説明

粉体塗料組成物およびその塗装物

【課題】 特に金属との接着性に優れると共に、線材を組み合わせたような間隙を有する基材にもムラなく塗装でき、ピンホールの発生が少ない塗膜を形成させることができる粉体塗料組成物、およびその粉体塗料組成物を基材に塗装した耐候性に優れた塗装物を提供すること。
【解決手段】 ポリプロピレン樹脂100質量部に対して極性基含有樹脂25〜400質量部を配合してなる粉体塗料組成物であって、
1)230℃、2.16kg荷重時のメルトマスフローレイトが15〜50g/10分、
2)粒子径が180μmを超える粒子の割合が2質量%以下、
3)粒子径が63μm以下である粒子の割合が15質量%以下、
4)中位粒子径が80〜170μm、
5)圧縮度が10〜25%、
圧縮度=〔(嵩密度−タップ密度)÷タップ密度〕×100
である粉体塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体塗料組成物およびその塗装物に関する。さらに詳しくは、ポリプロピレン樹脂を用いた粉体塗料組成物およびその塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体塗料は、溶剤塗料と異なり、溶剤を用いることなく熱によって塗料を溶融して塗膜を形成するため、揮発性有機化合物の発生が無く、環境への負荷が少ないこと、火災や溶剤による中毒の危険が少ないこと、塗料の再使用が可能なこと等の特徴を有しており、近年その用途が大幅に広がっている。
【0003】
一般に、粉体塗料は、熱可塑性樹脂からなり、水道用パイプ、ガス用パイプ等のパイプ類;食器洗浄器カゴ等の各種カゴ類;グレーチング、軸受け、ショッピングカート、OA機器、自動車用部品、ネックフィラー、機械部品等の金属製基材の被覆に用いられている。従来、粉体塗料としては、金属に対する接着性に優れた、ポリアミドやポリエーテルエステルアミド、反応性エポキシ樹脂とポリビニルアセタールを混合したナイロン樹脂(特許文献1参照)、ナイロン11、ナイロン12およびそれぞれの共重合ポリアミドから選ばれるアミド粉末とアイオマー粉末を混合した粉末(特許文献2参照)、ポリアミドまたはポリエーテルエステルアミドと、水酸基含有脂環族系炭化水素樹脂を含む粉体塗装用樹脂粉体(特許文献3参照)等が提案されている。
【0004】
しかしながら、ポリアミドやポリエーテルエステルアミド、および前記特許文献1〜3に記載の樹脂は、融点が高いため前工程の加熱温度を高くする必要があり、熱容量の大きい基材を塗装するには、基材の加熱に時間を要す。また、前記樹脂の溶融粘度は極端に低いため、塗膜の厚みにムラが生じやすく、さらには膜厚の薄い箇所やピンホールも発生しやすいことから、水の浸入による錆の発生を防ぐために、基材の塗装前に、例えば、防錆処理等のプライマー処理を施す必要がある等の課題があった。
【0005】
一方、前記樹脂に代わる被覆材料として、ポリオレフィン系樹脂が提案されている。ポリオレフィン系樹脂は、樹脂単独では金属との接着性を有さないため、金属との接着性を付与するために接着性樹脂との混合が一般に行われ、例えば、未変性ポリプロピレン系樹脂に、接着性樹脂として変性ポリプロピレン系樹脂を配合したポリプロピレン系粉体塗料組成物が提案されている(特許文献4参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献4記載のポリプロピレン系粉体塗料組成物は、2本以上の線材を組み合わせたり、線材を平板等と組み合わせたりした基材に塗装した際に、特に線材同士の間隙部や組み合わせ部等において、意匠性を有したまま塗装することが困難であったり、ピンホールが発生しやすく、水の侵入により錆が発生し易い等の問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開昭55−65263号公報
【特許文献2】特開昭55−89364号公報
【特許文献3】特開平10−330651号公報
【特許文献4】特開平9−12928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特に金属との接着性に優れると共に、線材を組み合わせたような間隙を有する基材にもムラなく塗装でき、ピンホールの発生が少ない塗膜を形成させることができる粉体塗料組成物、およびその粉体塗料組成物を基材に塗装した耐候性に優れた塗装物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して極性基含有樹脂25〜400質量部を配合してなる粉体塗料組成物であって、
1)230℃、2.16kg荷重時のメルトマスフローレイトが15〜50g/10分、
2)粒子径が180μmを超える粒子の割合が2質量%以下、
3)粒子径が63μm以下である粒子の割合が15質量%以下、
4)中位粒子径が80〜170μm、
5)圧縮度が10〜25%、
圧縮度=〔(嵩密度−タップ密度)÷タップ密度〕×100
である粉体塗料組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属との接着性に優れ、線材を組み合わせたような間隙を有する基材にもムラなく塗装でき、ピンホールの発生が少ないだけでなく、耐候性にも優れた塗膜を形成させることができる粉体塗料組成物が得られる。また、従来の粉体塗料組成物と比較して融点が低く、粉体塗料組成物を基材に塗装する際に、基材の加熱温度を低くすることができるだけでなく、粉体塗料組成物の溶融粘度が制御し易いため、塗膜の厚みが制御しやすい。さらに、前記従来の粉体塗料組成物を基材に塗装する際に必要であった、水の侵入によるサビの発生を防ぐ等のプライマー処理工程が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る粉体塗料組成物は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して極性基含有樹脂25〜400質量部を配合してなる粉体塗料組成物であって、
1)230℃、2.16kg荷重時のメルトマスフローレイトが15〜50g/10分、
2)粒子径が180μmを超える粒子の割合が2質量%以下、
3)粒子径が63μm以下である粒子の割合が15質量%以下、
4)中位粒子径が80〜170μm、
5)圧縮度が10〜25%、
圧縮度=〔(嵩密度−タップ密度)÷タップ密度〕×100
の特性を有している。
【0012】
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂としては、特に限定されず、例えば、ホモポリプロピレン、および、プロピレンと炭素数2または4〜10のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
【0013】
炭素数が2または4〜10のα−オレフィンとしては、直鎖状、分岐状、環状のいずれであっても良く、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等が挙げられる。これらの炭素数が2または4〜10のα−オレフィンは、単独でプロピレンと共重合しても良いし、2種以上がプロピレンと共重合していてもよい。これらの炭素数が2または4〜10のα−オレフィンの中では、極性基含有樹脂との相溶性が良好な観点から、エチレン、1−ブテンが好ましい。
