説明

管材の引抜加工用プラグおよびそれを用いた引抜加工方法

【課題】厚肉(t/Dが20%以上)の素管を用いて冷間引抜加工する場合であっても、プラグ破損やビビリ欠陥の発生がない、最適な引抜加工用プラグを提供する。
【解決手段】管材の内面に挿入する引抜加工用プラグであって、プラグの先端から順にストレート部、第1テ-パ部および第2テ-パ部で連続的に形成された外面を有し、前記ストレート部の外面は円柱面状であり、前記第1テ-パ部にはその径がストレート部から第2テ-パ部に向かって大きくなるようにテ-パ角θ1が付与され、前記第2テ-パ部にはその径が前記第2テ-パ部から後端に向かって大きくなるようにテ-パ角θ2が形成され、テーパ角θ1とθ2がθ1>θ2>0(ゼロ)の関係を満足することを特徴とする管材の引抜加工用プラグである。さらに、それを用いる引抜加工方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間加工による管材の引抜加工用プラグおよびそれを用いた引抜加工方法に関し、さらに詳しくは、厚肉の素管を冷間引抜加工する場合であっても、プラグ破損やビビリ欠陥を発生することがない引抜性能に優れる引抜加工用プラグおよびそれを用いた管材の引抜加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
管材の引抜加工は、潤滑処理が行われた素管を治具(プラグおよびダイス)を介して引抜くことにより縮径および減肉加工し、寸法精度や表面平滑に優れる管材を得る加工方法である。加工された管材は表面精度が高いことから、主に自動車用の管部品として多用されており、最近における自動車用部品に対する更なる高品質、高精度の要求の高まりとともに、一層の需要が予測されている。
【0003】
図1は、使用するプラグが異なる2種類の引抜加工を説明する図である。図1(a)は外径が一定の円柱面状の円筒プラグ1を用いる引抜加工であり、円筒プラグ1の後端は支持マンドレル5に連結され、ダイス4に対して同心状となるように素管6の内面に挿入される。円筒プラグ1を用いる引抜加工は、比較的大径の管材を製造する場合に用いられる。図中の白抜き矢印は引抜方向を示している。
【0004】
図1(b)はテーパプラグ2を用いる引抜加工であり、同様に、テーパプラグ2の後端は支持マンドレル5に連結され、ダイス4に対して同心状となるように素管6の内面に挿入される。素管6は、ダイス4の円錐面状のテーパ部とプラグ2の円錐面状のテーパ部とに沿って変形しつつ、ダイス4のベアリング部とプラグ2の円柱面状のストレート部との間に導かれダイス4のベアリング部内径を外径とし、プラグ2のストレート部外径を内径とする加工管7に加工される。同様に、図中の白抜き矢印は引抜方向を示している。
【0005】
テーパプラグ2のテーパ部にはテーパ角θが形成される。このため、テーパプラグ2に作用する力として、引抜方向への摩擦力の他に、プラグ2のテーパ部に引抜方向と逆方向に押戻し力が付加され、摩擦力と押戻し力が相殺される。このため、テーパプラグ2を用いる引抜加工では、引抜過程でテーパプラグ2がフローティング状態となり、支持マンドレル5が不要になることもある。また、支持マンドレル5を連結したとしても、支持マンドレル5に作用する力は低減される。
【0006】
このようなことから、図1(b)に示すテーパプラグ2は、セミ・フローティングプラグ(SFプラグ)と呼ばれ、上述した引抜特性を有していることから、比較的小径の管材の引抜加工に用いられている。以下、必要に応じ、図1(b)に示すテーパプラグ2を「SFプラグ」という。
【0007】
図2は、管材の引抜加工に用いられるダイス形状を説明する図である。引抜加工用のダイス4は、素管の加工外径を決定する出口側のベアリング部4bと、素管をベアリング部4bに案内するための入口側に向かって内径が拡大するアプローチ部4aとを有している。
【0008】
図2に示すダイス形状では、アプローチ部4aは直線で形成されており、所定のダイス面角αを有している。通常、ダイス面角αは、前記図1(b)に示すテーパプラグのテーパ角θより大きく、20〜25degとされる。
【0009】
ところで、自動車用の管部品に適用される機械構造用鋼管の最近の需要動向は、多種外径サイズの要望に加え厚肉サイズの需要が増加している。厚肉の素管を引抜加工する場合には、プラグ加工面と素管との接触面積が増加する。このため、円筒プラグを用いる引抜加工ではプラグが引抜方向に引き込まれ易くなり、ビビリ振動を起し、その振動に対応する痕跡であるビビリ欠陥を発生することがある。
