説明

粉体原料供給装置及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法

【課題】粉体原料がホッパ内部で舞上りにくくし、原料の同伴エアと共に排気口から粉体原料が飛散することを抑制する。
【解決手段】粉体原料を溶融混練装置に供給する装置であって混錬する粉体原料を溶融混練装置の原料供給口に誘導するための傾斜を有するホッパ1と原料供給機から投入される原料をホッパに誘導するシュータ2と原料と共に流入したエアを系外に排出する排気口3を具備し、かつ、シュータ2の先端とホッパ1の壁面までの垂直距離が0〜150mmであることを特徴とする粉体原料供給装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体原料を使用して熱可塑性樹脂組成物を溶融混練装置(以下、押出機)で製造する際に、押出機に安定して粉体原料を供給する粉体原料供給装置に関わるものであり、特に粉体原料と同伴したエアが一緒に供給ホッパの排気口から流出することで生じるマテリアルバランス異常を原料の落下速度を低下させることで防ぐ製造方法について記載する。
【背景技術】
【0002】
押出機においては、原料をバレル内で、スクリューを回転させて可塑化し、強化繊維や粒状フィラーなどを練りこみながら押し出す。この際、粉体原料を用いた場合粉体粒子が軽いと供給ホッパ内部の気流の乱れにより、排気口から粉体原料が排出されてしまう。従来技術では(特許文献1)に粉体原料を傾斜のついたシュータで押出機ホッパに原料を投入し、該ホッパ内部でシュータの傾斜とは逆方向に傾斜のついたホッパを2分する仕切り板に原料をあてて原料供給部に誘導し、押出機のスクリューに生じたクリアランスから原料供給領域と仕切り板を介して逆の領域からエアを排出するという技術が存在するが、主原料として多量の粉体原料を用いる場合には原料がシュータと仕切り板の間で圧縮されて詰まり供給不良となりかねない。また、シュータと逆の傾斜を有する仕切り板に速い落下速度で原料をぶつけることで粉体を舞い散らせることとなり、系外に排出されやすくなる。また、(特許文献2)には多原料押出を実施する際に、傾斜付きの原料供給シュート1機で全原料を密閉式の押出機に供給する技術が存在するが、同一のシュートから多原料を供給すると原料詰まりが生じやすくなり安定生産が困難となってしまう。これらの問題を本発明では、混錬する粉体原料を押出機の原料供給口に誘導する際、シュータ2と原料ホッパ傾斜面までの垂直距離を小さくすること及び、流入したエアを排出する排気口を設置することで解決している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−165341号公報
【特許文献2】特開平11−48252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の粉体原料供給方法は押出機の供給ホッパ上部から垂直に原料を自由落下させて供給する方法が一般的であるが、その場合落下した原料の同伴エアーにより、放気口から粉体原料が多量に排出されてしまう。この原料排出により本来のマテリアルバランスが崩れ、物性のバラツキや本発明で得た熱可塑性樹脂組成物を成型してなる成型体の寸法安定性低下が生じやすかった。得られる熱可塑性樹脂組成物のマテリアルバランスを保つために、排出される原料と同量分を上乗せして押出機に供給する方法もあるが、排出される原料の量は変わらず屑となってしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本願発明は、以下の構成からなる。
【0006】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)粉体樹脂原料を溶融混練装置に供給する装置であって混錬する粉体原料を溶融混練装置の原料供給口に誘導するための傾斜を有するホッパ1と原料供給機から投入される原料をホッパに誘導するシュータ2と原料と共に流入したエアを系外に排出する排気口3を具備し、かつ、シュータ2の最下端から鉛直方向に伸びる垂線とホッパ1の接する点までの距離が0〜150mmであることを特徴とする粉体原料供給装置。
(2)シュータ2と鉛直方向に伸びる垂線と成す角αが0〜35°であることを特徴とする請求項1記載の粉体原料供給装置
(3)ホッパ壁面の水平に対する角βが35〜75°であることを特徴とする請求項1又は2記載の粉体原料供給装置。
(4)ホッパ1壁面の外側にバイブレータを具備する請求項1、2又は3記載の粉体原料供給装置。
(5)請求項1、2又は3のいずれかの粉体原料供給装置を具備した溶融混練装置。
(6)請求項5記載の溶融混練装置を用いて熱可塑性樹脂組成物を製造する方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、粉体原料供給時に供給シュータ内壁からホッパ1壁面までの垂直距離を小さくすることにより、粉体原料がホッパ内部で舞上りにくくなり原料の同伴エアと共に排気口から粉体原料が飛散することを抑制することができる。また、原料排出が低減されることで、マテリアルバランスが崩れなくなるため、本発明で得た熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品の寸法安定性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の粉体原料供給装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る粉体原料の供給装置および供給方法の実施形態の一例を図1に基づいて説明する。図1は、本発明に係る粉体原料の供給装置の一構造例を押出機に装着したところを正面側から視た縦断面図である。先ず、本発明に係る粉体原料供給装置について説明する。本発明に係る供給装置は、溶融混練装置に対して粉体原料を供給する装置である。
