説明

米粉加工シート状食品及びその製造法

【課題】
従来のシート状食品である、ライスペーパーは、米の保存方法の一つとして、温暖な気候を利用し、粉にした米粉に食塩、水を加え、焼いた後完全に乾燥させたものであり、生春巻のように具を包んだり、挟んだりして冷蔵下にて保管しておくと、シートの柔軟性が失われ、食感が非常に硬くなる欠点が見られる。本発明は、冷蔵下で保存してもシートの透明感及び食感が保たれ、また保存性に優れた米粉加工シート状食品を提供することを目的とする。
【解決手段】 米粉、澱粉、食用油脂及び乳化剤を含有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手巻き寿司の海苔のように具を包んだり、具を挟んだりして、食することができる米粉加工シート状食品の提供、及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、米粉を主原料としたシート状食品としては東南アジアに見られるライスペーパーなどがある。
しかしながら、従来のシート状食品である、ライスペーパーにおいては、米の保存方法の一つとして、温暖な気候を利用し、粉にした米粉に食塩、水を加え、焼いた後完全に乾燥させたものであり、生春巻のように具を包んだり、挟んだりして冷蔵下にて保管しておくと、シートの柔軟性が失われ、食感が非常に硬くなる欠点が見られる。
【0003】
これを解決する手段として、米粉、植物油脂、乳化剤、水を混合したミックス液を調製し、加熱体に接触させて焼成を行うことにより得られる米粉加工シート状食品が例示される。(例えば、特許文献1参照)しかし、前記米粉加工シート状食品は、手巻き寿司の海苔のように具を包んだり、挟んだりして、冷蔵下にて保管しておくとシートの透明感が失われ、シートが脆くなる欠点が見られる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−25067号公報(第1−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、冷蔵下で保存してもシートの透明感及び食感が保たれ、また保存性に優れた米粉加工シート状食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、5℃、48時間保存後の白濁度40以下、破断強度500〜20000g/cmの米粉加工シート状食品を得た。具体的には、米粉、澱粉、食用油脂、乳化剤、水を混合したミックス液を調製し、上記のミックス液を脱気した後に加熱体に接触させて焼成を行うことにより、簡便に米粉加工シート状食品が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、米粉と食用油脂、乳化剤、水を混合し、脱気した後、加熱体に前記ミックス液を接触させ焼成を行うだけでありながら、従来の技術よりも、更に簡便な方法にて、水戻しの必要のない、保存する際ひび割れの発生しない、保存性にすぐれ、また−2〜10℃、好ましくは3〜7℃で24時間及び、48時間保存しても経時変化が少なく、好ましい食感が得られる米粉加工シート状食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の米粉加工シート状食品の白濁度は、数値が0に近いほど透明に近く、また数値が100に近いほど白色に近くなる。例えば、水道水の白濁度を測定した場合、数値は9.54、白板を測定した場合には数値は99.92である。本発明の米粉加工シート状食品の白濁度は、5℃48時間冷蔵保存後に40以下であり、好ましくは35以下である。白濁度が40を越えるとシートは白濁しており、中に包んだ内容物が美しく透けて見えない。
また白濁度の測定方法に関して、機器はNIPPON DENSHOKU社製のZE−2000を用いて、4cm角に切断した厚み0.3mmの米粉加工シート状食品をガラスセルの上に置いて、457mμの波長の光をシートにあてることにより、透過度を測定することができる。
【0009】
本発明の米粉加工シート状食品の破断強度は、数値が小さいほど少ない力でシートが破れる。また、数値が大きくなるほど力を多く要する。本発明の米粉加工シート状食品の破断強度は、5℃48時間冷蔵保存後に800〜20000g/cmであり、好ましくは、800〜3000g/cmである。800g/cm以下であると、箸や手で持った時に破れてしまうばかりか、噛んだ時の食感が感じられず、味気のないものになる。また、数値が20000g/cmを超えると食感が非常に硬く感じられ、噛み切ることが難しくなる為に不適である。
