説明

米入り炊飯器具及びそれを用いた非常用保存食品

【課題】 保管スペースが小さくてすみ、長期間保存の可能な非常用食品を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明による非常用保存食品においては、米粒が通過できない程度の複数の貫通小孔を有する平面状耐熱性シートと、周縁部に対して凹部を形成しさらに米粒が通過できない程度の複数の貫通小孔を有する立体的耐熱性柔軟シートからなる容器に、前記凹部容量の約半分の無洗米を収納して前記平面状耐熱性シートと前記立体的耐熱性柔軟シートを融着したことを特徴とする非常用米入り炊飯器具を1個乃至複数個ガス透過性の低い柔軟性容器に収納し、炭酸ガスを封入した上で密封したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【背景技術】
【0001】
災害など緊急時における炊き出しは米や炊飯器具の調達、またおにぎり等の準備に多くの人手と時間を要するため問題が多い。乾パンやアルファー米などの調理済み保存食品もあるが、内容量に比べて梱包形態が大きいため保管場所の確保が難しいのが現実であり、またこれらの食品は保存期限にも限界がある。従って、災害時に手軽に利用でき、保管場所が少なくてすみ、しかも保存期間の長い食品が要望されている。
【0002】
特許文献1には、少なくとも白米やもち米の米粒を通過させない程度の複数個の貫通小孔と、米粒を適量充填後閉鎖されるべき充填口とを有する耐熱耐膨張性材料よりなる簡易炊飯用容器が提案されている。本文献においてはたとえば、図1にはポリプロピレンなどによる内層材料同士を溶着して正面形状をほぼ三角形のおにぎり状に形成した柔軟な袋状容器が開示されている。この容器の主要表面には多数の十字状の小孔またはスリットが設けられている。しかし、このような形態は炊飯後に開封する際に米飯にダメージを与えやすく、問題がある。
【0003】
また、特許文献2には、米飯用プラスチック製容器が開示されており、平面で見て円形の底面、該底面から末広がりに立設された略ラッパ状の側面及び該側面の上端部外周に突設された環状のフランジを備えており、これらは耐熱性のプラスチックで一体成形されていて、該フランジに蓋材をヒートシールした状態にてこれらで囲まれる内部空間に米飯を無菌的に保存できるようにした容器が示されている。しかし、この技術では、容器本体はラッパ状の側面を保持しており、内部に収納した米飯と蓋との間に空間が存在するため、保管するには広いスペースが必要となる。
【0004】
【特許文献1】特公平3−2506号公報
【特許文献2】特開2000−27668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記先行技術の問題点にかんがみてなされたものであり、保管スペースが小さくてすみ、長期間保存の可能な非常用食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明による米入り炊飯器具は、米粒が通過できない程度の複数の貫通小孔を有する平面状耐熱性シートと、周縁部に対して凹部を形成しさらに米粒が通過できない程度の複数の貫通小孔を有する立体的耐熱性柔軟シートからなる容器に、前記凹部容量の約半分の無洗米を収納して前記平面状耐熱性シートと前記立体的耐熱性柔軟シートを融着したことを特徴とする。
【0007】
前記平面状耐熱性シート及び前記立体的耐熱性柔軟シートが熱融着可能なプラスチック製であるか、或いは熱融着可能なプラスチックシートがラミネートされた素材であることが好ましい。
【0008】
前記平面状耐熱性シートは、切り取り可能なミシン目が設けられていることがより好適である。
【0009】
前記立体的耐熱性柔軟シートには、折りたたみ可能な折り目が設けられていることが望ましい。
【0010】
また、本発明による非常用保存食品においては、米粒が通過できない程度の複数の貫通小孔を有する平面状耐熱性シートと、周縁部に対して凹部を形成しさらに米粒が通過できない程度の複数の貫通小孔を有する立体的耐熱性柔軟シートからなる容器に、前記凹部容量の約半分の無洗米を収納して前記平面状耐熱性シートと前記立体的耐熱性柔軟シートを融着したことを特徴とする非常用米入り炊飯器具を1個乃至複数個ガス透過性の低い柔軟性容器に収納し、炭酸ガスを封入した上で密封したことを特徴とする。
【0011】
この非常用保存食品においても、前記平面状耐熱性シート、前記立体的耐熱性柔軟シート及び前記ガス透過性の低い柔軟性容器が熱融着可能なプラスチック製であるか、或いは熱融着可能なプラスチックシートがラミネートされた素材であることが好ましく、前記平面状耐熱性シートは、切り取り可能なミシン目が設けられていることがより好適であり、前記立体的耐熱性柔軟シートには、折りたたみ可能な折り目が設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明による米入り炊飯器具では、平面状耐熱性シートと立体的耐熱性柔軟シートとを熱融着により収納容器としているため、米飯は内容積の半分程度しか収納しないけれども、容器の柔軟性により空間部を圧縮して全体の大きさを小さくすることが可能となる。この容器側面にあらかじめ折り目を設けておくことにより、この圧縮はより容易となる。また、蓋材としての平面状耐熱性シートには切り取り可能なミシン目を入れることにより、開封が容易となる。
【0013】
また、本発明による非常用保存食品では、やはり本発明による米入り炊飯器具を1個乃至は複数個ガス透過性の低い柔軟性容器に収納し、炭酸ガスを封入した上で密封することにより、複数の貫通小孔を通して個々の米入り炊飯器具内の米に炭酸ガスが吸収されることによって柔軟性容器内が減圧されるので、個々の米入り炊飯器具内の空間とともに柔軟性容器内の空間も圧縮されて、全体がほぼ米の体積に近い大きさまで圧縮され、保管スペースを節約することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明を説明する。図1は本発明による米入り炊飯器具の一実施例を示す斜視図である。ポリプロピレン等の耐熱性プラスチック素材2をタライ型(図2に側面図を示した)に成形し、表面に米粒が通過できない2mm程度の貫通小孔3を約1cm間隔で設けてある。内部空間に対して約50%の割合で無洗米を入れ、やはりポリプロピレン等の耐熱性プラスチック素材で貫通小孔の形成された平面状シート1を載せ、熱融着することにより容器を密閉する。立体的本体シート2と蓋となる平面状シート1とを熱融着するため、周縁部にはフランジ部4が形成されている。
