説明

筐体装置、及び電子機器

【課題】よりコンパクトに「携帯している状態」を実現させ、且つ、より簡単に折り畳み状態から開放状態へと状態を変化させるようにする。
【解決手段】第2の筐体2は、第1のケース21と第2のケース22との間に介在し、第1のケースと第2のケースをスライドさせて第2の筐体2が所定の筐体形状となる第1の状態と前記所定の筐体形状から変形する第2の状態とに変化しうるスライド部23と、前記第1の状態を維持するように第1のケースと第2のケースを付勢する第1の付勢部材6と、を備える。第1の筐体1と第2の筐体2との間に介在し、第1の筐体を覆うように第2の筐体を重ねる折り畳み状態と、第1の筐体が露出するように第2の筐体を移動させる開放状態とをとる機構部3は、折り畳み状態のときに第2の筐体を外部操作により前記第1の状態から第2の状態へと変化させると、開放状態をとるように第2の筐体を付勢する第2の付勢部材7を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み可能な筐体装置と、そのような筐体装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より携帯電話機等においてはディスプレイの大型化が進み、使用時における電話機自身の大型化が進む一方、携帯時においては邪魔にならないようコンパクトにさせるための様々な機構が提案されている。
また、このような機構においては、ユーザが電話機本体を操作して、「携帯している状態」から「使用するための状態」へ変更させる際、そのストレスを緩和させるため様々な機構の改良が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1において、本体部の両側面に、折り畳み状態を解除するための、すなわち、表示部を若干浮かした状態にするためのテーパー部を有する起立部を備えるとともに、この起立部と本体部との間にバネ部材を備え、ユーザがこの側面の起立部を本体側に押すことにより楽に折り畳み状態を解除させて開放状態とする機構が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−182343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の機構の筐体において、更に、より簡単に折り畳み状態から開放状態へと状態を変化させたい場合、例えば、常に開放状態をとらせるためのバネ等の付勢部材をヒンジ部に備えさせる必要があるが、特許文献1の機構では、折り畳み状態のとき、上記付勢部材の付勢力に抗うための機構を備えさせることが困難であり、且つ、よりコンパクトにさせることが困難であった。
【0006】
本発明の課題は、よりコンパクトに「携帯している状態」を実現させ、且つ、より簡単に折り畳み状態から開放状態へと状態を変化させるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、第1の筐体と、第2の筐体と、前記第1の筐体と第2の筐体との間に介在し、前記第1の筐体を覆うように前記第2の筐体を重ねる折り畳み状態と前記第1の筐体が露出するように前記第2の筐体を移動させる開放状態とをとる機構部と、を備える筐体装置において、前記第2の筐体は、第1のケースと、第2のケースと、前記第1のケースと第2のケースをスライドさせて前記第2の筐体が所定の筐体形状となる第1の状態と前記所定の筐体形状から変形する第2の状態とに変化しうるスライド部と、前記第1の状態を維持するように前記第1のケースと第2のケースを付勢する第1の付勢部材と、を備え、前記機構部は、前記折り畳み状態のときに前記第2の筐体を外部操作により前記第1の状態から第2の状態へと変化させると、前記開放状態をとるように前記第2の筐体を付勢する第2の付勢部材を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の筐体装置であって、前記第1の状態のときに前記折り畳み状態を維持して、前記第1の状態から第2の状態へと変化させたときには前記折り畳み状態を維持できなくなる折り畳み状態維持部材を更に備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の筐体装置であって、前記折り畳み状態維持部材は、前記折り畳み状態のときに前記第1のケースと前記第2のケースとが互いに密接するように配置された磁性部材で構成されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