説明

粉体処理装置

【課題】簡易な機構で粉体の攪拌効率を高めることができ、該粉体の全表面に金属触媒等の被覆物を均一に形成することのできる粉体処理装置を提供する。
【解決手段】粉体処理装置10は、少なくとも底部11aと無端の立上がり壁部11bとを有し、該立上がり壁部11bの内周面には複数の掬い堰11c、…がその周方向に亘って設けられており、所定の傾斜角方向に延びる該底部11aの垂線軸回りに自転自在で、粉状カーボン担体C,…を収容するためのチャンバー11と、該チャンバー11に所定の時間間隔で衝撃を付与する衝撃付与手段15と,チャンバー11内にプラズマを照射する照射手段(アークプラズマガン3)と、を少なくとも具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体処理装置に係り、特に、燃料電池用の粉状触媒担体に金属触媒を担持するのに供される処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、環境負荷影響等に優しい車両としてハイブリッド自動車、電気自動車が注目されており、その一層の小型化、高性能化を目指した開発が日々進められている。中でも、電気自動車等に車載される燃料電池は内燃機関と発電原理を大きく異にするもので、清浄な排ガスの排出、静粛な走行などを実現する上で大きな車載機器である。しかしながら、この燃料電池は未だ開発途上といっても過言ではなく、性能向上とともに製品コストの低下が急務の課題であり、これなくしては電気自動車のより広範な普及は実現し難い。
【0003】
比較的低温で作動する高分子電界質を使用してなる燃料電池においては、正負極の触媒に比較的高価な白金が使用されており、製品コストの低減を実現するためには白金使用量を減らす必要があり、この白金使用量を減らしながら高性能電極を得る必要がある。
【0004】
白金使用量を低下させながら高性能な電極を得るための一方策としては、たとえばカーボンからなる粉状担体表面に可及的に均一に白金を担持させることが挙げられる。白金を担体表面に均一に担持させるには、粉体を効果的に攪拌しながらたとえばアークプラズマ処理を実施することになる。この粉体の効果的な攪拌を実現するための従来技術として、例えば特許文献1,2を挙げることができる。
【0005】
特許文献1に開示の技術は、図7に示すように多角形のバレルa内に微粒子を収容し、バレルaを回転させることで微粒子を攪拌しながらその表面に適宜の薄膜を形成するものである。一方、特許文献2に開示の技術は、高純度のシリコン皮膜球を製造するための装置に係り、具体的には、円筒状のチャンバーの内周方向に複数の堰を設け、球状金属を収容した姿勢でチャンバーを回転させることにより、球状金属を堰にて掬いながら上方へ持ち上げ、次いで自由落下させながらプラズマ照射することで金属球表面にシリコン皮膜を形成するものである。
【0006】
【特許文献1】特開2004−250771号公報
【特許文献2】特開2002−60943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示の装置では、バレルを多角形とすることにより、バレルの回転に応じてその隅角部にて微粒子が衝突しながら攪拌されることで、円筒状バレルに比して攪拌性能の向上を期待することができる。しかし、単にバレルを多角形にしているに過ぎないことから、実際にはバレルが回転しても粉体は攪拌されることはなく、多数の粉体が一つまたは複数の大きな塊となって転がるのみであり、粉体を十分に攪拌するには程遠いものである。
【0008】
また、特許文献2に開示の装置では、堰によってチャンバー内の高所に持ち上げられた球状金属を自由落下させ、これを繰り返すことで攪拌性能の向上が期待できるものの、対象となる粉体が比較的軽量な物質の場合には、堰に当該粉体が付着してしまい、効果的な繰り返しの自由落下を期待することはできない。さらには、チャンバーの回転のみで攪拌を期待する方策では、粉体表面にプラズマ処理しようとした場合に、当該粉体処理面のすべてがプラズマ照射方向に向けられる保証はなく、よって粉体の全表面に均一に触媒金属等を担持させることはできない。
