説明

粉末焼結積層造形装置及び粉末焼結積層造形方法

【課題】一走査における粉末材料薄層の焼結領域の形状が一様になるように粉末材料薄層を焼結すること。
【解決手段】粉末材料の薄層にレーザ光を照射し、ミラー制御によりX方向及びY方向に走査して、粉末材料の薄層を焼結させ、焼結した薄層を順次積層して3次元造形物を作製する粉末焼結積層造形方法であって、制御装置がミラーの動作開始の信号を出力した後、所定時間後にレーザ光源を点灯し、ミラーの動作停止の信号を出力した後、所定時間後にレーザ光源を消灯することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末焼結積層造形装置及び粉末焼結積層造形方法に関し、より詳しくは、粉末材料の薄層にレーザ光を照射し、X方向及びY方向に走査して、前記粉末材料の薄層を焼結させ、該焼結した薄層を順次積層して3次元造形物を作製する粉末焼結積層造形装置及び粉末焼結積層造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能試験用試作部品や少量多品種の製品に使用される部品等を造形することができる造形装置への要望が増えてきつつある。
【0003】
この要求を満たすものとして、光造形装置や粉末焼結積層造形装置などがある。なかでも、粉末焼結積層造形装置は、紫外線硬化性樹脂を使用した光造形装置と異なり、多種類かつ強靭な材料が使用できることが大きな特徴の一つであり、市場での認知度も向上し、さまざまな用途で使用されはじめている。
【0004】
従来市販されている粉末焼結積層造形装置は、レーザ光出射部と、造形部と、制御部とから構成されている。
【0005】
レーザ光出射部においては、レーザ光源と、レーザ光源から出射したレーザ光をX方向及びY方向に走査するガルバノメータミラーと、ガルバノメータミラーの動作を制御するドライバとが設けられている。
【0006】
造形部においては、中央部に設置された造形用容器と、その両側に設置された粉末材料容器とを備えている。造形用容器では、パートテーブル上に形成した粉末材料の薄層をレーザ光の照射により焼結させて焼結薄層が形成され、パートテーブルを下方に移動させて焼結薄層が順次積層され、3次元造形物が作製される。造形用容器の上部開口面を造形領域と称する。粉末材料容器では、フィードテーブル上に粉末材料が収納され、フィードテーブルが上方に移動して粉末材料が供給される。粉末材料容器の上部開口面を粉末材料収納領域と称する。
【0007】
また、粉末材料容器及び造形用容器はヒータを有し、そのヒータで粉末材料を予備加熱して温度を予めその融点近くまで上昇させておき、レーザ照射により粉末材料の薄層の温度を素早く上昇させて溶融し、焼結させて、均一な粉末材料の焼結薄層を得ることができるようになっている。
【0008】
図8(a)に、レーザ光の一走査における焼結領域を示し、図8(b)に、複数の走査を行って形成した焼結薄層を示す。なお、レーザビームはスポット内で正規分布類似の強度分布を有し、中心部のエネルギーが高く、周辺部に行くに従って次第に弱くなるため、複数の走査を行う場合、レーザ照射量を均一するためビーム径の1/3程度重ね書きしている。
【0009】
制御部は、パートテーブルを薄層一層分降下させ、左側の粉末材料容器からリコータによって粉末材料を運び出させ、パートテーブル上に粉末材料を供給させて粉末材料の薄層を形成させる。次いで、レーザ光源を照射し、かつ作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき、ガルバノメータミラーによりX方向及びY方向にレーザ光を走査することにより、粉末材料の薄層を選択的に加熱して溶融・焼結させ、焼結薄層を形成させる。次に、パートテーブルを薄層一層分降下させ、右側の粉末材料容器からリコータによって粉末材料を運び出させ、パートテーブル上の焼結薄層の上に粉末材料を供給させて粉末材料の薄層を形成する。次に、粉末材料の薄層を選択的に加熱して焼結させ、焼結薄層を形成させる。これらの動作を繰り返させて焼結薄層を積層し、3次元造形物を形成させる。最後に、3次元造形物を冷却させる。
【特許文献1】特許第2620353号
【非特許文献1】積層造形技術資料集 オプトロニクス社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、粉末材料の薄層を選択的に加熱して焼結させる際に、レーザ光の移動距離(焼結領域の長さ)を入力する。これにより、制御部から図8(a)に示すようなミラーの速度制御信号がドライバに供給され、かつ図8(c)に示すように、レーザ光源のON/OFF制御信号が供給されて、一走査における焼結領域の長さが入力値にほぼ等しくなるように制御される。
【0011】
この場合、ミラーの実動作は、ドライバ回路による信号遅延やモータによる機械的な動作遅延により、図8(b)に示すようになる。したがって、レーザ光の移動距離、すなわち焼結領域の長さは、ミラーの速度制御信号のオン期間に相当する距離とミラーの動作の停止遅延期間に相当する距離とで決まる。なお、図8(c)に示すレーザオフディレイ時間をタイマにより予め設定することでレーザオフディレイ時間をミラーの停止遅延期間と一致させることができる。したがって、ミラーの速度制御信号のオン期間とミラーの実動作の停止遅延期間とを合わせた期間だけ、レーザ光源のON/OFF制御信号をオンさせることになる。これにより得られる焼結領域を図8(d)に示す。また、この方法を、特に、短い領域を焼結させるような場合に適用した例を図10(a)〜(d)に示す。
