説明

筒状紙容器

【課題】容器の加工工程において引っ張りや衝撃などの応力が容器四角に加わった場合であっても、クラックやデラミネーション等の発生を防止し、内容物を長期間保存してもガスバリア性が維持できる高ガスバリア性を有し、容器としての剛性、落下強度に優れ、使用後の廃棄処理が容易な、高機能性液体紙容器としての実用性の高い筒状紙容器を提供する。
【解決手段】容器を構成する胴部1、蓋体2および底体3の材料として、表面にヒートシール性樹脂層を設けた紙層を基材とし、この基材の内側に、少なくともガスバリア材として無機酸化物からなる蒸着フィルムを配置し、そのガスバリア材の内側にヒートシール性樹脂層を設けた積層材料を用いて、エッジプロテクト加工を施して筒状に成形した胴部1と、蓋体2および底体3とで構成されてなる筒状紙容器の四角のR寸法が10mm以上有する筒状紙容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、アルコール類等を内容物とする紙層を主体とした筒状紙容器に関するもので、詳しくは、透明ガスバリア材を含む胴部、蓋体および底体からなる、特に、容器の加工工程において引っ張りや衝撃などの応力が容器四角に加わった場合であっても、クラックやデラミネーション等の発生を防止し、内容物を長期間保存してもガスバリア性が維持できる高ガスバリア性を有する筒状紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙層を主体とし、最内層、および最外層にヒートシール性樹脂層を設けた紙積層材料を用いた紙容器は、缶、瓶に代わる容器として使用されている。これら紙容器の内容物の保存性を高めるため、積層構成中にガスバリア材を配置した構成がとられている。このガスバリア材の代表的な材料として、アルミニウム箔が挙げられる。しかし、積層構成中にアルミニウム箔が含まれると、使用後の分別処理が困難になり、またそのまま焼却処理もできないなどの課題があった。このアルミニウム箔に代わる、ガスバリア材として、酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機化合物蒸着層を設けた蒸着フィルムからなる透明ガスバリア材が用いられるようになった。
【0003】
しかしながら、上記のような酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機化合物蒸着層を設けた蒸着フィルムからなる透明ガスバリア材を配置した構成の紙容器は、容器の加工工程において、特に、容器形状が四角柱のような場合は、引っ張りや衝撃などの応力が容器四角加わり、蒸着層にクラックが生じたり、デラミネーション等が発生することで、ガスバリア性が低下する問題があった。従来の蒸着フィルムからなる透明ガスバリア材を配置した構成の紙容器は、内容物を長期間保存する用途の紙容器としてはガスバリア性が不十分であった。そこで、内容物を長期間保存してもガスバリア性が維持できる高ガスバリア性を有し、強度の点でも優れる実用性の高い高機能性液体紙容器の開発が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の技術的背景を考慮してなされてもので、特に、容器の加工工程において引っ張りや衝撃などの応力が容器四角に加わった場合であっても、クラックやデラミネーション等の発生を防止し、内容物を長期間保存してもガスバリア性が維持できる高ガスバリア性を有し、容器としての剛性、落下強度に優れ、使用後の廃棄処理が容易な、高機能性液体紙容器としての実用性の高い筒状紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、すなわち、
請求項1に係る発明は、
容器を構成する胴部、蓋体および底体の材料として、表面にヒートシール性樹脂層を設けた紙層を基材とし、この基材の内側に、少なくともガスバリア材として無機酸化物からなる蒸着フィルムを配置し、そのガスバリア材の内側にヒートシール性樹脂層を設けた積層材料を用いて、エッジプロテクト加工を施して筒状に成形した胴部と、蓋体および底体とで構成されてなる筒状紙容器の四角のR寸法が10mm以上有することを特徴とする筒状紙容器である。
【0006】
請求項2に係る発明は、
容器を構成する胴部、蓋体および底体の材料として、表面にヒートシール性樹脂層を設けた紙層を基材とし、この基材の内側に、中間層として熱可塑性樹脂層、ガスバリア材と
して無機酸化物からなる蒸着フィルムをこの順に配置し、そのガスバリア材の内側にヒートシール性樹脂層を設けた積層材料であることを特徴とする請求項1記載の筒状紙容器である。
【0007】
請求項3に係る発明は、
前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1または2記載の筒状紙容器である。
【0008】
請求項4に係る発明は、
前記ガスバリア材の無機酸化物からなる蒸着フィルムのその蒸着面に水性ガスガスバリア被覆層を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の筒状紙容器である。
【0009】
請求項5に係る発明は、
前記水性ガスバリア被覆層が、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシドおよびその加水分解物、または(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなることを特徴とする請求項4記載の筒状紙容器である。
【0010】
<作用>
