説明

粉末エアゾール化粧料

【課題】 衣服内のムレを防ぐことのできる粉末エアゾール化粧料を提供する。
【解決手段】 20℃、100%RHにおける吸湿率が20%以上であり、かつ(20℃、100%RHにおける吸湿率)−(20℃、45%RHにおける吸湿率)で表される吸湿率の差が20%以上である多孔性球状粉体を含有することを特徴とする粉末エアゾール化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末エアゾール化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末エアゾール化粧料は、従来、例えば汗による身体のべたつきなどを抑制するために使用されている。
例えば、特許文献1には、平均粒径1〜100ミリミクロンの無機1次粒子を凝集させて得られる平均粒径1〜50ミクロンの球状2次粒子を含有する粉末エアゾール化粧料が記載されている。
【特許文献1】特公平3−72203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、汗をかくこと等により、衣服内にムレ(湿度)が生じると非常に不快である。
しかしながら、従来の粉末エアゾール化粧料は、汗をかく前または汗をかいた後に、皮膚の表面に噴射することによってさらさら感を付与するものであり、衣服内のムレを防ぐことを目的としたものではない。そして、ムレを防止する効果は不充分である。
【0004】
よって、本発明は、衣服内のムレを防ぐことのできる粉末エアゾール化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明においては以下の手段を提案する。
第1の発明は、20℃、100%RHにおける吸湿率が20%以上であり、かつ(20℃、100%RHにおける吸湿率)−(20℃、45%RHにおける吸湿率)で表される吸湿率の差が20%以上である多孔性球状粉体を含有することを特徴とする粉末エアゾール化粧料である。
第2の発明は、第1の発明の粉末エアゾール化粧料において、多孔性球状粉体の平均粒径が1〜50μm、比表面積が200m2/g以上である粉末エアゾール化粧料である。
第3の発明は、第1または第2の発明の粉末エアゾール化粧料において、さらに制汗成分を含有する粉末エアゾール化粧料である。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、衣服内のムレを防ぐことのできる粉末エアゾール化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の粉末エアゾール化粧料について詳細に説明する。
「多孔性球状粉体」
本発明の粉末エアゾール化粧料に含まれる多孔性球状粉体は、
(A)20℃、100%RHにおける吸湿率が20%以上であり、かつ
(B)(20℃、100%RHにおける吸湿率)−(20℃、45%RHにおける吸湿率)で表される吸湿率の差が20%以上である。
前記条件(A)において、20℃、100%RHにおける吸湿率が20%未満であると、吸湿しにくく、衣服内のムレ(べたつき)を非常に感じやすくなる。
前記条件(B)において、吸湿率の差が20%未満であると、例えば条件(A)を満足しており、吸湿したとしても、放湿しにくいため、べたつき感が残り、衣服内のムレが解消されにくくなる。
【0008】
前記条件(A)において、より好ましくは20℃、100%RHにおける吸湿率が30%以上であり、特に40%以上であることが望ましい。吸湿能力は高い方が好ましいので上限値を限定する意義はないが、実質的には100%以下とされる。
前記条件(B)において、より好ましくは吸湿率の差が30%以上、さらに好ましくは40%以上である。差が大きいほど好ましいので、上限値を規定する技術的意義は乏しいが、実質的には100%以下とされる。
【0009】
多孔性球状粉体(以下、単に「粉体」という場合がある)の吸湿率と吸湿率の差は、以下の様にして求めることができる。
【0010】
<20℃、100%RHにおける吸湿率>
(1)粉体1gを直径7cmのシャーレに入れ、真空乾燥機で70℃、24時間乾燥した後、粉体の質量を測定する。この値を「ブランク質量」とする。
(2)ついで、(1)で乾燥した粉体を、20℃、100%RHの恒温槽に24時間入れた後に、この粉体の質量を測定し、この値を「吸湿後質量」とする。
(3)「ブランク質量」と「吸湿後質量」の値を、下記計算式(I)に代入すると、20℃、100%RHにおける吸湿率が算出できる。
【0011】
吸湿率(%)=(吸湿後質量−ブランク質量)/ブランク質量 ×100 ・・・(I)
【0012】
<吸湿率の差>
