説明

粉体サンプリング装置

【課題】使用済核燃料再処理過程で生じた放射性粉体を再処理設備や安全に悪影響を与えないでサンプリングする。
【解決手段】使用済核燃料再処理設備の残渣回収容器5に、ケーシング10で密封したサンプリング装置20をガイド管22を介して取付け、ガイド管22に管路を開閉する隔離装置21を設け、ケーシング10に不活性ガス(例えばアルゴンガス)の注入設備が接続され、ケーシング10内をアルゴンガス圧にて残渣回収容器5の内圧よりも高く維持する構成を備える。隔離装置21を開けてケーシング10内からガイド管22を通じてサンプリング装置20のサンプラーを残渣回収容器5内に刺し入れてサンプラーに放射性粉体を捕捉させる際に、残渣回収容器5内の雰囲気がケーシング10側に漏洩することをアルゴンガス圧で阻止し、さらにケーシング10側から湿気が残渣回収容器5内に侵入しないようにケーシング内の雰囲気をアルゴンガスで置換できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力プラントから発生する使用済核燃料の再処理において処理過程でのフッ化物の放射性粉体をサンプリングする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原子力プラントである原子力発電所から発生する使用済核燃料の再処理技術として、PUREX法と称せられる手法が当業者間で知られている。
【0003】
溶媒抽出法を用いたPUREX法では、製品であるウランU(以下、単にUとのみ表記する。)、酸化金属燃料MOX(またはプルトニウムPu)は高精製度で回収されるものの、そのPUREX法は主工程において溶媒抽出という大型の分離体系を必要とすることや大量の液体廃棄物が発生することから再処理コストが高い傾向であるとされ、経済性を向上させるために施設の小型化や廃棄物量の低減を図る必要がある。
【0004】
一方、使用済核燃料の再処理技術として、乾式再処理法の一つであるフッ化物揮発法が当業者間で知られている。この方法は小型の設備で高精製度のUを回収できるという利点があるが、プルトニウムPu(以下、単にPuとのみ表記する。)の単独分離精製が難しいことが知られている。
【0005】
そこで、PUREX法の上流にフッ化物揮発法によるUの分離精製工程を設けることで、PUREX法を実施する設備を小型化するとともに、Puの精製が難しいというフッ化物揮発法の課題を補う相補的なハイブリット再処理法であるFLUOREX法の開発が行われている(特許文献1及び非特許文献1を参照)。
【0006】
このFLUOREX法では原子炉の形式の一つである軽水炉の使用済核燃料の大部分を占めるUの内、90%以上をフッ化反応により気体状の六フッ化ウランUF6に(以下、単にUF6とのみ表記する。)転換して揮発させ、分離する。即ち、脱被覆工程で、軽水炉の使用済燃料を粉体状にする。この粉体状の酸化物と高濃度のフッ素F2ガス(以下、単にF2ガスとのみ表記する。)を塔状のフレーム炉に導入し、1200℃程度の温度で核燃料中のUをUF6に転換する。このUF6は蒸留器や吸着材によって精製することができる。
【0007】
この再処理製品としてのUはU濃縮に用いるUF6の化学形態であるため、転換施設を介することなくU濃縮、転換施設で使用でき、燃料として再利用できる。Uの大部分を除去した残りの10%以下のUとPuおよび不揮発性の放射性核分裂生成物FP(以下、単にFPとのみ表記する。)のフッ化物は、可溶性の酸化物に転換した後、硝酸に溶解し、PUREX法の手法を用いて精製する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−257980号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】火力原子力発電 Vol.54 No.12 (Dec.2003) 第46頁〜第54頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように使用済核燃料の再処理過程で組み込まれているフッ化工程では、フッ素を利用するため、空気の混入により生成されたフッ化水素HF(以下、単にHFとのみ表記する。)等の腐食生成物による使用済核燃料のフッ化挙動への影響及び材料腐食への影響を小さくする必要がある。また、フッ化水素は生体に対して極めて浸透性が強いので、例え希薄でも再処理過程で生成されたHFの吸入やHFに接触することのないように格別の注意が必要とされている。