【0014】
炭素数2または4〜10のα−オレフィンの含有量としては、ポリプロピレン樹脂に対して1〜10質量%であることが好ましい。炭素数2または4〜10のα−オレフィンの含有量が1質量%未満の場合、得られる粉体塗料組成物の融点が高くなり、溶融粘度も高くなるため、塗膜の平滑性が低くなるおそれがある。また、炭素数2または4〜10のα−オレフィンの含有量が10質量%を超える場合、得られる粉体塗料組成物の融点が低くなり、前記粉体塗料組成物から得られる塗膜の耐熱性が不充分となるおそれがあるだけでなく、前記塗膜の表面硬度が低くなるおそれがある。
【0015】
プロピレンと炭素数2または4〜10のα−オレフィンとの共重合体において、共重合の配列としては、特に限定されず、ランダム共重合〔以下、「ランダムポリプロピレン」という場合がある〕、ブロック共重合〔以下、「ブロックポリプロピレン」という場合がある〕等が挙げられる。これらの共重合配列の中でも、得られる粉体塗料組成物の熱収縮が少なくなる観点から、ランダム共重合が好ましい。
【0016】
本発明に用いられる極性基含有樹脂としては、例えば金属等の基材との接着性を向上させる観点から、アミド基、水酸基、カルボキシル基等を含有する樹脂が挙げられる。これらの極性基含有樹脂の中でも、金属等の基材表面との親和性や接着力に優れる観点から、カルボキシル基を含有する樹脂が好ましく、例えば、酸変性ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0017】
酸変性ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等のポリプロピレンを不飽和カルボン酸またはその無水物で処理して得られる樹脂等が挙げられる。
【0018】
不飽和カルボン酸またはその無水物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸またはその無水物の中でも、前記ポリプロピレンとの反応性の観点から、無水マレイン酸が好ましい。不飽和カルボン酸またはその無水物による変性割合としては、酸変性ポリプロピレンの0.05〜5質量%であることが好ましい。酸変性割合が0.05質量%未満の場合、得られる粉体塗料組成物の基材に対する接着力が充分でないおそれがある。また、酸変性割合が5質量%を超える場合、前記ポリプロピレンとの相溶性が悪く、極性基含有樹脂が粉体塗料組成物中で局在化するため、得られる粉体塗料組成物の接着力が低下するおそれがある。
【0019】
エチレン−アクリル酸共重合体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸含量が5〜15質量%のエチレン−アクリル酸共重合体が好ましく用いられる。アクリル酸含量が5質量%未満の場合、得られる粉体塗料組成物の基材に対する接着力が充分でないおそれがある。また、アクリル酸含量が15質量%を超える場合、得られる粉体塗料組成物の粒子形状が歪になる傾向があり、粉体塗料組成物の流動性が悪化するおそれがある。
【0020】
エチレン−メタクリル酸共重合体としては、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸含有量が5〜25質量%のエチレン−メタクリル酸共重合体が好ましく用いられる。メタクリル酸含有量が5質量%未満の場合、得られる粉体塗料組成物の基材に対する接着力が充分でないなるおそれがある。メタクリル酸含有量が25質量%を超える場合、得られる粉体塗料組成物の粒子形状が歪になる傾向があり、粉体塗料組成物の流動性が悪化するおそれがある。
【0021】
極性基含有樹脂の使用量は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、25〜400質量部であり、好ましくは40〜250質量部である。極性基含有樹脂の使用量が25質量部未満の場合、得られる粉体塗料組成物の基材に対する接着力が悪くなるだけでなく、得られた粉体塗料組成物の粒度を調整しても圧縮度が高くなるため、塗装後の基材表面にボタツキが生じ、得られる塗膜の平滑性が悪くなる。また、極性基含有樹脂の使用量が400質量部を超える場合、ポリプロピレン樹脂の含有量が減るため、耐熱性、耐薬品性が悪くなるだけでなく、得られる粉体塗料組成物の粒子形状が歪になり、粉体塗料組成物の流動性が悪くなる。さらに、得られた粉体塗料組成物の粒度を調整しても圧縮度が低く、例えば、線材を組み合わせた基材に塗装した際に、線材同士の間隙に粉体塗料組成物が入り込めず、ピンホールが発生する。
【0022】
本発明に係る粉体塗料組成物において、230℃、2.16kg荷重時のメルトマスフローレイト(以下、「MFR」という場合がある)は、15〜50g/10分であり、好ましくは20〜40g/10分である。MFRが15g/10分未満の場合、粉体塗料組成物が溶融した際の流動性が低いため、得られる塗膜の平滑性が悪くなる。また、MFRが50g/10分を超える場合、粉体塗料組成物が溶融した際の流動性が高いため、基材表面で塗料が流れて垂れるため、均一な塗膜が得られないだけでなく、得られる塗膜の耐候性が悪くなる。なお、本発明において『メルトマスフローレイト(MFR)』とは、後述する測定方法により測定した値である。
【0023】
本発明に係る粉体塗料組成物において、粒子径が180μmを超える粒子の割合は、2質量%以下であり、得られる塗膜の平滑性の観点から、好ましくは1質量%以下である。粒子径が180μmを超える粒子の割合が2質量%を超える場合、例えば、線材を組み合わせた基材に塗装した際に、線材同士の間隙に粉体塗料組成物が入り込めず、ピンホールが発生する。なお、本発明において『粒子径が180μmを超える粒子の割合』とは、後述する測定方法により測定した値である。
【0024】
本発明に係る粉体塗料組成物において、粒子径が63μm以下である粒子の割合は、15質量%以下であり、好ましくは10質量%以下である。粒子径が63μm以下である粒子の割合が15質量%を超える場合、例えば、線材を組み合わせた基材に塗装した際に、塗装後の基材表面にボタツキが生じ、得られる塗膜の平滑性が悪くなり、さらに、線材の間隙の形状が崩れて意匠性が悪くなる。なお、本発明において『粒子径が63μm以下である粒子の割合』とは、後述する測定方法により測定した値である。
【0025】
本発明に係る粉体塗料組成物において、中位粒子径は、80〜170μmであり、好ましくは100〜150μmである。中位粒子径が80μm未満の場合、例えば、線材を組み合わせた基材に塗装した際に、塗装後の基材表面にボタツキが生じ、得られる塗膜の平滑性が悪くなり、さらに、線材の間隙の形状が崩れて意匠性が悪くなる。また、中位粒子径が170μmを超える場合、例えば、線材を組み合わせた基材に塗装した際に、線材同士の間隙に粉体塗料組成物が入り込めず、ピンホールが発生する。なお、本発明において『中位粒子径』とは、後述する測定方法により測定した値である。
