説明

粉末状ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の製造方法

【課 題】 自由流動性を有し、長期間保存しても固結しない粉末状ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 融点以上に加熱して溶融したポリグリセリン脂肪酸エステルを−196〜15℃の温度条件下で噴霧し、冷却固化したポリグリセリン脂肪酸エステルの粒子を多価アルコール脂肪酸エステルの粉砕物で被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、常温で粘稠な液体ないしろう状固体であるため、特に粉末状食品に、あるいは食品製造工程において粉末状で添加することが求められる食品に、これらを少量添加し、均一に分散・混合することが極めて困難であった。
【0003】
この問題を解決するため、過去に、グリセロール縮合物(グリセロール15%、ジグリセロール60%、トリグリセロール以上25%)と極度硬化獣脂脂肪酸との部分エステル、小麦粉および水を押出し機に供給して混合し、得られた混合物を押出成形し、さらさらした粉末生成物を得る方法(参考文献1参照)、ポリグリセリン脂肪酸エステル100重量部に対し、無水結晶マルトースを50〜500重量部を加えて粉末化するに際し、水分を添加しないことを特徴とする粉末状乳化剤組成物の製造法(参考文献2参照)、ジグリセリンモノミリステート(モノエステル含量78%)70%とソルビタントリベヘネート30%とを混合・溶融し、回転式滴下型造粒装置を用いて造粒する方法(参考文献3参照)、塊状のジグリセリン脂肪酸モノエステル(モノエステル含量70重量%)80重量部とエリスリトールの微細結晶粉末20重量部とを液体窒素に浸漬して凍結させた後、粉砕機で粉砕して粉末状の乳化剤を調製する方法(参考文献4参照)などの製造方法が提案されている。
【0004】
また類似技術として、融点が40℃以上の乳化剤の粉末と水溶性物質の粉末よりなる組成であって、いずれか一方が1μm以上15μm以下の粒子径のものを60重量%以上含む微粉末で、他方が20μm以上100μm以下の粒子径のものを60重量%以上含むコアとなる粉末であり、コアとなる粉末に微粉末が付着していることを特徴とする乳化剤製剤(参考文献5参照)などが知られている。
【0005】
しかしながらこれらの技術をもってしても、未だ満足できるレベルに達したものは得られていないのが実状である。
【0006】
【特許文献1】特公平6−87964号公報、実施例2
【特許文献2】特開平1−242133号公報
【特許文献3】特開平10−305221号公報、実施例1
【特許文献4】特開平11−9984号公報、実施例1
【特許文献5】特開2002−335879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、自由流動性を有し、長期間保存しても固結しない粉末状ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に対して鋭意・検討を行った結果、融点以上に加熱して溶融したポリグリセリン脂肪酸エステルを−196〜15℃の温度条件下で噴霧し、冷却固化したポリグリセリン脂肪酸エステルの粒子を多価アルコール脂肪酸エステルの粉砕物で被覆することにより、さらさらした粉末状のポリグリセリン脂肪酸エステル組成物が得られることを見いだし、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、
(1)溶融したポリグリセリン脂肪酸エステルを−196〜15℃の温度条件下で噴霧し、冷却固化したポリグリセリン脂肪酸エステルの粒子を多価アルコール脂肪酸エステルの粉砕物で被覆することを特徴とする粉末状ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の製造方法、
(2)多価アルコール脂肪酸エステルがポリグリセリンと炭素数18〜22の飽和脂肪酸を80質量%以上含有する脂肪酸とのエステルであり、そのエステル化率が50%以上であることを特徴とする前記1に記載の粉末状ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の製造方法、
(3)多価アルコール脂肪酸エステルがショ糖ベヘン酸エステルであることを特徴とする前記1に記載の粉末状ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の製造方法、
(4)多価アルコール脂肪酸エステルが極度硬化油脂であることを特徴とする前記1に記載の粉末状ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の製造方法、からなっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法に従うと、さらさらとして取り扱いが容易で、且つ長期間保存しても固結しない粉末状ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物を得ることができる。