【0011】
従って、フッ素雰囲気であるフッ化工程において、計量管理及び工程管理を目的として不揮発性U,Pu及びFPの放射性粉体が滞留した粉体容器からフッ化物のサンプリングを行う際にも放射性物質及びフッ素雰囲気と再処理系統外との隔離を可能とするサンプリング装置が必要とされる。
【0012】
従って、本発明の目的は、使用済核燃料の再処理過程で生成されたフッ化物の放射性粉体を安全にサンプリングすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記発明の目的を達成するための基本的手段は、使用済核燃料の再処理工程中で生成された不揮発性のフッ化物の放射性粉体を滞留する粉体容器に対して設けられ、前記粉体容器内の前記放射性粉体を採取するサンプリング装置と、前記サンプリング装置の外郭を囲うケーシング内と前記粉体容器内との間を隔離及び連通自在とする隔離装置と、前記ケーシング内への不活性ガス(例えばアルゴンガス。以下、単にArガスとのみ表記する。)の注入手段と、前記ケーシング内の圧力を前記粉体容器内の圧力より高くする圧力調整手段とを備えた粉体サンプリング装置である。
【0014】
このような基本的手段を備えることにより、フッ素雰囲気であるフッ化工程において、不揮発性フッ化物の放射性粉体が滞留した粉体容器からサンプリングを行うに際して、Arガスの注入手段でサンプリング装置のケーシング内にArガスを注入してサンプリング装置のケーシング内をArガスに置換し、隔離装置は、粉体容器の粉体サンプリング時に「開」としてサンプリング作業を可能とし、サンプリング終了後に「閉」としてフッ素雰囲気である粉体容器内とフッ素雰囲気ではないサンプリング装置のケーシング内とを隔離可能とし、また、粉体サンプリング時には、圧力調整手段でサンプリング装置のケーシング内の圧力を粉体容器内の圧力より高く保つようにして、サンプリング時に隔離装置が「開」でも、サンプリング装置のケーシング内側へ粉体容器内の雰囲気が流れ込むことを阻止し、フッ素雰囲気である粉体容器からのガスの漏えいを防止する。
【発明の効果】
【0015】
フッ素雰囲気であるフッ化工程から不揮発性のフッ化物の放射性粉体をサンプリングするに当たり、フッ素雰囲気系外へのフッ素ガス,放射性物質の漏えいを防止することができるとともに、フッ素雰囲気系内へ系統外からArガス以外に湿分が混入しF2ガスと湿分の反応によりHFを生成することや、HFによる材料腐食の発生に関して抑制ないしは防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施列1に係る粉体サンプリング装置を備えた使用済核燃料の再処理工程の系統フロー図である。
【図2】図1の粉体サンプリング装置の全体概要図である。
【図3】図2の粉体サンプリング装置におけるサンプラー挿入装置及びサンプル容器取扱装置の概要図である。
【図4】図1,図2のサンプラーのサンプラー採取口取扱装置の概要図である。
【図5】図1,図2,図3のサンプラーのサンプラー採取口の開閉状態を示す断面図にして、(a)図は閉鎖状態を、(b)図は開状態を示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
FLUOREX法におけるフッ化工程の系統フローは、図1のように、使用済核燃料は予め粉体化されて使用済核燃料粉体とされ、その使用済核燃料粉体は粉体供給ライン1を通じてフレーム炉4に供給される。なお、使用済核燃料粉体のキャリアガスとしてArガスをArガス供給ライン2より供給する。使用済核燃料粉体をフッ化させるためのF2ガスは、F2ガス供給ライン3よりフレーム炉4に供給する。
【0019】
このように、フレーム炉4に使用済核燃料粉体とF2ガスを導入し、フッ化反応により粉体中の大部分のUを気体状のUF6に転換し揮発させ分離する。また、粉体中の一部のFPもフッ化反応により気体状のフッ化物に転換し揮発され分離される。揮発したUF6等のガスは、UF6精製工程を司る設備に供給され、そこで精製され、次工程のUF6回収工程を司る設備に移送される。
【0020】
フレーム炉4内でのフッ化反応にてUの大部分は揮発するが、不揮発性U,Pu及びFPのフッ化物の放射性粉体は、残渣として粉体容器である残渣回収容器5に回収される。
回収された残渣は、残渣搬送装置8により、酸化物転換処理工程を司る設備へ搬送される。
【0021】
