説明

籠収納用トレイ及び収納庫

【課題】複数の籠の出し入れを容易にすることができる籠収納用トレイ及び収納庫を提供する。
【解決手段】シリコン材料が収納される複数の籠1が一列に載置されるとともにその列方向に沿って各籠1をスライド自在に支持する支持レール22と、該支持レール22の長さ方向に沿って移動自在に設けられて該支持レール22上の籠1をスライドさせるための操作ロッド23とを具備し、前記操作ロッド23は、その軸心を中心に回転自在とされるとともに、両端部に、その長さ方向に直交するレバー25,26が支持レール22の上方に突出可能に設けられ、これらレバー25,26は、操作ロッド23の両端部において相互に所定角度ずれた向きで配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコン等のシリコン材料を収容した籠を一列に並べて収納する籠収納用トレイ及びこの収納用トレイを設置した収納庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高純度多結晶シリコンを製造する方法として知られるシーメンス法は、金属シリコンと塩化水素ガスの反応により三塩化シランを製造し、その三塩化シランを水素還元又は熱分解させることにより、シリコン芯棒上にシリコンを析出させて長尺な円柱状の多結晶シリコンを作成する方法である。この多結晶シリコンは、短尺に切断したり破砕したりして小さい塊状とされ、その塊状のシリコン材料を籠の中に収容した状態で、フッ酸と硝酸を混合した酸(以下、洗浄液という)で満たされた洗浄槽中にその籠ごと浸漬させてエッチング洗浄を行い、その後、純水で洗浄される。
このシリコン材料を洗浄する際に使用される籠としては、特許文献1に示されるものが知られている。シリコン材料は、この種の籠に収容した状態で洗浄した後、乾燥機による乾燥処理が行われる(特許文献2、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2000−143400号公報
【特許文献2】特開2000−128692号公報
【特許文献3】特開2000−239095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述したようなシリコン材料の乾燥処理においては、一般に、シリコン材料を収容した籠を乾燥機内に複数個収納することにより行われる。この場合、一度に多数個の籠を乾燥機に収納した方が効率が良いが、乾燥機に籠を一つずつ、しかもスペース効率良く整然と収納し、また、乾燥後には、籠を乾燥機から一つずつ取り出す作業が面倒である。特に、乾燥機の奥の方に籠を収納し、かつ、奥の方から取り出す作業が困難であり、収納される籠が多くなるほど顕著であった。
【0004】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、複数の籠の出し入れを容易にすることができる籠収納用トレイ及び収納庫の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の収納用トレイは、シリコン材料が収納される複数の籠が一列に載置されるとともにその列方向に沿って各籠をスライド自在に支持する支持レールと、該支持レールの長さ方向に沿って移動自在に設けられて該支持レール上の籠をスライドさせるための操作ロッドとを具備し、前記操作ロッドは、その軸心を中心に回転自在とされるとともに、両端部に、その長さ方向に直交するレバーが操作ロッドの両端部において相互に所定角度ずれた向きで配置され、これらレバーの一方を起立状態としたときに支持レールの上方に突出可能とされていることを特徴とする。
【0006】
この収納用トレイでは、複数の籠を順次支持レール上でスライドさせながら支持レールの一方から押し込むようにして載置することができ、これら籠を支持レールに沿って一列に整列させた状態で収納することができる。この場合、操作ロッドの両端のレバーを所定角度ずれた向きに配置しているので、籠を入れる側に配置されるレバーを収納作業の邪魔にならないように倒しておくが、この一方のレバーを横に倒しておくと、他方のレバーは起立状態となる。すなわち、収納用トレイの奥側に配置されるレバーが起立状態となり、支持レールに沿ってスライドされてくる籠をこの起立状態のレバーに当接させることにより、このレバーがストッパーとして機能することになる。したがって、手前から籠を一つずつ押し込んで収納していく作業において、奥の方では籠がレバーに当接して支持レールから脱落することを防止することができる。
また、収納した籠を取り出す際には、横に倒したレバーを持って操作ロッドを手前に引き出すと、この操作ロッドの奥側のレバーは起立状態となっているから、籠の列の後端を押しながら籠を手前に取り出すことができる。
両レバーのずれ角度は90°であるのが好ましい。
【0007】
また、本発明の収納庫は、前記収納用トレイを床面上に設けてなる収納庫であって、前記収納用トレイの両端位置に、開閉可能な扉がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
収納用トレイは、前述したように、操作ロッドの両端部にレバーが設けられ、そのレバーの一方を横に倒すと他方が起立状態となり、そのレバーを横に倒した方から籠を出し入れすることができる。この収納庫の場合は、収納用トレイの両端位置に扉が設けられているから、出し入れする側の扉を開けて、手前に配置されるレバーを倒せば、籠を出し入れすることができ、いずれの扉からも出し入れ作業が可能になる。
【0008】
