説明

管継手

【課題】水圧テスト時に確実に施工不良を検知することができ、施工不良による漏水事故を確実に防止することができる管継手を提供する。
【解決手段】継手本体1を、第1部材4と、第2部材5とで構成し、締付環体3が縮径しない施工不良状態では、対向して設けられた2本のスライドガイド片5cの端面に締付環体3の端面があたり、第1部材4が第2部材5側に移動しないように規制して、水圧テストを行ったとき、第2部材5に設けられた施工不良検知孔52から確実に漏水し、パイプPが正常に挿入されて、縮径した締付環体3によって締め付けられると、スライドガイド片5cによる規制が解除されて、第1部材4が第2部材5側に移動可能となり、第1部材4の嵌合筒部4bが正常に第2部材5の嵌合凹部53内に嵌合すると、嵌合保持手段によって、嵌合筒部4bの嵌合凹部53からの抜けを防止するとともに、Oリング54によって施工不良検知孔52から漏水しないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ポリエチレン管などの樹脂製パイプをワンタッチで接続できる管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、給水・給湯用として用いられる架橋ポリエチレン管やポリブテン管などの樹脂製パイプをワンタッチで接続できる管継手として、図7及び図8に示すような管継手100が市販されている(特許文献1参照)。
すなわち、この管継手100は、継手本体110と、外筒部120と、締付環体130とを備えている。
【0003】
そして、この管継手100は、外筒部120の開口からパイプPの一端部を外筒部120内に挿入し、継手本体110の挿入筒部(ノズルまたはニップルとも称される)111にパイプPの内部を挿入していくと、パイプPの先端が締付環体130を拡径状態に保持している拡径片131に当たる。
さらに、挿入すると、図8に示すように、パイプPの先端で拡径片131が押し飛ばされて、締付環体130が弾性力によって縮径し、その内周面と挿入筒部111との間でパイプPを挟み込んで、パイプPの抜け止めを図るようになっているとともに、挿入筒部111に外嵌されたリング状シール材112によってパイプPを水密に接続する。
【0004】
ところで、上記のような管継手100の場合、リング状シール材112を備えているので、挿入筒部111のリング状シール材112部分がパイプP内に入り込む程度までパイプP内に挿入されていると、パイプPの挿入不足により締付環体130が縮径しない場合であっても、リング状シール材112の働きによって、ある程度止水がなされてしまい、水圧テスト時には施工不良を発見できない。しかし、その状態で長期間使用していると、パイプの脈動などにより止水性がなくなり漏水する場合がある。
そこで、上記の管継手100では、例えば、パイプPが正常な位置まで挿入されたかを外部から視認できるように外筒部120の少なくとも外筒本体121を透明樹脂材料で形成している。
【0005】
すなわち、上記管継手100の場合、パイプPが正常に接続されたか否かは、外筒部120の外筒本体121を介して管継手100の内部を視認すれば、施工後の施工不良による漏水を確実に防ぐことができる。しかしながら、施工を行なう作業者は、かならずしも熟練者ではない場合があり、作業後に視認を怠ってしまい、施工不良の状態で工事を終了してしまう恐れがある。また、施工場所によっては、他の配管などの影になって視認しづらい場合もある。
したがって、上記のような管継手でも、施工不良による施工後の漏水を完全に防止することができない。
なお、図7及び図8中、140は抜け止めリングである。
【0006】
そこで、本発明の発明者が、上記問題を解消するために、挿入筒部のリング状シール材装着部に設けられたシール材装着用周溝の底の一部に挿入筒部の内外に連通し、パイプが正常挿入位置に配置されたときのみに、パイプの内周面からの圧力によりリング状シール材が水密に圧接される貫通孔を備えた管継手を先に提案している(特許文献2)。