ここで、計量管理及びフレーム炉4の運転状態を確認する工程管理のために残渣回収容器5に回収されて滞留している残渣をサンプリングする必要がある。そのサンプリングに際しては次のような課題が伴う。即ち、フッ化工程においては、フッ素を利用するため、空気の混入により生成される腐食生成物HFによる使用済核燃料のフッ化挙動への影響及び材料腐食への影響を小さくする必要がある。また、HFは生体に対して極めて浸透性が強いので、例え希薄でもHFの吸入や接触することのないようフッ素漏えいには格別の注意が必要である。
【0022】
よって、残渣回収容器5から残渣をサンプリングする際には、フッ化工程を司る設備内への空気の流入がなく、また、放射性物質及びフッ素の漏えいがないような隔離機能をもった粉体サンプリング装置を用いる必要がある。
【0023】
そのようなサンプリング装置は本実施例では以下のようになっている。即ち、図2や図3の粉体サンプリング装置の構成のように、サンプリング装置20は装置の外郭を密閉するように囲うケーシング10と、そのケーシング10と残渣回収容器5内とを連通接続する円筒状のガイド管22とを備えている。このようにして、サンプリング装置20は作為的に開口部を開かない限りはサンプリング装置20の外周囲の雰囲気から遮蔽されている。
【0024】
そのガイド管22は、サンプリング装置20と残渣回収容器5との間を抜き差しされるサンプラー23の通路及び保護する機能を担う。そのガイド管22の途中部位には、放射性粉体及びフッ素雰囲気系内の残渣回収容器5と、その系外であるサンプリング装置20を隔離するための隔離装置21を有する。その隔離装置21は、一例としてボール弁が採用でき、そのボール弁を電動で遠隔駆動できるようにすることが好ましい。
【0025】
その隔離装置21は開かれたときには隔離が解除されてサンプラー23が上下にガイド管22と隔離装置21内を通過して残渣回収容器5内へ到達することができる。また、その隔離装置21が閉じられて仕切られると、サンプリング装置20と残渣回収容器5との間は雰囲気が通じ合えない隔離状態となる。
【0026】
図2,図3のように、Arガスの注入手段がサンプリング装置20に装備されている。
即ち、Arガスの高圧ガス源からガス供給配管がArガス導入ライン25としてケーシング10内と連通するように接続されている。そのArガス導入ライン25のガス供給配管の途中には圧力調整弁24が圧力調整手段として備えられている。この圧力調整弁24には、ケーシング10内の圧力を検知する圧力計Pによる検知結果に基づいて予め知られている残渣回収容器5内の圧力よりもケーシング10内の圧力が大きな圧力となるようにフィードバック制御がかけられている。
【0027】
ケーシング10には、排気装置26が連通接続され、ケーシング10内の雰囲気をケーシング10外へ排気することができるようにされ、ケーシング10内の雰囲気をArガス導入ライン25からのArガスの雰囲気に置換することがスムーズに行うことができるようになっている。
【0028】
このように、サンプリング装置20内、即ちケーシング10内の圧力を調整するための圧力計P、圧力調整弁24及びArガス導入ライン25を有し、サンプリング装置20内の雰囲気を置換するために、サンプリング装置20内を排気する排気装置26を有するサンプリング装置である。
【0029】
このような構成であるから、サンプリングを実施していない時、即ちサンプラー23がサンプリング装置20内に収まっている時(図3参照。)は、隔離装置21によりガイド管22内の流路を仕切ることで放射性物質及びフッ素雰囲気系内の残渣回収容器5から系外へのF2ガス,放射性物質の漏えいを防止することができると共に、系内への湿分混入を防止することができ、湿分とF2ガスとの反応によるHF生成及びHFによる腐食を防止できる。
【0030】
サンプリングを実施している時、即ち隔離装置21によりガイド管22内の流路を仕切らずにサンプラー23が残渣回収容器5に挿入されている時は、圧力計P,圧力調整弁24及びArガス導入ライン25によりサンプリング装置20内の圧力を残渣回収容器5の圧力より高くすることで、ガスの流れが残渣回収容器5側へとなることにより残渣回収容器5から系外へのF2ガス,放射性物質の漏えいを防止することができる。また、残渣回収容器5へArガスが流れ込むことになるが湿分を含む空気ではないことから系内への湿分混入が防止でき、湿分が混入しF2ガスとの反応によりHF生成及びHFによる腐食を防止できる。サンンプリング装置20は、圧力計P,圧力調整弁24及びArガス導入ライン25により、残渣回収容器5内の圧力より高くなるように圧力管理を行う。