【0026】
本発明に係る粉体塗料組成物において、圧縮度は、10〜25%であり、好ましくは15〜20%である。圧縮度が10%未満の場合、例えば、線材を組み合わせた基材に塗装した際に、線材同士の間隙に粉体塗料組成物が入り込めず、ピンホールが発生する。また、圧縮度が25%を超える場合、例えば、線材を組み合わせた基材に塗装した際に、塗装後の基材表面にボタツキが生じ、得られる塗膜の平滑性が悪くなり、さらに、線材の間隙の形状が崩れて意匠性が悪くなる。なお、本発明において『圧縮度』とは、下記式により算出した値であり、嵩密度およびタップ密度は、後述する測定方法により測定した値である。
圧縮度=〔(嵩密度−タップ密度)÷タップ密度〕×100
【0027】
本発明に係る粉体塗料組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲において、必要に応じ、例えば、造核剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、蛍光漂白剤、易流動化剤、熱安定剤および難燃剤等の成分を含んでいてもよい。
【0028】
本発明に係る粉体塗料組成物の製造方法としては、例えば、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して極性基含有樹脂25〜400質量部を配合し、溶融混合した後、粉砕し、粒度調整する方法等が挙げられる。
【0029】
ポリプロピレン樹脂と極性基含有樹脂とを配合する方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、ブレンダー等の公知の混合機等によりドライブレンドする方法等が挙げられる。また、前記方法のような混合はせずに、溶融混合工程において、ポリプロピレン樹脂および極性基含有樹脂それぞれを、フィーダー等の定量供給機を用いて溶融混合機に直接供給する方法等が挙げられる。
【0030】
溶融混合する方法としては、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ニーダー、押出機等の各種溶融混合機を用いて溶融混合する方法等が挙げられる。これらの溶融混合する方法の中でも、ポリプロピレン樹脂と極性基含有樹脂を充分に混合して、均一な粉体塗料組成物を得る観点から、押出機が好ましく用いられ、2軸押出機を用いた方法がより好ましく用いられる。また、前記溶融混合後の形状としては、後工程の粉砕を容易にするために、例えば、ペレット等の形状に加工されていることが好ましい。
【0031】
粉砕する方法としては、得られる粉体塗料組成物が、粒子径が180μmを超える粒子の割合が2質量%以下、粒子径が63μm以下である粒子の割合が15質量%以下、中位粒子径が80〜170μm、圧縮度が10〜25%を満たす粉砕方法であれば、特に限定されず、機械を用いた粉砕法、溶剤に溶解した後析出させる化学粉砕法等が挙げられる。これらの粉砕法の中でも、操作が容易であることから、機械粉砕法が好ましく、とりわけ機械粉砕法の中でも、得られる粉体塗料組成物の粒子形状を制御する(例えば、ヒゲ状物を減らす等)観点、および圧縮度の調整が容易である等の観点から、好ましくは−50℃以下に冷却した条件で、ターボミル、ピンミル等の粉砕機を用いて粉砕する機械粉砕法が好ましく用いられる。
【0032】
粉砕後は、得られる粉体塗料組成物が、粒子径が180μmを超える粒子の割合が2質量%以下、粒子径が63μm以下である粒子の割合が15質量%以下、中位粒子径が80〜170μm、圧縮度が10〜25%を満たすように、篩、分級機等を用いて、適宜調整する。また、分級後に、再度、粉砕および分級を繰り返し行うことも可能である。
【0033】
本発明に係る粉体塗料組成物は、金属との接着性に優れ、線材を組み合わせたような間隙を有する基材にもムラなく塗装でき、ピンホールの発生が少ないだけでなく、耐候性にも優れた塗膜を形成させることができる。また、ポリアミド、ポリエーテルエステルアミドからなる従来の粉体塗料組成物と比較して融点が低く、粉体塗料組成物を基材に塗装する際に、基材の加熱温度を低くすることができるだけでなく、粉体塗料組成物の溶融粘度が制御し易いため、塗膜の厚みが制御しやすい。さらに、前記従来の粉体塗料組成物を基材に塗装する際に必要であった、水の侵入によるサビの発生を防ぐ等のプライマー処理工程が不要となる。
【0034】
本発明に係る粉体塗料組成物を塗装する際の基材としては、特に限定されないが、水道用パイプ、ガス用パイプ等のパイプ類;食器洗浄器カゴ等の各種カゴ類;グレーチング、軸受け、ショッピングカート、OA機器、自動車用部品、ネックフィラー、機械部品等が挙げられる。特に、本発明の粉体塗料組成物は、2本以上の線材を組み合わせたり、線材を平板等と組み合わせたりした、例えばショッピングカート等の複雑な構造を有する基材に対してでも、線材の間隙の形状が損なわれないため基材の意匠性を保つことができ、ピンホールが発生しないためサビが発生しにくい塗膜を形成することができる。
【0035】
本発明に係る粉体塗料組成物を基材に塗装する方法としては、流動浸漬塗装、静電塗装、静電浸漬塗装等の公知の粉体塗装方法が挙げられる。これらの塗装方法の中でも、操作が簡便で、厚膜塗装が可能である等の観点から、流動浸漬塗装方法が好ましく用いられる。
【0036】
以下に、製造例、実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0037】
[製造例1]酸変性ホモポリプロピレンの製造
ホモポリプロピレン100質量部、無水マレイン酸0.5質量部、および重合開始剤としてt−ブチルパーオキシラウレート0.2質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレット状の酸変性ホモポリプロピレンを得た。
得られた酸変性ホモポリプロピレンのMFRは、45g/10分であった。
【0038】
[製造例2]酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体(酸変性ランダムポリプロピレン)の製造
製造例1において、ホモポリプロピレン100質量部に代えて、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体(エチレン含有量5質量%、MFR:32g/10分)100質量部を用いた以外は、製造例1と同様にして、酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体を得た。
得られた酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体のMFRは、31g/10分であった。
【0039】
[製造例3]酸変性プロピレン−エチレンブロック共重合体(酸変性ブロックポリプロピレン)の製造