の筐体装置であって、前記折り畳み状態維持部材は、前記折り畳み状態を維持するための係合部材で構成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の筐体装置を備える電子機器を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、よりコンパクトに「携帯している状態」を実現させながら、より簡単に折り畳み状態から開放状態へと状態を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成を示すもので、携帯電話の折り畳み状態を示した正面図(a)と開放状態を示した正面図(b)とその側面図(c)である。
【図2】図1(a)の矢印A−A線に沿って実施形態1の構成を示した断面図で、折り畳み状態で第1の状態を示した図(a)と第2の状態を示した図(b)と開放途中の状態を示した図(c)である。
【図3】図1(a)の矢印A−A線に沿って実施形態2の構成を示した断面図で、折り畳み状態で第1の状態を示した図(a)と第2の状態を示した図(b)と開放途中の状態を示した図(c)である。
【図4】図1(a)の矢印A−A線に沿って実施形態3の構成を示した断面図で、折り畳み状態で第1の状態を示した図(a)と第2の状態を示した図(b)と開放途中の状態を示した図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
図1は本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成として携帯電話を示したもので、1は第1の筐体、2は第2の筐体、3はヒンジ機構部である。
【0015】
図示のように、第1の筐体1と第2の筐体2はヒンジ機構部3を介して折り畳み可能(開閉可能)に結合されている。なお、第1の筐体1には操作部4が設けられ、第2の筐体2には表示部5が設けられている。
【0016】
(実施形態1)
図2は図1(a)の矢印A−A線に沿って実施形態1の構成を示したもので、6は第1の付勢部材、7は第2の付勢部材、8は折り畳み状態維持部材である。
【0017】
図示のように、第2の筐体2は、第1の筐体1の前記操作部4を有する上面に重なり合う第1のケース21と、第1の筐体1の一端部側に位置する第2のケース22とがスライド部23でスライド可能に結合されている。第1のケース21の一端部内には、第2のケース22の内部に突出する突出部24が設けられている。第2のケース22内には、前記ヒンジ機構部3のヒンジ軸をなす軸部材31が配置されている。
【0018】
そして、第2のケース22と突出部24との間に、第1のケース21を第2のケース22に対し矢印Pで示したスライド方向に付勢するコイルバネによる第1の付勢部材6が設けられている。また、軸部材31の上には、第2のケース22と第1の筐体1とに端部をそれぞれ係止して、第1の筐体1に対し第2の筐体2を矢印Rで示した開放方向に付勢するねじりバネによる第2の付勢部材7が設けられている。なお、軸部材31は左右一対用意され、その一方の軸部材31に第2の付勢部材7が設けられて、図示しないが、他方の軸部材31には中空部が設けられて配線スペースとなっている。
【0019】
さらに、折り畳み状態維持部材8は、第1の筐体1のヒンジ機構部3と反対側端部上に設けた磁石による磁性部材81と、第2の筐体2の第1のケース21の突出部24と反対側端部に設けた磁石による磁性部材82とから構成される。この折り畳み状態維持部材8は、対をなす磁性部材81・82が互いに吸着し合う極性となっている。
【0020】
図2(a)は折り畳み状態で第2の筐体2が所定の筐体形状となる第1の状態を示している。すなわち、ヒンジ機構部3側の端部において、第1のケース21は第2のケース22に対し第1の付勢部材6により矢印Pで示したスライド方向に付勢されるとともに、第2の筐体2は第1の筐体1に対し第2の付勢部材7により矢印Rで示した開放方向に付勢されている。このとき、ヒンジ機構部3と反対側端部において、第1の筐体1と第2の筐体2は折り畳み状態維持部材8を構成する対をなす磁性部材81・82が同一位置で互いに吸着し合うことでロック状態に保たれる。
【0021】
図2(b)は第2の筐体2が前記所定の筐体形状から変形する第2の状態を示している。すなわち、ヒンジ機構部3側の端部において、第1のケース21を第1の付勢部材6の力に逆らって矢印で示した方向に指で押すと、反対側の折り畳み状態維持部材8において、対をなす磁性部材81・82の位置がずれて吸着によるロック状態が維持できなくなって解除される。
