説明

箱抜用型枠及びその型抜き方法

【課題】箱抜穴の内面に凹凸を形成するとともに、容易に引抜くことのできる箱抜用型枠及びその型抜き方法を提供する。
【解決手段】側方を囲むコンクリート型枠内に打設する打設コンクリートCに凹部を形成するための箱抜用型枠50であって、コンクリート型枠に支持された吊金具に吊支される吊支ロッド35と、吊支ロッド35に固定される剛性を有する箱抜用型枠本体53と、箱抜用型枠本体53の外周部を被覆するように設けられた弾性被覆体55と、更に弾性被覆体55の外周部に被覆される凹凸を有する樹脂シート56と、から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側方を囲むコンクリート型枠内に打設する打設コンクリートに凹部を形成するための箱抜用型枠及びその型抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の箱抜用型枠は、一対の型片を引張りばねにより連結した略円柱状の箱抜用型枠を基礎形成用型枠内に配置して、打設したコンクリートの固化後に、カム部材を回動操作することで、引張りばねの付勢力により箱抜用型枠を互いに近づくように移動させて、打設コンクリートから分離しているものがある(以下「従来技術1」という。例えば、特許文献1、第4頁、第5図参照)。
しかしながら、従来技術1にあっては、コンクリートが箱抜用型枠の外面と一体化して固化するため、引張りばねの付勢力次第では箱抜用型枠の外面を打設コンクリートから引き剥がすことが出来ず、箱抜用型枠が依然として打設コンクリートに付着した状態のままであり、この打設コンクリートに付着した抵抗力に抗して箱抜用型枠を引抜くために多大な引抜き力及び作業時間を要するという虞があった。
【0003】
本出願人は、従来技術1の問題点を解決するため、吊支ロッドに固定され剛性を有する箱抜用型枠本体の外周部に、弾性被覆体を被覆するように設け、更に弾性被覆体の外周部に、該弾性被覆体を箱抜用型枠本体の縮径方向に変形させる線状押圧体を、該線状押圧体の一端部を箱抜用型枠本体の所定の止着箇所に止着するとともに弾性被覆体の外周部に沿って上方に向けて螺旋状に巻回し、弾性被覆体及び線状押圧体が装着された箱抜用型枠本体を固定する吊支ロッドを、コンクリート型枠に支持された吊金具に吊支して該コンクリート型枠内に配置し、コンクリート型枠内に打設したコンクリートが固化した後に、線状押圧体を箱抜用型枠本体の上方に引き上げて弾性被覆体を箱抜用型枠本体の縮径方向に変形させ、吊支ロッドを介し弾性被覆体及び線状押圧体が装着された箱抜用型枠本体を引抜くようにした箱抜用型枠及びその型抜き方法を、先に出願している(以下「従来技術2」という。特許文献2、図6、7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−79042号公報
【特許文献2】特許第4607251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術2は、従来技術1の問題点を解決する意味で画期的な発明ではあるが、箱抜用型枠本体の外周部に被覆された弾性被覆体の外周部に沿って上方に向けて線状押圧体を螺旋状に巻回し、コンクリート打設後に、線状押圧体を箱抜用型枠本体の上方に引き上げて弾性被覆体を箱抜用型枠本体の縮径方向に変形させ、吊支ロッドを介し弾性被覆体及び線状押圧体が装着された箱抜用型枠本体を引抜くものであるため、被覆弾性被覆体の外周部に線状押圧体を螺旋状に巻回させる作業、及び、箱抜用型枠本体の引抜きの際に線状押圧体を箱抜用型枠本体の上方に引き上げ縮径させるという作業が必要であり、また、これらの作業は一定程度の熟練を要する手作業であり、さらに、箱抜用型枠本体の引抜き後に、線状押圧体を適度に緩ませ、ほどけない状態で保持する必要があることから、作業が面倒であるという問題があった。
【0006】
本発明は、従来技術2を改良したもので、箱抜用型枠本体の外周部に被覆された弾性被覆体の外周部に沿って凹凸を有する樹脂シートを被覆し、コンクリート打設後、箱抜用型枠の引抜きにあっては、まず、弾性被覆体及び樹脂シートを残して箱抜用型枠本体のみを引抜き、その後、弾性被覆体及び樹脂シートを引抜くことにより、上記の面倒な作業を行うことなく、箱抜穴の内面に凹凸を形成するとともに打設コンクリートから箱抜用型枠を容易に引抜くことのできる箱抜用型枠及びその型抜き方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の箱抜用型枠は、