製造例1において、ホモポリプロピレン100質量部に代えて、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体(エチレン含有量7質量%、MFR:45g/10分)100質量部を用いた以外は、製造例1と同様にして、酸変性プロピレン−エチレンブロック共重合体を得た。
得られた酸変性プロピレン−エチレンブロック共重合体のMFRは、40g/10分であった。
【0040】
[実施例1]
ポリプロピレン樹脂としてランダムポリプロピレン(プライムポリマー社製、型番:J3021GR、MFR=33g/10分)100質量部、極性基含有樹脂として製造例1と同様の方法にて得られた酸変性ホモポリプロピレン180質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0041】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ターボミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が0.5質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が7.8質量%、中位粒子径114μm、嵩密度が0.378g/cm、タップ密度が0.469g/cm、圧縮度が19.4%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0042】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、41g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0043】
[実施例2]
ポリプロピレン樹脂としてランダムポリプロピレン(プライムポリマー社製、型番:J3021GR、MFR=33g/10分)100質量部、極性基含有樹脂として製造例2と同様の方法にて得られた酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体200質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0044】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ピンミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が0.2質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が8.5質量%、中位粒子径117μm、嵩密度が0.374g/cm、タップ密度が0.465g/cm、圧縮度が19.6%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0045】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、32g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0046】
[実施例3]
ポリプロピレン樹脂としてランダムポリプロピレン(プライムポリマー社製、型番:J3021GR、MFR=33g/10分)100質量部、極性基含有樹脂として製造例2と同様の方法にて得られた酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体250質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0047】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ピンミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が1.8質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が6.8質量%、中位粒子径120μm、嵩密度が0.368g/cm、タップ密度が0.448g/cm、圧縮度が17.9%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0048】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、32g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0049】
[実施例4]
ポリプロピレン樹脂としてランダムポリプロピレン(プライムポリマー社製、型番:J3021GR、MFR=33g/10分)100質量部、極性基含有樹脂として製造例2と同様の方法にて得られた酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体150質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0050】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ピンミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が0.1質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が14.5質量%、中位粒子径92μm、嵩密度が0.388g/cm、タップ密度が0.486g/cm、圧縮度が20.2%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0051】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、32g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0052】
[実施例5]
ポリプロピレン樹脂としてランダムポリプロピレン(プライムポリマー社製、型番:J3021GR、MFR=33g/10分)100質量部、極性基含有樹脂として製造例3と同様の方法にて得られた酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体400質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0053】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ピンミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が0.2質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が8.5質量%、中位粒子径110μm、嵩密度が0.384g/cm、タップ密度が0.445g/cm、圧縮度が13.7%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0054】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、39g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0055】
