粉体成形体の製造方法
【課題】離型性に優れ、乾燥収縮差を生じにくくして乾燥収縮差を制御でき、製品ばらつきを抑制できるとともに、寸法精度を向上でき、加えて乾燥時間を短縮でき、生産性を向上できる粉体成形体の製造方法を提供する。とりわけ、軸付きタービンシャフト用成形体の製造方法に好適に用いることができる。
【解決手段】セラミック及び/又は金属の粉体と、分散媒と、ゲル化剤とを含むスラリーを注型し、スラリーをゲル化させることにより固化して成形体を得る粉体成形体の製造方法であって、粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、粉体成形体の一部或いは本体に、粉体成形体の残部を一体化させて成形乾燥し、粉体成形体を製造する粉体成形体の製造方法である。
【解決手段】セラミック及び/又は金属の粉体と、分散媒と、ゲル化剤とを含むスラリーを注型し、スラリーをゲル化させることにより固化して成形体を得る粉体成形体の製造方法であって、粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、粉体成形体の一部或いは本体に、粉体成形体の残部を一体化させて成形乾燥し、粉体成形体を製造する粉体成形体の製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック及び/又は金属の原料粉体から成形体を製造する方法に関する。より詳しくは、ゲル化剤を含むスラリーを注型し、当該スラリーをゲル化させることにより硬化して成形体を得る粉体成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックや金属の原料粉体から成形体を製造する方法としては、プレス成形、鋳込成形、射出成形等の方法が利用されているが、複雑形状品の成形が困難、寸法精度が低い、厚肉品ではクラックを生じ易い、成形体を緻密化し難い等の問題があることから、近年、これらの問題を解決し得る方法として、いわゆるゲルキャスト法が注目されている。
【0003】
ゲルキャスト法は、セラミック、金属等の原料粉体と、分散媒と、ゲル化剤とを含むスラリーを成形型に注入した後に、スラリーを温度条件や架橋剤の添加等によりゲル化させることにより硬化して成形体を得る粉体成形体等の製造方法であり、ゲル化前の流動性が高い状態でスラリーを注型できることから複雑形状品の成形が容易であることに加え、注型後はゲル化によりハンドリングに耐える充分な強度を有する成形体を得ることができるものである。
【0004】
従来、このゲルキャスト法としては、セラミック、金属等の原料粉体と、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のプレポリマーを主成分とするゲル化剤とを、分散媒中に分散させてスラリーを調製し、得られたスラリーを金属製の成形型に注入した後、更に、架橋剤を添加して、架橋剤とゲル化剤との架橋反応によりゲル化してスラリーを硬化した後、成形型を取り外して成形体を得る方法等が知られている。
【0005】
3次元複雑形状品のときは、硬化後の成形体強度を出そうと架橋剤とゲル化剤を多く入れると、硬化時の体積変化で、型と干渉し成形体が割れてしまう。一方硬化時の体積変化を抑えようと架橋剤とゲル化剤を少なくすると、硬化後の成形体強度が低く、離型時の型と成形体の摩擦で成形体が壊れてしまう。このようなときには、スラリーを注型して硬化させた後、粉体成形体を加熱して、成形体が収縮しすぎて型と干渉して破損しない程度に、乾燥収縮させた型と成形体との間に微小なクリアランスをつくり、かつ成形体強度も上げてから、型から粉体成形体を離型する離型処理が行われている。
【0006】
しかしながら、この従来のゲルキャスト法では、粉体原料となるスラリーの注型(充填)を1回で行っていたため、外気等にスラリーが触れる領域が小さくなり乾燥し難かった。更に、外気等から離れるに従って、スラリーの乾燥状態及び乾燥の進行が一律とならなかった。その結果、乾燥状態及び乾燥の進行が一律で行われなかったことにより、不均一な乾燥による収縮が生じ、加えて、収縮差も不均一となりやすく、乾燥収縮を均一にする乾燥条件の設定が困難であり、粉体成形体を確実に成形することができなかった。
【0007】
すなわち、従来のゲルキャスト法では、乾燥時にクラックが発生しやすい上に、乾燥の設定が必要という問題点があった。また、現在要求されている注型以降の作業性を必ずしも充足するものではなく、複雑形状の成形を行う際の形状精度を低下させる原因にもなっていた。
【0008】
具体的には、従来のゲルキャスト法で、たとえば、タービンシャフト、特に軸付きタービンを成形する場合には、図12に示されるように、下シャフト型101に下型103を組み合わせ、その上に翼コマ105(翼型)を載せて、さらに上型107、上シャフト型109を組み合わせる。その後、取り外し可能な固定ピン(図示せず)等で固定して、粉体成形体を製造する型を一体化させた後、上シャフト型109に設けられたスラリー注型口Rから、スラリーを注型して製造していた。このため、乾燥時において、乾燥面は、スラリー注型口Rの表面のみに限定されてしまい、粉体成形体全体で均一な乾燥ができないものとなっていた。
【0009】
とりわけ、軸付きタービン等複雑形状品を製造する場合には、ゲルキャスト法が有効であるものの、過剰な乾燥収縮あるいは乾燥収縮差で破損しやすいという問題が生じている。従来の製造方法では、成形体の体積に対し乾燥面が非常に小さく、また乾燥制御し難い。そのため、破損や不具合を防止し難い。加えて、破損や不具合を減らそうとして、乾燥を長時間行う等の対策も講じられてはいるものの十分でなく、生産効率の低下といった悪循環を引き起こしている。他方、乾燥収縮させずに離型しようとすると、成形体強度が不十分である成形体と成形体コマ間に、クリアランスが無いため、摩擦が大きくなってしまい翼等が破損してしまう。したがって、十分な対応がなされておらず、更なる改良が望まれるところである。
【0010】
このような課題に対して、以下の特許文献1がある。
【0011】
特許文献1では、大量の樹脂類を添加することなくスラリーを硬化させ、硬化作業時の温度管理に厳重さを要しないで粉体成形体を製造することを目的に、セラミック、ガラスあるいは金属から選ばれた一種以上の粉体を、分散剤を用いて分散媒に分散させて作製されたスラリーに、分散剤との相互作用により分散剤の分散能力を消失もしくは低下させる反応物質を添加することにより、スラリーを硬化させて粉体成形体を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−048222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、同文献1では、粉体原料となるスラリーの注型(充填)を1回で行っているため、外気等にスラリーが触れる領域が小さくなり乾燥し難い。更に、外気等から離れるに従ってスラリーの乾燥状態及び乾燥の進行が一律とならない。そのため、3次元複雑形状品を製造する場合には、不均一な乾燥による収縮が生じるおそれがある。加えて、収縮差も不均一となりやすく、乾燥収縮差を均一にする乾燥条件の設定が困難であるため、製品のばらつきが生じやすい。したがって、更なる改良が求められるところである。
【0014】
本発明は、このような課題を解決すべく、研究が重ねられてなされたものであり、粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、粉体成形体の一部或いは本体に、粉体成形体の残部を一体化させて成形乾燥し、前記粉体成形体を製造することにより、離型性に優れ、乾燥収縮差を生じ難くして乾燥収縮差を制御でき、製品ばらつきを抑制できるとともに、寸法精度を向上でき、加えて乾燥時間を短縮でき、生産性を向上できる粉体成形体の製造方法を提供する。とりわけ、軸付きタービン用成形体の製造方法に好適に用いることができる。さらに、微細な複雑形状の成形体を離型する場合でも、成形体の微細形状を損なうことなく成形体を得ることができるとともに、アンダーカット形状等の成形型を用いる場合でも、成形体の形状を破損することなく容易に離型することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[1] セラミック及び/又は金属の粉体と、分散媒と、ゲル化剤とを含むスラリーを注型し、前記スラリーをゲル化させることにより固化して成形体を得る粉体成形体の製造方法であって、前記粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、前記粉体成形体の一部或いは本体に、前記粉体成形体の残部を一体化させて成形乾燥し、前記粉体成形体を製造する粉体成形体の製造方法。
【0016】
[2] 前記スラリーを前記粉体成形体の一部或いは本体を成形するための本体用型に注型し硬化させながら乾燥させた後に、さらに、前記スラリーを前記粉体成形体の残部を成形するための残部用型に注型し硬化させながら乾燥させて、前記粉体成形体を製造する[1]に記載の粉体成形体の製造方法。
【0017】
[3] 前記スラリーを注型する前記粉体成形体の型が、前記本体用型と前記残部用型とからなる分割型として少なくとも構成されている前記粉体成形体の型を使用して前記粉体成形体を製造する[1]又は[2]に記載の粉体成形体の製造方法。
【0018】
[4] 前記本体用型と前記残部用型とは少なくも連通構造を備え、前記粉体成形体の一部或いは本体の乾燥処理工程後に、前記本体用型から前記残部用型方向に露出形成された、前記粉体成形体の一部或いは本体の表面に対して、さらに前記連通構造を介して前記残部用型から前記スラリーを充填して前記粉体成形体を製造する[1]〜[3]のいずれかに記載の粉体成形体の製造方法。
【0019】
[5] 前記粉体成形体が軸付きタービン用成形体である[1]〜[4]のいずれかに記載の粉体成形体の製造方法。
【0020】
[6] 前記スラリーを、前記軸付きタービン本体を製造する本体用型に注型して、硬化させながら乾燥させる処理工程を経て、前記軸付きタービン本体用の粉体成形体を成形した後、さらに、前記スラリーを前記軸付きタービンの残部を成形する残部用型に注型して、硬化させながら乾燥させる処理工程を繰り返して製造する[5]に記載の粉体成形体の製造方法。
【0021】
[7] 前記本体用型に翼型を取り付けた後に、前記スラリーを前記本体用型に注型し、硬化させながら乾燥させて、前記軸付きタービン本体用の粉体成形体を成形した後、前記残部用型を、前記翼型を介して前記本体用型に取り付け、さらに、前記スラリーを、残部用型に注型し、硬化させながら乾燥させて、前記残部を成形するとともに、前記軸付きタービン本体とその残部とを一体化して、前記軸付きタービン全体を製造する[5]又は[6]に記載の粉体成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る前記粉体成形体の製造方法によれば、離型性に優れ、乾燥収縮差を生じにくくして乾燥収縮差を制御でき、製品ばらつきを抑制できるとともに、寸法精度を向上でき、加えて乾燥時間を短縮でき、生産性を向上できる粉体成形体の製造方法を提供できるといった優れた効果を奏することができる。とりわけ、軸付きタービン用成形体の製造方法に好適に用いることができる。
【0023】
さらに、微細な複雑形状の成形体を離型する場合でも、成形体の微細形状を損なうことなく成形体を得ることができるとともに、アンダーカット形状等の成形型を用いる場合でも、成形体の形状を破損することなく容易に離型することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、その処理工程を示すフロー図である。
【図2A】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態に使用する粉体成形体本体用型と、粉体成形体残部用型との断面を模式的に示すとともに、粉体成形体本体と、粉体成形体残部の断面を模式的に示した図である。
【図2B】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、粉体成形体の断面を模式的に示した図である。
【図3】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態に使用する粉体成形体本体用型と、粉体成形体残部用型との分解斜視図であって、模式的に示した図である。
【図4】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態に使用する粉体成形体本体用型と粉体成形体残部用型とを組み合わせた状態を模式的に示した斜視図である。
【図5】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、粉体成形体本体用型であって、下型に先端軸用型(下シャフト型)をセットした状態を模式的に示した平面図である。
【図6A】図5の下型に、翼型を取り付けた状態を模式的に示した平面図である。
【図6B】図6Aに示される翼型の一例を模式的に示した斜視図である。
【図7A】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、粉体成形体本体用型の、粉体成形体本体用上型を模式的に示した平面図である。
【図7B】図7Aに示される本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、粉体成形体本体用型の、粉体成形体本体用上型を模式的に示した斜視図である。
【図7C】固定ピンの一例を模式的に示した斜視図である。
【図8】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、図5に示される下型に翼型を取り付けた後、さらに、粉体成形体本体用上型を取り付けた状態を模式的に示した平面図である。
【図9A】図8に示される粉体成形体本体用上型に、図3の粉体成形体残部用型(シャフト用型)を取り付けた状態を模式的に示した斜視図である。
【図9B】図8に示される粉体成形体本体用上型に、図3の粉体成形体残部用型(シャフト用型)を取り付けた状態を模式的に示した平面図である。
【図10】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、粉体成形体の一部或いは本体のスラリー注型(充填)処理工程から、粉体成形体の一部或いは本体の硬化、乾燥処理工程までに使用される粉体成形体本体用型を模式的に示した斜視図である。
【図11】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、粉体成形体の一部及び本体の離型処理工程の状態を模式的に示す断面図である。
【図12】従来の粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、粉体成形体本体用型と、粉体成形体残部用型の断面、及び、粉体成形体本体と、粉体成形体残部の断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の粉体成形体の製造方法を実施するための形態について具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える粉体成形体の製造方法を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
[1]本発明の粉体成形体の製造方法:
本発明の粉体成形体の製造方法は、セラミック及び/又は金属の粉体と、分散媒と、ゲル化剤とを含むスラリーを注型し、前記スラリーをゲル化させることにより固化して成形体を得る粉体成形体の製造方法であって、前記粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、前記粉体成形体の一部或いは本体に、前記粉体成形体の残部を一体化させて成形乾燥し、前記粉体成形体を製造する粉体成形体の方法として構成される。