【0022】
図2(c)は第2の筐体2の開放途中の状態を示している。すなわち、折り畳み状態維持部材8によるロック状態が維持できなくなって解除されると、第2の筐体2は第1の筐体1に対し第2の付勢部材7の付勢により矢印Rで示した方向に開放動作する。同時に、第1のケース21が第2のケース22に対し第1の付勢部材6の付勢により矢印Pで示した方向に復帰し、仮想線で示したように、第2の筐体2は開放状態となる。
【0023】
以上、実施形態の携帯電話によれば、第2の筐体2には、第1のケース21と第2のケース22との間に介在し、第1のケース21と第2のケース22をスライドさせて第2の筐体2が所定の筐体形状となる第1の状態と前記所定の筐体形状から変形する第2の状態とに変化しうるスライド部23と、前記第1の状態を維持するように第1のケース21と第2のケース22を付勢する第1の付勢部材6と、を備え、ヒンジ機構部3には、折り畳み状態のときに第2の筐体2を外部操作により前記第1の状態から第2の状態へと変化させると、開放状態をとるように第2の筐体2を付勢する第2の付勢部材7を備えることで、よりコンパクトに「携帯している状態」を実現させながら、より簡単に折り畳み状態から開放状態へと状態を変化させることができる。
【0024】
さらに、前記第1の状態のときに折り畳み状態を維持して、前記第1の状態から第2の状態へと変化させたときには折り畳み状態を維持できなくなる折り畳み状態維持部材8を備えることで、前記第1の状態のときに折り畳み状態を維持しながら、前記第1の状態から第2の状態へと変化させたときには折り畳み状態を維持できなくして、第2の筐体2を開放状態にすることができる。
【0025】
(実施形態2)
図3は図1(a)の矢印A−A線に沿って実施形態2の構成を示したもので、前述した実施形態1と同様、1は第1の筐体、2は第2の筐体、21は第1のケース、22は第2のケース、23はスライド部、24は突出部、3はヒンジ機構部、31は軸部材、6は第1の付勢部材、7は第2の付勢部材、8は折り畳み状態維持部材である。
【0026】
実施形態2は、折り畳み状態維持部材8の構成が実施形態1と異なるだけで、他の構成は実施形態1と同様である。すなわち、実施形態2では、折り畳み状態維持部材8を、図示のように、第1の筐体1のヒンジ機構部3と反対側端部に設けた凹部内の突起による係合部材83と、第2の筐体2の第1のケース21の突出部24と反対側端部に設けた突部の切欠による係合部材84とから構成している。
【0027】
図3(a)は折り畳み状態で第2の筐体2が所定の筐体形状となる第1の状態を示している。このとき、ヒンジ機構部3と反対側端部において、第1の筐体1と第2の筐体2は折り畳み状態維持部材8を構成する対をなす係合部材83・84が同一位置で凹部内の突起と突部の切欠により互いに係合することでロック状態に保たれる。
【0028】
図3(b)は第2の筐体2が前記所定の筐体形状から変形する第2の状態を示している。すなわち、ヒンジ機構部3側の端部において、第1のケース21を第1の付勢部材6の力に逆らって矢印で示した方向に指で押すと、反対側の折り畳み状態維持部材8において、対をなす係合部材83・84の位置がずれて係合によるロック状態が維持できなくなって解除される。
【0029】
従って、図3(c)に示すように、第2の筐体2が開放状態となる。
【0030】
(実施形態3)
図4は図1(a)の矢印A−A線に沿って実施形態3の構成を示したもので、前述した実施形態1と同様、1は第1の筐体、2は第2の筐体、21は第1のケース、22は第2のケース、23はスライド部、24は突出部、3はヒンジ機構部、31は軸部材、6は第1の付勢部材、7は第2の付勢部材、8は折り畳み状態維持部材である。
【0031】
実施形態3は、折り畳み状態維持部材8の構成が実施形態1と異なるだけで、他の構成は実施形態1と同様である。すなわち、実施形態3では、折り畳み状態維持部材8を、図示のように、第1の筐体1のヒンジ機構部3と反対側端部に設けた凹部内のロックピンによる係合部材85と、第2の筐体2の第1のケース21の突出部24と反対側端部に出没可能に設けたラッチによる係合部材86とから構成している。
【0032】
ラッチによる係合部材86は、第2の筐体2の第1のケース21に設ける図示しないボタンを押すと突出動作するもので、図示しないバネの力で自動的に第1のケース21内に収納される。