【0009】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、簡易な機構で粉体の攪拌効率を高めることができ、該粉体の全表面に金属触媒等の被覆物を均一に形成することのできる粉体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による粉体処理装置は、少なくとも底部と無端の立上がり壁部とを有し、該立上がり壁部の内周面には複数の掬い堰がその周方向に亘って設けられており、所定の傾斜角方向に延びる該底部の垂線軸回りに自転自在で、粉体を収容するためのチャンバーと、該チャンバーに所定の時間間隔で衝撃を付与する衝撃付与手段と、チャンバー内にプラズマを照射する照射手段と、を少なくとも具備することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の粉体処理装置は、そのチャンバー内で被処理対象の粉体を効率的に微小単位にばらばらにしながら、微小単位の粉体表面にたとえばアークプラズマ照射することで金属触媒を担持させるものである。プラズマ照射に際して粉体を微小単位に粉々にすることで、粉体の凝集によって金属触媒が凝集体の一部にしか形成されないといった問題を解消し、もって金属触媒の有効面積を大きくし、微小粉体表面に均一に金属触媒を担持させるようにした装置である。
【0012】
そのための装置構成として、底部と無端の立上がり壁部とを有し、該立上がり壁部の内周面には複数の掬い堰がその周方向に亘って設けられたチャンバーを水平面から所定の傾斜方向に立てた姿勢を保持させ、この傾斜姿勢で任意の自転軸まわりに該チャンバーを自転させるものである。チャンバーの自転により、粉体は内周面の掬い堰で順次上方へ持ち上げられる。上方へ持ち上げられた粉体は、掬い堰が最頂点に達したか、もしくは最頂点を過ぎた際に下方へ自由落下する。
【0013】
しかし、粉体が比較的軽量な場合には、この粉体が掬い堰に付着してしまい、付着力が自重を上回る場合には想定通りの自由落下を齎してくれない。
【0014】
そこで、本発明の装置では、チャンバーに所定の時間間隔で衝撃を付与する衝撃付与手段を設けておくことで、このチャンバーに定期的に衝撃を付与して掬い堰に付着した粉体を効果的に自由落下させ、これを繰り返すことで粉体のチャンバー内での凝集を防止しながら微小単位に粉々にするものである。
【0015】
チャンバー内で粉々にされた粉体にプラズマ照射を実行することにより、微小な粉体の表面に金属触媒を可及的に均一に担持させることができる。
【0016】
ここで、チャンバーの傾斜角度は、水平面から30度〜60度程度の任意の角度に設定されるのが好ましい。
【0017】
また、本発明による粉体処理装置の他の実施の形態は、前記粉体処理装置において、前記チャンバーの外周には、前記垂直軸に直交する方向に延設する案内孔を複数備えた囲繞体が設けられており、前記案内孔の先端には、前記自転方向に反対方向に延びる係止孔が連通しており、かつ、該案内孔には前記衝撃付与手段である錘体が収容されており、チャンバーおよび囲繞体の自転に応じて係止孔内にある錘体が案内孔内に移動し、該案内孔内を落下することによりチャンバーに所定の時間間隔で衝撃を付与するようになっていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の実施の形態は、衝撃付与手段として所定重量の錘体(たとえば鉄球)を適用し、チャンバーの自転に同期してこの錘体を自由落下させることにより、所定間隔でチャンバーに一定の衝撃を与えるようにした装置であり、その構造(機構)は極めて簡素なものである。
【0019】
錘体が落下する案内孔に錘体を係止しておく係止孔を連通させ、さらにこの係止孔がチャンバーの自転方向に反対の方向に延びていることにより、たとえば案内孔および係止孔が最頂点に達した段階で係止孔内に収容されている錘体を案内孔へ自動的に導くことができ、これを自由落下させてチャンバーに所定の衝撃を与えることができる。
【0020】
衝撃を与えた錘体は、チャンバーおよび囲繞体の自転によって下方へ向いた案内孔に道かれ、今度はそれが最下点に達した段階で自動的に係止孔に収容される。
【0021】
上記する錘体の自由落下と自動的な持ち上げられとが繰り返されることにより、チャンバーの自転のみで定期的な間隔での衝撃付与作用を齎すことが可能となる。
【0022】
また、本発明による粉体処理装置の好ましい実施の形態において、前記底部には、チャンバー内部に突出する複数の突起が形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
この実施の形態は、チャンバーの底部に多数の突起を形成しておくものであり、チャンバー内で自由落下する粉体が最初に衝突する底部に多数の突起が設けられていることで、粉体の攪拌性能をより高めることができるものである。ここで、突起の具体的な形状や寸法は特段限定されるものではないが、一例として、角柱状、円柱状、半球状、半楕円状、径の異なる無端リングのユニット、などを挙げることができる。
【0024】