【0012】
なお、図8(a)、(b)に示すように、ミラーは速度制御信号がオンして一定の期間は停止したままであるため、タイマによりレーザ光源の照射をレーザオンディレイ時間だけ遅らせることが多い。このような方法を、特に、短い領域を焼結させるような場合に適用したときの実際のミラーの速度とレーザ光源のON/OFF制御信号のタイミングチャート、及び得られる焼結領域について図11(a)に示す。この場合、ミラーが定速で移動するようになる前にミラーの速度制御信号がオフされるとする。その結果、停止遅延期間でのミラーの速度の立ち下がりの様子は、ミラーが定速で移動するようになった後にミラーの速度制御信号がオフされるような図8の場合と比較して変化する。さらに、このようにミラーが定速で移動するようになる前にミラーの速度制御信号がオフされるようになってくると、図11(a)、(b)に示すように、焼結する距離によって立上り遅延期間でのミラーの速度の立ち上がりの様子や停止遅延期間でのミラーの速度の立ち下がりの様子が変動することになる。このように、焼結する距離によって立上り遅延期間や停止遅延期間におけるミラーの動きが変動してくると、レーザオンディレイ時間やレーザオフディレイ時間が一定であっても、形状及び焼結領域の長さを制御できなくなってしまう。このため、図11(b)に示すように、焼結領域の形状や長さの変化は顕著になり、3次元造形物の精度が悪化してしまう。
【0013】
また、図11(a)に示す焼結距離と同じ長さを焼結する場合でも、立上り遅延期間でのミラーの速度の立ち上がりの様子や停止遅延期間でのミラーの速度の立ち下がりの様子が変動すると、やはり、形状及び焼結領域の長さを制御できなくなってしまう。このため、3次元造形物の精度が悪化してしまう。
【0014】
本発明は、上記の従来例の問題点に鑑みて創作されたものであり、粉末材料薄層を焼結すべき領域が短くても、一走査における焼結領域の形状が一様になり、かつ焼結領域の長さを精度良く制御することができる粉末焼結積層造形装置及びその粉末焼結積層造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は、粉末焼結積層造形装置に係り、レーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光をX方向及びY方向に走査するミラーと、前記レーザ光源の点灯及び消灯を制御し、かつ前記ミラーの動作を制御する制御装置とを有し、粉末材料の薄層に前記レーザ光を照射し、前記X方向及びY方向に走査して、前記粉末材料の薄層を焼結させ、該焼結した薄層を順次積層して3次元造形物を作製する粉末焼結積層造形装置であって、前記制御装置が前記ミラーの動作開始の信号を出力した後、前記ミラーの動作速度が一定になるときに前記レーザ光源を点灯させ、前記制御装置が前記ミラーの動作停止の信号を出力すると同時に、或いは、前記制御装置が前記ミラーの動作停止の信号を出力した後、前記ミラーの動作速度が前記一定速度から低下する前に前記レーザ光源を消灯させることを特徴としている。
【0016】
すなわち、ミラーは、ミラーの動作開始の信号に対して立上り遅延時間の後一定の速度で動作し、ミラーの動作停止の信号に対して停止遅延時間後に停止するように動作し、制御装置にレーザ光の移動距離を入力する際に、焼結すべき領域の長さにミラーの動作の立上り遅延時間に相当する距離とミラーの動作の停止遅延時間に相当する距離とを加えて入力し、かつ、焼結すべき領域の長さに相当する期間だけ、レーザ光源を点灯させておくようにレーザオンディレイ時間をセットする。
【0017】
或いは、ミラーは、ミラーの動作開始の信号に対して立上り遅延時間の経過後一定の速度で動作し、ミラーの動作停止の信号に対して一定の速度で動作した後減速し始め、減速時間の経過後に停止するように動作し、レーザ光の移動距離として、焼結すべき領域の長さにミラーの動作の立上り遅延時間に相当する距離と前記ミラーの動作の減速時間に相当する距離とを加えた距離を入力し、かつ、焼結すべき領域の長さに相当する期間に加えて、その期間に続く、ミラーの動作停止の信号を出力した後ミラーの動作速度が一定速度から低下する前の任意の期間だけ、レーザ光源を点灯させておくようにレーザオンディレイ時間及びレーザオフディレイ時間をセットする。
【0018】
本発明は、粉末焼結積層造形方法に係り、上記粉末焼結積層造形装置を用いて、粉末材料の薄層にレーザ光を照射し、X方向及びY方向に走査して、前記粉末材料の薄層を焼結させ、該焼結した薄層を順次積層して3次元造形物を作成する粉末焼結積層造形方法であって、前記ミラーの動作開始の信号を出力した後、前記ミラーの動作速度が一定になるときに前記レーザ光源を点灯させ、前記制御装置が前記ミラーの動作停止の信号を出力すると同時に、或いは、前記ミラーの動作停止の信号を出力した後、前記ミラーの動作速度が前記一定速度から低下する前に前記レーザ光源を消灯させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の粉末焼結積層造形装置によれば、一走査において単位長当たりに粉末材料の薄層に供給されるレーザ光の照射エネルギーはどこでも一定になる。このため、特に焼結領域が短い場合でも、一走査における焼結領域について、始点及び終点付近も含めて幅が一定となるとともに、焼結領域の長さを精度よく制御しやすくなる。これにより、特に肉厚の薄い3次元造形物を作製する場合に、精度のよい3次元造形物を作製することができる。