そして、シリコン材料を取り扱う二つの部屋を区画する壁に、これを貫通するように本発明の収納庫を埋め込み、その壁の両面に前記扉を配置した構成とすることにより、壁に仕切られた一方の部屋から収納し、他方の部屋へと取り出すことが可能になる。
すなわち、一方の扉を開けて、手前のレバーを倒した状態としておき、この開口部から複数の籠を順次収納用トレイ上に収納した後、この扉を閉め、次いで、反対側の扉を開けて、その開口部に露出するレバーを横に倒して手前に引き出せば、収納用トレイ上の籠を支持レールに沿って押し出すことができる。この場合、二つの扉の一方を開放しているときは他方は閉塞状態とすることにより、壁に仕切られた二つの部屋の環境を籠の出し入れ作業中にも遮断した状態とし、相互の汚染を防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の収納用トレイによれば、支持レールに沿って整然と整列させた状態に複数の籠を収納することができるとともに、操作ロッドの両端のレバーを所定角度ずれた向きに配置したから、収納用トレイにおいて籠を入れる側のレバーを邪魔にならないように倒しておき、奥側で起立しているレバーに当接するまで順次籠を収納することにより、奥側のレバーをストッパーとして機能させることができ、また、取り出す際には手前のレバーを引き出すことにより奥側のレバーによって押し出され、出し入れ作業を効率良く行うことができる。
【0010】
また、この収納用トレイを用いた収納庫は、収納用トレイの両端位置に設けた扉によって、そのいずれかから出し入れする場合に限らず、その一方から収納して他方から取り出すことも可能であり、いずれの場合も操作ロッドのレバーによって籠を効率よく収納、取り出すことができる。
さらに、この収納庫を壁に埋め込んでなるものにおいては、壁に仕切られた二つの部屋の間で籠の受け渡しが可能になるとともに、その際の相互の部屋の環境を汚染することが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
シリコン材料を収容する籠は、合成樹脂によって上方を開放状態とした方形の箱型に形成され、その周壁及び底壁には、貫通孔が多数、例えば格子状等に並んで配置された構成とされ、シリコン材料の洗浄処理において洗浄槽から引き上げたときに、貫通孔から洗浄液が流れ落ちるようになっている。
【0012】
図1は、洗浄したシリコン材料を乾燥させる乾燥機2を示している。この乾燥機2は、洗浄処理を行う第1の部屋3と、洗浄後のシリコン材料の梱包処理を行う第2の部屋4との仕切り壁5内に設置されるものであり、その第1の部屋3はクリーンルームとされている。この乾燥機2は、内部が上下3段の乾燥室6に分けられており、その各床7上に、収納用トレイ8が5台ずつ並べられていることにより、合計15台の収納用トレイ8が設置されている。また、この乾燥機2の第1の部屋3の側には第1の扉9が設けられ、また、第2の部屋4の側には第2の扉10が設けられており、これら扉9,10を通じて乾燥機2内の各収納用トレイ8に籠1の出し入れが行われるようになっている。なお、乾燥機2の乾燥室6の壁及び両扉9,10には籠1を乾燥させるためのヒータ(図示略)が埋め込まれている。
【0013】
次に、収納用トレイ8について説明する。図2は収納用トレイ8の平面図、図3は正面図、図5が左側面図を示している。
この収納用トレイ8には、乾燥室6の床7上に設置されるベース21上に、壁5の貫通方向に沿って一対の支持レール22が固定されている。この支持レール22は、図3に示すように、洗浄後のシリコン材料が収納される複数の籠1が一列に載置され、その列方向に沿って各籠1をスライド自在に支持するものであり、前述した第1の扉9と第2の扉10との間に配置されている。また、これら支持レール22の間には、該支持レール22に載置された籠1をスライドさせるための操作ロッド23が長さ方向に沿って移動自在に設けられている。
【0014】
この操作ロッド23は、その長さ方向に沿う中心軸を中心して回動自在なロッド本体24と、該ロッド本体24の各端部に、該ロッド本体24から半径外方に突出するように設けられた2本のレバー25,26とを有するものである。ロッド本体24は、図2に示すように、両支持レール22の間に支持レール22と平行に配置されるとともに、これら支持レール22間に掛け渡された桟部材27にスライド自在に支持されている。これら桟部材27は、支持レール22の一端部間(図2及び図3の右側端部間)と、中央部間との2本設けられており、その中央部間の桟部材27から残りの半分(図2及び図3の左半分)は両支持レールの間が開放状態とされている。また、支持レール22において、桟部材27が設けられていない側の半分の長さの範囲には、支持レール22を貫通するガイドスロット28が長さ方向に沿って形成され、一方、操作ロッド23のロッド本体24の端部には、ロッド本体24と直交するアーム部材29が長さ方向の相対移動を拘束された状態で回転自在に支持され、このアーム部材29の両端部が図2及び図3に示すように支持レール22のガイドスロット28内に挿入状態に配置されており、操作ロッド23を支持レール22の長さ方向にスライドする際のガイド機構とされている。
【0015】
また、この操作ロッド23の両端のレバー25,26は、図4に示すように、ロッド本体24の軸心を中心として互いに直角をなす角度に配置されている。これによって、ロッド本体24を回動して、一方側のレバー25を横に倒して水平状態とした場合に、他方側のレバー26が垂直に起立状態に配置され、逆に、一方側のレバー25を起こして起立状態とした場合に他方側のレバー26が倒されて水平状態に配置されるようになっている。なお、両レバー25,26において、ロッド本体24側に向けた側面には当て板30が設けられる。