側方を囲むコンクリート型枠内に打設する打設コンクリートに凹部を形成するための箱抜用型枠であって、
前記コンクリート型枠に支持された吊金具に吊支される吊支ロッドと、前記吊支ロッドに固定される剛性を有する箱抜用型枠本体と、前記箱抜用型枠本体の外周部を被覆するように設けられた弾性被覆体と、更に前記弾性被覆体の外周部に被覆される凹凸を有する樹脂シートと、から構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、箱抜用型枠本体の外周部を被覆した弾性被覆体と打設コンクリートとの間に凹凸を有する樹脂シートが介在され、この樹脂シートによって、打設コンクリートの箱抜穴の内面に、凹凸面を形成でき、この凹凸面を利用して、箱抜穴に打設する別途のコンクリートを打設コンクリートに一体化させることで、アンカーボルトを打設コンクリートに強固に埋設できる。その際、従来技術2のように、線状押圧体を螺旋状に巻回させる作業、及び、箱抜用型枠本体の引抜きにあって線状押圧体を箱抜用型枠本体の上方に引き上げ縮径させるという作業が不要となり、大幅な作業の改善を図ることができる。
また、弾性被覆体が適度の弾性を有することから、箱抜用型枠本体を容易に引き抜くことができるとともに、弾性被覆体及び樹脂シートの引抜きも容易に行うことができる。
【0008】
本発明の箱抜用型枠は、前記箱抜用型枠本体が、上方から下方に向けて径が漸次小さくなるテーパを有する円形断面であることを特徴としている。
この特徴によれば、前記箱抜用型枠本体の上方への引抜きを一層容易に行うことができる。
【0009】
本発明の箱抜用型枠は、前記箱抜用型枠本体が、上下方向に延長可能な構造を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、打設コンクリートに形成する凹部の深さに応じて、箱抜用型枠の上下長さを適宜調節できる。
【0010】
本発明の箱抜用型枠は、前記凹凸を有する樹脂シートは、円周方向の両端部にすき間が形成されるようにして前記弾性被覆体の外周部に被覆されることを特徴としている。
この特徴によれば、弾性被覆体の外周面形状がテーパ状であっても、樹脂シートの円周方向の両端部を合わせる必要がなく、また、凹凸を有する樹脂シート同士の重ね合わせがないため密着した状態で弾性被覆体の外周面に被覆させることができる。
さらに、弾性被覆体及び樹脂シートを箱抜穴から離脱させる際に、挟み金具を樹脂シートのすき間に装着して径方向内側に向けて捻り、弾性被覆体及び樹脂シートの外周面を打設コンクリートから離間させるのに好都合である。
【0011】
本発明の箱抜用型枠は、前記凹凸を有する樹脂シートが、上端が打設コンクリートの天端より低い位置に設定され、下端が箱抜用型枠本体及び弾性被覆体の底部に嵌合されたキャップの上端と当接するように設定されていることを特徴としている。
この特徴によれば、箱抜穴の打設コンクリートの天端において凹凸のない形状に形成することができる。また、箱抜用型枠本体と弾性被覆体との間、及び、弾性被覆体と樹脂シートとの間に下方から打設コンクリートが浸入することを防止できる。
【0012】
本発明の箱抜用型枠の型抜き方法は、
側方を囲むコンクリート型枠内に打設する打設コンクリートに凹部を形成するための箱抜用型枠の型抜き方法であって、
吊支ロッドに固定され剛性を有する箱抜用型枠本体の外周部に、弾性被覆体を被覆するように設け、更に前記弾性被覆体の外周部に、凹凸を有する樹脂シートを被覆し、
前記弾性被覆体及び樹脂シートが装着された前記箱抜用型枠本体を固定する前記吊支ロッドを、前記コンクリート型枠に支持された吊金具に吊支して該コンクリート型枠内に配置し、
前記コンクリート型枠内に打設したコンクリートが固化した後に、前記吊支ロッドを介して前記箱抜用型枠本体を上方に引き上げ前記弾性被覆体及び樹脂シートを残して引抜くことを特徴としている。
この特徴によれば、箱抜用型枠本体の外周部を被覆した弾性被覆体と打設コンクリートとの間に凹凸を有する樹脂シートが介在され、この樹脂シートによって、打設コンクリートの箱抜穴の内面に、凹凸面を形成でき、この凹凸面を利用して、箱抜穴に打設する別途のコンクリートを打設コンクリートに一体化させることで、アンカーボルトを打設コンクリートに強固に埋設できる。その際、弾性被覆体及び樹脂シートを残して箱抜用型枠本体を引抜くため、従来技術2のように、線上押圧体を螺旋状に巻回させる作業、及び、箱抜用型枠本体の引抜きにあって線状押圧体を箱抜用型枠本体の上方に引き上げ縮径させるという作業が不要となり、大幅な作業の改善を図ることができる。