【0027】
[1−1]粉体成形体の処理工程:
本発明の粉体成形体の製造方法では、前述のように粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、粉体成形体の一部或いは本体に、粉体成形体の残部を一体化させて成形乾燥し、粉体成形体を製造することが望ましい。このように、粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、粉体成形体の一部或いは本体に、粉体成形体の残部を成形することにより、粉体成形体を最終的に成形する処理工程で、全体としての乾燥状態を最適化でき、加えて乾燥面を大きくできる。そのため、乾燥収縮差が生じにくくなり、更に、乾燥時間を短縮できる。この点につき、従来の粉体成形方法では、最終成形体の材料が同じで一体構造の粉体成形体を成形する場合には、粉体原料となるスラリーの注型(充填)を1回で行っていた。そのため、外気等にスラリーが触れる領域が小さくなり乾燥し難く、更に、外気等から離れるに従ってスラリーの乾燥状態及び乾燥の進行が一律とならなかった。その結果、乾燥状態及び乾燥の進行が一律で行われないことにより、不均一な乾燥による収縮が生じ、加えて、収縮差も不均一となりやすい。さらに、そのような粉体成形体の各部によって乾燥収縮差が相違するため、一律な乾燥条件の設定が困難となり、粉体成形体を確実に成形することができなかった。
【0028】
他方、本発明では、前述のような構成により、離型性に優れ、乾燥収縮差を生じにくくして乾燥収縮差を制御でき、製品ばらつきを抑制できるとともに、寸法精度を向上できる。加えて、乾燥時間を短縮でき、生産性を向上できる。より具体的には、粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、粉体成形体の一部或いは本体に、粉体成形体の残部を一体化させて成形乾燥し、粉体成形体を製造するといったように、製造工程を分割して、「注型‐硬化‐乾燥」の処理工程を繰り返すことで、1回当たりの乾燥面を大きくし、乾燥収縮差を生じ難くしつつ乾燥時間を短縮できるようにした。
【0029】
ここで、本実施形態では、図1に示されるような、(S1)スラリー調製処理工程、(S2)粉体成形体の一部或いは本体のスラリー注型(充填)処理工程、(S3)粉体成形体の一部或いは本体の硬化・乾燥処理工程、(S4)粉体成形体の一部或いは本体の離型処理工程、(S5)粉体成形体の残部のスラリー注型(充填)処理工程、(S6)粉体成形体の残部の硬化・乾燥処理工程、(S7)粉体成形体の一部或いは本体と残部との乾燥処理工程(1)、(S8)粉体成形体の一部或いは本体と残部と離型処理工程、(S9)粉体成形体の一部或いは本体と残部との乾燥処理工程(2)の、各処理工程を経て、粉体成形体が製造される((S10)粉体成形体の完成))。以下、各処理工程について説明する。
【0030】
[1−1−1](S1)スラリー調製処理工程:
まず、図1に示される(S1)スラリー調製処理工程について説明する。本実施形態の製造方法では、スラリーはセラミック及び/又は金属の粉体と、分散媒と、ゲル化剤とを含む各材料を調製したスラリーを使用することが望ましい。粉体成形体を成形し易いことに加えて、離型性などの点で、本発明の効果を奏し易いからである。
【0031】
セラミック及び/又は金属からなる原料粉体としては、例えば、ガラス、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミ、ジルコニア、若しくはサイアロン等のセラミック粉体、又は各種金属粉体を、適宜、一種単独で又は二種以上を組合わせて使用したものを挙げることができる。また、これら原料粉体の粒径は、スラリーを調製可能な限りにおいて特に限定はなく、製造する成形体に応じて適宜、好ましい粒径とすればよい。
【0032】
また、必要に応じて、反応性官能基を有する有機化合物を含有する分散媒と、反応性官能基を有する有機化合物を含有させてもよい。たとえば、有機分散媒としては、反応性官能基を有する有機化合物を含有し、後述するゲル化剤と反応し得るものを挙げることができる。これにより、高い反応効率を達成することができ、硬化に寄与する成分を高濃度で含有させながらも、低粘度で高流動性のスラリーを用いることが可能となる。
【0033】
ここで、前述の「反応性官能基」とは、他の成分と化学反応し得る原子団を意味し、例えば、水酸基、カルボキシル基、又はアミノ基等の他、後述するエステル結合により形成されるカルボニル基等が含まれるものを意味する。
【0034】
また、分散媒としては、たとえば、反応性官能基を有する有機化合物の中でも、20℃における粘度が20cps以下の低粘性の液状物質であるエステル類、とりわけ、全体の炭素数が20以下のエステル類などを挙げることができる。エステル類は比較的安定ではあるものの、反応性が高いゲル化剤を用いることにより、全体として反応性を高めることができる。
【0035】
また、分散媒を構成する有機化合物としては、少なくとも1の反応性官能基を有するものを含有させてもよいし、より高い反応効率を達成し、充分な硬化状態を得るために、2以上の反応性官能基を有する有機化合物を使用してもよい。
【0036】
なお本プロセスにおける材料に関する内容は、前記特許文献1の特開平11−048222号公開公報や特開2001−335371号公開公報、国際公開第2002/085590号パンフレットに記載されている。同文献の内容に基づき、適宜材料を選択して本発明を実施することができる。
【0037】
但し、スラリー濃度(スラリー全体の体積に対する原料粉体の体積%)が低すぎると成形体密度が低下し、成形体の強度低下、又は乾燥、焼成時におけるクラックの発生若しくは変形等の問題を生ずるため、通常は、スラリー濃度が25〜75体積%のものが好ましく、35〜75体積%のものがより好ましい。尚、スラリーの粘度は、既述した反応性分散媒やゲル化剤の粘度の他、原料粉体の種類、分散剤の量、スラリー濃度によって調整することができる。
【0038】
また、本発明におけるスラリーには、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、例えば、分散媒とゲル化剤との反応を促進するための触媒、スラリー調製を容易にするための分散剤、消泡剤、界面活性剤、又は焼結体特性を向上させるための焼結助剤等、種々の添加剤を加えることができる。
【0039】
例えば、硬化後の成形体の強度を向上させるためには、ポリカルボン酸エステル等の分散剤を添加することが好ましい。
【0040】
[1−1−2](S2)粉体成形体の一部或いは本体のスラリー注型(充填)処理工程:
次に、前述のようにして調製したスラリーを、粉体成形体の型に注型(充填)する、図1に示されるような、(粉体成形体の一部或いは本体の)スラリー注型処理工程について説明する。ここで、従来では、粉体原料となるスラリーの注型(充填)を1回で行っていた。そのため、粉体成形体の構成要素を組み合わせして一体的に型を使用し、粉体成形体を製造していた。しかし、このような一体的な製造方法では、スラリーの乾燥状態及び乾燥の進行が一律とならず、不均一な乾燥による収縮が生じ、加えて、収縮差も不均一となり、乾燥収縮を均一にする乾燥条件の設定が困難となり問題が生じていた。
【0041】
そこで、本実施形態では、「粉体成形体の一部或いは本体」を乾燥、離型処理までした後、「粉体成形体の残部」を成型することにした。そのため、スラリー注型処理工程では、まず「粉体成形体の一部或いは本体」のスラリーを注入して、後述のように硬化処理、乾燥処理、離型処理をした後、更に「粉体成形体の残部」のスラリーを注入して硬化処理、乾燥処理をすることが望ましいため、この「粉体成形体の一部或いは本体のスラリー注型処理工程」は、「粉体成形体の一部或いは本体」の成形に必要なスラリーを注型するものを意味し、「粉体成形体の残部」の成形に必要なスラリーの注型は、「粉体成形体の一部或いは本体」を乾燥処理した後に、行われる処理工程を意味する。
【0042】
たとえば、図2Bに示されるように、「粉体成形体の一部或いは本体」が軸付きタービン本体である場合には(以下、適宜「タービン本体」という)、図2Aに示されるように粉体成形体本体(タービン本体2a)に、スラリーを注型して乾燥処理まで行った後(図1の(S2)〜(S4)各処理工程)、図2Aに示されるように粉体成形体残部に(軸付きタービン残部(以下、適宜「タービン残部」という))に、スラリーを注型して、乾燥処理まで行う(図1の(S5)〜(S7)処理工程)。
【0043】
なお、前述のように「粉体成形体の一部或いは本体」と、「粉体成形体の残部」とを夫々、別の処理工程を経て製造する場合には、後述するような、スラリーを粉体成形体の一部或いは本体を成形するための型に注型し硬化して乾燥して離型させた後に、さらに、前述のスラリーを粉体成形体の残部を成形するための型に注型し硬化して乾燥させて、粉体成形体を製造することが好ましい。このように、粉体成形体の一部或いは本体を製造する型と、粉体成形体の残部を製造する型とに分割して、夫々を時系列的にかつ構造的に一体化させて製造することで、本発明の効果をより奏することができる。
【0044】
たとえば、図2Bに示されるように、「粉体成形体の一部或いは本体」がタービン本体2aである場合には、図2Aに示されるように粉体成形体本体2a(タービン本体)を製造するためのタービン本体用型A(先端軸用型5、翼型9、下型15など)と、図2Aに示されるように粉体成形体残部2b(タービン残部)を製造するためのタービン残部用型B(シャフト用型11など)とに型を分けて、スラリーをタービン本体用型に注型し硬化して乾燥させた後に、さらに、前述のスラリーを粉体成形体の残部を成形するためのタービン残部用型に注型し硬化して乾燥させて、粉体成形体を製造することで、1回当たりの乾燥面を大きくし、乾燥収縮差を生じにくくさせることができる。
【0045】
[1−1−3](S3)粉体成形体の一部或いは本体の(スラリー)硬化・乾燥処理工程:
次に、前述のようなスラリーを「粉体成形体の一部或いは本体」を成型する型に注入した後、図1に示されるようなスラリー硬化・乾燥処理を行う。このスラリー硬化・乾燥処理工程は、硬化させながら乾燥させるものである。硬化処理としては、1)所定時間放置する、2)所定の反応温度まで上昇させる、3)注型直前に触媒を添加する、等の方法を単独で又は組合わせて硬化させることが好ましく、迅速な硬化が可能な点では、2)所定の反応温度まで上昇させる、3)注型直前に触媒を添加する方法を単独で又は組合わせて硬化させることがより好ましい。
【0046】
なお、スラリーの硬化は、成形型に注入した後、既述した分散媒及びゲル化剤中にそれぞれ反応性官能基を含有させて有機化合物間のゲル化反応によって行ってもよい。
【0047】
また、乾燥処理としては、デシケータ保管、調湿乾燥、熱風乾燥等の乾燥方法を挙げることができ、乾燥条件としては25℃以上を挙げることができるが、このような乾燥方法、乾燥条件に限定されるものではなく、本発明の構成を採用しながら本発明の効果を奏するものであれば、公知の乾燥方法、乾燥条件によって、乾燥処理されるものも広く含まれる。
【0048】
[1−1−4](S4)粉体成形体の一部或いは本体の離型処理工程:
次に、図1に示される(S4)粉体成形体の一部或いは本体の離型処理工程(1)について説明する。この粉体成形体の一部或いは本体の離型処理工程(1)は、3次元複雑形状品を製造する場合に、その微細な複雑形状を成形するために用いられる型等を、前述の(S3)粉体成形体の一部或いは本体の(スラリー)硬化・乾燥処理工程処理後に、粉体成形体の一部或いは本体から離型して、粉体成形体の一部或いは本体と、粉体成形体の一部或いは本体用型間のクリアランスを確保するために行うものである。したがって、必須の処理工程ではないが、使用する型(微細な複雑形状を成形するための型)に応じて適宜離型処理が行われることが好ましい。
【0049】
たとえば、後述するようなタービン本体を製造する場合には、図2A、図6Aに示されるように、そのタービン翼部分を成形するために、翼型が使用される。スラリー注型時には、図3、図6Aに示されるように、翼型9は下型15上に固定ピン13を介して固定されるが、(S3)粉体成形体の一部或いは本体の硬化・乾燥処理工程を経て粉体成形体の一部或いは本体が成形された後には、固定ピン13を引き抜き、図10、図12に示されるように、翼型9を図示する矢印方向にスライドさせ、成形体翼部分と翼型との間に空間を作る。このようにして、(S4)粉体成形体の一部或いは本体の離型処理工程が行われることで、クリアランスを確保でき、粉体成形体の一部或いは本体の乾燥を促進できる。
【0050】
[1−1−5](S5)粉体成形体の残部のスラリー注型(充填)処理工程:
さらに、前述のようにして調製したスラリーを、粉体成形体の残部を成型する型に注型(充填)する、図1に示されるような(S5)粉体成形体の残部のスラリー注型(充填)処理工程について説明する。その際、残部の型は、前述の粉体成形体の一部或いは本体を成形するための型にセットして、残部の型にスラリーを注型(充填)した際に、前述の成形乾燥までした粉体成形体の一部或いは本体に、残部に注型(充填)したスラリーが当接できるように、セットされることが好ましい。乾燥成形までした粉体成形体の一部或いは本体に、残部に注型(充填)したスラリーが当接しないと、粉体成形体の一部或いは本体と残部とが、一体化できないためである。なお、乾燥条件等は前述の粉体成形体の一部或いは本体と同様であり、粉体成形体の一部或いは本体と残部とが一体化しやすい型の構造としては、後述する連通構造を有する分離型を使用することが好ましい。
【0051】
[1−1−6](S6)粉体成形体の残部の硬化・乾燥処理工程:
次に、前述のようなスラリーを粉体成形体の残部を成形する型に注入し硬化、乾燥処理を行う、図1に示されるような(S6)粉体成形体の残部の(スラリー)乾燥処理工程を行うが、この乾燥処理条件は、前述の粉体成形体の一部或いは本体の乾燥処理工程とほぼ同様である。すなわち、粉体成形体残部の硬化・乾燥処理は、粉体成形体の一部或いは本体部と残部とが一体化しながら硬化させるものである。乾燥方法としては熱風乾燥等を挙げることができ、乾燥条件としては、40℃、1.0時間等を挙げることができるが、このような乾燥方法、乾燥条件に限定されるものではなく、本発明の構成を採用しながら本発明の効果を奏するものであれば、公知の乾燥方法、乾燥条件によって、乾燥処理されるものも広く含まれる。
【0052】
[1−1−7](S7)粉体成形体の一部或いは本体と残部の乾燥処理工程(1):
次に、前述のような粉体成形体の一部或いは本体部と残部とが一体化し硬化した後、さらに、型ごと粉体成形体の乾燥処理を行う、図1に示されるような(S7)粉体成形体の一部或いは本体と残部の乾燥処理工程(1)を行うが、前述の(S6)粉体成形体の残部の硬化・乾燥処理工程を経て、粉体成形体の乾燥が進んだ状態となるため、この(S7)における乾燥処理では、更に乾燥温度を上げて粉体成形体と型間のクリアランスを一層確保するために行われるものである。ただし、ここでの(S7)粉体成形体の一部或いは本体と残部の乾燥処理工程においても、完全に粉体成形体が乾燥するまでのものではない。
【0053】
たとえば、乾燥方法としては熱風乾燥で行うものを一例として挙げることができ、乾燥条件としては80℃、2.0時間等を挙げることができる。ただし、このような乾燥方法、乾燥条件に限定されるものではなく、本発明の構成を採用しながら本発明の効果を奏するものであれば、公知の乾燥方法、乾燥条件によって、乾燥処理されるものも広く含まれる。なお、前述の乾燥処理(S3)と異なり、ここでは乾燥温度を高くしているが、これは図11に示されるように、翼型9が(S4)の離型処理工程で、軸付きタービンと離され、(軸付きタービンの)翼型との接地面2eではクリアラスが確保されている。そのため、型との干渉によるクラックが生じないため、温度を上げて乾燥処理を行っている。