また破断強度の測定方法に関して、機器はJapan Food R&D Institute社製のTexo Graphを用いて、5cm角に切断した厚み0.3mmの米粉加工シート状食品を直径3cmの穴の空いているもので固定し、0.125cmのプランジャーにて0.3cm/秒の速度で荷重をかけ、検体の組織が壊れた荷重を破断強度とすることにより測定できる。
【0010】
柔軟性の測定方法に関して、機器はJapan Food R&D Institue社製のTexo Graphを用いて、5cm角に切断した厚み0.3mmの米粉加工シート状食品を直径3cm、深さ16mmの穴の空いているもので固定し。0.125cmのプランジャーにて0.3cm/秒の速度で荷重をかけ、検体の組織が壊れた荷重のときの変形率を柔軟性として測定できる。
本発明の米粉加工シート状食品の柔軟性は5℃48時間冷蔵保存後に45以上が好ましい。測定値が45より小さいとぼそぼそとした食感になり、場合によっては粉っぽく感じられる為に不適である。
【0011】
本発明における米粉とは、特に限定されるものではないが、うるち米またはもち米等から作られた米粉、米澱粉、及び加工米澱粉であり、例えば、新粉、もち粉、白玉粉、みじん粉が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0012】
本発明における澱粉とは、特に限定されるものではないが、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、トウモロコシ澱粉、甘藷澱粉及び、これらの加工澱粉が挙げられる。好ましくはエーテル化澱粉、エステル化澱粉、エーテルリン酸架橋澱粉等があり、より好ましくはタピオカ澱粉のエーテル化澱粉が挙げられる。これらを必要に応じて1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
本発明における食用油脂とは、特に限定されるものではないが、食用に使用されるものであれば、植物性油脂、動物性油脂、およびそれらの加工油脂のいずれでもよい。例えば、バター、マーガリン、ショートニング、オリーブ油、米油、ゴマ油、コーン油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、紅花油、パーム油、ピーナッツ油、やし油、カカオ脂、牛脂、ラード等が挙げられる。好ましくは常温において液体のものであり、より好ましくは食味の点から植物性で匂いの少ないものであるが、最も好ましくは米油である。
【0014】
本発明における乳化剤とは、特に限定されるものではないが、親水基と疎水基を備える両親媒性を備えていれば良く、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール、レシチン、酵素分解レシチン等が挙げられる。好ましくは、HLBが3〜19までの食品用の乳化剤であり、より好ましくはHLB6〜18までの食品用の乳化剤であり、レシチン、酵素分解レシチン等が挙げられる。また乳化剤は必要に応じて1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
米粉と澱粉と食用油脂と乳化剤の配合量は、全量100重量部に対し、米粉10〜80重量部、澱粉5〜50重量部、食用油脂1〜30重量部、乳化剤は米粉と澱粉と食用油脂の合計100重量部に対し0.01〜5重量部、水は全量中の30〜80重量部であることが好ましい。米粉が10重量部未満であると米の味が弱くなり、食用油脂が30重量部を超えると油浮きを生じ、乳化剤が5重量部を超えると風味において異味を有する。水が30重量部未満になると、きれいに原料の分散が行われず、好ましくない。
【0016】
上記原料の混合については特に限定されるものではないが、例えば、攪拌できる容器に米粉等の粉類を入れ、ついで、油、乳化剤、水を加え入れ混合し乳化させる。ついで本混合品を70〜200℃の加熱体に接触させ、シート状に加工し、使用用途に応じ、更に乾燥させ水分13〜25%の米粉加工シート状食品を得る。
その際、衝撃によりシートが割れるのを防ぐため、水分が13%未満にならないことが好ましい。より好ましくは、水分15〜23%であり、最も好ましくは、水分18〜21%である。
【0017】
本発明における脱気とは、特に限定するものではないが、半固形状のものから気泡を除去できるものであればよく、ヘリウムガス置換、加熱、減圧、超音波、気液分離膜等があげられ、好ましくは減圧が挙げられる。また減圧度合いとしては210Torr以下であり、好ましくは120Torr以下であり、より好ましくは60Torr以下である。減圧が210Torr以上であると気泡が多く含んだままであり、透明感に欠けるものとなる。
