説明

粉砕品、粉砕方法、分別解体方法、樹脂発泡体複合物の分解解体装置、再生クッション体及び固形燃料

【課題】本発明は、樹脂発泡体と補助部材からなる樹脂発泡体複合物をシュレッダーダストにすることなく、しかも短時間に分別解体することを可能にするとともに、再利用可能な樹脂発泡体粉砕品を得るとともに、補助部材をも再利用可能にすること等を課題とする。
【解決手段】樹脂発泡体と補助部材3からなる樹脂発泡体複合物1に、常圧以上の高圧水もしくは高圧空気もしくは水と空気の混合物を噴射することを特徴とする樹脂発泡体複合物分別解体方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂発泡体もしくは樹脂発泡体と補助部材からなる樹脂発泡体複合物の粉砕品、粉砕方法、樹脂発泡体複合物の分別解体方法、樹脂発泡体複合物の分別解体装置、樹脂発泡体粉砕品又は補助部材を用いて得られた再生クッション体及び固形燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、廃自動車や廃家電は、一般に廃棄物処理工場で破砕機にかけられ、所謂シュレッダーダストと呼ばれる破砕片にされた後、各種金属、各種樹脂、ガラス等に細かく分別され、再利用あるいは焼却処理、埋め立て廃棄等へと夫々処理されている。
【0003】
しかしながら、多種多用な材料からなる廃自動車や廃家電のシュレッダーダストを細かく分別することは困難である為、その多くが埋め立て廃棄されているのが現状であり、近年ではその廃棄場所の確保が難しくなりつつある。そこで、このような現状に歯止めをかけるために、家電・容器リサイクル法や自動車リサイクル法が施行されたことは周知の事実である。
【0004】
こうしたことを背景に各企業共に、その破砕装置の開発、分別効率の向上等を目指した研究に取り組んでおり、例えば特許文献1〜3が知られている。
特許文献1に係る廃棄物の処理装置は、廃棄自動車、廃家電品等の廃棄物を破砕する破砕装置と、破砕された廃棄物が投入されて鉄、非鉄金属、ゴム類ダストとに選別される選別処理装置と、集塵装置と、前記破砕装置にダクトを介して接続された発泡断熱材処理装置とを備えている。
【0005】
特許文献2は、熱硬化性樹脂を粉砕して該熱硬化性樹脂の微粉末を得る熱硬化性樹脂の粉砕方法等に関し、例えば車両座席シート、家具用ファッション等のウレタンフォーム廃材のリサイクルに利用できる技術に関する。
【0006】
特許文献3は、相互に接合して合成樹脂材積層物を構成する合成樹脂の表皮材と合成樹脂のクッション材とを分離、分別する方法であり、合成樹脂材積層物を無数の破片に粉砕し、その一片より小さい網目を有する篩部材に破片群を篩部材と一定間隔をおいて存して対向する擦り付け部材により擦り付けて、各破片のクッション材を粉砕しながら篩部材に通過させる技術に関する。
【0007】
一方、各企業では、地球環境保全のための取り組みの一環としてISO14001認証取得等の活動において、廃棄物排出量削減、及び廃棄物の再利用に積極的な取り組みがなされている。例えば、樹脂発泡体、あるいは樹脂発泡体と補助部材とからなる樹脂発泡体複合物の製造過程において発生した不良品についての廃棄物排出量削減、及び廃棄物の再利用が挙げられる。
【0008】
具体的には、ポリウレタンフォームと金属フレーム等の補助部材からなる車両用クッション体(樹脂発泡体複合物)の不良品が発生したときに、車両用クッション体のまま産業廃棄物として廃棄すると、上述したように破砕機にかけられた後、埋め立て処理がなされ、再利用されることはない。
【0009】
ところで、前記樹脂発泡体複合物をきちんと解体してポリウレタンフォームと金属フレーム等の補助部材に分別できれば、ポリウレタンフォームを粉砕したもの(粉砕品)は接着剤と混ぜ合わせて固化することによりリボンデットフォーム(いわゆるチップフォーム)として再利用することができるし、金属フレームも再び車両用クッション体の製造に用いることができる。
【0010】