本発明になる粉末状ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物は、従来困難とされていた粉末状食品または粉末状の各種製剤に配合することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応など自体公知の方法で製造される。
【0011】
上記ポリグリセリンは、通常グリセリンに少量の酸またはアルカリを触媒として添加し、窒素または二酸化炭素などの任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば180℃以上の温度で加熱し、重縮合反応させて得られる重合度の異なるポリグリセリンの混合物である。また、グリシドールまたはエピクロルヒドリンなどを原料として得られるものであっても良い。反応終了後、必要であれば中和、脱塩、脱色などの処理を行って良い。該ポリグリセリンとしては、グリセリンの平均重合度が2〜20、好ましくは2〜10のポリグリセリン組成物が挙げられ、それらは例えばジグリセリン(平均重合度2)、トリグリセリン(平均重合度3)、テトラグリセリン(平均重合度4)、ヘキサグリセリン(平均重合度6)、オクタグリセリン(平均重合度8)およびデカグリセリン(平均重合度10)などが挙げられる。
【0012】
本発明において、上記重合度の異なるポリグリセリンの混合物を、例えば蒸留またはカラムクロマトグラフィーなど自体公知の方法を用いて精製し、単一成分の含量を高濃度化した高純度ポリグリセリンが、好ましく用いられる。そのような例としては、例えばグリセリン2分子からなるジグリセリンの含有量が約50質量%以上、好ましくは約70質量%以上、より好ましくは約90質量%以上であるジグリセリン混合物、およびグリセリン3分子からなるトリグリセリンの含有量が約50質量%以上、好ましくは約85質量%以上であるトリグリセリン混合物などが挙げられる。
【0013】
上記脂肪酸としては特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸が挙げられ、好ましくは炭素数12〜22の飽和脂肪酸、即ち、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸などから選ばれる1種類または2種類以上を約50質量%以上含有する脂肪酸である。
【0014】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルを製造する際のポリグリセリンに対する脂肪酸の仕込み量は、目的とするエステル化度により異なり一様ではないが、好ましくはポリグリセリン1モルに対して約0.1〜1モル程度である。ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応は無触媒で行って良く、または酸触媒あるいはアルカリ触媒を用いて行っても良いが、好ましくはアルカリ触媒の存在下で行なわれる。酸触媒としては、例えば濃硫酸などが挙げられる。アルカリ触媒としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ触媒の使用量は、ポリグリセリンに対して約5×10-7〜1モル倍量、好ましくは約5×10-6〜0.1モル倍量である。
【0015】
上記エステル化反応は、例えば、攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板などを備えた通常の反応容器に、ポリグリセリン、脂肪酸、および触媒を供給して攪拌混合し、窒素または二酸化炭素などの任意の不活性ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定温度で一定時間加熱して行われる。反応温度は通常、約180〜260℃の範囲、好ましくは約200〜250℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下又は常圧下で、反応時間は約0.5〜15時間、好ましくは約1〜3時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、約12以下を目安に決められる。
【0016】
エステル化反応終了後触媒を中和し、得られた反応混合物を例えば約100〜150℃で約15〜30分間放置し、未反応のポリグリセリンが下層に分離した場合はそれを除去し、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得る。更に、該ポリグリセリン脂肪酸エステルを、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィーまたは液液抽出など自体公知の方法を用いて精製することにより、モノエステル体含有量を約70質量%以上に高濃度化したポリグリセリン脂肪酸エステルが得られる。
【0017】
