説明

粉末加熱装置

【課題】 粉末の詰まりを低減する粉末加熱装置を提供する。
【解決手段】 粉末供給装置1、分散器2、直流プラズマ発生装置のトーチ4及び、分散器2からの配管T2に繋がる孔22が設けられた第1柱状部21Aと、この孔に繋がる開口部の径がこの孔の径より大きく、徐々にその径が小さくなる分岐孔25b,25cが設けられた第2の柱状部21Bと、各分岐孔に繋がる開口部の径が各分岐孔の径より大きい孔26a,26bが設けられた第3柱状部21Cから成るマニフォールド体の本体21を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末供給器からの粉末をプラズマ発生装置に送り、ここで加熱する様にした粉末加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス等の微粉末をプラズマ中に供給し、プラズマにより加熱されて蒸気化した粉末をチャンバー中に配置された基板上に膜状に付着する成膜装置が知られている。
図1は、その様な成膜装置の1概略例を示したものである。
【0003】
図中1は攪拌した粉末を供給する粉末供給器で、その具体的構造は、例えば、特開平5−186864号公報の図2に示されている。
【0004】
2は該粉末供給器から配管T1を通じて送られて来る粉末の内、凝集した微粉末を分散させて一次粒子(元の微粉末)に戻すための分散器で、その具体的構造は、例えば、特開平5−186864号公報の図2及び図5に示されている。
【0005】
3は前記分散器2から配管T2を通して送られてくる微粉末を、直流プラズマ発生装置のトーチ4内に供給するマニフォールド体である。
【0006】
該マニフォールド体は、図2(図2の(b)は図2の(a)のA−A断面図である)に示す様に、円柱状の本体部5の同一水平面上にある側面四ヵ所から中心に向かって4つの孔6a,6b,6c,6d(6dは図示せず)が開けられている。各々の孔には、円筒状の支持ネジ7a,7b,7c,7d(7dは図示せず)がねじ込まれており、各ネジにはその中心に沿って支持管8a,8b,8c,8d(8dは図示せず)が嵌め込まれている。
【0007】
前記分散器2からの配管T2は支持管8aに繋がり、3つに分岐した孔 6b,6c,6d(6dは図示せず)に繋がっている支持管8b,8c,8d(8dは図示せず)各々は、配管Tb,Tc,Td(Tdは図示せず)を介して直流プラズマ発生装置のトーチ4のフランジ9に開けられた孔10b,10c,10d(10dは図示せず)に繋がっている。
【0008】
このフランジには外に、プラズマガス供給用の孔(図示せず)も開けられている。
【0009】
直流プラズマ発生装置のトーチ4の具体的構造は、例えば、特開2004−247177号公報の図3等に示されており、ここではごく概略のみ説明する。
【0010】
フランジ9の下面には、中心の陰極棒11を、絶縁体筒12を介して中空状の陽極筒13が取り囲む構造の筒状体が、前記各フランジの孔が陽極筒13の中空部SP1と相通じる様に取り付けられている。尚、図示しないが、トーチ4の外部には前記陽極筒13と陰極棒11との間には直流電力を供給するための直流電源が設けられている。
【0011】
この様な構造の直流プラズマ発生装置のトーチ4の下部には高周波誘導プラズマ発生装置のトーチ14が設けられている。高周波誘導プラズマ発生装置のトーチ14の具体的構造は、例えば、特開2004−247177号公報の図3等に示されており、ここではごく概略のみ説明する。
【0012】
このトーチ14は、その周囲にRFコイル15が巻かれており、高周波電源16からこのコイルに高周波電力を供給することにより、内部にプラズマを発生するものである。尚、図示しないが、トーチ14の下方には高周波誘導プラズマにて加熱蒸発した蒸発粒子が付着される基板(図示せず)が設けられている。
【0013】
この様な構成の装置において、粉末供給器1で攪拌された粉末はキャリアガスと共に配管T1に排出され、該配管を通じて分散器2に流入され、ここで微粉末化される。
【0014】
この様な微粉末は配管T2及びマニフォールド体3の支持管8aを通じて孔6a内に入る。そして、該微粉末は、分岐孔6b,6c,6d(6dは図示せず)に分散されて入って行き、支持管8b,8c,8d(8dは図示せず)及び配管Tb,Tc,Td(Tdは図示せず)を通じて直流プラズマ発生装置のトーチ4のフランジ孔10b,10c,10d(10dは図示せず)に送られる。
