とする筐体の成形方法。
【0073】
(付記8) 付記7記載の筐体の成形方法において、
前記多層樹脂シートをプレス成形する工程は、前記多層樹脂シートを第1の金型と第2の金型との間に挟んでプレスすることにより行い、
前記空孔の形状を復元する工程は、前記第1の金型と前記第2の金型との間隔を、形成しようとする前記筐体の厚さに相当する間隔に固定した状態で行う
ことを特徴とする筐体の成形方法。
【0074】
(付記9) 付記6記載の筐体の成形方法において、
前記筐体を形成する工程では、静水圧プレスにより、前記多層樹脂シートをプレス成形する
ことを特徴とする筐体の成形方法。
【0075】
(付記10) 付記6乃至9のいずれか1項に記載の筐体の成形方法において、
前記多層シートを形成する工程の前に、前記複数の空孔の内壁に難燃剤層を形成する工程を更に有する
ことを特徴とする筐体の成形方法。
【0076】
(付記11) 付記7乃至10のいずれか1項に記載の筐体の成形方法において、
前記多層シートを形成する工程の前に、前記空孔内にフィラーを充填する工程を更に有する
ことを特徴とする筐体の成形方法。
【0077】
(付記12) 付記1乃至5のいずれか1項に記載の筐体と、
前記筐体の内部に収容された電子装置と
を有することを特徴とする電子機器。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態による筐体の構造を示す斜視図及び概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態の変形例による筐体の構造を示す断面図である。
【図3】図3は、多孔樹脂シートの構造の一例を示す電子顕微鏡像である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態による筐体の成形方法を示す工程図(その1)である。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態による筐体の成形方法を示す工程図(その2)である。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態による筐体の成形方法を示す工程図(その1)である。
【図7】図7は、本発明の第2実施形態による筐体の成形方法を示す工程図(その2)である。
【図8】図8は、本発明の第3実施形態による筐体の構造を示す斜視図及び概略断面図である。
【図9】図9は、本発明の第4実施形態による筐体の構造を示す斜視図及び概略断面図である。
【符号の説明】
【0079】
10…筐体
20,40…樹脂シート
30…多孔樹脂シート
32…空孔
34…難燃剤層
36…フィラー
50…多層樹脂シート
60…プレス加工装置
62…加圧チャンバ
64,66,70…金型
68…ガス導入口
72…袋
80…静水圧プレス機
82…圧縮容器
84…圧力伝達液
86…シリンダ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料により形成され、内部に位置する表面に平行な面内に、規則的に配列された複数の空孔を有する
ことを特徴とする筐体。
【請求項2】
請求項1記載の筐体において、
前記表面から異なる深さに位置する少なくとも2以上の前記面内に、前記複数の空孔がそれぞれ形成されている
ことを特徴とする筐体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の筐体において、
前記複数の空孔の内壁に形成された難燃剤層を更に有する
ことを特徴とする筐体。
【請求項4】
複数の空孔が形成された樹脂シートを少なくとも1枚含む複数の樹脂シートを積み重ね、多層樹脂シートを形成する工程と、
前記多層樹脂シートをプレス成形し、内部に前記複数の空孔が形成された筐体を形成する工程と
を有することを特徴とする筐体の成形方法。
【請求項5】
請求項4記載の筐体の成形方法において、
前記筐体を形成する工程は、
大気圧よりも圧力の高い加圧チャンバ内で前記多層樹脂シートをプレス成形する工程と、
前記多層樹脂シートに加える圧力を解放するとともに、前記加圧チャンバ内の圧力を大気圧に戻し、前記プレス成形の際に潰れる前記空孔の形状を復元する工程と
を更に有することを特徴とする筐体の成形方法。
【請求項6】
請求項4記載の筐体の成形方法において、
前記筐体を形成する工程では、静水圧プレスにより、前記多層樹脂シートをプレス成形する
ことを特徴とする筐体の成形方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の筐体と、
前記筐体の内部に収容された電子装置と
を有することを特徴とする電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−118392(P2010−118392A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288831(P2008−288831)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】