説明

管体の抜け止め装置および方法

【課題】地盤に圧入したケーシングロッドに挿入した管体が、ケーシングロッドとともに引き抜かれることを、確実に防止できる管体の抜け止め装置および方法を提供する。
【解決手段】レール部8と、レール部8に沿って移動するキャリッジ4と、キャリッジ4に一端部が取り付けられる給水配管7と、給水配管7に連通するようにキャリッジ4に設けられるとともにケーシングロッド12が着脱自在に取り付けられるジョイント5とを有する削孔機2を用いて、地盤に圧入したケーシングロッド12に外管13を挿入した後、押えロッド9をジョイント5に挿通させて、その先端部を外管13の後端部に当接させるとともに、押えロッド5の後端部を削孔機2に固定して、外管13の地盤上側への移動を規制した状態にして、ケーシングロッド12をジョイント5に取り付け、次いで、キャリッジ4を後退移動させてケーシングロッド12を地盤上に引き抜く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体の抜け止め装置および方法に関し、さらに詳しくは、ケーシングロッドを地盤から引き抜く際に、ケーシングロッドに挿入した管体がケーシングロッドとともに引き抜かれることを、確実に防止できる管体の抜け止め装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤を強化するために、外管と内管とからなる二重管を用いて地盤改良薬液を地盤に注入する工法が知られている。この地盤改良工法では、ケーシングロッドによって地盤を削孔した後、削孔に内設されたケーシングロッドに外管を挿入してからケーシングロッドを地盤上に引き抜いて、外管を地盤中に残して定着させた状態にする。次いで、この外管に内管を挿入して、内管を通じて地盤改良薬液を供給して、外管に設けた吐出口から地盤改良薬液を地盤に浸透注入させる。外管の先端部には、ケーシングロッドを引き抜く際にケーシングロッドとともに外管が引き抜かれないようにアンカーが設けられている。
【0003】
このアンカーは種々のタイプが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1では、外管外周側に広がるバネ翼(羽根部材)で形成されたアンカーが開示されている。特許文献2では、折りたたみ自在の羽根部材を有するアンカー(図1−A参照)、錘を用いたアンカー(図1−B参照)、流体を注入して膨張する袋体を用いたアンカー(図1−C参照)が例示されている。引き抜き抵抗を大きくするには、外管外周側に広がる羽根部材を有するアンカーや膨張する袋体を用いたアンカーが優れている。
【0004】
これらのアンカーを機能させるためには、まず、アンカーをケーシングロッドの先端から突出させて地盤中に露出させた状態にする必要がある。そこで、ケーシングロッドに外管を挿入した後、ケーシングロッドをある程度上方に引き上げることにより、外管の先端部に取り付けたアンカーをケーシングロッドの先端から突出させるようにしている。しかしながら、最初にケーシングロッドを上方に引き上げる段階では、アンカーは機能していないため、この時に外管がケーシングロッドとともに引き上げられてしまうことがあった。
【0005】
また、水圧を利用してドレーン材の共上がり防止する装置が提案されている(特許文献3参照)。この装置では、地盤に打設したケーシング管の上に、水が充填される筒体等が設置される。ドレーン材を下方に加圧するには、筒体に充填された水の水圧を利用するので、十分な加圧力を得るためには、筒体を相応の容量にする必要がある。そのため、装置をコンパクト化するには不利であり、コンパクト化しようとすれば複雑な構造になる。さらに、水の充填量が足りなければドレーン材の共上がりを防止することができないため、安定性に欠けるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−131715号公報
【特許文献2】特開2005−42426号公報