本発明者等の実験によれば、たとえばチャンバーを水平面から40度の角度で傾斜させた姿勢の装置において、チャンバー底部に複数の突起を設けた場合は、突起の無い場合に比して金属触媒である白金の有効面積(単位重量当たりの面積)が10倍程度高められることが実証されている。このことは、白金が粉体表面により均一に担持されていること、もしくは、白金使用量を低減できること、といった効果に直結するものである。
【0025】
また、本発明による粉体処理装置は、前記衝撃付与手段による衝撃発生に同期して照射手段からプラズマをパルス照射させる制御手段をさらに備えていてもよい。
【0026】
効率的にアークプラズマを照射するにはこれをパルス制御するのが好ましい。そこで、プラズマ照射をパルス制御するに際し、チャンバーへの衝撃発生に同期したプラズマ照射制御を実行することで、微小単位に粉々とされた直後の粉体にプラズマを照射することができ、最も効率的かつ効果的に金属触媒を担持させることが可能となる。
【0027】
上記する本発明の粉体処理装置は、たとえば前記粉体が粉状のカーボン担体であり、該カーボン担体に白金または白金合金をドライ担持させるのに供されるのが好ましい。この白金は比較的高価であるため、本発明の上記装置を使用することでその単位重量あたりの有効面積を大きくすることが可能となり、もって白金使用量を低減することに繋がる。本発明の上記装置をかかる用途に適用することで、昨今その開発が日々発展しており、その生産が拡大しつつある燃料電池自動車の電池触媒の生産に好適である。なお、そのほか、ディーゼルエンジンの触媒等の生産にも適用できることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0028】
以上の説明から理解できるように、本発明の粉体処理装置によれば、簡易な構成で被処理対象の粉体を凝集させることなく微小単位に粉々にでき、金属触媒を均一に粉体表面に担持させることができる。また、金属触媒の有効面積を大きくすることができるため、その使用量を低減することに繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の粉体処理装置の一実施の形態の側面図であり、図2は図1のII−II斜視図であり、図3は図2のチャンバーの拡大図であり、図4は図1のチャンバーの拡大図である。図5aは従来装置による担持触媒のTEM写真(透過電子顕微鏡写真)であり、図5bは本発明の装置による担持触媒のTEM写真である。図6はチャンバー底部に突起を設けた場合の効果を検証するための実験結果を示したものであり、図6aはチャンバー底部に突起が無い装置の場合の担持触媒のTEM写真であり、図6bはチャンバー底部に突起がある装置の場合の担持触媒のTEM写真であり、図6cは双方の場合の有効白金面積を比較したグラフである。
【実施例】
【0030】
図1は本発明の粉体処理装置の一実施の形態を概略説明した図である。この粉体処理装置10は、アークプラズマガン3のプラズマ照射方向を水平面に対してθ傾斜させた姿勢で該アークプラズマガン3が位置決め固定され、このプラズマ照射方向先端に粉状カーボン担体が収容されたチャンバーを有する回転体ユニット1が装着され、この回転体ユニット1はさらに先端のサーボモータ2にて所定速度で回転自在に構成されている。また、アークプラズマガン3は真空ポンプ4(たとえばターボ分子ポンプで、株式会社アルバック製のYTP150)、補助真空用のロータリーポンプ5に連通しており、これによってガン内部を真空とし、放電させるようになっている。
【0031】
上記する角度θ方向は回転体ユニット1の自転軸とも一致しているが、このθの範囲は後述するカーボン担体や鋼球の落下の促進、落下したカーボン担体C,…の底部突起への衝突の促進等の観点から30〜60度の範囲に設定されるのが好ましく、本実施例では40度としている。
【0032】
図2は、図1のII−II矢視図であって回転体ユニット1が自転している状況を説明した正面図である。この回転体ユニット1は、その中央に位置するカーボン担体C、…を収容するチャンバー11と、これを囲繞する囲繞体12とから構成されている。チャンバー11は、その拡大平面図である図3、その縦断面図である図4にて図示するように、円盤状の底部11aと、これから立ち上がる無端の立上がり壁部11b、立上がり壁部11bの周方向に複数(図示例では8つ)設けられた掬い堰11c、…、底部11aからチャンバー内側に突出する複数の突起11d、…より構成されている。
【0033】
一方、チャンバー11の外周に位置してこれに固定される囲繞体12は、円盤状の無垢体の内部に複数(図示例では8つ)の案内孔14,…が形成されており、各案内孔14の先端には回転体ユニット1の自転方向(図2のX1方向)に反対方向に延びる係止孔13が連通している。さらに、各案内孔14内には鋼球15が収容されており、この鋼球15は係止孔13内に収容可能であって案内孔14内を往復移動(自由落下および持ち上げられ)できる大きさを有している。