本発明の筒状紙容器を構成する胴部、蓋体、底体に使用する基材の内側に無機酸化物からなる蒸着層を設けた蒸着フィルムからなる透明ガスバリア材を用い、さらに、上記の無機酸化物からなる蒸着層上に水性ガスバリア被覆層を設けることができる構成であって、容器の四角のR寸法を10mm以上とすることで、容器の加工工程におけるクラックやデラミネーションの発生を防止し、内容物を長期間保存した場合であっても酸素ガス等に対する高ガスバリア性が維持することができる。また、筒状紙容器としたときの剛性と共に、落下強度が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の筒状紙容器は以上のような構成であることから、容器の加工工程におけるクラックやデラミネーションの発生を防止し、内容物を長期間保存してもガスバリア性が維持できる高ガスバリア性を有する、高機能性液体紙容器としての実用性の高い筒状紙容器を提供することができる。また、容器としての剛性、落下強度に優れ、自動販売機等のように一定の剛度、落下強度を有する容器として使用することが可能となった。
【0012】
さらに、従来の紙容器の内容物の保存性を高めるため、積層構成中にアルミニウム箔からなるガスバリア材を配置した構成の従来の紙容器の使用後の分別処理、焼却処理等の問題が解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例としての実施態様について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の筒状紙容器の一例を説明する説明図である。図2は、本発明の筒状紙容器の胴部、蓋体、底体に用いる積層材料の構成の一例を示す断面図である。図3は、本発明の筒状紙容器の胴部、蓋体、底体に用いる積層材料の構成の他の例を示す断面図である。図4は、本発明の筒状紙容器の胴部におけるエッジプロテクト加工において用いられるエッジプロテクトテープの構成の一例を示す断面図である。図5は、本発明の筒状紙容器の一実施例としての寸法を示す上面図および側面図である。図6は本発明の筒状紙容器の胴部におけるエッジプロテクト加工を説明する説明図である。
【0015】
図1において、本発明の一実施例としての筒状紙容器は、四角のR寸法が10mm以上有することを特徴とするもので、エッジプロテクト加工を施して筒状に成形した胴部1、この胴部の上下に蓋体2、および底体3を配置し、蓋体2、および底体3の端縁を折返した折返し部を、胴部1の両端をそれぞれ折曲げて、重ね合わせ、ヒートシールにより一体化した容器である。ここで、蓋体2には部に飲み口4を設け、この飲み口4を封止材料5で被覆密封している。
【0016】
本発明の筒状紙容器とは、四角柱で四角が角丸状、または円筒状のものを言う。
【0017】
図2において、本発明における筒状紙容器の胴部、蓋体、底体に用いる積層材料の一例として、10、16はヒートシール性樹脂層であり、11は紙層、12は中間層としてのポリエチレン(PE)等の熱可塑性フィルム基材、13は蒸着を施すフィルム基材、15はフィルム基材13上に無機酸化物からなる蒸着層14を形成してなる蒸着フィルムからなる透明ガスバリア材である。そして、図の上側が容器としたときの容器外側、図の下側が容器としたときの容器内側となるように配置される。
【0018】
また、図3において、本発明における筒状紙容器の胴部、蓋体、底体に用いる積層材料の他の例として、10、16はヒートシール性樹脂層であり、11は紙層、12は中間層としてのポリエチレン(PE)等の熱可塑性フィルム基材、13は蒸着を施すフィルム基材、15はフィルム基材13上に無機酸化物からなる蒸着層14を形成し、この無機酸化物からなる蒸着層14上に、さらに、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシドおよびその加水分解物、または(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなる水性ガスバリア被覆層17を設けた構成の本発明の筒状紙容器を構成する積層材料の例を示したものである。そして、図の上側が容器としたときの容器外側、図の下側が容器としたときの容器内側となるように配置される。
【0019】
本発明の筒状紙容器の胴部1は、図7(a)に示すように、容器内面となる胴部積層材料の端面部分6にエッジプロテクト加工を施して筒状に成形されており、このエッジプロテクト加工に使用するエッジプロテクトテープの一例として、図4において、10、16はヒートシール性樹脂層であり、13は蒸着を施すフィルム基材、15はフィルム基材13上に無機酸化物からなる蒸着層14を形成してなるエッジプロテクトテープである。
【0020】
上記の構成のエッジプロテクトテープを用いて、図7(b)に示すように、容器胴部1に用いる積層材料1aの内容物に接する端面1bを覆うようにしてエッジプロテクトテープ7を積層して設ける。
【0021】
上記の胴部、蓋体、底体を構成する積層材料を用いて、本発明の筒状紙容器の一実施例としての寸法を示す上面図および側面図を、図5に示すように、エッジプロテクト加工を施して筒状に成形した胴部1、この胴部の側面が54mm、高さが108mm、容器四角のR寸法が10mm以上で、容器上下に蓋体2、および底体3を配置し、蓋体2、および底体3の端縁を折返した巾が7mmの折返し部のを、胴部1の両端をそれぞれ折曲げて、重ね合わせ、ヒートシールにより一体化した容器である。ここで、蓋体2には部に飲み口4を設け、この飲み口4を封止材料5で被覆密封している。
【0022】
