説明

管状中空成形品の製造方法及び成形型

【課題】異なる径部分を有し、かつ異なる径部分における中空内周面の内径も異なる管状中空成形品を効率的かつ容易に製造することができる管状中空成形品の製造方法及び成形型を提供する。
【解決手段】基準中空内周面に対して拡径した中空内周面を有する大径部を端部に有する管状中空成形品60を成形する成形型10を用いた管状中空成形品の製造方法において、キャビティ面との間で大径部を成形するとともにキャビティ13と成形型10の外部とを連通する加圧ポート34のキャビティ13側にフローティングコア50が保持された中子20をキャビティ13の一端部に装着して成形型10を型締めし、キャビティ13に溶融材料を充填した後に加圧ポート34から圧入される加圧流体によってフローティングコア50を溶融材料中に押し出してキャビティ13に沿って進行させて管状中空成形品60の基準中空内周面を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状中空成形品の製造方法及び成形型、特に、樹脂製の管状中空成形品を製造する管状中空成形品の製造方法及び成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂製の管状中空成形品を製造する場合は、互いに型締めされる第1型及び第2型を備え、第1型及び第2型に管状中空成形品の外周面に沿った形状のキャビティが形成された成形型を用いて、射出成形法等によって製造されることが知られている。
【0003】
特許文献1には、管状中空成形品としての長尺パイプ製品を、成形型を用いて射出成形法によって製造する管状中空成形品の製造方法が開示されている。この特許文献1に開示される管状中空成形品の製造方法を、図10(a)及び(b)を用いて説明する。
【0004】
図10(a)で示すように、成形型100は、下型101及び上型102を備え、下型101及び上型102のそれぞれに長尺パイプ製品の外周面に沿ったキャビティ面が形成され、下型101と上型102とが互いに型締めされた状態でキャビティ103が形成される。上型102には、溶融樹脂mをキャビティ103内に射出する図示しない射出口が形成される。成形型100のキャビティ103の一端には、成形型100の外部と連通する加圧ポート103aが形成され、キャビティ103の他端には、成形型100の外部と連通する排出ポート103bが形成される。加圧ポート103a側には、球状のフローティングコア105が配置され、排出ポート103b側には、溶融樹脂受け皿104が設けられる。
【0005】
まず、溶融樹脂mを上型102の射出口からキャビティ103内に射出する。キャビティ103内に射出された溶融樹脂mは、外表面側から次第に冷却されて硬化する。
【0006】
このとき、溶融樹脂mが未硬化の状態で、図10(b)で示すように、加圧ポート103aに配置されたフローティングコア105を、粘度がまだ低い溶融樹脂mのキャビティ103に沿った中心部に向かって、加圧流体によって押しこむ。
【0007】
押し込まれたフローティングコア105は、比較的粘度の低い溶融樹脂m内を、キャビティ103の加圧ポート103a側から排出ポート103b側に向かって進行し、進行方向前方側の溶融樹脂mをキャビティ103のキャビティ面側に押しつけつつ、余剰の溶融樹脂mを排出ポート103bから溶融樹脂受け皿104へ押し出す。これにより、長尺パイプ状の樹脂成形品Mが成形される。その後、保圧工程、冷却工程、型開き工程が順次行われ、長尺パイプ製品が成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平7−20646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば、図11(a)で示す、中間部に相当する細いパイプ本体部110aの端部に大径部110bを有し、大径部110bの中空内周面110cがパイプ本体部110aの基準中空内周面よりも拡径して形成されるパイプ製品110がある。
【0010】
しかし、このようなパイプ製品110を、特許文献1で開示される管状中空成形品の製造方法で製造しようとすると、図11(b)で示すように、溶融樹脂m内を進行するフローティングコア105の直径に等しい基準中空内周面と同径の中空内周面120cが、パイプ本体部120a、大径部120bに亘って連続して形成されたパイプ製品120が製造される。
【0011】
従って、特許文献1の管状中空成形品の製造方法では、異なる内径を有するパイプ製品110のように断面形状の変化に対応した内径を有する中空内周面を成形することができない。
【0012】