[実施例6]
ポリプロピレン樹脂としてホモポリプロピレン(プライムポリマー社製、型番:J−700G、MFR=8g/10分)100質量部、極性基含有樹脂として製造例3と同様の方法にて得られた酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体100質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0056】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ピンミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が1.5質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が13.2質量%、中位粒子径98μm、嵩密度が0.373g/cm、タップ密度が0.476g/cm、圧縮度が21.6%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0057】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、24g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0058】
[実施例7]
ポリプロピレン樹脂としてホモポリプロピレン(サンアロマー社製、型番:PM900A、MFR=30g/10分)100質量部、極性基含有樹脂としてエチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル社製、型番:ニュクレルAN42115C、メタクリル酸含有量5質量%、MFR=33g/10分)240質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0059】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ピンミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が0.3質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が11.2質量%、中位粒子径113μm、嵩密度が0.392g/cm、タップ密度が0.445g/cm、圧縮度が11.9%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0060】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、43g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0061】
[実施例8]
ポリプロピレン樹脂としてホモポリプロピレン(サンアロマー社製、型番:PM900A、MFR=30g/10分)100質量部、極性基含有樹脂としてエチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル社製、型番:ニュクレルAN42115C、メタクリル酸含有量5質量%、MFR=33g/10分)180質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0062】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ピンミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が0.4質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が9.8質量%、中位粒子径107μm、嵩密度が0.384g/cm、タップ密度が0.459g/cm、圧縮度が16.3%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0063】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、39g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0064】
[実施例9]
ポリプロピレン樹脂としてランダムポリプロピレン(プライムポリマー社製、型番:J3021GR、MFR=33g/10分)100質量部、極性基含有樹脂としてエチレン−アクリル酸共重合体(日本ポリエチレン社製、型番:レクスパールA220S、アクリル酸量含有量7質量%、MFR=18g/10分)150質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0065】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ピンミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が0.3質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が8.5質量%、中位粒子径88μm、嵩密度が0.389g/cm、タップ密度が0.475g/cm、圧縮度が18.1%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0066】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、37g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0067】
[実施例10]
ポリプロピレン樹脂としてランダムポリプロピレン(プライムポリマー社製、型番:J3021GR、MFR=33g/10分)100質量部、極性基含有樹脂としてエチレン−アクリル酸共重合体(日本ポリエチレン社製、型番:レクスパールA220S、アクリル酸量含有量7質量%、MFR=18g/10分)200質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0068】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ピンミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が1.1質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が11.8質量%、中位粒子径107μm、嵩密度が0.377g/cm、タップ密度が0.487g/cm、圧縮度が22.6%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0069】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、40g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0070】