本発明において、ポリグリセリン脂肪酸エステルは融点以上に加熱して溶融され、溶融物は−196〜15℃、好ましくは−196〜0℃、更に好ましくは−196〜−20℃の温度条件で噴霧冷却される。噴霧冷却は、例えば、一般的な噴霧乾燥装置を使用し、該溶融物を例えば液体窒素の充填された塔内に噴霧することにより実施される。液体窒素は塔内の上段、中段および下段のいずれから注入しても良く、また2箇所以上から注入しても良い。噴霧には加圧式噴霧ノズルや回転円盤式噴霧ノズルなどが用いられ、好ましくは回転円盤式噴霧ノズルである。噴霧された溶液は冷却されて細かな粒子となって塔下部に落下し、凍結状態の粒子として捕集される。得られる粒子の平均粒子径は、好ましくは約50〜1000μm、より好ましくは約100〜500μmである。
【0018】
冷却固化されたポリグリセリン脂肪酸エステルの粒子は、次に多価アルコール脂肪酸エステルの粉砕物で被覆される。
【0019】
本発明で用いられる多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応など自体公知の方法で製造される。
上記多価アルコールとしては、例えばグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ショ糖、ソルビタンなどが挙げられ、好ましくはポリグリセリンまたはショ糖である。
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数18〜22の飽和脂肪酸を約80質量%以上含有する脂肪酸または脂肪酸混合物が好ましく、ベヘン酸の含有量が約80質量%以上の脂肪酸、または2種類以上の脂肪酸を混合して得られる混合物中のベヘン酸の含有量が約80質量%以上である脂肪酸混合物がより好ましい。該ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は約50%以上、好ましくは約85%以上である。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えばショ糖ベヘン酸エステルなどが好ましい。
【0020】
本発明で用いられる多価アルコール脂肪酸エステルとして、食用可能な動植物油脂を例えば水素添加処理したものなども挙げられる。水素添加処理したものとしては、例えば極度硬化米ぬか油、極度硬化大豆油、極度硬化とうもろこし油、極度硬化菜種油、極度硬化ヒマワリ油、極度硬化落花生油および極度硬化魚油などが挙げられる。
【0021】
本発明に係る多価アルコール脂肪酸エステルの粉砕物は、通常、融点以上に加熱して溶融した多価アルコール脂肪酸エステルを噴霧冷却し、次に得られた細かな粒子を粉砕機で粉砕し、必要であれば篩別することにより調製される。また、融点以上に加熱して溶融した多価アルコール脂肪酸エステルを、例えば金属製のトレイに流し込んで冷却し、得られた固形物を粉砕機で粉砕し、必要であれば篩別することにより調製されたものであっても良い。
【0022】
本発明で使用される粉砕機に特に制限は無く、例えばファインインパクトミル(ホソカワミクロン社製)、スーパースクリーンミル(奈良機械製作所社製)などの微粉砕機、アトマイザー(パウレック社製)、カウンタージェットミル(ホソカワミクロン社製)などの超微粉砕機を使用することができる。得られる粉砕物は、その平均粒子径が約75μm以下の微粉末であることが好ましく、その平均粒子径が10μm以下の微粒子であることが更に好ましい。該粉砕物の平均粒子径が小さくなるほど、被覆効率が良くなるが、一方静電気を持つことにより取り扱いに不便を生じることから、目的・用途に応じて適宜粒度を選択することが望ましい。
【0023】
多価アルコール脂肪酸エステルの粉砕物を用いて、前記冷却固化されたポリグリセリン脂肪酸エステルの粒子を被覆する方法としては、例えば攪拌・混合羽根と造粒羽根を併せ持った攪拌型混合造粒機などを用いる方法が挙げられる。その際、該ポリグリセリン脂肪酸エステルの粒子約100質量部に対して該多価アルコール脂肪酸エステルの粉砕物約0.1〜15質量部、好ましくは約1〜10質量部、更に好ましくは約3〜5質量部が使用されるのが好ましい。該攪拌型混合造粒機としては、例えばハイスピードミキサー(深江パウテック社製)、ハイフレックスグラル(深江パウテック社製)、グラニュレーター(奈良機械製作所社製)、バーチカル・グラニュレーター(パウレック社製)などが挙げられる。
【0024】
多価アルコール脂肪酸エステルの粉砕物と、前記冷却固化されたポリグリセリン脂肪酸エステルの粒子とを混合する際の槽内温度は、約15℃以下であれば操作に支障を生じないが、約0℃以下であるのが好ましい。混合の際の発熱により、内容物の品温が上昇する恐れがある場合は、例えば液体窒素を加えるなどして冷却手段を講じるのが好ましい。
【0025】
多価アルコール脂肪酸エステルの粉砕物によって被覆されたポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の平均粒子径は、好ましくは約50〜1000μm、より好ましくは約100〜500μmである。
【実施例】
【0026】
以下に本発明を実施例に基づいて、より具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
[製造例1]
攪拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた200Lの反応釜にグリセリン160kgを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム20w/v%水溶液800mLを加え、窒素ガス気流中250℃で4時間グリセリン縮合反応を行った。