しかし、樹脂発泡体複合物を解体する作業には現在のところ有効な方法が見つかっておらず、人手で行われているのが現状である。ところで、樹脂発泡体複合物は強固にポリウレタンフォームと金属フレームが接着しており、容易に解体することができない。具体的には、例えば二人掛け用の車両用クッション体では1時間を要する作業となっている。しかも、金属フレームに強固に接着したポリウレタンフォームを無理やり剥がすため、補助部材である金属フレームが変形してしまい、再利用率は10%程度に留まっている。
【0011】
従来、ポリウレタンフォームの粉砕方法としては、古くから用いられている解綿機のような、鉤状の突起物がついている回転体をポリウレタンフォームに当接させて引きちぎる方法や、公知の裁断機等を用いた方法が知られている。
【0012】
しかしながら、通常のポリウレタンスラブフォーム製品であれば粉砕した全ての粉砕品をリボンデットフォームに再利用することができるが、それでも解綿機や裁断機による粉砕品は、その形状が略角形状であるため、リボンデットフォームにした際に隙間ができやすく、外観・性能がバージン品に比べて非常に劣っていたため、クッション体としての用途にも限界があった。
【0013】
車両用クッション体のようなポリウレタンモールドフォーム製品では不具合が発生する。その理由は、モールドフォーム製品の表面にスキン層が形成されていてその部分は他の部分よりも接着力が弱くなるために、例えば裁断加工中に剥がれ落ちてしまう等の不具合が発生するからである。特に、ポリウレタンモールドフォームのうち、ホットキュアフォーム製品は、コールドキュアフォーム製品よりもスキンが厚く、リボンデットフォームには不向きとされ、再利用されずに廃棄処理されていた。
【特許文献1】特開2001−191062号公報
【特許文献2】特開2002−326224号公報
【特許文献3】特開平11−48245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、樹脂発泡体に、常圧以上の高圧水もしくは高圧空気もしくは水と空気の混合物を噴射することにより得られる樹脂発泡体粉砕品、及びその粉砕品を得るための粉砕方法を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、樹脂発泡体と補助部材からなる樹脂発泡体複合物をシュレッダーダストにすることなく、しかも極めて短時間に分別解体して、得られた樹脂発泡体粉砕品は再利用可能であるとともに、補助部材をも変形させずに再利用可能な状態で分別することが可能な樹脂発泡体複合物の分別解体方法、及び分別解体装置を提供することを目的とする。
【0016】
更に、本発明は、上記粉砕方法、もしくは上記分別解体方法及び分別解体装置により得られた樹脂発泡体粉砕品又は補助部材を用いて得られる再生クッション体を提供することを目的とする。
【0017】
更には、本発明は、上記粉砕方法、もしくは上記分別解体方法及び分別解体装置で得られた樹脂発泡体粉砕品を用いて作製される固形燃料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る樹脂発泡体粉砕品は、樹脂発泡体に、常圧以上の高圧水もしくは高圧空気もしくは水と空気の混合物を噴射することにより得られることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る樹脂発泡体粉砕方法は、樹脂発泡体に、常圧以上の高圧水もしくは高圧空気もしくは水と空気の混合物を噴射することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る樹脂発泡体複合物の分別解体方法は、樹脂発泡体と補助部材からなる樹脂発泡体複合物に、常圧以上の高圧水もしくは高圧空気もしくは水と空気の混合物を噴射することにより、樹脂発泡体粉砕品と補助部材とに分別解体することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る樹脂発泡体複合物の分別解体装置は、樹脂発泡体と補助部材からなる樹脂発泡体複合物を分別解体する装置であり、常圧以上の高圧水もしくは高圧空気もしくは水と空気の混合物を噴射することにより樹脂発泡体粉砕品と補助部品とに解体する解体手段と、前記樹脂発泡体粉砕品と補助部品を分別する分別手段とを具備することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