説明

管内調査機器の挿入回収装置、管内調査システム、管内調査機器の挿入回収方法及び管内調査方法。

【課題】水道本管等の調査において、本管に投入される管内調査機器に連結されたケーブルを繰り出す際に、挿入管内のケーブルに張力を加えた状態でケーブルを繰り出すことができて、挿入管内におけるケーブルの蛇行を防止することができる管内調査機器の挿入回収装置、管内調査システム、管内調査機器の挿入回収方法及び管内調査方法を提供する。
【解決手段】管内調査機器20を収納する格納部材34を使用して、枝管から本管10に前記管内調査機器20を挿入して本管10内部を調査し、調査後に、本管10から枝管に前記管内調査機器20を回収する管内調査機器20の挿入回収装置30において、前記格納部材34に、前記管内調査機器20に連結するケーブル42を繰り出すためのケーブル繰り出し装置34aを設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道本管等の調査に際して、本管に投入される管内調査機器(調査用水中ロボット)に連結されたケーブルの繰り出しを円滑に行うための管内調査機器の挿入回収装置、管内調査システム、管内調査機器の挿入回収方法及び管内調査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水道本管や原子炉施設の排水管等の管内を調査する場合に、本管から上向きに分岐し、空気弁等が設けられている枝管から、空気弁を外し、この枝管から本管にカメラ、カメラ用の照明灯、移動用のプロペラ等を装備し、ケーブルでデータや動力を送信する管内調査機器(調査用水中ロボット)を挿入して、この管内調査機器によって検査を行っている。
【0003】
この調査では、枝管に設けられた補修弁を閉弁して、枝管から空気弁等を取り外し、枝管に管内調査機器を内部に収容した挿入管を取り付ける。この挿入管を取り付けた後、補修弁を開弁して挿入管内を水密状態とした上で、管内調査機器に連結されたケーブルを挿入管外から挿入管内に繰り出しながら、管内調査機器を水道本管内に挿入し、更に、ケーブルを繰り出しながら管内調査機器を水道本管内の所定の範囲を移動させて、水道本管内の調査を行う。調査を終了したら、ケーブルを引き込んで管内調査機器を水道本管内から挿入管に引き込む。その後、補修弁を閉弁し、挿入管を取り外し、枝管に空気弁などを取り付けて、補修弁を必要に応じて開弁し、元の状態に戻して一連の作業を終了する。
【0004】
この管内調査機器に連結したケーブルの繰り出し方法に関して、幾つかの方法が提案されている。その一つの方法として、管内調査機器の後部に接続したケーブルを繰り出して、このケーブルで管内調査機器を押し出すことにより、管内調査機器を本管内で移動させる方法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0005】
この方法では、管内調査機器を押し込むために、比較的剛性の高いケーブルが使用されるが、この剛性により、ケーブルが本管の底面に触れてから本管の管軸方向に向かうようになる。ここでケーブルの方向が略直角に変化するために、このケーブルが屈曲する部分で抵抗が生じて、円滑にケーブルの移動が行われずに、挿入管や枝管の内部でケーブルが蛇行してしまうという問題がある。また、ケーブルの一部が本管の底面を這うために、管内の付着物を攪拌して水流が濁り易く、カメラの視界が悪くなるという問題もある。この水流の濁りの発生は水道のように清浄性を求められているものでは避けたいものとなる。
【0006】
また、他の方法として、管内調査機器を格納する格納部材(又は案内筒)を挿入ロッドの下端側に配置して、管内調査機器を格納した状態で格納部材を本管内に挿入し、本管内への挿入が完了したら、管内調査機器に設けられた推進器により管内調査機器を本管内で移動させ、この推進器の推進力によってケーブルを引っ張る方法も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
このケーブルを管内調査機器の推進力によってケーブルを繰り出す場合には、枝管と本管との間で略直角にケーブルの方向が変化する屈曲する部分の抵抗に抗して、ケーブルを引っ張り出すために比較的大きな引き張り力が必要となるので、プロペラ等の推進器が大きくなり、管内調査機器が大きくなるという問題がある。また、この推進器による水流の攪拌も大きくなるので、水流による管内の付着物の攪拌が生じ、カメラの視界が悪くなるという問題もある。
【0008】