[実施例11]
ポリプロピレン樹脂としてランダムポリプロピレン(プライムポリマー社製、型番:J229E、MFR=50g/10分)100質量部、極性基含有樹脂としてエチレン−アクリル酸共重合体(日本ポリエチレン社製、型番:レクスパールA220S、アクリル酸量含有量7質量%、MFR=18g/10分)40質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0071】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ピンミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が0.3質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が3.2質量%、中位粒子径107μm、嵩密度が0.378g/cm、タップ密度が0.467g/cm、圧縮度が19.1%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0072】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、48g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0073】
[比較例1]
ポリプロピレン樹脂としてランダムポリプロピレン(プライムポリマー社製、型番:J3021GR、MFR=33g/10分)100質量部、極性基含有樹脂として製造例2と同様の方法にて得られた酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体200質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0074】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ターボミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が0.2質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が18.9質量%、中位粒子径112μm、嵩密度が0.365g/cm、タップ密度が0.489g/cm、圧縮度が25.4%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0075】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、32g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0076】
[比較例2]
ポリプロピレン樹脂としてランダムポリプロピレン(プライムポリマー社製、型番:J3021GR、MFR=33g/10分)100質量部、極性基含有樹脂として製造例2と同様の方法にて得られた酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体200質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0077】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ターボミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が28.6質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が0質量%、中位粒子径171μm、嵩密度が0.373g/cm、タップ密度が0.395g/cm、圧縮度が5.6%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0078】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、32g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0079】
[比較例3]
ポリプロピレン樹脂としてランダムポリプロピレン(プライムポリマー社製、型番:J3021GR、MFR=33g/10分)100質量部、極性基含有樹脂として製造例2と同様の方法にて得られた酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体20質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0080】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ピンミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が0.2質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が8.5質量%、中位粒子径117μm、嵩密度が0.363g/cm、タップ密度が0.490g/cm、圧縮度が25.9%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0081】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、33g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0082】
[比較例4]
ポリプロピレン樹脂としてホモポリプロピレン(プライムポリマー社製、型番:J−700G、MFR=8g/10分)100質量部、極性基含有樹脂として製造例3と同様の方法にて得られた酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体35質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0083】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ピンミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が1.5質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が13.7質量%、中位粒子径97μm、嵩密度が0.373g/cm、タップ密度が0.476g/cm、圧縮度が21.6%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0084】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、14g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0085】