(1)恒温槽の湿度を45%RHに変更する以外は、上記<20℃、100%RHにおける吸湿率>の測定方法と同様にして、「吸湿後質量」を測定し、「ブランク質量」とこの「吸湿後質量」の値を、上記計算式(I)に代入し、20℃、45%RHにおける吸湿率を算出する。
(2)そして、上記20℃、100%RHにおける吸湿率の値から、20℃、45%RHにおける吸湿率の値を差し引くことによって、吸湿率の差を算出することができる。
【0013】
よって、多孔性球状粉体について、上述の方法によって吸湿率と吸湿率の差を算出し、条件(A)、条件(B)を満足するものを選択して、粉末エアゾール化粧料に配合すると、本発明の粉末エアゾール化粧料が得られる。
なお本発明において「多孔性球状粉体」とは粉体の内部または表面に多数の大小さまざまな細孔をもつ球状の粉体のことを言う。
【0014】
また、本発明に用いる多孔性球状粉体は球状であるため、さらさら感が良好であり、好ましい。
また、多孔性球状粉体の比表面積は200m2/g以上であることが好ましい。好ましくは300m/g以上、より好ましくは400m/g以上である。上限値は実質的には 1500m/g以下とされる。200m2/g以上であると、充分な吸湿、放湿効果が得られ、本発明の効果が向上する。
粉体の比表面積は、吸着法−BET法、水銀圧入法、浸漬熱法、透過法などによって測定することができるが、窒素吸着によるBET法がもっとも一般的に使用されており、本願における比表面積もこの値を用いている。
【0015】
そして、多孔性球状粉体の平均粒径は1〜50μmであることが好ましい。より好ましくは3〜30μm、さらに好ましくは5〜20μmである。1μm以上とすることにより、皮膚上に塗布した際に伸びが良好となる。また、50μm以下とすることにより、噴霧時に刺激を感じたり、ザラザラした感触となることを防ぎ、使用感の点で好ましいものとすることができる。
また、粉末エアゾール化粧料は多孔性球状粉体を含むため、エアゾール缶に保存すると目詰まりを起こすことが懸念されるが、この範囲とすることにより、効果的に目詰まりを抑制できる。
粉体の平均粒径は、レーザー回折・散乱法、遠心沈降法、コールターカウンター法、画像処理法(フロー式粒子像分析)、電子顕微鏡写真法、篩い分け法などによって測定することができるが、本願でコールターカウンター法を用いた。
【0016】
また、多孔性球状粉体としては、特に1次粒子を凝集させて得られる球状の2次粒子を用いると、本発明の効果をより発揮させる点で好ましい。
このような2次粒子は、例えば平均粒径1〜1000nmの1次粒子を球形状に凝集させることによって簡単に得ることができる。
2次粒子を用いた場合に、特に顕著な効果を奏する理由は定かでないが、2次粒子は1次粒子と異なり、その内部に適当な空隙を有することから、該空隙を介して身体から発散する汗等が効率よく散逸するため、ムレ感の解消効果やさらさら感の向上効果が相剰的に増大するものと推定される。
【0017】
本発明で使用できる粉体の具体例としては、ケイ酸、無水ケイ酸、マグネシア・シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、アルミナ、ゼオライト、銀担持ゼオライト等の無機粉末、セルロース、麻、シルク等の有機粉末、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等のモノマーから誘導されるアクリル系ポリマー、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル、スチレン、α―メチルスチレン、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸、ε―カプロラクタム、シラン等のモノマーから誘導される、アクリル系ポリマー以外のホモポリマーやコポリマー等の高分子化合物粉体などが挙げられる。
中でも、無水ケイ酸、マグネシア・シリカ、アクリル系ポリマーが好ましく、特に、無水ケイ酸が好ましく、殊に無水ケイ酸の球状2次粒子が好適に使用される。
これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
多孔性球状粉体の配合量は、粉末エアゾール化粧料全量に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%とするのが好ましい。下限値以上とすることにより、吸湿、放湿効果が得られ、上限値以下とすることにより殊に使用感が良好となる。
【0019】
本発明の粉末エアゾール化粧料は、基本的には多孔性球状粉体と、液化噴射剤と、必要に応じてその他任意成分とを混合して得ることができる。
中でも、制汗成分を併用することが好適である。制汗成分との相乗効果により、衣服内で生じるムレ(湿度)を効果的に抑制し、さらに肌快適性を向上することができるためである。
【0020】