すなわち、この管継手の場合、パイプの挿入不足があった場合、水圧テストをすると、配管内の水が貫通孔を介して挿入筒部の外側に漏れ出る。したがって、施工不良を水圧テストの段階で確実に検知して、施工不良による施工後の漏水事故を防止することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3843288号公報
【特許文献2】特開2008−240928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記先に発明者が提案した上記管継手の場合、リング状シール材の外径がパイプの内径より少し小さいような構造としておけば、施工不良を水圧テストの段階で確実に検知できるのであるが、パイプの偏平や公差によってパイプ寸法にバラツキがあるため、締付環体が正常に作用しても止水が十分でなくなるおそれがある。
一方、リング状シール材の外径がパイプの内径より少し大きいような構造としておけば、パイプを挿入筒部に挿入するだけで、リング状シール材で上記貫通孔が塞がれて水圧テストでは施工不良を検知できない場合がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みて、水圧テスト時に確実に施工不良を検知することができ、施工不良による漏水事故を確実に防止することができる管継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明にかかる管継手は、パイプの端部が挿入されるリング状シール材が外嵌された挿入筒部を一側に有する継手本体と、前記挿入筒部との間にパイプ挿入空間を形成するように継手本体に固定された外筒部とを有し、前記パイプ挿入空間の正常挿入位置までパイプが挿入されると、締付環体が縮径して締付環体と挿入筒部とによってパイプを挟み込んで抜け止め状態にする管継手において、前記継手本体が、一端に前記挿入筒部が設けられ、他端に嵌合筒部が設けられた前記外筒部が固定された第1部材と、前記嵌合筒部が嵌合する嵌合凹部を備えるとともに、前記嵌合凹部に外周面に開口する施工不良検知孔が穿設されている第2部材と、前記締付環体が拡径状態にあるときは、前記第1部材の嵌合筒部の前記嵌合凹部への嵌合を阻止し、前記締付環体がパイプの締め付け状態まで縮径したとき前記第1部材が第2部材方向にスライドして前記嵌合筒部の嵌合凹部への嵌合を可能とするスライド規制手段と、前記嵌合筒部が嵌合凹部の正常位置まで嵌合した状態で、嵌合筒部の嵌合凹部から抜けを防止する嵌合保持手段と、前記嵌合筒部が嵌合凹部の正常位置まで嵌合した状態で、前記施工不良検知孔からの管継手外への漏水を阻止するシール材と、を備えていることを特徴としている。
【0011】
本発明において、スライド規制手段は、特に限定されないが、例えば、スライド規制手段が、第2部材から延出し、端部が外筒部の一部をスライド可能に貫通して外筒部内に臨み、その先端面で拡径状態の締付環体の端面を受けるスライドガイド片が挙げられる。
上記スライドガイド片は、第2部材と一体成形されていても、溶接やねじ固定などで第2部材に固定されてもよい。
【0012】
また、上記スライドガイド片は、特に限定されないが、締付環体の端面をバランスよく受けるとともに、締付環体が縮径した状態で第1部材がスムーズに第2部材側にスライド可能なように、複数設けることが好ましい。
さらに、この複数のスライドガイド片は、等間隔で設けることが好ましい。
【0013】
また、嵌合保持手段は、特に限定されないが、例えば、嵌合筒部の外周面に設けられた第1係止周溝と、弾性変形によって縮径して前記第1係止周溝内に入り込み、少なくとも一部が第1係止周溝外に露出するまで弾性復元可能な略C字形をした弾性リングと、嵌合凹部の内周面に設けられ、嵌合筒部が正常に嵌合凹部に嵌合したとき、前記第1係止周溝に一致して前記弾性リングの外周面側が入り込む第2係止周溝とを備えた構成が挙げられる。
【0014】
また、特に限定されないが、パイプの抜け止めをより確実に防止するために、例えば、 挿入筒部の外周面の、締付環体の内周面に対面する位置に、前記パイプの挿入方向前方側に向かって下り勾配で傾斜する傾斜面を有する抜け止めリング装着用周溝が設けられ、この抜け止めリング装着用周溝に、周面に抜け止め突起が設けられた略C字形をした抜け止めリングが装着されている構造としてもよい。