従って、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、基準中空内周面と異なる径の中空内周面を有する管状中空成形品を効率的かつ容易に製造することができる管状中空成形品の製造方法及び成形型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明による管状中空成形品の製造方法は、基準中空内周面に対して拡径した中空内周面を有する大径部を端部に有する管状中空成形品を成形するとともに両端部が外部に開放された軸状に延在するキャビティを備える成形型を用いた管状中空成形品の製造方法において、前記キャビティにおける前記大径部を成形するキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出して前記キャビティ面との間で前記大径部を成形するとともに前記キャビティと前記成形型の外部とを連通する加圧ポートが形成されて該加圧ポートの前記キャビティ側にフローティングコアが保持された中子を前記キャビティの一端部に装着して前記成形型を型締めする型締め工程と、前記キャビティに樹脂材料を充填する材料充填工程と、前記キャビティに前記樹脂材料が充填された後に前記加圧ポートから圧入される加圧流体によって前記フローティングコアを前記樹脂材料中に押し出して前記キャビティに沿って進行させて前記管状中空成形品の前記基準中空内周面を成形して前記キャビティの他端部から前記フローティングコアを排出する加圧工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、キャビティ面から離間して間隙を介してキャビティ内に突出してキャビティ面との間で管状中空成形品の基準中空内周面に対して拡径された中空内周面を有する大径部を成形する中子を、キャビティの開放された一端部に装着し、成形型を型締めしてキャビティ内に樹脂材料を充填して、基準中空内周面の内径と異なる内径の中空内周面を有する大径部を成形する。
【0015】
一方、キャビティと成形型の外部とを連通する加圧ポートが形成されるとともに加圧ポートのキャビティ側にフローティングコアが保持された中子の加圧ポートから加圧流体を圧入すると、フローティングコアが樹脂材料中に押し出されてキャビティに沿って進行して、基準中空内周面を成形する。
【0016】
従って、基準中空内周面と大径部の中空内周面とで内径が異なる管状中空成形品を、キャビティの端部に装着される中子及び中子に保持されるフローティングコアを用いることによって、管状中空成形品の効率的かつ容易な製造が実現される。
【0017】
請求項2に記載の発明による管状中空成形品の製造方法は、基準中空内周面に対して拡径した中空内周面を有する第1大径部及び第2大径部を両端部に有する管状中空成形品を成形するとともに両端部が外部に開放された軸状に延在するキャビティを備える成形型を用いた管状中空成形品の製造方法において、前記キャビティにおける前記第1大径部を成形するキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出して前記キャビティ面との間で前記第1大径部を成形するとともに前記キャビティと前記成形型の外部とを連通する加圧ポートが形成されて該加圧ポートの前記キャビティ側にフローティングコアが保持された第1中子を前記キャビティの一端部に装着し、前記キャビティにおける前記第2大径部を成形するキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出して前記キャビティ面との間で前記第2大径部を成形するとともに前記キャビティと前記成形型の外部とを連通する排出ポートが形成された第2中子を前記キャビティの他端部に装着して前記成形型を型締めする型締め工程と、前記キャビティに樹脂材料を充填する材料充填工程と、前記キャビティに前記樹脂材料が充填された後に前記加圧ポートから圧入される加圧流体によって前記フローティングコアを前記樹脂材料中に押し出して前記キャビティに沿って進行させて前記管状中空成形品の前記基準中空内周面を成形し、前記排出ポートから前記フローティングコアを排出する加圧工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
この発明によると、キャビティ面から離間して間隙を介してキャビティ内に突出してキャビティ面との間で管状中空成形品の基準中空内周面に対して拡径された中空内周面を有する第1大径部及び第2大径部を成形する第1中子及び第2中子を、キャビティの開放された一端部及び他端部に装着し、成形型を型締めしてキャビティ内に樹脂材料を充填し、基準中空内周面の内径と異なる内径の中空内周面を有する第1大径部及び第2大径部を成形する。
【0019】