【0031】
また、サンプリングを実施している時にフッ素雰囲気である残渣回収容器5からガスがサンプリング装置20側に流入した時、排気装置26にてサンプリング装置20内、即ちケーシング10内を真空にして、Arガス導入ライン25よりArガスを供給し、サンプリング装置20のケーシング10内を残渣回収容器5からのガスに代えてArガスに置換できる。
【0032】
サンプリング装置20のケーシング10内に収められている機器構成は以下のとおりである。即ち、図3のように、ケーシング10内には、サンプラー挿入装置30及びサンプル容器取扱装置31及びサンプラー23及びサンプラー採取口取扱装置40が納められている。
【0033】
そのサンプラー挿入装置30は、サンプラー23を残渣回収容器5に挿入,引抜きを行うもので、その際、垂直方向に移動するためのサンプラー挿入装置駆動装置30a,2本のレール30b及び垂直方向に移動する補助となるガイド30cを有する。その駆動装置は、レール30bに設けたラックにかみ合わせたピニオンを電動モータ等で回転駆動させるものや、レール30bを螺子としてそれに螺合させたナットを回転させる螺子送り装置などが採用でき、その駆動装置は、ケーシング10の外側から遠隔制御できるように構成される。
【0034】
サンプラー挿入装置30は、片方にレール30bを移動できる駆動装置30a,反対側には垂直方向の移動を補助するガイド30cにより、残渣回収容器5へのサンプラー23のスムーズな挿入及び引抜きを可能とする。
【0035】
なお、サンプラー23の垂直方向への移動に関して、サンプラー23を引抜く際シリンダ等利用した場合にサンプリング装置20の上部に上部引抜きスペースが必要となることから、その引抜きスペースを必要とせずサンプリング装置20を小型化するために、2本のレール30bを移動できる駆動装置30aを有した移動方法とした。
【0036】
サンプル容器取扱装置31は、サンプル容器32をサンプリング装置20のケーシング10内からサンプル容器搬送装置11へ移送する機能を有する。その機能は、一例として、サンプル容器32を搭載したアーム12を水平回転させてケーシング10外に配置されたサンプル容器搬送装置11へ移動させ移し変えることで排出する事で成される。この排出の際には、サンプル容器搬送装置11のサンプル容器受け入れ部に面するケーシング10の一部分はサンプル容器32やアーム12の部分が通過できるように電動シャッター13で開かれたりケーシング10の密閉性を確保するために閉鎖されたりする。また、サンプル容器取扱装置31のアーム12を水平回転させる電動モータ等の駆動装置は、ケーシング10の外側から遠隔制御できるように構成される。電動シャッター13は、ケーシング10の一部を開閉する機能を提供するものであるから、そのような機能を持つものであればどのような形式の開閉手段であっても良い。
【0037】
サンプラー23は、図5のように、円筒状の本管14の下端にサンプラー先端部採取口23aが設けられている。そのサンプラー先端部採取口23aは円筒状の本管14の中を上下動自在に挿入してあるサンプラー先端部採取口支持棒23bで、その下端に固定したこま15を上方に引上げることで図5(a)のように閉じたり、逆に下方に押し下げることで図5(b)にように開いたりすることができる。
【0038】
そのこま15は一部分がくびれている構造を有し、残渣回収容器5内の放射性粉体中で図5の(a),(b)のようにサンプラー先端部採取口23aを開閉することで、そのくびれた部分と本管14内壁面との間に放射性粉体を挟みこんで本管内に採取できる。
【0039】
そのサンプラー先端部採取口支持棒23bを上下に駆動する装置がサンプラー採取口取扱装置40である。サンプラー採取口取扱装置40は、レール30bに沿って上下移動する駆動装置30aに設置され、ピストンシリンダー装置或いはねじ送り装置などの駆動装置でサンプラー先端部採取口支持棒23bを上下に駆動可能とし、その駆動によってサンプラー先端部採取口23aは開閉する。その駆動装置はケーシング10の外側から遠隔制御できるように構成されている。
【0040】
このように、サンプラー採取口取扱装置40は、サンプラー23の先端部採取口23aを開閉するもので、そのサンプラー採取口取扱装置40に固定してサンプラー23の本管14を押さえるサンプラー押さえ41を有する。
