説明

簡易便器

【課題】便器の開口より排泄時の臭気が回りに出ることを最小限に留め、個人差、姿勢差を吸収可能な信頼性の高い簡易便器を提供する。
【解決手段】 着座マットの局部口を便器の開口より小さい開口面積とし、便器固定用ステーは支持手段に対しての相対位置が変更可能に支持手段に支持されている構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子等に搭載可能な簡易便器に関するものである。
【背景技術】
従来、身体の不自由などの理由により、自分の排泄を自力で容易にできない人のために排泄機能を乗ったままできる特徴をもたせた車椅子が存在する。
特許文献1の発明は、このような目的のための車椅子あるいは簡易便器に係るものである。
【特許文献1】特開2003−319975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
特許文献1に示すような構成においては、便器が車椅子に固定され、結果として便器の開口位置が固定された構成となっている。身体の不自由などの理由により、自分の排泄を自力で容易にできない人は、自身の体の姿勢や、お尻の位置を自分で制御できない場合がある。また、さまざまな体型の人に対して便器の開口位置が固定された構成となっていると、使用者の肛門の位置と便器の開口の位置が合わず排泄物がうまく通過できず不具合を生じることがあった。また、このため便器の開口を大きくすると、排泄時の臭気が回りに出やすくなるという問題が生じるものであった。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、さまざまな体型の人や姿勢にうまく対応でき、かつ便器の開口より排泄時の臭気が回りに出ることを最小限に留めることのできる局部口を設け、かつ便器の開口の位置を支持手段に対して調整可能とし、においもれがなく、個人差、姿勢差を吸収可能な信頼性の高い簡易便器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
以上の課題を解決するための本発明の簡易便器は、上方に開口し排泄物を受け入れ保持する便器と、便器を支持する便器固定用ステーと、便器固定用ステーを支持する支持手段と、便器の開口を覆うとともに排泄物を通過させる貫通孔を供えた便器本体カバーと、便器本体カバーの上方に設けられ便座の貫通孔に連通する局部口を供えた着座マットと、便器に排泄パイプを介して接続された汚物タンクと、洗浄水を便器内から便器本体カバーの貫通孔および前記着座マットの局部口を通過して上方に噴射可能な噴射ノズルと、噴射ノズルに洗浄水を供給する洗浄水供給装置と、を含み、着座マットの局部口を便器の開口より小さい開口面積とし、便器固定用ステーは支持手段に対しての相対位置が変更可能に支持手段に支持されている構成を有する。
さらに、着座マットの局部口と連通する穴を備え、着座マットを覆う保護シートを更に備えた構成としてもよい。また、便器の開口の周辺部に回動可能に配置され、回動することで排泄者の局部を覆う位置に停止可能な局部カバーをさらに備える構成、便器内に、便器内の排泄物を洗浄水により排泄パイプを介して接続された汚物タンクに流し込むための洗浄ノズルを更に備えた構成とすること、洗浄ノズルは、複数のノズルを含み、少なくとも便器内の排泄物を便器表面から離脱させるために洗浄水を下方から上方へ向けて噴射可能なノズルを含む構成、噴射ノズルは回動可能に支持されて洗浄水の噴射方向が可変に構成され、便器内の排泄物を洗浄可能な構成、お尻乾燥装置を更に備えた構成、臭気吸入装置を更に備えた構成、などが良好な構成の例として考えられる。
また以上の課題を解決するための本発明の車椅子は、以上に記載の簡易便器を備えた構成を備える。
【発明の効果】
【0004】
本発明によれば、便器を支持する便器固定用ステーと、便器固定用ステーは支持手段との相対的な位置が変更可能に支持されている構成を有し、さらに着座マットの局部口は便器本の開口より小さい開口面積を有しているのでさまざまな体型の人や姿勢にうまく対応でき、かつ便器の開口より排泄時の臭気が回りに出ることを最小限に留めることができ、臭気のもれが少ない簡易便器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における簡易便器について、図1を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態1における簡易便器としての分解斜視図である。図1において、