また、この挿入管の上部の送り出し装置で、ケーブルを繰り出しつつ、推進器を備えた管内調査機器で引っ張る方式も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。この場合は、推進器は水流が無いときの自航用の推進力があればよいので、小さい推進力の推進器でよく、管内調査機器を小型化できるが、この場合においても、挿入管からのケーブルを格納部材の後部の屈曲部材内を通して管内調査機器に連結した構造では、屈曲部材における摩擦が大きくなり、円滑なケーブルの繰り出しが妨げられ、挿入管内でケーブルが蛇行し易いという問題がある。
【0009】
このケーブルの蛇行が一旦挿入管内に生じると、ケーブルを繰り出し方法の場合には蛇行状態が酷くなるだけで、挿入管から先にケーブルが送り込めなくなるので、管内調査機器を本管内の所定の場所に送り込めなくなる。
【特許文献1】特開平08−65846号公報
【特許文献2】特開平08−286124号公報
【特許文献3】特開平10−221257号公報
【特許文献4】特開2007−91169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、水道本管等の調査において、本管に投入される管内調査機器に連結されたケーブルを繰り出す際に、挿入管内のケーブルに張力を加えた状態でケーブルを繰り出すことができて、挿入管内におけるケーブルの蛇行を防止することができる管内調査機器の挿入回収装置、管内調査システム、管内調査機器の挿入回収方法及び管内調査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の管内調査機器の挿入回収装置は、管内調査機器を収納する格納部材を使用して、枝管から本管に前記管内調査機器を挿入して本管内部を調査し、調査後に、本管から枝管に前記管内調査機器を回収する管内調査機器の挿入回収装置において、前記格納部材に、前記管内調査機器に連結するケーブルを繰り出すためのケーブル繰り出し装置を設けて構成する。
【0012】
このケーブル繰り出し装置としては、ケーブルを両側からローラーで挟み、このローラーの少なくとも一方を回転させて、この回転により挟み込んだケーブルを移動させる繰り出しローラー等がある。このケーブル繰り出し装置は、管内調査機器の格納に邪魔にならないように格納部材の後端に設けるのが好ましい。
【0013】
この構成によれば、水道本管等の調査において、本管に投入される管内調査機器に連結されたケーブルを繰り出す際に、格納部材にケーブルの繰り出しを行う繰り出し装置を設けて、この繰り出し装置により挿入管内のケーブルを引っ張るので、挿入管内のケーブルに張力を加えた状態でケーブルを繰り出すことができて、挿入管内におけるケーブルの蛇行を防止することができる。
【0014】
また、ここでいう水道本管とは、水の供給元(浄水場等)と利用先の間にある配管のことをいい、枝管とは、本管から上方に分岐する管で、上方に空気弁、消化栓などを取り付ける管のことをいう。
【0015】
また、上記の目的を達成するための本発明の管内調査機器の挿入回収装置は、管内調査機器を収納する格納部材を使用して、枝管から本管に前記管内調査機器を挿入して本管内部を調査し、調査後に、本管から枝管に前記管内調査機器を回収する管内調査機器の挿入回収装置において、前記格納部材の後部と前記格納部材を移動する挿入ロッドとの間に、前記格納部材が枝管の管軸方向と本管の管軸方向の両方を向くことができるようにした屈曲部材を備え、この屈曲部材又は前記格納部材に前記ケーブル繰り出し装置を設けて構成する。この構成によれば、上記と同様な効果を奏することができ、特に、この屈曲部材でのケーブル移動の際の摩擦が大きくなるので、このケーブル繰り出し装置は特に効果が大きい。
【0016】
また、繰り出し装置をローラーで形成する場合には、格納部材が本管に入って本管の管軸に略平行になった状態で、このローラーの軸方向が上下方向になるように配置するのが、格納部材と管内調査機器のレイアウト上好ましい。つまり、屈曲部材の曲げに関して内側にケーブルを通すと、ケーブルが格納部材の上部側を通って管内調査機器の後部の上部側に接続されるようになるので、ローラーの軸方向を上下方向にした方が、ケーブルの上側にローラーを配置する必要が無くなり、小型化できる。また、回転伝動部は屈曲部材の曲げに関して外側になるように設けて、屈曲部材の曲げのための機構やケーブルの通しに支障が生じないようにすることが好ましい。
【0017】
なお、屈曲部材が無く、挿入ロッドの先端に、挿入ロッドの延長方向に格納部材がある構造においても、格納部材の後端等に繰り出し装置を設けることによって、挿入管内のケーブルに張力を掛けながらケーブルを繰り出すことができるようになる。