【0015】
上記炊飯器具の特に本体となる立体的シート2は図4に示したように側面部に折り目5が設けてあることが好ましい。柔軟性シートであれば、上から圧力加えることにより本体部2を変形させて全体の高さを圧縮することは可能であるが、この折り目5を設けることにより、圧縮が容易となる。
【0016】
また、蓋部の平面状シート1には、図5に示したようにT字型のミシン目を設けることもできる。このミシン目により、開封して食する際に蓋を部分的に切り取ることができ、食事が容易となる。このミシン目はT字型である必要はなく、他の形状が利用できることは言うまでもない。
【0017】
さて、上述の実施例による米入り炊飯器具を使用する際は、鍋などの大型容器に飲料水を入れ、本発明による米入り炊飯器具を浸して加熱する。貫通小孔3より水が容器内部に浸入し、炊飯とともに米が膨張すると、容器内部の圧力が増し、米粒によって小孔3が塞がれるので、お湯の過度の侵入を防止することができる。従って、お粥のように柔らかくなりすぎることがなく、適度の硬さを保つことができる。また、大型容器内の水に浸漬して炊飯するため、焦げ付く心配もない。
【0018】
図3には、本発明による米入り炊飯器具の別の実施例を示した。この実施例においては、上部から見て形状が三角に形成されている。このように、容器の形状は所望する形に形成することができる。
【0019】
図6には、本発明による非常用保存食品の実施例を示す。例えば、上述した最初の実施例の米入り炊飯器具を上下に圧縮して、ガス透過性を抑制するためにアルミなどの金属フィルムとラミネートされたポリエチレン製ポリ袋に複数個を収納した上で、炭酸ガスを充填し熱融着等により密閉する。この炭酸ガスは米に吸収されるため、ポリ袋内部の圧力が減少して、真空パックと同様の圧縮状態となる。個々の米入り炊飯器具が折り畳まれて圧縮状態になっている上に、ポリ袋自体も減圧圧縮されるので、食品全体の体積を最小限に保持することが可能となる。また、炭酸ガスは米のたんぱく質やアミノ酸と結合することにより、酸化を防止するので、保存料を使用しなくても5年程度の長期保存が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によれば、災害等の非常時に簡易的に米飯を供給することが可能となり、また圧縮包装で保管スペースを節約できるばかりか、炭酸ガスによる効果で長期保存も可能で、非常用食料として大いに貢献できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による米入り炊飯器具の実施例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した実施例の側面図である。
【図3】本発明による米入り炊飯器具の別の実施例を示す斜視図である。
【図4】本発明による米入り炊飯器具の折り畳み構造を示す説明図である。
【図5】本発明による米入り炊飯器具の蓋部の構造を示す平面図である。
【図6】本発明による非常用保存食品の実施例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 平面状耐熱性シート(蓋)
2 立体的耐熱性柔軟シート(本体)
3 貫通小孔
4 フランジ部
5 折り目
6 ミシン目
7 柔軟性密封容器
10 米入り炊飯器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粒が通過できない程度の複数の貫通小孔を有する平面状耐熱性シートと、周縁部に対して凹部を形成しさらに米粒が通過できない程度の複数の貫通小孔を有する立体的耐熱性柔軟シートからなる容器に、前記凹部容量の約半分の無洗米を収納して前記平面状耐熱性シートと前記立体的耐熱性柔軟シートを融着したことを特徴とする米入り炊飯器具。
【請求項2】
前記平面状耐熱性シート及び前記立体的耐熱性柔軟シートが熱融着可能なプラスチック製であるか、或いは熱融着可能なプラスチックシートがラミネートされた素材であることを特徴とする請求項1記載の米入り炊飯器具。
【請求項3】
前記平面状耐熱性シートは、切り取り可能なミシン目が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の米入り炊飯器具。
【請求項4】
前記立体的耐熱性柔軟シートには、折りたたみ可能な折り畳み線が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の米入り炊飯器具。
【請求項5】
米粒が通過できない程度の複数の貫通小孔を有する平面状耐熱性シートと、周縁部に対して凹部を形成しさらに米粒が通過できない程度の複数の貫通小孔を有する立体的耐熱性柔軟シートからなる容器に、前記凹部容量の約半分の無洗米を収納して前記平面状耐熱性シートと前記立体的耐熱性柔軟シートを融着したことを特徴とする非常用米入り炊飯器具を1個乃至複数個ガス透過性の低い柔軟性容器に収納し、炭酸ガスを封入した上で密封したことを特徴とする非常用保存食品。
【請求項6】
前記平面状耐熱性シート、前記立体的耐熱性柔軟シート及び前記ガス透過性の低い柔軟性容器が熱融着可能なプラスチック製であるか、或いは熱融着可能なプラスチックシートがラミネートされた素材であることを特徴とする請求項5記載の非常用保存食品。
【請求項7】
前記平面状耐熱性シートは、切り取り可能なミシン目が設けられていることを特徴とする請求項5または6記載の非常用保存食品。
【請求項8】
前記立体的耐熱性柔軟シートには、折りたたみ可能な折り畳み線が設けられていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の非常用保存食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−72170(P2009−72170A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271818(P2007−271818)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(507345527)
【Fターム(参考)】