【0054】
[1−1−8](S8)粉体成形体の一部或いは本体と残部の離型処理工程:
次に、前述のような粉体成形体の一部或いは本体部と残部とが一体化し型ごと乾燥処理した後、図1に示されるような(S8)離型処理工程を行う。たとえば、タービン等の微細な形状を有する複雑形状品等では、図11に示されるように、タービン翼部分が広い乾燥面積を持っているため、シャフト部分も容易に乾燥され、乾燥収縮により粉体成形体の一部或いは本体部と残部のシャフト部と上下型との間にクリアランスがあり、シャフト用型11、上型7、と順々に外(離型)していき、粉体成形体を下型5(図2A、図3参照)から引き抜くことで成形体が得られる。
【0055】
[1−1−9](S9)粉体成形体の一部或いは本体と残部の乾燥処理工程(2):
次に、前述のような粉体成形体の一部或いは本体部と残部とが一体化したものを離型処理した後、図1に示されるような(S9)乾燥処理工程を行う。乾燥方法としては熱風乾燥で行うものを一例として挙げることができ、乾燥条件としては150℃、5.0時間等を挙げることができる。ただし、このような乾燥方法、乾燥条件に限定されるものではなく、本発明の構成を採用しながら本発明の効果を奏するものであれば、公知の乾燥方法、乾燥条件によって、乾燥処理されるものも広く含まれる。
【0056】
なお、粉体成形体の形状や大きさに応じて、複数回繰り返して粉体成形体を製造することも好ましい。ただし、複数回繰り返して製造する場合には、時系列的にかつ一体的に製造可能に製造されることが好ましい。たとえば、前述のように、粉体成形体本体の注型から乾燥までを複数回繰り返し、或いは、粉体成形体残部の注型から乾燥までを複数回繰り返し粉体成形体を製造する場合にも、時系列的にかつ一体的になるように製造されることで、粉体成形体の強度を損なわずに済み好ましい。具体的には、たとえば、図2に示されるように、「粉体成形体の一部或いは本体」がタービン本体2aである場合には、図2Aに示されるように粉体成形体本体2a(タービン本体)を製造するためのタービン本体用型(先端軸用型5、翼型9など)と、図2Aに示されるように粉体成形体残部2b(タービン残部)を製造するためのタービン残部用型(シャフト用型11など)とに型を分けて、タービン本体2aを成形した後に、さらに、タービン残部2bを製造する場合には、図2Aに示されるY−Y’線のように、タービン本体2aの中心軸と、タービン残部2bの中心軸とが一致し、タービン本体2aの接合面2cと、タービン残部2bの接合面2dとが、一体化するように形成されることが好ましい。このような一体化としては、タービン残部2bを製造する際のスラリー注型時に、タービン残部用型から注型されるスラリーが、タービン本体2aの接合面2cに十分に充填されることが必要となる。
【0057】
[1−2]分割型:
好ましいのは、前述のように調製したスラリーを粉体成形体の一部或いは本体を成形するための本体用型に注型し硬化して乾燥させた後に、さらに、スラリーを粉体成形体の残部を成形するための残部用型に注型し硬化して乾燥させて、粉体成形体を製造することである。粉体成形体の一部或いは本体と、残部との型を夫々別々にして、粉体成形体を製造することによって、個々の粉体成形体の製造過程における乾燥状態を均一にでき、製品バラツキを抑えることができるからである。このように、製造用の型を分割し、「注型‐硬化‐乾燥」の処理工程を繰り返すことで、1型あたりの乾燥面を大きくし、乾燥収縮差を生じにくく乾燥時間を短縮できるようにした。たとえば、タービンのような寸法精度が厳しく複雑成形品の製造では、離型させることなく継ぎ足しができる構造とすることにより、乾燥収縮差によるクラックを低減できると共に、寸法制度を損なうことなく乾燥時間を短縮できるため好ましい。
【0058】
たとえば、図2A、図3に示されるように、「粉体成形体の一部或いは本体」がタービン本体2aである場合には、図2Aに示されるように粉体成形体本体2a(タービン本体)を製造するためのタービン本体用型(先端軸用型5、翼型9など)と、図2Aに示されるように粉体成形体残部2b(タービンシャフト残部)を製造するためのタービン残部用型(シャフト用型11など)とに型を分割したものを例示できるが、このような所謂分割型に限定されるものではなく、本発明の構成を採用しながら、本発明の効果を奏するものであればよい。
【0059】
より好ましいのは、スラリーを注型する粉体成形体の型が、本体用型と残部用型とからなる分割型として少なくとも構成されている粉体成形体の型を使用して粉体成形体を製造することである。このように、スラリーを注型する粉体成形体の型が、本体用型と残部用型とからなる分割型を使用して粉体成形体を製造することで、乾燥状態を確実に制御でき、離型性を向上させやすくなり、本発明の効果をより奏し易くなる。特に、従来の粉体成形方法では、粉体成形体の材料が同じで一体化したものでは、粉体原料となるスラリーの注型(充填)を1回で行い、成型処理をしていたため、スラリーの乾燥状態及び乾燥の進行が一律とならず、不均一な乾燥による収縮が生じて、粉体成形用型から粉体成形体を離型させる際に、クラックが生じたり、切れが生じたりして、粉体成形体を確実に成形できなかった。しかし、前述のように、分割型を使用して粉体成形体の製造工程順、すなわち、時系列的に製造処理工程を繰り返して製造することで、粉体成形体の厚さや、寸法等に左右されず、寸法精度を向上でき、高品質の実施品が量産可能となるため、好ましい。
【0060】
さらに好ましいのは、本体用型と前記残部用型とが少なくも連通構造を備え、粉体成形体の一部或いは本体の乾燥処理工程後に、本体用型から前記残部用型方向に露出形成された、前記粉体成形体の一部或いは本体の表面に対して、さらに前記連通構造を介して前記残部用型からスラリーを充填して前記粉体成形体を製造することである。本体用型と前記残部用型とが少なくも連通構造から構成され、かつ、粉体成形体の一部或いは本体の乾燥処理工程後に形成される粉体成形体の一部或いは本体の箇所(領域)に、残部を形成するために充填したスラリーが行き渡れば(充填されれば)、確実に一体化できるため、強度不足等の支障も生じにくくなるため、本発明の効果をより奏し易くなる。すなわち、粉体成形体の一部或いは本体の乾燥処理工程後に形成される粉体成形体の一部或いは本体の箇所(領域)が、残部用型から充填される領域に対して露出形成されることが好ましい。
【0061】
具体的には、図2Aに示されるシャフト用型11のスラリー注型孔11aからスラリーを注型した際に、(タービン本体の)接合面2cと(タービン残部)の接合面2dとが一体化できるように、スラリー注型孔11aから(タービン残部)の接合面2dまでが連通構造となるものを一例として挙げることができる。
【0062】
[2]タービンシャフト:
また、粉体成形体が、とりわけ軸付きタービンであることが好ましい。軸付きタービンは、いわゆる、その先端に形成される翼状のタービン本体と、シャフトから概ね構成されるものである。このような軸付きタービンを従来のように一回で製造すると、寸法誤差が生じたりして製品バラツキが生じる等の支障が生じていた。とりわけ、翼状のタービン本体の離型性が悪かったり、シャフト本体の耐強度性が脆弱となったりしやすいが、本製造方法によれば、そのような問題が生じず、本発明の効果を十分に奏することができるため好ましい。
【0063】
より好ましいのは、スラリーをタービン本体用型に注型して硬化させ、乾燥させる処理工程を経て、タービン本体用の粉体成形体を成形した後、さらに、スラリーをタービン用本体の残部を成形する型に注型して硬化させ、乾燥させる処理工程を繰り返して製造することである。このような製造方法によりタービンが製造されることによって、従来の製造方法と比較して、タービンの、翼状のタービン本体や、シャフト本体の切れやクラック等を制御でき、寸法精度の高いタービンを製造できる。
【0064】
さらに、本体用型に翼型を取り付けた後に、スラリーを前記本体用型に注型し硬化して乾燥させて、タービン本体用の粉体成形体を成形した後、残部用型を、翼型を介して本体用型に取り付け、さらに、スラリーを、残部用型に注型し硬化して乾燥させて、残部を成形するとともに、タービン本体とその残部とを一体化して、軸付きタービン全体を製造することが好ましい。タービン本体と、その残部を一体化させやすく、本発明の効果を遍く奏することができる。
【0065】
さらに、図を参照しながら、本実施形態の製造方法を説明する。まず、図2A、図3に示されるような、軸付きタービン1の先端に形成される先端軸3aを成形するための下シャフト型5と、下シャフト型5を安定載置するための下型15を用意する。この下型15には、後述するような固定ピン13を挿入できる孔(固定ピン挿入孔5b)が複数形成されるとともに、貫通していない中底が形成され、下シャフト型5をその中心に嵌合(挿入)して使用する。さらに、下シャフト型5には先端軸3を成形するために、前述のスラリーを流し込み(充填)できるスラリー注型孔5aが中央に形成されている。なお、図2A、図3に示される下型15は円形状に形成されているが、このような円形からなる型形状に限定されるものではなく、多角系、楕円形等適宜必要に応じて選択されることが好ましい。さらに、前述の(S4)の離型処理時に、翼型9と翼部3b(図2B参照)とのクリアランスを確保できるように、翼型9がスライドできるスリット15cが、図5に示されるように形成されていると、固定ピンを抜かずに翼型のスライドが容易となるため好ましい。
【0066】
次に、図2Bのような軸付きタービンの翼部3bを備えるタービン本体2aを成形するための翼型9(図6B参照)を予め用意し、前述の下シャフト型5、下型15に図4のようにセットする。なお、ここでの翼型9にも固定ピンを挿入できる固定ピン挿入孔9bが複数形成されていると、翼型の固定が行えるため好ましい。
【0067】
さらに、図7A、図7Bに示されるようなタービン本体用上型7を用意し、前述のように下シャフト型5、下型15にセットした翼型9の、更に上にセットする。なお、ここでのタービン本体用上型7にも固定ピン挿入孔、上下型位置決めピン挿入孔19(図3参照)等が形成されると、タービン本体用上型7、下型15に固定ピン9(図7C参照)或いは上下型位置決めピン17(図3参照)等を介して、前述のような所謂分割型を一体化できるため、さらに成形体の固定を行うことができる。
【0068】
なお、ここでの固定ピン、上下型位置決めピン等は、離型時に取り外し可能に形成されることが好ましい。たとえば、前述のような先端軸用型(下シャフト型)、翼型、上型に夫々形成される、固定ピンを差込みできる孔、上下型位置決めピンを差込みできる孔等に対して、出し入れ自在になるような遊びが形成されるもの等を好適に用いることができる。
【0069】
このようにして、図10に示されるような状態で、夫々の孔に差し込んで、取り外し可能にセットし、先端軸を含めたタービン本体を製造するための型をセットし終えた後、タービン残部用型をセットせずに、前述したような所望のスラリーを、たとえば図10に示されるようなスラリー注型孔7aから注ぎ込み、硬化、乾燥処理を行う。このように粉体成形体全体を一度で成形せずに、タービン本体用の粉体成形体のみを成形するため、従来の乾燥方法では、図12に示されるような小さな乾燥面に限定されていたものが、本実施形態では、図2Aに示されるように、更なる乾燥面を取ることができる。
【0070】
その後、固定ピン13を引き抜き、図10に示されるように、翼型9をスライドさせ、成形体翼部分と翼型との間に空間を作ることによって、その成形体翼部分と翼型間にクリアランスを確保する。
【0071】
次に、タービンの残部である、シャフト本体を成形するための、シャフト型11を用意し(図2A、図3参照)、前述までの工程で成形した、タービン本体が収納されたままの、先端軸を含めたタービン本体を製造するための型(図2Aの符号A参照)の上から、更に、そのシャフト型11を、図4、図9A、図9Bに示されるようにセットし、上下型位置決めピン17を差込みしてセットする。このようにして、タービン残部用の型をセットし終えた後、再び、前述したような所望のスラリーを、たとえば図9Bに示されるような上部側の、スラリー注型孔から注ぎ込み、硬化、乾燥処理を行う。このように、スラリーを再び注型して、タービンの残部2bを、前述したタービン本体に一体化する。
【0072】
次に、硬化、乾燥処理を行う。具体的には、熱風乾燥を使用して、40℃、1.0時間で乾燥させる。さらに、型ごと粉体成形体の熱風乾燥を使用して、80℃、2.0時間で乾燥させる。
【0073】
この後、前述の上下型位置決めピン、固定ピン等を外し、図11に示されるシャフト用型11、タービン本体用上型7、翼型9、先端軸用型5を夫々取り外して、粉体成形体を離型する。
【0074】
さらに、前述のような粉体成形体の一部或いは本体部と残部とが一体化したものを離型処理した後、150℃、5.0時間で乾燥させることにより、粉体成形体が完成する。
【0075】
たとえば、軸付きタービン用成形体の型では、スラリーを硬化して乾燥成形した後に、本体用型又は前記残部用型から前記粉体成形体を離型させて粉体成形体を製造する等して製造すると、スラリーを硬化した後に行う離型処理を簡単に行え、さらに、離型処理に伴いやすいクラックやキレ等の成形品に生じやすい不具合を抑制できる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例により、更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
[1]不具合モード:
得られた実施例及び比較例の成形品のそれぞれに対して、本体クラック観察、翼千切れ観察、及び翼クラック観察を行うことにより不具合が生じているかを評価した。
【0078】
[1−1]本体クラック観察:
得られたタービン本体を、目視或いはルーペ等を用いて、クラックの有無を観察した。評価方法としては、成形品数(n個)のうち、クラックが生じている個数がどの程度の割合で生じているかを、100分率(%)で示した。なお、ここでの(軸付きタービン)本体とは、図2に示されるタービン本体用上型7、翼型9、先端軸用型5、下型15からなるタービン本体用型Aをいう。
【0079】
[1−2]翼千切れ観察:
得られた軸付きタービンの翼を、目視或いはルーペ等を用いて、翼における千切れの有無を観察した。評価方法としては、成形品数(n個)のうち、翼千切れが生じている翼の枚数がどの程度の割合で生じているかを、100分率(%)で示した。
【0080】
[1−3]翼クラック観察:
得られた軸付きタービンの翼を、目視或いはルーペ等を用いて、翼におけるクラックの有無を観察した。評価方法としては、成形品数(n個)のうち、翼クラックが生じている翼の枚数がどの程度の割合で生じているかを、100分率(%)で示した。
【0081】
[2]粉体成形体用型の作成:
まず、実施例1〜5における粉体成形用型としては、図2Aに示されるようなタービン本体用型Aと、図2Bに示されるような残部用型Bを用意した。この型材質は、SUS304から成形した。さらに、比較例1〜7における粉体成形用型としては、図12に示されるような一体成形用型の軸付きタービン用型Cを用意した。この型材質は、SUS304である。
【0082】
[3]粉体成形体の作成:
(実施例1)
スラリーは、室温下(20℃前後)、ニ塩基酸メチルエステルからなる分散媒28.1質量部に、ポリカルボン酸共重合体からなる分散剤1.6質量部を添加、混合した後、窒化珪素粉体67.2質量部を添加、分散し、更にゲル化剤としてイソシアネート樹脂2.7質量部、エチレングリコール0.3質量部、ジメチルアミノヘキサノール0.1質量部を添加、分散することにより調製した。
【0083】