【0018】
本発明における加熱体とは、特に限定するものではないが、半固形状のものを加熱してシート状に焼成できるものであればよく、加熱材としては、鉄、鋳鉄、銅、アルミ、ステンレス等が挙げられ、好ましくは、鉄、鋳鉄、銅等の金属が挙げられる。また、この中には、上記に挙げる加熱材の表面をポリテトラフルオロエチレンにてコーティングされたものも含まれる。さらに、加熱体の加熱方法としては、加熱材を直接、および間接的に過熱させる方法が挙げられる。直接加熱とは、電気、ガス等を用いたものであり、間接加熱とは、電磁誘導にて加熱体を加熱する方法と、熱媒等を介して加熱する方法である。これら加熱方法は必要に応じ、単独、あるいは併用して使用することができる。また、加熱形態としては、板状、ドラム状、コンベア状等が挙げられるが、より好ましくは連続した生産が行えるように加工されたものである。
【0019】
本発明における冷凍とは、特に限定されるものではないが、氷点以下に冷やすことができるものであればよく、冷凍庫、急速凍結庫等が挙げられる。また温度帯は0度以下になればよく、好ましくは−18℃以下であるが、より好ましくは−25℃以下にて短時間で凍らせることである。
本発明により得られた米粉加工シート状食品の水分は13〜25%であるが、水分は13%未満にならないことが好ましい。より好ましくは、水分15〜23%であり、最も好ましくは、水分18〜21%である。水分が13%未満になると、割れが生じるばかりか、解凍後のシートが硬い為にそのまま使用することが困難であるため、水戻しの必要性があるために、不適である。また、水分が25%を超えると、調理等での使用の際、取り扱いが難しくなる。
【0020】
本発明における、米粉加工シート状食品の厚さは、0.1〜1.0mmになるよう成型されていることが好ましく、0.1mm以下になると、連続した生産を行う際、焼成時に穴が開き易くなる可能性があり、安定した生産を行いにくくなる。
【0021】
このようにして得た米粉加工シート状食品は、主として具を包んだり、挟んだりして食す。具とは、調理したあるいは生の魚介類、調理した肉類、野菜、果物、ジャム等であり、調理法、味付けは限定されない。
本発明の米粉加工シート状食品を用いた食品としては、特に限定されるものではないが例えば、生野菜と茹で肉を挟んだ生春巻き風食品、中華野菜を挟み焼きしたチジミ風食品、米粉加工シート状食品で味ご飯を包んだ茶巾お握り風食品、パイ生地代わりに使用したミルフィーユ風食品等が挙げられる。
【0022】
本発明により製造された米粉加工シート状食品の保存方法は、特に限定するものではないが、好ましくは耐低温製容器に封入して冷凍することである。
【0023】
以下に本発明の詳細を実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
米粉30gにタピオカエーテル化澱粉15g、食塩0.5gを混合し、水52gを加え混合後、レシチン0.5gを米油2gに溶解したものを加え混合し、60Torrまで減圧脱気し、ミックス液を調製した。このミックス液を150℃の加熱体に接触させ米粉加工シート状食品(厚み0.3mm)12.0g/枚を得た。
【0025】
(実施例2)
実施例1のレシチンの半量を酵素分解レシチンに変えた以外は、同様にして米粉加工シート状食品(厚み0.3mm)12.0g/枚を得た。
【0026】
(実施例3)
実施例1のレシチンを酵素分解レシチンに変えた以外は、同様にして米粉加工シート状食品(厚み0.3mm)12.0g/枚を得た。
【0027】
(比較例1)
実施例1の減圧脱気をしない以外は、実施例1と同様にして米粉加工シート状食品(0.3mm)12.0g/枚を得た。
【0028】
(比較例2)
米粉30gに小麦粉(薄力粉)5g、澱粉5g、食塩0.5gを混合し、そこへ水あめ15g、ショ糖ステアリン酸エステル(HLB16)0.5gを水40gに溶解したものを加え混合後、米油10gを加え混合、更にキサンタンガム0.05gを加え混合し、ミックス液を調整した。このミックス液を150℃の加熱体に接触させ米粉加工シート状食品(0.3mm)12.0g/枚を得た。
【0029】
各実施例の配合を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
(試験例1)