る再生クッション体は、上記粉砕方法、もしくは上記分別解体装置により得られた樹脂発泡体粉砕品又は補助部材を用いて得られることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る固形燃料は、上記粉砕方法、もしくは上記分別解体装置で得られた樹脂発泡体粉砕品を用いて作製されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上詳述した如く本発明によれば、樹脂発泡体に、常圧以上の高圧水もしくは高圧空気もしくは水と空気の混合物を噴射することにより得られる樹脂発泡体粉砕品、及びその粉砕品を得るための樹脂発泡体粉砕方法を提供できる。
【0025】
また、本発明によれば、樹脂発泡体と補助部材からなる樹脂発泡体複合物をシュレッダーダストにすることなく、しかも短時間に分別解体して、得られた樹脂発泡体粉砕品は再利用可能であるとともに、補助部材をも変形させずに再利用可能な状態で分別解体することが可能な樹脂発泡体複合物の分別解体方法及び分別解体装置を提供できる。
【0026】
更に、本発明によれば、上記粉砕方法、もしくは上記分別解体方法及び分別解体装置により得られた樹脂発泡体粉砕品又は補助部材を用いて得られる再生クッション体を提供できる。なお、本発明による樹脂発泡体粉砕品は角形状をしていないため、リボンデットフォームにしたときに、隙間がほとんどできないので、高級感のある良好なクッション体となり、従来よりも広い用途展開が可能となる。
【0027】
更には、本発明によれば、上記粉砕方法、もしくは上記分別解体方法及び分別解体装置で得られた樹脂発泡体粉砕品を用いて作製される固形燃料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明に係る樹脂発泡体粉砕品、樹脂発泡体粉砕方法、樹脂発泡体複合物の分別解体方法及び分解解体装置、再生クッション体及び固形燃料について、更に詳しく説明する。
【0029】
本発明において、樹脂発泡体粉砕品及び粉砕方法、及び樹脂発泡体複合物の分別解体方法は、樹脂発泡体あるいは樹脂発泡体と補助部材からなる樹脂発泡体複合物に、常圧以上の高圧水もしくは高圧空気もしくは水と空気の混合物を噴射することにより得られる。ここで、樹脂発泡体としては、例えばポリウレタンフォームや、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ゴム発泡体が挙げられる。前記ポリウレタンフォームとしては、いわゆるポリウレタンスラブフォームやポリウレタンモールドフォームなどの軟質ポリウレタンフォームの他に、硬質乃至半硬質系ポリウレタンフォームもある。また、補助部材としては、例えば各種金属フレーム、金属ワイヤー、樹脂パイプ等の構造体、あるいは織布や不織布等の補強材が挙げられる。
【0030】
前記高圧水、もしくは高圧空気、もしくは水と空気の混合物を噴射するときは、常圧以上であればよく、粉砕しようとする樹脂発泡体の硬さや厚みなどを考慮して決定すればよいが、5MPa以上にすることが粉砕並びに解体を効率的に行う上で好ましく、より好ましくは10MPa以上、更に好ましくは15MPa以上、最も好ましくは20MPa以上である。ここで、高圧水等を噴射する方法としては、例えばノズルと、ポンプ等の昇圧装置を備えた従来公知の噴射装置を利用することができる。ここで、噴射するものは水、空気、水と空気の混合物のいずれかでもよいが、空気であると粉砕した樹脂発泡体が舞い上がりやすいことと、昇圧するために大きな動力が必要であることから、水との混合物あるいは水の方が好ましい。また、そのときの状態に合わせて水温を適宜0〜100℃まで調整できる。具体的な噴射装置としては、例えば蔵王産業(株)社製の型番:JETMAN T−2015を挙げることができる。
【0031】