成形体の作製は、上述のように調製したスラリーを、前述のように作成した粉体成形体用型Aをセットして注入して、成形体用型Aごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で10時間硬化、乾燥処理した。この後、前述のように作成した粉体成形体用型Bをセットして前述のスラリーを注入して成形体用型Bごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で1.0時間硬化、乾燥処理し、離型することにより、粉体成形体を4個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を実施例1の粉体成形体とするとともに、前述のような評価を行った。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表1に示した。
【0084】
【表1】
【0085】
(実施例2)
スラリーは、室温下(20℃前後)、ニ塩基酸メチルエステルからなる分散媒25.6質量部に、ポリカルボン酸共重合体からなる分散剤1.5質量部を添加、混合した後、窒化珪素粉体69.5質量部を添加、分散し、更にゲル化剤としてイソシアネート樹脂3質量部、エチレングリコール0.3質量部、ジメチルアミノヘキサノール0.1質量部を添加、分散することにより調製した。
【0086】
さらに、実施例1と同様に、前述のように調製したスラリーを前述のように作成した粉体成形体用型Aをセットして注入して、成形体用型Aごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で2.0時間で硬化、乾燥処理した。この後、前述のように作成した粉体成形体用型Bをセットして前述のスラリーを注入して成形体用型Bごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で1.0時間硬化、乾燥処理し、離型することにより、粉体成形体を4個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を実施例2の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表1に示した。
【0087】
(実施例3)
さらに、実施例1と同様に、調製したスラリーを前述のように作成した粉体成形体用型Aをセットして注入して、成形体用型Aごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で1.5時間硬化、乾燥処理した。この後、前述のように作成した粉体成形体用型Bをセットして前述のスラリーを注入して成形体用型Bごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で1.0時間硬化、乾燥処理し、離型することにより、粉体成形体を1個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を実施例3の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表1に示した。
【0088】
(実施例4)
さらに、実施例1と同様に、調製したスラリーを前述のように作成した粉体成形体用型Aをセットして注入して、成形体用型Aごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で1.0時間硬化、乾燥処理した。この後、前述のように作成した粉体成形体用型Bをセットして前述のスラリーを注入して成形体用型Bごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で1.0時間硬化、乾燥処理し、離型することにより、粉体成形体を10個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を実施例4の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表1に示した。
【0089】
(実施例5)
さらに、実施例1と同様に、調製したスラリーを前述のように作成した粉体成形体用型Aをセットして注入して、成形体用型Aごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で0.5時間硬化、乾燥処理した。この後、前述のように作成した粉体成形体用型Bをセットして前述のスラリーを注入して成形体用型Bごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で1.0時間硬化、乾燥処理し、離型することにより、粉体成形体を2個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を実施例5の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表1に示した。
【0090】
(比較例1)
スラリーは、室温下(20℃前後)、ニ塩基酸メチルエステルからなる分散媒28.4質量部に、ポリカルボン酸共重合体からなる分散剤1.6質量部を添加、混合した後、窒化珪素粉体67.3質量部を添加、分散し、更にゲル化剤としてイソシアネート樹脂2.3質量部、エチレングリコール0.3質量部を添加、分散することにより調製した。
【0091】
さらに、成形体の作製は、上述のように調製したスラリーを、前述のように作成した粉体成形体用型Cをセットして注入して、硬化温度25℃で24時間(24h)かけて硬化、乾燥処理した。この後、離型することにより、粉体成形体を2個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を比較例1の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表2に示した。
【0092】
【表2】
【0093】
(比較例2)
比較例1と同様に、前述のように調製したスラリーを粉体成形体用型Cに注入し、硬化温度40℃で10時間(10h)かけて硬化、乾燥処理した。この後、離型することにより、粉体成形体を5個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を比較例2の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表2に示した。
【0094】
(比較例3)
スラリーは、室温下(20℃前後)、ニ塩基酸メチルエステルからなる分散媒25.6質量部に、ポリカルボン酸共重合体からなる分散剤1.5質量部を添加、混合した後、窒化珪素粉体69.5質量部を添加、分散し、更にゲル化剤としてイソシアネート樹脂3質量部、エチレングリコール0.3質量部、ジメチルアミノヘキサノール0.1質量部を添加、分散することにより調製した。
【0095】
さらに、成形体の作製は、比較例1と同様に、前述のように調製したスラリーを粉体成形体用型Cに注入し、硬化温度40℃で2時間(2h)かけて硬化、乾燥処理した。この後、離型することにより、粉体成形体を2個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を比較例3の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表2に示した。
【0096】
(比較例4)
比較例3と同様に、前述のように調製したスラリーを粉体成形体用型Cに注入し、硬化温度40℃で1.5時間(1.5h)かけて硬化、乾燥処理した。この後、離型することにより、粉体成形体を1個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を比較例4の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表2に示した。
【0097】
(比較例5)
比較例3と同様に、前述のように調製したスラリーを粉体成形体用型Cに注入し、硬化温度40℃で1時間(1.0h)かけて硬化、乾燥処理した。この後、離型することにより、粉体成形体を3個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を比較例4の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表2に示した。
【0098】
(比較例6)
比較例3と同様に、前述のように調製したスラリーを粉体成形体用型Cに注入し、硬化温度40℃で0.5時間(0.5h)かけて硬化、乾燥処理した。この後、離型することにより、粉体成形体を1個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を比較例6の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表2に示した。
【0099】
(比較例7)
比較例1と同様に、前述のように調製したスラリーを粉体成形体用型Cに注入し、硬化温度25℃で24時間(24h)かけて硬化、乾燥処理した。この後、離型することにより、粉体成形体を1個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を比較例7の粉体成形体とするとともに、前述のような評価を行った。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表1に示した。
【0100】
[4]粉体成形体の成形時間観察:
さらに、注型から粉体成形体が完成するまでの所用時間を測定した。具体的には、実施例6として、前述の図2Aに示されるようなタービン本体用型Aと、図2Aに示されるような残部用型Bを用意し、注型乾燥を2回行い、更に離型後乾燥をして粉体成形体を製造するまでの時間を測定し、その結果を表3に示した。さらに、比較例8として、前述の図15に示されるような一体成形用型のタービン用型Cを用意し、注型乾燥を1回行い、更に離型後乾燥をして粉体成形体を製造するまでの時間を測定し、その結果を表3に示した。
【0101】
【表3】
【0102】
(考察1)
実施例1〜5の結果から、粉体成形体の本体を乾燥成形した後に、粉体成形体の残部を一体化させて乾燥成形し、粉体成形体を製造することによって、離型時(型の引き抜き時)に、本体クラック、さらには、翼の千切れ及び翼クラックといった、粉体成形体の破損を低減でき、良好な結果を得ることができた。特に、実施例5では、本体クラックの不具合を生じさせないことに加えて、翼千切れ及び翼クラックを低減させたのは、S3、S4工程での硬化、乾燥時の乾燥面が大きいため、短時間で、成形体翼部分と翼型のクリアランスをあけるだけの必要最低限の乾燥収縮をでき(かといって型と干渉されてクラックが入るほど大きな収縮はしない)、翼の末端まで離型要求されるに必要最低限の強度を出せたためであると考えられる。
【0103】
他方、比較例1〜7では、成形体本体にクラックが生じてしまうものが多く、成形体本体にクラックが生じないものでも、翼千切れや、翼クラックが生じてしまい、本発明の効果を奏することができないばかりか、実用化において課題が残ることが確認された。
【0104】
(考察2)
さらに、実施例6に見られるように、注型、乾燥処理を2回行うとともに、離型後乾燥処理を1回行って粉体成形体を製造する場合に要する製造時間は、比較例8のような一体型粉体成形をする場合と比較しても、短時間で製造でき、良好な結果を得ることが確認された。なお、実施例6のように製造時間が従来の製造時間より短縮されても、粉体成形体には不具合が生じていないことも確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明に係る粉体成形体の製造方法によれば、離型性に優れ、乾燥収縮差を生じにくくして乾燥収縮差を制御でき、製品ばらつきを抑制できるとともに、寸法精度を向上でき、生産性を向上できるといった、優れた効果を奏することができる。軸付きタービン用成形体を製造することに好適に用いることができるだけではなく、国際公開第2007/111380号パンフレットで例示されるような発光管用途にも適用することが出来る。本発明に関わる製造方法によれば端部が管形状を有する成形体の端部に、再注型により外径、あるいは内径の異なる端部、あるいはプラグ部を形成することができる。あらかじめ注型された乾燥体と再注型するスラリー組成が異なってもよく、例えば再注型の際、金属を主成分とするスラリーを用いればセラミック表面や内部に金属パターンを形成することも出来る。更にその表面に再注型することで印刷パターンが内装された成形体を得ることもできる。
【符号の説明】
【0106】
1:粉体成形体(軸付きタービン)、2a:粉体成形体本体(軸付きタービン本体、タービン本体)、2b:粉体成形体残部(軸付きタービン残部)、2c:(軸付きタービン本体の)接合面、2d:(軸付きタービン残部、タービン残部)の接合面、2e:(翼型との)接地面、3a:先端軸、3b:翼部、5:先端軸用型(下シャフト型)、5a:スラリー注型孔、5b:固定ピン挿入孔、7:粉体成形体本体用上型(タービン本体用上型、タービン本体用上型)、7a:スラリー注型孔、7b:固定ピン挿入孔、9:翼型、9b:固定ピン挿入孔、11:粉体成形体残部用型(シャフト用型)、11a:スラリー注型孔、11b:固定ピン挿入孔、11cシャフト用型、13:固定ピン、15:下型、15a:固定ピン挿入孔、15b:先端軸用型(下シャフト型)挿入孔、15c:(下型の)スリット、15d:(上下型位置決め)ピン挿入孔、19:(上下型位置決め)ピン挿入孔、17:上下型位置決めピン、100:粉体成形体(軸付きタービン)、101:下シャフト型、103:下型、105:翼コマ(翼型)、107:上型、109:上シャフト型、A:粉体成形体本体用型、B:粉体成形体残部用型、R:スラリー注型口。
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック及び/又は金属の原料粉体から成形体を製造する方法に関する。より詳しくは、ゲル化剤を含むスラリーを注型し、当該スラリーをゲル化させることにより硬化して成形体を得る粉体成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックや金属の原料粉体から成形体を製造する方法としては、プレス成形、鋳込成形、射出成形等の方法が利用されているが、複雑形状品の成形が困難、寸法精度が低い、厚肉品ではクラックを生じ易い、成形体を緻密化し難い等の問題があることから、近年、これらの問題を解決し得る方法として、いわゆるゲルキャスト法が注目されている。
【0003】
ゲルキャスト法は、セラミック、金属等の原料粉体と、分散媒と、ゲル化剤とを含むスラリーを成形型に注入した後に、スラリーを温度条件や架橋剤の添加等によりゲル化させることにより硬化して成形体を得る粉体成形体等の製造方法であり、ゲル化前の流動性が高い状態でスラリーを注型できることから複雑形状品の成形が容易であることに加え、注型後はゲル化によりハンドリングに耐える充分な強度を有する成形体を得ることができるものである。
【0004】
従来、このゲルキャスト法としては、セラミック、金属等の原料粉体と、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のプレポリマーを主成分とするゲル化剤とを、分散媒中に分散させてスラリーを調製し、得られたスラリーを金属製の成形型に注入した後、更に、架橋剤を添加して、架橋剤とゲル化剤との架橋反応によりゲル化してスラリーを硬化した後、成形型を取り外して成形体を得る方法等が知られている。
【0005】
3次元複雑形状品のときは、硬化後の成形体強度を出そうと架橋剤とゲル化剤を多く入れると、硬化時の体積変化で、型と干渉し成形体が割れてしまう。一方硬化時の体積変化を抑えようと架橋剤とゲル化剤を少なくすると、硬化後の成形体強度が低く、離型時の型と成形体の摩擦で成形体が壊れてしまう。このようなときには、スラリーを注型して硬化させた後、粉体成形体を加熱して、成形体が収縮しすぎて型と干渉して破損しない程度に、乾燥収縮させた型と成形体との間に微小なクリアランスをつくり、かつ成形体強度も上げてから、型から粉体成形体を離型する離型処理が行われている。