【0010】
該混練機としては、2軸押出機の他に多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等でもよい。また、ホッパ1の形状は丸型、多角形及び偏芯ホッパでもよく、材質は選ばないがホッパ1には原料が同伴したエアを系外に排出させるための排気口3が必要である。ホッパのコーン角β及びシュータ2と鉛直方向に伸びる垂線と成す角をαとした場合の(90−α)が供給する粉体原料の安息角よりも大きくすると良く、具体的にはαは0〜35°、βは35〜75°であることが好ましい。
【0011】
シュータ2の材質は連続使用時の耐久性の観点から金属製が好ましい。
【0012】
本願発明では、シュータ2の先端とホッパ1壁面までの垂直距離は0〜150mmとすることが重要である。垂直距離が長くなるほど排気口3から粉体原料が排出されやすくなり、マテリアルバランスが崩れやすい。従って、好ましくは0〜100mm更に好ましくは0〜50mm、特に好ましくは0〜30mmとすることでより発明の効果が得られる。
【0013】
また、本発明実施の際、粉体原料の性質によってはホッパに付着する。この時、ホッパ1側面の外側にバイブレータ4を設置し、振動を与えることで、粉体原料の供給がより安定する。
【0014】
次に取り扱う粉体原料について説明する。使用する原料は、主原料の樹脂粉体としてはポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリエチレン等が挙げられる。また、粉体フィラー原料としてはベントナイト、ドロマイト、モンモリロナイト、バーライト、微粉ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、ドーソナイト、シラスバルーン、クレー、セリサイト、長石粉、タルク、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、カオリン、ゼオライト(合成ゼオライトも含む)、滑石、マイカ、合成マイカおよびワラステナイト(合成ワラステナイトも含む)、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ハイドロタルサイトおよびシリカなどが挙げられる。主原料の場合、全原料に対して、30〜95重量%の範囲で供給する際に本発明の効果が得られやすく、粉体フィラー原料の場合は全原料に対して、1〜70重量%の範囲で供給する際に効果が得られやすい。共通して粉体原料の平均粒子径が1mm以下、10μm以上の原料に適用した場合に効果が高い。また、原料投入口からの供給のみならず、サイドフィードする場合にも同様の効果が期待できる。
【実施例】
【0015】
本実施例では、胴径φ500、排出口φ50、β=60°の丸型ホッパを作成し、塩ビシートを巻いたシュータNo.1(φ100)を垂直落下距離及びシュータと鉛直方向に伸びる垂線との角度を変えて設置し、ホッパに排気口を設けたシートで蓋をしてFUNKEN POWTECHS社製の粉検フィーダ(型番FS−SJ3−S)を使用して流量40kg/hrで東レ株式会社製ポリフェニレンスルフィド(以下、PPS) L4230(平均粒子径60μm)を落下させた。落下させた際に排気口から排出されるPPS L4230をバック捕集式掃除機で5分間捕集し、捕集量を測定した。シュータNo.1の結果を表1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
実験の結果、シュータ垂直距離が短いほどPPS排出量が少なくなり、シュータ角度と垂直方向に伸びる垂線となす角度が大きくなるほどPPS排出量が少なくなることがわかった。
【符号の説明】
【0018】
1 ホッパ
2 シュータ
3 排気口
4 バイブレータ
5 2軸押出機スクリュー
α シュータと鉛直方向に伸びる垂線とが成す角
β ホッパ壁面の水平に対する角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体原料を溶融混練装置に供給する装置であって混錬する粉体原料を溶融混練装置の原料供給口に誘導するための傾斜を有するホッパ1と原料供給機から投入される原料をホッパに誘導するシュータ2と原料と共に流入したエアを系外に排出する排気口3を具備し、かつ、シュータ2の最下端から鉛直方向に伸びる垂線とホッパ1の接する点までの距離が0〜150mmであることを特徴とする粉体原料供給装置。
【請求項2】
シュータ2と鉛直方向に伸びる垂線と成す角αが0〜35°であることを特徴とする請求項1記載の粉体原料供給装置
【請求項3】
ホッパ壁面の水平に対する角βが35〜75°であることを特徴とする請求項1又は2記載の粉体原料供給装置。
【請求項4】
ホッパ1壁面の外側にバイブレータを具備する請求項1、2又は3記載の粉体原料供給装置。
【請求項5】
請求項1、2又は3のいずれかの粉体原料供給装置を具備した溶融混練装置。
【請求項6】
請求項5記載の溶融混練装置を用いて熱可塑性樹脂組成物を製造する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−76275(P2012−76275A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221321(P2010−221321)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】