【0018】
上記の管内調査機器の挿入回収装置において、前記ケーブル繰り出し装置を駆動するための駆動装置を前記屈曲部材よりも前記挿入ロッド側に設けて構成すると、格納部材に駆動装置が不要になり、格納部材を短く形成することができるので、より小径の本管に管内調査機器を挿入することができるようになる。つまり、モータ等の駆動装置は格納部材の内部に配置してもよいが、駆動装置を格納部材の外の挿入ロッド側に配設して、駆動装置の回転等を繰り出し装置に伝達する。これにより、格納部材のスペースを少なくすることができる。なお、この場合には、挿入ロッド側の駆動装置からフレキシブルジョイントを有する回転軸や、フレキシブルな回転軸等によって回転等をケーブル繰り出し装置に伝達する。
【0019】
また、上記の目的を達成するための管内調査システムは、上記のいずれかの管内調査機器の挿入回収装置を用いて構成される。この管内調査システムによれば、円滑にケーブルの繰り出しと巻き取りを行えるので、効率よく管内の調査を行うことができる。
【0020】
そして、上記の目的を達成するための管内調査機器の挿入回収方法は、管内調査機器を収納する格納部材を使用して、枝管から本管に前記管内調査機器を挿入して本管内部を調査し、調査後に、本管から枝管に前記管内調査機器を回収する管内調査機器の挿入回収方法において、前記格納部材又は前記格納部材に連結される屈曲部材に設けたケーブル繰り出し装置により、前記管内調査機器に連結するケーブルを繰り出すことを特徴とする方法である。
【0021】
この方法によれば、水道本管等の調査において、本管に投入される管内調査機器に連結されたケーブルを繰り出す際に、格納部材又は屈曲部材に設けた繰り出し装置により挿入管内のケーブルに引っ張りながら、ケーブルを繰り出すことができ、挿入管内におけるケーブルの蛇行を防止することができる。
【0022】
上記の管内調査機器の挿入回収方法において、前記ケーブル繰り出し装置を前記格納部材の外部に設けた駆動装置で駆動すると、格納部材に駆動装置が不要になり、格納部材を短く形成することができるので、より小径の本管に管内調査機器を挿入することができるようになる。
【0023】
上記の管内調査機器の挿入回収方法において、前記ケーブルを繰り出すときには、前記ケーブル繰り出し装置により前記ケーブルを繰り出し、前記ケーブルを巻き戻すときには、前記ケーブル繰り出し装置は、前記ケーブルの移動を妨げないようにし、挿入管側のケーブル巻き取り装置によりケーブルを巻き取ると、ケーブルの繰り出しと巻き取りを円滑に行うことができる。
【0024】
つまり、ケーブル繰り出し時には、挿入管側のケーブルの巻き取り装置のケーブルドラムを回転フリーにして、繰り出し装置でケーブルに張力(テンション)を掛けた状態で繰り出し、管内調査機器の進行を妨げない。また、ケーブルの巻き取り時には、繰り出し装置の駆動を停止し、フリーの状態にして、ケーブルの巻き取り装置で巻き取り、管内調査機器の戻りを妨げない。
【0025】
また、上記の目的を達成するための管内調査方法は、上記のいずれかの管内調査機器の挿入回収方法を用いる。この管内調査方法によれば、円滑にケーブルの繰り出しと巻き取りを行えるので、効率よく管内の調査を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の管内調査機器の挿入回収装置、管内調査システム、管内調査機器の挿入回収方法及び管内調査方法によれば、水道本管等の調査において、本管に投入される管内調査機器に連結されたケーブルを繰り出す際に、屈曲部材内又はその近傍に、ケーブルの繰り出しを行う繰り出しローラーを設けて、この繰り出しローラーの回転により挿入管内のケーブルに張力を加えるので、挿入管内のケーブルに張力を加えた状態でケーブルを繰り出すことができて、挿入管内におけるケーブルの蛇行を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明に係る管内調査機器の挿入回収装置、管内調査システム、管内調査機器の挿入回収方法及び管内調査方法の実施の形態について説明する。ここでは、水道本管の調査を例にして説明するが、本発明はこれに限定されず、管内調査機器を収納する格納部材を使用して、枝管から本管に管内調査機器を挿入して本管内部を調査し、調査後に、本管から枝管に管内調査機器を回収する管内調査機器の挿入回収装置、管内調査システム、管内調査機器の挿入回収方法及び管内調査方法に適用できる。
【0028】