[比較例5]
ポリプロピレン樹脂としてホモポリプロピレン(サンアロマー社製、型番:PM900A、MFR=30g/10分)100質量部、極性基含有樹脂としてエチレン−メタクリル酸共重合(三井デュポンポリケミカル社製、型番:ニュクレルAN42115C、メタクリル酸含有量5質量%、MFR=33g/10分)650質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0086】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ピンミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が0.3質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が11.5質量%、中位粒子径113μm、嵩密度が0.392g/cm、タップ密度が0.427g/cm、圧縮度が8.2%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0087】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、54g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0088】
[比較例6]
ポリプロピレン樹脂としてランダムポリプロピレン(プライムポリマー社製、型番:J3021GR、MFR=33g/10分)100質量部、極性基含有樹脂としてエチレン−アクリル酸共重合体(日本ポリエチレン社製、型番:レクスパールA220S、アクリル酸量含有量7質量%、MFR=18g/10分)450質量部をヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで押出機を使用して190℃で溶融混合してペレットを得た。
【0089】
得られたペレットを、−60℃に冷却後、ピンミル粉砕機により、粒子径が180μmを超える粒子の割合が2.5質量%、粒子径が63μm以下である粒子の割合が22.1質量%、中位粒子径77μm、嵩密度が0.390g/cm、タップ密度が0.432g/cm、圧縮度が9.7%になるように粉砕および分級を繰り返して粒度調整し、粉体塗料組成物を得た。
【0090】
得られた粉体塗料組成物のMFRは、51g/10分であった。また、粉体塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0091】
[樹脂および粉体塗料組成物の特性]
実施例に用いたポリプロピレン樹脂、および極性基含有樹脂のMFR、ならびに、実施例1〜11および比較例1〜6で得られた粉体塗料組成物のMFR、180μmを超える粒子の割合、63μm以下の粒子の割合、中位粒子径、および圧縮度は、以下に示す方法により評価した。
【0092】
(1)メルトマスフローレイト(MFR)
本発明において、メルトマスフローレイト(MFR)とは、日本工業規格:JIS K 7210(1999年)に記載されている「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に従い、その「B法」の「附属書A(規定)メルトフローレイト測定のための試験条件」の「附属書A表」中の「条件M」(試験温度:230℃、公称荷重:2.16kg)において測定される「メルトマスフローレイト(MFR)」を意味する。
【0093】
(2)粒子径が180μmを超える粒子の割合、粒子径が63μm以下である粒子の割合、中位粒子径
本発明において、粒子径が180μmを超える粒子の割合、粒子径が63μm以下である粒子の割合、中位粒子径とは、以下の方法により測定した値である。
【0094】
粉体塗料組成物100gに、酸化アルミニウム(エボニックデグサジャパン株式会社製、品名:酸化アルミニウムC)0.1gを添加して充分に混合した後、JIS標準篩(上から、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、目開き106μmの篩、目開き75μmの篩、目開き63μmの篩、目開き45μmの篩および受け皿の順に組み合わせた)の最上段に入れ、ロータップ式振とう器を用いて10分間振とうさせて分級した。
分級後、各篩上に残った粉体塗料組成物の質量を秤量した。
【0095】
(a)粒子径が180μmを超える粒子の割合
目開き180μmの篩上に残った粉体塗料組成物の質量を、評価に用いた粉体塗料組成物の全質量で除した後、100分率に換算した。
【0096】
(b)粒子径が63μm以下である粒子の割合
目開き45μmの篩上および受け皿に残った粉体塗料組成物の質量の和を、評価に用いた粉体塗料組成物の全質量で除した後、100分率に換算した。
【0097】
(c)中位粒子径
積算質量が50%になる粒子径を次式により算出した。
中位粒子径(μm)=〔(50−A)÷(C−A)〕×(D−B)+B
式中、A、B、CおよびDは次の通りである。
A:粒度分布の粗い方から順次積算し、積算質量が50%未満であり、かつ、50%に最も近い点の積算値(g)
B:Aの積算値の篩目開き(μm)
C:粒度分布の粗い方から順次積算し、積算質量が50%以上であり、かつ、50%に最も近い点の積算値(g)
D:Cの積算値の篩目開き(μm)
【0098】
(3)圧縮度
本発明において、圧縮度とは、次式により算出した値である。
圧縮度=〔(嵩密度−タップ密度)÷タップ密度〕×100
前記嵩密度とは、疎充填の状態における嵩密度を意味し、以下の方法により測定した値である。円筒容器(直径5.05cm、高さ4.993cm、材質:ステンレス、容積:100cm)より上方230mmの地点から、目開き710μmのJIS標準篩を通して、粉体塗料組成物を均一に供給し、円筒容器の上面をすり切って秤量し、次式により算出した値である。
嵩密度(g/cm
=(粉体塗料組成物を含む円筒容器の質量−空の円筒容器の質量)÷100
【0099】
タップ密度とは、前記嵩密度の測定においてタッピング処理し、密充填にした場合の嵩密度を意味し、以下の方法により測定した値である。前記嵩密度と同様に、円筒容器(直径5.05cm、高さ4.993cm、材質:ステンレス、容積:100cm)の上に、筒(直径5.05cm、高さ4.20cm、材質:ポリエチレン)をはめ込み、筒より上方230mmの地点から、目開き710μmのJIS標準篩を通して、粉体塗料組成物を筒の上面まで均一に供給し、タップ高さ1.8cmのタッピングを200回行い、密充填を行った。
タッピング処理後、はめ込んだ筒を外し、円筒容器の上面をすり切って秤量し、次式により算出した値である。
タップ密度(g/cm
=(粉体塗料組成物を含む円筒容器の質量−空の円筒容器の質量)÷100
【0100】
なお、嵩密度およびタップ密度は、ホソカワミクロン社製のパウダーテスタ(型式:パウダーテスタPT−R型)を用いて測定を行った。
【0101】
[粉体塗料組成物による塗膜の評価]
実施例1〜11および比較例1〜6で得られた粉体塗料組成物を用いた塗膜の評価は以下に示す方法に従って行った。評価結果を、表1に示す。