本発明において、樹脂発泡体複合物の分別解体装置は、常圧以上の高圧水もしくは高圧空気もしくは水と空気の混合物を噴射することにより樹脂発泡体粉砕品と補助部材とに解体する解体手段と、前記樹脂発泡体粉砕品と補助部材とを分別する分別手段とを具備している。ここで、解体手段としては、高圧水、もしくは高圧空気、もしくは水と空気の混合物を噴射する吹き付け手段(例えばノズル)を少なくとも1個以上備えたものが挙げられる。また、解体手段には、移送用にベルト式等のコンベアを備えてもよく、高圧水を用いる場合には、水が排出されるように、コンベア面をメッシュ状としてもよい。また、その排出された水を回収して再利用することにより、水資源を有効に活用することができる。一方、分別手段としては、従来公知の振動コンベア、磁石による金属フレーム、金属ワイヤー等の金属構造体を回収する金属構造体回収手段が挙げられる。勿論、作業者が人手により直接回収してもよい。
【0032】
本発明において、上記分別解体装置は、前記分別手段により分別された樹脂発泡体粉砕品から水分を除去する脱水手段を更に有していることが好ましい。ここで、脱水手段としては、例えば従来公知のロール・ベルト・油圧システム等を備えた脱水手段、もしくは遠心分離手段が挙げられるが、高圧水により細かく粉砕された粉砕品を脱水するには遠心分離手段の方が適している。また、上記分別解体装置は、前記分別手段により分別された樹脂発泡体粉砕品を接着剤と混ぜ合わせ、固化することによりリボンデットフォームを作製するリボンデットフォーム作製手段を、更に有することが好ましい。このリボンデットフォーム作製手段は、例えば、樹脂発泡体粉砕品投入入口と、接着剤噴霧手段と、樹脂発泡体粉砕品と接着剤とを混ぜる攪拌手段を備えた攪拌槽と、リボンデットフォーム成形用金型と、上蓋昇降手段と、水蒸気投入口か、あるいは金型加熱手段とを備えた手段となっている。
【0033】
本発明において、上記分別解体方法、もしくは上記分別解体装置により得られた樹脂発泡体粉砕品又は補助部材を用いて再生クッション体を得ることができる。ここで、再生クッション体を得るには、従来公知の方法を利用することができる。例えば、上述のリボンデットフォーム作製装置を用いて脱水・乾燥した樹脂発泡体粉砕品に接着剤を噴霧しながらよく混ぜ合わせたものを、金型の中に投入し、上蓋をした状態で加圧し、必要に応じて水蒸気を加えながら固化させる方法を挙げることができる。
【0034】
勿論、脱水のみを行った完全に乾燥する前の状態の樹脂発泡体粉砕品に、ウレタンプレポリマーのような水と反応硬化する性質を有する原料を噴霧しながらよく混ぜ合わせたものを、金型の中に投入し、上蓋をした状態で加圧し、加熱することにより反応硬化させてもよい。
【0035】
本発明において、上記分別解体方法、もしくは上記分別解体装置により得られた樹脂発泡体粉砕品又は補助部材を用いて固形燃料を得ることができる。ここで、固形燃料を得るには、従来公知の圧縮減容固形化装置や、圧縮減容造粒装置などを用いることができる。それらの装置の具体例としては、例えば(株)御池鉄工所の型番:MH−200、型番:SPH−580が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
(実施例1)
本実施例1はコールドキュアフォーム製品としてのポリウレタンモールドフォームを樹脂発泡体複合物として準備し、粉砕品と補助部材とに分別解体する場合の例である。
まず、移送コンベアの上流側に樹脂発泡体複合物を載置した。樹脂発泡体複合物としては、コア密度35kg/cm、硬さ200Nの二人掛けの自動車用クッション体を裏返しして載置した。次に、ノズルと昇圧装置を備えた噴射装置としての高圧洗浄機(蔵王産業(株)社製の製品名:JETMAN T−2015)を用いて、ノズルより圧力15MPaの高圧水を解体すべき樹脂発泡体複合物の補助部品がある辺りにノズルの先端を向けて端からなぞるように3分間噴射して、樹脂発泡体と補助部材とに解体した。ひきつづき、ノズルから同じ圧力で解体した樹脂発泡体に高圧水を1分間噴射し、樹脂発泡体粉砕品を得た。この後、樹脂発泡体粉砕品と補助部材とを移送コンベアにより該コンベアの下流側まで搬送した。ここで、補助部品を金属構造体回収手段としての磁石により回収するとともに、樹脂発泡体粉砕品は遠心分別手段側に搬送し、樹脂発泡体粉砕品と補助部品の分別を行った。
【0037】