最初に、この管内調査機器の挿入回収装置を備えて管内調査機器の挿入回収方法及び管内調査方法が使用される水道管内調査システム1について説明する。図1に示すように、水道本管10を断水させずに、300m〜1000m程度の長い距離にわたって、水中点検ロボットである管内調査機器20を使用して、水道本管10の内部の状況や腐食の状況や継ぎ手11部分のずれ等を調査するシステムである。この水道管内調査システム1は、管内調査機器20と、この管内調査機器20を水道本管10に挿入するための挿入回収装置30と、映像データや制御データの送受信用と電力伝達用のケーブル41,42,43,44と、管内調査機器20と挿入回収装置30を操縦、制御し、映像をモニター、記録するための制御及び監視装置50から構成される。この制御及び監視装置50には、データ保存やデータ解析等の機能を持たせてもよい。
【0029】
管内調査機器20と制御及び監視装置50の間の制御用信号、動力、データ等の送受信は第1接続ケーブル41と第1水中ケーブル42を介して行い、挿入回収装置30と制御及び監視装置50の間の制御用信号、動力の送受信は第2接続ケーブル43と第2水中ケーブル44を介して行う。これらのケーブル41、42、43、44は、電気信号と電力の複合ケーブルで形成される。
【0030】
図1〜図3に示すように、挿入回収装置30は、水道を止めない状態、即ち、断水しない状態のままで、管内調査機器20を水道本管10の内部に挿入して送り出しを行い、調査後に、管内調査機器20を回収するための装置である。この挿入回収装置30は、挿入管31とその上部に接続する巻き取り装置格納部材32とから構成され、挿入管31の下部は、水道本管10の分岐部位の補修弁14の上に着脱できるように下部フランジ31aを有し、上部は巻き取り装置格納部材32に接続する上部フランジ31bを有して形成される。また、挿入管31の下部側に水抜き用のコック31cと覗き窓31d(透明アクリル板)を設けてある。この覗き窓31dは、管内調査機器20を収納した格納部材34を引き上げた時に、格納部材34の後部を確認できる位置に設けられる。この覗き窓31dから、格納部材34の後部を確認した後に、補修弁14を閉じることで、格納部材34を補修弁14で挟んで傷つけることを防止している。
【0031】
巻き取り装置格納部材32は、水道本管10の水圧に耐えることができる水密(液密)区画の第1ケース32aと非水密区画の第2ケース32bを有して構成され、更に、第1ケース32aの上部には、挿入ロッド36が出入りするロッド挿入部32cと第2接続ケーブル43と第2水中ケーブル44の接続部となる第2防水コネクタ32dが設けられ、第1ケース32aの下部には、第1水中ケーブル42を案内するガイドローラー32eが設けられる。
【0032】
この挿入ロッド36は、格納部材34を挿入管31から水道本管10内に移動させ、また、逆に水道本管10内から挿入管31に移動させるために、格納部材34を上下させるためのロッドである。上部にレバー36aを有し、このレバー36aを手動で上下移動操作することにより挿入ロッド36を上下移動するように構成される。
【0033】
更に、巻き取り装置格納部材32には、第1水中ケーブル42の繰り出しと巻き取りを行う巻き取り装置33が設けられる。この巻き取り装置33は、非水密区画の第2ケース32b内部の巻上げ用モータ33bによる回転軸33cの回転により、水密区画の第1ケース32aの内部に設けられたケーブルドラム33aを回転させると共に、このケーブルドラム33aの回転と同期してケーブルシフター33dのガイドローラー33eを横移動させながら、第1水中ケーブル42を巻き取る。また、ケーブルドラム33aの回転をフリーにすることにより、第1水中ケーブル42を、格納部材34の後部に設けた繰り出しローラー34aの繰り出しと管内調査機器20の移動に従って繰り出す。また、回転板とエンコーダ等で形成される回転メータ33fによりケーブルドラム33aの回転を検出して制御に使用する。第1水中ケーブル42からの電気信号と動力はスリップリング33gを経由して第1コネクタ33hに導かれる。
【0034】
これらの構成で、ケーブルドラム33aとケーブルシフター33dとガイドローラー33eは水密区画の第1ケース32aの内部に収納し、一方、巻き上げ用モータ33b、回転メータ33f、スリップリング33gなどはケーブルドラム33aの回転軸部分33cで水密する。回転軸部分33cでの水密機構は、周知の技術で、従来技術のようなケーブルが出入りする部分の水密機構に比べて容易に構成することができる。
【0035】