【0102】
(1)外観
日本工業規格:JIS G 3302に記載されている「溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯」(2005年)に従い製造されたSGCC(Z27)鋼板(70mm×150mm×2.5mm)(基材X)、および、JIS G 3302に記載されている「溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯」(2005年)に従い製造されたSGCC(Z27)鋼材製丸棒(10mmφ×200mm)2本を3ヶ所で点溶接したもの(基材Y、図1および2参照)に対して、粉体塗料組成物を、流動浸漬塗装法により塗装し、塗装物を得た。この際、流動浸漬塗装法の条件は、前加熱を280℃で6分間、流動浸漬時間を6秒間、後加熱を210℃で3分間とした。なお、前加熱直後の基材の表面温度は、接触式表面温度計にて測定した結果、255℃であった。
【0103】
基材Xおよび基材Yを用いた塗装物について、外観を肉眼観察により評価した。
基材X
基材Xについては平面部について、以下の基準で評価した。
A:均一な膜厚を形成し平滑。
B:膜厚にムラがあり平滑でない。
【0104】
基材Y
基材Yについては、丸棒の間隙部について、ピンホール、および、ボタツキを肉眼観察により、以下の基準で評価した(図3〜8参照)。
(a)ピンホール
A:間隙が完全に埋まっている。ピンホール数は、2個以下/3cm。
B:間隙がほぼ埋まっている。ピンホール数は、3〜5個/3cm。
C:間隙は殆ど埋まっておらず、小さいピンホールが多数存在する。ピンホール数は、6個以上/3cm。
【0105】
(b)ボタツキ
A:ボタツキはなく、基材全面に均一塗装され、基材の意匠性も保たれている。
B:一部ボタツキが認められるものの、基材の意匠性が悪化する程ではない。
C:全体にボタついており、基材の意匠性が悪い(例えば、丸棒の輪郭がイビツになっている)。
【0106】
(2)接着力
上記「(1)外観」と同様の方法により、基材Xの塗装物を得た後、塗膜面に、コの字型(35mm×25mm×35mm)にカッターで切り込みを入れ、切り込んだ25mmの先端の塗膜を鋼板からはがした。この塗装物を動かないように固定した後、はがした塗膜の先端をバネばかりに固定し、そのバネばかりを塗膜のはがれる方向(塗膜面に平行かつ25mmの幅の塗膜面が重なる方向)に50mm/分の速度で引っ張り、以下の基準で評価した。
剥離不可:塗膜が、基材からはがれずに塗膜が破断した。
界面剥離:塗膜が、基材からはがれた。
【0107】
(3)耐候性
上記「(1)外観」と同様の方法により、基材Xの塗装物を得た後、日本工業規格:JIS K 7350−4に記載されている「プラスチック−実験室光源による暴露試験方法− 第4部:オープンフレームカーボンアークランプ」(1996年)に準じ、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製の商品名:サンシャインウェザーメーター S80BBR)にて促進試験を2000時間実施した。
その後、塗装物を取り出し、外観を肉眼観察により、以下の基準で評価した。
A:塗装物の表面にクラック、および膨れが無い。
B:塗装物の表面にクラックは無いが、膨れがある。
C:塗装物の表面にクラック、および膨れがある。
【0108】
また、上記「(1)外観」と同様の方法により、基材Xの塗装物を得た後、カッターナイフを用いて基材表面まで達するように、塗装物の表面の中心から四角に向かってそれぞれ1本ずつ、計4本のノッチ(1本の長さ:5.5cm)を入れた。ノッチを入れた試料についても、耐候性を、以下の基準で評価した。
A:塗装物の表面にクラックおよび膨れが無く、ノッチ部分からの剥離が無い。
B:塗装物の表面にクラックは無いが、膨れがあり、ノッチ部分からの剥離がある。
C:塗装物の表面にクラックおよび膨れがあり、ノッチ部分からの剥離がある。
【0109】
【表1】

【0110】
表1より、実施例1〜11で得られた塗装物は、外観、塗膜の接着力、耐候性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明にかかる粉体塗料組成物は、接着力に優れると共に、狭い間隙への埋まりも良く、ピンホールも少なく意匠性に優れた塗膜を形成することができる。そのため、例えば、複雑に線材を組み合わせて成るショッピングカート等の用途に最適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】基材Yの全景。
【図2】基材Yの端部。
【図3】[粉体塗料組成物による塗膜の評価]、基材Yを用いた塗装物の評価、(1)外観、(a)ピンホール、についての評価において、Aと評価される状態例。
【図4】[粉体塗料組成物による塗膜の評価]、基材Yを用いた塗装物の評価、(1)外観、(a)ピンホール、についての評価において、Bと評価される状態例。
【図5】[粉体塗料組成物による塗膜の評価]、基材Yを用いた塗装物の評価、(1)外観、(a)ピンホール、についての評価において、Cと評価される状態例。
【図6】[粉体塗料組成物による塗膜の評価]、基材Yを用いた塗装物の評価、(1)外観、(b)ボタツキ、についての評価において、Aと評価される状態例。
【図7】[粉体塗料組成物による塗膜の評価]、基材Yを用いた塗装物の評価、(1)外観、(b)ボタツキ、についての評価において、Bと評価される状態例。
【図8】[粉体塗料組成物による塗膜の評価]、基材Yを用いた塗装物の評価、(1)外観、(b)ボタツキ、についての評価において、Cと評価される状態例。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂100質量部に対して極性基含有樹脂25〜400質量部を配合してなる粉体塗料組成物であって、
1)230℃、2.16kg荷重時のメルトマスフローレイトが15〜50g/10分、
2)粒子径が180μmを超える粒子の割合が2質量%以下、
3)粒子径が63μm以下である粒子の割合が15質量%以下、
4)中位粒子径が80〜170μm、
5)圧縮度が10〜25%、
圧縮度=〔(嵩密度−タップ密度)÷タップ密度〕×100
である粉体塗料組成物。
【請求項2】
極性基含有樹脂が、酸変性ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の粉体塗料組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粉体塗料組成物を、基材の一部または全面に塗装した塗装物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−37491(P2010−37491A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204576(P2008−204576)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】