本発明で用いられる中間層としての熱可塑性フィルム基材12および蒸着を施すためのフィルム基材13は、フィルム状のものであって、通常包装材料として用いられるプラスチックフィルムが使用できる。特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレートフイルム(PET)、ポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルム等のポリエステルフイルム、ナイロン66フイルム、
ナイロン6フイルム、メタキシリデンジアミン共重合ポリアミドフイルム等のポリアミドフイルム、ポリカーボネートフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリエチレンフイルム(PE)、エチレン−プロピレン共重合体フイルム等のポリオレフィンフイルム、ポリイミドフイルム、ポリアミドイミドフイルム、ポリビニルアルコールフイルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フイルム、ポリフェニレンフイルム、ポリスルフォンフイルム、ポリフェニレンスルフィッドフイルム、等が挙げられる。その中でも耐熱性、強度、蒸着適性等の点からポリエステルフイルム、ポリアミドフイルムがより好ましく使用できる。これらフイルムの厚さは特に限定されるものではないが、6μm〜300μm程度が好ましく、可撓性からして、より好ましくは6〜25μmである。これらのプラスチックフィルムは、単独で使用してもよく、積層して使用してもよいものである。
【0023】
上記のフィルム基材12,13には、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤など公知の添加剤を、必要に応じて適宜添加される。
【0024】
さらに、蒸着を施すためのフィルム基材13の蒸着を施す表面を必要に応じて、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスもしくは窒素ガス等を用いて低温プラズマ処理、グロ−放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理を任意に施すことができる。上記の表面前処理は、蒸着層形成する前に別工程で実施してもよく、また、例えば、低温プラズマ処理やグロ−放電処理等による表面処理の場合は、蒸着層を形成する前処理としてインライン処理により前処理を行うことができ、このような場合は、その製造コストを低減することができるという利点がある。上記の密着性を改善する方法として、その他、例えば、フィルム基材表面に、予め、プライマ−コ−ト剤層、アンダ−コ−ト剤層、あるいは、蒸着アンカ−コ−ト剤層等を任意に形成することもできる。上記の前処理のコ−ト剤層としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。また、上記において、コ−ト剤層の形成法としては、例えば、溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型等のコ−ト剤を使用し、ロ−ルコ−ト法、グラビアロ−ルコ−ト法、キスコ−ト法、その他等のコ−ト法を用いてコ−トすることができる。コロナ処理、アンカーコート処理等の表面改質を行い、蒸着層の密着性を向上させることも可能である。
【0025】
本発明における無機酸化物からなる蒸着層14は、珪素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫、マグネシウムなどの酸化物、窒化物、弗化物の単体、あるいはそれらの複合物からなり、その中では、特に酸化アルミニウム及び酸化珪素が好ましい。
【0026】
また、無機酸化物からなる蒸着層14の厚さは、5〜300nmの範囲が好ましい。薄膜層の厚さは、用いられる無機化合物の種類、構成等により最適条件が異なるが、その値は適宜選択される。膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、10〜150nmの範囲内であることが特に好ましい。
【0027】
上記の無機酸化物からなる蒸着層14を形成する方法としては、種々在り、通常の真空蒸着法により形成することができるが、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることもできる。但し生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式が好ましく、薄膜と基材の密着成及び薄膜の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。また、蒸着膜の透明性を上げるために蒸着の際、酸素ガスなど吹き込んだりする反応蒸着を行ってもよい。
【0028】
また、本発明の筒状紙容器の胴部、蓋体、底体に用いる積層材料として、図3に示す蒸着フィルム15の蒸着層14上に水性ガスバリア被覆層17を設けた構成とすることで、さらにガスバリア性を向上させることができる。この水性ガスバリア被覆層17は、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシドおよびその加水分解物、または(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤からなる。水溶性高分子と塩化錫を水系(水あるいは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、あるいはこれに金属アルコキシドを直接、あるいは予め加水分解させるなどの処理を行ったものを混合した溶液を、蒸着フィルム16の無機酸化物からなる蒸着層14にコーティング、加熱乾燥し、形成したものである。