【0020】
また、本発明の粉末焼結積層造形方法によれば、一走査において単位長当たりに粉末材料薄層に供給されるレーザ光の照射のエネルギーはどこでも一定になるため、特に焼結領域が短い場合でも、一走査における粉末材料薄層の焼結領域の形状は一様になるとともに、焼結領域の長さを精度よく制御しやすくなる。これにより、特に肉厚の薄い3次元造形物を作製する場合に、精度のよい3次元造形物を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
(粉末焼結積層造形装置の説明)
本発明の実施の形態に係る粉末焼結積層造形装置は、レーザ光出射部と、造形部と、制御部とから構成されている。
【0023】
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る粉末焼結積層造形装置のうち造形部101の構成を示す上面図である。図1(b)は、同じく図1(a)のI−I線に沿う断面図で、同図には、造形部101のほかに、その上方に配置されているレーザ光出射部102も示している。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態に係るレーザ光出射部102の詳細な構成を示す図である。
【0025】
以下に、発明の実施の形態に係る粉末焼結積層造形装置において各部の詳細について説明する。
【0026】
(a)レーザ光出射部102の構成
まず、レーザ光出射部102の構成について説明する。
【0027】
レーザ光出射部102は、図2に示すように、CO2レーザで構成されるレーザ光源23と、レーザ光をX方向に走査するガルバノメータミラー、及びレーザ光をY方向に走査するガルバノメータミラーを備えた光学系21と、XY方向に走査されるレーザ光の動きに従って移動して、レーザ光の焦点距離を粉末材料の薄層表面に合わせるレンズを備えた光学系22と、その光学系21の各ガルバノメータミラーを動作させ、かつ光学系22のレンズを動作させる電気信号を送出するXYZドライバ24とを有している。光学系21の各ガルバノメータミラー及び光学系22のレンズはそれぞれ専用のモータにより動作するようになっている。
【0028】
XYZドライバ24はコントローラ25により制御され、かつレーザ光源23のON(点灯)及びOFF(消灯)も、同様にコントローラ25により制御される。コントローラ25として、例えばCPU(Central Processing Unit)及び制御用のプログラムが格納されたメモリを備えたコンピュータを用いることができる。コントローラ25については以下の制御部の項で詳しい構成及び機能につき説明する。
【0029】
レーザ光源23から出射したレーザ光はコントローラ25によるミラー制御によりXY方向に走査されて、造形部101のパートテーブル11上に形成された粉末材料薄層15aに選択的に照射されるようになっている。さらに、レーザ光がXY方向に走査されている間、レーザ光が粉末材料の薄膜の丁度表面で焦点を結ぶように、絶えず光学系22のレンズが動いて焦点距離が調整されるようになっている。ミラー制御は作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき行われる。
【0030】
(b)造形部101の構成
次に、造形部101の構成について説明する。
【0031】
造形部101においては、図1(a)、(b)に示すように、3次元造形物が作製される四角い筒状の造形用容器11と、その両側に設置された四角い筒状の第1及び第2の粉末材料容器12a、12bとを備えている。
【0032】
造形用容器11では、パートテーブル(底板)13上で、粉末材料の薄層15aが形成され、粉末材料の薄層15aをレーザ光の照射により焼結させて焼結薄層15bが形成される。そして、パートテーブル13を下方に移動させて焼結薄層15bを順次積層し、3次元造形物が作製される。
【0033】
第1及び第2の粉末材料容器12a、12bでは、フィードテーブル(底板)14a又は14b上に粉末材料15が収納され、フィードテーブル(底板)14a、14bを上方に移動させて粉末材料15が供給され、かつフィードテーブル14a、14bを下方に移動させて粉末材料の薄層15aを形成した後の残余の粉末材料15が運び入れられる。
【0034】
造形用容器11の内壁に囲まれた上部開口面を造形領域と称し、第1及び第2の粉末材料容器12a、12bの内壁に囲まれた上部開口面を第1及び第2の粉末材料収納領域と称する。
【0035】