本実施の形態1における簡易便器1は、上方に開口し排泄物を受け入れ保持する便器2と、便器2を支持する便器固定用ステー3と、便器固定用ステー3を支持する支持手段4と、便器2の開口2aを覆うとともに排泄物を通過させる貫通孔5を供えた便器本体カバー6と、便器本体カバー6の上方に設けられ、便座2の貫通孔2aに連通する局部口7を供えた着座マット8と、便器2に排泄パイプ9を介して接続された汚物タンク10と、洗浄水を便器2内から便器本体カバー6の貫通孔5および着座マット8の局部口7を通過して上方に噴射可能な噴射ノズルと、噴射ノズル11に洗浄水を供給する洗浄水供給装置12とを含み、着座マット8の局部口7を便器2の開口2aより小さい開口面積とし、便器固定用ステー3は支持手段4に対しての相対位置が変更可能に支持手段4に支持されている。
【0006】
着座マット8の上には、局部口7と連通する穴13を備え、着座マット8を覆う保護シート14が載せられており、使用回数に応じて保護シート4は取替え可能になっている。また、便器2の開口2aの周辺部前方には、回動可能に配置され、回動することで排泄者の局部を覆う位置に停止可能な局部カバー15がさらに設けられている。局部カバー15には、取替え可能な保護カバー16が着脱可能に設けられている。この局部カバー15主に男性用として使用される構成となっており、使用しないときは取り外し可能な構造となっている。
【0007】
便器2内には、便器2内の排泄物を洗浄水により排泄パイプ9を介して接続された汚物タンク10に流し込むための洗浄ノズル17,18,19が設けられている。洗浄ノズル17は便器2の前方に設けられており、前方から排泄物を排泄パイプ9に向けて洗い流す機能を有する。洗浄ノズル17,18,19は、洗浄水供給装置12の給水ポンプ12aにより給水管12bを介して接続され、洗浄水タンク12cからの線浄水を放出する構成となっている。また、噴射ノズル11に対しても洗浄水供給装置12の給水ポンプ12aにより給水管12bを介して洗浄水が供給される。洗浄ノズル18a,bは便器2の側方に設けられており、主に便器2の洗浄する機能を有する。洗浄ノズル19a,bは便器2の後方に設けられており、後方から排泄物を浮き上がらせて排泄物の排出を助けるとともに、後方から便器2の前方の洗浄をする機能を有する。排泄パイプ9に向けて洗い流す役割をはたす。
【0008】
噴射ノズル11は、使用者の後方側に設けられており、排泄者のでん部の穴に洗浄水を放射して洗浄する機能を有する。また通常は排泄者のでん部の肛門に洗浄水を放射して洗浄する機能を有するように上方へ向けて噴射可能なノズル構成となっているが、噴射ノズル11は長手方向に中心軸の周りを回動可能に支持されており、噴射ノズル11の回転のための回転モータ11bにより回転する。この場合手動による回転でもよい。このように噴射ノズル11からの洗浄水の噴射方向が上方または下方に可変に構成され、噴射ノズル11からの洗浄水の噴射方向を下方に向けた場合には、便器2内の排泄物を洗浄可能な構成となっている。また、噴射ノズル11の応用例として、図3に示すものは女性用ノズル11aを備え、噴射ノズル11からの洗浄水の噴射方向を下方に向けた場合には、女性用ノズル11aが上方に向けられて、ビテ機能を有するノズルとなるよう構成されている。なお噴射ノズル11からの洗浄水の噴射方向を上方に向けた場合には、女性用ノズル11aが下方に向けられるので、排泄者のでん部の肛門に洗浄水を放射して洗浄する機能を使う場合にもでん部への影響はない。
【0009】
次に、使用者のでん部を乾燥するための乾燥装置21について説明する。乾燥装置21は便器2の側部に接続されており、臭気吸入装置22の空気ポンプ23により汚物タンク10の上方に設けた吸引口24から臭気を含んだ空気を吸引し、防臭室25、オゾン発生装置26を介して除臭された空気を配管21aを介して便器2の開口2aを貫通して使用者のでん部に向けて放出される構成となっている。