【0010】
一方、SFプラグを用いる引抜加工では、プラグのストレート部およびテーパ部と素管との接触面積が増加するのにともない、プラグに作用する引抜方向または逆方向への押し戻し力が増加するため、プラグがフローティング状態から外れたり、適正位置からずれて引抜加工が行われることも予測される。このように適正位置からずれて引抜加工が行われると、加工管の寸法精度に影響を与えるだけでなく、プラグが破損するおそれがある。
【0011】
このため、管材の引抜加工に際し、素管の肉厚サイズに拘わらず、加工管にビビリ欠陥や寸法精度を低下させることなく、同時にプラグを破損させない、引抜性能に優れる引抜加工用プラグの開発が要請されている。
【0012】
従来から、引抜加工用プラグに関し、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1では、テーパ部(特許文献1ではアプローチ部)とストレート部(特許文献1ではベアリング部)とがくびれ部(V字溝)を介して連設されているフローティングプラグを提案している。そして、特許文献1のプラグによれば、くびれ部により、引抜方向への付勢力が得られるため、素管の肉厚サイズに拘わらず、フローティングプラグが適正な位置でバランスを保つことができるとしている。
【0013】
また、特許文献2では、テーパ部とストレート部(特許文献2では仕上げ部)とが凹部を介して連設されるフローティングプラグを提案し、ディーゼル機関の燃料噴射管等に用いられる厚肉細径管の引抜加工に好適であるとしている。
【0014】
【特許文献1】特開平09−225522号公報
【特許文献2】特開20003−112218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述の通り、冷間加工による加工製品の歩留まりを向上させ、工具寿命の延長を図るために、種々の引抜加工用プラグが提案されているが、いずれも引抜加工用プラグの引抜性能を適切に改善するものではない。
【0016】
特許文献1で提案のフローティングプラグは、プラグに作用する引抜方向への力と、引抜方向と逆方向に作用する力とのバランスを保つために、テーパ部とストレート部との間にくびれ部を設けているが、厚肉の素管を引抜加工する場合に発生し易いビビリ欠陥やプラグ破損の防止について検討されていない。
【0017】
また、特許文献2に記載のフローティングプラグは、内削時に生じたバイト目等を除去し、引抜加工後の管の内周面を高平滑度にするため、テーパ部とストレート部との間に所定の位置関係で凹部を設けているが、厚肉の素管を引抜加工する場合に発生し易いビビリ欠陥やプラグ破損の防止について検討されていない。
【0018】
本発明は、上述した引抜加工での問題点に鑑みてなされたものであり、厚肉の素管を冷間引抜加工する場合であっても、プラグ破損やビビリ欠陥の発生、さらに寸法精度の低下を有効に防止し、引抜性能に優れる管材の引抜加工用プラグおよびそれを用いた引抜加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、上記の課題を解決するため、種々の引抜加工用プラグを用いて、引抜加工における被加工管材の変形挙動を観察した。
【0020】
図3は、厚肉の素管を円筒プラグを用いて引抜加工する場合の変形挙動を説明する図である。前述の通り、厚肉の素管6を引抜加工する場合には、円筒プラグ1と素管6内面との接触面積が増加するため、円筒プラグ1が引抜方向に引き込まれ易くなり、プラグ面での引き込まれと回復を繰り返す自励振動を誘引し、ビビリ欠陥を発生することになる。ビビリ欠陥が発生すると、加工管7の内面に微小な痕跡が軸長方向に発生する。
【0021】
図4は、厚肉の素管をSFプラグを用いて引抜加工する場合の変形挙動の一例を説明する図である。SFプラグ2は、そのストレート部2sがダイス4のベアリング部4bと同心状に位置するように、素管6の内面に挿入される。
【0022】
引抜加工の進行にともない、素管6は、ダイス4のアプローチ部4aとSFプラグ2のテーパ部2tの形状に沿って変形しつつ、ダイス4のベアリング部4bとSFプラグ2のストレート部4bとの間へ導かれ、縮径および減肉加工されて加工管7が得られる。
【0023】