【0006】
しかしながら、この従来のゲルキャスト法では、粉体原料となるスラリーの注型(充填)を1回で行っていたため、外気等にスラリーが触れる領域が小さくなり乾燥し難かった。更に、外気等から離れるに従って、スラリーの乾燥状態及び乾燥の進行が一律とならなかった。その結果、乾燥状態及び乾燥の進行が一律で行われなかったことにより、不均一な乾燥による収縮が生じ、加えて、収縮差も不均一となりやすく、乾燥収縮を均一にする乾燥条件の設定が困難であり、粉体成形体を確実に成形することができなかった。
【0007】
すなわち、従来のゲルキャスト法では、乾燥時にクラックが発生しやすい上に、乾燥の設定が必要という問題点があった。また、現在要求されている注型以降の作業性を必ずしも充足するものではなく、複雑形状の成形を行う際の形状精度を低下させる原因にもなっていた。
【0008】
具体的には、従来のゲルキャスト法で、たとえば、タービンシャフト、特に軸付きタービンを成形する場合には、図12に示されるように、下シャフト型101に下型103を組み合わせ、その上に翼コマ105(翼型)を載せて、さらに上型107、上シャフト型109を組み合わせる。その後、取り外し可能な固定ピン(図示せず)等で固定して、粉体成形体を製造する型を一体化させた後、上シャフト型109に設けられたスラリー注型口Rから、スラリーを注型して製造していた。このため、乾燥時において、乾燥面は、スラリー注型口Rの表面のみに限定されてしまい、粉体成形体全体で均一な乾燥ができないものとなっていた。
【0009】
とりわけ、軸付きタービン等複雑形状品を製造する場合には、ゲルキャスト法が有効であるものの、過剰な乾燥収縮あるいは乾燥収縮差で破損しやすいという問題が生じている。従来の製造方法では、成形体の体積に対し乾燥面が非常に小さく、また乾燥制御し難い。そのため、破損や不具合を防止し難い。加えて、破損や不具合を減らそうとして、乾燥を長時間行う等の対策も講じられてはいるものの十分でなく、生産効率の低下といった悪循環を引き起こしている。他方、乾燥収縮させずに離型しようとすると、成形体強度が不十分である成形体と成形体コマ間に、クリアランスが無いため、摩擦が大きくなってしまい翼等が破損してしまう。したがって、十分な対応がなされておらず、更なる改良が望まれるところである。
【0010】
このような課題に対して、以下の特許文献1がある。
【0011】
特許文献1では、大量の樹脂類を添加することなくスラリーを硬化させ、硬化作業時の温度管理に厳重さを要しないで粉体成形体を製造することを目的に、セラミック、ガラスあるいは金属から選ばれた一種以上の粉体を、分散剤を用いて分散媒に分散させて作製されたスラリーに、分散剤との相互作用により分散剤の分散能力を消失もしくは低下させる反応物質を添加することにより、スラリーを硬化させて粉体成形体を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−048222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、同文献1では、粉体原料となるスラリーの注型(充填)を1回で行っているため、外気等にスラリーが触れる領域が小さくなり乾燥し難い。更に、外気等から離れるに従ってスラリーの乾燥状態及び乾燥の進行が一律とならない。そのため、3次元複雑形状品を製造する場合には、不均一な乾燥による収縮が生じるおそれがある。加えて、収縮差も不均一となりやすく、乾燥収縮差を均一にする乾燥条件の設定が困難であるため、製品のばらつきが生じやすい。したがって、更なる改良が求められるところである。
【0014】
本発明は、このような課題を解決すべく、研究が重ねられてなされたものであり、粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、粉体成形体の一部或いは本体に、粉体成形体の残部を一体化させて成形乾燥し、前記粉体成形体を製造することにより、離型性に優れ、乾燥収縮差を生じ難くして乾燥収縮差を制御でき、製品ばらつきを抑制できるとともに、寸法精度を向上でき、加えて乾燥時間を短縮でき、生産性を向上できる粉体成形体の製造方法を提供する。とりわけ、軸付きタービン用成形体の製造方法に好適に用いることができる。さらに、微細な複雑形状の成形体を離型する場合でも、成形体の微細形状を損なうことなく成形体を得ることができるとともに、アンダーカット形状等の成形型を用いる場合でも、成形体の形状を破損することなく容易に離型することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[1] セラミック及び/又は金属の粉体と、分散媒と、ゲル化剤とを含むスラリーを注型し、前記スラリーをゲル化させることにより固化して成形体を得る粉体成形体の製造方法であって、前記粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、前記粉体成形体の一部或いは本体に、前記粉体成形体の残部を一体化させて成形乾燥し、前記粉体成形体を製造する粉体成形体の製造方法。
【0016】
[2] 前記スラリーを前記粉体成形体の一部或いは本体を成形するための本体用型に注型し硬化させながら乾燥させた後に、さらに、前記スラリーを前記粉体成形体の残部を成形するための残部用型に注型し硬化させながら乾燥させて、前記粉体成形体を製造する[1]に記載の粉体成形体の製造方法。
【0017】
[3] 前記スラリーを注型する前記粉体成形体の型が、前記本体用型と前記残部用型とからなる分割型として少なくとも構成されている前記粉体成形体の型を使用して前記粉体成形体を製造する[1]又は[2]に記載の粉体成形体の製造方法。
【0018】
[4] 前記本体用型と前記残部用型とは少なくも連通構造を備え、前記粉体成形体の一部或いは本体の乾燥処理工程後に、前記本体用型から前記残部用型方向に露出形成された、前記粉体成形体の一部或いは本体の表面に対して、さらに前記連通構造を介して前記残部用型から前記スラリーを充填して前記粉体成形体を製造する[1]〜[3]のいずれかに記載の粉体成形体の製造方法。
【0019】
[5] 前記粉体成形体が軸付きタービン用成形体である[1]〜[4]のいずれかに記載の粉体成形体の製造方法。
【0020】
[6] 前記スラリーを、前記軸付きタービン本体を製造する本体用型に注型して、硬化させながら乾燥させる処理工程を経て、前記軸付きタービン本体用の粉体成形体を成形した後、さらに、前記スラリーを前記軸付きタービンの残部を成形する残部用型に注型して、硬化させながら乾燥させる処理工程を繰り返して製造する[5]に記載の粉体成形体の製造方法。
【0021】
[7] 前記本体用型に翼型を取り付けた後に、前記スラリーを前記本体用型に注型し、硬化させながら乾燥させて、前記軸付きタービン本体用の粉体成形体を成形した後、前記残部用型を、前記翼型を介して前記本体用型に取り付け、さらに、前記スラリーを、残部用型に注型し、硬化させながら乾燥させて、前記残部を成形するとともに、前記軸付きタービン本体とその残部とを一体化して、前記軸付きタービン全体を製造する[5]又は[6]に記載の粉体成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る前記粉体成形体の製造方法によれば、離型性に優れ、乾燥収縮差を生じにくくして乾燥収縮差を制御でき、製品ばらつきを抑制できるとともに、寸法精度を向上でき、加えて乾燥時間を短縮でき、生産性を向上できる粉体成形体の製造方法を提供できるといった優れた効果を奏することができる。とりわけ、軸付きタービン用成形体の製造方法に好適に用いることができる。
【0023】
さらに、微細な複雑形状の成形体を離型する場合でも、成形体の微細形状を損なうことなく成形体を得ることができるとともに、アンダーカット形状等の成形型を用いる場合でも、成形体の形状を破損することなく容易に離型することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、その処理工程を示すフロー図である。
【図2A】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態に使用する粉体成形体本体用型と、粉体成形体残部用型との断面を模式的に示すとともに、粉体成形体本体と、粉体成形体残部の断面を模式的に示した図である。
【図2B】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、粉体成形体の断面を模式的に示した図である。
【図3】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態に使用する粉体成形体本体用型と、粉体成形体残部用型との分解斜視図であって、模式的に示した図である。
【図4】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態に使用する粉体成形体本体用型と粉体成形体残部用型とを組み合わせた状態を模式的に示した斜視図である。
【図5】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、粉体成形体本体用型であって、下型に先端軸用型(下シャフト型)をセットした状態を模式的に示した平面図である。
【図6A】図5の下型に、翼型を取り付けた状態を模式的に示した平面図である。
【図6B】図6Aに示される翼型の一例を模式的に示した斜視図である。
【図7A】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、粉体成形体本体用型の、粉体成形体本体用上型を模式的に示した平面図である。
【図7B】図7Aに示される本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、粉体成形体本体用型の、粉体成形体本体用上型を模式的に示した斜視図である。
【図7C】固定ピンの一例を模式的に示した斜視図である。
【図8】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、図5に示される下型に翼型を取り付けた後、さらに、粉体成形体本体用上型を取り付けた状態を模式的に示した平面図である。
【図9A】図8に示される粉体成形体本体用上型に、図3の粉体成形体残部用型(シャフト用型)を取り付けた状態を模式的に示した斜視図である。
【図9B】図8に示される粉体成形体本体用上型に、図3の粉体成形体残部用型(シャフト用型)を取り付けた状態を模式的に示した平面図である。
【図10】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、粉体成形体の一部或いは本体のスラリー注型(充填)処理工程から、粉体成形体の一部或いは本体の硬化、乾燥処理工程までに使用される粉体成形体本体用型を模式的に示した斜視図である。
【図11】本発明に係る粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、粉体成形体の一部及び本体の離型処理工程の状態を模式的に示す断面図である。
【図12】従来の粉体成形体の製造方法の一の実施形態であって、粉体成形体本体用型と、粉体成形体残部用型の断面、及び、粉体成形体本体と、粉体成形体残部の断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の粉体成形体の製造方法を実施するための形態について具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える粉体成形体の製造方法を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
[1]本発明の粉体成形体の製造方法:
本発明の粉体成形体の製造方法は、セラミック及び/又は金属の粉体と、分散媒と、ゲル化剤とを含むスラリーを注型し、前記スラリーをゲル化させることにより固化して成形体を得る粉体成形体の製造方法であって、前記粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、前記粉体成形体の一部或いは本体に、前記粉体成形体の残部を一体化させて成形乾燥し、前記粉体成形体を製造する粉体成形体の方法として構成される。
【0027】
[1−1]粉体成形体の処理工程:
本発明の粉体成形体の製造方法では、前述のように粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、粉体成形体の一部或いは本体に、粉体成形体の残部を一体化させて成形乾燥し、粉体成形体を製造することが望ましい。このように、粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、粉体成形体の一部或いは本体に、粉体成形体の残部を成形することにより、粉体成形体を最終的に成形する処理工程で、全体としての乾燥状態を最適化でき、加えて乾燥面を大きくできる。そのため、乾燥収縮差が生じにくくなり、更に、乾燥時間を短縮できる。この点につき、従来の粉体成形方法では、最終成形体の材料が同じで一体構造の粉体成形体を成形する場合には、粉体原料となるスラリーの注型(充填)を1回で行っていた。そのため、外気等にスラリーが触れる領域が小さくなり乾燥し難く、更に、外気等から離れるに従ってスラリーの乾燥状態及び乾燥の進行が一律とならなかった。その結果、乾燥状態及び乾燥の進行が一律で行われないことにより、不均一な乾燥による収縮が生じ、加えて、収縮差も不均一となりやすい。さらに、そのような粉体成形体の各部によって乾燥収縮差が相違するため、一律な乾燥条件の設定が困難となり、粉体成形体を確実に成形することができなかった。
【0028】
他方、本発明では、前述のような構成により、離型性に優れ、乾燥収縮差を生じにくくして乾燥収縮差を制御でき、製品ばらつきを抑制できるとともに、寸法精度を向上できる。加えて、乾燥時間を短縮でき、生産性を向上できる。より具体的には、粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、粉体成形体の一部或いは本体に、粉体成形体の残部を一体化させて成形乾燥し、粉体成形体を製造するといったように、製造工程を分割して、「注型‐硬化‐乾燥」の処理工程を繰り返すことで、1回当たりの乾燥面を大きくし、乾燥収縮差を生じ難くしつつ乾燥時間を短縮できるようにした。
【0029】
ここで、本実施形態では、図1に示されるような、(S1)スラリー調製処理工程、(S2)粉体成形体の一部或いは本体のスラリー注型(充填)処理工程、(S3)粉体成形体の一部或いは本体の硬化・乾燥処理工程、(S4)粉体成形体の一部或いは本体の離型処理工程、(S5)粉体成形体の残部のスラリー注型(充填)処理工程、(S6)粉体成形体の残部の硬化・乾燥処理工程、(S7)粉体成形体の一部或いは本体と残部との乾燥処理工程(1)、(S8)粉体成形体の一部或いは本体と残部と離型処理工程、(S9)粉体成形体の一部或いは本体と残部との乾燥処理工程(2)の、各処理工程を経て、粉体成形体が製造される((S10)粉体成形体の完成))。以下、各処理工程について説明する。
【0030】
[1−1−1](S1)スラリー調製処理工程:
まず、図1に示される(S1)スラリー調製処理工程について説明する。本実施形態の製造方法では、スラリーはセラミック及び/又は金属の粉体と、分散媒と、ゲル化剤とを含む各材料を調製したスラリーを使用することが望ましい。粉体成形体を成形し易いことに加えて、離型性などの点で、本発明の効果を奏し易いからである。
【0031】