造形用容器11内には、内壁に沿って昇降可能なパートテーブル13が設置されている。パートテーブル13上で、順次粉末材料の薄層15aが形成され、粉末材料の薄層15aごとに加熱され、焼結される。また、第1及び第2の粉末材料容器12a、12b内には、容器12a、12b内壁に沿って昇降し、粉末材料15を供給する第1及び第2のフィードテーブル14a、14bがそれぞれ設置されている。
【0036】
パートテーブル13、第1及び第2のフィードテーブル14a、14bには、これらのテーブルを上下移動させる図示しない駆動装置が接続されている。
【0037】
更に、図1(b)に示すように、第1の粉末材料収納領域、造形領域、第2の粉末材料収納領域の全領域に渡って領域表面に沿って移動するリコータ(粉末材料運搬手段)16が設けられている。
【0038】
リコータ16は、粉末材料容器14a又は14b表面に沿い、かつ粉末材料容器14a又は14b表面に接触して移動することにより、第1又は第2のフィードテーブル14a又は14b上に収納された粉末材料15を運び出してパートテーブル13上に供給し、かつ粉末材料15の表面を均してパートテーブル13上に粉末材料の薄層15aを形成する。さらに、粉末材料の薄層15aを形成した後の残余の粉末材料15を、第2又は第1の粉末材料容器12b又は12a内に表面を均しながら運び入れる。粉末材料15の供給量は第1又は第2のフィードテーブル14a又は14bの上昇量で決まり、粉末材料の薄層15aの厚さはパートテーブル13の降下量で決まる。
【0039】
粉末材料15として、ナイロン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマ(ABS)、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)、及びポリカプロラクトンよりなる群から選ばれた少なくとも1種、または、金属粉末などを用いることができる。
【0040】
(c)制御部の構成及び機能
制御部は、上記説明したレーザ光出射部102のコントローラ25と、図示しない造形部101のコントローラとで構成される。
【0041】
レーザ光出射部102のコントローラ25は、レーザ光源23のON(点灯)及びOFF(消灯)と、光学系21のミラー及び光学系22のレンズの動作とを制御する。造形部101のコントローラは、パートテーブル13、第1及び第2のフィードテーブル14a及び14bの動作とリコータ16の動作とを制御する。
【0042】
次に、レーザ光出射部102のコントローラ25の機能について、造形動作の順序に従って、図3及び図4を参照して説明する。
【0043】
図3は、ミラーの速度制御信号(動作開始及び動作停止の信号)とレーザ光源23の点灯制御信号及び消灯制御信号とをコントローラ25からXYZドライバ24に送出するタイミングを示すタイミングチャートである。同図(a)はミラーの速度制御信号を送出するタイミングを示し、同図(c)はレーザ光源23の点灯制御信号及び消灯制御信号を送出するタイミングを示す。なお、図3では、これらの信号にしたがって動作する実際のミラーの動きを同図(b)に示し、その動きによって影響を受ける焼結領域の平面形状を同図(d)に示す。図3(a)乃至(c)では、横軸は任意単位の時間を示す。
【0044】
また、図4は、コントローラ25から送出される、レーザ光源のON/OFFを制御する信号を具体的に示す図である。
【0045】
なお、下記の説明では、加速期間、定速期間、減速期間、立上り遅延期間、及び停止遅延期間という用語を用いているが、それぞれ期間の代わりに時間という用語を用いてもよい。
【0046】
まず、コントローラ25において以下の初期設定を行う。すなわち、作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)、レーザ出力(Peff)、レーザビーム径、ミラーの走査速度、スライスデータに基づく各走査におけるレーザ光の移動距離(加速期間に相当する距離と、定速期間に相当する距離と、減速期間に相当する距離とを加えたもの、或いは立上り遅延期間に相当する距離と、停止遅延期間に相当する距離と、焼結すべき距離とを加えたもの)、ミラーの速度制御信号入力に対するレーザ光源のON/OFF制御信号入力の遅延時間(レーザオンディレイ時間(Tdon)及びレーザオフディレイ時間(Tdoff))及びその時間に相当する距離、などをデータメモリに格納する。一例として、レーザビーム径は通常300乃至600μmの範囲で設定され、ミラーの走査速度は12.5m/secで設定され、立上り遅延期間に相当する距離は約10mmで、停止遅延期間に相当する距離は約8mmで設定される。
【0047】
初期設定が終わったら、制御用のプログラムに従って装置を動作させる。
【0048】
図3(a)に示すように、各走査の移動距離に相当する角度だけミラーを移動させる移動指令に従って、コントローラ25からXYZドライバ24にミラーの動作開始に相当するミラーの速度制御信号を送出する。この場合、何れの走査においても、ミラーの移動の始点は形成すべき造形物の境界より立上り遅延期間に相当する距離だけ外側に位置するように設定される。
【0049】