一方、キャビティと成形型の外部とを連通する加圧ポートが形成されるとともに加圧ポートのキャビティ側にフローティングコアが保持された第1中子の加圧ポートから加圧流体を圧入すると、フローティングコアが樹脂材料中に押し出されてキャビティに沿って進行して、第2中子に形成された排出ポートからフローティングコアが排出されて基準中空内周面を成形する。
【0020】
従って、基準中空内周面と第1大径部及び第2大径部の中空内周面とで内径が異なる管状中空成形品を、キャビティの一端部に装着される第1中子及び第1中子に保持されるフローティングコア、キャビティの他端部に装着される第2中子を用いることによって、管状中空成形品の効率的かつ容易な製造が実現される。
【0021】
請求項3に記載の発明による成形型は、両端部が外部に開放されて軸状に延在したキャビティに樹脂材料が充填され、該樹脂材料中に前記加圧ポートから圧入される加圧流体によって前記フローティングコアが押し出されて前記キャビティに沿って進行して前記管状中空成形品の前記基準中空内周面を成形して前記キャビティの他端部から前記フローティングコアを排出して、基準中空内周面に対して拡径した中空内周面を有する大径部を端部に有する管状中空成形品を成形する成形型において、前記キャビティの両端部の少なくとも一端部に装着されて前記キャビティにおける前記大径部を成形するキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出して前記キャビティ面との間で前記大径部を成形するとともに前記キャビティと前記成形型の外部とを連通する加圧ポートが形成されて該加圧ポートの前記キャビティ側にフローティングコアを保持する中子を備えることを特徴とする。
【0022】
この発明によると、管状中空成形品の基準中空内周面に対して拡径された中空内周面を有する大径部を成形する中子を備えることから、この中子をキャビティの開放された一端部に装着して成形型を型締めしてキャビティ内に樹脂材料を充填して、基準中空内周面の内径と異なる内径の中空内周面を有する大径部を成形する。
【0023】
一方、中子には、キャビティと成形型の外部とを連通するとともに加圧流体が圧入される加圧ポートが形成されていることから、加圧ポートのキャビティ側に配置されたフローティングコアが樹脂材料中に押し出されてキャビティに沿って進行して、基準中空内周面を成形する。
【0024】
従って、基準中空内周面と大径部の中空内周面とで内径が異なる管状中空成形品を、キャビティの端部に装着される中子及び中子に保持されるフローティングコアを用いることによって、管状中空成形品の効率的かつ容易な製造が実現される。
【0025】
請求項4に記載の発明による成形型は、請求項3に記載の成形型において、前記中子は、前記キャビティの端部に装着される基部と、該基部が前記キャビティに装着された状態で前記キャビティのキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出するとともに前記キャビティ面との間で前記大径部を成形する本体部と、前記基部から前記本体部に亘って該本体部の軸方向に沿って貫通する加圧ポートと、該加圧ポートの前記本体部側に形成されて前記フローティングコアを嵌合して保持する内周面と、を備えることを特徴とする。
【0026】
この発明は、請求項3に記載の中子の構成を具体的に明確にしたものであり、キャビティの開放された一端部に装着される中子が、キャビティ面との間で大径部を成形する本体部を有し、かつ本体部の軸方向に沿って貫通する加圧ポートの本体部側の内周面には、基準中空内周面を成形するフローティングコアが保持されていることから、かかる簡易な構成の中子を用いることによって、大径部の中空内周面を成形するとともに基準中空内周面を成形することができる。
【0027】
請求項5に記載の発明による成形型は、両端部が外部に開放されて軸状に延在したキャビティに樹脂材料が充填され、該樹脂材料中に前記加圧ポートから圧入される加圧流体によって前記フローティングコアが押し出されて前記キャビティに沿って進行して前記管状中空成形品の基準中空内周面が成形され、前記排出ポートから前記フローティングコアを排出して、基準中空内周面に対して拡径した中空内周面を有する第1大径部及び第2大径部を両端部に有する管状中空成形品を成形する成形型において、前記キャビティの一端部に装着されて前記キャビティにおける前記第1大径部を成形するキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出して前記キャビティ面との間で前記第1大径部を成形するとともに前記キャビティと前記成形型の外部とを連通する加圧ポートが形成されて該加圧ポートの前記キャビティ側にフローティングコアを保持する第1中子と、前記キャビティの他端部に装着されて前記キャビティにおける前記第2大径部を成形するキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出して前記キャビティ面との間で前記第2大径部を成形するとともに前記キャビティと前記成形型の外部とを連通する排出ポートが形成された第2中子と、を備えることを特徴とする。