【0015】
また、上記抜け止めリング装着用周溝は、リング状シール材の装着位置よりパイプの挿入方向前方側に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる管継手は、継手本体が、一端に挿入筒部が設けられ、他端に嵌合筒部が設けられた外筒部が固定された第1部材と、嵌合筒部が嵌合する嵌合凹部を備えるとともに、嵌合凹部に外周面に開口する施工不良検知孔が穿設されている第2部材と、締付環体が拡径状態にあるときは、第1部材の嵌合筒部の嵌合凹部への嵌合を阻止し、締付環体がパイプの締め付け状態まで縮径したとき第1部材が第2部材方向にスライドして嵌合筒部の嵌合凹部への嵌合を可能とするスライド規制手段と、嵌合筒部が嵌合凹部の正常位置まで嵌合した状態で、嵌合筒部の嵌合凹部から抜けを防止する嵌合保持手段と、前記嵌合筒部が嵌合凹部の正常位置まで嵌合した状態で、前記施工不良検知孔からの管継手外への漏水を阻止するシール材と、を備えているので、施工不良を確実に防止することができる。
【0017】
すなわち、パイプが正常に接続されるとともに、嵌合筒部が嵌合凹部に正常に嵌合しないかぎり、施工不良検知孔を介して継手本体内部と外部とが連通された状態に保たれる。
したがって、施工不良の状態で水圧テストを行うと、確実に施工不良検知孔を介して漏水が発生し、施工不良を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる管継手の第1の実施の形態をあらわす平面図である。
【図2】図1のI−I線断面図である。
【図3】図1の管継手の断面図であって、そのパイプ接続前の状態をあらわしている。
【図4】図1の管継手の抜け止めリングをあらわし、同図(a)は、その正面図、同図(b)はその側面図、同図(c)は同図(a)のII‐II線切断端面図である。
【図5】図1の管継手へのパイプの接続方法を説明する図であって、同図(a)は締付環体が縮径前の状態をあらわす断面図、同図(b)はパイプに挿入筒部が正常に挿入され、締付環体が縮径した状態をあらわす断面図、同図(c)は嵌合筒部が嵌合凹部に正常に嵌合された状態をあらわす断面図である。
【図6】本発明にかかる管継手の第2の実施の形態であって、そのパイプの未接続状態の断面図である。
【図7】従来の管継手であって、そのパイプの未接続状態の断面図である。
【図8】図7の管継手のパイプ接続状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図3は、本発明にかかる管継手の1つの実施の形態をあらわしている。
【0020】
図1に示すように、この管継手Aは、継手本体1と、外筒部2とを備え、図3に示すように、外筒部2内に締付環体3が内蔵されている。
継手本体1は、図1〜図3に示すように、砲金等の金属材料で形成された第1部材4と第2部材5とを備えている。
【0021】
第1部材4は、一端に挿入筒部4aが設けられ、他端に嵌合筒部4bが設けられている。
挿入筒部4aは、後述するように接続されるパイプP内に挿入されるようになっていて、最大径部が、パイプPの内径より少し小径になっている。
また、挿入筒部4aの外周面には、後述する締付環体3によって締め付けられる位置に2条のシール材装着用周溝41と、1条の抜け止めリング装着用周溝42とが設けられている。
【0022】
2条のシール材装着用周溝41には、EPDM等の合成樹脂弾性材料からなるリング状シール材43が嵌装されている。
リング状シール材43は、シール材装着用周溝41に嵌装された状態で、その外径がパイプPの内径と略同じか少し大径になっている。
【0023】
抜け止めリング装着用周溝42は、2条のシール材装着用周溝41より嵌合筒部4b側に設けられていて、パイプPの挿入方向前方側に向かって下り勾配で傾斜する傾斜面42aを備え、抜け止めリング44が嵌装されている。
また、抜け止めリング装着用周溝42は、後述する抜け止めリング44を縮径状態にすると、抜け止めリング44が完全に収まる大きさを備えている。
【0024】