「制汗成分」
制汗成分としては、例えば、クロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、アルミニウムハイドロキシクロライド、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、フェノールスルホン酸アルミニウム、β−ナフトールジスルホン酸アルミニウム、過ホウ酸ナトリウム、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレート、ジルコニウムクロロハイドレート、硫酸アルミニウムカリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、塩基性臭化アルミニウム、アルミニウムナフタリンスルホン酸、塩基性ヨウ化アルミニウム、酸化亜鉛、クロルヒドロキシアルミニウムジルコニウム、塩基性乳酸アルミニウム亜鉛、オキシ塩化アルミニウム、硫酸亜鉛、フェノールスルホン酸などの収れん作用を有するもの、あるいはこれらを含有するグリコール複合体やアミノ酸複合体などが挙げられる。特にクロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛が好ましい。
【0021】
これらは、1種を単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
制汗成分の配合量は、粉末エアゾール化粧料全量に対し、20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは0.1〜5質量%とすることが、本発明の効果の向上の点から好ましい。
【0022】
また、液化噴射剤としては、例えば液化石油ガス、ジメチルエーテル、イソブタン、イソペンタン等が挙げられ、これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
その配合量は、粉末エアゾール化粧料全量に対し、通常40〜99.5質量%、好ましくは50〜99質量%、より好ましくは80〜95質量%とされる。
【0023】
また、本発明の粉末エアゾール化粧料には、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲において化粧料に用いられる他の成分の1種を単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
例えば、消臭成分、殺菌成分、抗菌剤、清涼化剤、包接化合物、粉末成分、水溶性成分、油溶性成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、低級アルコール、高級アルコール、多価アルコール、エステル油、シリコーン油、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、赤外線遮断剤、金属イオン封鎖剤、糖、糖アルコール、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、生薬、酸化防止剤、酸化防止助剤、抗炎症剤、香料、水等が挙げられ、これに限定されるものではない。
【0024】
この様に本発明においては衣服内のムレを防ぐことのできる粉末エアゾール化粧料を提供することができる。すなわち、かいた汗をすばやく吸収し、かつ吸収した汗を放湿することにより、衣服内で生じるムレ(湿度)を抑制し、肌の快適性を良好にすることができる。
また、本発明の粉末エアゾール化粧料は、皮膚への刺激が小さく、使用感が良好である。
さらに、粉末エアゾール化粧料を塗布した後のさらさら感も良好である。また、汗をおさえる効果や、ニオイをおさえる効果も良好である。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
(粉末エアゾール化粧料の製造)
表1、表2に示す材料(無水ケイ酸〜香料まで)を当該表に示す割合(質量%)で混合して、原液とし、これを噴射剤(液化石油ガス:LPG)と混合して、表1、2に示す容器に封入して粉末エアゾール化粧料を製造した。なお、表中、材料の割合は質量%で示されており、原液の材料の合計は100質量%である。「残部」とは原液100質量%中の残りの部分であることを示す。
また、用いた粉体の特性は、表1、2に、条件(A)の20℃、100%におけるRH吸湿率(「20℃、100%RH吸湿率」と表示)と条件(B)の(吸湿率の差)の値(「(20℃、100%RH吸湿率)−(20℃、45%RH吸湿率)」と表示)の値をそれぞれ記載した。また、表3に平均粒径、比表面積、形状をそれぞれ記載した。なお、粉体はタルク以外は全て2次粒子である。
【0027】
(評価)