【0028】
この発明によると、管状中空成形品の基準中空内周面に対して拡径された中空内周面を有する第1大径部及び第2大径部を成形する第1中子及び第2中子を備えることから、これらの中子をキャビティの開放された一端部及び他端部に装着して成形型を型締めしてキャビティ内に溶融材料を充填して、基準中空内周面の内径と異なる内径の中空内周面を有する第1大径部及び第2大径部を成形する。
【0029】
一方、第1中子には、キャビティと成形型の外部とを連通するとともに加圧流体が圧入される加圧ポートが形成されていることから、加圧ポートのキャビティ側に配置されたフローティングコアが樹脂材料中に押し出されてキャビティに沿って進行して、第2中子に形成された排出ポートからフローティングコアが排出されて基準中空内周面を成形する。
【0030】
従って、基準中空内周面と第1大径部及び第2大径部とで内径が異なる管状中空成形品を、キャビティの一端部に装着される第1中子及び第1中子に保持されるフローティングコア、キャビティの他端部に装着される第2中子を用いることによって、管状中空成形品の効率的かつ容易な製造が実現される。
【0031】
請求項6に記載の発明による成形型は、請求項5に記載の成形型において、前記第1中子は、前記キャビティの一端部に装着される基部と、該基部が前記キャビティに装着された状態で前記キャビティのキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出するとともに前記キャビティ面との間で前記第1大径部を成形する本体部と、前記基部から前記本体部に亘って該本体部の軸方向に沿って貫通する加圧ポートと、該加圧ポートの前記本体部側に形成されて前記フローティングコアを嵌合して保持する内周面と、を備え、前記第2中子は、前記キャビティの他端部に装着される基部と、該基部が前記キャビティに装着された状態で前記キャビティのキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出するとともに前記キャビティ面との間で前記第2大径部を成形する本体部と、前記基部から前記本体部に亘って該本体部の軸方向に沿って前記フローティングコアと同径で貫通する排出ポートと、を備える、ことを特徴とする。
【0032】
この発明は、請求項5に記載の中子の構成を具体的に明確にしたものであり、キャビティの開放された一端部及び他端部にそれぞれ装着される第1中子、第2中子が、キャビティ面との間で第1大径部及び第2大径部を成形する。また、第1中子の本体部には、基準中空内周面を成形するフローティングコアが保持され、第2中子の本体部には、残余の樹脂材料を排出する排出ポートが形成されている。従って、かかる簡易な構成の第1中子及び第2中子を用いることによって、第1大径部及び第2大径部の中空内周面を成形するとともに基準中空内周面を成形することができる。
【発明の効果】
【0033】
この発明によると、大径部を成形するとともにキャビティ内に充填された樹脂材料に押し出されるフローティングコアが保持された中子を成形型に装着する簡易な構成によって、基準中空内周面と大径部の中空内周面とで内径が異なる管状中空成形品を容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施の形態に係る成形型の概略を説明する図である。
【図2】(a)は図1のI−I線断面図、(b)は図1のII−II線断面図である。
【図3】同じく、本実施の形態に係る成形型を説明する図である。
【図4】同じく、本実施の形態に係る加圧工程の概略を説明する図である。
【図5】同じく、本実施の形態に係る加圧工程の概略を説明する図である。
【図6】同じく、本実施の形態に係る加圧工程の概略を説明する図である。
【図7】同じく、本実施の形態に係る加圧工程の概略を説明する図である。
【図8】管状中空成形品の概略を説明する図である。
【図9】同じく、管状中空成形品の概略を説明する図である。
【図10】従来の管状中空成形品の製造方法の概略を説明する図である。