セラミック及び/又は金属からなる原料粉体としては、例えば、ガラス、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミ、ジルコニア、若しくはサイアロン等のセラミック粉体、又は各種金属粉体を、適宜、一種単独で又は二種以上を組合わせて使用したものを挙げることができる。また、これら原料粉体の粒径は、スラリーを調製可能な限りにおいて特に限定はなく、製造する成形体に応じて適宜、好ましい粒径とすればよい。
【0032】
また、必要に応じて、反応性官能基を有する有機化合物を含有する分散媒と、反応性官能基を有する有機化合物を含有させてもよい。たとえば、有機分散媒としては、反応性官能基を有する有機化合物を含有し、後述するゲル化剤と反応し得るものを挙げることができる。これにより、高い反応効率を達成することができ、硬化に寄与する成分を高濃度で含有させながらも、低粘度で高流動性のスラリーを用いることが可能となる。
【0033】
ここで、前述の「反応性官能基」とは、他の成分と化学反応し得る原子団を意味し、例えば、水酸基、カルボキシル基、又はアミノ基等の他、後述するエステル結合により形成されるカルボニル基等が含まれるものを意味する。
【0034】
また、分散媒としては、たとえば、反応性官能基を有する有機化合物の中でも、20℃における粘度が20cps以下の低粘性の液状物質であるエステル類、とりわけ、全体の炭素数が20以下のエステル類などを挙げることができる。エステル類は比較的安定ではあるものの、反応性が高いゲル化剤を用いることにより、全体として反応性を高めることができる。
【0035】
また、分散媒を構成する有機化合物としては、少なくとも1の反応性官能基を有するものを含有させてもよいし、より高い反応効率を達成し、充分な硬化状態を得るために、2以上の反応性官能基を有する有機化合物を使用してもよい。
【0036】
なお本プロセスにおける材料に関する内容は、前記特許文献1の特開平11−048222号公開公報や特開2001−335371号公開公報、国際公開第2002/085590号パンフレットに記載されている。同文献の内容に基づき、適宜材料を選択して本発明を実施することができる。
【0037】
但し、スラリー濃度(スラリー全体の体積に対する原料粉体の体積%)が低すぎると成形体密度が低下し、成形体の強度低下、又は乾燥、焼成時におけるクラックの発生若しくは変形等の問題を生ずるため、通常は、スラリー濃度が25〜75体積%のものが好ましく、35〜75体積%のものがより好ましい。尚、スラリーの粘度は、既述した反応性分散媒やゲル化剤の粘度の他、原料粉体の種類、分散剤の量、スラリー濃度によって調整することができる。
【0038】
また、本発明におけるスラリーには、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、例えば、分散媒とゲル化剤との反応を促進するための触媒、スラリー調製を容易にするための分散剤、消泡剤、界面活性剤、又は焼結体特性を向上させるための焼結助剤等、種々の添加剤を加えることができる。
【0039】
例えば、硬化後の成形体の強度を向上させるためには、ポリカルボン酸エステル等の分散剤を添加することが好ましい。
【0040】
[1−1−2](S2)粉体成形体の一部或いは本体のスラリー注型(充填)処理工程:
次に、前述のようにして調製したスラリーを、粉体成形体の型に注型(充填)する、図1に示されるような、(粉体成形体の一部或いは本体の)スラリー注型処理工程について説明する。ここで、従来では、粉体原料となるスラリーの注型(充填)を1回で行っていた。そのため、粉体成形体の構成要素を組み合わせして一体的に型を使用し、粉体成形体を製造していた。しかし、このような一体的な製造方法では、スラリーの乾燥状態及び乾燥の進行が一律とならず、不均一な乾燥による収縮が生じ、加えて、収縮差も不均一となり、乾燥収縮を均一にする乾燥条件の設定が困難となり問題が生じていた。
【0041】
そこで、本実施形態では、「粉体成形体の一部或いは本体」を乾燥、離型処理までした後、「粉体成形体の残部」を成型することにした。そのため、スラリー注型処理工程では、まず「粉体成形体の一部或いは本体」のスラリーを注入して、後述のように硬化処理、乾燥処理、離型処理をした後、更に「粉体成形体の残部」のスラリーを注入して硬化処理、乾燥処理をすることが望ましいため、この「粉体成形体の一部或いは本体のスラリー注型処理工程」は、「粉体成形体の一部或いは本体」の成形に必要なスラリーを注型するものを意味し、「粉体成形体の残部」の成形に必要なスラリーの注型は、「粉体成形体の一部或いは本体」を乾燥処理した後に、行われる処理工程を意味する。
【0042】
たとえば、図2Bに示されるように、「粉体成形体の一部或いは本体」が軸付きタービン本体である場合には(以下、適宜「タービン本体」という)、図2Aに示されるように粉体成形体本体(タービン本体2a)に、スラリーを注型して乾燥処理まで行った後(図1の(S2)〜(S4)各処理工程)、図2Aに示されるように粉体成形体残部に(軸付きタービン残部(以下、適宜「タービン残部」という))に、スラリーを注型して、乾燥処理まで行う(図1の(S5)〜(S7)処理工程)。
【0043】
なお、前述のように「粉体成形体の一部或いは本体」と、「粉体成形体の残部」とを夫々、別の処理工程を経て製造する場合には、後述するような、スラリーを粉体成形体の一部或いは本体を成形するための型に注型し硬化して乾燥して離型させた後に、さらに、前述のスラリーを粉体成形体の残部を成形するための型に注型し硬化して乾燥させて、粉体成形体を製造することが好ましい。このように、粉体成形体の一部或いは本体を製造する型と、粉体成形体の残部を製造する型とに分割して、夫々を時系列的にかつ構造的に一体化させて製造することで、本発明の効果をより奏することができる。
【0044】
たとえば、図2Bに示されるように、「粉体成形体の一部或いは本体」がタービン本体2aである場合には、図2Aに示されるように粉体成形体本体2a(タービン本体)を製造するためのタービン本体用型A(先端軸用型5、翼型9、下型15など)と、図2Aに示されるように粉体成形体残部2b(タービン残部)を製造するためのタービン残部用型B(シャフト用型11など)とに型を分けて、スラリーをタービン本体用型に注型し硬化して乾燥させた後に、さらに、前述のスラリーを粉体成形体の残部を成形するためのタービン残部用型に注型し硬化して乾燥させて、粉体成形体を製造することで、1回当たりの乾燥面を大きくし、乾燥収縮差を生じにくくさせることができる。
【0045】
[1−1−3](S3)粉体成形体の一部或いは本体の(スラリー)硬化・乾燥処理工程:
次に、前述のようなスラリーを「粉体成形体の一部或いは本体」を成型する型に注入した後、図1に示されるようなスラリー硬化・乾燥処理を行う。このスラリー硬化・乾燥処理工程は、硬化させながら乾燥させるものである。硬化処理としては、1)所定時間放置する、2)所定の反応温度まで上昇させる、3)注型直前に触媒を添加する、等の方法を単独で又は組合わせて硬化させることが好ましく、迅速な硬化が可能な点では、2)所定の反応温度まで上昇させる、3)注型直前に触媒を添加する方法を単独で又は組合わせて硬化させることがより好ましい。
【0046】
なお、スラリーの硬化は、成形型に注入した後、既述した分散媒及びゲル化剤中にそれぞれ反応性官能基を含有させて有機化合物間のゲル化反応によって行ってもよい。
【0047】
また、乾燥処理としては、デシケータ保管、調湿乾燥、熱風乾燥等の乾燥方法を挙げることができ、乾燥条件としては25℃以上を挙げることができるが、このような乾燥方法、乾燥条件に限定されるものではなく、本発明の構成を採用しながら本発明の効果を奏するものであれば、公知の乾燥方法、乾燥条件によって、乾燥処理されるものも広く含まれる。
【0048】
[1−1−4](S4)粉体成形体の一部或いは本体の離型処理工程:
次に、図1に示される(S4)粉体成形体の一部或いは本体の離型処理工程(1)について説明する。この粉体成形体の一部或いは本体の離型処理工程(1)は、3次元複雑形状品を製造する場合に、その微細な複雑形状を成形するために用いられる型等を、前述の(S3)粉体成形体の一部或いは本体の(スラリー)硬化・乾燥処理工程処理後に、粉体成形体の一部或いは本体から離型して、粉体成形体の一部或いは本体と、粉体成形体の一部或いは本体用型間のクリアランスを確保するために行うものである。したがって、必須の処理工程ではないが、使用する型(微細な複雑形状を成形するための型)に応じて適宜離型処理が行われることが好ましい。
【0049】
たとえば、後述するようなタービン本体を製造する場合には、図2A、図6Aに示されるように、そのタービン翼部分を成形するために、翼型が使用される。スラリー注型時には、図3、図6Aに示されるように、翼型9は下型15上に固定ピン13を介して固定されるが、(S3)粉体成形体の一部或いは本体の硬化・乾燥処理工程を経て粉体成形体の一部或いは本体が成形された後には、固定ピン13を引き抜き、図10、図12に示されるように、翼型9を図示する矢印方向にスライドさせ、成形体翼部分と翼型との間に空間を作る。このようにして、(S4)粉体成形体の一部或いは本体の離型処理工程が行われることで、クリアランスを確保でき、粉体成形体の一部或いは本体の乾燥を促進できる。
【0050】
[1−1−5](S5)粉体成形体の残部のスラリー注型(充填)処理工程:
さらに、前述のようにして調製したスラリーを、粉体成形体の残部を成型する型に注型(充填)する、図1に示されるような(S5)粉体成形体の残部のスラリー注型(充填)処理工程について説明する。その際、残部の型は、前述の粉体成形体の一部或いは本体を成形するための型にセットして、残部の型にスラリーを注型(充填)した際に、前述の成形乾燥までした粉体成形体の一部或いは本体に、残部に注型(充填)したスラリーが当接できるように、セットされることが好ましい。乾燥成形までした粉体成形体の一部或いは本体に、残部に注型(充填)したスラリーが当接しないと、粉体成形体の一部或いは本体と残部とが、一体化できないためである。なお、乾燥条件等は前述の粉体成形体の一部或いは本体と同様であり、粉体成形体の一部或いは本体と残部とが一体化しやすい型の構造としては、後述する連通構造を有する分離型を使用することが好ましい。
【0051】
[1−1−6](S6)粉体成形体の残部の硬化・乾燥処理工程:
次に、前述のようなスラリーを粉体成形体の残部を成形する型に注入し硬化、乾燥処理を行う、図1に示されるような(S6)粉体成形体の残部の(スラリー)乾燥処理工程を行うが、この乾燥処理条件は、前述の粉体成形体の一部或いは本体の乾燥処理工程とほぼ同様である。すなわち、粉体成形体残部の硬化・乾燥処理は、粉体成形体の一部或いは本体部と残部とが一体化しながら硬化させるものである。乾燥方法としては熱風乾燥等を挙げることができ、乾燥条件としては、40℃、1.0時間等を挙げることができるが、このような乾燥方法、乾燥条件に限定されるものではなく、本発明の構成を採用しながら本発明の効果を奏するものであれば、公知の乾燥方法、乾燥条件によって、乾燥処理されるものも広く含まれる。
【0052】
[1−1−7](S7)粉体成形体の一部或いは本体と残部の乾燥処理工程(1):
次に、前述のような粉体成形体の一部或いは本体部と残部とが一体化し硬化した後、さらに、型ごと粉体成形体の乾燥処理を行う、図1に示されるような(S7)粉体成形体の一部或いは本体と残部の乾燥処理工程(1)を行うが、前述の(S6)粉体成形体の残部の硬化・乾燥処理工程を経て、粉体成形体の乾燥が進んだ状態となるため、この(S7)における乾燥処理では、更に乾燥温度を上げて粉体成形体と型間のクリアランスを一層確保するために行われるものである。ただし、ここでの(S7)粉体成形体の一部或いは本体と残部の乾燥処理工程においても、完全に粉体成形体が乾燥するまでのものではない。
【0053】
たとえば、乾燥方法としては熱風乾燥で行うものを一例として挙げることができ、乾燥条件としては80℃、2.0時間等を挙げることができる。ただし、このような乾燥方法、乾燥条件に限定されるものではなく、本発明の構成を採用しながら本発明の効果を奏するものであれば、公知の乾燥方法、乾燥条件によって、乾燥処理されるものも広く含まれる。なお、前述の乾燥処理(S3)と異なり、ここでは乾燥温度を高くしているが、これは図11に示されるように、翼型9が(S4)の離型処理工程で、軸付きタービンと離され、(軸付きタービンの)翼型との接地面2eではクリアラスが確保されている。そのため、型との干渉によるクラックが生じないため、温度を上げて乾燥処理を行っている。
【0054】
[1−1−8](S8)粉体成形体の一部或いは本体と残部の離型処理工程:
次に、前述のような粉体成形体の一部或いは本体部と残部とが一体化し型ごと乾燥処理した後、図1に示されるような(S8)離型処理工程を行う。たとえば、タービン等の微細な形状を有する複雑形状品等では、図11に示されるように、タービン翼部分が広い乾燥面積を持っているため、シャフト部分も容易に乾燥され、乾燥収縮により粉体成形体の一部或いは本体部と残部のシャフト部と上下型との間にクリアランスがあり、シャフト用型11、上型7、と順々に外(離型)していき、粉体成形体を下型5(図2A、図3参照)から引き抜くことで成形体が得られる。
【0055】
[1−1−9](S9)粉体成形体の一部或いは本体と残部の乾燥処理工程(2):
次に、前述のような粉体成形体の一部或いは本体部と残部とが一体化したものを離型処理した後、図1に示されるような(S9)乾燥処理工程を行う。乾燥方法としては熱風乾燥で行うものを一例として挙げることができ、乾燥条件としては150℃、5.0時間等を挙げることができる。ただし、このような乾燥方法、乾燥条件に限定されるものではなく、本発明の構成を採用しながら本発明の効果を奏するものであれば、公知の乾燥方法、乾燥条件によって、乾燥処理されるものも広く含まれる。
【0056】
なお、粉体成形体の形状や大きさに応じて、複数回繰り返して粉体成形体を製造することも好ましい。ただし、複数回繰り返して製造する場合には、時系列的にかつ一体的に製造可能に製造されることが好ましい。たとえば、前述のように、粉体成形体本体の注型から乾燥までを複数回繰り返し、或いは、粉体成形体残部の注型から乾燥までを複数回繰り返し粉体成形体を製造する場合にも、時系列的にかつ一体的になるように製造されることで、粉体成形体の強度を損なわずに済み好ましい。具体的には、たとえば、図2に示されるように、「粉体成形体の一部或いは本体」がタービン本体2aである場合には、図2Aに示されるように粉体成形体本体2a(タービン本体)を製造するためのタービン本体用型(先端軸用型5、翼型9など)と、図2Aに示されるように粉体成形体残部2b(タービン残部)を製造するためのタービン残部用型(シャフト用型11など)とに型を分けて、タービン本体2aを成形した後に、さらに、タービン残部2bを製造する場合には、図2Aに示されるY−Y’線のように、タービン本体2aの中心軸と、タービン残部2bの中心軸とが一致し、タービン本体2aの接合面2cと、タービン残部2bの接合面2dとが、一体化するように形成されることが好ましい。このような一体化としては、タービン残部2bを製造する際のスラリー注型時に、タービン残部用型から注型されるスラリーが、タービン本体2aの接合面2cに十分に充填されることが必要となる。
【0057】
[1−2]分割型:
好ましいのは、前述のように調製したスラリーを粉体成形体の一部或いは本体を成形するための本体用型に注型し硬化して乾燥させた後に、さらに、スラリーを粉体成形体の残部を成形するための残部用型に注型し硬化して乾燥させて、粉体成形体を製造することである。粉体成形体の一部或いは本体と、残部との型を夫々別々にして、粉体成形体を製造することによって、個々の粉体成形体の製造過程における乾燥状態を均一にでき、製品バラツキを抑えることができるからである。このように、製造用の型を分割し、「注型‐硬化‐乾燥」の処理工程を繰り返すことで、1型あたりの乾燥面を大きくし、乾燥収縮差を生じにくく乾燥時間を短縮できるようにした。たとえば、タービンのような寸法精度が厳しく複雑成形品の製造では、離型させることなく継ぎ足しができる構造とすることにより、乾燥収縮差によるクラックを低減できると共に、寸法制度を損なうことなく乾燥時間を短縮できるため好ましい。