【0015】
該フランジ9の各孔を通過した微粉末は、陽極筒13の中空部SP1を通じてプラズマ発生空間SP2に送られる。該空間部SP2には、プラズマガスが供給されており、陽極筒13と陰極棒11との間に直流電源(図示せず)から直流電力が供給されることにより直流プラズマが発生している。従って、プラズマ発生空間SP2に送られてきた微粉末は直流プラズマ中で予備的な加熱を受け、高周波誘導プラズマ発生装置のトーチ14に供給される。
【0016】
該トーチ内には、高周波電源16からRFコイル15に高周波電力が供給されることにより高周波誘導プラズマが発生しており、このプラズマ中に投入された微粉末はプラズマにより加熱されて蒸発し、下方に配置された基板(図示せず)上に、均一な膜が形成される。
【0017】
【特許文献1】特開平05−186864号公報
【特許文献2】特開2004−247177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
さて、上記した様に、分散器2と直流プラズマ発生装置のトーチ4との間には、図2に示す如き構造のマニフォールド体が設けられており、次の様な問題を抱えている。
【0019】
マニフォールド体の本体部5には、分散器2から送られてくる粉末を通すための孔6aと、該粉末を分散して直流プラズマ発生装置のトーチ4に送るための孔6b,6c,6d(6dは図示せず)が本体部5中心部の1点で交差する様に且つ全ての孔が同一径になる様に開けられているが、各孔での境界部で、加工精度に基づくずれ、即ち、段差が発生し、この部分において粉末の詰まりが発生する。
【0020】
又、マニフォールド体の本体部5には各支持ネジ7a,7b,7c,7d(7dは図示せず)がねじ込まれて固定されており、該各支持ネジ内には支持管8a,8b,8c,8d(8dは図示せず)が挿入されており、各孔の交差部分が見える状態に出来ないので、粉末の詰まりを取り除く為のクリーニングが出来ない。
【0021】
更に、粉末を分散して直流プラズマ発生装置のトーチ4に送るための孔6b,6c,6d(6dは図示せず)は交差部分から放射状に形成されているので、該各孔と、直流プラズマ発生装置のトーチ4のフランジ9に開けられた各孔10b,10c,10d(10dは図示せず)の接続は熱に弱い軟質材料で作製された配管を使用せざるを得ない。しかし、前記粉末供給器1からトーチ4に供給される粉末はキャリアガスで導く様にしており、粉末は可成りの高温に達する。従って、軟性材料で作製された配管は熱により変形し、該変形部分で粉末が滞ってしまう。
【0022】
本発明は、この様な問題点を解決する新規な粉末加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の粉末加熱装置は、粉末供給手段、プラズマ発生空間に粉末を供給するための孔を複数有するトーチを有するプラズマ発生装置、及び、前記粉末供給手段から配管を通じて送られてくる孔と、該孔と通じ、該孔からの粉末を、前記トーチの複数の孔に配管を通じて送るための複数の孔を有するマニフォールド体を備えた粉末加熱装置において、前記マニフォールド体は、前記粉末供給手段からの配管に繋がる孔が設けられた第1柱状部と、該孔に繋がる開口部の径が該孔の径より大きく、徐々にその径が小さくなる孔が少なくとも2つ分岐して設けられた第2の柱状部と、該分岐孔各々に繋がる開口部の径が該分岐孔の径より大きく、前記トーチの複数の孔に配管を介して繋がる孔が設けられた第3柱状部から成るとを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、次の効果が発生する。
【0025】
第1柱状部の孔に繋がる第2柱状部の各分岐孔の開口部の径が前記第1柱状部の孔の径より大きく、該分岐孔各々に繋がる第3柱状体の孔の開口部の径が該各分岐孔の径より大きいので、粉末供給手段から第1柱状部の孔、第2柱状部の分岐孔及び第3柱状部の各孔を通じてプラズマ発生装置のトーチの各孔に送っても、各孔での境界部で粉末の詰まりが発生することは無い。
【0026】
又、マニフォールド体の本体部は、3つの柱状体がネジ等により一体化されているので、ネジを外すことにより、各柱状体に分解出来、しかも、第2柱状体に設けられた分岐孔は、一方の表面を分岐孔の起点として一定の角度で2つ以上に分岐されているので、粉末の詰まりを取り除く為のクリーニングが容易に出来る。