そして、本発明においては、挿入回収装置30の挿入管31に、管内調査機器20を格納する格納部材34を配置し、この格納部材34の後方に、管内調査機器20に連結する第1水中ケーブル42を繰り出すための繰り出しローラー(繰り出し装置)34aを設けて構成する。
【0036】
この繰り出しローラー34aは、ケーブルを両側からローラーで挟み、このローラーの少なくとも一方を回転させて、この回転により挟み込んだケーブルを移動させて繰り出す。繰り出しローラー34aは、管内調査機器20の格納に邪魔にならないように格納部材34の後端に設けるのが好ましい。
【0037】
この繰り出しローラー34aは、挿入ロッド先端部35に設けられた駆動装置35aからフレキシブルジョイント35b等によって回転を伝達されて駆動される。つまり、繰り出しローラー用モータ35aは格納部材34の内部に配置してもよいが、繰り出しローラー用モータ35aを格納部材34の外の挿入ロッド36側に配設して、繰り出しローラー用モータ35aの回転等をフレキシブルジョイント35b等で繰り出しローラー34aに伝達する。これにより、格納部材34のスペースを少なくすることができる。このフレキシブルジョイント35bは入力側と出力側の軸の方向が変化しても回転力を伝達できる軸継手であり、例えば、さや管の中に納められたワイヤ、スプリング等で構成される。
【0038】
この構成によれば、格納部材34に駆動装置35aを配置する必要がなくなり、格納部材34を短くすることができるので、より小径の水道本管10に管内調査機器20を挿入することができるようになる。
【0039】
この繰り出しローラー用モータ35aへの制御用信号と動力の伝達のために、第2水中ケーブル44が設けられ、この第2水中ケーブル44で、第2防水コネクタ32dと、挿入ロッド先端部35の繰り出しローラー用モータ35aを連結する。この第2水中ケーブル44は、挿入ロッド先端部35の上下動にしたがって伸縮するように、カールコード等で形成される。
【0040】
また、繰り出しローラー34aは、格納部材34が水道本管10に入って、水道本管10の管軸に略平行な状態になったときに、繰り出しローラー34aの軸方向が上下方向になるように配置するのが、格納部材34と管内調査機器20のレイアウト上好ましい。つまり、屈曲部材34bの曲げに関して内側に第1水中ケーブル42を通すと、第1水中ケーブル42が格納部材34の上部側を通って管内調査機器20の後部の上部側に接続されるようになるので、繰り出しローラー34aの軸方向を上下方向にした方が、第1水中ケーブル42の上側にローラーを配置する必要が無くなり、小型化できる。また、回転伝動部であるフレキシブルな回転軸35bは屈曲部材34bの曲げに関して外側になるように設けて、屈曲部材34bの曲げのための機構や第1水中ケーブル42の通しに支障がでないようにすることが好ましい。
【0041】
なお、屈曲部材34bが無く、挿入ロッド36の先端に、挿入ロッド36の延長方向に格納部材34がある構造においても、モータ等の駆動装置により駆動可能な繰り出し装置を格納部材34の後端に設けることによって、挿入管31内の第1水中ケーブル42に張力を掛けながら第1水中ケーブル42を繰り出すことができるようになる。
【0042】
この構成によれば、水道本管10の調査において、水道本管10に投入される管内調査機器20に連結された第1水中ケーブル42を繰り出す際に、この繰り出しローラー34aにより挿入管31内の第1水中ケーブル42を引っ張るので、挿入管31内の第1水中ケーブル42に張力を加えた状態で繰り出すことができ、挿入管31内における第1水中ケーブル42の蛇行を防止することができる。
【0043】
また、格納部材34はその後部が、屈曲部材(ケーブルベア)34bで挿入ロッド先端部35に接続し、この挿入ロッド先端部35は、挿入ロッド36の下端に固定されて、挿入ロッド36の上下動と共に、挿入管31の内部を上下動する。挿入ロッド36が上端にあるときは、図2及び図3に示すように、格納部材34は管内調査機器20を内部に格納した状態で、挿入管31の下端側の内部にあり、挿入ロッド先端部35もその上にある。一方、挿入ロッド36が下端にあるときは、図1に示すように、格納部材34は挿入管31から押し出されて水道本管10の中にあり、挿入ロッド先端部35は挿入管31の下端側の内部にある。
【0044】