得られた反応生成物を90℃まで冷却し、リン酸(85質量%)約160gを添加して中和した後ろ過し、ろ液を160℃、400Paの条件下で減圧蒸留してグリセリンを除き、続いて200℃、20Paの高真空条件下で分子蒸留し、グリセリン2質量%、ジグリセリン91質量%およびトリグリセリン7質量%を含む留分約30kgを得た。次に、該留分に対して1質量%の活性炭を加え、減圧下にて脱色処理した後ろ過した。得られたジグリセリン組成物の水酸基価は約1350で、その平均重合度は約2.0であった。
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた20Lの反応釜に、上記ジグリセリン混合物約6.6kg(約40モル)、およびパルミチン酸(商品名:パルミチン酸98;ミヨシ油脂社製)約10.2kg(約40モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム20w/v%水溶液160mLを加え、窒素ガス気流中240℃で、酸価12以下となるまで、約2時間エステル化反応を行わせた。得られた反応混合物を約130℃まで冷却し、リン酸(85質量%)32gを添加して触媒を中和し、その温度で約30分間放置し、分離した未反応のジグリセリン約1.6kgを除去し、ジグリセリンパルミチン酸エステル約14.0kgを得た。
次に、該ジグリセリンパルミチン酸エステルを、遠心式分子蒸留装置(実験機;CEH−300II特;ULVAC社製)を用いて蒸留し、温度約225℃、40Paの真空条件下で未反応のジグリセリン等の低沸点化合物を留去し、続いて温度約250℃、10Paの高真空条件下で分子蒸留し、留分としてモノエステル体含有量約91質量%のジグリセリンモノパルミチン酸エステル(試作品1)約5.0kgを得た。
【0028】
[製造例2]
実施例1でジグリセリン組成物を分取した蒸留残液を、240℃、20Paの高真空条件下で再び分子蒸留し、グリセリン1質量%、ジグリセリン4質量%、トリグリセリン88質量%、テトラグリセリン3質量%および環状ポリグリセリン4質量%を含む留分約12.0kgを得た。次に、該留分に対して1質量%の活性炭を加え、減圧下にて脱色処理した後ろ過した。得られたトリグリセリン組成物の水酸基価は約1164で、その平均重合度は約3.0であった。
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた20Lの反応釜に、上記トリグリセリン混合物約8.4kg(約35モル)、およびパルミチン酸(商品名:パルミチン酸98;ミヨシ油脂社製)約9.0kg(約35モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム20w/v%水溶液175mLを加え、窒素ガス気流中240℃で、酸価12以下となるまで、約2時間エステル化反応を行わせた。得られた反応混合物を約130℃まで冷却し、リン酸(85質量%)35gを添加して触媒を中和し、その温度で約30分間放置し、分離した未反応のトリグリセリン約1.6kgを除去し、トリグリセリンパルミチン酸エステル約14.5kgを得た。
次に、該トリグリセリンパルミチン酸エステルを、遠心式分子蒸留装置(実験機;CEH−300II特;ULVAC社製)を用いて蒸留し、温度約240℃、20Paの真空条件下で未反応のトリグリセリン等の低沸点化合物を留去し、続いて温度約250℃、1Paの高真空条件下で分子蒸留し、留分としてモノエステル体含有量約85質量%のトリグリセリンモノパルミチン酸エステル(試作品2)約3.5kgを得た。
【0029】
[製造例3]
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた20Lの反応釜に、デカグリセリン(商品名:ポリグリセリン#750;阪本薬品工業社製)約8.4kg(約10モル)、およびステアリン酸(商品名:NAA−180;日本油脂社製)約2.8kg(約10モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム20w/v%水溶液100mLを加え、窒素ガス気流中240℃で、酸価12以下となるまで、約2時間エステル化反応を行わせた。得られた反応混合物を約130℃まで冷却し、リン酸(85質量%)20gを添加して触媒を中和し、デカグリセリンステアリン酸エステル(試作品3)約10.1kgを得た。
【0030】
[製造例4]
研究開発用噴霧乾燥装置(型式:L−8i;大川原化工機社製)を使用。極度硬化菜種油約500gを約85〜90℃に溶融し、溶融液を液体窒素を注入し塔内温度を約5〜10℃に調整した塔内に加圧ノズルにより噴霧し、冷却固化した極度硬化菜種油の粒子を塔下部で回収した。該粒子の収量は約450g、その平均粒子径は約250μmであった。
次に、該粒子を研究開発用ジェットミル(装置名:クリモト ポケットジェット;栗本鐵工所社製)にて微粉砕し、極度硬化菜種油の微粉砕物(試作品4)約360gを得た。該粉砕物の平均粒子径は約20μmであった。
尚、平均粒子径はレーザー回折粒度分布計(マイクロトラックMT−3000;日機装社製)で測定した(以下同様)。