【0058】
たとえば、図2A、図3に示されるように、「粉体成形体の一部或いは本体」がタービン本体2aである場合には、図2Aに示されるように粉体成形体本体2a(タービン本体)を製造するためのタービン本体用型(先端軸用型5、翼型9など)と、図2Aに示されるように粉体成形体残部2b(タービンシャフト残部)を製造するためのタービン残部用型(シャフト用型11など)とに型を分割したものを例示できるが、このような所謂分割型に限定されるものではなく、本発明の構成を採用しながら、本発明の効果を奏するものであればよい。
【0059】
より好ましいのは、スラリーを注型する粉体成形体の型が、本体用型と残部用型とからなる分割型として少なくとも構成されている粉体成形体の型を使用して粉体成形体を製造することである。このように、スラリーを注型する粉体成形体の型が、本体用型と残部用型とからなる分割型を使用して粉体成形体を製造することで、乾燥状態を確実に制御でき、離型性を向上させやすくなり、本発明の効果をより奏し易くなる。特に、従来の粉体成形方法では、粉体成形体の材料が同じで一体化したものでは、粉体原料となるスラリーの注型(充填)を1回で行い、成型処理をしていたため、スラリーの乾燥状態及び乾燥の進行が一律とならず、不均一な乾燥による収縮が生じて、粉体成形用型から粉体成形体を離型させる際に、クラックが生じたり、切れが生じたりして、粉体成形体を確実に成形できなかった。しかし、前述のように、分割型を使用して粉体成形体の製造工程順、すなわち、時系列的に製造処理工程を繰り返して製造することで、粉体成形体の厚さや、寸法等に左右されず、寸法精度を向上でき、高品質の実施品が量産可能となるため、好ましい。
【0060】
さらに好ましいのは、本体用型と前記残部用型とが少なくも連通構造を備え、粉体成形体の一部或いは本体の乾燥処理工程後に、本体用型から前記残部用型方向に露出形成された、前記粉体成形体の一部或いは本体の表面に対して、さらに前記連通構造を介して前記残部用型からスラリーを充填して前記粉体成形体を製造することである。本体用型と前記残部用型とが少なくも連通構造から構成され、かつ、粉体成形体の一部或いは本体の乾燥処理工程後に形成される粉体成形体の一部或いは本体の箇所(領域)に、残部を形成するために充填したスラリーが行き渡れば(充填されれば)、確実に一体化できるため、強度不足等の支障も生じにくくなるため、本発明の効果をより奏し易くなる。すなわち、粉体成形体の一部或いは本体の乾燥処理工程後に形成される粉体成形体の一部或いは本体の箇所(領域)が、残部用型から充填される領域に対して露出形成されることが好ましい。
【0061】
具体的には、図2Aに示されるシャフト用型11のスラリー注型孔11aからスラリーを注型した際に、(タービン本体の)接合面2cと(タービン残部)の接合面2dとが一体化できるように、スラリー注型孔11aから(タービン残部)の接合面2dまでが連通構造となるものを一例として挙げることができる。
【0062】
[2]タービンシャフト:
また、粉体成形体が、とりわけ軸付きタービンであることが好ましい。軸付きタービンは、いわゆる、その先端に形成される翼状のタービン本体と、シャフトから概ね構成されるものである。このような軸付きタービンを従来のように一回で製造すると、寸法誤差が生じたりして製品バラツキが生じる等の支障が生じていた。とりわけ、翼状のタービン本体の離型性が悪かったり、シャフト本体の耐強度性が脆弱となったりしやすいが、本製造方法によれば、そのような問題が生じず、本発明の効果を十分に奏することができるため好ましい。
【0063】
より好ましいのは、スラリーをタービン本体用型に注型して硬化させ、乾燥させる処理工程を経て、タービン本体用の粉体成形体を成形した後、さらに、スラリーをタービン用本体の残部を成形する型に注型して硬化させ、乾燥させる処理工程を繰り返して製造することである。このような製造方法によりタービンが製造されることによって、従来の製造方法と比較して、タービンの、翼状のタービン本体や、シャフト本体の切れやクラック等を制御でき、寸法精度の高いタービンを製造できる。
【0064】
さらに、本体用型に翼型を取り付けた後に、スラリーを前記本体用型に注型し硬化して乾燥させて、タービン本体用の粉体成形体を成形した後、残部用型を、翼型を介して本体用型に取り付け、さらに、スラリーを、残部用型に注型し硬化して乾燥させて、残部を成形するとともに、タービン本体とその残部とを一体化して、軸付きタービン全体を製造することが好ましい。タービン本体と、その残部を一体化させやすく、本発明の効果を遍く奏することができる。
【0065】
さらに、図を参照しながら、本実施形態の製造方法を説明する。まず、図2A、図3に示されるような、軸付きタービン1の先端に形成される先端軸3aを成形するための下シャフト型5と、下シャフト型5を安定載置するための下型15を用意する。この下型15には、後述するような固定ピン13を挿入できる孔(固定ピン挿入孔5b)が複数形成されるとともに、貫通していない中底が形成され、下シャフト型5をその中心に嵌合(挿入)して使用する。さらに、下シャフト型5には先端軸3を成形するために、前述のスラリーを流し込み(充填)できるスラリー注型孔5aが中央に形成されている。なお、図2A、図3に示される下型15は円形状に形成されているが、このような円形からなる型形状に限定されるものではなく、多角系、楕円形等適宜必要に応じて選択されることが好ましい。さらに、前述の(S4)の離型処理時に、翼型9と翼部3b(図2B参照)とのクリアランスを確保できるように、翼型9がスライドできるスリット15cが、図5に示されるように形成されていると、固定ピンを抜かずに翼型のスライドが容易となるため好ましい。
【0066】
次に、図2Bのような軸付きタービンの翼部3bを備えるタービン本体2aを成形するための翼型9(図6B参照)を予め用意し、前述の下シャフト型5、下型15に図4のようにセットする。なお、ここでの翼型9にも固定ピンを挿入できる固定ピン挿入孔9bが複数形成されていると、翼型の固定が行えるため好ましい。
【0067】
さらに、図7A、図7Bに示されるようなタービン本体用上型7を用意し、前述のように下シャフト型5、下型15にセットした翼型9の、更に上にセットする。なお、ここでのタービン本体用上型7にも固定ピン挿入孔、上下型位置決めピン挿入孔19(図3参照)等が形成されると、タービン本体用上型7、下型15に固定ピン9(図7C参照)或いは上下型位置決めピン17(図3参照)等を介して、前述のような所謂分割型を一体化できるため、さらに成形体の固定を行うことができる。
【0068】
なお、ここでの固定ピン、上下型位置決めピン等は、離型時に取り外し可能に形成されることが好ましい。たとえば、前述のような先端軸用型(下シャフト型)、翼型、上型に夫々形成される、固定ピンを差込みできる孔、上下型位置決めピンを差込みできる孔等に対して、出し入れ自在になるような遊びが形成されるもの等を好適に用いることができる。
【0069】
このようにして、図10に示されるような状態で、夫々の孔に差し込んで、取り外し可能にセットし、先端軸を含めたタービン本体を製造するための型をセットし終えた後、タービン残部用型をセットせずに、前述したような所望のスラリーを、たとえば図10に示されるようなスラリー注型孔7aから注ぎ込み、硬化、乾燥処理を行う。このように粉体成形体全体を一度で成形せずに、タービン本体用の粉体成形体のみを成形するため、従来の乾燥方法では、図12に示されるような小さな乾燥面に限定されていたものが、本実施形態では、図2Aに示されるように、更なる乾燥面を取ることができる。
【0070】
その後、固定ピン13を引き抜き、図10に示されるように、翼型9をスライドさせ、成形体翼部分と翼型との間に空間を作ることによって、その成形体翼部分と翼型間にクリアランスを確保する。
【0071】
次に、タービンの残部である、シャフト本体を成形するための、シャフト型11を用意し(図2A、図3参照)、前述までの工程で成形した、タービン本体が収納されたままの、先端軸を含めたタービン本体を製造するための型(図2Aの符号A参照)の上から、更に、そのシャフト型11を、図4、図9A、図9Bに示されるようにセットし、上下型位置決めピン17を差込みしてセットする。このようにして、タービン残部用の型をセットし終えた後、再び、前述したような所望のスラリーを、たとえば図9Bに示されるような上部側の、スラリー注型孔から注ぎ込み、硬化、乾燥処理を行う。このように、スラリーを再び注型して、タービンの残部2bを、前述したタービン本体に一体化する。
【0072】
次に、硬化、乾燥処理を行う。具体的には、熱風乾燥を使用して、40℃、1.0時間で乾燥させる。さらに、型ごと粉体成形体の熱風乾燥を使用して、80℃、2.0時間で乾燥させる。
【0073】
この後、前述の上下型位置決めピン、固定ピン等を外し、図11に示されるシャフト用型11、タービン本体用上型7、翼型9、先端軸用型5を夫々取り外して、粉体成形体を離型する。
【0074】
さらに、前述のような粉体成形体の一部或いは本体部と残部とが一体化したものを離型処理した後、150℃、5.0時間で乾燥させることにより、粉体成形体が完成する。
【0075】
たとえば、軸付きタービン用成形体の型では、スラリーを硬化して乾燥成形した後に、本体用型又は前記残部用型から前記粉体成形体を離型させて粉体成形体を製造する等して製造すると、スラリーを硬化した後に行う離型処理を簡単に行え、さらに、離型処理に伴いやすいクラックやキレ等の成形品に生じやすい不具合を抑制できる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例により、更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
[1]不具合モード:
得られた実施例及び比較例の成形品のそれぞれに対して、本体クラック観察、翼千切れ観察、及び翼クラック観察を行うことにより不具合が生じているかを評価した。
【0078】
[1−1]本体クラック観察:
得られたタービン本体を、目視或いはルーペ等を用いて、クラックの有無を観察した。評価方法としては、成形品数(n個)のうち、クラックが生じている個数がどの程度の割合で生じているかを、100分率(%)で示した。なお、ここでの(軸付きタービン)本体とは、図2に示されるタービン本体用上型7、翼型9、先端軸用型5、下型15からなるタービン本体用型Aをいう。
【0079】
[1−2]翼千切れ観察:
得られた軸付きタービンの翼を、目視或いはルーペ等を用いて、翼における千切れの有無を観察した。評価方法としては、成形品数(n個)のうち、翼千切れが生じている翼の枚数がどの程度の割合で生じているかを、100分率(%)で示した。
【0080】
[1−3]翼クラック観察:
得られた軸付きタービンの翼を、目視或いはルーペ等を用いて、翼におけるクラックの有無を観察した。評価方法としては、成形品数(n個)のうち、翼クラックが生じている翼の枚数がどの程度の割合で生じているかを、100分率(%)で示した。
【0081】
[2]粉体成形体用型の作成:
まず、実施例1〜5における粉体成形用型としては、図2Aに示されるようなタービン本体用型Aと、図2Bに示されるような残部用型Bを用意した。この型材質は、SUS304から成形した。さらに、比較例1〜7における粉体成形用型としては、図12に示されるような一体成形用型の軸付きタービン用型Cを用意した。この型材質は、SUS304である。
【0082】
[3]粉体成形体の作成:
(実施例1)
スラリーは、室温下(20℃前後)、ニ塩基酸メチルエステルからなる分散媒28.1質量部に、ポリカルボン酸共重合体からなる分散剤1.6質量部を添加、混合した後、窒化珪素粉体67.2質量部を添加、分散し、更にゲル化剤としてイソシアネート樹脂2.7質量部、エチレングリコール0.3質量部、ジメチルアミノヘキサノール0.1質量部を添加、分散することにより調製した。
【0083】
成形体の作製は、上述のように調製したスラリーを、前述のように作成した粉体成形体用型Aをセットして注入して、成形体用型Aごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で10時間硬化、乾燥処理した。この後、前述のように作成した粉体成形体用型Bをセットして前述のスラリーを注入して成形体用型Bごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で1.0時間硬化、乾燥処理し、離型することにより、粉体成形体を4個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を実施例1の粉体成形体とするとともに、前述のような評価を行った。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表1に示した。
【0084】
【表1】
【0085】
(実施例2)
スラリーは、室温下(20℃前後)、ニ塩基酸メチルエステルからなる分散媒25.6質量部に、ポリカルボン酸共重合体からなる分散剤1.5質量部を添加、混合した後、窒化珪素粉体69.5質量部を添加、分散し、更にゲル化剤としてイソシアネート樹脂3質量部、エチレングリコール0.3質量部、ジメチルアミノヘキサノール0.1質量部を添加、分散することにより調製した。
【0086】
さらに、実施例1と同様に、前述のように調製したスラリーを前述のように作成した粉体成形体用型Aをセットして注入して、成形体用型Aごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で2.0時間で硬化、乾燥処理した。この後、前述のように作成した粉体成形体用型Bをセットして前述のスラリーを注入して成形体用型Bごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で1.0時間硬化、乾燥処理し、離型することにより、粉体成形体を4個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を実施例2の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表1に示した。
【0087】
(実施例3)
さらに、実施例1と同様に、調製したスラリーを前述のように作成した粉体成形体用型Aをセットして注入して、成形体用型Aごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で1.5時間硬化、乾燥処理した。この後、前述のように作成した粉体成形体用型Bをセットして前述のスラリーを注入して成形体用型Bごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で1.0時間硬化、乾燥処理し、離型することにより、粉体成形体を1個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を実施例3の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表1に示した。
【0088】
(実施例4)
さらに、実施例1と同様に、調製したスラリーを前述のように作成した粉体成形体用型Aをセットして注入して、成形体用型Aごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で1.0時間硬化、乾燥処理した。この後、前述のように作成した粉体成形体用型Bをセットして前述のスラリーを注入して成形体用型Bごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で1.0時間硬化、乾燥処理し、離型することにより、粉体成形体を10個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を実施例4の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表1に示した。