また、弾性被覆体が適度の弾性を有することから、箱抜用型枠本体を容易に引き抜くことができるとともに、弾性被覆体及び樹脂シートの引抜きも容易に行うことができる。
【0013】
本発明の箱抜用型枠の型抜き方法は、
前記箱抜用型枠本体が引抜かれた後、樹脂シートのすき間が形成された位置において弾性被覆体を上下方向の所定の長さにわたって挟み金具により挟んで径方向内側に向けて捻り、弾性被覆体及び樹脂シートの外周面を打設コンクリートから離間させた後に、挟み金具を上方に引き上げ、打設したコンクリートの箱抜穴から前記弾性被覆体、樹脂シート及びキャップを引抜くことを特徴としている。
この特徴によれば、挟み金具を用いて簡単、かつ、確実に箱抜穴から前記弾性被覆体、樹脂シート及びキャップを引抜くことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)箱抜用型枠本体の外周部を被覆した弾性被覆体と打設コンクリートとの間に凹凸を有する樹脂シートが介在されることにより、この樹脂シートによって、打設コンクリートの箱抜穴の内面に、凹凸面を形成でき、この凹凸面を利用して、箱抜穴に打設する別途のコンクリートを打設コンクリートに一体化させることで、アンカーボルトを打設コンクリートに強固に埋設できる。その際、従来技術2のように、線状押圧体を螺旋状に巻回させる作業、及び、箱抜用型枠本体の引抜きにあって線状押圧体を箱抜用型枠本体の上方に引き上げ縮径させるという作業が不要となり、大幅な作業の改善を図ることができる。
また、弾性被覆体が適度の弾性を有することから、箱抜用型枠本体を容易に引き抜くことができるとともに、弾性被覆体及び樹脂シートの引抜きも容易に行うことができる。
(2)箱抜用型枠本体が、上方から下方に向けて径が漸次小さくなるテーパを有する円形断面であることにより、前記箱抜用型枠本体の上方への引抜きを一層容易に行うことができる。
(3)箱抜用型枠本体が、上下方向に延長可能な構造を有していることにより、打設コンクリートに形成する凹部の深さに応じて、箱抜用型枠の上下長さを適宜調節できる。
(4)凹凸を有する樹脂シートが、円周方向の両端部にすき間が形成されるようにして前記弾性被覆体の外周部に被覆されることにより、弾性被覆体の外周面形状がテーパ状であっても、樹脂シートの円周方向の両端部を合わせる必要がなく、また、凹凸を有する樹脂シート同士の重ね合わせがないため密着した状態で弾性被覆体の外周面に被覆させることができる。
さらに、弾性被覆体及び樹脂シートを箱抜穴から離脱させる際に、挟み金具を樹脂シートのすき間に装着して径方向内側に向けて捻り、弾性被覆体及び樹脂シートの外周面を打設コンクリートから離間させたのに好都合である。
(5)凹凸を有する樹脂シートが、上端が打設コンクリートの天端より低い位置に設定され、下端が箱抜用型枠本体及び弾性被覆体の底部に嵌合されたキャップの上端と当接するように設定されていることにより、箱抜穴の打設コンクリートの天端において凹凸のない形状に形成することができる。また、箱抜用型枠本体と弾性被覆体との間、及び、弾性被覆体と樹脂シートとの間に下方から打設コンクリートが浸入することを防止できる。
(6)弾性被覆体及び樹脂シートを残して箱抜用型枠本体を引抜くため、従来技術2のように、線上押圧体を螺旋状に巻回させる作業、及び、箱抜用型枠本体の引抜きにあって線状押圧体を箱抜用型枠本体の上方に引き上げ縮径させるという作業が不要となり、大幅な作業の改善を図ることができる。
また、弾性被覆体が適度の弾性を有することから、箱抜用型枠本体を容易に引き抜くことができるとともに、弾性被覆体及び樹脂シートの引抜きも容易に行うことができる。
(7)箱抜用型枠本体が引抜かれた後、挟み金具により弾性被覆体及び樹脂シートの外周面を打設コンクリートから離間させ、打設したコンクリートの箱抜穴から弾性被覆体、樹脂シート及びキャップを引抜くことにより、挟み金具を用いて簡単、かつ、確実に箱抜穴から弾性被覆体、樹脂シート及びキャップを引抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】アンカーボルトが埋設された高速道路等のコンクリート打設後の橋脚を示したもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】箱抜用型枠がコンクリート型枠に支持され、設置された状態を示す正面断面図である。
【図4】箱抜用型枠が固定された下部吊金具を示す平面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】箱抜用型枠を示す一部断面図である。
