説明

管継手

【課題】管継手の外周に不要な外周線を形成することなく、被保持部を構成する。
【解決手段】第1筒部12の外周面でスライド溝12Aよりも他端B側には、被保持部33が構成されている。被保持部33は、周方向に互いに対向する位置で、外周線30と軸方向に異なる位置に一対のみ構成されている。被保持部33は、平坦部34と傾斜部35とで構成されている。平坦部34は、第1筒部12の外周よりも径方向内側に形成され、一対の平坦部34が互いに平行に配置される平坦面で構成されている。傾斜部35は、平坦部34の軸方向端部34Eから第1筒部12の外周面に向かって大径となるように軸方向に傾斜された傾斜面で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水・給湯用などの配管を行った後、配管の下流側末端部に接続して、水漏れのテスト等を行うための管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、給水、給湯用などの配管に樹脂製の管が用いられている。樹脂製の管は、軽量で扱いやすく、金属管のように錆びも発生しないという利点を有している。また、樹脂製の管を接続するために、ワンタッチで接続可能な継手も用いられており、簡易に施工を行うことが可能となっている。
【0003】
ところで、このような樹脂製の管を接続する管継手に、スパナ、レンチなどの工具による保持を可能とするため、被保持部として、外周に六角部が構成されることがある(特許文献1参照)。管の外周に六角部を構成した場合、六角部の軸方向両端には周方向に外周線が形成される。樹脂製の管を管継手と接続する場合には、管を適切な位置まで管継手に差し込む必要があることから、差し込みの目印となる外周線を意図的に管継手に形成することがある。しかしながら、六角部を構成すると、目印となる外周線と混同されるおそれのある外周線が形成されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−25762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであり、管継手の外周に不要な外周線を形成することなく安全な被保持部を構成した管継手を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の管継手は、円筒状とされ一端側から管が挿入される筒部と、前記筒部の内周に配置され、前記管の外周面と前記筒部の内周面との間を密閉するシールリングと、前記筒部の前記シールリングよりも他端側の外周に周方向に形成された差し込み代用の外周線部と、前記筒部の外周において周方向に互いに対向する位置でかつ前記外周線と軸方向に異なる位置に一対のみ構成され、前記筒部の外周よりも径方向内側に形成される平坦部と、前記平坦部の軸方向端部から前記筒部の外周面に向かって大径となるように傾斜された傾斜部と、を有する被保持部と、を備えている。
【0007】
本発明の管継手では、互いに対向する平坦部が筒部の外周に一対のみ構成されている。この平坦部をスパナで保持することにより、スパナを用いて、筒部を対象物に対して締結させることができる。本発明では、全周に亘って六角形状とするのではなく、平坦部が一対のみ構成されているので、周方向の外周線が形成されることがない。したがって、六角とした場合のように外周線が形成ることがなく、シールリングよりも挿入方向の奥側(他端側)に形成される差し込み代としての目印用の外周線部との混同を回避することができる。
【0008】
また、平坦部が筒部の外周面よりも径方向内側に形成されているので、外周面と平坦部との間に段差による角部が構成されるが、本発明では、平坦部の軸方向端部から筒部の外周面に向かって大径となる傾斜部が構成されているので、段差の角部が鈍角となり、当該角部における安全性を高めることができる。
【0009】
本発明の請求項2に記載の管継手は、前記筒部の前記他端側には、前記筒部の他端側を閉鎖する止水栓を着脱可能な接続部が構成されていること、を特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、止水栓を取り付けて配管の止水を行い、水圧テスト、気密テストなどを行うことができる。
【0011】
本発明の請求項3に記載の管継手は、前記筒部の前記一端側には、挿入された管を着脱可能な着脱部が構成されていること、を特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、管継手と管とを着脱することができ、例えば、水圧テスト、気密テストを行うために装着し、終了後に取り外して、使用することができる。
【0013】
本発明の請求項4に記載の管継手は、前記傾斜部と前記筒部の径方向の断面との角度は30度〜60度であること、を特徴とする。
【0014】
30度未満では段差の角度が鋭くなってしまい、60度を超える角度であれば切削面積が広くなり無駄となるので、30度〜60度の範囲内とすることにより、無駄なスペースを広げることなく段差の角部についての安全性を適切に確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成によれば、管継手の外周に不要な外周線を形成することなく、被保持部を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る管継手の半裁断面図である。