【図11】中空成形品の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明の実施の形態について、図1〜9に基づいて説明する。なお、本実施の形態に係る管状中空成形品の製造方法及び成形型で製造される管状中空成形品が、図8に示す、基準中空内周面を有して中間部となるパイプ本体部62及びパイプ本体部62の基準中空内周面より拡径した中空内周面を有する第1大径部61及び第2大径部63を両端に有して平面視略コ字状に形成された長尺パイプ製品60である場合を例として説明する。
【0036】
まず、本実施の形態に係る管状中空成形品の製造方法で使用される成形型の概略を説明する。
【0037】
図1は、成形型10の概略を説明する図であり、図2(a)は図1のI−I線断面図、図2(b)は図1のII−II線断面図であり、図3は、成形型10を説明する図である。図示のように、成形型10は、下型11及び下型11に対して型締め方向及び型開き方向に移動する上型12、下型11と上型12との間に装着される第1中子30及び第2中子40を備える。第1中子30には、球状のフローティングコア50が装着される。このフローティングコア50は、その直径が、成形する長尺パイプ製品60のパイプ本体部62における基準中空内周面の内径とほぼ同径の直径を有して形成される。
【0038】
下型11と上型12にはそれぞれ、長尺パイプ製品60の外周面に沿ったキャビティ面が形成される。このキャビティ面は、第1大径部61の外周面に倣った半割状、すなわち断面半円弧状で連続する第1キャビティ面13a、第1キャビティ面13aから連続して形成されてパイプ本体部62の外周面に倣った形状に形成された第2キャビティ面13b、第2キャビティ面13bから連続して形成されて第2大径部63の外周面に倣った形状に形成された第3キャビティ面13cを有する。
【0039】
第1キャビティ面13aには、この第1キャビティ面13aから連続するととともに成形型10の外部に連通する半割状の第1中子装着面14aが形成され、第3キャビティ面13cには、この第3キャビティ面13cから連続するとともに成形型10の外部に連通する半割状の第2中子装着面15aが形成される。
【0040】
かかる構成の下型11及び上型12において、上型12が下型11に対して型締めされると、第1キャビティ面13aによって第1キャビティ13Aが形成され、第2キャビティ面13bによって第2キャビティ13Bが形成され、第3キャビティ面13cによって第3キャビティ13Cが形成される。これら第1キャビティ13A、第2キャビティ13B、第3キャビティ13Cによって、軸状に延在するキャビティ13が構成され、下型11及び上型12に半割状に形成された第1中子装着面14aによって、キャビティ13の一端部に連続して外部に開放された円筒状の第1中子装着部14が構成され、下型11及び上型12に半割状に形成された第2中子装着面15aによって、キャビティ13の他端部に連続して外部に開放された第2中子装着部15が構成される。
【0041】
上型12には、キャビティ13の第2キャビティ13Bに連通して樹脂材料となる溶融樹脂mをキャビティ13内に射出する射出口12aが形成される。
【0042】
次に、第1中子30及び第2中子40について説明する。図2(a)で示すように、第1中子30は、成形型10の第1中子装着部14に嵌合する円盤状の基部31、基部31の略中央部分から突出するとともに第1大径部61の中空内周面の形状に倣った略円筒状の本体部32を有して一体に形成される。この本体部32には、基部31から離間するに従って漸次縮径する先端部32aが形成される。
【0043】
第1中子30には、基部31から本体部32の先端部32aに亘って本体部32の軸方向に沿って貫通する加圧ポート34が形成される。この加圧ポート34は、第1中子30が成形型10に装着された状態で成形型10の外部と連通し、本体部32の同軸上に形成された第1ポート34a、第1ポート34aから連続するとともに先端部32a側で第1ポート34aから拡径した第2ポート34bを有して形成される。この第1中子30の第2加圧ポート34bの内周面34cには、球状に形成されたフローティングコア50が嵌合して保持可能に形成される。この状態において第1中子30が成形型10に装着されると、キャビティ13と成形型10の外部とは非連通状態となる。
【0044】
図2(b)で示すように、第2中子40は、成形型10の第2中子装着部15に嵌合する円盤状の基部41、基部41の略中央部分から突出するとともに第2大径部63の中空内周面の形状に倣った円筒状の本体部42を有して一体に形成される。この本体部42には、基部41から離間するに従って漸次縮径する先端部42aが形成される。
【0045】
第2中子40には、基部41から本体部42の先端部42aに亘って本体部42の軸方向に沿って貫通する排出ポート44が形成される。この排出ポート44は、第2中子40が成形型10に装着された状態で成形型10の外部と連通し、フローティングコア50の直径とほぼ同径であって、本体部42の同軸上に形成される。