【図7】変形例における箱抜用型枠を示す一部断面図である。
【図8】箱抜用型枠を打設コンクリートから抜取る作業を説明するための説明図である。
【図9】箱抜用型枠を構成する樹脂シート、クッション材及びキャップを打設コンクリートから抜取る作業を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る箱抜用型枠及びその型抜き方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、高速道路等のコンクリートを打設した後の橋脚1を示したものである。説明の都合上、以下においては、部材の配置関係をX−Y−Zの直交座標系を用いて説明するが、平面位置関係については、図1(a)に示すように左右方向をX方向、上下方向をY方向とする。この例の場合、橋脚1の上面2には、X方向に2個所、それぞれ4本のアンカーボルト3が埋設されている。コンクリートが打設される前の状態では、橋脚1の外形に沿ってコンクリート型枠が設置され、また、その内側には鉄筋が縦・横・高さ方向に配筋され、これら鉄筋の間にアンカーボルト埋設用の縦穴を形成すべく箱抜用型枠が設置されるものである。
なお、本明細書において、箱抜用型枠を用いて形成される上記縦穴を箱抜穴という。
【0018】
ところで、橋脚1の上面2は、水平、あるいは図1(b)および図2に示すように一方向に傾斜するように形成される場合がある。いずれの場合でも、図2に示すように、アンカーボルト3は水平面4を基準にして据え付けられるものであるから、凹部としての箱抜穴5を形成する箱抜用型枠も水平面4を基準にして設置されなければならない。このため、アンカーボルト3の設置面には、橋脚1の上面2とは別に水平面4が形成され、橋脚上面2との間には、段差6が生じるのでこの段差6に型枠を設置する必要がある。橋脚1の外形に沿って設置されるコンクリート型枠には、アンカーボルト3埋設用の箱抜穴5の位置関係が表示されているので、箱抜穴5を形成するための箱抜用型枠の設置は、コンクリート型枠に表示されたこの位置関係を基準にして行われる。
【0019】
本実施例においては、箱抜用型枠支持装置として、4本のアンカーボルトを埋設するように4つの箱抜用型枠を支持する装置について説明するが、これに限らず、箱抜用型枠の数量については適宜設定可能であることはいうまでもない。図3において、両側のコンクリート型枠14、14は、図1(a)のY方向に間隔を有して両側に配設される型枠である。この例では、箱抜用型枠支持装置は、両側のコンクリート型枠14、14に固定されるようにY方向に配置されるものであり、4本のアンカーボルト埋設用の箱抜穴5が同時に形成できるように4個の箱抜用型枠を支持している。この場合、高さ方向の基準は、一番低い位置に形成されるアンカーボルト位置を基準として箱抜用型枠が位置決めされる。
【0020】
箱抜用型枠支持装置は、両側のコンクリート型枠14、14に支持される上部吊金具15の下方に間隔をおいて下部吊金具30を配置し、平面視でアンカーボルトの埋設位置に配置される吊支ロッド35を上部吊金具15および下部吊金具30を貫通するようにして鉛直方向に配設し、上部吊金具15において吊支ロッド35を上下方向調節自在に支持し、箱抜用型枠50を吊支ロッド35を囲むようにして下部吊金具30の下面から下方に向けて配置し、箱抜用型枠50を吊支ロッド35により固定することによりアンカーボルトの埋設位置に保持している。
【0021】
特に図示しないが、上部吊金具15は、X方向に間隔を隔てて平行に配置された一対の梁状部材からなり、それぞれの梁状部材は、断面箱形の形鋼を吊支ロッド35の直径より僅かに大きな間隙を有して平行に配置して両端において溶接等の手段で一体に形成されている。梁状部材表面の長手方向に寸法を表示する目盛りが付されている。また、上部吊金具15の長手方向の両側の上面には、吊りワイヤー取付金具18、18が設けられており、クレーン等の吊上げ装置で吊上げ移動可能となっている。
【0022】
図3に示すように、上部吊金具15の長手方向の両側には、両側のコンクリート型枠14、14に固定するための固定金具、すなわち、コンクリート型枠14を挟持する挟持金具19、挟持金具19から立設され上部吊金具15を貫通して配設されるねじ棒20、上部吊金具15の上下からねじ棒20に螺合して挟着するワッシャー付きナット21、21が装着されている。このため、上部吊金具15は、コンクリート型枠14に対して上下方向に調節可能に固定される。
【0023】