【0034】
図2に基づいて説明すると、回転体ユニット1のX1方向への自転に応じて、その最頂部に位置する案内孔14および係止孔13では、係止孔13内に収容されていた鋼球15が案内孔14方向へ移動し(Y1方向)、案内孔14内に導かれて自由落下することにより、チャンバー11の立上がり壁部11bに衝突して該チャンバー11に衝撃を付与する。
【0035】
回転体ユニット1の自転により、チャンバー11に衝撃を付与した鋼球15は案内孔14を下方へ自由移動し(Y2方向)、さらにこの案内孔14が最下点を通過して上昇位置に転じた段階で再び係止孔13内に収容される(Y3方向)。
【0036】
8つの鋼球15,…は対応する案内孔14および係止孔13内で上記往復移動を繰り返し、その途中で一定の間隔でチャンバー11に衝撃を付与することになる。
【0037】
一方、チャンバー11内に収容された粉状カーボン担体C,…は回転体ユニット1の自転に応じてチャンバー11内周面の掬い堰11cにて掬い取られ、上方に持ち上げられて最頂点またはその近傍で掬い堰から滑り落ちてチャンバー下方へ自由落下する。
【0038】
ここで、粉状カーボン担体C,…は軽量であることから、掬い堰11cに付着して良好に自由落下しない可能性が高い。
【0039】
しかし、本発明の粉体処理装置10では、一定の間隔でこのチャンバー11に鋼球15による衝撃が付与されることから、掬い堰11cに付着した粉状カーボン担体C,…はこの衝撃によって掬い堰11cから切り離され、回転体ユニット1の自転に応じて良好に自由落下できるものである。
【0040】
さらに、図4で示すように、チャンバー底部11aの内部には多数の突起11d、…が設けられていることで、自由落下した粉状カーボン担体C,…はまずこの突起11d、…に衝突して粉々にされ、下方に落ちた後で掬い堰11cに掬い取られて上方に持ち上げられることになる。また、底部11aに突起11d、…を設けておき、これに粉状カーボン担体C,…を衝突させることにより、プラズマ照射方向に対向するカーボン担体表面を随時変化させることもでき、これによってカーボン担体表面への均一な金属触媒の担持を実現することができる。
【0041】
図1に戻り、粉体処理装置10は不図示のパーソナルコンピュータに繋がっており、このコンピュータ内には、プラズマガン3にパルス信号を送信しながらプラズマのパルス照射を実行できる構成となっている。また、サーボモータ2の回転速度もコンピュータにて制御できるようになっており、この回転速度とパルス信号送信のタイミングの双方を調整する制御部によって、鋼球15による衝撃付与に同期してプラズマのパルス照射を実行できるようになっている。
【0042】
たとえば、アークプラズマの照射条件として、真空度を1×10−4Pa、温度は常温、照射間隔を1パルス/秒、パルス回数を1000回、サーボモータ回転数を7.5rpmに設定できる。
【0043】
上記する本発明の粉体処理装置10によれば、粉状カーボン担体をチャンバー内で凝集させることなく、微小単位の粉状にでき、これにアークプラズマを照射することで、カーボン担体表面に均一な白金触媒を担持させることが可能となる。
【0044】
[従来装置による場合と上記粉体処理装置による場合の担持触媒のTEM写真解析]
本発明者等は、円筒形バレル内で粉状カーボン担体を攪拌する従来装置を使用した場合と、上記する粉体処理装置10を使用した場合の担持触媒のTEM写真を撮影し、両者の比較をおこなった。その結果を図5に示しており、図5aは従来装置の場合を、図5bは本発明装置の場合をそれぞれ示している。また、写真中の黒点部分が白金触媒であり、薄いグレー部分はカーボン担体である。
【0045】
図5aより、従来装置の場合には白金触媒が一部に集中的に固まった状態で担持されており、このことは、カーボン担体表面に白金が均一に担持されていないことを明瞭に示すものである。
【0046】
一方、図5bより、本発明装置の場合には、図5aに比してカーボン担体もより微小に分散されており、さらに各カーボン担体表面に微小粒の白金触媒が均一に担持されていることが明確に視認できる。
【0047】
この結果より、本発明の装置を使用した場合には、カーボン担体をより微小単位に分散させることができ、その結果として微小カーボン担体表面に白金を均一に担持させることが可能となる。
【0048】
[チャンバー底部の突起の有無による有効白金面積の相違]
本発明者等は、チャンバー底部の突起の有無によって単位重量当たりの白金面積がどの程度相違するのかに関し実験をおこなった。使用するのは粉体処理装置10と、この装置構成でチャンバー底部に突起が無い装置である。
