説明

筒状熱収縮性ラベルおよびラベル付きプラスチックボトル

【課題】バリア性を保持することができるように改良された筒状熱収縮性ラベルを提供することを目的とする。
【解決手段】筒状熱収縮性ラベル3は、プラスチックボトルの胴部外周に装着される筒状熱収縮性ラベルであって、その主収縮方向9における一方の端部しろ3aを他方の端部しろ3bの上に重ね合わせ、かつその重なり部分が、一方の端部寄りの第1シール部2aと他方の端部寄りの第2シール部2bの2箇所でシールされた基材フィルムを備える。基材フィルムの一方の端部しろ3aの、第1シール部2aと第2シール部2bとの間の領域には、主収縮方向9と直交する方向に第1のミシン目1が刻まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に筒状熱収縮性ラベルに関するものであり、より特定的には、ミシン目から入った気体や光がプラスチックボトル内の内容物を劣化・変質させないように改良された筒状熱収縮性ラベルに関する。この発明はまた、そのような筒状熱収縮性ラベルを装着してなるラベル付きプラスチックボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
PETボトル等のプラスチック製容器はガラス瓶や金属缶と比べて軽量で取り扱い性に優れるため、近年、例えば飲料容器として広く使用されている。一方、プラスチック製容器は酸素や二酸化炭素をガラス瓶や金属缶より通しやすく、内容物が劣化・変質しやすくなっている。また、プラスチック製容器は無色透明であるものが多く、日光や蛍光灯などの光によっても内容物が劣化・変質しやすい状態にある。このようなプラスチック製容器に対して、ラベルにガスバリア性や遮光性を付与して、内容物の劣化・変質を抑制することも可能である。
【0003】
PETボトルに装着されている、そのような筒状熱収縮性ラベルはリサイクルを容易にするために、ラベルを剥がし易くする、切り取り用のミシン目が施されている。しかし、このミシン目から気体や光が容易に通過するため、それを防止するために、例えば、図5(A)に示すように、その主収縮方向における一方の端部しろ3aを、内カス部位4を十分に取って、他方の端部しろ3bの上に重ね合わせ、かつシール部2でシールすることにより、封筒貼りされた筒状熱収縮性ラベル3が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ミシン目1は、ラベル3の一方の端部しろ3aの、内カス部位4の対向する位置に設けられている。
【0004】
このような筒状熱収縮性ラベル3は、図5(B)に示すように、PETボトル5の胴部に装着され、加熱炉を通して熱収縮されることにより、PETボトル5の胴部に密着する。ミシン目1から入ってPETボトル5の内部に向かう光や気体は、内カス部位4に遮られて、PETボトル5内に入らない。その結果、内容物の劣化・変質を抑制することが可能となる。
【0005】
リサイクル時、図5(C)を参照して、ミシン目1の上端部の左右の何れかの部位を指でつまんで引っ張ることにより、ミシン目1に沿ってラベル3が切断され、ラベル3を容器から容易に剥離できる。
【特許文献1】特開2005−350097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、内カス部位4を設ける従来の技術では、図6(図5(B)におけるVI−VI線に沿う断面図)を参照して、PETボトル5の側面に減圧パネル等の窪み部分6がある場合には、窪み部分6で、内カス部位4が熱収縮により縮んで、図のように巻き上がってしまい、バリア性を失い、ミシン目1から入った光・気体がPETボトル5の内部に入り、内容物7の劣化・変質を生じさせるという問題があった。
【0007】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、バリア性を保持することができるように改良された筒状熱収縮性ラベルを提供することを目的とする。
【0008】
この発明の他の目的は、そのような筒状熱収縮性ラベルを装着してなるプラスチックボトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従う筒状熱収縮性ラベルは、容器の胴部外周に装着される筒状熱収縮性ラベルであって、その主収縮方向における一方の端部しろを他方の端部しろの上に重ね合わせ、かつその重なり部分が、上記一方の端部寄りの第1シール部と上記他方の端部寄りの第2シール部の2箇所でシールされた基材フィルムを備える。上記基材フィルムの上記一方の端部しろの、上記第1シール部と第2シール部との間の領域には、上記主収縮方向と直交する方向に第1のミシン目が刻まれている。