得られた粉末エアゾール化粧料について、以下の項目について評価し、その結果をあわせて表1、2に示した。
<ムレ感抑制効果>
一般のパネリスト(n=20人)によって、各パネリストに以下の(1)、(2)の両方の動作を行ってもらい、以下の評価基準に従って官能評価した。
(1)粉末エアゾール化粧料未塗布の場合:
粉末エアゾール化粧料を未塗布の状態で、30℃、80%RH環境下で10分間歩行運動を行った後、20℃、45%RH環境下に移動し、10分間安静にする。そして、そのくり返しをもう1回行う。
(2)粉末エアゾール化粧料を塗布した場合:
事前に上半身全体に粉末エアゾール化粧料を塗布し、30℃、80%RH環境下で10分間歩行運動を行った後、20℃、45%RH環境下に移動し、10分間安静にする。そのくり返しをもう1回行う。なお、塗布方法は、調製した試料を肌から10cmはなして約2秒塗布する方法を採用する。
「評価基準」
◎:15〜20人が未塗布より塗布した方がムレ感抑制効果があると答えた。
○:10〜14人が未塗布より塗布した方がムレ感抑制効果があると答えた。
△:5〜9人が未塗布より塗布した方がムレ感抑制効果があると答えた。
×:4人以下が未塗布より塗布した方がムレ感抑制効果があると答えた。
【0028】
<さらさら感>
一般のパネリスト(n=20人)によって、30℃、80%RH環境下、20分間安静状態を保ち、体を環境に馴化させた後、同じ環境下において、粉末エアゾール化粧料を、上腕内側部に肌から10cm離れた距離から約2秒間(上腕内側部15cm幅を3往復)塗布し、さらさら感について、以下の基準に従って官能評価した。
なお、比較のために粉末エアゾール化粧料を塗布しないで同様の動作を行った。
「評価基準」
◎:15〜20人が未塗布より塗布した方がさらさら感を感じると答えた。
○:10〜14人が未塗布より塗布した方がさらさら感を感じると答えた。
△:5〜9人が未塗布より塗布した方がさらさら感を感じると答えた。
×:4人以下が未塗布より塗布した方がさらさら感を感じると答えた。
【0029】
<汗をおさえる効果感、ニオイをおさえる効果感>
一般のパネリスト(n=20人)によって、粉末エアゾール化粧料の使用箇所を腋の下に変更した以外は、上述の「さらさら感」の評価のときと同様にして、各パネリストに粉末エアゾール化粧料を使用してもらった。そして、その1時間後の汗をおさえる効果感と、ニオイをおさえる効果感について、以下の基準に従って官能評価した。
なお、比較のために粉末エアゾール化粧料を塗布しないで同様の動作を行った。
「評価基準」
◎:15〜20人が未塗布より塗布した方が効果を感じると答えた。
○:10〜14人が未塗布より塗布した方が効果を感じると答えた。
△:5〜9人が未塗布より塗布した方が効果を感じると答えた。
×:4人以下が未塗布より塗布した方が効果を感じると答えた。
【0030】
<目詰まりのなさ>
エアゾール缶に充填した粉末エアゾール化粧料(各20本)を、45℃倒立状態で1ヶ月保存した。保存後に噴射した時の目詰まりのなさについて、以下の基準に従って評価した。
「評価基準」
○:20本中1本も目詰まりがなかった。
△:20本中1〜5本目詰まりがあった。
×:20本中6本以上目詰まりがあった。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
表1、2の結果より、本発明に係る実施例では、いずれの評価も良好であることが確認できた。
【0035】
なお、表4、5に示す処方で、上記実施例と同様にして粉末エアゾール化粧料を製造した。粉体(全て2次粒子)の特性については表6に示した。
【0036】
【表4】

【0037】
【表5】

【0038】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃、100%RHにおける吸湿率が20%以上であり、かつ(20℃、100%RHにおける吸湿率)−(20℃、45%RHにおける吸湿率)で表される吸湿率の差が20%以上である多孔性球状粉体を含有することを特徴とする粉末エアゾール化粧料。
【請求項2】
請求項1に記載の粉末エアゾール化粧料において、多孔性球状粉体の平均粒径が1〜50μm、比表面積が200m2/g以上である粉末エアゾール化粧料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粉末エアゾール化粧料において、さらに制汗成分を含有する粉末エアゾール化粧料。


【公開番号】特開2006−143602(P2006−143602A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331660(P2004−331660)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】