通常、引抜加工の変形挙動の初期において、素管6は、ダイス4のアプローチ部4aに拘束され、そのテーパ形状に沿って縮径変形しつつ増肉変形をする。このとき、素管6が厚肉であると、素管の増肉変形が顕著になり、ダイス4のアプローチ部4aとSFプラグ2のテーパ部2tとの間隔を超えて、素管6の内面がテーパ部2tの後端に当接するようになる。このような事態になると、引抜加工の進行にともなって、プラグが破損する。
【0024】
また、厚肉の素管をSFプラグを用いて引抜加工する場合には、SFプラグ2の加工面と素管6との接触面積が増加することから、SFプラグ2に作用する力が増加し、SFプラグ2が引抜方向と逆方向へ外れ、フローティングしなかったり、適正位置からずれる事態もある。このような事態を防止するには、SFプラグ2のストレート部2sおよびテーパ部2tの軸方向長さを適切にする必要がある。
【0025】
本発明は、上述した知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)、(2)の引抜加工用プラグ、および(3)の引抜加工方法を要旨としている。
【0026】
(1)プラグの先端から順にストレート部、第1テ-パ部および第2テ-パ部で連続的に形成された外面を有し、前記ストレート部の外面は円柱面状であり、前記第1テ-パ部にはその径がストレート部から第2テ-パ部に向かって大きくなるようにテ-パ角θ1が付与され、前記第2テ-パ部にはその径が前記第2テ-パ部から後端に向かって大きくなるようにテ-パ角θ2が形成され、テーパ角θ1とθ2が下記(1)式の関係を満足することを特徴とする管材の引抜加工用プラグである。
θ1>θ2>0(ゼロ) ・・・ (1)
【0027】
(2)上記(1)の管材の引抜加工用プラグは、さらに、前記第1テーパ部のテーパ角θ1が10〜18degであり、第1テーパ部の軸方向長さL1および第2テーパ部の軸方向長さL2とした場合に、それぞれの関係が下記(2)式および(3)式を満足することを特徴とする。
L1≧5mm ・・・ (2)
L1+L2≦20mm ・・・ (3)
【0028】
(3)所定のベアリング部内径を有するダイスと、上記(1)または(2)のいずれかに記載の引抜加工用プラグとを用いて、管材を縮径および減肉加工することを特徴とする管材の引抜加工方法である。
【0029】
本発明の引抜加工用プラグは、管材が厚肉である場合に最適であるが、本発明における厚肉とは、外径Dに対する肉厚Tの比(T/D)が20%以上であることをいう。
【発明の効果】
【0030】
本発明の管材の引抜加工用プラグによれば、厚肉の素管を用いて冷間引抜加工する場合であっても、プラグ破損やビビリ欠陥の発生、さらに寸法精度の低下を有効に防止し、工具寿命の延長を図ることができる。このプラグを用いた引抜加工方法では、引抜性能に優れ、プラグに起因する製品不良を減少し、加工管の製品歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の管材の引抜加工用プラグは、プラグの先端から順にストレート部、第1テ-パ部および第2テ-パ部で連続的に形成された外面を有し、前記ストレート部の外面は円柱面状であり、前記第1テ-パ部にはその径がストレート部から第2テ-パ部に向かって大きくなるようにテ-パ角θ1が付与され、前記第2テ-パ部にはその径が前記第2テ-パ部から後端に向かって大きくなるようにテ-パ角θ2が形成され、テーパ角θ1とθ2がθ1>θ2>0(ゼロ)の関係を満足することを特徴とする。
【0032】
図5は、本発明の引抜加工用プラグの形状およびこれを用いて引抜加工する場合の変形挙動を説明する図である。前記図4に示すように、厚肉の素管をSFプラグを用いて引抜加工する場合には、引抜加工の初期において、素管がダイスのアプローチ部で縮径変形し増肉変形をするため、増肉した素管の内面がプラグのテーパ部後端と当接するようになる。
【0033】
このような素管の内面とプラグのテーパ部後端との当接を防止するため、本発明の引抜加工用プラグ3は、円柱面状のストレート部3sから引抜方向と逆方向へ向けてテーパ角θ1を有する円錐面状の第1テーパ部3t1と、さらにテーパ角θ2を有する円錐面状の第2テーパ部3t2とを連設する。
【0034】
そして、本発明の引抜加工用プラグ3は、第1テーパ部3t1および第2テーパ部3t2のテーパ角の関係をθ1>θ2>0(ゼロ)としているため、素管6の内面がプラグのテーパ部3tを外れて当接することを防止できるとともに、当接した素管内面をテーパ部3tの形状に沿って逃がすことができる。