また前記洗浄ノズル17,18,19,20の洗浄水の放出、噴射ノズル11の回転のための回転モータ11bの制御は制御部27のコンピュータ(図示せず)により行われ、使用者は使用者用コントローラ28により洗浄ノズル17,18,19,20の洗浄水の放出、噴射ノズル11の回転のための回転モータ11bの制御操作が可能となっている。また、補助者等は補助者用コントローラ29を用いて線浄水の吐出量、乾燥時間、などが使用者用コントローラ28の機能に加えてさらに制御可能に構成されている。制御部27はバッテリー30により駆動されるが、充電器31、直流変換器32を介して100ボルトAC電源による使用、充電が可能な構成になっている。
【0010】
以上の簡易便器1における、着座マット8と便器2の開口2aとの関係、および便器固定用ステー3と支持手段4との関係について図4、図5を用いて説明する。図4は簡易便器1の平面図であり、着座マット8が省略されている図、図5は同簡易便器簡易便器1の平面図であり、着座マット8が斜線にて示されている図である。図5においては簡易便器1における着座マット8の局部口7が便器2の開口2aより小さい開口面積であることが示されている。これは便器2の開口2aより排泄物の臭いが漏れ出すのを最小限にとどめる役割をはたす。また、局部口7は使用者の体格等を考慮して大、中、小のものを容易することが可能である。また、図4では、便器固定用ステー3はその大きさが前後、左右とも支持手段4より小さい寸法となっており、便器固定用ステー3は支持手段4に対しての相対位置が前後、左右に位置変更可能となっている。便器2に接続された排泄パイプはフレキシブルな構造のため便器固定用ステー3の移動の吸収が可能な構造となっている。また支持手段4の上面と便器固定用ステー3の下面とは摩擦係合となっているが、さらなる固定手段(ねじ等)を用いてもよいし、いわゆるベルクロ等の仮固定手段を用いての支持構成としてもよい。このような構成の簡易便器1は支持手段4を介して車椅子33に搭載される。
【0011】
次に、簡易便器1が車椅子33に搭載される状態について、図2以下を用いて説明する。便器2を固定した便器固定用ステー3を支持する支持手段4が車椅子33のフレーム36に対して固定される。便器2の噴射ノズル洗浄ノズル17,18,19,20と洗浄水供給装置12の接続は、給水ポンプ12aを介して給水管12bにより行われる。また局部カバー15が使用される場合には、局部カバー15に設けたノズル15aにも洗浄水供給装置12が給水ポンプ12aを介し給水管12bを介して接続される。便器2と汚物タンク10との接続が排泄パイプ9により行われる。
【0012】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における簡易便器が車椅子33に搭載された例ついて、図6を用いて説明する。図6は本発明の実施の形態2における簡易便器搭載用の車椅子の概略斜視図である。本発明の実施の形態2における簡易便器について、実施の形態1と同一の部品には同一の番号を付し説明を略する。図において、車椅子33下方にまず前方ステー34および後方ステー35が公知のL形金具とビス・ネジ等で取り付けられ、前方ステー34上には、バッテリー30、充電器31、直流変換器32および制御部27が搭載される。また後方ステー35には汚物タンク10と洗浄水供給装置12が搭載される。便器2を固定した便器固定用ステー3を支持する支持手段4が車椅子33のフレーム36に対して固定される。汚物タンク10と便器2の洗浄ノズル17,18,19,20接続を配管21aにより、また洗浄水供給装置12と便器2との接続が給水管12bを介して行われる。そして便器2と汚物タンクとの接続が排泄パイプ9により行われる。
【0013】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における簡易便器が車椅子33に搭載された例ついて、図7を用いて説明する。図7は同実施の形態3における簡易便器を搭載した車椅子の背面図である。本発明の実施の形態3における簡易便器について、実施の形態1と同一の部品には同一の番号を付し説明を略する。図において、車椅子33の下方の後方ステー35上には汚物タンク10と洗浄水供給装置12が搭載される。便器2を固定した便器固定用ステー3が支持手段4に支持され、支持手段4は車椅子33のフレームに対して固定される。便器2と汚物タンク10との接続が排泄パイプ9により行われている。車椅子33の手すり37には使用者用コントローラ28が配置されている。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明によれば、さまざまな体型の人や姿勢にうまく対応でき、かつ便器の開口より排泄時の臭気が回りに出ることを最小限に留めることができ、臭気のもれが少ない簡易便器を提供することが可能となるので、介護分野、病院、身体障害者が働く工場、映画館、ホテルでの利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における簡易便器の分解斜視図である。