【0033】
図4(a)は折り畳み状態で第2の筐体2が所定の筐体形状となる第1の状態を示している。このとき、第2の筐体2の第1のケース21に設ける図示しないボタンを押して、ラッチによる係合部材86を突出動作させることにより、ヒンジ機構部3と反対側端部において、第1の筐体1と第2の筐体2は折り畳み状態維持部材8を構成する対をなす係合部材85・86が同一位置で凹部内のロックピンとラッチにより互いに係合することでロック状態に保たれる。
【0034】
図4(b)は第2の筐体2が前記所定の筐体形状から変形する第2の状態を示している。すなわち、ヒンジ機構部3側の端部において、第1のケース21を第1の付勢部材6の力に逆らって矢印で示した方向に指で押すと、反対側の折り畳み状態維持部材8において、対をなす係合部材85・86の位置がずれて係合によるロック状態が維持できなくなって解除される。
【0035】
従って、図4(c)に示すように、第2の筐体2が開放状態となる。このとき、ラッチによる係合部材86は、図示しないバネの力で自動的に第1のケース21内に収納される。
【0036】
(変形例)
なお、以上の実施形態においては、ヒンジ機構部を備える携帯電話としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、スライド機構部を備える携帯電話であっても良い。
さらに、実施形態では、携帯電話としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラ、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書などの機器全てに用いることができる。
また、筐体の形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1 第1の筐体
2 第2の筐体
21 第1のケース
22 第2のケース
23 スライド部
24 突出部
3 機構部
31 軸部材
4 操作部
5 表示部
6 第1の付勢部材
7 第2の付勢部材
8 折り畳み状態維持部材
81 磁性部材
82 磁性部材
83 係合部材
84 係合部材
85 係合部材
86 係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体と、第2の筐体と、前記第1の筐体と第2の筐体との間に介在し、前記第1の筐体を覆うように前記第2の筐体を重ねる折り畳み状態と前記第1の筐体が露出するように前記第2の筐体を移動させる開放状態とをとる機構部と、を備える筐体装置において、
前記第2の筐体は、第1のケースと、第2のケースと、前記第1のケースと第2のケースとの間に介在し、前記第1のケースと第2のケースをスライドさせて前記第2の筐体が所定の筐体形状となる第1の状態と前記所定の筐体形状から変形する第2の状態とに変化しうるスライド部と、前記第1の状態を維持するように前記第1のケースと第2のケースを付勢する第1の付勢部材と、を備え、
前記機構部は、前記折り畳み状態のときに前記第2の筐体を外部操作により前記第1の状態から第2の状態へと変化させると、前記開放状態をとるように前記第2の筐体を付勢する第2の付勢部材を備えることを特徴とする筐体装置。
【請求項2】
前記第1の状態のときに前記折り畳み状態を維持して、前記第1の状態から第2の状態へと変化させたときには前記折り畳み状態を維持できなくなる折り畳み状態維持部材を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の筐体装置。
【請求項3】
前記折り畳み状態維持部材は、前記折り畳み状態のときに前記第1のケースと前記第2のケースとが互いに密接するように配置された磁性部材で構成されることを特徴とする請求項2に記載の筐体装置。
【請求項4】
前記折り畳み状態維持部材は、前記折り畳み状態を維持するための係合部材で構成されることを特徴とする請求項2に記載の筐体装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の筐体装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−171584(P2010−171584A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10822(P2009−10822)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】