【0029】
本発明における水性ガスバリア被覆層17のコーティング剤は、水溶性高分子はポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。特にポリビニルアルコール(PVA)を本発明のガスバリア性積層体のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れる。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから、酢酸基が数%しか残存していない完全けん化PVAまでを含み、特に限定されるものではない。
【0030】
また、塩化錫は塩化第一錫(SnCl2)、塩化第二錫(SnCl4)、あるいはそれらの混合物であってもよく、無水物でも水和物でも用いることができる。
【0031】
さらに、金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン〔Si(OC254〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C373〕などの一般式、
M(OR)n
(M:Si、Ti、Ai、Zr等の金属、R:CH3、C25等のアルキル基)で表せるものである。中でも、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0032】
上述した各成分を単独またはいくつかを組み合わせてコーティング剤に加えることができ、さらにコーティング剤のガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、あるいは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤など公知の添加剤を加えることができる。
【0033】
例えば、コーティング剤に加えられるイソシアネート化合物は、その分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有するものであり、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート(TTI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)などのモノマー類と、これらの重合体、誘導体などがある。
【0034】
コーティング剤の塗布方法には、通常用いられる、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法など従来公知の手段が用いられる。皮膜の厚さはコーティング剤の種類によって異なるが、乾燥後の厚さが約0.01〜100μmの範囲であればよいが、50μm以上では、膜にクラックが生じやすくなるため、0.01〜50μmとすることが望ましい。
【0035】
次に、本発明で用いられるヒートシール樹脂層10,16を構成するヒートシール樹脂としては、押し出し成形が可能な熱可塑性樹脂であり、かつ、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレ、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アク
リル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマ−、ポリエチレン若しくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸、その他等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、その他等の樹脂の1種ないしそれ以上からなる樹脂を使用することができる。
【0036】
上記のような樹脂の中でも、特に、線状(直鎖状)低密度ポリエチレンを使用することが好ましいものである。上記の線状低密度ポリエチレンは、粘着性を有することから破断の伝搬が少なく耐衝撃性を向上させるという利点があるものであり、また、内層は常時内容物に接触していることから、耐環境ストレスクラッキング性の劣化を防止するためにも有効なものであ
本発明の筒状紙容器の胴部1、蓋体2および底体3に用いる積層材料の積層方法としては、例えば、ラミネ−ト用接着剤によるラミネ−ト用接着剤層を介して積層するドライラミネ−ション法、あるいは、溶融押し出し接着性樹脂による溶融押し出し樹脂層を介して積層する押し出しラミネ−ション法等で行うことができる。上記において、ラミネ−ト用接着剤としては、例えば、1液、あるいは、2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエ−テル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他等の溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型等のラミネ−ト用接着剤を使用することができる。上記のラミネ−ト用接着剤のコ−ティング法としては、例えば、ダイレクトグラビアロ−ルコ−ト法、グラビアロ−ルコ−ト法、キスコ−ト法、リバ−スロ−ルコ−ト法、フォンテン法、トランスファ−ロ−ルコ−ト法、その他等の方法で塗布することができ、そのコ−ティング量としては、0.1〜10g/m2(乾燥状態)位、より好ましくは、1〜5g/m2(乾燥状態)位が望ましい。
【0037】