【0046】
次に、本実施の形態に係る管状中空成形品の製造方法について、図4〜7及び再び図2及び図3を用いて説明する。図4〜7は、加圧工程の概略を説明する図である。
【0047】
樹脂製の長尺パイプ製品60は、本実施の形態では、型締め工程、材料充填工程、加圧工程、保圧工程、冷却工程、型開き工程を順次経ることによって、製品の最終形状に倣った形状に成形される。
【0048】
図3で示すように、上型12を、下型11に対して矢線Aで示す型締め方向に移動させて、それぞれ重ね合わせてキャビティ13を構成する。
【0049】
続いて、フローティングコア50を装着した第1中子30及び第2中子40を成形型10に装着する。まず、第1中子30の基部31を第1中子装着部14に装着すると、図2(a)で示すように、本体部32が第1キャビティ13Aの第1キャビティ面13aから離間して間隙を介して第1キャビティ13A内に進入して突出する。
【0050】
次いで、第2中子40の基部41を第2中子装着部14に装着すると、図2(b)で示すように、本体部42が第3キャビティ13Cの第3キャビティ面13cから離間して間隙を介して第3キャビティ13C内に進入して突出する。
【0051】
その後、第2中子40の排出ポート44と連通する成形型10の外部に、図示しない溶融樹脂受け皿を取り付ける。
【0052】
このように、下型11と上型12とを重ね合わせ、第1中子30及び第2中子40を第1中子装着部14及び第2中子装着部15に装着し、第2中子40の排出ポート44と連通する成形型10の外部に溶融樹脂受け皿を取り付けることによって、型締め工程が完了する。
【0053】
型締め工程の後、材料充填工程に移行する。この材料充填工程では、上型12に形成された射出口12aから、溶融樹脂mをキャビティ13内に射出することで、キャビティ13内に溶融樹脂mが充填される。溶融樹脂mには、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の熱可塑性樹脂が用いられる。射出口12aからキャビティ13内に射出された溶融樹脂mは、第2キャビティ13Bから漸次第1キャビティ13A及び第3キャビティ13Cへと充填される。キャビティ13内に射出された溶融樹脂mは、外表面側から次第に冷却されて硬化する。
【0054】
この材料充填工程の後、加圧工程に移行する。
【0055】
図4で示すように、加圧工程では、成形型10に装着された第1中子30の加圧ポート34から、加圧流体をキャビティ13内に圧入する。まず、加圧流体が第1加圧ポート34a内を流通し、第2加圧ポート34bの内周面34cに嵌合して保持されたフローティングコア50を、溶融樹脂m中に押し出す。キャビティ13に沿った溶融樹脂mの中心部は比較的粘度が低い状態にあることから、フローティングコア50は、加圧流体によってキャビティ13に沿って溶融樹脂m中に押し出される。
【0056】
図5で示すように、溶融樹脂m中に押し出されたフローティングコア50は、キャビティ13内に連続的に圧入される加圧流体によって、比較的粘度が低い溶融樹脂mのキャビティ13に沿った中心部を、第1キャビティ13A側から第3キャビティ13C側に向かって第2キャビティ13B中を進行する。フローティングコア50は、その進行方向前方側の溶融樹脂mをキャビティ13のキャビティ面側に押し付けながら、溶融樹脂m中に基準中空内周面を成形していく。このとき、フローティングコア50は、基準中空内周面の凹凸を平滑に成形していく。その際、余剰の溶融樹脂mは、第2中子40の排出ポート44から順次押し出されていく。押し出された溶融樹脂mは、排出ポート44から溶融樹脂受け皿に排出される。
【0057】
図6で示すように、フローティングコア50が第3キャビティ13Cに到達すると、余剰の溶融樹脂mを第2中子40の排出ポート44から溶融樹脂受け皿に押し出しながら、排出ポート44内に進入する。そして、図7で示すように、フローティングコア50は、加圧流体の加圧力によって、排出ポート44から溶融樹脂受け皿内に排出される。これにより、溶融樹脂m中に基準中空内周面が成形されて、樹脂成形品Mが成形される。
【0058】
加圧工程の後、保圧工程及び冷却工程を経て、キャビティ13内の樹脂成形品Mが硬化した長尺パイプ製品60が形成される。長尺パイプ製品60が形成された後、型開き工程に移行する。型開き工程では、上型12を下型11に対して型開き方向に移動させて、長尺パイプ製品60を取り出す。
【0059】