【0031】
[実施例1]
(1)噴霧乾燥装置(試験機;大川原化工機社製)を使用。ジグリセリンモノパルミチン酸エステル(試作品1)約5.0kgを約90〜95℃に溶融し、溶融液を液体窒素を注入し塔内温度を約−20℃に調整した塔内に加圧ノズルにより噴霧し、冷却固化した細かな粒子(仕掛品1)を塔下部で回収した。該粒子の収量は約4.8kg、その平均粒子径は180μmであった。
(2)バーチカル・グラニュレーター(型式:VG−25型,内容量25L;パウレック社製)に(1)で得られた細かな粒子(仕掛品1)3800gおよびトリグリセリンベヘン酸エステル(商品名:ポエムTR−FB;理研ビタミン社製;エステル化率約85%以上,平均粒子径約5μm)190gを仕込み、槽内温度約0℃、主軸回転数240rpm、副軸回転数3500rpmの条件で5分間攪拌し、ジグリセリンモノパルミチン酸エステル組成物(実施品1)約3850gを得た。該組成物の平均粒子径は190μmであった。
【0032】
[実施例2]
(1)噴霧乾燥装置(試験機;大川原化工機社製)を使用。トリグリセリンモノパルミチン酸エステル(試作品2)約3.5kgを約90〜95℃に溶融し、溶融液を液体窒素を注入し塔内温度を約−20℃に調整した塔内に加圧ノズルにより噴霧し、冷却固化した細かな粒子(仕掛品2)を塔下部で回収した。該粒子の収量は約3.4kg、その平均粒子径は280μmであった。
(2)バーチカル・グラニュレーター(型式:VG−25型,内容量25L;パウレック社製)に(1)で得られた細かな粒子2800gおよびショ糖ベヘン酸エステル(商品名:リョートーB−370F;三菱化学フーズ社製,平均粒子径約5μm)84gを仕込み、槽内温度約0℃、主軸回転数240rpm、副軸回転数3500rpmの条件で5分間攪拌し、トリグリセリンモノパルミチン酸エステル組成物(実施品2)約2770gを得た。該組成物の平均粒子径は300μmであった。
【0033】
[実施例3]
(1)噴霧乾燥装置(試験機;大川原化工機社製)を使用。デカグリセリンステアリン酸エステル(試作品3)約5.0kgを約110〜115℃に溶融し、溶融液を液体窒素を注入し塔内温度を約−20℃に調整した塔内に加圧ノズルにより噴霧し、冷却固化した細かな粒子(仕掛品3)を塔下部で回収した。該粒子の収量は約4.7kg、その平均粒子径は380μmであった。
(2)バーチカル・グラニュレーター(型式:VG−25型,内容量25L;パウレック社製)に(1)で得られた細かな粒子3800gおよび極度硬化菜種油の微粉砕物(試作品4)190gを仕込み、槽内温度約0℃、主軸回転数240rpm、副軸回転数3500rpmの条件で5分間攪拌し、デカグリセリンステアリン酸エステル組成物(実施品3)約3800gを得た。該組成物の平均粒子径は400μmであった。
【0034】
[試験例1]
実施例1〜3で得たポリグリセリン脂肪酸エステル組成物(実施品1〜3)各500gをチャック付ポリエチレン袋(240×170×0.08mm)に充填し、40℃で1ヶ月保存した。試験終了後、袋から内容物を取り出し、その状態を観察した。対照として、多価アルコール脂肪酸エステルの粉砕物によって被覆されていないポリグリセリン脂肪酸エステルの粒子(仕掛品1〜3)についても同様に試験した。結果を表1に示した。
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融したポリグリセリン脂肪酸エステルを−196〜15℃の温度条件下で噴霧し、冷却固化したポリグリセリン脂肪酸エステルの粒子を多価アルコール脂肪酸エステルの粉砕物で被覆することを特徴とする粉末状ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の製造方法。
【請求項2】
多価アルコール脂肪酸エステルがポリグリセリンと炭素数18〜22の飽和脂肪酸を80質量%以上含有する脂肪酸とのエステルであり、そのエステル化率が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の粉末状ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の製造方法。
【請求項3】
多価アルコール脂肪酸エステルがショ糖ベヘン酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載の粉末状ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の製造方法。
【請求項4】
多価アルコール脂肪酸エステルが極度硬化油脂であることを特徴とする請求項1に記載の粉末状ポリグリセリン脂肪酸エステル組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−232964(P2006−232964A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48545(P2005−48545)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390010674)理研ビタミン株式会社 (236)
【Fターム(参考)】