なお、本発明においては、上記のラミネ−ト用接着剤には、例えば、シランカップリング剤等の接着促進剤を任意に添加することができる。次にまた、上記において、溶融押し出し接着性樹脂としては、前述の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂を同様に使用することができる。本発明において、溶融押し出し接着性樹脂としては、特に、低密度ポリエチレン、特に、線状低密度ポリエチレン、酸変性ポリエチレンを使用することが好ましいものである。上記の溶融押し出し接着性樹脂による溶融押し出し樹脂層の膜厚としては、5〜100μm位、より好ましくは、10〜50μm位が望ましい。
【0038】
なお、本発明において、上記の積層を行う際に、より強固な接着強度を得る必要がある場合には、必要ならば、例えば、アンカ−コ−ト剤等の接着改良剤等をコ−トすることもできる。上記のアンカ−コ−ト剤としては、具体的には、例えば、アルキルチタネ−ト等の有機チタン系アンカ−コ−ト剤、イソシアネ−ト系アンカ−コ−ト剤、ポリエチレンイミン系アンカ−コ−ト剤、ポリブタジエン系アンカ−コ−ト剤、その他等の水性あるいは油性等の各種のアンカ−コ−ト剤を使用することができる。本発明においては、上記のアンカ−コ−ト剤を、例えば、ロ−ルコ−ト、グラビアコ−ト、ナイフコ−ト、デップコ−ト、スプレイコ−ト、その他のコ−ティング法でコ−ティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥して、アンカ−コ−ト剤層を形成することができる。上記のおいて、アンカ−コ−ト剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2(乾燥状態)位が望ましい。
【0039】
また、本発明の筒状紙容器を構成する容器外側となる紙層表面に、通常、印刷層を設ける。この印刷層は、容器など包装体として実用的に用いるために形成されるものである。例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系等の従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなるインキにより構成される層である。この印刷により、文字、絵柄等が形成されている。形成方法としては、たとえばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シ
ルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアーコート等の周知の塗布方式を用いることができる。印刷層の乾燥膜厚(固形分)は0.1〜2.0μmでよい。
【0040】
上記の中でも、印刷は食品包装材料用インキに関する自主規制基準適合したインキを使用して、グラビア印刷方式を採用するのが好ましい。
【0041】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【実施例1】
【0042】
まず、本発明の筒状紙容器を構成する胴部、蓋体、底体およびエッジプロテクト加工に使用するエッジプロテクトテープについて各々の積層材料を作成した。
【0043】
<胴部積層材料>
外側:ヒートシール樹脂層(PE;20μm)/紙層(紙;坪量300g/m2)/中間層(PE;30μm)/(酸化アルミニウム/PET;12μm)蒸着フィルム層(総厚15μm)/ヒートシール樹脂層(PE;60μm):内側からなる構成の胴部積層材料を作成した。
【0044】
<蓋体積層材料>
外側:ヒートシール樹脂層(PE;40μm)/紙層(紙;坪量250g/m2)/中間層(PE;30μm)/(酸化アルミニウム/PET;12μm)蒸着フィルム層(総厚15μm)/ヒートシール樹脂層(PE;60μm):内側からなる構成の胴部積層材料を作成した。
【0045】
<底体積層材料>
外側:ヒートシール樹脂層(PE;40μm)/紙層(紙;坪量200g/m2)/中間層(PE;20μm)/(酸化アルミニウム/PET;12μm)蒸着フィルム層(総厚15μm)/ヒートシール樹脂層(PE;60μm):内側からなる構成の胴部積層材料を作成した。
【0046】
<エッジプロテクトテープ積層材料>
ヒートシール樹脂層(PE;40μm)/(酸化アルミニウム/PET;12μm)蒸着フィルム層(総厚15μm)/ヒートシール樹脂層(PE;40μm)
上記積層材料を、エッジプロテクト加工を施して筒状に成形した胴部、この胴部の上下に蓋体、および底体を配置し、蓋体、および底体の端縁を折返した折返し部を、胴部の両端をそれぞれ折曲げて、重ね合わせ、ヒートシールにより一体化した容器四角のR寸法が20mmの250cc容量の本発明の筒状紙容器を作成した。
【実施例2】
【0047】
実施例1において、容器四角のR寸法を16mmに変更した以外は実施例1と同様にして本発明の筒状紙容器を作成した。
【実施例3】
【0048】
実施例1において、容器四角のR寸法を14mmに変更した以外は実施例1と同様にして本発明の筒状紙容器を作成した。
【実施例4】
【0049】
実施例1において、容器四角のR寸法を10mmに変更した以外は実施例1と同様にして本発明の筒状紙容器を作成した。
【実施例5】
【0050】
本発明の筒状紙容器と性能を比較するために、実施例1において、容器四角のR寸法を8mmに変更した以外は実施例1と同様にして比較例としての筒状紙容器を作成した。
【0051】
実施例1〜5で得られた筒状紙容器の酸素透過度を下記の測定方法に基づいて酸素ガスバリア性を評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