【0049】
各装置における処理後のTEM写真を撮影し、これを図6に示している。ここで、図6aは突起が無い装置の場合を、図6bは図示例の装置の場合をそれぞれ示している。また、図中の黒点が白金であることは上実験結果と同様である。
【0050】
両図を比較すると、両者ともにカーボン担体は微小単位に分散されているものの、図6bの方はその表面により微小な(より粒径の小さな)白金触媒が担持していることが視認できる。
【0051】
また、双方の有効白金面積を回転電極法によって調べた結果を図6cのグラフに示している。
【0052】
同図より、チャンバー底部に突起を設けた場合は、突起の無い場合に比して有効白金面積はおよそ10倍に増加しており、このことは、単位面積当たりの反応面積を増加させることができること、もしくは使用白金量を低減できること、を示すものである。
【0053】
本実験より、チャンバー底部に複数の突起を形成しておくことは重要であり、これにより、本装置の有する効果を一層顕著なものとすることができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。たとえば、粉状カーボン担体を図示例の回転体ユニットにて持ち上げて自由落下させる以外にも、ベルトコンベア機構にて持ち上げて自由落下させる等の形態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の粉体処理装置の一実施の形態の側面図である。
【図2】図1のII−II斜視図である。
【図3】図2のチャンバーの拡大図である。
【図4】図1のチャンバーの拡大図である。
【図5】(a)は従来装置による担持触媒のTEM写真であり、(b)は本発明の装置による担持触媒のTEM写真である。
【図6】チャンバー底部に突起を設けた場合の効果を検証するための実験結果を示したものであり、(a)はチャンバー底部に突起が無い装置の場合の担持触媒のTEM写真であり、(b)はチャンバー底部に突起がある装置の場合の担持触媒のTEM写真であり、(c)は双方の場合の有効白金面積を比較したグラフである。
【図7】従来の攪拌装置を構成する多角形バレルの正面図である。
【符号の説明】
【0056】
1…回転体ユニット、11…チャンバー、11a…底部、11b…無端の立上がり壁部、11c…掬い堰、11d…突起、12…囲繞体、13…係止孔、14…案内孔、15…鋼球(衝撃付与手段)、2…サーボモータ、3…アークプラズマガン、4…真空ポンプ、5…回転ポンプ、10…粉体処理装置、C…粉状カーボン担体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも底部と無端の立上がり壁部とを有し、該立上がり壁部の内周面には複数の掬い堰がその周方向に亘って設けられており、所定の傾斜角方向に延びる該底部の垂線軸回りに自転自在で、粉体を収容するためのチャンバーと、
該チャンバーに所定の時間間隔で衝撃を付与する衝撃付与手段と、
チャンバー内にプラズマを照射する照射手段と、
を少なくとも具備することを特徴とする、粉体処理装置。
【請求項2】
前記チャンバーの外周には、前記垂直軸に直交する方向に延設する案内孔を複数備えた囲繞体が設けられており、
前記案内孔の先端には、前記自転方向に反対方向に延びる係止孔が連通しており、かつ、該案内孔には前記衝撃付与手段である錘体が収容されており、
チャンバーおよび囲繞体の自転に応じて係止孔内にある錘体が案内孔内に移動し、該案内孔内を落下することによりチャンバーに所定の時間間隔で衝撃を付与するようになっている、請求項1に記載の粉体処理装置。
【請求項3】
前記底部には、チャンバー内部に突出する複数の突起が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の粉体処理装置。
【請求項4】
前記処理装置は、前記衝撃付与手段による衝撃発生に同期して照射手段からプラズマをパルス照射させる制御手段をさらに備えている、請求項1〜3のいずれかに記載の粉体処理装置。
【請求項5】
前記粉体が粉状のカーボン担体であり、該カーボン担体に白金または白金合金を担持させるのに供される請求項1〜4のいずれかに記載の粉体処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−22895(P2009−22895A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189301(P2007−189301)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】