次いで、送出された速度制御信号に従って、XYZドライバ24は速度制御信号を送出し、光学系21のガルバノメータミラーを動作させるモータを起動させる。この場合、XYZドライバ24におけるドライバ回路での信号遅延やモータによる機械的な動作遅延が生じ、図3(b)に示すように、最初ガルバノメータミラーの速度零の状態が少しあって、その後ガルバノメータミラーは徐々に速度を増し、速度制御信号に対して所定の時間(立上り遅延時間)遅れて一定の動作速度に到達する。
【0050】
一方、レーザオンディレイ時間(Tdon)データに基づき、図3(c)に示すように、コントローラ25からレーザ光源23に点灯制御信号が送出される。レーザ光源23は、点灯制御信号にほぼ追随して点灯する。このとき、ミラーの動作速度は一定になっている。
【0051】
なお、図3(c)では、点灯制御信号は連続する一つのパルスで示されているが、実際には、図4に示すように、その点灯制御信号は、通常十乃至百kHzのパルスが用いられる。レーザ出力(Peff)データに基づき、パルス振幅(P)、及びパルスのデューティ比(TON/TCYC)が調整される。
【0052】
引き続き、ミラーは、設定された焼結すべき距離に相当する時間だけ回転する。これにしたがって、レーザ光が粉末材料に照射され、凡そレーザビーム径の幅でかつ定速距離に相当する領域内にある粉末材料が焼結される。
【0053】
その後、コントローラ25からXYZドライバ24にミラーの動作停止に相当する速度制御信号を送出する。その速度制御信号に従って、XYZドライバ24は動作停止制御信号を送出し、光学系21のガルバノメータミラーを動作させているモータを停止させる。この場合、XYZドライバ24におけるドライバ回路での信号遅延やモータによる機械的な動作遅延が生じ、図3(b)に示すように、ガルバノメータミラーは動作停止制御信号に対して所定の時間一定速度で動作した後急激に減速して動作を停止する。動作停止制御信号を送出した後レーザ光源が点灯していたとしたらミラーが完全に停止するまでにレーザ光が移動する距離が停止遅延期間に相当する距離である。
【0054】
一方、ミラーの動作停止の速度制御信号入力に対応して、図3(c)に示すように、レーザ光源23に消灯制御信号が送出される。レーザ光源23は、消灯制御信号にほぼ追随して消灯する。
【0055】
このようにして、一走査が完了する。ミラーは次の走査の始点に移動して次の走査のために待機している。
【0056】
以上のようにコントローラ25による制御方法によれば、ミラーが一定の速度のときだけレーザ光が照射されるようになるため、一走査において単位長当たりに粉末材料の薄層に供給されるレーザ光の照射のエネルギーはどこでも一定になる。このため、図3(d)に示すように、一走査における焼結領域について、始点及び終点付近も含めて幅が一定となるとともに、焼結領域の長さを精度よく制御しやすくなる。
【0057】
また、図7(a)乃至(c)は、肉厚が薄いものを造形するため焼結領域が短くなった場合におけるコントローラ25による制御方法を示したタイミングチャートである。図7(d)は、図7(a)乃至(c)のタイミングに対応する、レーザ照射の一走査における焼結領域の平面形状を示す図である。
【0058】
この制御方法も図3(a)乃至(d)で説明した制御方法と同じであり、図7(d)に示すように、焼結領域が短い場合でも一走査における粉末材料薄層の焼結領域の形状は一様になる。肉厚が薄いものを造形するため一走査における焼結領域が短くなると、特に、この制御方法が有効であることが分かる。従来例の図10(a)乃至(d)と比較して、その違いは明らかである。
【0059】
次に、造形部101のコントローラの機能について以下に説明する。
【0060】
そのコントローラは、まず、粉末材料を載せた第1のフィードテーブル14bを上昇させるとともに、パートテーブル13を薄層一層分だけ下降させ、リコータ16を移動させて第1の粉末材料容器12aから造形用容器11に粉末材料15を供給し、パートテーブル13上に粉末材料の薄層15aを形成させる。そして、第2の粉末材料容器12b内の第2のフィードテーブル14bを下降させ、第2の粉末材料容器12bの表面を均しながらリコータ16を移動させて粉末材料の薄層15aを形成した後の残余の粉末材料15を第2のフィードテーブル14b上に収納させる。
【0061】
なお、その後に、上記したコントローラ25による制御により、作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき、レーザ光、光学系21のミラー及び光学系22のレンズによって粉末材料の薄層15aを選択的に加熱して焼結させる。
【0062】
また、上記と逆に、粉末材料15を載せた第2のフィードテーブル14bを上昇させるとともに、パートテーブル13を薄層一層分だけ下降させ、リコータ16を移動させて第2の粉末材料容器12bから造形用容器11に粉末材料15を供給し、パートテーブル13上の粉末材料の薄層15aの上に新たな粉末材料の薄層15aを形成させる。そして、第1の粉末材料容器12a内の第1のフィードテーブル14aを下降させ、第1の粉末材料容器12aの表面を均しながらリコータ16を移動させて新たな粉末材料の薄層15aを形成した後の残余の粉末材料15を第1のフィードテーブル14a上に収納させる。
【0063】