【0035】
以下の説明において、必要に応じて、本発明の引抜加工用プラグを、単に「2段テーパプラグ」ということがある。
【0036】
具体的には、図5に示す変形挙動から分かるように、引抜加工の初期において、素管6がダイス4のアプローチ部4aで縮径され増肉変形したとしても、増肉した素管6の内面が2段テーパプラグ3の第1テーパ部3t1または第2テーパ部3t2のいずれかと当接するようになる。その後の引抜加工においても、素管6は、ダイス4のアプローチ部4aと2段テーパプラグ3のテーパ部3tの形状に沿って変形し、ダイス4のダイスベアリング部4bと2段テーパプラグ3のストレート部3sとの間へ導かれ、縮径および減肉加工される。
【0037】
本発明の引抜加工用プラグは、ストレート部3sからテーパ角θ1を有する第1テーパ部3t1と、テーパ角θ2を有する第2テーパ部3t2とを連設し、素管6が増肉変形した場合でも、素管6の内面が第1テーパ部3t1または第2テーパ部3t2のいずれかに当接するようにしている。
【0038】
そして、第1テーパ部3t1および第2テーパ部3t2のテーパ角の関係をθ1>θ2>0(ゼロ)とすることにより、素管の内面が第1テーパ部3t1または第2テーパ部3t2に当接した場合に、当接部を2段テーパプラグ3のテーパ部3tの形状に沿って逃がし、素管6の変形を継続することができる。
【0039】
本発明の引抜加工用プラグは、第1テーパ部のテーパ角θ1を10〜18degにするのが、引抜加工の過程でフローティング状態を確保するために望ましい。第1テーパ部は、本質的にプラグに作用する引抜方向と逆方向への押し戻し力を受けることから、テーパ角θ1が10deg未満ではフローティングに必要な引抜方向と逆方向に作用する押戻し力が十分得られないため、プラグが引き込まれ易くなりフローティングを維持できない。一方、テーパ角θ1が18degを超えるようになると、素管の内面がテーパ部の後端に当接し、プラグの破損を招くことになる。
【0040】
本発明の引抜加工用プラグは、第1テーパ部の軸方向長さL1を5mm以上にするのが望ましい。引抜加工の過程でフローティング状態を確保するためであり、軸方向長さL1が5mm未満であると、フローティングに必要な引抜方向と逆方向に作用する押戻し力が十分得られないため、プラグが引き込まれ易くなる。
【0041】
本発明の引抜加工用プラグは、第1テーパ部の軸方向長さL1および第2テーパ部の軸方向長さL2の全長さを20mm以下にするのが望ましい。プラグ破損を防止するためであり、プラグのテーパ部の軸方向長さL1、L2の全長さが20mmを超えると、引抜加工の過程でプラグが破損し易くなる。
【0042】
本発明の引抜加工方法は、所定のベアリング部内径を有するダイスと、上述した引抜加工用プラグとを用いて、被加工管材に縮径および減肉加工を施す方法である。厚肉サイズの被加工管材を用いて引抜加工する場合であっても、プラグ破損やビビリ欠陥の発生を有効に防止でき、工具寿命の延長を図ることができるとともに、プラグに起因する製品不良を減少し、製品歩留まりを向上させることができる。
以下、本発明の効果を実施例に基づいて、具体的に説明する。
【実施例】
【0043】
供試素管として、鋼種が機械構造用炭素鋼管であるJIS G4051で規定するS45C(0.44C−0.75Mn−0.15Cr−0.1Ti鋼材)からなる管材を準備し、各種のプラグを用いて引抜加工を行い、このときの加工状況を評価した。引抜加工は、準備した素管寸法に応じて、表1に示す5種の冷間加工スケジュールとした(Sch.1〜5)。
【0044】
表1に示す断面減少率Rd(%)は、下記(4)式により算出される。
Rd={(D0−D1)/D0}×100(%) ・・・ (4)
ただし、D0:加工前断面積(mm2) D1:加工後断面積(mm2
【0045】
【表1】

【0046】
引抜加工に使用したプラグは、前記図3に示す円筒具ラグ、前記図4に示すSFプラグ、および前記図5に示す2段テーパプラグとした。同時に使用したダイスは、そのアプローチ部のテーパ面角αを20degとした。使用したプラグの寸法および引抜加工時の評価結果を表2に示す。
【0047】
表2中における評価結果は、×は引抜加工ができなかった場合を示し、○は引抜加工ができた場合を示し、さらに◎は引抜加工が安定してできた場合を示している。
【0048】