【特許文献3】特開平10−121456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ケーシングロッドを地盤から引き抜く際に、ケーシングロッドに挿入した管体がケーシングロッドとともに引き抜かれることを、確実に防止できる管体の抜け止め装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の管体の抜け止め装置は、ケーシングロッドを地盤に圧入し、その後、地盤に圧入したケーシングロッドを地盤上に引き抜く削孔機と、地盤に圧入されたケーシングロッドに挿入された管体の後端部に当接する押えロッドとを備えた管体の抜け止め装置であって、前記削孔機がレール部と、このレール部に沿って移動するキャリッジと、キャリッジに一端部が取り付けられる給水配管と、この給水配管に連通するようにキャリッジに設けられるとともに前記ケーシングロッドが着脱自在に取り付けられるジョイントとを有し、前記押えロッドが前記ジョイントを挿通して、押えロッドの先端部が前記管体の後端部に当接するとともに、押えロッドの後端部が削孔機に固定される構成にしたことを特徴とする。
【0009】
ここで、前記給水配管に止水キャップを備えた分岐管を設け、この止水キャップを外して開口された分岐管の挿入孔を通じて前記押えロッドが前記ジョイントを挿通する構成にすることもできる。前記レール部に嵌合して所定位置に固定されるストッパを設け、このストッパに前記押えロッドの後端部を当接させる構成にすることもできる。前記管体の先端部に固定されるアンカーを備えた構成にすることもできる。
【0010】
本発明の管体の抜け止め方法は、削孔機によりケーシングロッドを地盤に圧入した後、このケーシングロッドに管体を挿入し、この管体の後端部に押えロッドを当接させて管体の地盤上側への移動を規制した状態にして、削孔機によりケーシングロッドを地盤上に引き抜く管体の抜け止め方法であって、前記削孔機がレール部と、このレール部に沿って移動するキャリッジと、キャリッジに一端部が取り付けられる給水配管と、この給水配管に連通するようにキャリッジに設けられるとともに前記ケーシングロッドが着脱自在に取り付けられるジョイントとを有し、地盤に圧入したケーシングロッドに管体を挿入した後、前記押えロッドを前記ジョイントに挿通させて、押えロッドの先端部を前記管体の後端部に当接させるとともに、押えロッドの後端部を削孔機に固定することにより、管体の地盤上側への移動を規制した状態にして、このケーシングロッドを前記ジョイントに取り付けて、次いで、キャリッジを後退移動させてケーシングロッドを地盤上に引き抜くようにしたことを特徴とする。
【0011】
ここで、前記給水配管に止水キャップを備えた分岐管を設けておき、この止水キャップを外して分岐管の挿入孔を開口し、この挿入孔を通じて押えロッドをジョイントに挿通させることもできる。前記レール部の所定位置にストッパを嵌合させて固定し、このストッパに前記押えロッドの後端部を当接させることにより、押えロッドの後端部を削孔機に固定することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の抜け止め装置によれば、削孔機がレール部と、このレール部に沿って移動するキャリッジと、キャリッジに一端部が取り付けられる給水配管と、この給水配管に連通するようにキャリッジに設けられるとともにケーシングロッドが着脱自在に取り付けられるジョイントとを有しているので、押えロッドをジョイントに挿通させれば、押えロッドの先端部を、ケーシングロッドに挿入された管体の後端部に当接させることができる。そして、押えロッドの後端部を削孔機に固定される構成にしたので、押えロッドによって管体の地盤上側への移動が規制される。そのため、地盤に圧入されたケーシングロッドをジョイントに取り付けて、次いで、キャリッジを後退移動させてケーシングロッドを地盤上に引き抜くと、管体は地盤に残ったままでケーシングロッドのみを地盤上に引き抜くことができる。このようにして、ケーシングロッドに挿入した管体がケーシングロッドとともに引き抜かれることを確実に防止することができる。キャリッジの前進および後退移動に対して、押えロッドは何ら邪魔にならないので、ケーシングロッドの引き抜き作業を円滑に行なうことができる。
【0013】
上記した本発明の管体の抜け止め装置を用いることにより、本発明の管体の抜け止め方法を実施することができる。それ故、ケーシングロッドを地盤から引き抜く際に、ケーシングロッドに挿入した管体をケーシングロッドとともに引き抜かれることを、従来に比してより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の抜け止め装置の全体概要を例示する説明図である。
【図2】キャリッジの内部構造を例示する説明図である。
【図3】押えロッドの前端部を例示する説明図である。
【図4】ストッパおよびロッドガイドを例示する説明図である。
【図5】ケーシングロッドを地盤に圧入する工程を例示する説明図である。