【0010】
この発明によれば、上記第1シール部と第2シール部との間の領域における、ラベルの他方の端部しろは、熱収縮により縮んでも、上記第1シール部と第2シール部とにより固定されているので、巻き上がらない。
【0011】
この発明の好ましい実施態様によれば、上記第2シール部の接着強度は前記第1シール部の接着強度以下にされている。すなわち、第2シール部の接着強度≦第1シール部の接着強度の関係になる。
【0012】
この発明の好ましい実施態様によれば、両端部の重なり部分の外側に前記第1のミシン目が施され、内側に第2のミシン目が施されるように、上記基材フィルムの他方の端部しろの、上記第1シール部と第2シール部との間の領域には、上記主収縮方向と直交する方向に第2のミシン目が刻まれている。上記第1のミシン目が刻まれた位置と上記第2のミシン目が刻まれた位置とは、上記主収縮方向において互いにずれている。
【0013】
上記一方の端部しろの裏面を残して、上記基材フィルムの他方の端部しろの裏面から上記一方の端部しろにかけて、表示となる印刷層が形成されている。
【0014】
上記重なり部分の寸法は、上記主収縮方向において20mm〜50mmであるのが好ましい。
【0015】
上記基材フィルムは、光又は気体の透過を遮断する材料で形成されている。例えば、紫外線吸収剤を添加した紫外線カットフィルム(透明)、酸化チタン等の顔料を添加したり、マイクロボイドを形成させた光線遮断フィルム(不透明)、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物等を積層したガスバリア性フィルムが好ましく用いられる。
【0016】
上記第1及び第2シール部は、溶剤でフィルムの表面を溶解することにより、シールされている。溶剤としては、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等のアルカン溶剤、ベンゼン、トルエン、ナフタレン、o―キシレン等の芳香族炭化水素、フラン、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、n−酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メタノール、エタノール、アリルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶剤が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよいし、複数の溶剤を混合して用いてもよい。
【0017】
上記筒状熱収縮性ラベルはプラスチックボトルに装着させて、熱収縮させる。上記プラスチックの胴部の表面には、減圧パネル等の窪み部分が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記第1シール部と第2シール部との間の2枚の基材フィルムが重なり合っている領域は、上記第1シール部と第2シール部とにより固定されているので、熱収縮処理により、ずれることはない。第1のミシン目から入った光又は気体は、該第1のミシン目に対向する内側のラベルにより遮られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
プラスチックボトルに装着させる際の熱収縮処理を行なっても、バリア性を保持することができるように改良された筒状熱収縮性ラベルを得るという目的を、その主収縮方向における一方の端部しろを他方の端部しろの上に重ね合わせ、かつその重なり部分を、上記一方の端部寄りの第1シール部と上記他方の端部寄りの第2シール部の2箇所でシールするということによって実現した。
【0020】
以下、この発明の実施例を、図を用いて説明する。以下の各図において、同一部分には同一の参照番号を付す。
【実施例1】
【0021】
図1は実施例1に係る筒状熱収縮性ラベルの斜視図である。図2は、図1におけるII−II線に沿う断面図である。図2の断面図では、図面の作成便宜上、各層を離して描いているが、これらは密着している。後述する実施例の場合も同様である。
【0022】
これらの図を参照して、実施例1に係る筒状熱収縮性ラベル3は、その主収縮方向9における一方の端部しろ3aを他方の端部しろ3bの上に重ね合わせ、かつその重なり部分が、主収縮方向9において互いに離れた位置に形成された、一方の端部寄りの第1シール部2aと他方の端部寄りの第2シール部2bの2箇所でシールされることにより、封筒貼りされた基材フィルムを備える。第1シール部2aと第2シール部2bは、ともに主収縮方向9と直交する方向に延びるように設けられる。基材フィルムは、光又は気体の透過を遮断する材料で形成されている。基材フィルムの裏面には、この基材フィルムの一方の端部しろ3aの裏面を除いて、印刷層8が形成されている。第1シール部2aと第2シール部2bは、裏面(筒状熱収縮性ラベルの内側となる側)に印刷層を形成した後に、一方の端部しろ3aの裏面の第1シール部2aと第2シール部2bとなる部分に、シール用溶剤を塗布し、その後、一方の端部しろ3aと他方の端部しろ3bを重ね合わせて圧着することにより形成される。