尚、特に図示しないが、上部吊金具15の一対の前記梁状部材に直交して吊支ロッド35の配置される位置に一対のX方向位置決め用定規を配置し、かつ、上部吊金具15の一対の梁状部材の内側に沿うように一対のY方向位置決め用定規を配置することで、4箇所あるアンカーボルト埋設位置のうち、基準となる1個所のアンカーボルト埋設位置から他の3個所のアンカーボルト埋設位置を正確に割り出すことができるようになっている。
【0024】
図4に示されるように、下部吊金具30は、矩形を形成するように四隅に配置されるコーナー金物31とこれらのコーナー金物31を連結する連結部材32とから形成され、それぞれのコーナー金物31は、断面箱形の形鋼を直角に交差させて結合した十字状をしており、その交点には吊支ロッド35を貫通させるための貫通孔33を形成し、隣接するコーナー金物31、31に連結部材32を入れ子式に嵌合させることによりコーナー金物31の位置が調整可能に形成されている。本例において、十字状をしたコーナー金物31は、貫通孔33を基点として連結部材32を嵌合させる嵌合部31aが長く、反対側の外方向に向かう外方部31bは短く形成され、連結部材32を嵌合させる嵌合部31aには固定ボルト34が設けられている。
【0025】
下部吊金具30の周囲に所定の間隔を隔てて段差用型枠36を配置し、段差用型枠36を下部吊金具30のコーナー金物31で支持している。段差用型枠36の各辺部の内側には桟木37が固定され、段差用型枠36の補強および下部吊金具30のコーナー金物31による支持の便宜を図っている。
【0026】
図4,5に示されるように、段差用型枠36は、桟木37に対しほぼ水平に内方へ延びるように設けられた段差用型枠固定棒40がコーナー金物31の上面に固着された箱型金物31cに入れ子式に挿入されることで、下部吊金具30に対し支持されるようになっている。尚、段差用型枠固定棒40は、段差用型枠36の4辺の各辺部それぞれにつき、桟木37に直交するように2個所ずつ設けられる。
【0027】
段差用型枠36の桟木37は、矩形断面をしており、段差用型枠36側から釘(図示略)により固着されている。桟木37には、箱型金物31cに挿入された段差用型枠固定棒40の一端部に設けられたコ字状金物40aが嵌合し、支持ボルト40bにより支持されている。
【0028】
吊支ロッド35は、平面視で、アンカーボルトの埋設位置に配設されるものであって、図3に特に示されているように、上部吊金具15、下部吊金具30を貫通するようにして鉛直方向に配され、下部吊金具30の下面から下方に向けて配置された箱抜用型枠50を吊下げ固定するものである。また、吊支ロッド35は、上部吊金具15において上下方向調節自在に支持されるようになっている。このため、吊支ロッド35は、鋼製で断面円形をしておりその表面には雄ねじが切られており、上部吊金具15の上面側及び下面側からワッシャー付きナット49で締付けられ、所定の高さ位置に吊下げ支持される。
【0029】
図6に示されるように、箱抜用型枠50は、上方から下方に向けて径が漸次小さくなるテーパを有する円形断面であって有底の鋼管51と、必要に応じて鋼管51の上端に配設され、鋼管51の上端と略同径の外面を有する延長部材52とにより、箱抜用型枠50の箱抜用型枠本体53が構成されている。鋼管51と延長部材52とは、鋼管51の上端内部の支持羽根51dに支持されたボス51aの雄ネジ部51bと、延長部材52の支持羽根52cの中心に固着されたスリーブ52eに回動自在に支持されたハンドル52dの下端部に配設されたボス52aの雌ネジ部52bとを、螺合することにより結合している。延長部材52の上端には略円形の蓋部材54が配設されており、吊支ロッド35の下端部の雄ネジが、蓋部材54の挿通孔54b、そして延長部材52のハンドル52dに挿通され、更に鋼管51のボス51aに形成された雌ネジ部51cとの螺合により結合している。
【0030】
この箱抜用型枠本体53の外周略全面に亘りスポンジ等の樹脂発泡材から成り任意の方向に弾性変形可能なクッション材55が被覆されており、更にクッション材55の上端近傍を除く外周面には、凹凸を有する樹脂シート56が被覆されている。樹脂シート56は、樹脂製のシート状部材にエンボス加工等により所定の密度で凹凸が形成されたものであって、打設コンクリートの圧力に対してその凹凸形状が維持される程度の剛性を有している。
【0031】