【0041】
駆動装置30aや電動シャッター13やサンプル容器取扱装置31やサンプラー採取口取扱装置40はケーシング10の外側から遠隔操作できるように構成する。
【0042】
残渣回収容器5内に回収されて滞留している放射性粉体をサンプリングする際には次のようにして行われる。即ち、隔離装置21や電動シャッター13を閉じておき、排気装置26を駆動してケーシング10内を負圧として、その後ArガスをArガス導入ライン25を通じてケーシング10内に注入しケーシング10内の雰囲気をArガスに置換する。その置換の後には、排気装置26の駆動を停止して、圧力計Pでケーシング10内の圧力が残渣回収容器5内側の圧力よりも高くなるように監視し、圧力調整弁24の駆動部にそのようになるようにフィードバック制御をかける。
【0043】
このようにして、ケーシング10内の圧力が残渣回収容器5内側の圧力よりも高くなるように維持した状態で、隔離装置21を開き、次に駆動装置30aを駆動して駆動装置30a自体をレール30bにそって降下させる。このようにすると、サンプラー採取口取扱装置40も降下すので、サンプラー23がガイド管22内を下方へ通過し、ついにはサンプラー23の下端が、図2のように、残渣回収容器5内の放射性粉体内に差し入れられる。
【0044】
その後に、サンプラー採取口取扱装置40でサンプラー先端部採取口支持棒23bを下方へ押すように駆動して、図5のように、サンプラー先端部採取口23aを開き、引き続いて逆に駆動してサンプラー先端部採取口23aを閉じる。このようにすると、本管14とこま15のくびれの間に放射性粉体を収納することができる。
【0045】
次に、駆動装置30aを逆方向に駆動してサンプラー23とともにサンプラー採取口取扱装置40を駆動装置30aとともに上昇させて、ケーシング10内にサンプラー23を収納する。その後に、隔離装置21を閉じてケーシング10内と残渣回収容器5内との間を仕切ることにより両者間を相互に隔離する状態とする。
【0046】
この際に、残渣回収容器5内の放射性粉体や雰囲気がケーシング10内に侵入したと思われる状況があった場合には、排気装置26を駆動してそれらを排気して排気処理側に送る。
【0047】
次に、サンプル容器取扱装置31を駆動してサンプル容器32を搭載したアーム12を水平回転させてサンプル容器32をサンプラー23の下端の下方に位置させる。次に、サンプラー採取口取扱装置40を駆動して、図5(b)のように、サンプラー先端部採取口23aを開いて本管14とこま15との間に収納してあった放射性粉体をサンプル容器32内に落とし込む。
【0048】
サンプル容器32に放射性粉体を受けた後に、電動シャッター13を開き、アーム12を回転させてサンプル容器32をサンプル容器搬送装置11に移動させて渡す。その後にはアーム12をケーシング10内に回転して戻し、電動シャッター13を閉じてケーシング10内を密閉状態に戻し、Arガスのケーシング10内への供給も止める。
【0049】
本発明の実施例は以上のとおりであるから、本発明の実施例では、以下のような(1)〜(5)項の特徴を備えている。
(1)フッ素雰囲気であるフッ化工程において、不揮発性U,Pu及びFPのフッ化物の放射性粉体が滞留した粉体容器からサンプリングを行うサンプリング装置において、粉体容器とサンプリング装置との隔離を可能とするような隔離装置をもつものとする。本隔離装置は、粉体容器の粉体サンプリング時に「開」とし、サンプリング終了後に「閉」とする。本隔離装置を持つことでフッ素雰囲気である粉体容器とフッ素雰囲気ではないサンプリング装置を隔離可能とする。
(2)上記(1)項の内容を有するサンプリング装置において、サンプリング装置内の圧力を粉体容器内圧力より高く保つようにするため、Arガス導入ライン,圧力計及び圧力調整弁をもつものとする。これによりサンプリング装置からサンプラーを挿入,引抜きを行う粉体サンプリング時に隔離装置が「開」でも、Arガスがサンプリング装置から粉体容器へ流れることから、フッ素雰囲気である粉体容器からのガスの漏えいを防止できる。
(3)上記(1)項の内容を有するサンプリング装置において、サンプリング装置内を置換できるようにするため、排気装置を持つものとする。これによりサンプリング装置からサンプラーを挿入,引抜きを行う粉体サンプリング時に隔離装置が「開」でフッ素雰囲気である粉体容器からガスがサンプリング装置に流入しても、サンプリング装置内をArガスに置換ができる。