図8は、本実施の形態に係る管状中空成形品の製造方法によって製造された長尺パイプ製品60の概略を説明する図である。図示のように、長尺パイプ製品60は、中間部に相当する細いパイプ本体部62及びパイプ本体部62に対して拡径して形成された第1大径部61及び第2大径部63をパイプ本体部62の両端部に有して形成される。第1大径部61及び第2大径部63の中空内周面64の内径は、パイプ本体部62の基準中空内周面の内径に対して拡径して形成されている。
【0060】
上記構成を有する管状中空成形品の製造方法によれば、パイプ本体部62の両端部に、パイプ本体部62に対して拡径された第1大径部61及び第2大径部63を有し、第1大径部61及び第2大径部63における中空内周面64の内径とパイプ本体部62における基準中空内周面の内径とが異なる長尺パイプ製品60を、第1中子30及び第2中子40を成形型10に装着し、かつ装着された第1中子30からフローティングコア50を溶融樹脂m中にキャビティ13に沿って押し出す簡易な構成によって製造することができる。
【0061】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。上記実施の形態では、長尺パイプ製品60の両端部に第1大径部61及び第2大径部63が形成される場合を説明したが、例えば、図9で示すように、一端部側にのみ大径部71、81が形成された長尺パイプ製品70、80を成形する場合にも適用することができる。一方、長尺パイプ製品60を成形した後に、パイプ本体部62の所望の箇所で長尺パイプ製品60を切断して、長尺パイプ製品70、80としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 成形型
11 下型
12 上型
13 キャビティ
13A 第1キャビティ
13B 第2キャビティ
13C 第3キャビティ
13a 第1キャビティ面
13b 第2キャビティ面
13c 第3キャビティ面
14a 第1中子装着面
15a 第2中子装着面
30 第1中子
32 本体部
34 加圧ポート
40 第2中子
42 本体部
44 排出ポート
50 フローティングコア
60、70、80 長尺パイプ製品(管状中空成形品)
61 第1大径部
62 パイプ本体部
63 第2大径部
m 溶融樹脂(樹脂材料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準中空内周面に対して拡径した中空内周面を有する大径部を端部に有する管状中空成形品を成形するとともに両端部が外部に開放された軸状に延在するキャビティを備える成形型を用いた管状中空成形品の製造方法において、
前記キャビティにおける前記大径部を成形するキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出して前記キャビティ面との間で前記大径部を成形するとともに前記キャビティと前記成形型の外部とを連通する加圧ポートが形成されて該加圧ポートの前記キャビティ側にフローティングコアが保持された中子を前記キャビティの一端部に装着して前記成形型を型締めする型締め工程と、
前記キャビティに樹脂材料を充填する材料充填工程と、
前記キャビティに前記樹脂材料が充填された後に前記加圧ポートから圧入される加圧流体によって前記フローティングコアを前記樹脂材料中に押し出して前記キャビティに沿って進行させて前記管状中空成形品の前記基準中空内周面を成形して前記キャビティの他端部から前記フローティングコアを排出する加圧工程と、
を備えることを特徴とする管状中空成形品の製造方法。
【請求項2】
基準中空内周面に対して拡径した中空内周面を有する第1大径部及び第2大径部を両端部に有する管状中空成形品を成形するとともに両端部が外部に開放された軸状に延在するキャビティを備える成形型を用いた管状中空成形品の製造方法において、
前記キャビティにおける前記第1大径部を成形するキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出して前記キャビティ面との間で前記第1大径部を成形するとともに前記キャビティと前記成形型の外部とを連通する加圧ポートが形成されて該加圧ポートの前記キャビティ側にフローティングコアが保持された第1中子を前記キャビティの一端部に装着し、前記キャビティにおける前記第2大径部を成形するキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出して前記キャビティ面との間で前記第2大径部を成形するとともに前記キャビティと前記成形型の外部とを連通する排出ポートが形成された第2中子を前記キャビティの他端部に装着して前記成形型を型締めする型締め工程と、
前記キャビティに樹脂材料を充填する材料充填工程と、