抜け止めリング44は、ステンレス鋼や銅合金などの金属材料、もしくは、ポリアセタールやポリエーテルサルフォンなどのエンジニアリングプラスチックで形成されていて、図4に示すように、本体部44aと、抜け止め突起としての2条の突条44bとを備えている。
本体部44aは、内周側が幅方向の一側から他側に向かって傾斜面42aと略同じ角度で徐々に縮径する傾斜面44cを有する断面略三角形のC字形をして、抜け止めリング装着用周溝42に嵌装された状態で、傾斜面42aと傾斜面44cとが対面するとともに、その外周面がほぼ抜け止めリング装着用周溝42の上端縁と略一致するようになっている。
【0025】
2条の突条44bは、本体部44aの外周面から突出した状態で平行に設けられているとともに、頂点が、底辺の中心より傾斜面44cの小径側にずれた断面略三角形をしている。すなわち、2条の突条44bは、パイプPの挿入方向に向かって傾いた断面略三角形をしている。
嵌合筒部4bは、後述する第2部材の嵌合凹部53に嵌り込むように形成されているとともに、その周面に嵌合保持手段の一部を構成する第1係止周溝45が設けられている。
【0026】
第1係止周溝45には、嵌合保持手段の一部を構成するばね鋼やステンレス鋼などの金属材料で形成された弾性リング46が、嵌合筒部4bの一部を嵌合凹部53内に臨ませた状態で、嵌合凹部53に内周面で押さえられて、縮径状態で嵌装されている。
すなわち、弾性リング46は、断面円形をしていて、無負荷状態では、その外径が、第1係止周溝45の上縁部分の外径より大きく、その内径が、第1係止周溝45の上縁部分の外径より少し小さくなっている。
【0027】
したがって、弾性リング46を第1係止周溝45部分に臨ませると、無負荷状態では、第1係止周溝45内に少し入り込み、第1部材4から離脱しないようになっている。
また、嵌合筒部4bは、その先端部に先端に向かって徐々に縮径する縮径部49を備えている。
さらに、第1部材4は、挿入筒部4aと嵌合筒部4bとの間の外周面に、後述する外筒本体2aの係合突条22aが嵌り込む係合凹溝48をリング状に備えている。
【0028】
第2部材5は、雄ねじ筒部5aと、締め付け工具受部5bと、スライド規制手段としての断面円弧形状をした対向する2本のスライドガイド片5cとを備えている。
雄ねじ筒部5aは、他の金属製配管材の雌ねじ筒部(図示せず)に螺合するようになっている。
【0029】
締め付け工具受部5bは、外周面がスパナなどの締め付け工具の作用部が係止できるように、6つの面取り部51を備えた形状になっている。
6つの面取り部51のうち、対称位置に設けられた2つの面取り部51には、施工不良検知孔52が穿設されている。
【0030】
施工不良検知孔52は、後述するように、施工不良の際に管継手A内を流れる流体が施工不良検知孔52を介して漏水することが視認可能であればその径は特に限定されないが、直径1〜4mm程度が好ましい。
【0031】
また、締め付け工具受部5bは、その内側に嵌合凹部53をリング状に備えている。
嵌合凹部53の内周面には、前記施工不良検知孔52を臨むとともに、嵌合筒部4bが正常位置まで嵌合したときに、第1係止周溝45と一致する位置に、嵌合保持手段の残部を構成する第2係止周溝52aが設けられている。
【0032】
第2係止周溝52aは、その深さ寸法が弾性リング46の断面の半径とほぼ同じになっている。
また、嵌合凹部53内には、シール材としてのOリング54が内装されている。
【0033】
Oリング54は、EPDM等の合成樹脂弾性材料で形成されていて、その外径が嵌合凹部の内径とほぼ同じか少し大きくなっている。
【0034】
2本のスライドガイド片5cは、管継手Aの中心軸を挟んだ対称位置に、締め付け工具受部5bの端面から第1部材4側に延出するように設けられ、後述する外筒部2内に先端部が入り込んでいる。
2本のスライドガイド片5cの間隔は、後述する締付環体3が拡径片31によって拡径状態に保たれたときの外径より大きく、締付環体3がパイプを正常に締め付けたときの外径より小さくなっている。
【0035】
外筒部2は、外筒本体2aと、キャップ2bとを備えている。