上述した分別解体方法及び粉砕方法によれば、高圧水を噴射開始後3分で、全く変形のない補助部材としての金属フレームを取り出すことができた。また、ひきつづき高圧水を1分間噴射させることにより、適度な大きさの樹脂発泡体粉砕品を得ることができた。この樹脂発泡体粉砕品は、表面のスキン層が全くわからない状態(手で触った際に、スキン層の存在がわからない、ふわふわした感触の粉砕品)であることが確認でき、リボンデットフォームに使用可能な粉砕品であることが確認できた。更に、樹脂発泡体複合物の解体により得られた金属フレームは全く変形していないため、樹脂発泡体複合物の製造に再度使用可能であることが確認できた。
【0038】
(実施例2)
本実施例2はホットキュアフォーム製品としてのポリウレタンモールドフォームを樹脂発泡体複合物として準備し、粉砕品と補助部材とに分別解体する場合の例を示す。
【0039】
まず、移送コンベアの上流側に樹脂発泡体複合物を載置した。樹脂発泡体複合物としては、コア密度20kg/cm、硬さ98Nの二人掛けの自動車用クッション体を裏返しして載置した。次に、ノズルと昇圧装置を備えた噴射装置としての高圧洗浄機(蔵王産業(株)社製の製品名:JETMAN T−2015)を用いて、ノズルより圧力20MPaの高圧水を解体すべき樹脂発泡体複合物の補助部材がある辺りにノズルの先端を向けて端からなぞるように3分間噴射して、樹脂発泡体と補助部材とに解体した。ひきつづき、ノズルから同じ圧力で解体した樹脂発泡体粉砕品に高圧水を1分間噴射した。この後、樹脂発泡体粉砕品と補助部材とを移送コンベアにより該コンベアの下流側まで搬送した。ここで、補助部品を金属構造体回収手段としての磁石により回収するとともに、樹脂発泡体粉砕品は遠心分別手段側に搬送し、樹脂発泡体粉砕品と補助部材の分別を行った。
【0040】
実施例2によれば、実施例1よりも高圧に設定したため、ホットキュアフォーム製品からの粉砕品でありながらスキン層が全く分からない状態にまで粉砕できていた。また、粉砕品は全く角形状をなしていないので、リボンデットフォームにした際に隙間がほとんどできない粉砕品であることが確認できた。その他、実施例1と同様に、全く変形のない補助部材としての金属フレームを取り出すことができて、樹脂発泡体複合物の製造に再度使用可能であった。
【0041】
(実施例3)
本実施例3について、図1及び図2を参照して説明する。ここで、図1は本発明に係る樹脂発泡体複合物の分別解体装置のブロック図、図2は本発明に係る樹脂発泡体複合物にノズルから水を噴射している状態の説明図を示す。
【0042】
本実施例に係る分別解体装置は、図1に示すように、樹脂発泡体と補助部材からなる樹脂発泡体複合物(ホットキュアモールドフォーム)1を樹脂発泡体粉砕品2と補助部材(例えば金属フレーム)3とに解体する解体手段4と、前記樹脂発泡体粉砕品2と補助部材3を分別する分別手段5と、この分別手段5により分別された樹脂発泡体粉砕品2から水分を除去する脱水手段6と、乾燥手段7と、乾燥手段7により乾燥された樹脂発泡体粉砕品2を接着剤8と混ぜ合わせ、固化することによりリボンデットフォーム9を作製するリボンデットフォーム作製手段10とを備えている。前記リボンデットフォーム9は、解体工程と、分別工程と、脱水工程と、乾燥工程と、リボンデットフォーム作製工程を経て得られる。
【0043】
前記解体手段4は、具体的には、樹脂発泡体複合物1に15MPa以上の高圧水11を噴射する能力を有する分岐用高圧ヘッダー15と、ノズル12と、水源から前記ノズル12までをつなぐ高圧ホース30と、昇圧装置13と、この昇圧装置13を駆動するモーター16と、解体された樹脂発泡体粉砕品2を搬送する移送コンベア14等を備えている。前記ノズル12は、180cmの幅に15cm間隔毎に配設されている。具体的な噴射の仕方は、例えば図2に示すように、解体すべき樹脂発泡体複合物1全体にノズル12の先端を向けて高圧水11を噴射することにより行う。解体された樹脂発泡体粉砕品2は、移送コンベア14により所定の位置に搬送される。ここで、解体時には、粉砕された樹脂発泡体粉砕品2が周囲に飛び散る恐れがあるので、移送コンベア14の周囲に飛び散りを防ぐ為の囲いを設けることが好ましい。なお、本実施例3では、ノズル本数を13個、圧力を20MPaとしているが、これに限らない。
【0044】