なお、その後、上記したコントローラ25による制御により、作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき、レーザ光、光学系21のミラー及び光学系22のレンズによって粉末材料の薄層15aを選択的に加熱して焼結させる。
【0064】
これらの動作を繰り返して、複数の焼結薄層15bを積層させ、3次元造形物を作製させる。
【0065】
以上のように、本発明の実施の形態に係る粉末焼結積層造形装置によれば、一走査における焼結領域について、始点及び終点付近も含めて幅が一定となるとともに、焼結領域の長さを精度よく制御しやすくなる。これにより、精度のよい3次元造形物を作製することができる。特に、肉厚の薄い3次元造形物を作製する場合に、有効である。
【0066】
(粉末焼結積層造形方法の説明)
次に、図1乃至図4、図6を参照しながら上記粉末焼結積層造形装置を用いた粉末焼結積層造形方法について説明する。図6(a)、(b)はこの粉末焼結積層造形方法により形成された粉末材料の薄層の焼結領域を示す平面図である。
【0067】
まず、制御部において制御すべき諸元の設定を行う。それら諸元のうち、ミラーの走査速度をX方向及びY方向ともに12.5m/secとする。また、レーザ光源23のON/OFF制御信号を周波数50kHzのパルスとし、30W程度の実効電力(Peff)となるようにパルス振幅、デューティ比を設定する。また、ミラーの動作開始に相当する速度制御信号入力に対するミラーの立上り遅延時間を1.2msec(移動距離にして約10mmに相当)とし、ミラーの動作停止に相当する速度制御信号入力に対するミラーの停止遅延時間を1msec(移動距離にして約8mmに相当)とする。さらに、レーザオンディレイ時間をミラーの立上り遅延時間と同じとし、レーザオフディレイ時間を零とする。
【0068】
次に、造形部101において、左右のフィードテーブル14a、14bを降下させ、フィードテーブル14a、14b上に十分な量の粉末材料15を収納する。
【0069】
次いで、パートテーブル13を薄層一層分に相当する量だけ降下させる。次いで、左側のフィードテーブル14aを上昇させて粉末材料15が第1の粉末材料容器12aの表面から上に出てくるようにする。このとき、右側のフィードテーブル14bを降下させて、粉末材料の薄層15aを形成した後の残余の粉末材料15が収納できるようにその収納部を空けておく。
【0070】
次いで、リコータ16を移動させて左側のフィードテーブル14a上、第1の粉末材料容器12aの表面から上に出ている粉末材料15を掻きとりつつ造形用容器11内のパートテーブル13上に移動させる。
【0071】
次に、造形用容器11の表面を均しつつパートテーブル13上に粉末材料を運び入れる。これにより、図1(a)に示すように、パートテーブル13上に一層分の粉末材料の薄層15aが形成される。このとき、造形用容器11内壁に設置されたヒータ(図示しない)、或いは造形用容器11の斜め上に設けられた赤外線加熱装置(図示しない)などにより粉末材料の薄層15aの表面を、粉末材料の融点よりも5〜15℃程度低い温度に予備加熱する。
【0072】
さらに、リコータ16を移動させて残余の粉末材料15を第2の粉末材料容器12b内に表面を均しつつ運び入れ、第2の粉末材料容器12b内の第2のフィードテーブル14b上に収納させる。
【0073】
次に、コントローラ25から周波数50kHzのパルスで構成され、実効電力30W程度の制御信号をレーザ光源23に送出する。これにより、レーザ光源23からレーザ光が出射される。さらに、作製すべき3次元造形物のスライスデータに基づき、コントローラ25により光学系21のミラー及び光学系22のレンズの動作を制御し、X方向にレーザ光を移動させて、粉末材料の薄層15aにレーザ光を照射する。これにより、一走査分(加工単位)の粉末材料の薄層15aが加熱されて焼結する。
【0074】
このとき、上記の遅延時間の設定値に基づき、図3に示すように、ミラーの動きを制御し、レーザ光源23の点灯及び消灯を制御する。これにより、ミラーが一定の速度のときだけレーザ光が粉末材料の薄層15aに照射されることになるため、一走査において単位長当たりに粉末材料の薄層15aに供給されるレーザ光の照射のエネルギーはどこでも一定になる。これにより、図3(d)に示すように、一走査における粉末材料薄層の焼結領域15bの形状は一様になる。
【0075】
次いで、この走査をY方向に順次行い、粉末材料の薄層15aの所定領域を焼結する。図6(a)は、粉末材料の薄層15aの所定の領域が焼結された後の状態を示す。図6(a)に示すように、一走査における粉末材料薄層の焼結領域15bが多く重なるようにしなくても、焼結領域と非焼結領域との境界において凹凸をより少なくし、境界を滑らかにすることができる。なお、この後さらに、境界において凹凸をより少なくし、境界を滑らかにするため、図6(b)に示すように、凹凸しているY方向の境界に沿って、レーザ光を照射して縁取りを行うとよい。
【0076】
次いで、パートテーブル13を薄層一層分降下させるとともに、第2のフィードテーブル14bを上昇させ、さらに、第1のフィードテーブル14aを降下させる。
【0077】