外筒本体2aは、例えば、線膨張係数が(金属に近い程に)小さく、強度、耐熱性、耐薬品性に優れたポリサルフォン(PSF)などの透明樹脂材からなり、一端部が挿入筒部4aとの間に、締付環体3の拡径状態より大きな外径を備えた締付環体収容部を形成する円筒状をした大径筒部21と、大径筒部21に連設され、大径筒部21から離れるにつれて徐々に縮径する縮径筒部22とを備えている。
【0036】
大径筒部21は、その開放端の外周面に雄ねじ部21aを備えている。
縮径筒部22は、その内周面にリング状に係合突条22aを備えている。
【0037】
さらに、外筒本体2aは、スライドガイド片5cに対応する位置に、スライドガイド片5cの断面形状とほぼ同じか少し大きな断面形状をしたスライドガイド片5cのガイド孔23が穿設されている。
そして、外筒本体2aは、スライドガイド片5cをガイド孔23内に挿入するとともに、係合突条22aを係合凹溝48に係合させることで、第1部材4に抜け止め状態で固定されている。
【0038】
キャップ2bは、砲金などの金属材料あるいはポリアセタール等のエンジニアリングプラスチック(透明でも非透明でも構わない)からなり、一側にパイプPより少し大径のパイプ挿入口24を有し、他側に雄ねじ部21aに螺合するねじ筒部25を備えた袋ナット状をしている。
そして、キャップ2bは、後述する締付環体3を、外筒本体2aと挿入筒部4aとの間に挿入したのち、ねじ筒部25を外筒本体2aの雄ねじ部21aに螺合することによって、締付環体3を外筒本体2a内に収容した状態で保持するようになっている。
【0039】
締付環体3は、先に示した特許文献1、2などに記載の管継手と同様に、炭素鋼やバネ鋼等からなり、軸心方向のスリット3aを有し、このスリット3a間に配置した炭素鋼等の高剛性な鋼材からなる拡径片31を挿入した状態で、その内径がパイプPの外径より大きくなり、外径が2つのスライドガイド片5cの間隔より大きくなる。
また、締付環体3は、拡径片31が取り除かれた状態で挿入筒部4aに外嵌されたパイプPの端部をパイプ接続状態で弾発的な締付力で締め付けるとともに、この締め付け状態でその外径が2つのスライドガイド片5cの間隔より小さくなる。
【0040】
この管継手Aは、以下のようにして組み立てられる。
第1部材4の挿入筒部4aにリング状シール材43及び抜け止めリング44を装着するとともに、係合突条44bが係合凹溝48に嵌り込むまで、外筒本体2aを、縮径筒部22側を先頭にして挿入筒部4aに外嵌し、第1部材4に外筒本体2aを固定する。
つぎに、拡径片31で拡径した状態の締付環体3を挿入筒部4aと外筒本体2aとの間に挿入したのち、キャップ2bのねじ筒部25を外筒本体2aの雄ねじ部21aと螺合させて、外筒本体2aとキャップ2bとを一体化して外筒部2を形成するとともに、締付環体3を外筒部2内に内蔵した状態にする。
【0041】
第1部材4の第1係止周溝45内に臨ませ、弾性リング46を第1部材4に係止させたのち、第1部材4を、弾性リング46を第1係止周溝45内にほぼ収容されるように縮径させ、スライドガイド片5cをガイド孔23内に入り込ませながら、スライドガイド片5cの先端面が拡径状態の締付環体3の端面に当接するまで、第2部材5方向に押し込む。
すなわち、締付環体3が拡径状態であるかぎり、嵌合筒部4bは、それ以上嵌合凹部53内に入り込まない。そして、この状態で弾性リング46は、第2係止周溝52aのパイプ挿入方向手前の嵌合凹部53の内壁面によって第1係止周溝45内に入り込んだ縮径状態に保持される。
【0042】
つぎに、この管継手AへのパイプPの接続動作を説明する。
まず、図5(a)に示すように、パイプPの先端を外筒部2のパイプ挿入口24から外筒部2内に挿入し、挿入筒部4aをパイプPの先端部に挿入する。
【0043】
そして、さらにパイプPを外筒部2内に押し込み、パイプPの先端によって拡径片31を押し込み、図5(b)に示すように、拡径片31を締付環体3のスリット3a間から離脱させる。
この拡径片31の離脱によって、締付環体3が縮径し、その弾発力によってパイプPを締め付けて、パイプPの内周面が挿入筒部4aの外周面に密着するとともに、リング状シール材43を圧縮してパイプPが挿入筒部4aと水密に接続される。また、このとき、抜け止めリング44が、パイプPの内周面で押されてC字の開口端同士が近接するように縮径するとともに、突条44bの先端部が少しパイプPの内周面に食い込んだように作用する。