【0089】
(実施例5)
さらに、実施例1と同様に、調製したスラリーを前述のように作成した粉体成形体用型Aをセットして注入して、成形体用型Aごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で0.5時間硬化、乾燥処理した。この後、前述のように作成した粉体成形体用型Bをセットして前述のスラリーを注入して成形体用型Bごと成形体を熱風乾燥機内で、温度40℃で1.0時間硬化、乾燥処理し、離型することにより、粉体成形体を2個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を実施例5の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表1に示した。
【0090】
(比較例1)
スラリーは、室温下(20℃前後)、ニ塩基酸メチルエステルからなる分散媒28.4質量部に、ポリカルボン酸共重合体からなる分散剤1.6質量部を添加、混合した後、窒化珪素粉体67.3質量部を添加、分散し、更にゲル化剤としてイソシアネート樹脂2.3質量部、エチレングリコール0.3質量部を添加、分散することにより調製した。
【0091】
さらに、成形体の作製は、上述のように調製したスラリーを、前述のように作成した粉体成形体用型Cをセットして注入して、硬化温度25℃で24時間(24h)かけて硬化、乾燥処理した。この後、離型することにより、粉体成形体を2個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を比較例1の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表2に示した。
【0092】
【表2】
【0093】
(比較例2)
比較例1と同様に、前述のように調製したスラリーを粉体成形体用型Cに注入し、硬化温度40℃で10時間(10h)かけて硬化、乾燥処理した。この後、離型することにより、粉体成形体を5個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を比較例2の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表2に示した。
【0094】
(比較例3)
スラリーは、室温下(20℃前後)、ニ塩基酸メチルエステルからなる分散媒25.6質量部に、ポリカルボン酸共重合体からなる分散剤1.5質量部を添加、混合した後、窒化珪素粉体69.5質量部を添加、分散し、更にゲル化剤としてイソシアネート樹脂3質量部、エチレングリコール0.3質量部、ジメチルアミノヘキサノール0.1質量部を添加、分散することにより調製した。
【0095】
さらに、成形体の作製は、比較例1と同様に、前述のように調製したスラリーを粉体成形体用型Cに注入し、硬化温度40℃で2時間(2h)かけて硬化、乾燥処理した。この後、離型することにより、粉体成形体を2個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を比較例3の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表2に示した。
【0096】
(比較例4)
比較例3と同様に、前述のように調製したスラリーを粉体成形体用型Cに注入し、硬化温度40℃で1.5時間(1.5h)かけて硬化、乾燥処理した。この後、離型することにより、粉体成形体を1個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を比較例4の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表2に示した。
【0097】
(比較例5)
比較例3と同様に、前述のように調製したスラリーを粉体成形体用型Cに注入し、硬化温度40℃で1時間(1.0h)かけて硬化、乾燥処理した。この後、離型することにより、粉体成形体を3個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を比較例4の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表2に示した。
【0098】
(比較例6)
比較例3と同様に、前述のように調製したスラリーを粉体成形体用型Cに注入し、硬化温度40℃で0.5時間(0.5h)かけて硬化、乾燥処理した。この後、離型することにより、粉体成形体を1個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を比較例6の粉体成形体とするとともに、前述のような評価をおこなった。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表2に示した。
【0099】
(比較例7)
比較例1と同様に、前述のように調製したスラリーを粉体成形体用型Cに注入し、硬化温度25℃で24時間(24h)かけて硬化、乾燥処理した。この後、離型することにより、粉体成形体を1個成形した。このようにして得られた夫々の粉体成形体を比較例7の粉体成形体とするとともに、前述のような評価を行った。その際の特性、並びに得られた成形体の評価について、表1に示した。
【0100】
[4]粉体成形体の成形時間観察:
さらに、注型から粉体成形体が完成するまでの所用時間を測定した。具体的には、実施例6として、前述の図2Aに示されるようなタービン本体用型Aと、図2Aに示されるような残部用型Bを用意し、注型乾燥を2回行い、更に離型後乾燥をして粉体成形体を製造するまでの時間を測定し、その結果を表3に示した。さらに、比較例8として、前述の図15に示されるような一体成形用型のタービン用型Cを用意し、注型乾燥を1回行い、更に離型後乾燥をして粉体成形体を製造するまでの時間を測定し、その結果を表3に示した。
【0101】
【表3】
【0102】
(考察1)
実施例1〜5の結果から、粉体成形体の本体を乾燥成形した後に、粉体成形体の残部を一体化させて乾燥成形し、粉体成形体を製造することによって、離型時(型の引き抜き時)に、本体クラック、さらには、翼の千切れ及び翼クラックといった、粉体成形体の破損を低減でき、良好な結果を得ることができた。特に、実施例5では、本体クラックの不具合を生じさせないことに加えて、翼千切れ及び翼クラックを低減させたのは、S3、S4工程での硬化、乾燥時の乾燥面が大きいため、短時間で、成形体翼部分と翼型のクリアランスをあけるだけの必要最低限の乾燥収縮をでき(かといって型と干渉されてクラックが入るほど大きな収縮はしない)、翼の末端まで離型要求されるに必要最低限の強度を出せたためであると考えられる。
【0103】
他方、比較例1〜7では、成形体本体にクラックが生じてしまうものが多く、成形体本体にクラックが生じないものでも、翼千切れや、翼クラックが生じてしまい、本発明の効果を奏することができないばかりか、実用化において課題が残ることが確認された。
【0104】
(考察2)
さらに、実施例6に見られるように、注型、乾燥処理を2回行うとともに、離型後乾燥処理を1回行って粉体成形体を製造する場合に要する製造時間は、比較例8のような一体型粉体成形をする場合と比較しても、短時間で製造でき、良好な結果を得ることが確認された。なお、実施例6のように製造時間が従来の製造時間より短縮されても、粉体成形体には不具合が生じていないことも確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明に係る粉体成形体の製造方法によれば、離型性に優れ、乾燥収縮差を生じにくくして乾燥収縮差を制御でき、製品ばらつきを抑制できるとともに、寸法精度を向上でき、生産性を向上できるといった、優れた効果を奏することができる。軸付きタービン用成形体を製造することに好適に用いることができるだけではなく、国際公開第2007/111380号パンフレットで例示されるような発光管用途にも適用することが出来る。本発明に関わる製造方法によれば端部が管形状を有する成形体の端部に、再注型により外径、あるいは内径の異なる端部、あるいはプラグ部を形成することができる。あらかじめ注型された乾燥体と再注型するスラリー組成が異なってもよく、例えば再注型の際、金属を主成分とするスラリーを用いればセラミック表面や内部に金属パターンを形成することも出来る。更にその表面に再注型することで印刷パターンが内装された成形体を得ることもできる。
【符号の説明】
【0106】
1:粉体成形体(軸付きタービン)、2a:粉体成形体本体(軸付きタービン本体、タービン本体)、2b:粉体成形体残部(軸付きタービン残部)、2c:(軸付きタービン本体の)接合面、2d:(軸付きタービン残部、タービン残部)の接合面、2e:(翼型との)接地面、3a:先端軸、3b:翼部、5:先端軸用型(下シャフト型)、5a:スラリー注型孔、5b:固定ピン挿入孔、7:粉体成形体本体用上型(タービン本体用上型、タービン本体用上型)、7a:スラリー注型孔、7b:固定ピン挿入孔、9:翼型、9b:固定ピン挿入孔、11:粉体成形体残部用型(シャフト用型)、11a:スラリー注型孔、11b:固定ピン挿入孔、11cシャフト用型、13:固定ピン、15:下型、15a:固定ピン挿入孔、15b:先端軸用型(下シャフト型)挿入孔、15c:(下型の)スリット、15d:(上下型位置決め)ピン挿入孔、19:(上下型位置決め)ピン挿入孔、17:上下型位置決めピン、100:粉体成形体(軸付きタービン)、101:下シャフト型、103:下型、105:翼コマ(翼型)、107:上型、109:上シャフト型、A:粉体成形体本体用型、B:粉体成形体残部用型、R:スラリー注型口。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック及び/又は金属の粉体と、分散媒と、ゲル化剤とを含むスラリーを注型し、前記スラリーをゲル化させることにより固化して成形体を得る粉体成形体の製造方法であって、
前記粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、前記粉体成形体の一部或いは本体に、前記粉体成形体の残部を一体化させて成形乾燥し、前記粉体成形体を製造する粉体成形体の製造方法。
【請求項2】
前記スラリーを前記粉体成形体の一部或いは本体を成形するための本体用型に注型し硬化させながら乾燥させた後に、さらに、前記スラリーを前記粉体成形体の残部を成形するための残部用型に注型し硬化させながら乾燥させて、前記粉体成形体を製造する請求項1に記載の粉体成形体の製造方法。
【請求項3】
前記スラリーを注型する前記粉体成形体の型が、前記本体用型と前記残部用型とからなる分割型として少なくとも構成されている前記粉体成形体の型を使用して前記粉体成形体を製造する請求項1又は2に記載の粉体成形体の製造方法。
【請求項4】
前記本体用型と前記残部用型とは少なくも連通構造を備え、
前記粉体成形体の一部或いは本体の乾燥処理工程後に、前記本体用型から前記残部用型方向に露出形成された、前記粉体成形体の一部或いは本体の表面に対して、
さらに前記連通構造を介して前記残部用型から前記スラリーを充填して前記粉体成形体を製造する請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉体成形体の製造方法。
【請求項5】
前記粉体成形体が軸付きタービン用成形体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体成形体の製造方法。
【請求項6】
前記スラリーを、前記軸付きタービン本体を製造する本体用型に注型して、硬化させながら乾燥させる処理工程を経て、前記軸付きタービン本体用の粉体成形体を成形した後、さらに、前記スラリーを前記軸付きタービンの残部を成形する残部用型に注型して、硬化させながら乾燥させる処理工程を繰り返して製造する請求項5に記載の粉体成形体の製造方法。
【請求項7】
前記本体用型に翼型を取り付けた後に、前記スラリーを前記本体用型に注型し、硬化させながら乾燥させて、前記軸付きタービン本体用の粉体成形体を成形した後、前記残部用型を、前記翼型を介して前記本体用型に取り付け、さらに、前記スラリーを、残部用型に注型し、硬化させながら乾燥させて、前記残部を成形するとともに、前記軸付きタービン本体とその残部とを一体化して、前記軸付きタービン全体を製造する請求項5又は6に記載の粉体成形体の製造方法。
【請求項1】
セラミック及び/又は金属の粉体と、分散媒と、ゲル化剤とを含むスラリーを注型し、前記スラリーをゲル化させることにより固化して成形体を得る粉体成形体の製造方法であって、
前記粉体成形体の一部或いは本体を成形乾燥した後に、前記粉体成形体の一部或いは本体に、前記粉体成形体の残部を一体化させて成形乾燥し、前記粉体成形体を製造する粉体成形体の製造方法。
【請求項2】
前記スラリーを前記粉体成形体の一部或いは本体を成形するための本体用型に注型し硬化させながら乾燥させた後に、さらに、前記スラリーを前記粉体成形体の残部を成形するための残部用型に注型し硬化させながら乾燥させて、前記粉体成形体を製造する請求項1に記載の粉体成形体の製造方法。
【請求項3】
前記スラリーを注型する前記粉体成形体の型が、前記本体用型と前記残部用型とからなる分割型として少なくとも構成されている前記粉体成形体の型を使用して前記粉体成形体を製造する請求項1又は2に記載の粉体成形体の製造方法。
【請求項4】
前記本体用型と前記残部用型とは少なくも連通構造を備え、
前記粉体成形体の一部或いは本体の乾燥処理工程後に、前記本体用型から前記残部用型方向に露出形成された、前記粉体成形体の一部或いは本体の表面に対して、
さらに前記連通構造を介して前記残部用型から前記スラリーを充填して前記粉体成形体を製造する請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉体成形体の製造方法。
【請求項5】
前記粉体成形体が軸付きタービン用成形体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体成形体の製造方法。
【請求項6】
前記スラリーを、前記軸付きタービン本体を製造する本体用型に注型して、硬化させながら乾燥させる処理工程を経て、前記軸付きタービン本体用の粉体成形体を成形した後、さらに、前記スラリーを前記軸付きタービンの残部を成形する残部用型に注型して、硬化させながら乾燥させる処理工程を繰り返して製造する請求項5に記載の粉体成形体の製造方法。
【請求項7】
前記本体用型に翼型を取り付けた後に、前記スラリーを前記本体用型に注型し、硬化させながら乾燥させて、前記軸付きタービン本体用の粉体成形体を成形した後、前記残部用型を、前記翼型を介して前記本体用型に取り付け、さらに、前記スラリーを、残部用型に注型し、硬化させながら乾燥させて、前記残部を成形するとともに、前記軸付きタービン本体とその残部とを一体化して、前記軸付きタービン全体を製造する請求項5又は6に記載の粉体成形体の製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−241128(P2010−241128A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63501(P2010−63501)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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