<酸素透過度測定方法>
酸素透過率測定装置(モダンコントロール社、OXTRAN―2/20)を用いて、25℃―70%RH中の雰囲気下で測定した。
【0053】
【表1】

表1には、各実施例で得られた筒状紙容器の容器四角のR寸法および酸素透過度を記してある。
【0054】
表1より、実施例1〜4で得られた本発明の筒状紙容器の酸素透過度と、本発明の筒状紙容器の酸素透過度と比較するための比較例としての実施例5で得られた筒状紙容器の酸素透過度とを比較してみると、本発明の筒状紙容器の酸素透過度が、0.005〜0.009cc/pack・day・0.02MPaであるのに対し、比較例としての容器の四角R寸法が8mmの筒状紙容器の酸素透過度は0.035〜0.076cc/pack・day・0.02MPaであり、本発明の筒状紙容器は酸素ガスバリア性に優れている。また、比較例としての筒状紙容器は、成形性の点でも問題があった。このことは、容器の四角R寸法が10mm以上という条件を満たさない筒状紙容器は、容器の加工工程で、引っ張りや衝撃などの応力が加わり、クラックやデラミネーション等が発生することで、ガスバリア性が低下するものと考えられる。これに対して、本発明の筒状紙容器は四角R寸法を10mm以上とすることで、容器四角にかかる応力が緩和されてクラックやデラミネーション等の発生を防止でき、優れた酸素ガスガスバリア性を発現するものと考えられる。したがって、本発明の筒状紙容器は、内容物を長期間保存してもガスバリア性が維持できる高ガスバリア性を有し、容器としての剛性、落下強度に優れ、使用後の廃棄処理が容易な、高機能性液体紙容器としての実用性の高い筒状紙容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の筒状紙容器の一例を示す説明図である。(a)は、筒状紙容器の斜視図である。(b)は、(a)に示した筒状紙容器の上面の蓋体部分を拡大して示した拡大上面図である。
【図2】本発明の筒状紙容器の胴部、蓋体、底体に用いる積層材料の構成の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の筒状紙容器の胴部、蓋体、底体に用いる積層材料の構成の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明の筒状紙容器におけるエッジプロテクト加工に用いるエッジプロテクトテープの構成の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の筒状紙容器の一実施例としての寸法を示す上面図(a)および側面図(b)である。
【図6】本発明の筒状紙容器におけるエッジプロテクト加工を説明する説明図である。(a)は、エッジプロテクト加工を施した容器に示す斜視図である。(b)は、エッジプロテクト加工部分を拡大して示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1・・・胴部
1a・・・胴部積層材料
1b・・・胴部積層材料端面
2・・・蓋体
3・・・底体
4・・・飲み口
5・・・封止材料
6・・・エッジプロテクト加工部
7・・・エッジプロテクトテープ
10、16・・・ヒートシール樹脂層
11・・・紙層
12・・・中間層
13・・・蒸着を施すフィルム基材層
14・・・無機酸化物からなる蒸着層
15・・・蒸着フィルム
17・・・水性ガスバリア被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を構成する胴部、蓋体および底体の材料として、表面にヒートシール性樹脂層を設けた紙層を基材とし、この基材の内側に、少なくともガスバリア材として無機酸化物からなる蒸着フィルムを配置し、そのガスバリア材の内側にヒートシール性樹脂層を設けた積層材料を用いて、エッジプロテクト加工を施して筒状に成形した胴部と、蓋体および底体とで構成されてなる筒状紙容器の四角のR寸法が10mm以上有することを特徴とする筒状紙容器。
【請求項2】
容器を構成する胴部、蓋体および底体の材料として、表面にヒートシール性樹脂層を設けた紙層を基材とし、この基材の内側に、中間層として熱可塑性樹脂層、ガスバリア材として無機酸化物からなる蒸着フィルムをこの順に配置し、そのガスバリア材の内側にヒートシール性樹脂層を設けた積層材料であることを特徴とする請求項1記載の筒状紙容器。
【請求項3】
前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1または2記載の筒状紙容器。
【請求項4】
前記ガスバリア材の無機酸化物からなる蒸着フィルムのその蒸着面に水性ガスバリア被覆層を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の筒状紙容器。
【請求項5】
前記水性ガスバリア被覆層が、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシドおよびその加水分解物、または(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなることを特徴とする請求項4記載の筒状紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−27696(P2006−27696A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211198(P2004−211198)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】