【0027】
更に、粉末を分岐してプラズマ発生装置のトーチの各孔に送るための第3柱状体の各孔は、マニフォールド体の中心軸に平行に形成されるので、第3柱状体の各孔の位置が、トーチの各孔位置に一致する様に前記分岐孔及び第3柱状体の各孔を形成しておけば、第3柱状体の各孔とトーチの各孔を、熱に強い硬質性の配管(例えば、金属製の配管)で繋ぐことが出来る。従って、配管が変形して粉末が滞ってしまうことはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0029】
図3は本発明の主要部を成すマニフォールド体の一概略を示す。尚、図中、前記図2にて使用した記号と同一記号の付されたものは同一構成要素を示す。
【0030】
図中11はマニフォールド体の本体で、大雑把には共に円柱状の3つの部分21A,21B,21Cから成り、第1の円柱状部21Aはボルト20a,20bで、第3の円柱状部21Cはボルト21a,21bで、共に、第2円柱状部21Bに取り付けられている。
【0031】
第1の円柱状部21Aには、その中心軸に沿って孔22が開けられており、該孔の径以上の内径を有する円筒状の支持ネジ23が該孔と同心軸上にねじ込まれている。又、該ネジにはその中心に沿って支持管24が嵌め込まれている
第2の円柱状部21Bには、その上面(前記第1の円柱状部21Aの下面と接する面)の中心(前記第1の円柱状部21Aに開けられた孔22の開口の中心に対応)から3方に分岐する孔25b,25c,25d(25dは図示せず)が開けられている。これらの孔は、何れも断面は円形であり、第2円柱状部21Bの上面と下面とにおいては楕円形となるが、各楕円の短径が前記第1の円柱状部21Aに開けられた孔径より大きく形成されている。又、何れの分岐孔も、下面に近づくに従って径が小さくなる、いわゆるテーパー状に形成されている。
【0032】
第3の円柱状部21Cには、各中心軸が、前記各分岐孔25b,25c,25d(25dは図示せず)の各中心軸とそれぞれ一致する孔26b,26c,26d(26dは図示せず)が、マニフォールド体の本体21の中心軸に平行になる様に開けられている。尚、これらの孔の径は、第2円柱状部下面での前記各分岐孔の短径より大きな孔径に形成されている。
【0033】
又、該各孔の径以上の内径を有する円筒状の支持ネジ27b,27c,27d(27dは図示せず)が該各孔と同心軸上にねじ込まれている。又、該各ネジにはその中心に沿って支持管28b,28c,28d(28dは図示せず)が嵌め込まれている。
【0034】
尚、第3円柱状部21Cに開けられる孔26b,26c,26d(26dは図示せず)は、該各孔26a,26b,26c(26cは図示せず)の中心軸が、直流プラズマ発生装置のトーチ4のフランジ9に開けられた孔10b,10c,10d(10dは図示せず)の中心軸一致する様に形成されている。
【0035】
前記第1円柱状部21Aに設けられた支持管24には、分散器2からの供給管T2が繋がり、前記第3円柱状部21Cに設けられた支持管28b,28c,28d(28dは図示せず)各々には、例えば、熱に強い金属製の配管Tb´,Tc´,Td´(Td´は図示せず)を介して直流プラズマ発生装置のトーチ4のフランジ9に開けられた孔10b,10c,10d(10dは図示せず)に繋がっている。
【0036】
この様な構成のマニフォールド体を、例えば、図1に示す如き成膜装置の分散器11と直流プラズマ発生装置の間に設けた場合についてその動作を以下に説明する。
【0037】
粉末供給器1で攪拌された粉末はキャリアガスと共に配管T1に排出され、該配管を通じて分散器2に流入され、ここで微粉末化される。
【0038】
この様な微粉末は配管T2及びマニフォールド体の第1円柱状部21Aの支持管24を通じて孔22内に入る。そして、該微粉末は、第2円柱状部21Bの分岐孔25b,25c,25d(25dは図示せず)に分散されて入って行き、第3円柱状部21Bの孔26b,26c,26d(26dは図示せず)及び支持管28b,28c,28d(28dは図示せず)及び配管Tb´,Tc´,Td´(Td´は図示せず)を通じて直流プラズマ発生装置のトーチ4のフランジ孔10b,10c,10d(10dは図示せず)に送られる。