【図6】ケーシングロッドに外管を挿入する工程を例示する説明図である。
【図7】押えロッドを外管に当接させてセッティングする工程を例示する説明図である。
【図8】ケーシングロッドを引き抜く工程を例示する説明図である。
【図9】外管の先端部に固定したアンカーを作動させた状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の管体の抜け止め装置および方法を、外管と内管とからなる二重管を用いて地盤改良薬液を地盤に注入する場合を例にした実施形態に基づいて説明する。この実施形態では、外管が抜け止めされる管体になる。
【0016】
図1、図2に例示するように本発明の抜け止め装置1は、削孔機2と、押えロッド9とを備えている。削孔機2はケーシングロッド12を地盤に圧入し、その後、地盤に圧入したケーシングロッド12を地盤上に引き抜くように機能する。押えロッド9は、地盤に圧入されたケーシングロッド12に挿入された外管13の地盤上側への移動を規制するように機能する。
【0017】
削孔機2は、クローラ駆動の車台の上に設けられたボディ3に、一方向に延設されたレール部8と、レール部8に沿って移動するキャリッジ4とを有している。レール部8は、傾斜角度を変更可能にボディ3に取り付けられている。削孔機2にはさらに、ケーシングロッド12を地盤に圧入する際に、ケーシングロッド12をガイドする挿入ガイド部3aが備わっている。
【0018】
キャリッジ4には給水配管7の一端部が取り付けられている。給水配管7の他端部は給水源に接続されている。キャリッジ4には移動用モータ4aが設置されていて、移動用モータ4aの駆動軸に固定された歯車(ピニオン)が、レール部8に形成されたラックに噛み合う構造になっている。
【0019】
キャリッジ4にはさらに、給水配管7に連通するように筒状のジョイント5が設けられている。ジョイント5の先端部は雌ネジになっていて、雄ネジになっているケーシングロッド12の後端部が着脱自在に取り付けられるようになっている。ケーシングロッド12の先端部は雌ネジになっていて、ケーシングロッド12どうしが着脱自在に接続できるようになっている。したがって、必要な本数のケーシングロッド12を接続して所望の長さにすることができる。尚、ジョイント5の先端部を雄ネジにして、ケーシングロッド12の後端部を雌ネジ、先端部を雄ネジにすることもできる。
【0020】
ジョイント5は、筒状軸方向に延びる軸心を中心にして回転駆動される。ジョイント5と給水配管7との間にはウォータスイベル6が介在している。そのため、ジョイント5が回転しても給水配管7が捩じれることはない。
【0021】
この実施形態では、給水配管7に分岐管7aが設けられている。分岐管7aには給水源側、ジョイント5側およびジョイント5とは反対側に向かう3つの流路が設けられている。ジョイント5とは反対側に向かう流路には挿入孔7bが形成されている。即ち、挿入孔7bは、ジョイント5の延長線上に形成されていて、分岐管7aには挿入孔7bを塞ぐ止水キャップ7cが設けられている。止水キャップ7cを外して開口された挿入孔7bを通じて、押えロッド9がジョイント5を挿通する構成になっている。
【0022】
押えロッド9をジョイント5に挿通させるには、このような分岐管7aを設けるだけでなく他の構造を採用することもできる。例えば、給水配管7を、一般的な着脱ジョイントを介在させてウォータスイベル6に接続してもよい。この構造の場合は、着脱ジョイントで給水配管7をウォータスイベル6から分離させて、ウォータスイベル6から押えロッド9を挿入してジョイント5に挿通させる。
【0023】
地盤に圧入されたケーシングロッド12に挿入された外管13の後端部には、この押えロッド9の先端部が当接するようになっている。この実施形態では、図3に例示するように押えロッド9の先端が、外管13の後端部を覆うように外嵌される当接キャップ9aになっている。押えロッド9と当接キャップ9aとは別体にしてもよく、一体化してもよい。押えロッド9は互いの端部どうしが連結できる構造になっているので、必要本数を継ぎ足して必要な長さにすることができる。
【0024】
押えロッド9の材質としては、一般炭素鋼、ハイテンション鋼等の金属、硬質樹脂等を用いることができる。押えロッド9の外径は、挿入孔7b、ウォータスイベル6、ジョイント5を挿通できるサイズであり、例えば15mm〜23mm程度である。当接キャップ9aは、押えロッド9と同様の材質を用いることができる。外管13の材質としては、塩化ビニル等が用いられる。
【0025】