凹凸を有する樹脂シート56をクッション材55の外周に被覆するには、図5に示すように、テーパ形状のクッション材55の外周に、円周方向の両端部57、57にすき間が形成されるようにして樹脂シート56を巻き付け、該両端部57、57の裏面に両面接着テープ58の一面を接着させ、反対の面をクッション材55の表面に接着する。樹脂シート56の円周方向の両端部57、57にすき間が形成されるようにして接着するのは、クッション材55の外周面形状がテーパ状であるため両端部57、57を合わせるのが面倒であること、凹凸を有する樹脂シート56同士を重ね合わせると重ね合わせ面が密着しないため接合が難しいこと、及び、後記するように、樹脂シート56及びクッション材55を箱抜穴5から離脱させるのに好都合であるからである。
【0032】
また、樹脂シート56の上端は、打設されるコンクリートの天端より約50mm下方位置になるように設定される。これは、箱抜穴5の周囲のコンクリートの天端に樹脂シート56の凹凸形状が形成されないようにするためである。そして、樹脂シート56の上端外周面とクッション材55の外周面とにまたがって打設コンクリートの流入を防ぐため、防水テープ59が巻かれる。
一方、箱抜用型枠本体53及びクッション材55の底部には、箱抜用型枠本体53とクッション材55との間にコンクリートが流入しないようにキャップ60が装着される。そのため、樹脂シート56の下端はキャップ60の上端に当接するように設定される。また、樹脂シート56の下端とキャップ60の外周面にまたがって防水テープ61が巻かれ、コンクリートの流入を防止している。
【0033】
尚、本発明の箱抜用型枠50は、アンカーボルトを埋設する箱抜穴の深さに応じてその長さを調節できるように、上下方向に着脱可能な分割構造を有していることが好ましく、例えば、本実施例のように鋼管51及び延長部材52で構成してもよいし、または鋼管51のみ単独で構成してもよいし、あるいは本発明の変形例として図7に示されるように、鋼管51の上端に二体以上の略同形状の延長部材52、52’を上下に順次積み重ねて構成してもよい。本変形例において、二体の延長部材52、52’同士は、上方の延長部材52のハンドル52d下端のボス52aと下方の延長部材52’のハンドル52d’の上端に固定されたボス52a’との螺合により結合しており、更に下方の延長部材52’のハンドル52d’に固定されたピン66が、鋼管51の支持羽根51dに係止されることにより、延長部材52、52’と鋼管51との相対回転による螺合外れを防止している。
【0034】
更に尚、蓋部材54は、下面周縁に内外2段の段差部54aを有しており、本実施例のように蓋部材54が延長部材52に配設される場合は、段差部54aの外側の段差が延長部材52の上端面に載置され、また蓋部材54が延長部材52よりも肉厚の鋼管51に配設される場合は、段差部54aの内側の段差が鋼管51の上端面に載置される。
【0035】
図6に示されるように、箱抜用型枠本体53を構成する鋼管51の雌ネジ部51cに吊支ロッド35の下端を螺合させ、図5に示されるように、下部吊金具30の上面側において吊支ロッド35に螺合されたウイングナット47を締付けることにより箱抜用型枠50の上面と下部吊金具30の下面が密着し、箱抜用型枠50が吊支ロッド35に保持される。このような保持機構により箱抜用型枠50が保持されているため、コンクリートが打設された場合でも、箱抜用型枠50の傾き、横移動、あるいは、縦移動を防止することができる。
【0036】
上記のように構成された箱抜用型枠支持装置を設置するには、吊支ロッド35のX−Y方向の位置が設計寸法とおりに位置するように上部吊金具15および下部吊金具30を地上において仮組し、仮組された箱抜用型枠支持装置を吊上げ装置で吊上げてコンクリート型枠14の決められた位置に装着する。その後、上部吊金具15に対する吊支ロッド35の上下方向の支持位置を調節することにより下部吊金具30を介して箱抜用型枠50を水平、且つ、所定の高さ位置に配置し、コンクリート型枠14内に生コンクリートを打設する。打設された生コンクリートは経時とともに固化する。以下、少なくとも固化し始めた時点でのコンクリートを打設コンクリートCとして説明する。箱抜用型枠50に対向する打設コンクリートCにおける対向面は、凹凸を有する樹脂シート56により、一定の密度で凹凸が分布する凹凸面に形成されることになる。
【0037】
図8は、打設コンクリートCが形成された後の、箱抜用型枠50の抜き取りを説明するものである。まず、打設コンクリートCと上部吊金具15との間に4台のジャッキ62、62を配設し、挟持金具19を緩めるとともに支持ボルト40bを緩めて段差用型枠固定棒40を内方に引き込む。
【0038】