(4)上記(1)項〜(3)項の内容を有するサンプリング装置において、放射性粉体をサンプリングするサンプラーを粉体容器に挿入,引抜きするためのサンプラー挿入装置及びサンプラー先端部の採取口を開閉するサンプラー採取口取扱装置をもつものとする。サンプラー挿入装置及びサンプラー採取口取扱装置を持つことで作業員が手作業でフッ素雰囲気である粉体容器から放射性粉体をサンプリングしなくてもよくなる。
(5)上記(1)項〜(4)項の内容を有するサンプリング装置において、上記(4)の装置で採取した放射性粉体を回収するサンプル容器及びサンプル容器をサンプリング装置から排出するためのサンプル容器取扱装置をもつものとする。サンプル容器取扱装置を持つことで作業員が手作業で放射性粉体を回収したサンプル容器を扱わなくてもよくなる。
【0050】
本実施例によれば、フッ素雰囲気であるフッ化工程から不揮発性U,Pu及びFPのフッ化物の放射性粉体をサンプリングするに当たり、隔離装置,フッ素雰囲気と圧力管理機能及び排出装置による置換機能をもつサンプリング装置を提供することにより、フッ素雰囲気系外へのフッ素ガス,放射性物質の漏えいを防止することができるとともに、フッ素雰囲気系内へ湿分が混入しF2ガスとの反応によりHF生成及びHFによる材料腐食を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、使用済核燃料の再処理過程で生成された放射性粉体状の残渣等をサンプリングするための粉体サンプリング装置に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0052】
1 粉体供給ライン
2 Arガス供給ライン
3 F2ガス供給ライン
4 フレーム炉
5 残渣回収容器
6 UF6ガス精製ライン
7 残渣回収ライン
8 残渣搬送装置
10 ケーシング
20 サンプリング装置
21 隔離装置
22 ガイド管
23 サンプラー
23a サンプラー先端部採取口
23b サンプラー先端部採取口支持棒
24 圧力調整弁
25 Arガス導入ライン
26 排気装置
30 サンプラー挿入装置
30a サンプラー挿入装置駆動装置
30b レール
30c ガイド
31 サンプル容器取扱装置
32 サンプル容器
40 サンプラー採取口取扱装置
41 サンプラー押さえ
P 圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済核燃料の再処理工程中で生成された不揮発性のフッ化物の放射性粉体を滞留する粉体容器等に対して設けられ、前記粉体容器内の前記放射性粉体を採取するサンプリング装置と、
前記サンプリング装置の外郭を囲うケーシング内と前記粉体容器内との間を隔離及び連通自在とする隔離装置と、
前記ケーシング内への不活性ガス(例えばアルゴンガス)の注入手段と、
前記ケーシング内の圧力を前記粉体容器内の圧力より高くする圧力調整手段と、
を備えた粉体サンプリング装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ケーシングに、前記ケーシング内の排気を行う排気装置を接続してあることを特徴とした粉体サンプリング装置。
【請求項3】
請求項2において、前記ケーシングは、前記粉体容器との間を連通接続するガイド管を有し、
前記サンプリング装置は、前記ガイド管の延長上に配置されたサンプラーと、前記サンプラーを前記ガイド管内を通じて前記粉体容器内へ挿入及び前記粉体容器内から引抜き自在に駆動するサンプラー挿入装置と、前記サンプラーのサンプラー先端部採取口を開閉するサンプラー採取口取扱装置と、
を備えた粉体サンプリング装置。
【請求項4】
請求項3において、前記ケーシング内にサンプリングされた前記放射性粉体を回収するサンプル容器を前記ケーシング外へ移動させて排出するサンプル容器取扱装置と、
前記排出の移動経路となる前記ケーシングの一部分を開閉する開閉手段と、
を備えた粉体サンプリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−53164(P2011−53164A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204250(P2009−204250)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】