前記分別手段5は、ノズル12からの高圧水の噴射により解体され、ローラー17によって支持された移送コンベア14により搬送された樹脂発泡体粉砕品2と補助部材3のうち、補助部材3を回収する金属構造体回収手段(図示しない)としての磁石と、樹脂発泡体粉砕品2をそのまま下流側に配置された脱水手段6に搬送する移送コンベア14とを備えている。
【0045】
前記脱水手段6は、解体された樹脂発泡体粉砕品2を脱水する遠心分離機18と、移送コンベア13を備えている。これにより、樹脂発泡体粉砕品2に含まれる水分が除去される。なお、脱水手段6は遠心分離機に限らない。
【0046】
前記乾燥手段7は、攪拌羽根20を備えた攪拌槽19と、低温風送風機21と、温度調整のためのヒーター22を備えている。前記リボンデットフォーム作製手段10は、攪拌羽根20を備えた攪拌槽23と、接着剤噴霧機24と、前記攪拌槽23の上部に設けられた粉砕品投入口(図示せず)と、前記攪拌槽23の下部に設けられた粉砕品排出口25と、金型26と、この金型26の上蓋を昇降させる上蓋昇降手段27と、前記金型26へ投入する樹脂発泡体粉砕品2の量を計量する計量器28と、金型26の下部に設けられた水蒸気投入口29と、水蒸気発生装置(図示せず)と、リボンデットフォーム9を搬送する移送コンベア14とを備えている。
【0047】
上述した構成の樹脂発泡体複合物の分別解体装置を用いた粉砕方法は次のように行う。
まず、樹脂発泡体複合物1を移送コンベア14上に配置し、13個のノズル12より高圧水を噴射して樹脂発泡体複合物の解体及び樹脂発泡体の粉砕を同時に行った。このとき、移送コンベア14は、継続して動いており、その速度とノズル12からの水の圧力は対象となる樹脂発泡複合体1の物理的特性等により適宜調整する。
【0048】
次に、分別工程まで移送コンベア14により搬送された樹脂発泡体粉砕品2と補助部材3は、手分別により補助部材3が取り除かれる。ここで、補助部材3に樹脂発泡体が強固に接着している等、解体が十分でないと判断される場合には再度解体工程に戻して解体を行う。
【0049】
次に、脱水工程に移送コンベア14で搬送された樹脂発泡体粉砕品2は、遠心分離機18にかけて粗方の水分を除去した。つづいて、樹脂発泡体粉砕品2を乾燥工程に移送コンベア14により移動させて攪拌槽19に投入し、低温風送風機21からの送風によって乾燥した。このときの送風温度は20℃〜60℃の範囲で適宜設定した。
【0050】
更に、乾燥処理した樹脂発泡体粉砕品2を移送コンベア14によりリボンデットフォーム作製工程に搬送し、攪拌手段を備えた攪拌槽23に上部より投入した。そこでは、接着剤噴霧器24より接着剤であるウレタンプレポリマーを4.5kg噴霧し、攪拌羽根20により良く混ぜ合わせた。次に、接着剤と十分に混ぜ合わせた樹脂発泡体粉砕品2を、攪拌槽23の下部の粉砕品排出口25より76kg計量して幅2000mm、奥行1200mm、高さ1200mmの金型26内に投入した。ここで、金型26の上蓋を高さが550mmになるように圧縮固定し、圧力を0.6MPaかけながら、水蒸気を金型下部の水蒸気投入口より圧力0.4MPa投入し続けた。このとき、水蒸気は金型底面に設けられた100mm間隔毎に設けられた直径1.5mmの穴から金型内に充満した。水蒸気投入開始後3分経過した後、上蓋を少し開けて徐々に圧力を開放しながら上蓋を開け、金型内のリボンデットフォーム9を取り出した。
【0051】
実施例3によって得られたリボンデットフォーム9を裁断加工したところ、従来の解綿機による粉砕品からのリボンデットフォームに見られるようなスキン層が残り、また長方形の為、接着剤が弱くて剥がれ落ちてしまうという不具合全く発生しなかった。
【0052】
(比較例)
まず、コア密度35kg/cm、硬さ200Nのポリウレタンフォーム(ホットキュアフォーム)製の、二人掛けの自動車用クッション体を、カッターと電動カッターを用いて手作業で解体した。
作業開始から1時間後、若干樹脂発泡体が接着して取りきれないままの金属フレームを取り出した。しかし、この金属フレームは大きく変形しており、再度樹脂発泡体複合物の製造に使えるものではなかった。
【0053】