図4及び図5に示すように、この挿入ロッド先端部35と格納部材34を連結する屈曲部材34bは、格納部材34が挿入管31の管軸方向と水道本管10の管軸方向の両方を向くことができるようにする部分であり、複数の関節を有して構成される。この関節は、両側の関節要素部材をピン結合部で連結し、隣接する関節要素部材が相対的にピン結合部周りに所定の角度θ分だけ回動できるように構成する。この屈曲部材34bを関節で形成することにより、曲がり方向や曲がりの前後の形状を固定することができるので、格納部材34を移動させる時に揺れや振動が少なくなる。また、関節を複数にすることにより、屈曲部材34bの曲がりを滑らかにすることができ、水道本管10内の流れが大きい場合でも曲がり易く、また、直線状態に戻り易くなる。
【0045】
なお、この実施の形態では、格納部材34の後部に繰り出しローラー34aを設けたが、屈曲部材34bの一部に設けても良い。この場合は関節の一部に繰り出しローラー34aを組み込むことになるが、格納部材34の長さを短くすることができる。但し、格納部材34の後部に設けると第1水中ケーブル42が曲がり終わった場所となるので、これ以後の第1水中ケーブル42は屈曲部材34bによる摩擦が無くなるので、管内調査機器20への負担が一番小さくなる。
【0046】
図6〜図9に示すように、管内調査機器(水中点検ロボット)20は、本体21に後部の移動用のスラスタ22、前部の姿勢安定用フィン23を装備し、更に、前部に一つ、後部に左右一対の計3つの浮力調整装置24を備えている。また、側方を向いた観察カメラ25とカメラ用のLED照明灯26を備え、水道本管10の内壁や継ぎ手11を観察できるように構成している。この観察カメラ25はカメラ旋回装置27により、視野を変更できる。
【0047】
この管内調査機器20は水中で浮き沈みしない中性浮力に重量(比重)を調整されてから水道本管10内に送り込まれる。この管内調査機器20のスラスタ22の動力源であるモータ28、浮力調整装置24、カメラ旋回装置27等の制御用の信号及び動力や、観察カメラ25で得られた映像データの信号は、後部に連結されている第1水中ケーブル42経由で送受信する。この第1水中ケーブル42は、その一端側は管内調査機器20の後部に接続されているが、他端側は、巻き取り装置33のスリップリング33gに接続されると共に、巻き取り装置33のケーブルドラム33aに巻き取られる。
【0048】
この第1水中ケーブル42は、管内調査機器20に接続するため、浮き沈みしない中性浮力を持つように、比重を調整される。しかしながら、水圧が高いと第1水中ケーブル42が圧縮されて体積が減少し比重が増加するので、管内調査機器20の沈降やトリム(前後傾斜)が生じる。この変化に対しては、浮力調整装置24で浮体を本体から出入りさせることにより、その部位の浮力を増減して、浮力と浮心位置を変更する。これにより、管内調査機器20の上下位置と姿勢を調整する。
【0049】
制御及び監視装置50は、図1に示すように、管内調査機器20や挿入回収装置30の操縦及び制御を行う操縦装置51、TVモニター52、映像記録装置53、電源制御装置54等を制御装置ラック55に設けて構成される。なお、この操縦装置51は有線又は無線で操作員の手元で操作できるように構成される。
【0050】
第1接続ケーブル41で、制御及び監視装置50と挿入回収装置30の巻き取り装置の信号取り出し部である第1コネクタ33hとの間の大気中部分を接続し、第1水中ケーブル42で、第1コネクタ33hと管内調査機器20との間を接続して、制御用信号、動力、映像データ等を伝達する。また、第2接続ケーブル43で、制御及び監視装置50と挿入回収装置30の第2防水コネクタ32dとを接続し、第2水中ケーブル44で、第2防水コネクタ32dと繰り出しローラー用モータ35aとの間を接続して、制御用信号と動力を伝達する。
【0051】
次に、上記の水道管内調査システム1の管内調査方法について説明する。図1に示すように、水道本管10の調査にあたっては、マンホールの蓋13を外して、補修弁14を閉じた後、マンホール12に設置されている消火栓または空気弁(図示しない)を取り外す。そして、補修弁14の上に挿入回収装置30を取り付けて、補修弁14を開く。
【0052】
その後、挿入ロッド36を下側に押し下げて、挿入回収装置30の挿入管31から管内調査機器20を水道管本10内に送り出す。この送り出しは、挿入管31に挿入されていた格納部材34を、管内調査機器20を内部に格納した状態で、水道本管10内に挿入すると、格納部材34は、水道本管10内の水流によって水道本管10の管軸方向に向けられて水流と略平行の状態となる。この状態では、格納部材34と挿入ロッド先端部35との間を連結する屈曲部材34bは略直角に曲がっている。なお、水流が無い時は、屈曲部材34bを強制的に曲げる。