次に、ジャッキ62にて上部吊金具15を上方に持ち上げると、吊支ロッド35を介して箱抜用型枠本体53に対して上方に移動する力が作用する。この際、クッション材55及びにも上方に移動する力が作用するが、樹脂シート56の凹凸形状により、樹脂シート56は打設コンクリートCの箱抜穴から抜け出ることができない。また、クッション材55も樹脂シート56に接着テープで接着されているから、上方に移動することができない。 このため、テーパ形状の箱抜用型枠本体53はクッション材55から離間し、箱抜用型枠本体53のみが上方に引き上げられる。
【0039】
箱抜用型枠本体53が引き上げられたあとには、クッション材55、樹脂シート56及びキャップ60が残される。
図9は、これらクッション材55、樹脂シート56及びキャップ60を打設コンクリートCから抜き取る様子を説明する説明図である。
図9(a)に示すように、樹脂シート56の円周方向の両端部57、57のすき間の部分に、クッション材55を上方から下方に向けて挟み込むことのできる挟み部65を有する挟み金具63(図9(b)参照。)を上方から下方に向けて挿入してクッション材55を挟み込む。次に、図9(c)に示すように、挟み金具63の挟み部65を支点にして軸部64を内側に約180°程度捻ると、クッション材55及び樹脂シート56が径方向内側に引き込まれる。この状態になる過程で、クッション材55及び樹脂シート56の径は小さくなり、打設コンクリートCから引き剥がされるので、挟み金具63を上方に引き上げれば、クッション材55、樹脂シート56及びキャップ60を打設コンクリートCから抜き取ることができる。
【0040】
クッション材55の外周面は樹脂シート56により被覆されているため、固化前の水分を含む生コンクリートが、クッション材55内に浸入することがない。
【0041】
上述したように、ジャッキ62にて上部吊金具15を上方に持ち上げると、吊支ロッド35を介して箱抜用型枠本体53だけが上方に移動し、打設コンクリートCから抜け出る。この際、クッション材55、樹脂シート56及びキャップ60は打設コンクリートC内に残るが、これらは挟み金具63を用いて簡単に打設コンクリートCから抜き取られ、打設コンクリートC内面に凹凸形状を有する樹脂シート56による凹凸面を残すことが出来る。
【0042】
抜き取られたクッション材55、樹脂シート56及びキャップ60は、損傷がなく、また弾性変形したクッション材55は弾性復元するため、箱抜用型枠本体53に再度装着することにより何度でも再利用可能である。
【0043】
以上説明したように、本発明の箱抜用型枠50によれば、箱抜用型枠本体53がテーパ形状を有するため容易に抜き取ることができ、また、箱抜用型枠本体53を被覆した弾性被覆体としてのクッション材55も縮径方向に変形可能であるため、クッション材55、樹脂シート56及びキャップ60も簡単に抜き取ることができる。
【0044】
また、クッション材55の外周部に設けられた凹凸を有する樹脂シート56により、打設コンクリートCの箱抜穴5の内面に、凹凸面を形成でき、この凹凸面を利用して、箱抜穴5に打設する別途のコンクリートを打設コンクリートCに一体化させることで、アンカーボルトを打設コンクリートCに強固に埋設できる。
【0045】
また、クッション材55、樹脂シート56及びキャップ60を引抜く際に打設コンクリートCと当接する場合があっても、クッション材55が弾性変形するので引抜き易いばかりか、弾性変形したクッション材55が後に弾性復元するため、これらの部材を箱抜用型枠本体53に装着することが容易であり、箱抜用型枠50を繰り返し使用できる。
【0046】
また、樹脂シート56及びキャップ60によりクッション材55が防水されるため、水分を含む生コンクリートがクッション材55浸入しクッション材55を劣化させることなく、当該機能を確実に発揮できる。また、樹脂シート56の凹凸形状により打設コンクリートCの箱抜穴5の内面に凹凸面を形成できる。
【0047】
また、箱抜用型枠本体53は、上下方向に延長可能な構造に構成することで、打設コンクリートCに形成する凹部としての箱抜穴5の深さに応じて、箱抜用型枠本体53の上下長さを適宜調節できる。
【0048】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0049】
例えば、前記実施例では、本発明の弾性被覆体としてのクッション材55が、樹脂発泡材から成り任意の方向に弾性変形可能に構成されているが、例えば弾性被覆体は、低反発性樹脂から成っていてもよく、このようにすることで、低反発性樹脂から成る弾性被覆体が、樹脂シート56の形状をコンクリートの圧力に対向して比較的長時間保ち続けるので、好ましい形状の箱抜穴を形成することができる。また、箱抜穴5の径が変更される場合でも、箱抜用型枠本体53の径を変更することなく、クッション材55の厚みまたは巻き付け枚数を変更することにより対応可能である。