次に、金属フレームを取り除いた樹脂発泡体(ポリウレタンフォーム)を、解綿機(岩本綿機(株)社製、品番:SK−300)を用いて粉砕した。得られた粉砕品は、表面のスキン層が明らかに分かる状態(目視して明らかにスキン層の存在が分かり、手で触るとつるつるしたスキン層の存在が分かる粉砕品)であり、リボンデットフォームには使用不可能な粉砕品であることが確認できた。
【0054】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、樹脂発泡体としてポリウレタンフォームを挙げ、更には密度、硬さを任意の値に設定した場合について述べたが、上記実施形態そのままに限定されるものではない。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る樹脂発泡体複合物の分別解体装置のブロック図。
【図2】図1の分別解体装置における解体手段と分別手段の一態様を説明するための図。
【符号の説明】
【0056】
1…樹脂発泡体複合物、2…樹脂発泡体粉砕品、3…補助部材(金属フレーム)、4…解体手段、5…分別手段、6…脱水手段、8…接着剤、9…リボンデットフォーム、10…リボンデットフォーム作製手段、11…高圧水、12…ノズル、13…昇圧装置、14…移送コンベア、15…分岐用高圧ヘッダー、17…ローラー、18…遠心分離機、19,23…攪拌槽、20…攪拌羽根、21…低温風送風機、24…接着剤噴霧器、26…金型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡体に、常圧以上の高圧水もしくは高圧空気もしくは水と空気の混合物を噴射することにより得られることを特徴とする樹脂発泡体粉砕品。
【請求項2】
樹脂発泡体に、常圧以上の高圧水もしくは高圧空気もしくは水と空気の混合物を噴射することを特徴とする樹脂発泡体粉砕方法。
【請求項3】
樹脂発泡体と補助部材からなる樹脂発泡体複合物に、常圧以上の高圧水もしくは高圧空気もしくは水と空気の混合物を噴射することにより、樹脂発泡体粉砕品と補助部材とに分別解体することを特徴とする樹脂発泡体複合物の分別解体方法。
【請求項4】
樹脂発泡体と補助部材からなる樹脂発泡体複合物を分別解体する装置であり、常圧以上の高圧水もしくは高圧空気もしくは水と空気の混合物を噴射することにより樹脂発泡体粉砕品と補助部材とに解体する解体手段と、前記樹脂発泡体粉砕品と補助部材とを分別する分別手段とを具備することを特徴とする樹脂発泡体複合物の分別解体装置。
【請求項5】
前記解体手段は、前記樹脂発泡体複合物に常圧以上の高圧水もしくは高圧空気もしくは水と空気の混合物を噴射する複数のノズルを備えていることを特徴とする請求項4記載の樹脂発泡体複合物の分別解体装置。
【請求項6】
前記分別手段により分別された樹脂発泡体粉砕品から水分を除去する脱水手段を更に有することを特徴とする請求項4もしくは5記載の樹脂発泡体複合物の分別解体装置。
【請求項7】
前記分別手段により分別された樹脂発泡体粉砕品を接着剤と混ぜ合わせ、固化することによりリボンデットフォームを作製するリボンデットフォーム作製手段を、更に有することを特徴とする請求項4乃至6いずれか記載の樹脂発泡体複合物の分別解体装置。
【請求項8】
請求項2記載の粉砕方法、もしくは請求項3記載の分別解体方法、もしくは請求項4乃至6記載の分別解体装置により得られた樹脂発泡体粉砕品又は補助部材を用いて得られることを特徴とする再生クッション体。
【請求項9】
車両、家具、寝具、日用品、防音材のいずれかとして用いられることを特徴とする請求項6記載の再生クッション体。
【請求項10】
請求項2記載の粉砕方法、もしくは請求項3記載の分別解体方法、もしくは請求項4乃至6いずれか記載の分別解体装置で得られた樹脂発泡体粉砕品を用いて作製されることを特徴とする固形燃料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−205699(P2006−205699A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24597(P2005−24597)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000003425)株式会社東洋クオリティワン (18)
【Fターム(参考)】