【表2】

【0049】
円筒プラグを使用した引抜加工では、いずれも不安定な引抜加工であったが、特に、厚肉素管になるとビビリ欠陥の発生が顕著となり安定して加工を行うことができなかった(試験No.2、3)。
【0050】
SFプラグを使用した引抜加工では、通常のT/Dの素管を用いる場合に引抜加工を行うことができるが(試験No.4)、厚肉素管になるとプラグ破損が発生し引抜加工を行うことができなかった(試験No.5、6)。
【0051】
本発明の2段テーパプラグを使用した引抜加工では、いずれも安定した引抜加工を行うことができた(試験No.7〜13)。特に、L1およびL2が望ましい範囲に該当する場合には、優れた加工特性を発揮することができた(試験No.9、12、13)。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の管材の引抜加工用プラグによれば、厚肉の素管を用いて冷間引抜加工する場合であっても、プラグ破損やビビリ欠陥の発生、さらに寸法精度の低下を有効に防止し、工具寿命の延長を図ることができる。このプラグを用いた引抜加工方法では、引抜性能に優れ、プラグに起因する製品不良を減少し、加工管の製品歩留まりを向上させることができることから、機械構造用炭素鋼管の製造方法として広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】使用するプラグが異なる2種類の引抜加工を説明する図であり、(a)は外径が一定の円柱面状で構成される円筒プラグ1を用いる引抜加工を、(b)はテーパプラグ2を用いる引抜加工を示している。
【図2】管材の引抜加工に用いられるダイス形状を説明する図である。
【図3】厚肉の素管を円筒プラグを用いて引抜加工する場合の変形挙動を説明する図である。
【図4】厚肉の素管をSFプラグを用いて引抜加工する場合の変形挙動の一例を説明する図である。
【図5】本発明の引抜加工用プラグの形状およびこれを用いて引抜加工する場合の変形挙動を説明する図である。
【符号の説明】
【0054】
1:円筒プラグ、 2:SFプラグ、テーパプラグ
3:本発明の引抜加工用プラグ、2段テーパプラグ
4:ダイス、 5:支持マンドレル
6:素管、 7:加工管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管材の内面に挿入する引抜加工用プラグであって、プラグの先端から順にストレート部、第1テ-パ部および第2テ-パ部で連続的に形成された外面を有し、
前記ストレート部の外面は円柱面状であり、前記第1テ-パ部にはその径がストレート部から第2テ-パ部に向かって大きくなるようにテ-パ角θ1が付与され、前記第2テ-パ部にはその径が前記第2テ-パ部から後端に向かって大きくなるようにテ-パ角θ2が形成され、
テーパ角θ1とθ2が下記(1)式の関係を満足することを特徴とする管材の引抜加工用プラグ。
θ1>θ2>0(ゼロ) ・・・ (1)
【請求項2】
前記第1テーパ部のテーパ角θ1が10〜18degであり、第1テーパ部の軸方向長さL1および第2テーパ部の軸方向長さL2とした場合に、それぞれの関係が下記(2)式および(3)式を満足することを特徴とする請求項1に記載の管材の引抜加工用プラグ。
L1≧5mm ・・・ (2)
L1+L2≦20mm ・・・ (3)
【請求項3】
前記管材の引抜加工前の外径Dに対する肉厚Tの比(T/D)が20%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の管材の引抜加工用プラグ。
【請求項4】
所定のベアリング部内径を有するダイスと、請求項1〜3のいずれかに記載の引抜加工用プラグとを用いて、管材を縮径および減肉加工することを特徴とする管材の引抜加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−184006(P2009−184006A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29594(P2008−29594)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【特許番号】特許第4259603号(P4259603)
【特許公報発行日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】