【0050】
また、例えば、前記実施例では、樹脂シート56とクッション材55、或いは、樹脂シート56とキャップ60を接着テープで接合しているが、これに限らず、防水性をもって固定できるものであればよい。
【符号の説明】
【0051】
1 橋脚
3 アンカーボルト
5 箱抜穴
14 コンクリート型枠
15 上部吊金具
30 下部吊金具
35 吊支ロッド
36 段差用型枠
50 箱抜用型枠
51 鋼管
52 延長部材
53 箱抜用型枠本体
54 蓋部材
55 クッション材(弾性被覆体)
56 樹脂シート
57 樹脂シートの円周方向の端部
58 両面接着テープ
59 防水テープ
60 キャップ
61 防水テープ
62 ジャッキ
63 挟み金具
64 軸部
65 挟み部
66 ピン




【特許請求の範囲】
【請求項1】
側方を囲むコンクリート型枠内に打設する打設コンクリートに凹部を形成するための箱抜用型枠であって、
前記コンクリート型枠に支持された吊金具に吊支される吊支ロッドと、前記吊支ロッドに固定される剛性を有する箱抜用型枠本体と、前記箱抜用型枠本体の外周部を被覆するように設けられた弾性被覆体と、更に前記弾性被覆体の外周部に被覆される凹凸を有する樹脂シートと、から構成されていることを特徴とする箱抜用型枠。
【請求項2】
前記箱抜用型枠本体は、上方から下方に向けて径が漸次小さくなるテーパを有する円形断面であることを特徴とする請求項1に記載の箱抜用型枠。
【請求項3】
前記箱抜用型枠本体は、上下方向に延長可能な構造を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の箱抜用型枠。
【請求項4】
前記凹凸を有する樹脂シートは、円周方向の両端部にすき間が形成されるようにして前記弾性被覆体の外周部に被覆されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の箱抜用型枠。
【請求項5】
前記凹凸を有する樹脂シートは、上端が打設コンクリートの天端より低い位置に設定され、下端が箱抜用型枠本体及び弾性被覆体の底部に嵌合されたキャップの上端と当接するように設定されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の箱抜用型枠。
【請求項6】
側方を囲むコンクリート型枠内に打設する打設コンクリートに凹部を形成するための箱抜用型枠の型抜き方法であって、
吊支ロッドに固定され剛性を有する箱抜用型枠本体の外周部に、弾性被覆体を被覆するように設け、更に前記弾性被覆体の外周部に、凹凸を有する樹脂シートを被覆し、
前記弾性被覆体及び樹脂シートが装着された前記箱抜用型枠本体を固定する前記吊支ロッドを、前記コンクリート型枠に支持された吊金具に吊支して該コンクリート型枠内に配置し、
前記コンクリート型枠内に打設したコンクリートが固化した後に、前記吊支ロッドを介して前記箱抜用型枠本体を上方に引き上げ前記弾性被覆体及び樹脂シートを残して引抜くことを特徴とする箱抜用型枠の型抜き方法。
【請求項7】
前記箱抜用型枠本体が引抜かれた後、樹脂シートのすき間が形成された位置において弾性被覆体を上下方向の所定の長さにわたって挟み金具により挟んで径方向内側に向けて捻り、弾性被覆体及び樹脂シートの外周面を打設コンクリートから離間させた後に、挟み金具を上方に引き上げ、打設したコンクリートの箱抜穴から前記弾性被覆体、樹脂シート及びキャップを引抜くことを特徴とする請求項6に記載の箱抜用型枠の型抜き方法。




















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−28900(P2013−28900A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163625(P2011−163625)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【特許番号】特許第4831798号(P4831798)
【特許公報発行日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(591124019)株式会社高長建設 (11)
【Fターム(参考)】