【0039】
該フランジ9の各孔を通過した微粉末は、陽極筒13の中空部SP1を通じてプラズマ発生空間SP2に送られる。該空間部SP2には、プラズマガスが供給されており、陽極筒13と陰極棒11との間に直流電源(図示せず)から直流電力が供給されることにより直流プラズマが発生している。従って、プラズマ発生空間SP2に送られてきた微粉末は直流プラズマ中で予備的な加熱を受け、高周波誘導プラズマ発生装置のトーチ14に供給される。
【0040】
該トーチ内には、高周波電源16からRFコイル15に高周波電力が供給されることにより高周波誘導プラズマが発生しており、このプラズマ中に投入された微粉末はプラズマにより加熱されて蒸発し、下方に配置された基板(図示せず)上に、均一な膜が形成される。
【0041】
粉末が通るマニフォールド体の本体21の各円柱状部21A,21B,21Cの各々に設けられている各孔をクリーニングする場合には、ボルト20a,20bを外して第2円柱状部21Bから第2円柱状部21Aを取り外し、ボルト21a,21bを外して第2円柱状部21Bから第3円柱状部21Cを取り外して行う。
尚、本発明は前記例に限定されないことは言うまでもない。例えば、前記例では、分岐孔を3つ用いたものを示したが、2つでも、4つでも、それ以上であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来の成膜装置の1概略例をしたものである。
【図2】従来のマニフォールド体の1概略例をしたものである。
【図3】本発明の主要部を成すマニフォールド体の一概略を示す。
【符号の説明】
【0043】
1…粉末供給器
2…分散器
3…マニフォールド体
4…直流プラズマ発生装置のトーチ
5…マニフォールド体の本体
6a,6b,6c…孔
7a,7b,7c…支持ネジ
8a,8b,8c…支持管
9…フランジ
10b,10c…孔
11…陰極棒
12…絶縁体筒
13…陽極筒
14…高周波誘導プラズマ発生装置のトーチ
15…RFコイル
16…高周波電源
T1,T2,Tb,Tc…配管
SP1…陽極筒の中空部
SP2…プラズマ発生空間
21…マニフォールド体の本体
21A…第1円柱状部
21B…第2円柱状部
21C…第3円柱状部
22…孔
23…支持ネジ
24…支持管
25b,25c…孔
26b,26c…孔
27b,27c…支持ネジ
28b,28c…支持管
Tb´,Tc´…配管
30a,30b,31a,31b…ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末供給手段、プラズマ発生空間に粉末を供給するための孔を複数有するトーチを有するプラズマ発生装置、及び、前記粉末供給手段から配管を通じて送られてくる孔と、該孔と通じ、該孔からの粉末を、前記トーチの複数の孔に配管を通じて送るための複数の孔を有するマニフォールド体を備えた粉末加熱装置において、前記マニフォールド体は、前記粉末供給手段からの配管に繋がる孔が設けられた第1柱状部と、該孔に繋がる開口部の径が該孔の径より大きく、徐々にその径が小さくなる孔が少なくとも2つ分岐して設けられた第2の柱状部と、該分岐孔各々に繋がる開口部の径が該分岐孔の径より大きく、前記トーチの複数の孔に配管を介して繋がる孔が設けられた第3柱状部から成る粉末加熱装置。
粉末加熱装置。
【請求項2】
前記プラズマ発生装置は、直流プラズマ発生装置である請求項1記載の粉末加熱装置。
【請求項3】
前記各分岐孔は第1柱状体に接する面を起点として一定の角度で分岐し、各分岐孔と繋がる第3柱状体の各孔は、マニフォールド体の中心軸に平行に設けられている請求項1記載の粉末加熱装置。
【請求項4】
前記各柱状体は円柱状である請求項1記載の粉末加熱装置。
【請求項5】
前記直流プラズマ発生装置のトーチが高周波誘導プラズマ装置のトーチに繋がっている請求項2記載の粉末加熱装置。
【請求項6】
前記第3柱状体の各孔と前記トーチの複数の孔とを繋ぐ配管は直線状の金属製管から成る請求項1記載の粉末加熱装置。
【請求項7】
前記各柱状は互いにねじ止めで一体化されている請求項1記載の粉末加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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