前記キャビティに前記樹脂材料が充填された後に前記加圧ポートから圧入される加圧流体によって前記フローティングコアを前記樹脂材料中に押し出して前記キャビティに沿って進行させて前記管状中空成形品の前記基準中空内周面を成形し、前記排出ポートから前記フローティングコアを排出する加圧工程と、
を備えることを特徴とする管状中空成形品の製造方法。
【請求項3】
両端部が外部に開放されて軸状に延在したキャビティに樹脂材料が充填され、該樹脂材料中に前記加圧ポートから圧入される加圧流体によって前記フローティングコアが押し出されて前記キャビティに沿って進行して前記管状中空成形品の前記基準中空内周面を成形して前記キャビティの他端部から前記フローティングコアを排出して、基準中空内周面に対して拡径した中空内周面を有する大径部を端部に有する管状中空成形品を成形する成形型において、
前記キャビティの両端部の少なくとも一端部に装着されて前記キャビティにおける前記大径部を成形するキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出して前記キャビティ面との間で前記大径部を成形するとともに前記キャビティと前記成形型の外部とを連通する加圧ポートが形成されて該加圧ポートの前記キャビティ側にフローティングコアを保持する中子を備えることを特徴とする成形型。
【請求項4】
前記中子は、
前記キャビティの端部に装着される基部と、
該基部が前記キャビティに装着された状態で前記キャビティのキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出するとともに前記キャビティ面との間で前記大径部を成形する本体部と、
前記基部から前記本体部に亘って該本体部の軸方向に沿って貫通する加圧ポートと、
該加圧ポートの前記本体部側に形成されて前記フローティングコアを嵌合して保持する内周面と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の成形型。
【請求項5】
両端部が外部に開放されて軸状に延在したキャビティに樹脂材料が充填され、該樹脂材料中に前記加圧ポートから圧入される加圧流体によって前記フローティングコアが押し出されて前記キャビティに沿って進行して前記管状中空成形品の基準中空内周面が成形され、前記排出ポートから前記フローティングコアを排出して、基準中空内周面に対して拡径した中空内周面を有する第1大径部及び第2大径部を両端部に有する管状中空成形品を成形する成形型において、
前記キャビティの一端部に装着されて前記キャビティにおける前記第1大径部を成形するキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出して前記キャビティ面との間で前記第1大径部を成形するとともに前記キャビティと前記成形型の外部とを連通する加圧ポートが形成されて該加圧ポートの前記キャビティ側にフローティングコアを保持する第1中子と、
前記キャビティの他端部に装着されて前記キャビティにおける前記第2大径部を成形するキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出して前記キャビティ面との間で前記第2大径部を成形するとともに前記キャビティと前記成形型の外部とを連通する排出ポートが形成された第2中子と、
を備えることを特徴とする成形型。
【請求項6】
前記第1中子は、
前記キャビティの一端部に装着される基部と、
該基部が前記キャビティに装着された状態で前記キャビティのキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出するとともに前記キャビティ面との間で前記第1大径部を成形する本体部と、
前記基部から前記本体部に亘って該本体部の軸方向に沿って貫通する加圧ポートと、
該加圧ポートの前記本体部側に形成されて前記フローティングコアを嵌合して保持する内周面と、を備え、
前記第2中子は
前記キャビティの他端部に装着される基部と、
該基部が前記キャビティに装着された状態で前記キャビティのキャビティ面から離間して間隙を介して前記キャビティ内に突出するとともに前記キャビティ面との間で前記第2大径部を成形する本体部と、
前記基部から前記本体部に亘って該本体部の軸方向に沿って前記フローティングコアと同径で貫通する排出ポートと、を備える、
ことを特徴とする請求項5に記載の成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−213919(P2012−213919A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80826(P2011−80826)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】