次いで、上記説明した場合とは逆にリコータ16を右側から左側に移動させる。そして、第2の粉末材料容器12bから新たな粉末材料15をパートテーブル13上に供給し、焼結薄層15b上に新たな粉末材料の薄層を形成する。
【0078】
さらに、リコータ16を移動させて残余の粉末材料15を第1の粉末材料容器12a内に表面を均しつつ運び入れ、第1の粉末材料容器12a内の第1のフィードテーブル14a上に収納させる。
【0079】
次いで、焼結薄層15b上の新たな粉末材料の薄層を加熱焼結し、焼結薄層15b上に新たな焼結薄層を形成する。すなわち、図3に基づき、ミラーの動きを制御し、レーザ光源の点灯時及び消灯時を制御する。この場合、X方向にレーザ光を走査した第1層目の場合と異なり、レーザ光の走査をY方向に行うことが望ましい。完成した3次元造形物において内部応力を少なくして、造形物の形が歪まないようにするためである。
【0080】
次に、上記したような方法で、パートテーブル13を薄層一層分降下させるとともに、第1のフィードテーブル14aを上昇させ、さらに、第2のフィードテーブル14bを降下させる。
【0081】
次いで、上記したような方法で、粉末材料の薄層15aの形成→加熱焼結→粉末材料の薄層15aの形成→加熱焼結・・を繰り返す。
【0082】
このようにして、順次焼結薄層15bが積層されて3次元造形物が完成する。そして、最後に予備加熱を止めて自然冷却を行い、常温付近になったら、造形用容器11から粉末材料15に埋もれた3次元造形物を取り出す。
【0083】
以上のように、本発明の実施の形態に係る粉末焼結積層造形方法によれば、一走査における粉末材料薄層の焼結領域の形状は一様になるため、一走査における粉末材料薄層の焼結領域が多く重なるようにしなくても、焼結領域と非焼結領域との境界において凹凸をより少なくし、境界を滑らかにすることができる。このため、精度の良い3次元造形物を作製することができる。
【0084】
(本発明の他の実施の形態の説明)
以上、実施の形態によりこの発明の粉末焼結積層造形装置及び粉末焼結積層造形方法を詳細に説明したが、この発明の範囲は上記実施の形態に具体的に示した例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の上記実施の形態の変更はこの発明の範囲に含まれる。
【0085】
例えば、上記実施形態では、粉末材料の薄膜全体について、焼結対象となる全体に本発明の造形方法を適用しているが、焼結対象となる全体のうち特に焼結対象領域が短いところなど精度を必要とするところだけに、選択的に本発明の造形方法を適用してもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、ミラーの速度制御信号入力に対するレーザ光源のON/OFF制御信号入力の遅延時間を予め設定している。これは、その遅延時間が予め分かっている場合に適用できるものであるが、もし、それが分かっていない場合には、ミラーの速度を検出してそれをコントローラ25にフィードバックし、焼結領域の形状があまり崩れないような特定のミラーの速度のときにレーザ光源のON/OFF制御信号入力を行うようにしてもよい。
【0087】
また、制御装置がミラーの動作停止の信号を出力するタイミングに合わせてレーザ光源を消灯させているが、図5(a)〜(c)に示すように、制御装置がミラーの動作停止の信号を出力した後、ミラーの動作速度が一定速度から低下する前に、或いはその直前にレーザ光源を消灯させてもよい。これにより、図5(d)に示すように、図3(d)と同様、一様な形状の焼結領域が形成される。
【0088】
さらに、コントローラ25において制御すべき諸元の設定値は、上記記載した値以外に、この発明の目的を達成できる範囲で、適宜変更できる。
【0089】
また、実施の形態では、複数の走査を行うとき、ビーム径の1/3未満で重ね書きしているが、レーザ照射量を均一するためビーム径の1/3程度重ね書きすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置のうち造形部の構成を示す上面図であり、(b)は(a)のI−I線に沿う断面図である。
【図2】図1の粉末焼結積層造形装置においてレーザ光出射部の構成を示す図である。
【図3】(a)は、図1の粉末焼結積層造形装置を用いた粉末焼結積層造形方法において、ミラーの速度制御信号の印加のタイミングを示すタイミングチャートであり、(b)は、同じく速度制御信号に基づくミラーの実動作を示すタイミングチャートであり、(c)は、同じくレーザ光源のON/OFFの制御信号の印加のタイミングを示すタイミングチャートであり、(d)は、(a)〜(c)のタイミングによって形成された、レーザ照射の一走査における焼結領域の平面形状を示す図である。
【図4】図1の粉末焼結積層造形装置において、レーザ光源のON/OFFを制御する信号を具体的に示す図である。
【図5】(a)〜(c)は、図3(a)〜(c)に対してレーザオフディレイ時間を設定した場合のタイミングチャートであり、(d)は、(a)〜(c)のタイミングによって形成された、レーザ照射の一走査における焼結領域の平面形状を示す図である。
【図6】(a)、(b)は、この粉末焼結積層造形方法により形成された粉末材料の薄層の焼結領域を示す平面図である。