【0044】
また、締付環体3の縮径によって、締付環体3の外径が、2つのスライドガイド片5c間の距離より小さくなっているので、図5(c)に示すように、さらにパイプPを第2部材5側に押し込むと、パイプPとともに第1部材4が第2部材5側に移動し、嵌合筒部4bが嵌合凹部53の奥まで進入する。
そして、第1係止周溝45がほぼ第2係止周溝52aに一致する位置まで達すると、弾性リング46がその弾性復元力によって拡径し、外周方向のほぼ半分が第2係止周溝52a内に入り込む。すなわち、弾性リング46に内周側の残り半分は第1係止周溝45内に入り込んでいるので、弾性リング46が第1係止周溝45及び第2係止周溝52aの壁面に係止されて嵌合筒部4bの嵌合凹部53からの離脱が阻止される。また、このとき、Oリング54は、第1部材4の縮径部49のテーパ面に当接して、管継手Aの外側に押し上げられながら全周にわたって嵌合凹部53の内壁面と縮径部49のテーパ面との間でしっかりと均一に圧縮される。
【0045】
この管継手Aは、上記のように、パイプPが挿入筒部4aの正常挿入位置まで挿入され、拡径片31が離脱して締付環体3が縮径しないかぎり、第1部材4の嵌合筒部4bが第2部材5の嵌合凹部53の正常嵌合位置まで嵌合されない。
そして、第1部材4の嵌合筒部4bが第2部材5の嵌合凹部53の正常嵌合位置まで嵌合されないかぎり、施工不良検知孔52を介して、管継手Aの内部と外部とが連通された状態に保たれる。
【0046】
したがって、第1部材4の嵌合筒部4bが第2部材5の嵌合凹部53の正常嵌合位置まで嵌合されない状態で水圧テストを行えば、確実に施工不良検知孔52を介して水が外部に漏水し、施工不良を確実に検知できる。
また、この管継手Aは、抜け止めリング44を挿入筒部4aに設けられた抜け止めリング装着用周溝42に収容するようにしたので、パイプPの抜け方向に力が加わると、抜け止めリング装着用周溝42の傾斜面42aの作用によって、抜け止めリング44が拡径しようとして、抜け止めリング44の突条がパイプPの内壁面に食い込むように作用し、パイプPに抜け方向の大きな力が加わってもパイプPをしっかりと保持することができる。
しかも、パイプPの抜け止めリング44直上部分が締付環体3によって締め付けられるので、パイプPの内壁面がよりしっかりと抜け止めリング44側に押さえつけられ、より抜け止め効果が高い。
【0047】
また、抜け止めリングにかかる力が砲金等の金属材料で形成された継手本体1によって受けられ、パイプPに抜け方向の力が加わっても、外筒部2には、力が加わらない。したがって、外筒部2に強度が要求されず、外筒部2を薄肉化してコストダウンや軽量化、小型化を図ることができる。
さらに、抜け止めリング44が、リング状シール材43より奥側(パイプPの挿入方向前方)に設けられているので、パイプPの内周面が抜け止めリング44の突条44bによって傷ついたとしてもリング状シール材43による止水性に影響を及ぼすことがなく、安全性が高い。
また、抜け止めリング44の突条44bが、パイプPの挿入方向に向かって傾いた断面略三角形をしているので、突条44bが挿入時には、障害にならず、本体部44aをスムーズに縮径させるとともに、パイプPに抜け方向に力が加わると、パイプPの内壁面に食い込みやすい。
【0048】
図6は、本発明にかかる管継手の第2の実施の形態をあらわしている。
図6に示すように、この管継手Bは、抜け止めリング44に代えて、抜け止めリング7が、外筒部2側に設けられ、パイプPに抜け方向の力が加わると、菊の花びら状に設けられた係止爪71がパイプPの外周面に食い込むように作用するようになっている以外は、上記管継手Aと同様になっている。
【0049】
本発明にかかる管継手は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、継手本体(第2部材)が、雄ねじ筒部を一端に備えていたが、雄ねじ筒部に代えて雌ねじ筒部を備えていても構わないし、チーズのように、パイプを複数接続できるようになっていても構わない。