【図2】本発明の実施形態に第1筒部の半裁断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る管継手を第1筒部側からみた一部斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る管継手と、外周線の記された管を第1筒部側からみた一部斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る管継手の被保持部を工具で保持した状態を示す一部斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る管継手に管が接続された状態を示す半裁断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る管継手から管を取り外す状態を示す半裁断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態である管継手10を示す半裁断面図である。管継手10は、第1筒部12、第2筒部14、スライドキャップ16を備えている。
【0019】
図1〜図3に示されるように、第1筒部12は、円筒状とされている。第1筒部12には、軸方向の一端A側から管40が挿入される。第1筒部12の外周の軸方向(挿入方向)一端A側には、スライド溝12Aが構成されている。スライド溝12Aは、軸方向に所定の幅をもった周方向の凹溝とされている。また、第1筒部12の一端A側の内周面には、軸方向他端B側に向かって大径となるテーパー部12Tが構成されている。第1筒部12の他端B側の内周には、雌ネジ12Nが形成されている。雌ネジ12Nとテーパー部12Tの間には、後述する止め輪28を嵌め込む溝12Mが構成されている。
【0020】
第2筒部14は、円筒状とされ、一端側に第1筒部12の雌ネジ12Nと螺合される雄ネジ14Nが形成されている。また、雄ネジ14Nの基端側には、フランジ部14Fが形成されている。フランジ部14Fは、雄ネジ14Nのねじ山よりも大径とされ、第1筒部12の他端Bよりもわずかに小径とされている。第2筒部14の他端側の内周面には、雌ネジ14Mが形成されている。第2筒部14の一端側の内周面には、段差部14Dが構成されている。段差部14Dは、径方向外側へ拡径されており、第2筒部14の内周よりも大径とされている。第2筒部14の軸方向外側(第1筒部12側)には、リング状のキャップリング13が取り付けられている。キャップリング13と段差部14Dとの間には、凹溝が構成され、後述するシールリング26が嵌め込まれる。
【0021】
第2筒部14は、雄ネジ14Nが、第1筒部12の他端Bの先端がフランジ部14Fに突き当てられる位置まで雄ネジ12Nと螺合されることにより、第1筒部12と連結されている。
【0022】
スライドキャップ16は、円筒状とされ、円筒の内壁側を構成する内筒部17と、円筒の外壁側を構成する外筒部18を備え、内筒部17と外筒部18の間に係合空間16Aが構成されている。内筒部17と外筒部18は、先端部19で連結され、先端部19により係合空間16Aの一端が閉鎖されている。係合空間16Aには、第1筒部12の一端A側が挿入され、外筒部18がスライド溝12Aに係合されている。
【0023】
内筒部17の先端部19と逆側は、外筒部18よりも他端側に延び、先端に径方向外側へ延出されたフランジ部17Fが形成されている。内筒部17のフランジ部17Fよりも先端部19側には、周方向の4箇所に、後述する管保持爪22を取り付けるための取付穴17Hが構成されている。スライドキャップ16は、軸方向に沿って、スライド溝12A内を移動可能とされている。
【0024】
取付穴17Hの各々には、管保持爪22が配置されている。管保持爪22は、スライドキャップ16の内側に向かって露出する爪部22Aを有している。爪部22Aは、管40の外周面に食い込み可能な先端を有する凸条とされている。管保持爪22は、取付穴17Hに係合されており、スライドキャップ16と共に移動可能とされている。
【0025】
フランジ部17Fとキャップリング13の間には、コイルスプリング24が配置されている。コイルスプリング24により、スライドキャップ16は、軸方向の外側(第1筒部12の一端Aから遠ざかる方向)へ向かって付勢されている。これにより、管保持爪22は、第1筒部12のテーパー部12Tの中間位置に配置され、爪部22Aがスライドキャップ16の内壁から内側へ突出される。
【0026】
キャップリング13に閉鎖された段差部14Dには、シールリング26が嵌め込まれている。シールリング26により、管30の外周面と第2筒部14の内周面との間が密閉される。第1筒部12の溝12Mには、止め輪28が嵌め込まれている。止め輪28により、シールリング26を交換する目的で第2筒部14を第1筒部12から取り外す際、キャップリング13がコイルスプリング24によって飛び出るのを防ぐ構造とされている。
【0027】
第1筒部12と第2筒部14とが連結された状態で、第1筒部12の他端Bと第2筒部14のフランジ部14Fとの接合部分には、外周線30が形成される。外周線30は、管40の差し込み代の目印となる線であり、シールリング26よりも第2筒部14の雌ネジ14M側に構成されている。スライドキャップ16の先端面から外周線30の長さLが、管40の差し込み代となる。ユーザーは、図4に示すように、管40の差し込み先端部から長さLの位置に周線40Lを書き込み、この周線が見えなくなる位置まで管40を管継手10に差し込むことになる。