【0053】
格納部材34が水道本管10の管軸方向と略平行な状態になったら、繰り出しローラー用モータ35aで繰り出しローラー34aを回転駆動して、第1水中ケーブル42を繰り出す。この時は、ケーブルドラム33aの回転をフリーにする。水流が大きい時は、管内調査機器20は流されて、第1水中ケーブル42の繰り出し量に応じた位置に到達し、水流が小さいときは管内調査機器20に設けられているモータ28によりスラスタ22を回転させて推進力を発生し、この推進力により、第1水中ケーブル42の繰り出し量に応じた位置に到達する。このとき管内調査機器20は第1水中ケーブル42を引っ張り出す必要がないので、スラスト22の推進力を小さくでき、小型化できる。
【0054】
この第1水中ケーブル42の繰り出し量により、管内調査機器20を水道本管10の任意の調査位置に移動させて、水道本管10の内壁や継ぎ手11等を、カメラ旋回装置27の制御により視野を変更しながら、LED照明灯26の照明のもとで、観察カメラ25で撮影する。地上では、操作員が地上に設置した制御及び監視装置50のTVモニター52で、水道本管10内の映像を見て、管内調査機器20を操縦しながら、観察し、映像を記録する。また、必要に応じて、浮力調整装置24を使用して上昇下降と姿勢制御を行う。
【0055】
調査が終了すると、巻き上げ用モータ33bを駆動して、ケーブルドラム33aを回転して第1水中ケーブル42を巻き取る。この巻き取り時には、繰り出しローラー34aをフリーにするが、必要に応じて、繰り出しローラー34aをケーブルドラム33aの回転と同期させながら逆回転させて巻き取りを促進する。この巻き取りにより第1水中ケーブル42の先端に接続している管内調査機器20を引っ張り込んで格納部材34内に格納する。この格納時点でケーブルドラム33aの回転を停止する。
【0056】
この後、ケーブルドラム33aを回転しながら、挿入ロッド36を上昇させて、管内調査機器20を格納した格納部材34を、挿入管31に引き込む。このとき、屈曲部材34bは曲がっていた状態から真直ぐになって、挿入管31内に引き込まれる。挿入ロッド36が上端に達した状態では、格納部材34は、完全に挿入管31内に入るので、補修弁14を閉じて、水抜き用のコック31cを開けて、挿入回収装置30内の水を抜いた後に、挿入回収装置30を取り外す。その後、消火栓または空気弁(図示しない)を元通りに設置してから、補修弁14の開閉状態を元通りにする。その後、マンホールの蓋13を閉めて調査を終了する。
【0057】
上記の水道管内点検調査システム1における管内調査機器の挿入回収装置、管内調査システム、管内調査機器の挿入回収方法及び管内調査方法によれば、水道本管10の調査において、水道本管10に投入される管内調査機器20に連結された第1水中ケーブル42を繰り出す際に、格納部材34の後部に設けた繰り出しローラー34aにより、管内調査機器20に連結する第1水中ケーブル42を繰り出すことができる。従って、挿入管31内の第1水中ケーブル34aを引張力(テンション)を掛けた状態で繰り出すことができ、挿入管31内における第1水中ケーブル42の蛇行を防止することができる。
【0058】
また、繰り出しローラー34aを屈曲部材34bよりも挿入ロッド36側に設けた繰り出しローラー用モータ35aで駆動するので、格納部材34を短くすることができる。従って、より小径の水道本管10に管内調査機器20を挿入することができるようになる。
【0059】
更に、第1水中ケーブル42を繰り出すときには、繰り出しローラー34aにより第1水中ケーブル42を繰り出し、第1水中ケーブル42を巻き戻すときには、繰り出しローラー34aは、第1水中ケーブル42の移動を妨げないようにフリー状態とし、挿入管31側の巻き取り装置33により第1水中ケーブル42を巻き取るので、第1水中ケーブル42の繰り出しと巻き取りを円滑に行うことができる。
【0060】
つまり、ケーブル繰り出し時には、挿入管31側の第1水中ケーブル42の巻き取り装置33のケーブルドラム33aを回転フリーにして、繰り出しローラー34aで第1水中ケーブル42に張力(テンション)を掛けた状態で繰り出すので、管内調査機器20の進行を妨げない。また、第1水中ケーブル42の巻き取り時には、繰り出しローラー34aの駆動を停止し、フリーの状態にして、第1水中ケーブル42の巻き取り装置33で巻き取るので、管内調査機器20の戻りを妨げない。
【0061】