上記の実施の形態では、施工不良検知孔が2つ設けられていたが、施工不良検知孔は、1つでも3つ以上でも構わない。
【0050】
上記の実施の形態では、2本のスライドガイド片を備えていたが、スライドガイド片は、1本でも3本以上でも構わない。
【符号の説明】
【0051】
A,B 管継手
P パイプ
1 継手本体
2 外筒部
3 締付環体
3a スリット
31 拡径片
4 第1部材
4a 挿入筒部
4b 嵌合筒部
42 抜け止めリング装着用周溝
42a 傾斜面
43 リング状シール材
44 抜け止めリング
45 第1係止周溝(嵌合保持手段)
46弾性リング(嵌合保持手段)
5 第2部材
5a 雄ねじ筒部
5c スライドガイド片(スライド規制手段)
52 施工不良検知孔
52a第2係止周溝(嵌合保持手段)
53 嵌合凹部
54 Oリング(シール材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの端部が挿入されるリング状シール材が外嵌された挿入筒部を一側に有する継手本体と、
前記挿入筒部との間にパイプ挿入空間を形成するように継手本体に固定された外筒部とを有し、
前記パイプ挿入空間の正常挿入位置までパイプが挿入されると、
締付環体が縮径して締付環体と挿入筒部とによってパイプを挟み込んで抜け止め状態にする管継手において、
前記継手本体が、一端に前記挿入筒部が設けられ、他端に嵌合筒部が設けられた前記外筒部が固定された第1部材と、
前記嵌合筒部が嵌合する嵌合凹部を備えるとともに、前記嵌合凹部に外周面に開口する施工不良検知孔が穿設されている第2部材と、
前記締付環体が拡径状態にあるときは、前記第1部材の嵌合筒部の前記嵌合凹部への嵌合を阻止し、前記締付環体がパイプの締め付け状態まで縮径したとき前記第1部材が第2部材方向にスライドして前記嵌合筒部の嵌合凹部への嵌合を可能とするスライド規制手段と、
前記嵌合筒部が嵌合凹部の正常位置まで嵌合した状態で、嵌合筒部の嵌合凹部からの抜けを防止する嵌合保持手段と、
前記嵌合筒部が嵌合凹部の正常位置まで嵌合した状態で、前記施工不良検知孔からの管継手外への漏水を阻止するシール材と、を備えていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
スライド規制手段が、第2部材から延出し、端部が外筒部の一部をスライド可能に貫通して外筒部内に臨み、その先端面で拡径状態の締付環体の端面を受ける複数のスライドガイド片である請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
嵌合保持手段が、嵌合筒部の外周面に設けられた第1係止周溝と、
弾性変形によって縮径して前記第1係止周溝内に入り込み、少なくとも一部が第1係止周溝外に露出するまで弾性復元可能な略C字形をした弾性リングと、
嵌合凹部の内周面に設けられ、嵌合筒部が正常に嵌合凹部に嵌合したとき、前記第1係止周溝に一致して前記弾性リングの外周面側が入り込む第2係止周溝とを備えている請求項1または請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
挿入筒部の外周面の、締付環体の内周面に対面する位置に、前記パイプの挿入方向前方側に向かって下り勾配で傾斜する傾斜面を有する抜け止めリング装着用周溝が設けられ、この抜け止めリング装着用周溝に、周面に抜け止め突起が設けられた略C字形をした抜け止めリングが装着されている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の管継手。
【請求項5】
抜け止めリング装着用周溝が、リング状シール材の装着位置よりパイプの挿入方向前方側に設けられている請求項4に記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−247392(P2011−247392A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124055(P2010−124055)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】