実施例1〜3、比較例1、2で得た米粉加工シート状食品を水で濡らし、水分を37%とした。そのシートを5℃の環境試験機にて保管後、シートの白濁度を調べた。
【0032】
【表2】

【0033】
白濁度は、数値が0に近いほど透明に近く、また数値が100に近いほど白色に近くなる。例えば、水の白濁度を測定した場合、数値は9.54、白板を測定した場合には数値は99.92である。
試験例1の結果よりレシチンを使用した実施例1でも白濁度に関して効果があるが、酵素分解レシチンを使用した方が効果が高いことが分かる。また、減圧脱気をすることにより更に透明性が高く、5℃で48時間保存した後も透明性を保持していることがわかる。
【0034】
(試験例2)
実施例1〜3、比較例1、2で得た米粉加工シート状食品を水で濡らし、水分を37%とした。そのシートを5℃の環境試験機にて保管後、テキソグラフにてシートの破断強度を調べた。
【0035】
【表3】

単位:g/cm
【0036】
破断強度は、数値が小さいほど少ない力でシートが破れる。また、数値が大きくなるほど力を多く要する。800g/cm以下であると、箸や手で持った時に破れてしまうばかりか、噛んだ時の食感が感じられず、味気のないものになる。また、数値が20000g/cmを超えると食感が非常に硬く感じられ、噛み切ることが難しくなる為、不適である。
試験例2の結果より脱気工程を行なったシートの方が弾力性を保っている。中でもレシチンのみを使用するより、酵素分解レシチンを使用又は併用した方が48時間後も食感を保持していることがわかる。
【0037】
(試験例3)
実施例1〜3、比較例1、2で得た米粉加工シート状食品を水で濡らし、水分を37%とした。そのシートを5℃の環境試験機にて保管後、テキソグラフにてシートの柔軟性を調べた。
【0038】
【表4】

【0039】
試験例3に関する試験は、数値が大きくなるほど柔軟性に富み、食感はもちもちしたものとなるが、数値が小さく柔軟性がないものはぼそぼそとした食感になり、場合によっては粉っぽく感じられる為に不適である。本発明の米粉加工シート状食品の柔軟性は5℃48時間冷蔵保存後に45以上が好ましい。
試験例3の結果より5℃で48時間保管後も脱気工程を行なったシートは柔軟性が保たれている。その中でも酵素分解レシチンを使用又はレシチンと併用したシートは柔軟性が保持され、モチモチとした食感を保持していることがわかる。
【0040】
(実施例4)
実施例3で得られた米粉加工シート状食品1枚に、ボイルしたエビ1/2尾、レタス20g、ビーフン8g、焼豚5gを挟み、生春巻き風食品を調製した結果、従来の米粉加工シート状食品を用いた生春巻き風食品に比べて、米粉加工シート状食品の透明性が高く外観に優れており、また食した際にもモチモチとした優れた食感を有したものであった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明による米粉加工シート状食品を用い、生春巻きのライスペーパーのように具を挟んで食することをはじめ色々なことができる。また、米の風味は様々な食品の風味との相性が良く、新たな食品、食品形態を生み出すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5℃、48時間冷蔵保存後の白濁度が40以下であり、破断強度が500〜20000g/cmであることを特徴とする米粉加工シート状食品
【請求項2】
米粉、澱粉、食用油脂及び乳化剤を含有することを特徴とする請求項1記載の米粉加工シート状食品。
【請求項3】
厚みが0.1〜1.0mmであることを特徴とする請求項1または2記載の米粉加工シート状食品。
【請求項4】
脱気工程を有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の米粉加工シート状食品の製造法。
【請求項5】
生地水分13〜25%で冷凍する工程を有することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の米粉加工シート状食品の製造法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の米粉加工シート状食品を含有する飲食品。

【公開番号】特開2006−61060(P2006−61060A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246631(P2004−246631)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】