【図7】(a)〜(d)は、焼結対象領域が短い場合における図3(a)〜(d)のタイミングチャート及び図と対応するタイミングチャート及び図である。
【図8】(a)は、従来例において、ミラーの速度制御信号の印加のタイミングを示すタイミングチャートであり、(b)は、同じく速度制御信号に基づくミラーの実動作を示すタイミングチャートであり、(c)は、同じくレーザ光源のON/OFFの制御信号の印加のタイミングを示すタイミングチャートであり、(d)は、同じくレーザ光源のON/OFFの制御信号の印加のタイミングに対応する、レーザ照射の一走査における焼結領域の平面形状を示す図である。
【図9】従来例の粉末焼結積層造形方法により形成された粉末材料の薄層の焼結領域を示す平面図である。
【図10】(a)〜(d)は、従来例において、焼結対象領域が短い場合における図7(a)〜(d)のタイミングチャート及び図と対応するタイミングチャート及び図である。
【図11】(a)は、従来例において、図10(c)に対してレーザオンディレイ時間を設定した場合の図10(b)〜(d)のタイミングチャート及び図と対応するタイミングチャート及び図である。(b)は、上記(a)よりもさらに焼結領域の長さが短い場合の図10(b)〜(d)のタイミングチャート及び図と対応するタイミングチャート及び図である。
【符号の説明】
【0091】
11 造形用容器
12a 第1の粉末材料容器
12b 第2の粉末材料容器
13 パートテーブル
14a 第1のフィードテーブル
14b 第2のフィードテーブル
15 粉末材料
15a 粉末材料の薄層
15b 焼結薄層
16 リコータ
21、22 光学系
23 レーザ光源
24 XYZドライバ
25 コントローラ
101 造形部
102 レーザ光出射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光をX方向及びY方向に走査するミラーと、前記レーザ光源の点灯及び消灯を制御し、かつ前記ミラーの動作を制御する制御装置とを有し、粉末材料の薄層に前記レーザ光を照射し、前記X方向及びY方向に走査して、前記粉末材料の薄層を焼結させ、該焼結した薄層を順次積層して3次元造形物を作製する粉末焼結積層造形装置であって、
前記制御装置は、前記ミラーの動作開始の信号を出力した後、前記ミラーの動作速度が一定になるときに前記レーザ光源を点灯させ、前記制御装置が前記ミラーの動作停止の信号を出力すると同時に、或いは、前記制御装置が前記ミラーの動作停止の信号を出力した後、前記ミラーの動作速度が前記一定速度から低下する前に前記レーザ光源を消灯させることを特徴とする粉末焼結積層造形装置。
【請求項2】
前記ミラーは、前記ミラーの動作開始の信号に対して立上り遅延時間の経過後一定の速度で動作し、前記ミラーの動作停止の信号に対して停止遅延時間の経過後に停止するように動作し、
前記制御装置において、前記レーザ光の移動距離として、焼結すべき領域の長さに前記ミラーの動作の立上り遅延時間に相当する距離と前記ミラーの動作の停止遅延時間に相当する距離とを加えた距離を入力し、かつ、前記焼結すべき領域の長さに相当する期間だけ、前記レーザ光源を点灯させておくようにレーザオンディレイ時間をセットすることを特徴とする請求項1記載の粉末焼結積層造形装置。
【請求項3】
前記ミラーは、前記ミラーの動作開始の信号に対して立上り遅延時間の経過後一定の速度で動作し、前記ミラーの動作停止の信号に対して前記一定の速度で動作した後減速し始め、減速時間の経過後に停止するように動作し、
前記制御装置において、前記レーザ光の移動距離として、焼結すべき領域の長さに前記ミラーの動作の立上り遅延時間に相当する距離と前記ミラーの動作の減速時間に相当する距離とを加えた距離を入力し、かつ、前記焼結すべき領域の長さに相当する期間に加えて、その期間に続く、前記ミラーの動作停止の信号を出力した後前記ミラーの動作速度が一定速度から低下する前の任意の期間だけ、レーザ光源を点灯させておくようにレーザオンディレイ時間及びレーザオフディレイ時間をセットすることを特徴とする請求項1記載の粉末焼結積層造形装置。
【請求項4】
請求項1記載の粉末焼結積層造形装置を用いて、粉末材料の薄層にレーザ光を照射し、X方向及びY方向に走査して、前記粉末材料の薄層を焼結させ、該焼結した薄層を順次積層して3次元造形物を作成する粉末焼結積層造形方法であって、
前記ミラーの動作開始の信号を出力した後、前記ミラーの動作速度が一定になるときに前記レーザ光源を点灯させ、前記制御装置が前記ミラーの動作停止の信号を出力すると同時に、或いは、前記ミラーの動作停止の信号を出力した後、前記ミラーの動作速度が前記一定速度から低下する前に前記レーザ光源を消灯させることを特徴とする粉末焼結積層造形方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−155538(P2008−155538A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348386(P2006−348386)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(398018962)株式会社アスペクト (12)
【Fターム(参考)】