当接キャップ9の外径は、ケーシングロッド12の内径よりも小さく設定されていて、当接キャップ9aはケーシングロッド12の内部を円滑に通過できるようになっている。また、ケーシングロッド12とジョイント5との着脱に支障が生じないように、当接キャップ9aの仕様が決定されている。
【0026】
押えロッド9の後端部は、削孔機2に着脱自在に固定されるようになっている。具体的には、図4に例示するようにレール部8のラックに嵌合して所定位置に固定されるブロック状のストッパ10が設けられている。押えロッド9の後端部を、レール部8に固定されたストッパ10に当接させることより削孔機2に固定される。
【0027】
ストッパ10は、レール部8のラックに嵌合する構造なので、ラックのピッチ単位で移動させることができ、必要な位置にストッパ10を固定するには有利になっている。また、ストッパ10のレール部8への着脱も容易に行なえる。押えロッド9の後端部を削孔機2に固定できれば、その他の構造を採用してもよい。
【0028】
押えロッド9のずれや変形を防止するためには、図4に例示するようなロッドガイド11を設けるとよい。ロッドガイド11は、ストッパ10と同様にレール部8のラックに嵌合して着脱自在になっている。ガイドロッド11には押えロッド9を挿通させる貫通孔11cが設けられている。このガイドロッド11は、レール部8に嵌合するベース部11aと、ベース部11aに装着されるキャップ部11bとからなる上下二分割構造になっている。貫通孔11cは、ベース部11aとキャップ部11bの合わせ面に形成されている。
【0029】
また、レール部8の上面に長手方向に延びる溝を形成して、この溝に押えロッド9を嵌め込むようにすることもできる。即ち、例示したガイドロッド11に代えて、レール部8の上面に延設した溝をガイドロッドとして機能させることもできる。
【0030】
外管13がケーシングロッド12とともに地盤上側へ引き抜かれることなく、地盤中に定着させる管体の抜け止め方法は以下のとおりである。
【0031】
まず、図5に例示するように、キャリッジ4をレール部8に沿って後退させてレール部8の後端部に配置にしてから、ケーシングロッド12の先端部を挿入ガイド部3aに挿入し、後端部をジョイント5に取り付ける。この状態で移動用モータ4aを作動させて、キャリッジ4をレール部8に沿って前進移動させることにより、ケーシングロッド12を地盤に圧入する。
【0032】
この際には、ジョイント5を回転駆動することによりケーシングロッド12を回転させながら地盤に圧入する。また、給水配管7から水を供給してジョイント5およびケーシングロッド12の中空部を通じてケーシングロッド12の先端から地盤に水を浸透させる。したがって、分岐管7aの挿入孔7bは止水キャップ7cで塞がれた状態にする。供給される水によって地盤が緩むので削孔し易くする。
【0033】
必要長さのケーシングロッド12を地盤に圧入した後は、移動用モータ4aを作動させて、キャリッジ4をレール部8に沿って後退移動させてレール部8の後端部に配置する。そして、図6に例示するように、ケーシングロッド12の後端とキャリッジ4(ジョイント5)の前端との間から、外管13をケーシングロッド12に挿入する。外管13は互いの端部どうしが連結できる構造になっているので、必要長さになるように順次、外管13どうしを継ぎ足して、その先端がケーシングロッド12の先端に到達するまで挿入させる。
【0034】
次いで、ケーシングロッド12を地盤から引き抜いて、外管12を地盤中に定着させる。この際には、分岐管7aの止水キャップ7cを外して挿入孔7bを開口させる。キャリッジ4はレール部8に沿って前進移動させてレール部8の先端部に配置する。
【0035】
そして、図7に例示するように挿入孔7bを通じて押えロッド9をジョイント5に挿通させて、押えロッド9の先端部を外管13の後端部に当接させる。この実施形態では当接キャップ9aを用いて、押えロッド9の先端部を外管13の後端部に安定的に当接させている。
【0036】
押えロッド9の後端部は、レール部8の所定位置に嵌合して固定されたストッパ10に当接させる。これにより、押えロッド9の後端部は削孔機2に固定されるので、外管13は押えロッド9によって地盤上側への移動が規制された状態になる。そして、ケーシングロッド12の後端部はジョイント5の先端部に螺合させて取り付ける。
【0037】