【0016】
そして、このような構成の収納用トレイ8を設置した乾燥機2を使用して、洗浄後のシリコン材料を籠1に入れて乾燥し、梱包する場合の作業方法について説明する。
まず、図1に示す第2の部屋4の側に配置される第2の扉10を閉塞状態としておき、第1の部屋3の側の第1の扉9を開放し、手前に配置されるレバー25を横に倒して水平状態とする。図2、図3及び図5は、この第1の扉9の側に配置されるレバー25が横に倒された状態を示している。このようにすることで、作業員は、第1の扉9により開放状態となった各乾燥室6の開口部を通じて支障なく籠1を収納用トレイ8上へ載置することができる。そして、この収納用トレイ8の支持レール22上へ載置した籠1は、作業員が手で奥の方に押すことにより、順次支持レール22に沿ってスライドされる。このとき、奥の方に位置する第2の扉10側のレバー26は起立状態になっていることから、順次送り込まれる籠1の最も奥側の籠1がこのレバー26に当接し、支持レール22の後端で停止させるストッパーとして機能する。
【0017】
このようにして3段の各乾燥室6における各収納用トレイ8上に籠1を載置した後には、第1の扉9を閉めて、乾燥機2のヒータをONとすることで、籠1内に収納されたシリコン材料を乾燥処理する。
【0018】
乾燥処理の後、第2の部屋4から第2の扉10を開けると、この第2の部屋4に臨ませられるレバー26は起立状態とされており、これを横に倒して水平状態とする。この操作により、第1の扉9の側のレバー25、第2の部屋4からみると奥の方に配置されているレバー25が水平状態から起立状態に回動させられる。したがって、この状態で第2の部屋4の作業員は水平状態のレバー26を持ちながら図6の矢印で示すように手前に引いて操作ロッド23を第2の部屋4に引き出すように移動させれば、起立した奥側のレバー25によって籠1が後側から押されて支持レール22に沿って前方にスライドされ、第2の部屋4から順次取り出すことができる。
【0019】
以上詳細に説明したように本実施形態の収納用トレイ8では、乾燥機2内への籠1の投入時と取り出し時とで操作ロッド23のレバー25,26の向きを90°変えることにより、これらレバーを水平状態と起立状態とに姿勢を変え、乾燥機2の奥の方でレバーをストッパーとして機能させたり、また、取り出し時の引っ掻き棒として機能させたりすることができ、極めて効率的に作業を行うことができる。
【0020】
なお、本実施形態では、収納用トレイを乾燥機に適用したが、これに限定されず、例えば、籠を保管収納するための保管庫等、前後に扉がある各種の収納庫に適用することができる。また、レバーは、ロッド本体を中心として直角にずれた向きに配置したが、その一方を水平に倒したときに他方が起立して、前述した籠のストッパーとしての機能及び引き出し時に籠を押し出す機能を発揮できれば、必ずしも90°に限定されす、これよりも大きい角度であっても、小さい角度であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の収納庫をシリコン材料の乾燥機に適用した実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態の収納用トレイを示す平面図である。
【図3】図2の収納用トレイに籠を載置した状態を示す正面図である。
【図4】図2の収納用トレイに用いられている操作ロッドの一部省略した斜視図である。
【図5】図3に示す籠を載置した状態の収納用トレイの左側面図である。
【図6】籠を載置した収納用トレイから籠を取り出す際の操作ロッドの動きを示す正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 籠
2 乾燥機(収納庫)
3 第1の部屋
4 第2の部屋
5 仕切り壁
6 乾燥室
7 床
8 収納用トレイ
9 第1の扉
10 第2の扉
21 ベース
22 支持レール
23 操作ロッド
24 ロッド本体
25,26 レバー
27 桟部材
28 ガイドスロット
29 アーム部材
30 当て板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン材料が収納される複数の籠が一列に載置されるとともにその列方向に沿って各籠をスライド自在に支持する支持レールと、該支持レールの長さ方向に沿って移動自在に設けられて該支持レール上の籠をスライドさせるための操作ロッドとを具備し、
前記操作ロッドは、その軸心を中心に回転自在とされるとともに、両端部に、その長さ方向に直交するレバーが操作ロッドの両端部において相互に所定角度ずれた向きで配置され、これらレバーの一方を起立状態としたときに支持レールの上方に突出可能とされていることを特徴とする籠収納用トレイ。
【請求項2】
請求項1記載の籠収納用トレイを床面上に設けてなる収納庫であって、
前記収納用トレイの両端位置に、開閉可能な扉がそれぞれ設けられていることを特徴とする収納庫。
【請求項3】
前記シリコン材料を取り扱う二つの部屋を区画する壁に、これを貫通するように埋め込まれており、その壁の両面に前記扉が配置されていることを特徴とする請求項2記載の収納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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