【0023】
なお、本実施例では、一方の端部しろ3aの裏面には印刷が施されていない場合を例示したが、本発明は、これに限られるものでなく、一方の端部しろ3aの第1シール部2aと第2シール部2bの間(シール部は除く)に印刷が施された態様も含む。
【0024】
基材フィルムの一方の端部しろ3aの、第1シール部2aと第2シール部2bとの間の領域には、主収縮方向9と直交する方向にミシン目1が刻まれている。
【0025】
第1シール部2aは、基材フィルムの一方の端部しろ3aの端縁に沿って設けられ、第2シール部2bは、基材フィルムの他方の端部しろ3bの端縁に沿って設けられている。第2シール部2bの接着強度は第1シール部2aの接着強度以下にされている。すなわち、第2シール部の接着強度≦第1シール部の接着強度の関係になる。
【0026】
接着強度は2.0N/10mm以上であれば、実使用上問題はない。2.0〜4.0N/10mmの接着強度であれば、手で剥がすことは可能である。4.0N/10mmを超えると手で剥がすのは難しくなる。従って、第1シール部の接着強度は、2.0〜10.0N/10mmに調整され、第2シール部の接着強度は2.0〜4.0N/10mmに調整される。接着強度の調整は、基材フィルムを溶解させる溶剤に対して、基材フィルムを溶解させない溶剤を添加し溶解度を調整するか、あるいは溶剤の塗布量を少なくすることにより行なう。
【0027】
主収縮方向9において、重なり部分の寸法は、20mm〜50mmである。
【0028】
図3(A)を参照して、筒状熱収縮性ラベル3は、PETボトル5の胴部に装着され、加熱炉に通されて熱収縮し、PETボトル5の胴部外周に密着する。図3(B)は図3(A)におけるB−B線に沿う断面図である。本実施例によれば、第1のシール部2aと第2シール部2bとの間の領域における、ラベルの他方の端部しろ3bは、第1シール部2aと第2シール部2bにより固定されている。例えば、PETボトルの減圧パネル等の窪み部分に、ラベルの他方の端部しろ3bがあっても、熱収縮処理により他方の端部しろのみが大きく収縮して、縮み上がってしまうことはない。ミシン目1から入った光・気体は、ラベルの他方の端部しろ3bにより遮られ、PETボトル5の内部に進入せず、内容物7の劣化・変質を生じさせない。
【0029】
ボトルからラベルを剥がす際、ミシン目1の上端部の左右の何れかの部位を指でつまんで引っ張ることにより、ミシン目1に沿ってラベル3が切断される。その後、一方の端部しろ3aの第2シール部2b側をラベル3の主収縮方向に引っ張ることにより、第2シール部2bが剥がれて、ラベル3をプラスチックボトルから容易に剥離できる。
【実施例2】
【0030】
上記実施例1では、第1シール部の接着強度が、2.0〜10.0N/10mmに調整され、第2シール部の接着強度が2.0〜4.0N/10mmに調整されている場合を例示したが、この発明はこれに限られるものではない。本実施例は、第1シール部、第2シール部共に4.0N/10mmを超える場合にも適用できる。
【0031】
図4(A)は実施例2に係る筒状熱収縮性ラベルの斜視図であり、図4(B)は、そのB−B線に沿う断面図である。実施例1と異なる点は、第2シール部2bの接着強度が弱くされていない点と、ラベルの他方の端部しろ3bの、第1シール部2aと第2シール部2bとの間の領域にも、主収縮方向9と直交する方向に第2のミシン目1bが刻まれている点である。第1のミシン目1aが刻まれた位置と第2のミシン目1bが刻まれた位置とは、主収縮方向9において互いにずれている。
【0032】
図4(C)を参照して、本実施例によれば、第1シール部2aと第2シール部2bとの間の領域における、他方の端部しろ3bは、熱収縮により縮んでも、第1シール部2aと第2シール部2bとにより固定されている。また、第1のミシン目1aが刻まれた位置と第2のミシン目1bが刻まれた位置とは、主収縮方向9において互いにずれているので、第1のミシン目1aから入った光・気体は、ラベルの他方の端部しろ3bにより遮られ、PETボトル5の内部に到達しない。
【0033】