【図2】同簡易便器の側面図である。
【図3】同簡易便器の噴射ノズルの拡大図である。
【図4】同簡易便器の平面図である。
【図5】同簡易便器の平面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における簡易便器搭載用の車椅子の概略斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態3における簡易便器を搭載した車椅子の背面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 簡易便器、2 便器、3 便器固定用ステー3、4 支持手段、5 貫通孔、6 便器本体カバー、7 局部口、8 着座マット、9 排泄パイプ、10 汚物タンク、11 噴射ノズル、12 洗浄水供給装置、13 局部口7と連通する穴、14 保護シート14、15 局部カバー、17,18,19,20 洗浄ノズル、21 乾燥装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口し排泄物を受け入れ保持する便器と、
前記便器を支持する便器固定用ステーと、
前記便器固定用ステーを支持する支持手段と、
前記便器の開口を覆うとともに排泄物を通過させる貫通孔を供えた便器本体カバーと、
前記便器本体カバーの上方に設けられ前記便座の貫通孔に連通する局部口を供えた着座マットと、
前記便器に排泄パイプを介して接続された汚物タンクと、
洗浄水を前記便器内から前記便器本体カバーの貫通孔および前記着座マットの局部口を通過して上方に噴射可能な噴射ノズルと、
前記噴射ノズルに洗浄水を供給する洗浄水供給装置と、
を含み、
前記着座マットの前記局部口を前記便器の開口より小さい開口面積とし、
前記便器固定用ステーは前記支持手段に対しての相対位置が変更可能に前記支持手段に支持されていることを特徴とする、簡易便器。
【請求項2】
前記着座マットの局部口と連通する穴を備え、前記着座マットを覆う保護シートを更に備えた、請求項1に記載の簡易便器。
【請求項3】
前記便器の開口の周辺部に回動可能に配置され、回動することで排泄者の局部を覆う位置に停止可能な局部カバーをさらに備えた、請求項1または2に記載の簡易便器。
【請求項4】
前記便器内に、便器内の排泄物を洗浄水により排泄パイプを介して接続された汚物タンクに流し込むための洗浄ノズルを更に備えた、請求項1から3のいずれかに記載の簡易便器。
【請求項5】
前記洗浄ノズルは、複数のノズルを含み、少なくとも前記便器内の排泄物を便器表面から離脱させるために洗浄水を下方から上方へ向けて噴射可能なノズルを含む、請求項1から4のいずれかに記載の簡易便器。
【請求項6】
前記噴射ノズルは回動可能に支持されて洗浄水の噴射方向が可変に構成され、便器内の排泄物を洗浄可能な構成とした、請求項1から5のいずれかに記載の簡易便器。
【請求項7】
お尻乾燥装置を更に備えた、請求項1から6のいずれかに記載の簡易便器。
【請求項8】
臭気吸入装置を更に備えた、請求項1から7のいずれかに記載の簡易便器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の簡易便器を備えた、車椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−254758(P2009−254758A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126481(P2008−126481)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(502155574)
【Fターム(参考)】