次いで、図8に例示するように、キャリッジ4をレール部8に沿って後退移動させてケーシングロッド12を地盤上に引き抜く。キャリッジ4を後退移動させる際に、障害になるロッドガイド11は、順次、レール部8から取り外す。ケーシングロッド12が複数本を継ぎ足して構成されている場合は、キャリッジ4をレール部8の先端部から後端部に1回移動させる(1ストローク)毎に、連結を解除して1本ずつ取り外す。
【0038】
外管13は押えロッド9によって地盤上側への移動が規制されているので、ケーシングロッド12とともに地盤から引き抜かれることはない。しかも、従来のように先端部にアンカーを設けた外管13では、アンカーが機能しない、最初にケーシングロッド12を地盤上側に引き上げる段階であっても、外管13は地盤上側に向かって移動することはなく地盤中に定着したままになる。このように本発明は、削孔機2を巧みに利用して、複雑な機構を用いることなくケーシングロッド12に挿入した外管13(管体)がケーシングロッド12とともに引き抜かれることを確実に防止できる。押えロッド9および当接キャップ9aは、キャリッジ4の前進および後退移動の邪魔にならない。そのため、ケーシングロッド12の引き抜き作業を円滑に行なうには非常に有利になっている。
【0039】
その後、地盤に定着させた外管13には、内管を挿入する。次いで、この内管を通じて地盤改良薬液を供給して、外管13に設けた吐出口から地盤改良薬液を地盤に浸透注入させる。
【0040】
押えロッド9によって、外管13の先端部のアンカーの有無に関わらず、外管13の引き抜きを防止できるが、本発明の抜け止め装置1は、図9に例示するように外管13の先端部に取り付けるアンカー14を備えた仕様にすることもできる。尚、外管13の先端部に設けるアンカー14は、以下に例示する構造に限定されるものではない。
【0041】
このアンカー14は、外管13の先端部に取り付けられるシリンダ19と、シリンダ19の後端に連結部22を介して着脱自在に接続される注水パイプ23と、注水パイプ23を通じてシリンダ19内に水Wを供給する水圧付与手段と、供給された水Wの水圧によってシリンダ19内をシリンダ先端側に移動するピストン20と、ピストン20とともにシリンダ先端側に移動する押圧部材16と、押圧部材16により押圧されてシリンダ外周方向に広がる開閉羽根15と、シリンダ19内の水圧を検知する水圧センサとを備えている。シリンダ19の所定位置にシリンダ19内の水Wをシリンダ外部に流出させる拡径された流出部19aが設けられ、流出部19aを設けた位置にピストン20が移動するまでに、開閉羽根15をシリンダ外周方向に所定の開き角度で広げるように構成されている。シリンダ19の先端に、押圧部材16を上下に挟む一対の保持プレート17が固定され、保持プレート17には、支軸18によって2枚の開閉羽根15が回動可能に軸支されている。
【0042】
この仕様にした場合は、地盤に圧入したケーシングロッド12に外管13を挿入して削孔Hの下端部にアンカー14を配置した後、アンカー14を機能ささせる。そのため、水圧付与手段から注水パイプ23を通じてシリンダ19内に水Wを供給する。供給された水Wの水圧によってピストン20とともに押圧部材16がシリンダ19の先端側に移動する。押圧部材16が移動する際に、ガイド突起16aがガイド穴17aに沿って移動する。シリンダ19の先端側に移動する押圧部材16は、一対の開閉羽根15をかき分けるように前進する。この押圧部材16により開閉羽根15が押圧されると、それぞれの支軸18を中心にして回動してシリンダ19外周方向に広がってアンカー機能を発揮する。
【0043】
ピストン20が流出部19aまで移動すると、シール部材21と流出部19aとのすき間からシリンダ19内の水Wがシリンダ19外部に流出する。水Wの流出によりシリンダ19内の水圧は低下し、この水圧の低下は水圧センサで検知される。そのため、ピストン20が流出部19aまで移動して、開閉羽根15が地盤中で所定の開き角度で広がったことを水圧センサによって把握することができる。
【0044】
シリンダ19内の水圧の低下を水圧センサで検知した後に、ケーシングロッド12を地盤上に引き抜く。この時に、地盤中で所定の開き角度で広がった開閉羽根15によって、外管13は地盤中に強固に保持されているので、ケーシングロッド12とともに外管13が引き抜かれることがない。このように、外管13の地盤上側への引き抜きを防止するために、押えロッド9とアンカー14とを用いることもできる。
【0045】