ボトルからラベルを剥がす際、第1のミシン目1aの上端部の左右の何れかの部位を指でつまんで引っ張ることにより、第1のミシン目1aに沿ってラベルの一方の端部しろ3aが切断される。その後、第2のミシン目1bの上端部の左右の何れかの部位を指でつまんで引っ張ることにより、第2のミシン目1bに沿ってラベルの他方の端部しろ3bが切断され、ラベルをPETボトル5から容易に剥離できる。
【0034】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明にかかる筒状熱収縮性ラベルによれば、プラスチックボトルから容易に剥がすことができ、かつバリア性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1に係る筒状熱収縮性ラベルの斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線に沿う概念的断面図である。
【図3】(A) 実施例1に係る筒状熱収縮性ラベルをPETボトルに装着したときの斜視図である。 (B) 図3(A)におけるB−B線に沿う断面図である。
【図4】(A) 実施例2に係る筒状熱収縮性ラベルの斜視図である。 (B) 図4(A)におけるB−B線に沿う概念的断面図である。 (C) 実施例2に係る筒状熱収縮性ラベルをPETボトルに装着したときの、胴部の概念的断面図である。
【図5】(A) 従来の筒状熱収縮性ラベルの斜視図である。 (B) 従来の筒状熱収縮性ラベルを装着したPETボトルの斜視図である。 (C) PETボトルから熱収縮性ラベルをミシン目で剥がす様子を示した図である。
【図6】従来の筒状熱収縮性ラベルを装着したPETボトルの問題点を示す、胴部の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ミシン目
1a 第1ミシン目
1b 第2ミシン目
2 シール部
2a 第1シール部
2b 第2シール部
3 筒状熱収縮性ラベル
3a 一方の端部しろ
3b 他方の端部しろ
4 内カス部位
5 PETボトル
6 窪み部分
7 内容物
8 印刷層
9 主収縮方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の胴部外周に装着される筒状熱収縮性ラベルであって、
その主収縮方向における一方の端部しろを他方の端部しろの上に重ね合わせ、かつその重なり部分が、前記一方の端部寄りの第1シール部と前記他方の端部寄りの第2シール部の2箇所でシールされた基材フィルムを備え、
前記基材フィルムの前記一方の端部しろの、前記第1シール部と第2シール部との間の領域には、前記主収縮方向と直交する方向に第1のミシン目が刻まれている、筒状熱収縮性ラベル。
【請求項2】
前記第2シール部の接着強度は前記第1シール部の接着強度以下にされている、請求項1に記載の筒状熱収縮性ラベル。
【請求項3】
両端部の重なり部分の外側に前記第1のミシン目が施され、内側に第2のミシン目が施されるように、前記基材フィルムの前記他方の端部しろの、前記第1シール部と第2シール部との間の領域に、前記主収縮方向と直交する方向に前記第2のミシン目が刻まれており、
前記第1のミシン目が刻まれた位置と前記第2のミシン目が刻まれた位置とは、前記主収縮方向において互いにずれている、請求項1に記載の筒状熱収縮性ラベル。
【請求項4】
前記一方の端部しろの裏面を残して、前記基材フィルムの前記他方の端部しろの裏面から前記一方の端部しろにかけて印刷層が形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の筒状熱収縮性ラベル。
【請求項5】
前記重なり部分の寸法は、前記主収縮方向において20mm〜50mmである、請求項1から4のいずれか1項に記載の筒状熱収縮性ラベル。
【請求項6】
前記基材フィルムは、光又は気体の透過を遮断する材料で形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の筒状熱収縮性ラベル。
【請求項7】
前記第1及び第2シール部は、溶剤でシールされている、請求項1から6のいずれか1項に記載の筒状熱収縮性ラベル。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の筒状熱収縮性ラベルを熱収縮させてプラスチックボトルに装着してなるラベル付きプラスチックボトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−83877(P2009−83877A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253952(P2007−253952)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】