従って、上記の管内調査システムである水道管内調査システム1と、管内調査方法によれば円滑にケーブルの繰り出しと巻き取りを行えるので、効率よく管内の調査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態における管内調査機器へのケーブル繰り出し機構及び管内調査機器へのケーブル繰り出し方法を用いる水道管内調査システムの構成を示す図である。
【図2】管内調査機器へのケーブル繰り出し機構を示す挿入回収装置の構成を示す正面断面図である。
【図3】管内調査機器へのケーブル繰り出し機構を示す挿入回収装置の構成を示す側断面図である。
【図4】格納管が挿入管内にある状態での格納管の後部及び挿入ロッド先端部を示す図である。
【図5】格納管が水道本管内にある状態での格納管の後部及び挿入ロッド先端部を示す図である。
【図6】管内調査機器の側面図である。
【図7】管内調査機器の平面図である。
【図8】管内調査機器の正面図である。
【図9】管内調査機器の背面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 水道管内調査システム
10 水道本管
14 補修弁
20 管内調査機器
30 挿入回収装置
31 挿入管
32 巻き取り装置格納部材
32a 水密区画の第1ケース
32b 非水密区画の第2ケース
33 巻き取り装置
34 格納部材
34a 繰り出しローラー
34b 屈曲部材
35 挿入ロッド先端部
35a 繰り出しローラー用モータ
35b フレキシブルジョイント
36 挿入ロッド
41 第1接続ケーブル
42 第1水中ケーブル
43 第2接続ケーブル
44 第2水中ケーブル
50 制御及び監視装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内調査機器を収納する格納部材を使用して、枝管から本管に前記管内調査機器を挿入して本管内部を調査し、調査後に、本管から枝管に前記管内調査機器を回収する管内調査機器の挿入回収装置において、前記格納部材に、前記管内調査機器に連結するケーブルを繰り出すためのケーブル繰り出し装置を設けたことを特徴とする管内調査機器の挿入回収装置。
【請求項2】
管内調査機器を収納する格納部材を使用して、枝管から本管に前記管内調査機器を挿入して本管内部を調査し、調査後に、本管から枝管に前記管内調査機器を回収する管内調査機器の挿入回収装置において、前記格納部材の後部と前記格納部材を移動する挿入ロッドとの間に、前記格納部材が枝管の管軸方向と本管の管軸方向の両方を向くことができるようにした屈曲部材を備え、この屈曲部材又は前記格納部材に前記ケーブル繰り出し装置を設けたことを特徴とする管内調査機器の挿入回収装置。
【請求項3】
前記ケーブル繰り出し装置を駆動するための駆動装置を前記屈曲部材よりも前記挿入ロッド側に設けたことを特徴とする請求項2に記載の管内調査機器の挿入回収装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の管内調査機器の挿入回収装置を用いたことを特徴とする管内調査システム。
【請求項5】
管内調査機器を収納する格納部材を使用して、枝管から本管に前記管内調査機器を挿入して本管内部を調査し、調査後に、本管から枝管に前記管内調査機器を回収する管内調査機器の挿入回収方法において、前記格納部材又は前記格納部材に連結される屈曲部材に設けたケーブル繰り出し装置により、前記管内調査機器に連結するケーブルを繰り出すことを特徴とする管内調査機器の挿入回収方法。
【請求項6】
前記ケーブル繰り出し装置を前記格納部材の外部に設けた駆動装置で駆動することを特徴とする請求項5記載の管内調査機器の挿入回収方法。
【請求項7】
前記ケーブルを繰り出すときには、前記ケーブル繰り出し装置により前記ケーブルを繰り出し、前記ケーブルを巻き戻すときには、前記ケーブル繰り出し装置は、前記ケーブルの移動を妨げないようにし、挿入管側のケーブル巻き取り装置によりケーブルを巻き取ることを特徴とする請求項5又は6に記載の管内調査機器の挿入回収方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の管内調査機器の挿入回収方法を用いたことを特徴とする管内調査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−236876(P2009−236876A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86809(P2008−86809)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】