【0028】
第1筒部12の外周面でスライド溝12Aよりも他端B側には、被保持部33が構成されている。被保持部33は、図2に示すように、周方向に互いに対向する位置で、外周線30と軸方向に異なる位置に一対のみ構成されている。被保持部33は、平坦部34と傾斜部35とで構成されている。平坦部34は、第1筒部12の外周よりも径方向内側に形成され、一対の平坦部34が互いに平行に配置される平坦面で構成されている。傾斜部35は、平坦部34の軸方向端部34Eから第1筒部12の外周面に向かって大径となるように軸方向に傾斜された傾斜面で構成されている。傾斜部35は、図2に示すように、第1筒部12の径方向の断面Xとの間の角度を傾斜角度θとすると、傾斜角度θが、30度〜60度であることが好ましい。
【0029】
一対の被保持部33の平坦部34は、図5に示すように、第1筒部12の組み付けや取り外しを行う際に工具SP(スパナ、レンチなど)で保持するための部分として設けられている。一対の被保持部33の周方向における延長上には、段差や切り込み線などが形成されていない。
【0030】
図1に示すように、管継手10の管40が差し込まれる側と逆側(雌ネジ14M側)には、止水栓42を取付可能とされている。止水栓42は、雌ネジ14Mに螺合される雄ネジ部42Nと、雄ネジ部42Nよりも大径のフランジ部42Fを備えている。フランジ部42Fの雄ネジ部42N側には、シールリング43が配置されている。止水栓42を、フランジ部42Fが第2筒部14の先端面に当接される位置までねじ込むことにより、管継手10の第2筒部14の他端側開口が閉鎖される。
【0031】
次に、管継手10への管40の接続動作、及び、取り外し動作について説明する。
【0032】
管40を取り付ける際には、管40を第1筒部12の一端A側から挿入し、管40の先端がシールリング26を超え、雌ネジ14Mの手前に配置されるまで差し込む。すなわち、管40の外周に記した前述の差し込み代用の周線が、スライドキャップ16によって隠れる位置まで差し込むことになる。これにより、図6に示すように、シールリング26により管40の外周面と第2筒部14の内周面との間がシールされると共に、管保持爪22の爪部22Aが管40に食い込んで、管40が管継手10に接続される。この状態で、止水栓42を管継手10の他端側に取り付けて止水を行い、水圧テストや気密テストを行うことができる。
【0033】
管40を取り外す際には、図7に示すように、スライドキャップ16を軸方向の第1筒部12側へ移動させる。これにより、管保持爪22がテーパー部12Tを大径となっている他端B側へ移動し、径方向外側へ退避して爪部22の管40への食い込みが解放される。この状態で、管40を引き抜くことにより、管継手10から管40を取り外すことができる。
【0034】
本実施形態によれば、一対の被保持部33の周方向における延長上には、段差や切り込み線などが形成されていないので、被保持部33を六角形状に構成した場合と比較して、外周線30と混同される可能性のある外周線を形成しないことができる。
【0035】
また、被保持部を外周面に構成した場合、被保持部と外周面との間の段差部分がエッジとなって、引っ掛かりの原因になることがあるが、本実施形態では、傾斜部35を構成しているので、安全性にも優れた構成とすることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 管継手
12 第1筒部
14 第2筒部
14N 雄ネジ
22 管保持爪
30 外周線
33 被保持部
34E 軸方向端部
34 平坦部
35 傾斜部
40 管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状とされ一端側から管が挿入される筒部と、
前記筒部の内周に配置され、前記管の外周面と前記筒部の内周面との間を密閉するシールリングと、
前記筒部の前記シールリングよりも他端側の外周に周方向に形成された差し込み代用の外周線部と、
前記筒部の外周において周方向に互いに対向する位置でかつ前記外周線と軸方向に異なる位置に一対のみ構成され、前記筒部の外周よりも径方向内側に形成される平坦部と、前記平坦部の軸方向端部から前記筒部の外周面に向かって大径となるように傾斜された傾斜部と、を有する被保持部と、
を備えた管継手。
【請求項2】
前記筒部の前記他端側には、前記筒部の他端側を閉鎖する止水栓を着脱可能な接続部が構成されていること、を特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記筒部の前記一端側には、挿入された管を着脱可能な着脱部が構成されていること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記傾斜部と前記筒部の径方向の断面との角度は30度〜60度であること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−261525(P2010−261525A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113532(P2009−113532)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】