本発明は、傾斜して地盤に圧入したケーシングロッド12(削孔H)に外管13を挿入して地盤中に定着させる場合だけでなく、垂直に地盤に圧入したケーシングロッド12(削孔H)に外管13を挿入して地盤中に定着させる場合にも適用することができる。また、本発明は、地盤改良薬液注入用の外管13を地盤中に定着させるだけでなく、他の工事に使用する管体を地盤中に定着させるために適用することができる。例えば、円筒型ドレーン工法において、円筒型ドレーン管を地盤中に定着させるために適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 抜け止め装置
2 削孔機
3 ボディ
3a 挿入ガイド部
4 キャリッジ
4a 移動用モータ
5 ジョイント
6 ウォータスイベル
7 給水配管
7a 分岐管
7b 挿入孔
7c 止水キャップ
8 レール部
9 押えロッド
9a 当接キャップ
10 ストッパ
11 ロッドガイド
11a ベース部
11b キャップ部
11c 貫通孔
12 ケーシングロッド
13 外管
14 アンカー
15 開閉羽根
16 押圧部材
16a ガイド突起
17 保持プレート
17a ガイド穴
18 支軸
19 シリンダ
19a 流出部
20 ピストン
20a 凹溝
21 シール部材
22 連結部
23 注水パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングロッドを地盤に圧入し、その後、地盤に圧入したケーシングロッドを地盤上に引き抜く削孔機と、地盤に圧入されたケーシングロッドに挿入された管体の後端部に当接する押えロッドとを備えた管体の抜け止め装置であって、前記削孔機がレール部と、このレール部に沿って移動するキャリッジと、キャリッジに一端部が取り付けられる給水配管と、この給水配管に連通するようにキャリッジに設けられるとともに前記ケーシングロッドが着脱自在に取り付けられるジョイントとを有し、前記押えロッドが前記ジョイントを挿通して、押えロッドの先端部が前記管体の後端部に当接するとともに、押えロッドの後端部が削孔機に固定される構成にしたことを特徴とする管体の抜け止め装置。
【請求項2】
前記給水配管に止水キャップを備えた分岐管を設け、この止水キャップを外して開口された分岐管の挿入孔を通じて前記押えロッドが前記ジョイントを挿通する構成にした請求項1に記載の管体の抜け止め装置。
【請求項3】
前記レール部に嵌合して所定位置に固定されるストッパを設け、このストッパに前記押えロッドの後端部を当接させる構成にした請求項1または2に記載の管体の抜け止め装置。
【請求項4】
前記管体の先端部に固定されるアンカーを備えた請求項1〜3のいずれかに記載の管体の抜け止め装置。
【請求項5】
削孔機によりケーシングロッドを地盤に圧入した後、このケーシングロッドに管体を挿入し、この管体の後端部に押えロッドを当接させて管体の地盤上側への移動を規制した状態にして、削孔機によりケーシングロッドを地盤上に引き抜く管体の抜け止め方法であって、前記削孔機がレール部と、このレール部に沿って移動するキャリッジと、キャリッジに一端部が取り付けられる給水配管と、この給水配管に連通するようにキャリッジに設けられるとともに前記ケーシングロッドが着脱自在に取り付けられるジョイントとを有し、地盤に圧入したケーシングロッドに管体を挿入した後、前記押えロッドを前記ジョイントに挿通させて、押えロッドの先端部を前記管体の後端部に当接させるとともに、押えロッドの後端部を削孔機に固定することにより、管体の地盤上側への移動を規制した状態にして、このケーシングロッドを前記ジョイントに取り付けて、次いで、キャリッジを後退移動させてケーシングロッドを地盤上に引き抜くようにしたことを特徴とする管体の抜け止め方法。
【請求項6】
前記給水配管に止水キャップを備えた分岐管を設けておき、この止水キャップを外して分岐管の挿入孔を開口し、この挿入孔を通じて押えロッドをジョイントに挿通させる請求項5に記載の管体の抜け止め方法。
【請求項7】
前記レール部の所定位置にストッパを嵌合させて固定し、このストッパに前記押えロッドの後端部を当接させることにより、押えロッドの後端部を削孔機に固定する請求項5または6に記載の管体の抜け止め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−7364(P2012−7364A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143629(P2010−143629)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(500038891)信幸建設株式会社 (16)
【Fターム(参考)】